リコ「ダズに恋をした」(104)

ハンネス「…」

キッツ「…」

ミタビ「…」

ダズ「…嘘だ…こんなの…」

↑みたいな内容でよろ

ダズは死んだ

ダズ→リコなら書けそうなのにな
逆は薬もらんときつそう

誰得だよ

接点あるか?
駐屯兵団の上司と部下?

長く険しすぎる道のりだな


五年前の壁の崩壊は、俺の人生を変えるのに十分だった。

シガンシナ区に嫁ぐはずだった妹が、あの災害で婚約者を失った。

巨人がどうしても許せなかった。仕事を放り出し、いい歳して少年に混じって訓練兵に志願するくらいには。

流石に優秀な成績は修められなかったが、三年間の訓練生活を終え、ようやく卒業にこぎつけた時。

――あいつが来た。




こんな捏造ダズさんでよければ続ける
ただし明日。

老け顔じゃなくてガチのおっさんかよ

ダズおっさんなのかw
面白そう。期待

流石に15歳のダズとはねえなと思ってたからこれくらいの捏造なんともないわ

期待してる

待ってる

リコさんプライド高そうだし、ダズに何らかの付加価値付けないと厳しい気がする。

ダズ、調査兵じゃなかったっけ?


その時俺は初めて巨人を見た。

超大型巨人。名前だけは聞いている。

このバカでかい、壁を越えて見える部分は――まさか「顔」なのか?

間抜けな思考は風を切る轟音で強引に中断させられた。

四班あたりの固定砲を吹き飛ばした、蒸気の熱がこちらまで伝わってくる。

あいつはまだ一歩も動いちゃいない。


「おい……何だよあれ」

同じ整備班の一人が力のない声を出した。

「あ……あぁ……まさか」

女子が一人体を震わせ、その場に座り込んでしまった。

エレンのよく通る声が聞こえる。回りの奴が喚き始める。駐屯兵が忙しなく指示を出す。

俺は。

声を出すことさえ出来なかった。


あれが巨人?

確かにでかい。でかすぎる。あんなもん規格外だ。

そもそも前置きもなしに壁の上からこんにちはなんて不躾にもほどがある。

己の一挙一動がどれほど俺たちに迷惑を被るものか、もっとわかってもらいたいもんだ。

今日は本来ならばこの後、明日に訓練兵舎を去るための準備をするはずだった。俺の人生の中でも特に稀有な経験となった、少年たちとの三年間の集団生活。感傷に浸りながらそれに別れを告げるはずが、すっかり予定を狂わされた。

いや、こうなってしまったらもう何を言っても仕方がない。

わざわざむこう遠方はるばるこちらまでやってきてくれたのだ。客人はもてなさなければならない。

あくまでこちらは礼儀正しく、だ。

訂正

×わざわざ向こう遠方はるばるこちらまでやってきてくれたのだ。
○わざわざ向こうから遠方はるばるやってきてくれたのだ。


ちょっとくどいけどね
早速迷走してる

ミカサに恋をしたのタイトルに似ている


俺と大して歳の変わらなそうな髭面の隊長が、整列した訓練兵の前で声を荒げている。鼓舞しているつもりなのだろうが、顔は青ざめていた。

前衛部隊は全滅したらしいと知らされ、ざわめきが大きくなった。

膝を抱えて震える者。泣き出す者。大声でわめき散らす者。

俺なんかよりずっと若い命が今日、下手したらたくさん消えるかもしれない。このまま戦地に送るのはあまりにも危険に思えた。

だが、俺自身も正直いっぱいいっぱいだった。怒りと強がりと屁理屈で隠そうとしても、押し寄せてくる恐怖は誤魔化せない。

あれと戦う。生き残る。勝つ。

どうやって?

イメージが湧かない。でもやるしかない。

妹のような人を、これ以上増やさないために。


「行くぞダズ!」

ジャンに呼ばれて、ようやく重い腰を上げた。とうとう俺たちの班が配置につく時のようだ。

余談だが俺は訓練兵にそこそこ慕われている。勿論最初は戸惑われたが、俺自身気を使われるのは嫌だったので、気楽に話しかけてくれと言った。今では皆俺に対して、近所のおじさんのように話しかけてくれる。

「おい、もたもたしてっと置いていくぞ!」

ただし訓練や班行動の時、無遠慮に俺に命令口調で話しかけてくるのはこの男、ジャン・キルシュタインだけだ。


トロスト区防衛戦が始まった。

俺たちの班も前進し、前衛の位置に移動する。

(まだ、巨人は見えないか……?)

高い建物の多い場所を縫うように移動していて、視界が悪かった。なのに油断していた。

「ダズ!」

気づいたら俺は隊列を崩していた。前に出すぎていた。

ウォール教の連中が建てたバカでかい建物の影から、3メートル級の巨人が突然現れた。

このおっさんすげえ心配だよ…


「なっ!」

勢いよくガスをふかしすぎて、手前の建物の屋根に叩きつけられる。慌てて起き上がろうとすると、足を掴まれた。

いや、掴んだのではなくつままれたのだろう。引きずられている間、霞んだ視界に俺の腕の太さをした指が見えた。

そのまま宙吊りにされる。

巨人の口が視界いっぱいに広がる。

「うわぁぁああ!!」

頭が真っ白になった。

何も聞こえなくなった。

ここに来て俺は、今さら、ようやく、

自分が死ぬかもしれないという「事実」が理解できた。


「ダズ!」



「今助ける!」

(すまん投下ミスだ流してくれ
かって何だよかって)


「きゃぁあ!」

「野郎!」

「ダズ! 今助ける!」

瞬間、俺の体は真横に弾き飛ばされた。体に新たな衝撃が加わる。

「っつ」

「大丈夫か!?」

また屋根の上。どうやら俺は班員に助けられたらしい。仲間の決死の体当たりに救われた。

「た、助かった……ありが――」

礼はそこで止まった。


俺は起き上がった。だが俺を助けてくれた奴には、もう胴体がなかった。

気づけば巨人は2体増えていた。代わりに立ち上がっている仲間の数は減っている。

食べられているのか。みんな。

俺のせいで。

「ダズ! 早く立て! 今なら逃げられる!」

ジャンがいつも以上のでかい声で号令を出す。だが俺はもう、その声さえ耳に届かなかった。

死にたくない。


「あぁぁあぁあああああ!!!」


前後もわからず逃げ出した。

「ダズ!? おい待――」

ひたすらガスをふかす。残量のことなど頭にない。とにかく逃げる。速く。速く。

「あぁあ、うああああ!!」

情けない。

「がぁっ!」ズシャッ

俺は、目的を持って兵士になったはずだった。

腰抜けと呼ばれたくないだけの「子どもたち」とは違うとどこかで思っていた。

「げほっ……っぐっ……」

それが、そのはずが。

「げっ……おえぇっ!」

このザマだ。


「げぇっ、ぺっ」

体が重い。だがぐずぐずしてはいられない。

こうしているうちに、また巨人が現れたら俺は――

「何をしている!」

その時、俺の耳はようやく誰かの声を受け入れた。

「もう撤退の鐘が鳴った。早く壁を上れ!」

どうやら女の声のようだ。俺は四つん這いになっているので顔は見えないが、正面からこちらに近づいてくる足音が聞こえる。


「おい、聞いているのか――って、きゃああ!」

すぐ傍まで近づいてようやく、吐瀉物の存在に気づいたらしい。女が悲鳴をあげる。

「おっ、お前! 精鋭班ともあろう奴が、巨人との戦闘中に吐くなんてこと」

女の声はそこで唐突に途切れた。俺はそのままの体勢で、ゆっくりと顔をあげた。

若い女だ。眼鏡をかけていて、短い銀髪が風に揺れている。非常に華奢な体で、ジャケットの胸元にあるバラの紋章がよく似合っている。

女は俺のジャケットの背中と、おそらく今日だけで10年は歳をとった俺の顔を見比べて言った。

「訓練兵……? え、ですか?」

(なんか書くの疲れてきちゃった……誰か他に書く人いない?)

(頑張れ)

ちょ、これからって時にwww

がんば

(お前は出来る子)

(イイヨイイヨーこのまま行こうず)

(お前ら優しいなありがとう)

もうちょっと頑張ってみるわ。ちょっとやる気出たから。
でもまた明日な。

無理せずマイペースでな!
続き楽しみにしてる乙乙!


女はまさに呆気にとられたといった表情だった。

「か、確認するぞ。訓練兵、でいいんだよな?」

俺は喉にまだ詰まるものがあって声が出せず、がくりと頭を垂れてその勢いでむせこんだ。

女はそれを首肯と受け止めたのかこう続けた。

「そうか……なら敬語は外すぞ。歳は下だろうが私はお前の上官だ。規律には従ってもらう」

早口で述べるやいなや、吐いた臭いに耐えきれないといった様子でくるりと背をむけた。見るからに潔癖そうだ。

「大体なんでアッカーマン以外の訓練兵がここにいるんだ。ここは後衛の持ち場だ。駐屯兵団の精鋭しかいないはずだぞ」


「……」

言葉がない俺の様子を見て、女はどうやら察したらしい。

「逃げ出したのか。前衛から」

背中越しに冷めた声が聞こえる。年下の女に責め問いをされる惨めさに、俺はうなだれた。

すると、女は身をよじりながら何かを探すような仕草をした。立体機動装置の中で替刃が揺さぶられて、カチャカチャと音を立てる。

再び顔をあげると、女は振り返って俺の横にしゃがみこみ、白いハンカチを差し出した。

こっからどう惚れる展開に持っていくのか……


「口元を拭え」

女の顔が間近に見えた。太く柔らかな眉とは対照的に、きりりとした目元に澄んだ翡翠色の瞳。肌は年相応にきめ細やかで、固く閉ざした唇からは、有無を言わせぬ強い意志が伺えた。

真っ白なハンカチを汚すのは躊躇われたが、上官殿のご命令に、素直に従うことにした。

「とにかく、もう撤退の鐘は鳴ったんだ。どうせここに来るまでにガスを浪費しているだろう。補給は後衛部隊の補給班から受け取ってこい。私が話をつけておく」

口を拭いながら、ようやく小さく、はっ、と答えた。


「口元を拭え」

女の顔が間近に見えた。太く柔らかな眉とは対照的に、きりりとした目元に澄んだ翡翠色の瞳。肌は年相応にきめ細やかで、固く閉ざした唇からは、有無を言わせぬ強い意志が伺えた。

真っ白なハンカチを汚すのは躊躇われたが、上官殿のご命令に、素直に従うことにした。

「とにかく、もう撤退の鐘は鳴ったんだ。どうせここに来るまでにガスを浪費しているだろう。補給は後衛部隊の補給班から受け取ってこい。私が話をつけておく」

口を拭いながら、ようやく小さく、はっ、と答えた。

二重投稿済まぬ。今日はここまでにしとく

凛々しいなリコ
続き楽しみにしてる乙!


「こっちだ。ついて来い」

俺が 立ち上がるのを待って、おんなは


「こっちだ。ついてこい」

俺が立ち上がるのを待って、女は立体機動に移った。俺も、残ったガスを有効に使いながら後を追う。

「訓練兵。巨人が怖いか」

前を向いたまま女は問いかけた。分かり切ったことだ。

「……はい」

「そうか」

聞こえるか聞こえないかというくらい小さな俺の声を女は拾った。そして続けた。

「なら、お前は大丈夫だ」


「え?」

「巨人に対して恐怖心を持つのは悪いことじゃない。 むしろ力のない者が生き残るために、恐怖というのは必要な感情だ」

小さな背中をこちらに向けて、彼女は淡々と語る。

「私もそうだ。何度も死線をくぐり抜けても、奴らが怖くなくなることはない。どんなに経験を重ねた兵士だろうと、それは変わらない」

大事なのは、その恐怖から逃げ出さないことだ。

「たとえ一度巨人に屈服したとしても、その恐怖を知り、覚え、二度と同じことを繰り返さないように恐怖と向き合う術を身につけろ。本来ならお前は敵前逃亡で死罪になるところだが……今回は見逃してやる」


恐怖から逃げるな。

今までそんなことを教えてくれた人は誰もいなかった。恐怖というものは最初の立体機動訓練の時に、訓練所の森に捨てるのが当たり前のように聞かされていた。

体がふと、軽くなった気がした。

「ただし、二度と命令を無視した行動はするな。お前も、公に心臓を捧げた兵士なら」

「あ、の」

「何だ」

「ありがとう……ございます」

うら若い女性上官に敬語を使うのがどうにも気恥ずかしく、最後の方はやはり声が小さくなった。

しかし彼女は間違いなく、敬意を表するに値する人だ。


すると、彼女はちらりと俺の方を見て、立体機動を少し減速させた。

俺が真横まで追いつくと、彼女は口角を緩めてみせた。

柔らかな表情だ。

凛々しくて力強く、それでいてとても女性らしい笑顔。

その時初めて彼女のことを、美しい人だと思った。

リコさんまじかわ


無事にガスの補給を済ませ壁を上ると、彼女はすぐに後輩兵士に呼ばれた。

「班長!」

どうやら火急の事態らしい。彼女が俺から離れていく間に、「巨人のうなじ」「人間」「固定砲」といった単語が聞き取れた。

彼女はこちらを振り向くこともなく去っていった。別れを惜しむどころか、名前を聞く間もなかった。



壁内には俺の後しばらくしてジャン達が来た。俺を見つけるや否や、ジャンは俺を小一時間は責め立てた。

さんざん言いたいことを言った後、
無事でよかった、なんて言うものだから頭が上がらない。ひとまわり以上歳の違う訓練兵達の中で、俺を正しく叱れるのはこの男だけなのだ。


お前も生き残ってよかったと言うと、ジャンは複雑そうな顔をした。スチールの柄を握る手に力を込め、置き去りにされた仲間達が眠る、開閉扉の向こう側に視線を向けた。

こいつが今何を思っているのか、俺には推し量ることが出来なかった。自分の成績のことばかり考えていたこの少年が、こんなにも大人びた憂いを顔に出すとは。

反対側からライナーが近づくと、ジャンは彼に目配せして、「水を飲んでくる」と言って俺から離れた。聞かれたくない話があるのだろう。俺も二人から距離を置くことにした。

期待


「ダズ」

一人になった俺に、後ろから声をかける奴がいた。マルコだ。

「無事だったんだね。よかった」

どうやら俺が失踪していたことを知っているらしい。彼の親友から聞いたのだろう。

「ジャンと合流した時、班員が他に誰もいなくて……その、ごめん」

生真面目な男だ。それでいて堅苦しさを感じさせない。訓練兵で彼以上に成熟した男を俺は知らない。

無理せずがんばれ

うむ

進撃SSも減ってきたなぁ。このくらいがちょうどいいバランスだ

流行った直後は爆発的に増えるけどその後は緩やかに減っていくからね


「それにしても、よく一人で帰ってこれたね。ガスは足りたのかい?」

いかにも不思議に思っているという顔でマルコは尋ねた。詳細は伝えず、「後衛部隊に拾ってもらった」とだけ伝えた。

頭の中に、銀髪の女性の後ろ姿が浮かぶ。

「また招集だね。行こうか」

促されるままに足を運んだ。ポケットの中で、白いハンカチを握り締めた。

レス本当にありがとう。
今日はここまで。

現状、ダス「リコに恋した」だなww


どうやら俺達は、また戦場に駆り出されるようだ。

トロスト区奪還作戦。壁の上で丸ハゲの男が説明する。

俺よりは年上……だよな、うん。後頭部を少し揉む。

作戦はエレンの巨人化能力を利用して壁の穴を塞ぐという、一文にするととツッコミ所満載な内容だった。コニーじゃないが、俺も理解するのに苦労した。

説明が終わっても、俺はまだ壁上にいる人の動きを目で追っていた。エレンのそばにミカサとアルミンが駆け寄る。ハゲ頭の司令殿が二人の部下を連れて悠然と歩く。

すると彼らのすぐ後ろに、三人の人影が現れた。


遠くて顔はよく見えない。男が二人と女が一人。男達の背が高いのか、女がやけに小さく見えた。

女が横を向いた時、夕日が反射して、銀髪と眼鏡が一瞬光った。

彼女だ。

唐突に認識して、思わず壁に一歩近づいた。壁の上で男達に交じり、あの凛としたたたずまいを見せている。

あそこにいるということは、彼女もこの前代未聞の作戦の命運を握る一人なのだろう。おそらくは、駐屯兵団精鋭部隊を束ねる立場として。

急に彼女のことが、いっそう遠くに見えた。

高い壁の上までの距離はそのまんま、俺と彼女の本来の距離感のようだった。

今までリコの堅物加減が嫌いだったけどこの作品見て好きになってきた!
続き楽しみ乙です!


トロスト区奪還作戦が始まった。

巨人と交戦する必要はないと言われたが、話半分に聞いておいた。いつの世も、「予定通りのこと」は得てして起こらないものだ。

戦いの中では尚更だ。俺はそれを今日一日で、嫌という程実感したのだ。

俺の班は壁際にぶら下がっては離脱、ぶら下がっては離脱を繰り返して巨人を誘導するよう命じられた。

駐屯兵の男が指揮をとる。彼の離脱の合図を待つのが苦痛だった。巨人が近づいてくるのに辛抱強く耐えなければならない。

それでも、喚き声一つ上げることなく任務をこなすことが出来たのは、おそらく先程得た教訓が大きかった。


(恐怖から逃げるな)

怖いのは当たり前だ。誰だって同じだ。

だからこそ危険を侵すことを怖れる。命令に背くことや、不用意に逃げ出すことも。

(心臓を捧げた兵士なら)

精鋭班の動きが、気になった。


瞬間、壁に細やかな振動が伝わってきた。

「黄色の煙弾を確認!」

頭上で女の声が聞こえる。

「作戦が……成功したようです!」

成功した?

終わったのか?

――彼女は無事なのか?

今までなら考えられなかった、自分の思考の流れに驚いた。

この身の安全の是非と同じくらい、彼女の無事を知りたくなっていた。

惚れっぽいおっさんだな
リコさんならしょうがないか


何故?

確かに命の恩人とも言うべき相手だが、ほんの数時間前に出会い、ほんの数十分の間、行動を共にしただけだ。

名前も知らないというのに。

「訓練兵は壁を上って離脱! 駐屯兵は各班に分かれ、精鋭班の援護、固定砲の準備にかかれ!」

次々と壁を上っていく訓練兵。だが俺は指揮官に再度怒鳴られるまで、ぶら下がったまま動けなかった。


壁を上り、兵舎に戻り、教官から今後の説明を受けている間も、同じ思考が頭の中を駆け巡っていた。

どうしたら彼女の無事を知ることが出来る?

ひと目でいい。姿を見ることは出来ないだろうか。

本当にどういうわけかわからないのだが、彼女の無事を早急に知るという願望が、さも当然の命題のようになっていた。

一週間後に延期された所属兵団決定の日に駐屯兵団を選び、彼女に会えることを期待するのでは不十分だと思った。


彼女に助けられたから?

励まされたから?

背中を押してもらったから?

どれが正解がはわからない。

ただ何となく彼女は、見た目ほど強い女性ではないのではないか、とどこかで感じていた。

それで余計に不安になる。


夜が明けても、固定砲は火を吹き続けていた。俺はこっそり兵舎を抜け出して、トロスト区に続く開閉扉の近くまで来た。

壁際では多くの駐屯兵が、入れ替わり立ち替わりで固定砲に詰める榴弾と火薬を運んでいた。

彼女の姿はない。

冷静に考えてみたら当たり前だ。彼女は精鋭班でも班長クラスと思われる人間なのだ。こんな雑務にしか見えない作業に駆り出されているわけがない。

明日は訓練兵団と駐屯兵団が合同で、トロスト区で戦死した遺体の身元照合、および回収作業が行われる。おそらく訓練兵は兵団から多く死者が出た中衛区域での作業になる。

明日もし彼女を見つけられるとしたら、精鋭班の多くが犠牲になった地、つまりは塞がった壁の穴のあたりだろう。彼女の生死はともかくとして。


しかし、どうやってそこまでたどり着く?

いち訓練兵が限られた駐屯兵の持ち場に入ってしまったら、どう考えたって目立つに決まっている。ならどうすればいい?

たとえ気休めでも、彼女をひと目見に行くためには何をする必要があるだろうか。

思考を巡らす俺の視界を、また駐屯兵が忙しく横切った。

背中の薔薇の紋章が、使われた年月の分だけ汚れている。

この上なく愚かな考えが、浮かんだ。


翌日。

予想通り訓練兵はトロスト区中域で作業が始まった。壁際に向かえば向かうほど、すき間にいる駐屯兵の数が増えていく。

穴が塞がれた南の方に向かうごとに、訓練兵と駐屯兵の数が拮抗してくる。俺はその境目を、なるべく堂々と超えた。

衛生面からマスクと手袋が配給されたのは俺にとって別の意味で好都合だった。マスクは顔を隠すのに多いに役立つ。

手袋は亡くなった駐屯兵からジャケットを奪い取るのに、直接遺体に触れないために必要なものだ。

自分のジャケットは、隠れて着替える場所に使った酒場の樽の陰に押し込んだ。大の大人であるというだけで選ばれた仏の、ジャケットの内側はすっかり乾いた血の痕で真っ赤だった。

じんわりと冷や汗でシャツを濡らしつつ、それに袖を通した。伝染病? そんなものの心配は二の次だ。

今最も懸念すべきは、こんな陳腐な策で彼女のいるところまで、果たして辿り着けるかどうかなのだ。


ほんの数日前の自分だったら考えられないことをやっている自覚はあった。

遺体からジャケットを剥ぎ取る間も、吐き気をもよおしたが懸命にこらえた。なるべく手早く、なるべく見つからないようにと焦りながら。

あの日のたった数十分の出来事が、自分をここまで変えるとは。

だからこそ、変えてくれた人の生死を心配するのは当然で――

心配?

そんな生易しい感情だろうか。


「とんでもない被害になったな」

「あぁ」

後ろから駐屯兵が二人近づいてくる。俺は思わず建物の影に身を潜めた。

「俺たちもそうだが、特に精鋭班がな。腕の立つ人達が何人も殉職しちまった」

「班長クラスが二人だもんなぁ……イアン班長なんて、特に司令に期待されてたって聞いてるのに」

「それを言うならミタビ班長だって大差なかっただろう。あの人、所属の違う班員だろうとかまわず飲みに誘っては奢ってくれたりして、俺すごく好きだったよ」


心臓が波打つ音をうるさく感じながら、盗み聞いた情報から冷静に頭を回転させた。

班長が二人死んだ。名前からして男だ。

もしかして、あの壁上で彼女と共に三人の影を作っていた者たちか?

だったら、だったら。

彼女は。

「リコ班長も、かなり堪えたみたいだったな……あの様子じゃあ」


リコ。

明らかに女の名前だ。彼女のことか。

内容から察するに、生きているのか。

――あの様子って何だ?

「仕方ないだろう。長年苦楽を共にしてきた同僚を、一気に二人も失ったんだからな」

「にしてもあのリコ班長が、あんな顔するなんてな……」

声がだんだんと遠くなる。彼らの声が聞こえなくなるまでやり過ごし、はやる気持ちを抑えながら再び南に向かった。

(今日はここまで)

(予告:あと一日か二日の投下で終わる。といいなと思っている)

乙!
楽しみにしてる


頑張れ!


壁に向かうに連れ、だんだん駐屯兵の数が増えてくる。もういつ見知らぬ顔を咎めに来てもおかしくない。俺は街の曲がり角を駆使して、なるべく一人の視界に留まり続けないようにした。

そして最後の角でようやく、あの後ろ姿を見つけた。

彼女は崩壊した街中の更地で一人、膝をついて座り込んでいた。彼女の目の前に、二人分の遺体が並べられている。

彼女が奥に置かれた遺体に視線を移すと、こちらから彼女の横顔が見えた。

泣いている。


泣き叫ぶ、という感じではなかった。堪えきれないものが溢れているような、静かな泣き方だ。

無事であることに安心するよりも、その涙に心が揺さぶられた。

そこにいるのは精鋭班班長としての彼女ではなかった。俺を助けてくれた時の表情じゃない。壁の上での立ち姿でもない。

小さな体で仲間の死を嘆く今の彼女は、脆さを感じさせる一人の女性だった。

彼女とあの二人の男達の間には、どのような時間が流れていたのだろう。少なくとも俺と彼女のように、ほんのひと時言葉を交わしただけではないのなら。

背中の駐屯兵団の紋章が、急に重くなった気がした。

俺はそれ以上、彼女の顔を見られなかった。静かにその場を去り、ジャケットを脱いだ。


それから一週間が過ぎた。


班長室をノックする。

「はい」

ドアを開ける。部屋の主はちらりとこちらを見る。そして何かに気づいたような顔をして、視線を外さなくなる。

「本日をもちまして、駐屯兵団に入団しました。新兵の」

「お前……あの時の訓練兵か?」

言いかけた言葉を、彼女は遮った。驚いた顔でさえ、どこか涼しげだ。


「覚えていらっしゃるのですか」

「お前は何かと強烈な印象だったからな」

「ありがとうございます」

「褒められたことではないぞ」

「それでも嬉しいです」

敬礼のまま会話をしていたが、失礼をして俺は手荷物を漁った。目的の物を掴むと、彼女に歩み寄った。


「あの……よかったら、これ」

差し出したのは、薄い茶紙の小さな包み。彼女は怪訝そうな顔で俺とその包みを代わり番こに見た。

細い指が包みを開く。

「これは……あの時のハンカチか?」

「はい。その、一端ああいう形で俺が使ったものなんで、もう手にも触れたくないかもしれませんが……一応丁寧に洗ってあります」

自虐的な物言いになったが、年頃の女性にとって男が口を拭った物など生理的にうけつけないだろう。しかし、万が一これが彼女にとって必要な物だった場合を考えると、再会の時返さないわけにもいかないと思っていた。

必要なければ彼女の判断で捨ててもらえばいい。少し俺にとっては勿体無いのだが。

予想に反して、彼女は少し眉尻を下げた。

「わざわざありがとう。で、もう一つの方は?」

いつも見てる
一日の終わりの楽しみにしてるから頑張って

腹筋スレかと思ったら全然違った


「そちらは、恥ずかしながら俺が染めました」

「染めた?」

「兵士になる前は、もともとそういう仕事をしていたんです」

「へぇ……」

彼女はテーブルに包みと白いハンカチを置き、もう一つのものを胸の前で広げた。

染めたといっても、実家から持ち出した白い布を均一に水色に色付けしただけだ。この色も散々迷ったが、目の覚めるような華美な色よりも、淡く爽やかな色の方が彼女に似合う気がして決めた。

「この刺繍も、お前がつけたのか?」

端下の角につけた刺繍がよく見えるように、彼女はハンカチを裏返して俺に見せた。


「まぁ、一応。こういう仕上げも請け負っていましたから」

「仕上げ」

「今回は少々手間がかかりましたが」

ハンカチの角につけた刺繍は、背中の紋章にも描かれている薔薇の花だ。

口には出さないでおくが、正直仕上げの方が時間がかかっている。花は薄い赤とピンクの糸で二輪作り、葉っぱも黄緑と緑の二種類の糸で陰影を作った。

彼女の中にある繊細な女性らしさを、少しでも表現できたらと思い苦心した結果だ。

「凄いな……器用なんだな」

どうやら喜んではもらえたらしい。彼女は新しく手に入れた水色のハンカチを、まじまじと見つめていた。

俺は唾を飲み込み、今日ここへ来た一番の目的を達成させることにした。

改めて、心臓を捧げる。


「あの……リコさん」

初めて名前を呼んだ。さらに緊張が増す。

「俺、駐屯兵として精一杯のことをやらせていただきます。まだ班属は決まっていませんが、どこに行っても貴女から受けた恩は忘れません」

「俺は絶対に、どんなことがあっても生き残ります。貴女が生きている限りは、絶対に死んだりしません」

「俺は貴女を支えられるほど、まだ強さも経験もありません。ですが、いつか貴女を守れるくらい、強い兵士になります」

「どうか貴女のために強くなり、貴女のために生き続ける、愚かで根性無しの男のことを、これからも覚えていてください」


彼女はしばらく無言だった。俺は心臓が爆発しそうになるのを耐えて、彼女の目を見つめ続けた。

やがて、彼女が口を開いた。

「新兵。名前は?」

「ダズ、です」

緊張のあまりファミリーネームを言い忘れた。慌てて付け加えようとしたら、彼女の方が先に続けた。

「ダズ。期待している」

そう言った後に見せた彼女の柔らかな笑みは、あの日見た笑顔よりずっと美しかった。


「とはいえ、その呼び方は感心しないな。これからは正式に上司と部下になるのだから」

「失礼しました。リコ班長」

「うん。ところで一ついいか」

「はい」

「どうしてお前は、私の名前をすでに知っているんだ?」

「あ」


…………………
……………
………


それから。

俺は晴れてリコ班に所属することになった。

直属の上司となった彼女は、やはり一切の妥協のない厳しい人だった。それというのも、俺達を死なせないためだ。

同期の新兵の若く逞しい身体をうらやみながら、俺も懸命に訓練についていった。

やがて月日が流れ、気づけば俺も後輩を指導する立場になった。彼女は副隊長に昇格し、俺はその補佐に任じられた。光栄なことだ。

以来ずっと、俺は彼女と共に仕事をしている。


最後に一つだけ。

「今日の業務はこれで以上だ」

「お疲れ様でした、リコ副隊長」

「あぁ」

俺と彼女の関係だが、

「この後、夕飯ご一緒にどうですか? リコ副隊長がお好きそうなお店があるのですが」

「うん……そうだな」

今のところ、取り立てて言えることはない。


だが、

「それじゃあ、ご用意が出来たらまたお声をかけて下さい、リコ副隊長」

「ダズ」

この後俺達がどのような関係になるのかは、

「何でしょうか」

「もう業務は終わっているんだ。プライベートな呼び方でかまわない」

「わかりました。じゃあ行きましょうか。リコさん」

ご想像にお任せする。


(願わくはスレタイのような展開が来ることを、密かに祈っているのだが)

終わり


途中支援凄く嬉しかった
読んでくれた人ありがとう

ダズ立派になりやがって…
よくこのスレタイからここまで綺麗にまとめたなー
すげえ良かったですお疲れさま

乙!
老け顔じゃなくガチのおっさんってのがよかった
ダズが好きになった
乗っ取りでこんな引き込まれる文が書けるのはすごい

リコの厳しさと優しさがさりげなく描かれてて彼女の魅力をこの作品で知った
原作に載ってる話ではないのに何故か絵が脳内再生されたよ
いやマジ良かった乙乙!

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