戦闘潮流×シャドウハーツ2
時代設定が多少違う(戦闘潮流が1930年代、シャドウハーツ2が1910年代)ので話を合わせるために戦闘潮流終了時期が1915年に変更されてる
それでもOKな人はよろしく
ダメな人は閉じたほうがいいです
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1915年、柱の男達との戦いを終えたジョセフ・ジョースターは妻のスージーQととも新婚旅行を楽しんでいた。
場所はフランスの古村、ドンレミ
ジャンヌダルクの聖地として名高いこの場所で、運命の輪「ジャッジメント・リング」が動き出す。
「きゃーーー!ステキな村じゃないジョセフ!
新婚旅行には最適ね?」
「ったく。何処をどう見たらそんな台詞が飛び出てくるんだおめーはよ~
ただの汚ねぇ村じゃね~か~!」
うるさい小柄な女とは対処に、不機嫌そうな195センチはあろうかという筋骨隆々な大男ジョセフ・ジョースターは悪態をついた。
妻がどうしてもと言うから行って見たドンレミ村だが、何の事は無いただの寂れた村だった。
期待ハズレもいいところである。
「それにしてもよ~。
いくら寂れた村だからってこれはおかしいんじゃあねぇのか?
人っ子一人いやしねぇ、、」
ジョセフがそう思うのも無理はなかった。
まだ夕方だというのに村には人の気配が一切しないのだ。
民家の庭などは手入れが行き届いているので、無人であるはずはなかった。
「おーい!誰かいねぇのかー!」
ジョセフが張り上げる声のほかには、やかましい妻のはしゃぎ声だけだった。
「大丈夫よ~。きっとみんなトイレでようでも足してるのよ。」
「なんで便所で糞するだけで村が無人になんだよ?
お~いうろちょろすんな!
こけちまうぞ~!」
「あら大丈夫よ~。あんたそんなデカイナリして心配症ねぇ~?
ってあいた!!なんなのよこの糸」
スージーQが転んだ所には、人を引っ掛けるように糸が貼ってあった。
「ギャハハハ言わんこっちゃねぇ。
おおかたガキの悪戯かなんかだろうよ。」
心配など一切せずに笑う夫に妻はカチンときたのか
「なによこのスカタン!
あんたなんかこうしてやる!」
とどこにしまってあったのか木でできたライオンのおもちゃでジョセフを叩き出す。
「いてぇ!
なにすんだてめえ?!
つーか!んなもんどこらだしやがった!?」
「え?そういえばいつの間に、、、
変ねぇ?
ってきゃーーー?!なにこれ、『人形が襲ってくるー』?!」
二人は驚愕した。
スージーQの手元を一人でに離れたライオンのおもちゃが、二人に襲いかかってきたのだ。
「な、なんだぁ~こりゃあ!?
と とりあえず『波紋疾走(オーバードライブ)!!』」
ジョセフが不思議な呼吸のリズムをすると、彼のうでが太陽のように輝きを帯びる。
仙道と呼ばれる血液からなるエネルギーを呼吸によって増幅して引き出す、波紋と呼ばれるものである。
「バカ!んなもんおもちゃ相手じゃ意味ないわよ!!」
しかし、波紋はあくまで対生物能力。
おもちゃライオン相手では意味の無いものである。
「へっへっへ。違うなぁ!意味ならあるぜー!ちゃあんとなぁーー!
波紋を流すのはライオンにじゃあねぇ!
ライオンから伸びてるこの『糸』にだッ!!」
そう、彼の狙いはライオンではなく、ライオンから伸びている注意深く見なければ気づかないほど細い糸にあった。
おもちゃが1人でに動き出すなど、他の人間から魂を抜き取るような能力でも無い限り不可能である。
よって答えは一つッ!
文字通り誰かが裏で糸を引いているのであるッ!
糸を伝わった 波紋は、そのまま流れてゆき、ちかくの茂みに向かってゆく。
「さぁ、正体を現しな!人形遣い!」
「ぎええええ」
波紋が直撃し、飛びさてきたのは緑色の外套に身を包んだ老人だった。
ジョセフは老人をつかみ上げると問いただす。
「おいこらじじい!
てめー何が狙いでおれ達を襲う!
太陽が照ってるから柱の男や吸血鬼じゃあねえようだが、、
こっちは新婚旅行中だってぇのによー!」
つかみ上げられた老人はサングラス越しに目を白黒させる。
「なんじゃ!お主らドイツ軍じゃないのかい!?」
「イギリスからの旅行者だよ!
ドイツ軍に知り合いはいるが、俺らはドイツ軍なんかじゃねぇ!」
ジョセフは妻以上にやかましいドイツの戦友を思い出す。
「なんじゃ、人違いか!
そりゃあすまなんだのう!
近頃ドイツ軍がここらに頻発にやってくるようになって困っとったんじゃよ。
おまけに村の娘が1人攫われてしもうてのう。
とっちめてやろうと罠を張っておったんじゃよ。」
ライオンを回収しながら老人が話すところによると、フランス南部を占領し終えたドイツ軍だが、このドンレミだけが飛び地のように軍の支配を拒んでおり、やっきになっているのだという。
だが、村を落とすために少女1人捕まえるというのも妙な話である。
村を明け渡させるならもっと多くの村人を捕まえて交渉に望んだほうが確実である。
そのことを老人に伝えると、
「あぁ、じゃからこの村にドイツ軍以外にようがある連中がいるようじゃ
なにかよからぬことを企む連中がのう、、、」
ジョセフ達と老人がであう少し前ーー
ドイツ軍の建物の一室に一人の軍人がよび出された。
カレン・ケーニッヒ
数日前、ドンレミに侵攻したものの、返り討ちにされた女性少尉である。
彼女がドンレミで同伴したのは十数名の部下達。
しかし、彼らはドンレミの教会で出会った『悪魔』に手も足も出なかった。
石のように硬い、手榴弾や銃弾をもろともしない巨大な身体。
蝙蝠のような翼。
紫色の眼玉。
まさに悪魔だった。
それを退治する為に、ヴァチカンから呼び出された人物の援護。
それが彼女の任務だった。
ヴァチカンからきたニコルという男は、爽やかな雰囲気の、身なりの良い修道服に身を包んだ男だった。
「よろしく。」
人当たりの良さそうな笑みを浮かべながら求めてきた握手に応じながら、彼女は
どこか底知れない感じをその男に覚えた。
教会で出会ったあの悪魔を見たあとではある種の既視感さえ覚えた。
部屋を出ると金属で絨毯を踏みならす重たい音が響いた。
こんな音を響かせて廊下を歩くドイツ人を、カレンは一人しか知らない。
「おおう。カレェ~ン・ケーニッヒ。
どうかしたのか?浮かない顔だなぁ。」
ルドル・フォン・シュトロハイム大佐。
ドイツ軍内でその名を知らぬものはいない。
不死身の吸血鬼とそれらをしたが得る柱の男と呼ばれる生物を滅ぼしたというドイツ軍の生ける伝説である。
その身体はほぼ全身が機械で出来ており、その全身に施された武装はもはや個人装備としては規格外なしろものである。
「シュトロハイム大佐。
実は先日ドンレミで返り討ちになった件で、こんどはヴァチカンの方を連れて悪魔狩りに参加することになったんです。
いまから装備を整えないと、、、、」
「ヴァカ者がアアアアアアアア!!
我がドイツの科学は世界一イイイイイイ!!
悪魔ごとき打倒せんでどうすうウウウウウウ!?
ヴァアアチカンなどに頼らずとも貴様の剣の腕でなんとかしてみろ!」
「でも大佐!あの悪魔、剣どころかライフルの弾や手榴弾さえ効かないんです。
ノイローゼになりそうですよ。」
「我がドイツの医学薬学は世界一イイイイイイ!!
気付け薬でももらってくるがいい!
貴様の悩みなどヴォルカノ山の熔岩の如く吹き飛んでしまうわ!!!」
「ヴォルカノ山て、、、
死んじゃいますよ!」
確か昨年も大噴火を起こしたらしい。
しかも何処かの誰かがドイツの軍用機で火口に突っ込んだのが原因らしい。
きっと相当な馬鹿だったのだろう。
「ヒャアアアアハハハハハ!
俺の知り合いはヴォルカノ山の大噴火に巻き込まれても生きておったぞ!!
まぁ助けたのは俺だがなぁああああ!
あの忌々しいイギリス野郎め!」
確か、大佐が柱の男たちと戦ったのもその時期のはずである。
まさかその男がヴォルカノ山に軍用機ごと突っ込んだという例の、、、、
「まさか、、、ねぇ?」
「ん?どうかしたのか少尉?」
「い、いえ!なんでもありません!では任務に戻ります!」
「応!しっかり励めよ!」
ヴァチカンからきたニコルと向かったのは、贖罪の塔という場所だった。
悪魔狩りに使う聖遺物をとりにいくらしい。
中には大量の化け物が巣食っていた。
それらを倒しながら私達は最上階を目指す。
ニコルはかなりこういう荒事になれているらしく、蜘蛛の巣を晴らすように化け物を駆逐していく。
途中「貧弱貧弱ゥ!」「WRYYYYY!」などとわけのわからない奇声をあげるので多少鬱陶かった。
最上階には人骨に草木の生えた不思議な道具が収められていた。
これがその聖遺物『ヤドリギ』というらしい。
しかし、それを取ろうとするとおぞましい化け物が現れた。
明らかに先ほどまでの化け物とは一線をがす強さだ。
しかし、ニコルはそれをみても気持ち悪い笑みを崩さない。
「WRYYYY汚らしい化け物め。
私は人間を超越したのだ。化け物が堕天使に叶うものか!
そんな貧弱な能力、この私の前では!
無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!」
なんという男だろうか。
あろうことかこいつは自分を堕天使だと言っている。
なんて可哀想な人だろう。
もうどうみても二十歳を超えているのに恥ずかしくないのだろうか。
カレンは養豚場の豚を見るような目でニコルを見た。
消滅する化け物の上に乗り、彼は不可解なポージングをとっていた。
「さぁ。目的の品は手に入りました。帰りましょう。」
意気揚々とその場をあとにしたニコルの後姿を見ながら、やっかいな奴と関わってしまったとカレンは後悔したのだった。
「ここが、、、」
「ええ。ドンレミ村よ。」
カレンとニコルは再びこの村にやったきた。
カレンの部下達も悪魔へのリベンジに燃えている。士気は十分だ。
ニコルも多少言動が痛々しいことに目をつぶれば戦力になる。
勝てるかも知れない。あの悪魔にー。
カレン達は以前返り討ちにあった村の教会に足を運ぶ。
ニコルが部下達に教会の周りを包囲するように指示を出すと、私と二人で内部に入り込む。
中には悪魔どころか人っ子一人いない。
それは村全体に言えることだった。
ニコルは村人は隠れているのだろうといっていたが、、、、
天井をみると、美しいステンドグラスか
無残に割られて大きな穴があいていた。
以前突入したときはあの穴から悪魔が舞い降りてきた。
不意に教会全体を包んでいた静寂が破られる。
と同時に壁の向こうから叫び声が木霊する。
部下達の声だ!
外に出ようとするカレンをニコルが引き止める。
「いけません!いま外に出ては!」
「でも!」
部下を放ってはいけない。
抗議しようとニコルを見るが、彼は天井を見ている。
いや、正確には天井のステンドグラスにあいた大穴だ。
そこからあらわれたモノの足運びは、カレンの腹にベースのメロディのように低く重たい振動をあたえた。
そこからあらわれたモノの姿は、カレンにあのときの恐怖の味を思い出させた。
ドンレミの悪魔だ。
「正体を現せ!ドンレミの悪魔よ!」
ニコルは悪魔に物怖じ一つせずに声を放つ。
悪魔はそれに対して面倒くさそうにかたをひねったあと、まばゆい光に包まれる。
閃光が消えると、底には黒い服に身を包んだ若い男が立っていた。
茶色い髪に赤い目。胸には蒼く輝くペンダントをつけている。
「会いたかったぞ、神殺しの男!」
ニコルが嬉しそうに剣を抜く。
それを全くいに介さず、男が静かに、しかし確かな怒りを向けて口を開く。
「娘を返「嫁を返せ!」
しかし、彼の言葉が最後まで語られることはなかった。
ニコルの背後から、もう1人男が現れニコルを怒鳴りつけたからだ。
その男は195センチはあろうかという大男だった。
シャドハ懐かしすぎる
何故ジョセフ・ジョースターが教会に殴り込みをかけることとなったのか。
その答えを知る為にはジョセフがあの人形使いの老人と出会った時間まで時を戻さねばならない。
「爺さん。大丈夫かよ」
波紋を流した張本人に労わられ、少し微妙な表情を浮かべながらも老人は立ち上がった。
「いやいや、良く確認もせんと仕掛けたこっちが悪いからのう。
気にせんでええ。
ワシはゼペットじゃ。そんでこの娘はコーネリア。」
いつの間にかゼペットの肩には可愛らしい人形の女の子が乗っかって居た。
「コーネリアとゼペット!?
おじいさんもしかしてあの人形使いのゼペット!?」
スージーQが驚いて声をあげる。
「なんだよおめー
この爺さん有名人なのか?」
「パリでその名を知らない人はいないってくらいの有名な芸人よ!
私も小さい頃に一度だけ劇場でショーを見たわ!
本当に生きてるように人形を動かすのよ!!
ゼペットさん。私はスージーQよ。
それでこれが私の旦那のジョセフ・ジョースター。」
「JOJOって呼んでくれ。」
「おや、こんな綺麗なお嬢さんにまで名を知られ取るとはワシも捨てたもんじゃないのう。
人形劇のひとつでもしてやりたいところじゃが今はそんな時間はなさそうじゃ。
お前さんたち、いますぐここから立ち去りなされ。
さっき話した怪しい連中がこの村にやってきとるんじゃ!」
「そういえばさっきそんなこといってたわね。
ジョセフ!助けてあげましょうよ!」
「にゃにいいいい!?
なぁんで俺がんなことしなくちゃあいけねぇんだぁ!?」
「女の子を人質に取るなんてサイテーの連中よ!
見過ごせないわ!
あ、あの教会の周りに一杯人がいるわ!
きっとあいつらがそうね!とっちめてやるわ!!」
そういうとジョセフやゼペットが止める暇もなく、スージーQが教会に向かって走り出す。
「oh NOーーーー!
なにかんがえてやがんだあの尼!
おい!止まりやがれー!」
それを追いかけてジョセフが走り出す。
「待ちなされ!二人とも、、、
って痛ぁー! こ、腰が、、、」
二人を追いかけようとするゼペットだが、腰が嫌な音をたてて立てなくなってしまった。
「あんたらーー!
人質の女の子返しなさいよ!」
スージーQがヘルメットを被り、銃を携えた男たちに怒鳴りつけるが、彼らにその声は聞こえていなかった。
彼らードイツ軍ーは両手から爪のような巨大な刃を付けた奇妙な兵隊の奇襲によって壊滅状態にされていた。
と、爪の兵隊たちがスージーQの存在に気がつく。
「きゃーーー!なによあんた達!!」
あっというまにスージーQは爪の兵隊に拘束されてしまった。
ふざけた見た目だが腕は確かなようだ。
「なんだー?この女は?」
スキンヘッドに太い眉毛、おまけにジョセフ・ジョースター以上の体格をもつ男がスージーQの目の前に現れる。
どうやらこの爪の兵隊たちの長のようだ。
「いきなり怒鳴り込んできました。旅行者のようです。レニ様。」
「ハッ!気の強ええ女だぜ。
俺が捕まえておこう。全く余計な荷物が増えちまったぜ。」
レニと呼ばれた男は軽々とスージーQを右腕に抱える。
その左腕にはカチューシャを付けた可愛らしい女の子が抱えられていた。
この子がゼペットの言っていた女の子だろう。
「お嬢ちゃん。大丈夫?」
スージーQが語りかけると、女の子はこっちを向いた。
「私は大丈夫よ。お姉ちゃんは誰?
私はジャンヌ。
「私はスージーQよ。安心して。もうすぐあいつがこんな奴らぶっ飛ばしてくれるから!」
「あいつ? もしかしてウルのこと知ってるの!?」
「ウル?その人はしらないわね?
私がいってるのは私の旦那よ。
普段はだらしないけど、実はイカす奴なんだから!」
「へー!なんだかウルみたいな人ね!」
ジャンヌが面白そうに笑う。
その顔からは捕らえられている事への恐怖は微塵も感じられない。
強い子ね、、スージーQは感心した。
「レニ様!どういたしますか?」
「このまま教会に入る。向こうももうカタがついた頃だろう。」
そういってレニが教会の扉を開け、中を覗くと、白い修道服をきた男と黒衣のガラの悪いチンピラのような男がにらみ合ってきた。
「よし!ニコルの応援に向かうぞ!
あとに続けお前ら!
おい!お前ら!呼ばれたらちゃんと返事しろよ!
学校で先生に教わらなかったのか?!」
レニが振り向くと、そこには完成に伸びてしまっている部下たちの山が築かれていた。
「へへへ!悪りいなぁ。
おめーの部下にはちとおねんねしてもらったぜ!」
「なんだ?てめえ!よくも俺の部下を!」
「うるせーッ!
嫁を返せーー!」
ジョセフの蹴りがレニの腹に入り、教会の内部にレニの巨体を押し込んだ。
そう、神殺しの男がいる教会にーーー
最終回後のジョセフとスージーQの話とか最高
「!?何者だ着様」
突然の乱入者にニコルが僅かに眉をひそめる。
こんなことは計画外だったのだ。
「そのこハゲのデカブツが抱えてる女の旦那だ!!
てめぇら寄ってたかって人の新婚旅行を無茶苦茶にしやがって。もう許さねえ。
このむしゃくしゃした気分はてめーらをぶっ潰しちまうことで解決するってぇのが1番だなぁ?
デカブツは始末した。次はてめーの番だぜッ!」
ジョセフは破門の呼吸を整えてニコルを真っ直ぐ睨みつける。
だが、ニコルはそれを全くいに介さず、優雅に前髪をかきあげて彼に背を向けた。
「こんのスケコマシ野郎~!
もう許さねぇ!!」
「それはこっちの台詞だ!このアホが!」
ニコルに掴みかかろうとしたジョセフの背後から怒声が響く。
見ると、レニが何事もなかったかのように立ち上がったのだ。
「なかなかいい蹴りを放つじゃねぇか。
だがその程度の動きなら受け身をとるくらい俺には雑作も無いことだ。」
「なんだ?着様は?」
突然の乱入者にニコルは不機嫌そうな声だ。
彼にとってこんなことは計画外だったのだ。
「そこのデカブツが抱えてる女の旦那だ!!
てめーらを寄ってたかって人の新婚旅行を無茶苦茶にしやがって
もう許さねぇ!!
このむしゃくしゃした気分はてめーらをくだらねえ野望ごとぶっ潰しちまうことで解決するってぇのが1番だなぁ?
外の奴らは全員のびちまってるしなぁ!
残りはてめーだけだぜ!!」
しかし、ニコルはジョセフなど全くいに介さずに優雅に前髪をかきあげ、黒服の男と向き合う。
「てめぇ!このスケコマシ野郎!
俺を無視すんな!!」
「それはこっちの台詞だ!」
ジョセフの背後から怒声が響く。
レニが何事もなかったかのように立ち上がったのだ。
「いい蹴りを放つじゃねぇか。
だが、あの程度の動きなら受け身をとるくらい俺には雑作も無いことだ。
さぁ!こんどはこっちからいくぜ!」
14はミス。飛ばして15から読んで
「騒がしくなっちまったなぁ?」
黒衣のガラの悪そうな男は面白そうに呟く。
「だが計画に変更は起こらない!
ウル!!着様を倒すという計画にな!!」
「うるせーな。つーかお前らさっさとジャンヌを返せ。
まぁあの調子だとお前らが返してくれなくてもあのデカブツの兄ちゃんがなんとかしてくれるかもなぁ。」
ウルと呼ばれたガラの悪い男は、ニコルの挑発も何処吹く風という調子だ。
「黙れ!我らはサピエンテス・グラディオ(剣を取る賢者)!
この二十世紀に新たな光と希望をもたらす教団だ!!
「しらねぇよ。」
ふん とニコルはあざ笑うように 鼻を鳴らす。
「神殺しの男。その命、我が武勲とさせてもらうぞ!」
剣を構えてニコルが突進するが、ウルはそれを最小限の動きで軽々と避け、ニコルの顔面に膝蹴りを叩き込む。
ぐええと情けない声とともにカレンの立つ床に倒れた。
「ニコル?これは一体どういうことなの!?」
カレンは全く状況が理解できていなかった。
突然悪魔が現れて人間の姿になり、ニコルが村の女の子を人質にとった集団の仲間だと判明、おまけに謎の新婚夫婦まで乱入するという始末。
もはや彼女の理解力の遠く及ばないところで、事態は混沌の極みとかしていた。
「なに。君を利用させてもったのさ。
ここまでの案内ご苦労だった。
別の所で会えていたら良い同志になれたかもしれないのに、、残念だよ。
だがそうならなかった。
ここでおこったことを知るものは生かしてはおけない。
この男を始末したあとに死んでもらう!」
「へへへ。そいつは無理みてえだな?」
ウルが教会の入り口をみてニヤリと笑う。
「だってよ。5対1だぜ?」
ニコルが驚いて振り向くと、レニが教会に大の字になって気絶していた。
「どういうことだ!?なぜレニが、、、?」
「ふっふっふ。こいつが馬鹿で助かったぜ。
俺がこいつにけりをいれたとき、周りにあの爺さんから拝借した糸を張り巡らせて貰ったのさ。
そしてこいつが立ち上がり、二人を離して俺に向かってきた所で糸の結界を狭めて絡め取り、波紋を流すッ!
こいつが俺とあんたの連れをつれてたんじゃあ波紋を流せられねぇからなぁ!
加減しちゃあいるから死んではいねぇがしばらく起き上がることは出来ねぇぞ!」
「くそ!!忌々しい男め!
だが、私にはまだこれがある!
その減らず口もそこまでだ。
このヤドリギが着様の魂を楽園に導かんことを!!」
ニコルが例の聖遺物を懐から取り出す。
「ニコル!やめなさい!」
カレンが拳銃を取り出し、ニコルに銃口を向ける。
「ふん!気の強いお嬢さんだ!
だが、人間風情がこの私に敵うか!
私はすべての人間をぶっちぎりで超越したのだッ!」
そういうとニコルは人間には目視すら難しい速度でカレンに近づくと、残酷に光る刃を構える。
ただの人間たちはそれに対応する術を持たなかった。
抵抗する権利さえない。
圧倒的理不尽の暴力だった。
だが、それに対応出来る人間がこの場ただ一人いた。
かつて、超神と呼ばれた存在を倒した男。
神殺しの男ならば。
ニコルと同じかそれ以上のスピードでカレンの間に割って入り、彼を吹き飛ばした。
再び吹き飛ばされたニコルは鼻血を垂らして顔を抑えるが、その口元は勝利の笑みで満ちていた。
敗北したのはウルだ。
「おい、冗談だろ、、、?」
ウルの胸には例の聖遺物ーヤドリギーが深々と突き刺さっていた。
痛みは無い。苦痛もない。しかしそれはこの世のどんな呪いよりも恐ろしいものをもたらす道具だ。
ヤドリギはウルの胸に根を張るようにゆっくりと確実に沈み込む。
ヤドリギが刺さった胸から緑色の閃光が迸り、あたりを染める。
「なんじゃこりぁああああああああああああああ!!!
「っ痛! ここは!?」
ウルが目覚めたとき、あたりはすっかり暗くなっていた。
目の前には赤々と焚き火が作られ、その周りに集まる見慣れた顔と見慣れない顔の両方が彼を見つめていた。
「まだ動かん方がええ。
あの光の中から連れ出すのがやっとじゃったんじゃからのう。」
見知った老人の顔が焚き火に照らされる。
「ま、連れ出したのは俺だがな。
全く二人も抱えてここまでくるのは骨が折れたぜ。」
教会であった大柄な旅行者が身を乗り出す。
「二人ってことは、、、おれとあんたの連れか?」
確か彼は連れ去られた妻を取り戻すために殴り込んできたはずだ。
だが、彼は横に首を降る。
「あの後すぐに奴らの援軍が来てな、そこの姉ちゃんとあんたを連れ出すのがやっとだった。
嫁のスージーQとあのジャンヌってガキは連れてくる時間が無かった。」
ウルが視線を後ろに向けると、ニコルと一緒にいた赤髪の女性が座り込んでいた。
「ジャンヌ.....!行かなきゃ!
くそ!!身体が動かねえ!」
「無茶じゃ!しばらく安静にしとれ。
いまあいつらを追いかけてもどうにもならん。」
ゼペットがウルを諌める。
「うるせぇクソじじい!この!このクソ身体め!動けよ!」
立ち上がろうとするウルだが、足に力が入らない。
「おい!落ち着けよ!いまの俺たちに出来る最善の作戦は身体を休めることだ。
いま先走って奴らにケンカ売るなんざ愚の骨頂だぜッ!
死にに行くようなもんだ!」
ジョセフはかつて柱の男と闘い、その命を散らした戦友を思い出す。
あんな想いはもう御免だ。
「あんたは....平気なのかよ?自分のカミさんが攫われても。」
「全く心配してねェ .......つうと嘘になるな。」
ジョセフは金属がこすれ合うような音をたてながら今はもう義手となってしまった左手をグッと握る。
その手の薬指にはスージーQとの愛の証の結婚指輪が、
小指には亡き戦友の魂と、最高の戦士との
友情の証のピアスがはめられていた。
「でもよ、俺はあいつを信じるぜ。
あいつはあんなやつらにみすみす殺されるようなタマじゃあねえからな。
必ず何処かで生きてる。だから俺が見つけて助け出す。」
「そうだな.....。俺が信じてやんなきゃな。
決めたぜ。その誓い、俺も一枚噛ませてくれよ。
俺はウル。ウルムナフ・ボルテ・ヒュウガだ。」
「俺はジョセフ・ジョースター。
JOJOって読んでくれ。」
悪魔と波紋戦士の奇妙な冒険が幕を空けた。
本来の年代的には、シャドハのFtNWの方が近いよね。舞台もアメリカだし。
↑FTNWやってないんよ、、、あんま評判良くないし。
あとウルを出したかったっていうのもある。
「そういえばそちらのお嬢さんのことはよう知らんのう。
お前さん、なぜ奴らと一緒におったんじゃ?」
ゼペットがカレンに目を向ける。
「私、ドイツ軍の少尉をやってたんです。
ヴァチカンの枢機卿だというあの男...
ニコルをこの村に案内したのは私なの。
それがまさかあんな組織の人間だったなんて......
本当にごめんなさい。」
「気にすることはない。あんたは騙されただけじゃ。
それよりこれからどうするんじゃ?
見つかれば殺されるぞ。
これからワシの昔使ったアパートのあるパリへ向かおうと思っとるんじゃ。
お前さんも来るか?」
行き場のないカレンにはありがたい言葉だったので、彼女は一行に同行することにした。
「そういえばあんたにはまだ自己紹介しとらんかったのう。
わしは人形使いのゼペットじゃ。
そこの二人がウルとジョジョ。
そ してこの狼が ブランカ 。
ジャンヌが飼っとった狼で、利己なヤツじゃ。」
そういってゼペットが頭を撫でているのは、額に特徴的な黒い毛並みの模様がある白い狼だった。
「それじゃあそろそろ出発するとするか。
あんまり遅いと逆に奴らに囲まれかねねえからなぁ。」
出来れば「」の前に名前を書いてほしい
一行はパリへ向けて出発し、途中怪物の足止めを喰らいながらも何とか森の出口まで辿り着いた。
しかし、そこで思わぬアクシデントが起きた。
ウルが突然倒れてしまったのだ。
ウルの意識は彼の心の奥へ奥へと沈んで行き、やがて硬い地面に足をつけた。
「ここは、 グレイヴヤード?」
そこは墓場の名をもつ彼の精神世界とも言うべき場所であった。
一昨年までは、四仮面とマリスと呼ばれる邪気を溜め込む扉。
魔物の墓標。
幼き頃に父親と見た夕陽。
そしてかつて彼が愛した女の名が刻まれた墓標がある不気味な空間だった。
しかし、彼の空間はまた新たは変貌を遂げていた。
墓標の石畳が敷き詰められた地面の真ん中から巨体な樹木が生えていた。
ヤドリギの呪いとやらの影響だろうか。
「なんだよこれー?
また変なことになってる、、、
うわっ!?」
突然樹木が光り輝いた。
そして光が収まると
ウルが樹から生えていた.......。
「お、俺が生えた?
ちょっとちょっと!?聞いてねえよ何にも?
生きてんの?ねぇ?」
しかし、樹木から生えた自分は何も答えない。
「やべ。気持ち悪くなってきた。」
樹から生えた自分など、不気味この上なかった。
こんな場所にいたら気が変になってしまいそうだ。
「よしっ!探検してみっか!」
くよくよ考えても仕方がない。
あのお調子者のイギリス人に笑われてしまう。
とりあえず近くの扉を開いて見た。
すると中はー
「あーもー!何なのよ!この狭っ苦しい場所は!?
さっさと出せっての!!」
「でもスージーQ。とりあえずここは安全よ。
だってウルの心の中だもん。私たちに危害を加えるものなんてあるはずないわ。」
「じゃあそのウィルソンだかウィンウィンだかに早く出せって言ってよ!
こんな辛気臭いところ私は嫌よ!!
「ウルよウル。それにウィンウィンってて何?」
「私の夫のお母様がされたセクハラよ。
足を抱えてギターを演奏するみたいにさするの。
こんな感じに?」ウィンウィン
「うわぁ~!なにこれ!?すご~い!」
「あら?良い音で鳴くわねジャンヌ!
バンド組む?」
「やめろーーーーーッ!!!!」
彼の人生で最も騒がしい場所になっていた。
>>24 了解。以降から名前付ける
ウル「.......つまり気がついたらグレイヴヤードにいてしかも出られねえと。
」
ジャンヌ「そういうこと」
ウル「じゃあとりあえず死んだわけじゃねえんだな?」
スージーQ「多分ね。」
ここはグレイヴヤードの中心。
ウルが生えた樹の場所だ。
生えてきた本人がいる前でキモイキモイと連呼されたが、実際気持ち悪いのでウルも黙るしかない。
ウル「そういえばなんで俺はここに呼ばれたんだろうな。」
ジャンヌ「きっとあのヤドリギのせいで能力を失ったからよ。
ウル、いまあなたフュージョンできないでしょ?」
ウル「まぁな。あ、こっちの扉に属性の紋章ついた扉あるじゃん。
はいってみっか。」
とりあえず風の紋章の扉を開けてみると、中には石碑が一つおかれているだけだった。
ウル「風の紋章........
やっぱり能力は失われてやがるなぁ。
って うわ!んだこれ!?」
ウルが石碑に手をかざすと、森で倒した怪物のマリスを吸い取って輝いた。
そして光がやむと、ウルは風の能力を取り戻していた。
ウル「ハッ!そういうことかよ!
現実世界でぶっ倒した怪物のマリスを集めてここにくりゃあフュージョンを取り戻せるってわけか。
ん?なんだ?この声。」
天井から誰かがウルを呼んでいる。
ウル「俺、いかなきゃなんねぇわ。」
スージーQ「あ!ウル!旦那によろしく言っといてね!」
ウル「おーう。任しとけ。」
そういってウルは消えて行った。
まさかジョジョとシャドハーのコラボが見られるとは思わなんだ、乙ー
ネタは凄え面白そうだけど、イマイチ読みにくい。
続けてる内に、上手くなっていく期待を込めて、乙!!
誤変換も直るよう祈るぜ
驚愕、恐怖、不快。
その三つがジョセフ一行に現れた。
倒れたまま意識の戻らないウルを介抱するために森の開けた場所に彼を寝かしていたが、
急に苦しみ出した彼の身体が不気味な紫の煙を吹き上げたのだ。
まるであらゆる生物を一瞬で腐敗させる毒素を含んだかのような醜悪な煙。
その只中で一つの大きな影が蠢く。
ジョセフにはその生き物がどういうものなのか言葉ではなく心で理解できた。
かつて、究極生物と呼ばれた存在と対峙したときと同じ感覚だった。
彼の第六感が悲鳴をあげる。
『こいつはこの世に存在してはいけない生物だ。』
彼が波紋の呼吸を整えると同時に、それは姿を現した。
それは一言で言えば巨大な蜘蛛だった。
体長は4mはゆうにあるだろう。
八本の死体のように青白い足には、その身体が一つの美しい手であるかのように人間の爪が八つそれぞれにきっちり生えていた。
その巨大に見合うハサミの奥で、醜悪な見た目とは対照的な歯並びの良い歯が下卑た笑みを浮かべている。
「いかん!マリスが漏れ出したんじゃ!」
ゼペットが悲鳴をあげる。
ブランカは大蜘蛛に研ぎ澄まされた自慢の牙を剥いた。
「理解不能
理解不能
理解不能」
カレンにはこの状況はパニックに陥っていた。
とても戦える精神状態ではない。
「あやつの中のマリスが集まり、怪物になりおった!!
早く退治せんとまずいことになる!」
「あ、理解『可能』」
「おめえら!お喋りはそこまでだ!
来るぜッ!!」
大蜘蛛は素早かった。
蜘蛛の素早さは家の隅で見かける体長5cmほどのサイズのものでよくわかっていたが、
それが4m越えのサイズともなれば不気味このうえなかった。
子どもの象ほどの大きさの蜘蛛がカサカサと音を立てて迫ってくるのである。
ジョセフは間一髪でその突進を避けることに成功した。
獲物を逃した蜘蛛はいまいましそうに鋏を鳴らす。
「へ.....へへへ。
あっぶねぇー。あの鋏を喰らうわけにはいかねぇからな。
きっと毒が詰まってやがる。」
勇ましい鳴き声が響く。
蜘蛛がジョセフに気を取られている隙をつき、ブランカの牙が襲いかかったのだ。
脚に牙を突き立てられ、蜘蛛が怯んだのをゼペットは見逃さなかった。
流れるような動きで人形のコーネリアを操り、蜘蛛の腹下に潜り込ませる。
「それ!上がれ!」
ゼペットが勢いよく糸を引くと、なんとあの小さな人形が大蜘蛛を1mほど蹴り上げたのだ。
「いまじゃ!JOJO!!」
空中では身動きが取れない。この気を逃す手はない。
「まっかせなさーいッ!!」
ジョセフは跳躍した。
狙うは無防備な腹。
脚に波紋を込め、狙いを定める。
「喰らえ!波紋キーーーーック!!」
捉えた!
その場の誰もがそう思っただろう。
蹴りが入り、蜘蛛は地面に叩きつけられるのだ。
誰もがそう確信していた。
しかし、そうはならなかった!
ならなかったのであるッ!!
次の瞬間ッ!地面に倒れ、苦痛に身を歪めるのは大蜘蛛ではなくジョジョのほうだった!!
ジョジョは絶叫した。
彼の脚には蜘蛛の鋏によって生々しい傷がつくられていた。
そこから体内に注入された猛毒は、ジョジョの想像を遥かに超える焼けるような痛みをもたらした。
すぐに治療しなければならない。
毒は着実に彼の身体を蝕んでいく。
「なぜじゃ!?なぜあの体勢から反撃ができるのじゃ!?」
ゼペットは信じられなかった。
タイミングは完璧だったのだ。
一体なにが蜘蛛に反撃のチャンスを作り出したのか。
「あ!あれを見て!あれを!」
気づいたのはカレンだった。
彼女が指差す先に伸びていたのは、糸をだった。
それもゼペットが扱う糸とは全く異なる材質だった。
粘り気がある、強靭な一本の糸。
片方は近くの地面に。
もう片方の伸びる先は........
「糸は蜘蛛の尻からでている!
これは蜘蛛の糸!!!そうか、そういうことか!!」
蜘蛛がブランカに噛みつかれたとき、すぐに蜘蛛はゼペット達の作戦を読んでいたのだ!!
噛みつかれた瞬間、蜘蛛は近くの地面にほんのちょっぴり糸を出して身体を地面に固定したのだッ!
そう『人形に蹴り挙げられても身体が大きく浮き上がるのを止められる』ように!
コーネリアの攻撃で身体を浮きあげられた蜘蛛。
しかし、糸の張力により身体の上昇は途中で停止!!
完璧にタイミングを合わせていたジョジョだが、逆にそれが仇となり蜘蛛の途中停止に対応が遅れたのだ!
結果、蜘蛛の毒を受けてしまったのだ!!
「起きて!!起きて!!」
カレンは必死にウルに呼びかける。
悔しいが恐怖に負け、武器も持たない今の自分では戦力にならない。
しかし、この男なら!悪魔の力をこの男ならこの絶望的な状況を打破してくれるかもしれない。
「起きなさい!こら!」
「うるせえなあ...
騒がしいのは俺の心の中だけにしてくれ......」
「なにわけのわからないこと言ってるの!?
お願い!立って!このままじゃジョジョが!!」
凶悪な鋏は身動きがとれないジョジョの命をいまにも刈りとろうとしている。
「!?なんだありゃあ!
糞っ!いまいくぞ!!」
ウルは獣のような咆哮をあげる。
取り戻したばかりの力を解放するのだ。
父から受け継いだ悪魔の力を。
愛する女を喪ってからは、また苦しみながらしか使えなくなった力を。
また誰かを守るために使うのだ、
「こ、これが......」
「遅いぞ!ウルよ!」
「へ...へへへ。全くだぜ。」
「バウッ!」
悪魔に変身する力を。
緑色の鎧のような皮膚
風に揺れる枯葉のような逆立ったオレンジの髪
お札のような不思議な模様が刻まれた布にびっしりと覆われた足
風の悪魔・マラキア
自由な者への憧れ、不自由な自分への憐れみが生み出す風の妖精。
それがいまのウルだ。
マラキアが腕を振るうと、突風が巻き起こる。
鎌鼬などという生易しいものではなかった。
その風は大蜘蛛の巨体を支える強靭な糸を容易く斬り裂き、
その身体を高く高く舞いあげる。
再び突風が吹き荒れ、今度はマラキアの身体を蜘蛛の真上に導く。
咆哮をあげ、マラキアの風を纏う拳が蜘蛛を貫いた。
腑を撒き散らしながら地面に落下する大蜘蛛。
しかし、最期に一矢報いようとマラキアに毒牙をつきたてようと鋏を喉元に伸ばす。
ざまぁみろ、貴様も道連れだ。
あざ笑うように大蜘蛛が口を歪める。
あとほんの2cm......1cm.....
しかし次の瞬間。その望みが叶うことはなくなった。
白い影が大蜘蛛の鋏を食い千切っていたのだ。
悲鳴をあげながら消滅する蜘蛛に、ブランカはあくびをしながらとどめをさした。
「いててて。全く一時はどうなることかと思ったぜ。」
脚に包帯を巻きながらジョジョがぼやく。
処置が早かったので左手に続いて脚まで失うハメにはならずに済みそうだ。
「怪物はお前の中から飛び出して来おったぞ。」
「悪い 悪い。俺の中の怪物どもの魂が騒がしくなっちまってよお。」
「怪物どもの魂!?」
カレンはブランカの咥えている大蜘蛛の残骸の鋏をみた。
「なんだよおめえ『味もみておこう』ってのか?
俺がこの足でしっかり味わったっつうのによォ~」
ジョジョはブランカと遊びはじめた。
「こやつは特別な能力の持ち主でのう。
倒した怪物の魂を身体に封じ込めることができるのじゃ。」
ゼペットがカレンに説明をする。
「それで、悪魔に変身できるってわけ。」
「........」
「ま、んなことよりさっさとパリのじいさんのアパートに向かおうぜ。
ここじゃあゆっくり休めねぇよ。」
「それもそうじゃな。
よし!出発するとしようかのう!」
乙ー
出来れば「の前にキャラの名前を書いてくれると嬉しい
ーフランスのゼペットのアパート
ゼペットは本棚に積まれた大量の本を漁っていた。
ジョセフ「じいさん。ウルにかけられた呪いっつーもんの正体は掴めそうか?」
ゼペット「確かこの辺に.........
あった!これじゃ!」
ゼペットが取り出したのは一冊の古ぼけた古書だった。
それによると、ヤドリギは使われた者を楽園に導く聖遺物といわれているらしい。
ウル「つーことは、こいつが俺 をその楽園に導いてくれんの?」
ゼペット「そういうことじゃな」
ジョセフ「嘘くせえなぁ。」
ジョセフはかつて自分に埋め込まれた二つの指輪の事を思い出す。
あの手のものに関わるとロクなことにはならないのだ。
ウル「呪いを解く方法は?」
ゼペット「それがさっぱり!」
ウル&ジョセフ&ゼペット「...................」
??「あ、あの!この服、サイズが.........」
でて来たのはカレンだった。
ドイツの軍服では目立ちすぎるので、彼女には着替えてもらっていたのだが、その服というのが.......
ウル&ジョセフ&ゼペット「おおおおおおおおお!」
元々はコーネリアに着せるサイズだったのでカレンにとってはかなりタイトであり、結果的に豊満なボディラインが非常に目だつ格好になってしまっていた。
「えっ!ちょ...ちょっと!」
男三人は正座した状態でカレンを上から見上げる。
嗚呼これこそが楽園・天国なのだろう。
早る気持ちを抑えるため、彼らは素数を数えて心を鎮める。
しかし、下卑た笑い声が彼らの口から無意識に零れ落ちる。
その様子を見たカレンの中で、何かがプッツンした。
「[ピーーー]!!このヘンタイども!!」
爆竹が爆ぜたような快音が三つ響き、哀れな男たちは天国から追放された。
ジョセフ「良い張り手だったな...」
ウル「うん...」
ゼペット「わし、星しか見えんかった.....」
三人の頬には大きなモミジがくっきりでていた。
ウル「俺は見たよ。」
ゼペット「なんじゃと!?一体何を!」
ウル「天国」
ジョセフ「て、天国.......
俺も見たかったなぁ。」
カレン「三人とも真面目にしなさい!
それにジョジョ!貴方新婚なんでしょ!?
いまからそんなんじゃ
いつか浮気がバレて奥さんにどやされるわよ!」
ジョセフ「し、しねえって浮気なんて!!」
ゼペット「そいつは立派な心意気じゃのう。」
ウル「グレートだぜ。」
しねえって浮気なんて!(女子大生孕ませながら)
キャラ名入れてくれたからメッチャ見やすくなった、乙ー
あとメ欄にsaga入れた方が良いよ
sagaの意味がよくわからないんス
age sage ならわかるんですけど
意味を教えてエロい人
メール欄の所にsagaって入れると
死ねとか殺すとかNGワードに引っかかる奴が引っかからなかったり
スレ欄の上に行くから更新されてるのがわかりやすいのさ
あ、理解『可能』。
ありがとうございます。
んじゃ 投下します。
ゼペット「それにしてもカレン。
お主の腰のそれは.......」
カレンの腰には古ぼけたレイピアが帯刀されていた。
ゼペットが学生時代に練習に使っていたものだ。
カレン「部屋に置いてあったの。
使わせてもらうわよ おじいさん。」
ウル「おいおい。大丈夫かよ?」
ジョセフ「なんつーか危険な香りがプンプンするぜぇ~。」
カレン「安心して。腕には自信があるのよ。」
手首を使って器用にレイピアを回すカレン。
自信があるというのは虚勢ではないようだ。
ゼペット「ええよええよ。
そんなナマクラでよければ。
!?何者じゃ!
屋根の上になにかおるぞ!!
突然の襲撃だった。
天井に張られたガラスが粉々に砕け散り、空いた穴から教会であった爪の兵隊達が重力を感じさせない動きで降り立つ。
ジョセフ「へへ。面白くなってきたじゃあねぇか。
乙ー
爪の兵隊が鋸で弦を弾くような金属質な雄叫びを挙げると、ジョセフたちの足元から突然爆炎がほとばしる。
ジョセフ「チィッ!紋章魔法っつーやつか!?」
この世界には、かつてソロモン王が使役したソロモン72柱の悪魔の名が刻まれた紋章の数々が人しれず眠っているらしい。
そして、それらを身につければその悪魔の力の一部を借り受けることができるのだ。
それらの総称が『紋章魔法』である。
無論、ウルほどの能力が得られる訳ではないが
それでも実戦ではこれ一つ身につけるだけで大きなアドバンテージを得ることができる。
幸い先程の爆炎の直撃は避けられたが、次を避ける自信は無い。
紋章魔法を持たないものは、なす術はほぼないのである。
ウル「どうするよジョジョ。
何か策があるのか?」
ウルが不敵に笑うジョセフに気付く。
ジョセフ「あぁ!あるぜ!
とっておきがな!!」
彼は腰をゆっくりと屈めた。
紋章魔法を使えないものができる対抗策はただ一つ。
それは.......
ジョセフ「逃げるんだよォ~~~!
お前らどけどけ~い!!!」
ウル「やっぱり.......」
一行はアパートを飛び出し、路地裏に出た。
先頭からウル・ゼペット・カレン・ジョセフ・ブランカ。
その背後から爪の兵隊が風のように追いかける。
追いつかれるのは時間の問題だろう。
ゼペット「もう限界じゃ!
追いつかれるぞ!!」
ブランカが、鋭い雄叫びを挙げる。
いつの間にか、周りはすっかり囲まれていた。
爪の兵隊「観念するんだな。大人しく死んでもらうぞ。
どうした!何がおかしい!!」
しかし、それでもジョセフは不敵に笑う。
爪の兵隊「こいつ!見ろよ!!小便垂れてやがるぜ!!
情けねえなぁ大の大人が!!
そこの犬っころ以下だなおめぇはよォ?」
ジョセフの足元には確かに大きな水たまりができていた。
敗北を認めた者が恐怖に負けて漏らし、
絶望して笑うというのは良くあることだ。
しかし、ジョセフのそれは敗北を悟った笑みではない。
勝利を確信したときの笑みだ。
ジョセフ「かかったな アホゥが!!」
ジョセフの右手から太陽の光のようなものがほとばしり、あたりを照らす。
そして、足元の水たまりに手を浸すと、その光が液体を伝って疾走する。
ジョセフ「これは小便なんかじゃあねぇぞ!
扉から出たときにブランカに撒くように頼んどいたのさ!
賢い狼で助かったぜ。
さぁ、覚悟しな!!
『植物油』は波紋をよぉく通すぜ!?」
爪の兵隊の足元にまでばら撒かれた油は、目論み通り彼らに波紋を浴びせた。
しかし、全員に浴びせることはできなかったようで、何人かが立ち上がる。
ゼペット「しつこい奴らじゃのう!!」
カレン「ジョセフ、ブランカ!!
今すぐその場から離れて!!」
声のした方を見ると、カレンが跳躍しながら空中で剣を構えていた。
その刀身は彼女の髪のように燃えさかる炎が灯っている。
ジョセフ「そ、そうか!?
へへ。何つーことを考える女だおめーよォ!」
カレンが剣を投げた。
ジョセフがブランカを抱えて逃れる。
油の撒かれていない処へ。
カレンの放った炎が及ばぬ処まで。
油に引火して引き起こされた爆炎に巻き込まれない処まで。
凄まじい爆音とともに、5mほどの火柱が巻き起こった。
紋章魔法を持たない者が出来ることはただ一つ。
戦う『覚悟』をすることである。
レニ「お前ら!!一体何があった!?」
レニが駆けつけると、そこには全身がボロボロになり、毛髪が焼け焦げた部下達の姿があった。
爪の兵隊「申し訳ありません レニ様。
奴ら、思った以上に手強い相手でございます。
どうかお気をつけて.......」
爪の兵隊は息も絶え絶えである。
レニ「ふんっ!俺がそう簡単にやられるかってんだ!!
おめーらはさっさとその [ピーーー] みてーな頭を剃って俺のような男らしい頭にしてこい!」
爪の兵隊「おれのこの頭がサザエさんみてぇだとぉ~~!?!?」
爪の兵隊が青筋を立てて憤る。
が、レニに頭をはたかれて気絶してしまった。
レニ「全くしょうがねぇやつらだぜ......
やっぱり俺が直接出向いてやるしかねぇか!」
ゼペット「ふぅ。危ないところじゃったのう。」
一行は辛くも追跡を逃れ、パリの街・シャンゼリゼにたどり着いた。
ジョセフ「全くだ。一歩間違ったら俺ら仲良く焼き肉だったぜ。」
ブランカ「バウバウ!」
カレン「ごめんなさい。でもあなたたちなら大丈夫と思ったのよ。
あら?ブランカ、何を咥えているの?
って 何よこれ!!?」
ブランカの口には、一枚のカードが収まっていた。
取り出して見ると、それは筋肉モリモリマッチョマンの変態な男がプリントされているブロマイドだった。
ウル「なになに 『Mr.ケンゾー』?
アメリカ在住の宗教家にして風水士。本人曰く、良質な睡眠と飲尿療法が健康の秘訣。
げぇ~気持ち悪い........」
ジョセフ「んなもん拾ってくんじゃあねぇよ!
おい、捨てちまおうぜ!」
ゼペット「待て待て。捨てるのは勿体無い。
とっておこう。役に立つかもしれん。」
ゼペットの一言に全員が養豚場の豚を見るような眼をする。
ジョセフ「......じいさん、そんな趣味が...」
ウル「ヒくわー...」
ブランカ「クゥーン...」
ゼペット「え?ちょっとみんな勘違しとらん?」
カレン「いや、ホントに 。 マジで近づかないで下さい。」
ゼペット「ちがーう!!!
ワシの知り合いにこういうのが好きなのがおるんじゃ!!
断じてワシにそんな趣味は無いッ!!」
ジョセフ「どんな知り合いだよ.......」
乙ー
ウルたち一行はヤドリギの呪いを解く鍵を探すためウェールズに向かうことにした。
そこには彼の知人であり、世界的大魔術師 ロジャー・ベーコン が住んでいる。
彼ほどの大魔術師ならヤドリギのこともなにか知っていると見ての選択であった。
しかし、それにはサピエンテス・グラディオの追跡をさけてパリを脱出する必要があった。
ゼペット「何か良い方法はないかのう?」
彼らはベンチで作戦を練る。
ウル「飛行機かっぱらうってのはどうだ?
確かジョジョは運転できるっつってたよな?」
ジョセフ「あぁ。『落ちなきゃ』な。」
過去にジョセフが乗った飛行機が二回も落ちたことを思い出す。
カレン「まさか!飛行機なんて早々落ちるものじゃないわよ?」
ジョセフ「...........」
ゼペット「まぁ。それは最終手段じゃな。
ワシらは人しれずにパリを脱出しなければならんのじゃから。」
ブランカ「クゥーン!
!? バウッバウッ!!」
皆の話を横で聞いていたブランカが、突然吠え出した。
ゼペット「どうしたブランカ!?
まさか奴らか!?」
ブランカの視線の先には、身なりの良い紳士と一匹のボストン・テリアがいた。
怪しい紳士「怪しいものではありませんよ。
何やらお困りのようですので、気になってねぇ。」
ウル「こっそりパリを脱出してえんだけどよぉ。
なかなかそんな上手い話が無くてな。
おっちゃん何か知らねーか?」
怪しい紳士「上手い話.....ねぇ。
ところで話は変わるが貴方、ずいぶん素晴らしい狼を連れているじゃあありませんか。」
紳士の視線が舐めるようにブランカを見つめる。
ウル「あんたのよりはね。
つーかそれ狼じゃねぇし。」
怪しい紳士「申し遅れました。私はアーネスト。
どうです?私の『ストゥージズ』とその狼が戦い、貴方がたがかったらその『上手い話』を差し上げましょう。」
ストゥージズと呼ばれたボストン・テリアが尊大な態度でブランカの前に出る。
ウル「ホントか!?おし!行けブランカ!!!
こんな白黒犬、楽勝だぜ。」
カレン「ボストン・テリアよ。
ふふふ 可愛いじゃない。」
カレンがストゥージズの頭を撫でようとすると、彼女の頭に飛びついた。
そしてそのまま髪の毛を口で毟りながら、顔面に屁をした。
カレン「..........」
アーネスト「すまない。
彼のは人の髪の毛を口で毟りながら、顔面に屁をする癖があってねぇ。
悪く思わないでくれたまえ。」
カレンの髪の毛からベタベタとしたよだれと悪臭が漂う。
カレン「ブランカ。そいつ殺せ。じゃなきゃ私が
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!!!」
暴れるカレンを男三人でなんとか抑えつける。
ジョセフ「ブランカー!!
ここは俺たちに任せろ!!
お前はさっさとそのクソ犬と戦ってくれえええ!!」
ブランカ「バウッ....」
なんだか面倒なことに巻き込まれたと思いながらもブランカはストゥージズに向き直る。
女性にあのような振る舞いをする輩は見過ごせなかった。
ブランカ「バウッ!(どうもお坊っちゃん育ちが身に染み込み過ぎる、甘いな・・・。)」
ストゥージズ「ワンッ!(ふん、お前らにはお似合いだ。)」
スタンド?
↑上に出てるストゥージズは単なる犬のボストン・テリア(血統書付き)です。
三部のイギーの先祖くらいに考えて下さい。
ちなみにストゥージズはイギーの元ネタ『イギー・ポップ』が組んでたバンドの名前から拝借しました。
二体の獣は互いを見据えて対峙する。
カサリ、と秋の陽に照らされた木の葉が美しい石畳に落ちる。
それが戦いの狼煙だった。
ストゥージズが駆け、ブランカの毛皮に爪をたてる。
ブランカはそれを身体を軽く揺すって振り落とし、体勢を崩したストゥージズに頭突きを見舞う。
全く無駄の無い動きだ。
正面から向かうのは得策では無いと判断したストゥージズは自らの小柄な身体を活かし、複雑に動き回りながら気を伺う。
一撃、二撃、三撃とストゥージズの犬牙がブランカを貫こうとするが、当たる気配は欠片も無い。
のらりくらりとストゥージズの攻撃をすり抜けてしまう。
ブランカは息一つ見出してはいなかった。
ストゥージズは憤り、吠えた。
自らの技量の無さ故では無い。
ブランカが本気で戦おうとしていないということに憤った。
ストゥージズ「何故だ!?何故攻撃してこない!?
今の攻防だけでも俺を仕留めるチャンスはあった!
そしてお前はそれを可能にするだけの技量があるッ!
なのに何故使わない!?」
ブランカはやれやれと頭を振る。
ブランカ「俺は自分が対等かそれ以上と認めた者にしか全力はださん。
貴様などこの牙にかける価値も無い。」
ブランカのストゥージズに酷く軽蔑した目を向ける。
ストゥージズ「貴様!!俺を侮辱するか!」
ブランカ「侮辱されるような態度だから侮辱されるのだ!
それがわらんうちは俺に勝つどころかこの場から一歩も動かす事はできんぞ?」
「!?」
言われてストゥージズは初めて気付いた。
今しがたの攻防のあとでも、ブランカは最初の場所から全く動いていなかった。
こいつは俺には同じ土俵に立つ事すら認めていないのだ。
プライドを踏みにじられたストゥージズが吠える。
ストゥージズ「ふざけるな!!
俺と戦え!俺の誇りに傷をつける気か!る」
ブランカ「誇りだと!?貴様が誇りを語るか!?愚かな飼い主に飼われる愚かな者め!!
誇りとは自らの力を正しく自覚し、それを以て挑戦する事!!
貴様のそれは断じて【誇り】とは呼ばん!【驕り】だ!」
ストゥージズはブランカに震え上がった。
彼の獲物を喰う獣の、雄の眼に。
ブランカ「貴様は何だか分かるか!?
獣か?
犬か?
虫か?
蛙か?
ケダモノか?」
ストゥージズ「お、俺は......」
ストゥージズにはその答えがわからない。
全部だ。とでも答えたら彼は許してくれるだろうか。
ブランカ「わからんだろう?貴様にはわからんだろうストゥージズ!
教えてやろう!貴様は『愚者』だ!ストゥージズ!
自らの力量も理解せず、驕りを誇りと勘違いして人前で胸にぶら下げた愚か者!!
......それが貴様だ。」
ストゥージズは膝を折り、うなだれる。
何も言い返せなかった。
その通りだと思った。
飼い主の強さを自分の強さと誤解した馬鹿だと思った。
悔しくて悔しくてストゥージズは唸り声をあげる。
ブランカ「悔しいのか?
お前は変わりたいと思っているのか?」
ブランカが声をかける。
ストゥージズ「悔しいさ.......」
答えながらちらりとブランカを見る。
相変わらず一歩も動いていない。
変わるなら自分から行動しろ。
彼はそう言っているのだろう。
ストゥージズは覚悟を決めた。
ストゥージズ「変わりたい!お前のように誇りある生き方がしたい!
どうすればいい!?教えてください!」
もう知るか。ストゥージズは恥も外聞もプライドも投げ捨てた。
どうせ全部ニセモノだ。変わりたいならここに全て置いていく。
それを見たブランカはニヤリと笑う。
ブランカ「少しはマシな顔になったな!
いいだろう。一先ず俺と牙を交えるだけの資格はある!
来い!ストゥージズ!
全力で相手をしてやる。」
ブランカがゆらりと前に出る。
風格からも漂う兵(つわもの)のプライド。
今、自分もそれを手に入れる為の門の前にいるのだ。
ストゥージズは迷い無く駆ける。
恐らく自分は負けるだろう。
だがそれでも彼は勝つつもりでブランカに牙を剥く。
チンケな驕りからでは無く、犬の誇りから
彼は喰らい付いた。
ブランカ「見事......」
何が見事なものかとストゥージズは自嘲する。
あえて言うなら見事に敗北したことくらいではないか。と。
しかし、不思議と清々しい気分だった。
悔しくはあった。だがそのことより、次にどうすべきかが彼の頭を駆け巡る。
ブランカ「先ほどの問い。
『どうすれば誇り高い生き方ができるのか』だが....
残念ながら明確な答えはやれない。
それに、今お前は自分自身で見つけようとしているようだ。
この傷がその証拠だな。」
ブランカの肩にはストゥージズの歯型がくっきりとついていた。
ブランカ「何年かかるかわからんが、挑戦してみるがいい。
もしかしたら、その牙がいずれ『世界』に届くかもしれんぞ?」
ブランカがニヤリと笑う。
そこにはもう侮蔑の影は無く、奇妙な友情すらあった。
ストゥージズも笑った。
やってやろうじゃねぇか。と。
数十年後、彼の子孫が本当に世界を救うことになるとは、このときまだ誰も知る由もない。
終わった?
↑もうちっとだけ続くんじゃ
パチパチパチと乾いた拍手が響く。
アーネストだ。
アーネスト「素晴らしい!
こんな良い戦いを見たのは初めてだ!
約束通りパリへ抜け出す方法を教えましょう。」
ウル「おし!頼むぜ。」
アーネスト「このパリは、街全体に地下鉄線路が貼り巡られています。
使われなくなった廃線もそのままにね....
その中にパリを抜け、ルアーブルの近くに出る線路があります。
これがその廃線図です。」
アーネストがスラスラと手帳に簡単な地図を書いてウルに渡す。
ゼペット「たしかルアーブルからはウェールズの近くに出る船がある!」
思わぬ朗報にゼペットが喜ぶ。
カレン「これで次の行き先は決まったわね。」
カレンが頭からよだれをポタポタ垂らしながら安堵する。
一行はパリの地下鉄駅から線路に入り込み、ルアーブルを目指す。
薄暗い線路はランタンで仄かに照らされ、ネズミが蔓延っていた。
ジョセフ「薄っ気味悪りい場所だなぁオイ。
出口はまだか?」
ジョセフがゼペットの持つ地図を覗き込む。
ゼペット「もうちーと先じゃなぁ。」
ウル「さっきからそればっかじゃん。」
カレン「2人ともワガママ言わないの。
歩いてればきっと着くわ。」
カレンが息子を諫める母親のような口調で2人をなだめる。
ウル「あ!このトロッコ動くぜ。
これに乗っていきゃあすぐなんじゃねぇか?」
ウルが見つけたのは古ぼけたトロッコだった。
ジョセフ「そうだな。作りもボロいわりにしっかりしてるぜ。
乗っていこう。」
トロッコで逃げるのはこれで二度目だな。
とジョセフがほくそ笑む。
あのときはハッタリでなんとか乗り切ったが、果たして今回の戦いも乗りきれるのだろうか。
歯ぎしりのような音を立てながらトロッコが動き出す。
トロッコは見た目の割にかなりのスピードで線路を進んで行く。
カビ臭い線路ともこれでおさらばだ。
そう思っていた矢先だった。
「はっはっは!逃がさねぇぜ!?」
後ろから野太い声が響く。
「げ!?あいつ!!」
声の主は爪の兵隊の首領・レニだった。
ウル達と同じようにトロッコを使って追いかけていたのだ。
ゼペット「しつこい奴じゃのう!」
ゼペットが忌々しそうに舌を打つ。
ジョセフ「くくくくく。」
ウル「へっへっへ。」
突然ジョセフとウルがおかしそうに笑う。
ゼペット「どうした!?こんな状況で笑うとは?
まさか、お主たち既に何か策を練っておったのか!?」
カレン「凄いわ2人とも!
一体いつの間に.....」
ブランカ「ワンワン!」
レニはウルたちのトロッコの真横にまで迫っている。
レニ「げへへへへへ。
覚悟しやがれ!!」
レニがトロッコのふちに足をかける。
勝った。とレニは思った。
しかし、ジョセフとウルはそれでも不気味な笑いをやめない。
レニ「てめぇ!!なにがおかしい!!」
ジョセフ「何がおかしいって?
おめえがこんな場所にいることがだよ!!
お前はここに来た時点ですでに敗北していたのだ!」
その言葉をレニは豪快に笑い飛ばす。
レニ「な~にい~!?俺様が負けだとォ!?
んなわけあるかこのボケェ!!」
レニが足に力を込め、いよいよウルたちのトロッコに乗り込もうとする。
しかし、レニの身体がウルたちに届くことはなかった。
レニの乗るトロッコが勝手に遠ざかって行くのだ。
爪の兵隊たちがあたふたする。
何故そうなったのか。
答えは簡単。
レニはウルとは別の線路を使ってしまったのだ。
当然、線路は途中で大きく分かれ、遠ざかってしまう。
青ざめるレニを一流の棋士のような動きで指差し、ジョセフが告げる。
ジョセフ「てめぇの次のセリフは『こっちかよ!?』だッ!」
レニ「こっちかよ!?」
トンネルに吸い込まれ、レニは消えて行った。
乙ー
ブランカわんかっこ良いね、やっぱ!
面白そうなの見つけた
今から読むわ
蛇口を捻るような音を立ててトロッコが止まる。
ここが終着点のようだ。
カレン「ふぅ。結局ばれちゃったわね。
でも阿保な追っ手で助かったわ。」
ウル「ホントホント。いきなり勝手に遠ざかっちまうんだもんなぁ。
びっくりしちまったぜ。」
ウルの発言にカレンは怪訝そうに眉を顰める。
カレン「びっくりって....。
あなたも線路のことを知ってたから笑ってたんじゃなかったの?」
あらかじめジョジョと二人で線路に細工をしていたのだとカレンたちは考えていたのだ。
ウル「いや。全ッ然考えてなかった。
なんかみんな笑ってっからとりあえず笑ってだけだぜ?」
カレン「...............」
ゼペット「先、いくか?」
ジョセフ「あぁ。」
ブランカ「バゥ。」
カレンを先頭に、ゾロゾロとトロッコの先の粗末な扉に向かって歩き出す。
ウル「ちょっとちょっと。何そのかわいそうなもの見るみたいな目は!?」
腐りかけた扉を開けるのに苦労しながら、なんとか入り込む。
ジョセフ「フゥー。やっと辛気臭い場所から出られたぜ。」
カレン「追っ手もいないみたいだし良かったわ。」
??「残念ね。ちゃあんといるわよ!」
突然高飛車な声が響く。
一同が声の主を探ると、そこには紫のボンテージに身を包んだ妖艶な美女が佇んでいた。
男三人がその豊満な身体に釘付けになる。
ウル「ゴクッ......」
ジョセフ「デケェ......」
ゼペット「ハァハァ....」
カレン「もう突っ込まないわよ。」
扇情的な美女が芝居かかった口調でポーズを決める。
???「私はベロニカ。
サピエンス・グラディオの美しき女王!
これからお前たちを [ピーーー] して [ピーーー] して [ピーーー] してやるわ!」
ウル「おいおい!いいのかよこんなキャラ?!
セリフ半分ピー音でうまってんぞ!?」
ウルたちの様子をあざ笑うかのように余裕綽々な態度でベロニカはそばの椅子に腰掛ける。
ベロニカ「いやぁねぇ。これだから童貞どもは。
無様ったらありゃしない。」
ゼペット「いや、ワシ妻に先立たれたし。」
ジョセフ「俺、新婚だし。」
ウル「お..俺はええと...アレだ。
うん、なんていうかその........」
カレン「ウル。無理しないでいいの。」
ウル「カ、カレン......」
カレン「よしよし。いい子ね。気にしなくても大丈夫よ。」
ベロニカ「オカンか。」
ウルかわいい乙ー
何気に痴女さんが核心めいたことを
ベロニカ「さぁ!私たちに殺される覚悟はできて?
ここが文字通り貴方たちの墓場となるのよ!」
ベロニカがそういって手をかざすと、背後から霧が立ち込めあたりを包み込む。
ジョセフ「ハッ!
姉ちゃん、言葉は意味をよぉく調べてから使いな!
『私たち』に『文字通り』だぁ~?
ここは地下鉄でお前は一人だろ?
頭オカシイんじゃあねえのー?」
ジョセフが馬鹿にしたように大笑いする。
ウル「.....残念ながらその言葉はマジみてぇだぜ?」
ジョセフ「あん?
なに言って............」
ウルたちは冷たい汗をびっしょりかいていた。
あまりの事態に身体がついていけなかった。
確かに今の今までここは『地下鉄』で敵は『一人』だったはずだ。
なのに、なのになぜ、
ここが『墓場』で、『大量の死体』が迫っているのだ。と。
カレン「きゃああああああああああ!!」
ゼペット「な、なにが起こっておるんじゃあああああ!?」
ブランカ「キャンキャン!!!」
突然現れた死体の軍勢に、ウルたちは完全に方位されていた。
パニックに陥るウルたちを尻目に、ベロニカがほくそ笑む。
「上出来よ。
私の可愛い可愛いペットちゃん。
ねぇ?エンヤ。」
oh...登場早々既に従属させられちゃってたのか
ベロニカの背後に一人、隅で震える若い女性の姿があった。
名をエンヤ。
顔立ちは美人の類ではあったが、彼女は普通の人には無い二つの特徴から浮ついた話どころかまともな幸福も送れない惨めな人生だった。
一つ目は生まれつき『両方の手が右手になっていた』のだ。
近づいて来た男たちも、満足に手もつなげない彼女の手をみて表情を変え去ってしまった。
そしてもう一つは、彼女のもつ不思議な能力のせいだった。
それは彼女にだけ見える奇妙な霧だった。
その霧は普通の人間にはただの濃霧だが、彼女はその中に巨大な王冠を身につけた骸骨のヴィジョンをみた。
その骸骨は、生物の傷口に霧を操って侵入させることができた。
始めてこの能力を自覚したのは、10歳のときだった。
自分の手を笑った意地悪な男の子を突き飛ばしたとき、彼の肘を擦り剥かせてしまった。
激昂し、殴りかかろうと迫る彼の腕が眼前に来たとき、彼女は心の底から敵意をもって彼を憎んだ。
こいつを痛めつけてやりたい。と。
エンヤの周りを霧が包む。
すると、次の瞬間彼は攻撃をやめ、腕を抑えてのたうちまわった。
見ると、先ほどの彼の肘の傷がコイン大の大きさにまで拡大していた。
叫び声を挙げながら男の子は逃げるようにさってしまった。
俺の肘をみてくれ。
こんな穴が空いちまった。
あいつがやったんだ。
あいつはバケモノだ。
だから手が変なんだ。
病院に担ぎ込まれた少年がそう訴えて警察がやってきたが、彼女がやったという証拠はどこにもなかった。
エンヤ「ざまぁみなさい。
私をいじめるからそんな目に会うのよ。
さぁ、次は誰に復讐してやろうか。」
エンヤはほくそ笑む。
きっと私はトクベツなんだ。
だからこんなチカラがある。
エンヤは自分をいじめた相手を次々襲った。
両の眼窟をからっぽにしてやったこともあった。
身体に開けたら穴から霧を侵入させて人形のように操ることを覚えてからは、無理矢理盗みを働かせて警察の御用にしてやったこともあった。
いくらやっても証拠は残らなかった。
だが、残るものはあった。
人々の畏れの目だった。
証拠が一切なくとも被害者が口々に彼女の名を出すため、町の人々は彼女を疑いだす。
彼女の手のこともあり、人々が彼女の家を糾弾し始めるのに時間はかからなかった。
硝子が割れ、エンヤの家に石が投げ込まれる。
壁は既に見るに耐えない罵詈雑言の落書きで埋め尽くされ、元の色がなんだっかさえわからない有様だ。
エンヤの両親の精神も限界に達してきた。
些細なことで喧嘩が絶えず、完全に夫婦関係は崩壊してしまっていた。
エンヤの母「なによ!?これっぽっちしか稼ぎが無いのかい!?
これじゃあ食べていけないわ!!」
エンヤの母が父親の稼いだ銭を床に投げつける。
乾いた音と共に散らばるのは小銭ばかり。
しかも数える程しか無い。
エンヤの父「仕方ねぇだろ!?おかしな噂が広がって俺に仕事がまわってこねぇんだ!」
日に日に一家は困窮していった。
今はもうその日の食料にすら苦労する有様である。
エンヤは憤慨した。
何故正しいことをしているのにこんな辛い目に私が会わなければならないのか。
私は被害者だ、善だ。
奴らは加害者で悪。
悪を裁くものが必要なのだ。これは正しいことだ。
そうだ。私は『正義』なんだ。
いつしか彼女は、この霧に『正義(ジャスティス)』と名付けていた。
無慈悲な霧とともに現れ、被告を裁く正義の鉄槌だ。
この能力は勝利そのものの象徴なのだ。
『正義は勝つ』のだ。
しかし、正義の形など時代、国、人、宗教、政治、金など様々な要因で生き物のように変化するものである。
故に幼い彼女は理解できなかった。
必ずしも自分の正義が他者と会いいれるものであるとか限らないということを。
ある日、エンヤは両親に呼び出された。
建て付けの悪い扉を開け、中に入るとそこには自分の両親、
そして自分が復讐した子供とその両親の姿があった。
エンヤ「何よ?」
不機嫌そうに眉をひそめる。
こんな状況で顔を合わせたく無い面子ばかりだった。
エンヤの父「こっちに来い。」
有無を言わせずエンヤの腕を引っ張り、皆の前に彼女を立たせた。
エンヤ「父さん。なんの真似?」
エンヤの父「謝るんだ。」
エンヤ「?」
エンヤには父の言葉の意味がわからなかった。
エンヤの父「皆に怪我をさせたり、盗みをさせたことを謝れと言っているんだ。
お前がやったんだろう。」
エンヤ「ちょっと待ってよ!?
警察が私は無関係っていってたじゃあない!
なのになんで私が謝らなくちゃあいけないの!?
父さん、母さん!私を信じて。」
もちろん全て彼女の仕業だ。
だが、立証は不可能なのだ。
あの霧の亡霊は誰にも見えていないのだから。
だが、事態はエンヤの予想とは全く異なるものへとシフトする。
「いいからさっさと謝れよ。バケモノ。
じゃなきゃお前らは飢え死にだ。」
口を開いたのは、最初にエンヤが復讐した男の子だった。
彼はこの町の有力者の息子である。
エンヤ「じゃああんただったのね!?
父さんの職場に圧力を掛けてたのは!!
警察に突き出してやる!!」
こいつどころか、こいつの両親さえも地獄に叩き落としてやる。
正義の力で裁かれるがいい!
だが、それを聞いた彼は狂ったように笑い出す。
「あはははははははは。
残念でした。警察も裁判所もパパの息のかかった子飼い犬さ。
逆にお前ら一家を冤罪にしちまうかもなぁ?
覚えておきな!
正義なんてのは金で簡単に買えちまうんだよ!!
この町にお前の味方なんて一人もいやしないのさ!」
エンヤ「え?」
それを聞いた両親があわてて彼にひざまずく。
エンヤの母「そ、そんな!どうかご勘弁を!
私たちはもうなにもないのです!」
エンヤの父「お願いです。どうかこの通り!
それだけはお許し下さい。
エンヤ!お前も頭を下げろ!!」
目の前が真っ暗になったエンヤは、抵抗することも忘れて両親に頭と膝を下げささせられた。
理解できなかった。
なぜ、この二人は私と同い歳の子供に奴隷のように跪けるのだ?
なぜ、私が頭を下げさせられているのだ?
なぜ、あいつは勝ち誇って笑うのだ?
なぜ、正義はこれを罰しないのだ?
認めない。
これが正義だなんて。
絶対に認めない。
正義なのは
私だ。
「『正義(ジャスティス)』ッ!」
霧が立ち込め、あたりを包む。
骸骨の王があらわれ、まだ塞ぎ切っていない彼らのコイン大の穴に霧を注入する。
「な、なんだこれ!?」
操られた子供たちは、糸のついた人形のように足を動かしながら、台所の包丁を握りしめる。
そして、それをそのまま各々の両親の足に突き立てた。
悲鳴が響く。
あえて致命傷にはしなかった。
より苦痛を与える為と、新たな傷口から操る駒を生み出すために。
今度は彼らの両親に霧を注入する。
母親たちは包丁が刺さることも構わずに自ら腹を痛めて産んだ我が子の首を締め上げ、紫色に変える。
父親たちは拳銃を取り出し、血を分けた我が子の顔をザクロに変えた。
「お、おがあ.....ざん」
「パ......パ」
「嫌ぁ....。助けてぇ。」
ある者は白眼を剥き、苦痛の涙を流しながら彼らは両親の手で息絶えた。
あるいは自らの手で両親を殺め、苦悶の表情で振りたくもない凶器を振りかざし続ける。
そして、命が尽きても彼らの凶行は止まらない。
屍と化した彼らは、生き残った者たちを殺めるために動き続けた。
エンヤの両親「な、なんておぞましい。
エンヤ!お前がやったのか!?
今のことも!いままでのことも!」
エンヤ「そうよ。私がやったの。
悪者に正義の裁きをくわえているの。
素敵でしょ。」
エンヤは両親に笑いかける。
これで仕事はまたきちんとできるしもう自分をいじめる人間もいない。
だが、運命はとことん彼女を裏切った。
エンヤの父「バケモノめ!!
お前が、お前のせいで俺はこんな苦労を!!」
エンヤの母「あんたなんか産まなきゃ良かった!
気持ち悪い!来ないで!」
エンヤの中で何かが壊れた音がした。
彼らは今、私を否定したんだな。
すればいい。そんな親、こっちから願い下げだ。
彼女の正義は、自らの両親を完全に否定した。
穴ボコチーズのようになったかつて両親だったモノには目もくれず、エンヤは玄関を出る。
あたりは人だかりで溢れ、血まみれになったエンヤをみて悲鳴をあげた。
あぁ、この町の人たちはみんなそうなんだな。
こんな町、もういらない。
家を包んでいた濃霧は、急減にひろがって街全体を覆う。
瞬く間に町は地獄絵図とかした。
惨劇の町を冷めた目で見つめるエンヤの視界に、人影が現れた。
それは美しい女の子だった。
年齢はエンヤと同じか少し上くらいだろうか。
豊かな金髪は絹のように美しく、女としての機能を持ち始めたその肢体は彫刻のように整っていた。左手もちゃんと右手になっている。
本来この醜悪な町とは縁のないはずだが、
エンヤはこの惨劇が彼女の美しさをより引き立てているようにも見えた。
「あなた、面白い力をもっているのね。
その力、我が組織で活かす気はない?」
突然の勧誘だった。
しかし、その甘すぎる声色にエンヤは気がつけば了承していた。
「いい子ね。私はベロニカ。
今日から私が貴方のご主人様よ!」
そして、数年の月日が流れ、ベロニカはサピエンテス・グラディオの幹部となり、エンヤは最も信頼される部下となった。
乙ー
乙
そういやこんときのエンヤって何歳なんだろう
↑三部見る限りジョセフよりちょっと年上くらいだと思ってる(ジョセフは波紋の若返り効果をつかってないから)
だから23~25くらいと予想して書いてる
ジョセフ「こいつら!屍生人か!?
じゃあ吸血鬼が近くに!」
ジョセフが波紋を練る。
波紋は屍生人にとっては猛毒だ。
ウル「屍生人?」
ウルたちには聞きなれない言葉だった。
ジョセフ「吸血鬼どもが使役する亡者どもさ。
日光で焼くか波紋で消滅させるしかねぇ!
おめぇら下がってろ!
『波紋疾走』!!」
波紋は容赦無く死体を駆け巡る。
ウル「吸血鬼ねぇ....
やっぱ透明になったり蝙蝠になったりロリコンだったりすんの?」
ジョセフ「どこの誰だよ。」
ウル「いや、おれの知り合いの吸血鬼はそんなんばっかで....」
カレン「ちょっと!?
波紋が全然効いてないわよ?」
カレンが叫ぶ。確かに彼らは波紋が効いている 様子はなく、反撃してくる。
ジョセフ「なにいいいい!?
こいつら、屍生人じゃあねえのかぁー!?」
ゼペット「こいつらの動き.....それにこの霧。
これは..そうかわかったぞ!」
ジョセフ「じいさん!何かわかったのか!?」
ゼペット「ジョジョよ!おそらくこの死体や墓場の風景は立ち込める霧が原因じゃ!
昔新聞で読んだことがある!
一夜にして霧と共に滅んだ町の話じゃ!
生き残った者たちによると、その霧に触れたら亡者さえ操られてしまうらしい。」
一夜で滅んだ町の話は、当時は非常に大きなニュースとなった。
ジョセフ「なに!?
でもこの死体どもは......」
ゼペット「操られておるだけじゃ。
わしも人形を操る者の端くれ。
操られる物の独特なぎこちなさを見逃すほど馬鹿ではない!」
ゼペットも伊達に数十年人形使いをやっていない。
死体を見た瞬間、すぐに違和感に気づいていた。
カレン「でも、その事件を引き起こした犯人がいまここにいるとして、どうやったらこの場を切り抜けられるの!?」
ジョセフ「話を聞いてる限りじゃあこの霧が怪しいぜ!
なにか一気に霧を晴らす方法を探せ!」
霧とは水蒸気を含んだ空気が上昇気流により昇っていき、気圧が下がり膨張して冷えて発生する。
温度が冷えると水蒸気が凝結して雲粒になり雲が出来る。
雲が高いところにあるのは上昇気流で持ち上げられているからだ。
わざわざ上に持ち上げられなくても水蒸気を含む空気が冷やされて水蒸気が凝結すれば、低いところでも雲が出来るはずだが、それが霧なのである。
つまり、冷えやすくかつ暖かく湿った空気が入りやすいようなところで霧が発生するのだ。
ジョセフ「つまり、この部屋全体を暖かくすりゃあ霧が出なくなる!」
カレン「でも、そんな大掛かりなことができるものがここに無いわ。」
ゼペット「いやある!」
ウル「マジか。」
ゼペット「あぁマジじゃ。
ウル。おぬしじゃよ。」
ウル「はい?」
ゼペット「おぬし、炎の悪魔の力は取り戻したか?」
ウル「あぁ。」
ゼペット「よし!では今すぐ変身して、この部屋を熱くしろ!
能力全開じゃ!」
ウルの変身が完了する。
炎の悪魔・バルバリア
その血のように赤い甲冑に身を包んだ姿は、まるで中世の騎士のようだ。
手にしたサーベルからは凄まじい炎熱が伝わってくる。
周りの水分はいとも簡単に蒸発して消えてしまった。
ゼペット「よし!これなら霧を晴らせるど!
ウルよ!もっと火力をあげろ!」
バルバリアの足元から真っ赤な魔法陣が出現した。
カレン「もっとよ!!」
カレンが乾いた材木をそばに置く。
バルバリア「もっと!」
灼炎がさながら不動明王の迦楼羅焔(かるらえん)の如く背後で燃え上がる。
ブランカ「バウバウっ!」
ブランカは藁を敷き詰めた。
バルバリア「もっともっと!」
鎧を蛇のように爆炎が這い回る。
ジョセフ「いっけえええええええええええ!!」
ジョセフが火炎瓶を薪や藁に投げつけた。
バルバリア「もっと!!!
熱くなれよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあおおおおおおおおお!!!!!!!!」.
限界に達した爆炎が、怒れる火龍のように部屋に立ち込めた霧を吹き飛ばした。
否、部屋全体を吹き飛ばした。
あちゃー
あたりはまるで隕石でも落下したかのような有様だった。
瓦礫を崩す音と共に人影が現れる。
ゼペット「ふぅ。死ぬかと思った。」
カレン「爆発の瞬間、一瞬テニスラケットを持った平たい顔の男が現れたような....」
ジョセフ「なワケねぇだろ。」
ブランカ「バウ。」
彼らはあらかじめ用意していた障壁のお陰でなんを逃れていた。
カレン「あら?そういえばウルは?」
ジョセフ「ん?そういえばいねぇなあ。
お~い!何処に居んだー!」
返事が無い。
あたりは焼けた死体や木が燃えて爆ぜる音のみだ。
カレン「ちょっと..........!..ウル!
こんなときにふざけないでよ!?」
ジョセフ「返事しやがれ!」
ゼペット「まさか、さっきの爆発に巻き込まれて.......」
ゼペットが最悪の事態を口にする。
カレン「嘘........でしょ?」
カレンが力が抜けたようにその場にへたり込む。
ゼペット「あの大馬鹿ものめ!!
あれほど死に急ぐなといったのに!!」
ゼペットが悔しそうに拳を握る。
ジョセフ「畜生ッ!!あのバカ!!
一人で格好つけやがってッ!!
またか....!?また俺は.........?」
ジョセフの脳裏にあのキザなイタリア野郎の壮絶な最期が嫌でもちらつく。
もう繰り返さないと誓ったのに。
カレン「そんな........。私、まだ貴方のことなんにも教えてもらってないよ?」
カレンは気づいていた。
彼の能力のこと
彼自身のこと
彼が喪ってしまったという恋人のこと
それらを何も知らない自分に。
顔も名前も知らないその恋人に嫉妬してしまっている自分に。
そして、彼に惹かれ始めている自分自身の心に。
失って始めて気がついてしまった。
カレン「........ウル」
??「やかましいなぁオイ?
なんつう不景気なツラだよ。」
絶望に暮れる彼らの背後から声がする。
ジョセフ「お、お前は....」
乱暴に瓦礫を踏み倒しながら
ゼペット「まさか そんな........」
赤い甲冑から黒衣の逆十字に着替えながら
カレン「嘘.....」
その口元に笑みをうかべながら彼は帰ってきた。
「「「ウルムナフ・ボルテ・ヒュウガ!!」」」
神殺しの男は帰ってきた。
ウル「いえす!あいあむ!!」
ジョセフ「ひでぇ発音だな....」
カレン「あの子、『シャンゼリゼ』もずっと『しゃんぜりぜ』って発音してたわ。」
ゼペット「かわいそうにのう......」
ウル「俺、泣いてもいい?」
ウルかわ乙ー
ウル「そういやぁあのエロいねーちゃんは?」
ゼペット「死体が無いところを見ると逃げおったな。
さらなる追っ手がくる前に先を急ごう。」
ジョセフ「そうだな。まずルアーブルだったか。
具体的な旅路はどうなってんだ?」
カレン「ルアーブルから船に乗ればサウサンプトンに行けるわ。
そこからは馬車や徒歩ね。
じきにウェールズに着くわ。」
ウル「うし!じゃあいくぜ。」
一行はフランスが北西部の大西洋に臨む港湾都市・ルアーブルにやってきた。
すぐにでも船旅に出ようとしたが、戦争の影響で船の運行状況が不安定になり、確実に乗るためには街の有力者に取りいる必要が出てきた。
そこで、ウル一行は有力者に最近ルアーブルの街を騒がす『怪盗』の退治を条件に船に乗りつく約束を取り付けたのだった。
夜。 ルアーブルの街はしんと静まり返っていた。
一行は広く街を捜査するため、二手に別れることにした。
南側はウル、カレン、ゼペット。
東側はジョセフとブランカの担当だ。
ブランカにエサをやりながらジョセフは街灯にしゃがみ込む。
街灯に照らされ、胡椒をばらまいたかのように虫が集まる。
しかし、路地には人っ子一人見当たらない。
ジョセフ「ほんとにこんな平和そうな街に怪盗なんつう洒落たモンが現れるっつうのかよォ?
オカッパ頭のギャングを見つけるより難しいんじゃあねぇのかあ~?」
ジョセフのぼやきにブランカは気の抜けた欠伸で答える。
が、瞬間。
夜の街に甲高い悲鳴が響く。
ウルたちが捜査に向かった方角からだった。
ジョセフ「この声は..カレンか!?
くそ!二人ともなにしてやがんだぁ!!
いくぞ!ブランカ!」
カレンの危機を救うため、一人と一匹が風のように駆ける。
ジョセフ「なっ!?これは!!
オイ!二人とも大丈夫か!?
畜生ッ!!こんなに大量の血を!!」
ジョセフがウルとゼペットのもとにたどり着いたとき、彼らはうつ伏せに血の海に沈んでいた。
顔から流れるその血が、彼らのものであることは明白だった。
ジョセフ「オイ!しっかりしろ!
なにがあった!カレンはどうしたってんだ!?」
ジョセフがゼペットを揺さぶると、彼は口と鼻から膿のように粘りけのある血を吐いた。
ゼペット「.....が.....がん....」
ゼペットの口から何かの言葉が漏れる。
ジョセフ「.....がん...。GUN?銃か!?
敵は銃でお前らを撃ってカレンを攫ってったっつうのか!?」
ゼペット「ちが.....ち.....が。」
ジョセフ「血か!?あぁ!安心しろ。
血は直ぐに止めてやる。」
これほどの出血。直ぐに処置しなければ危険だ。
ウル「.....違う。ジジイはそんなことが言いてぇんじゃねえ。」
ウルが頭を抱えて起き上がった。
ジョセフ「何ッ!?」
ゼペット「....が。がん.....。」
ジョセフ「爺さん!もう喋るな!!」
ゼペット「.....眼......福」
ジョセフ「ハァ?」
???「うははははははははは!
そいつらには少々刺激が強すぎたダラな!!」
>眼福
何処にそんな要素が・・・
ジョセフ「な、何ィッ!!!!?」
ジョセフは絶叫した。
そのあまりの事態に。
何処かに連れ去られたと思っていたカレンは、蝶の仮面を被った筋骨粒々の変態に抱えられていた。
いや、抱えてられているという表現は実際には正しくない。
カレンは両股を手で掴み頭上に逆さに持ち上げられ、カレンの首を変態は肩口で支えていた。
変態「ふははははははは!
思い知っただらか!?師匠から受け継いだ汗と涙の結晶!『ヨアヒムバスター』だら!」
後に彼がカメハメという少年にこの技を伝授し、『筋肉バスター』という名とともに世にしらしめるのは、もう少し先の話である。
つまりどういう状態かというと、カレンは大股開きで下着を露わにされていたのだ。
ジョセフ「被告人ヨアヒム・ヴァレンティーナは2月21日0時55分
ルアーブル郊外にて
被害者Kさんの手を無理やり握り屋根まで引き摺り上げ
公衆の面前で筋肉バスターをかけた疑いがかけられております
これは明らかに痴漢行為であり 暴行罪
場合によっては殺人未遂等の罪にあたると思われます
湊にて多くの人々が被告人の反抗を目撃しています
詮議にかけるまでもなく被告人は有罪かと.......」
カレン「ジョセフーーーー!!!
なにやってるのよ!!!?
早く下ろしてよオオオオオ!?
もうやだ....お嫁にいけない......」
カレンは恥ずかしさと悔しさで泣き顔を真っ赤にする。
カレンさん不純やで……
なぜヨアヒムと分かったんだジョジョよ!
ヨアヒムと呼ばれた変態は戸惑いを隠せない。
ヨアヒム「な、なにィ~!?お前さん何故
ジョセフ「てめえの次の台詞は『何故俺っちの名前知ってんだ!?』だッ!!」
ヨアヒム「何故俺っちの名前知ってんだ!?......ハッ!?」
相手に自分の台詞を完璧に予想されていたことで、ヨアヒムは同様した。
そして、ジョセフはそれを見逃さない。
ジョセフ「てめえのそのピッチピチの革パンにしっかり刺繍されてるぜ!
『ヨアヒム・ヴァレンティーナ』ってなぁ~!」
言われてヨアヒムは自負の革パンをよく見る。
確かに自分の名前がしっかり刺繍されていた。
彼の弟が『兄さんは直ぐにものを無くすからちゃんと名前刺繍しておきますよ。』
といって勝手につけたものだった。
ジョセフ「さっきのヨアヒムバスターっつうのは恐らく使った奴の名前が頭につく技ッ!
つまり!その革パンは盗んだ物なんかじゃあねぇ!
てめえの自前だ!!」
勝ち誇ったようにジョセフはヨアヒムを指差す。
その態度がヨアヒムの気に障ったのか、腕に抱えたカレンをまるで武器のように振り回しながらジョセフに突撃する。
ジョセフ「てめぇの次の台詞は『だから何だってんだこのスカタン!』っだッ!!」
ヨアヒム「だから何だってんだ このスカタン!」
ヨアヒムはカレンの足首を持ち、風を切り裂くように横に凪ぐ。
カレンの悲鳴が木霊するが、幸いぶつかったりはしなかった。
ジョセフがそれを腰を低くして躱したのだ。
ジョセフがニヤリと笑う。
いつもの勝利を確実にしたときの笑みだ。
懐から小さな瓶をとりだして蓋を開ける。
そして、攻撃の直後で回避が出来ないヨアヒムの股間にそれをブチまけた。
ヨアヒム「.........!」
ジョセフ「へへへ....こいつは染みるぜ?
蒸れ蒸れの革パンの中で掻きまくった
てめえのイチモツにはなぁ!!?」
ジョセフの手に持った瓶には赤い文字で『Tabasco』と書かれていた。
19世紀後半。ある国である調味料が生まれた。
アメリカ合衆国ルイジアナ州エイヴァリー島。
タバスコ・ソース。
ペッパー・ソースの一種である。
辛さを表すスコヴィル値は2,500?5,000スコヴィル。
ちなみにパプリカのスコヴィル数値は500前後。
つまり、単純にパプリカの五倍以上の辛さを持った液体なのである。
それがいま、蒸れて掻き毟り続けたヨアヒムの股間に降りかかった。
革パンの内側にそれは徐々に浸透し、『そこ』にたどり着いた。
獣のような咆哮が、夜の街に響いた。
ジョセフ「ひひひ。成功成功。
もはや『辛い』を通り越して『痛え』っつうほうが正しいかもなぁ~??」
耳に劈く怒声を上げながら、ヨアヒムはジョセフに突撃する。
もはや人の声ではなかった。
荒れ狂う獣のようにジョセフに飛びかかる。
だが、そんな直情的な攻撃はジョセフには通じない。
ジョセフ「喰らうかよ!!
今度はこっちの番だ!
波紋キック!!」
軽々と避けると、波紋入りの蹴りをヨアヒムに見舞う。
ヨアヒム「ぎえええええええ!」
波紋を受けたヨアヒムが悲鳴をあげる。
身体からは白い煙がまるで蒸し料理のように噴き出す。
ジョセフはこの反応を知っていた。
波紋で身体がこんな風になるのは
ジョセフ「吸血鬼.....」
かつて彼の祖父が戦い、父の命を奪い、またかれ自身も左手と親友を失った原因となる古代の遺物。
石仮面。
それが生み出すのが、
不死身の吸血鬼である。
が、次の瞬間。
ジョセフは再び驚愕した。
ヨアヒムの身体が徐々に小さくなり、眩い黄金の蝙蝠に変身したのだ。
ヨアヒム「うはははは。
中々良いキックだらな!
また会おう!さらばだ少年たちよ!!」
やたらと甲高い声になりながら、黄金の蝙蝠は何処かに飛び去って行った。
こんな真似ができる存在を、ジョセフは一人しかしらない。
ジョセフ「究極...生物」
カレン「きゃああああああ!」
後ろでカレンの声がした。
みるとヨアヒムが空中に放してしまったカレンが、落下してきているのだ、
この距離ではいまのジョセフは到底間に合わない。
ジョセフ「カレン!?くそ!誰か!」
ウル「任せろ!鼻血は止まった!」
瞬間。ウルが変身する。
硬質の鎧のような翼の漆黒が駆ける。
闇の悪魔・オレクシス。
それが夜の街を駆け、激突寸前のカレンを間一髪で受け止める。
オレクシス「大丈夫かよ?」
水のそこから響くような声ではあるが、間違いなくそれはウルだった。
カレン「...ウ、ウル。」
変身を解くが、体勢はカレンを抱えたままだ。
その自分を包む両腕の逞しさに、カレンは思わずしがみついていた。
ウルはまるで小さな子供のように屈託の無い笑う。
ウルが「おし、怪我はねぇな。
下ろすぜ。」
そう言って硬い地面にカレンを立たせた。
下ろされる瞬間、その腕を放してしまう名残惜しさや
いつまでも抱きしめられていたいなどという子供じみた願望があったなど口が裂けても言えないカレンは、赤面する。
ウル「なんだよカレン?
顔赤えぞ。」
そう言ってウルはカレンの額に自らの額をくっつける。
いまにも互いの唇がくっつきそうな距離に、カレンの純情は耐えきれなかった。
カレン「な、なにやってるのよ!?/////」
思わず、距離をとってしまう。
ウル「いや、熱でもあんのかと思って。」
ウルは自分を心配してくれていたのだ。
距離をとったことを後悔したが後の祭りだ。
カレン「手で測ればいいじゃない......///」
ウル「あ、悪い。
母ちゃんが『こっちの方がちゃんと測れる。』ってずっとこっちだったからつい癖で。」
カレン「バカ...///!」
カレンは一人で宿に戻ってしまった。
ウル「あ!オイ!」
一人きりの路地裏で、カレンはしゃがみ込む。
カレン「私のバカ!
なんで本当の気持ちくらいちゃんと言えないのよ!
言えば良いじゃない。「手より額同士のほうが良い」って.....!
それに、ウルの恋人どころか母親にまで嫉妬しだすなんて.....
最低だよ......私。」
自分の心が酷く醜く思えてカレンは自分が嫌になる。
そんな様子を影で見つめる修道服の男がいた。
しかし、カレンになにかするでもなくその男は風に吹かれる木の葉のように消えてしまった。
吸血鬼だしな、ヨアヒム…
思えばヨアヒムの中の人は5部ゲーでペッシやギアッチョを演じてたっけ…
カレンの中の人も三部ゲーで死神13とかミドラーやってたぜ
街の有力者「なんと!?蝙蝠に変身して逃げたとな!
益々持って奇怪な奴よ.....」
一行は、街を騒がす怪盗を追い返しはしたが捕まえられなかった旨を有力者に伝えた。
ゼペット「うむ。まともにぶつかっても捕まえるのは至難じゃろうな。」
蝙蝠などに変身しては捕らえるのは難しいだろう。
追い詰めて逃げられてのいたちごっこの繰り返しである。
有力者「うむ。だがそれでも奴を追い返すとは大した奴らだ!
そこでだ、あんたらの腕を見込んで頼みがある。」
カレン「なにかしら?」
有力者「怪盗のアジトに直接乗り込んで奴を退治してほしい。」
ジョセフ「アジトの場所知ってんのかよ!?
じゃあさっさと教えてくれりゃあいいじゃねえか」
だが、有力者はその下腹のように肥大化した唇をすぼめてバツの悪そうな顔をする。
有力者「こ..こちらにも事情があるんだ!
ついて来てくれ!?」
一行は有力者に連れられて彼の館から歩き出す。
ほんの数分歩いただけで彼は立ち止まった。
そして、一軒の定食屋を指差す。
有力者「これ。」
ゼペット「この定食屋がどうかしたのか?
そんなに美味いのか。」
有力者「違うっ!この定食屋が怪盗のアジトだっ!」
ウル「近っ!?」
ジョセフ「ご近所さんじゃあねぇか。」
有力者「よし。私はちゃんと案内したぞ?
後のは頼んだ。こいつは前金だ。」
そう言って懐から札束をゼペットに渡す。
有力者「仕事をこなしてくれたらこの倍の金額を更に払おう。
ではまた後で!」
そう言って有力者はそそくさと帰ってしまった。
ソロモンの地図を狙ってるんだっけ?乙ー
カレン「どうしましょう.....」
ジョセフ「どうしましょう つったって...
金はもう貰っちまったしなぁ..」
ゼペット「とりあえずあやつに事情を聞いてみよう。
あの様子では儂等はなにか誤解をしておるやもしれん。」
ゼペットの視線の先には、定食屋からでてきた子供と仲良く遊ぶヨアヒムの姿があった。
カレン「あんなに子供たちが懐いてる....
もしかしたら変態なだけで悪人じゃないのかも....
女性の敵ではあるけど。」
ウル「まだ根に持ってたか。」
カレン「当然よ。
あぁ 思い出したら腹がたってきちゃった。
ちょっとシメてくるわ!」
そういってカレンはヨアヒムに向かって行く。
ウル「」
カレン「うっしゃあぁぁッ!
みんな見てろよ!
一撃で決めてやるぜ!」
ヨアヒム「ゑ?」
カレンの叫びととも見事な足蹴りがヨアヒムの股間に命中する。
ヨアヒム「あんぎゃああああああああああ!!」
悲鳴とともに白目を剥いてヨアヒムが倒れた。
それを見て子供たちがヨアヒムに駆け寄る。
少年「うわぁああ!ヨアヒム!」
少女「いきなりなにするのよ!?」
子供たちがカレンに抗議の声をあげる。
カレン「どきな!
このザコメカども!!」
子供たち「うわーん!」
ウル「カレェーーン!?
どうしたのお前....」
倒れたヨアヒムの股間を脚で穴を開けるようにグリグリと押し付ける。
カレン「こんな寝覚めが
悪くなるような兵器
付けてんなよな!」
ウル「やめたげてよぉ!
それ兵器じゃないの!
マグナムだけど武器じゃないの!」
ジョセフ「oh...No~!
アレが潰れちまうとこなんて見たくねえぜ俺ァ!?
ドライバーになったほうがまだマシだぜッ!!」
ゼペット「おぬしら!
さっさとカレンを止めろオオオオオオ!!」
男らしい貴族のカレンさん
女だてらにドイツ少尉をになるとはこういうことか
ヨアヒム「いやほんと、マジですいませんでした。」
やっとの事でカレンを引き離したが、ヨアヒムの顔は二倍近く膨れ上がり原型をとどめていなかった。
しかし不幸中の幸いか、子孫断絶は免れたようだ。
ヨアヒム「まさか吸血鬼の俺がここまでコテンパンにされるとは思わなかっただら。
勇ましいオナゴだっち。」
ジョセフ「おめぇはいま吸血鬼だっつうんだな?
だが妙だぜ?」
ジョセフは怪訝そうな表情で自らが感じた矛盾を提示する。
ジョセフ「第一になんでおめえこんな太陽の照った場所にいて平気なんだ?
第二に昨日のことだ。他の生物に変身してにげたよな?
変身能力、太陽の克服..
..まるで柱の男、カーズ.......
究極生物そのものだ。
だが、波紋は苦手なままみてえだな。
もう一度聞くぜ?
おめえ何モンだ?」
ヨアヒム「む!
お前、柱の一族のこと知っとっただらか!
なら話が早い。俺っちたちは
『柱の一族と人間の間に生まれた存在』だら。」
ジョセフ「なにい!?そんなやつらが!?」
ジョセフたち...波紋戦士にとっては捨てておけない話である。
絶滅させたと思っていた柱の一族の生き残り。
もうエイジャの赤石も無い(ヴォルカノ山で紛失してしまった。)
だが、その心配は杞憂に終わった。
ヨアヒム「あぁ。俺らは別にニンゲンに悪さしようとは思ってないだらよ?
むしろ人間と生きて行くためにこうなっただら。」
ジョセフ「?」
人間と生きて行くためというのがよくわからない。
ジョセフはそのことの説明をヨアヒムに求めた。
まあサイヤ人と人間のハーフが居るくらいですし
ヨアヒム「柱の一族はもともと繁殖力の弱い生き物だっただら。
だから繁殖力があって身体の構造の近い人間と交わってもっと数を増やそうっつう一派があったらしいだっち。
その過程で柔軟な関節がなくなっちまって、
他の生き物と同化して潜り込んだり吸収する能力も吸血や透明化レベルに退化しちまっただら。
でもかわりに太陽が平気になったし休眠期間もグッと短くなっただっち。
それに家族もたくさん増えただら。
だから俺っちたちは人間の味方だっち!」
ジョセフ「.....蝙蝠になれるのは?」
ヨアヒム「不思議な能力をもった人間...
ちょうどそこな紅い眼の兄ちゃんみたいな人間の血がどこかで交じったんだら。」
ジョセフ「....ハ....ハハ!アハハハハ!」
柱の一族と人間の共存......
一年前の自分....いやきっと数千年の歴史のなかの波紋戦士たちさえ考えもしなかったような事を彼らはずっとずっと昔にやってしまっていたのだ。
これが笑わずにいられるだろうか。
乙ー
先ほどの子供達がヨアヒムに駆け寄る。
女の子「ヨアヒム!あのお姉ちゃんにひどいことしたのね!
自業自得よそれは!」
ヨアヒム「ユマ!あれにはマリアナ海溝より深~~いわけがあるだら!」
ジョセフ「ねぇよ。」
世間の風当たりはヨアヒムの想像以上に厳しいのだ。
男の子「ヨアヒム兄ちゃん、てっきりホモだとおもってたらバイだったんだな!」
男の子の発言に一同が面食らう。
ジョセフ「ガキになんつーワード教えてんだオメー。」
ウル「坊主、お前名前は?」
男の子「......ジャン。
名乗らせていただこう J・P(ジャン・ピエール)
ポルナレ)ry
ウル「わかった。もういい。」
ジャン「」
乙です!
>ドライバーになったほうがまだマシだぜッ!!
さり気なく中の人ネタをネジ込んできたなw…ドライバーだけに
投下します。
つかノウミサンホームランマジかよ
ゼペット「では、奴らはこの定食屋に眠るお宝を手に入れるために嫌がらせを?」
ヨアヒムとの一悶着のあと、定食屋の亭主である老婆に招き入れられたウルたちは、彼女から驚くべき話をきくことになった。
この古ぼけた定食屋にとんでもないお宝が眠っており、それを狙って店の権利書を手に入れようと街の有力者のあの男があらゆる策を練っているのだという。
カレン「そんな......
じゃあ悪いのはあいつらじゃないの!?」
ジョセフ「許せねえぜ....!」
幼い子供たちを食べさせるために必死に働く彼女の姿が、幼き日の自分のために尽くしてくれたエリナの姿と重なった。
定食屋の老婆「私はどうなったってかまやしないんだけど...
この子達がねぇ....」
老婆が慈愛に満ちた眼差しでジャンとユマをみる。
聞けば彼らは戦争で親がおらず、血の繋がりもない彼女が代わりに育てているらしい。
ヨアヒム「ばあちゃん!
そんなこと言っちゃいかんだら!
二人にはまだまだばあちゃんが必要なんだら!
奴らが何度来ても今まで通り俺っちが追い返してやるだっち!」
ヨアヒムが彼女を励ます。
聞けば、彼女には行き倒れていたときに介抱してもらった恩義があるらしいのだ。
ジョセフ「それで、怪盗か.....」
ヨアヒム「そうだら。」
彼女と子供たちのためなら悪党呼ばわりも辞さない。
ヨアヒムの覚悟は本物だった。
ウル「それで、グラン・パピヨン...?」
ヨアヒム「そうだら!」
ヨアヒムはピチピチのレスラースーツに身を包んだ胸筋を張る。
ウル一行「」
高潔な行為とは正反対なその変態な容姿にウルたちは閉口してしまった。
カレン「こんな話を聞いちゃったあとじゃ
儲け話は断るしかないわね!」
サウサンプトンへの航路のメドは途絶えてしまったが、犯罪の片棒を担ぐよりはい。
ゼペット「金、返しにいくか。」
先ほどもらった前金も、受け取る気にはなれなかった。
と、ジョセフがゼペットのもらった金の入った袋をはたき落とした。
硬い音を立てて袋が地面に落ちる。
ゼペット「ジョジョ!いきなりなにをするんじゃ!?」
ジョセフ「まぁまぁ、落ち着きなさいゼペット君。
いま、君はこの金を落として無くしちまった。
もう誰のもんでもねぇよな。
もしさあ……ここに袋が落ちてて、
中にお金が入ったとしたら、君…とどける?」
ゼペット
「.............
フフフ、まさかあ??、もらっちゃいますね……!」
乙ー
有力者の館前....
有力者はウル一行の姿を見て顔を綻ばせる。
有力者「おぉ!早かったな!
もう済んだのか!♪」
その問いには応えず、ゼペットが貰った金の袋を名残惜しそうに返す。
金の袋を見る目はまるで拾った猫を母親に叱られて元の場所に戻す少年のような眼差しだった。
後ろジョセフとウルがカレンに抗議の声をあげていたが、彼女はそれを「いけません!」の一言で黙らせる。
金を返された有力者は戸惑いの色を隠せない。
有力者「な、なんのつもりだ!?」
ゼペット「金は.....いらん。
その代わり、あんたの依頼も断わる。」
有力者は青筋をたててふざけるなと憤る。
カレン「あのおばあちゃんの話を聞いたら、誰だって断わるわ!
悪いのはあなたたちのほうじゃない!」
歯からヤスリで材木を削るような音をたてて有力者が一行を睨みつける。
有力者「そうか!そっちがそういう態度を取るっていうならこっちもそれなりの対応をさせてもらうぞ!!
お前ら、こいつらとっちめろ!」
有力者が右手をあげると、館から品のない顔をした男たちがゾロゾロと現れた。
おそらく地元のヤクザかなにかだろう。
ヤクザ「ふふふ 覚悟しろよ!
この便器にはき出されたタンカスどもが!!」
口を開いた男はピンク色の髪で頭からカビが斑点のように生えていた。
ウル「うわ!頭かびかびだ!
しかも上半身あみあみだ!
趣味わりぃ!」
その言葉が癪に触ったのか、ヤクザがナイフを取り出す。
ヤクザ「いい気になって知った風な口をきいてんじゃあないぞッ!!
おまえには死んだことを後悔する時間をも…与えんッ!!」
ヤクザがナイフを構えてウルに突進した。
なぜ今までこのSSに気づかなかったのか……
俺得過ぎる
ヤクザ「オレのそばに近寄るなあーーーーッ」
ウル「よっわ....へたれ過ぎ。」
ジョセフ「泡ァ吹いて気絶してるぜ。
せっかくだから口ん中に釘とカエル入れとこ。」
カレン「きっとこの人の子孫もヘタレね!」
ゼペット「おぬしら鬼じゃな....」
ディアボロだって、一応ラスボスだし(震え声)
まあ、今も死に続けていますけど
自分の力量を見誤るとは…ダメな奴だヤクザよ…
ジョセフ「これで懲りたんならもう定食屋のばあちゃんに手ェ出すのは辞めるんだな。
次はマジに潰すぜ。」
有力者は情けない悲鳴をあげながら水飲み鳥のように首を何度も下げる。
それに追い打ちをかけるようにブランカが吠えると、彼はすっかり縮み上がってしまった。
ゼペット「さぁ。定食屋に戻ろう。このことをあのばあさん...たしかロッタさんとか言うたの。
彼女に報告しにのう。」
カレン「ええ。きっと喜ぶわ。」
ウル「ばあちゃん、メシ奢ってくれるかなぁ?」
タダ飯を期待するウルの口元からよだれがこぼれる。
カレン「ダメよ。ウル。
ちゃんとお代は払わなくちゃ。」
ウル「」
たわいも無い会話を続ける彼らを睨みつけながら、有力者が悪態をつく。
有力者「糞ッ!このままで済むと思うなよ!!」
店に悪さをする悪漢たちを懲らしめたことを伝えると、ロッタ婆さんは安堵の表情を浮かべた。
明日からまたサウサンプトンへの航路の確保に奔走しなければならない。
助けてくれた恩義もあってかヨアヒムも手伝ってくれるようだ。
彼らは定食屋の一角を借りて一夜の宿とした。
翌日ー
ウル「なかなか見つからねぇもんだなぁ...」
戦争の影響は一行の予想以上に大きく、航路は一般の旅人は簡単には使えないようになっていた。
ジョセフ「ここはSPW財団の協力も難しそうだなあ。」
20世紀初頭の英仏関係は決して良好と言えるものでは無く、後に世界を股に掛ける力を持つことになるSPW財団もこの時期は国際情勢を無視して行動出来るほどの影響力は持ち合わせていなかったのである。
ロッタ「た、大変だよ~.!!、」
ロッタ婆さんがウルたちの元へと走ってきたのは、航路探しに疲れた一行が涼んでいた昼間のことだった。
ヨアヒム「ばあちゃん!どうしただらかそんなに急いで!」
ロッタ「ユマが...ジャンが...
ああああ!どうしよう!?
私は...私は.....」
彼女は非常に取り乱した様子だった。
ウル「ばあちゃん落ち着けよ!
一体何があったんだ!
あの子どもがどうしたっつうんだ!?」
ロッタ「さっき、あいつらがやってきて、ジャンとユマを攫っちまった....。
返して欲しけりゃ店の権利書を持ってこいって.....」
どうやらヨアヒムが留守のところをねらわれたらしかった。
ヨアヒム「なにぃ!?」
カレン「なんて酷い!!」
ジョセフ「糞ッ!
腐りきってるぜ あいつら!!」
ロッタ「私、権利書とってくる....」
ヨアヒム「ばあちゃん!なにいってるだっち!?
あの店はばあちゃんの旦那との思い出が詰まってるって言ってたじゃないだらか!
簡単に渡しちゃだめだっち!」
権利書を渡せば、彼らはあの定食屋を壊してその床下を掘り起こすだろう。
ロッタ「でも....そうしないと子どもたちが....」
が、その言葉を吹き消すようにヨアヒムが胸を叩く。
ヨアヒム「心配いらないだら!
俺が行って奴らをとっちめてやるだっち!」
ウル「俺たちも行くぜ。」
ゼペット「あんたには昨晩世話んなったからのう。」
カレン「もう他人ごとじゃないわ。」
ブランカ「バウッ!」
ジョセフ「俺がいればあんな奴らEasy victoryよ!」
ヨアヒム「お前ら.......」
乙ー
ーグレイヴヤード
スージーQはかつて無いほど深刻な面持ちである。
スージーQ「ジャンヌ、そのキングボンビー私につけたらどうなるかわかってる?」
ジャンヌはそれに天使のような微笑みで答えた。
ジャンヌ「ごめんなさい。スージーQ。」
スージーQ「あああああああああん!
その物件売っちゃらめえええええ!」
ジャンヌ「特急カード使って.....
目的地到着~♪」
スージーQはコントローラーを放り出した。
スージーQ「もうやだぁー!他のがいい!」
ジャンヌ「しょうがないなぁ....
あ!じゃあこれやろう!」
スージーQ「.....!?
フフフ、私にそれで挑むなんて勇敢な人ね!
ハンデとして先にキャラは選ばせてあげるわ!」
グレーヴヤードは平和だなー
ジャンヌ「本当!?
じゃあ私、このお兄ちゃんね!」ケンシロウ!
スージーQ「じゃあ私にはこれね。」
ジョインジョイントキィ
デデデデザタイムオブレトビューション バトーワンデッサイダデステニー
ナギッペシペシナギッペシペシハァーンナギッハァーンテンショーヒャクレツナギッカクゴォ ゲキリュウデハカテヌナギッナギッゲキリュウニゲキリュウニミヲマカセドウカナギッカクゴーハァーンテンショウヒャクレツケンナギッハアアアアキィーンホクトウジョウダンジンケン K.O. イノチハナゲステルモノ
バトートゥーデッサイダデステニー
セッカッコーハアアアアキィーン テーレッテーホクトウジョーハガンケンハァーンFATAL K.O. セメテイタミヲシラズニヤスラカニシヌガヨイ
ウィーントキィ (パーフェクト)
ジャンヌ「きさまこのゲームやり込んでいるなッ!」
スージーQ「答える必要はない」
北斗の拳www乙ー
乙
時代が違う~~!!
乙
ウルの心情風景未来に生きてんな
ところ変わって現実世界。
ウル一行は取り引き場所に指定されたルアーブル外れのワインセラーにやってきていた。
勿論店の権利書など持ってきてはいないが。
あれは未来永劫、ロッタ婆さんのものだ。
途中やけにデカイゴキブリがでて恐々とした以外特に何事も無く進み、ワインセラーの取り引き場所に来たウルたちだったが.......
ゼペット「なんじゃこれは!」
ジョセフ「どういうこったいこいつァ!」
ウル「あのゴロツキどもが...」
カレン「全員ノビちゃってるわ....」
彼らは部屋の隅で一人残らず倒れていた。
幸いただのしかばねにはなっていないようだが、そんなことはどうでもいい。
問題なのは『何故こうなったのか?』と言うこと。
そして、
ヨアヒム「みんなは!ジャンやユマたちはどこにいっただっち!」
捕まっていた子どもたちの行方だった。
「オーッホッホ!
やっときたわね!待ちくたびれたこの子と遊ぶのも飽きてたところなのよ。」
一行の前に現れたのは、廃線で出会った妖艶な女魔導士・ベロニカだった。
その傍には、連れ去られたジャンが抱えられている。
ジャン「うわあああああ!
なんだか!なんだか!」
彼はベロニカの豊満な胸に顔を押し付けられていた。
ジャン「しっしっしっ
幸せ~~!!ほんとに!ほんとにこんなことしていいの~~っ?」
カレン「酷い!
なんてハレンチなことを!!」
ウル「羨ましいぞコノヤロー!」
ゼペット&ジョセフ「ソーダソーダ!」
ジャン「あふぅ....////」
悶絶したジャンは意識を失った。
ベロニカ「あらあら!あんまり気持ち良くって気絶しちゃったの?
ウフフ。将来有望な豚ちゃんになりそうね!
持って帰っちゃおうかしら?」
それを聞いたヨアヒムがベロニカのまえに立ちふさがる。
ヨアヒム「おのれ!エロエロクイーン!!
よくも兄弟たちを!
このヨアヒム様が成敗してやるだっち!」
ベロニカ「勝手に名前をつけるんじゃないよ!
私はベロニカ!
フフフ、面白い!勝負してやろうじゃないか!!」
そういってベロニカが紫の光線をヨアヒムに浴びせる。
情けない悲鳴をあげてヨアヒムがその場に崩れる。
ウル「お前、変身しねぇの?」
ヨアヒム「だってあの仮面はユマがもってるだっち...」
一昨日彼がつけていた超の仮面のことだろうか。
確かに今は縛られたユマの頭に髪飾りのようについている。
ジョセフ「関係ねぇだろ。」
ヨアヒム「ヒーローとはッ!弱点の一つや二つ抱えているものだっちッ!」
ウル「おめぇのその頭は弱点打っつーの。」
ジョセフ「ポンコツ通り越してスクラップだぜ。」
ゼペット「どこも引き取ってくれなさそうじゃのう。」
ユマ「ヨアヒム!これを!」
と、そこでユマがなんとか自力で縄をすり抜け、例の仮面をヨアヒムに投げた。
ヨアヒム「ユマ!助かっただら!」デュワ!
彼が仮面を装着すると、何処からか軽快な音楽が流れる。
ベロニカ「ちょっと、なんなのよこれ!」
今の彼は、ヨアヒムではない。
グラン・パピヨンである。
グラン・パピヨン「愛と正義の使者 グラン・パピヨン!
今宵も華麗に参上だっち!」
ジョセフ「きめぇ。」
グラン・パピヨン「フオオオオオオオオオ!!」
グラン・パピヨンの一撃が、ベロニカを部屋の端から端まで吹き飛ばす。
ベロニカは立ち上がったが、ダメージは少なくはないようだ。
ベロニカ「チッ!なかなかやるわね変態仮面!
今日のところはこれくらいで勘弁してやるわ!」
そういってベロニカは持っていた鞭で地面を叩く。
すると、煙と共に彼女は消てしまった。
ジョセフ「糞ッ!また逃げやがったか。」
カレン「でも、子どもたちが無事でよかったわ。」
ジョセフ「カレン。おめぇ、アレ見ても同じこと言えるか?」
ジョセフの視線の先には、仰向けになったジャンの姿があった。
ジャン「ユマ!
俺の剣をしゃぶれ!」
ユマ「変態ッ!変態ッ!変態ッ!」
カレン「うっわ。」
ジョセフ「調教されちまったな。ありゃあ手遅れだ。」
一行は気絶していた街の有力者とゴロツキをシメあげ、サウサンプトンまでの航路を確保すること、そしてロッタ婆さんへの嫌がらせを辞めることを約束させた。
これでもう彼女たちの生活を脅かすものはいなくなるだろう。
ロッタ婆さん「お前さんたち、本当にありがとう。
なんてお礼を言ったらいいか....」
ジョセフ「きにすんなってばあちゃん。
困った時はお互い様じゃあねぇか。」
ロッタ婆さん「だけど、二晩の宿を提供するだけじゃあ
こっちに得がありすぎるしねぇ.....。
そうだ、こいつをやろう!」
ジョセフ「なんだァ....この本。
『上海天国vol.2』だぁ~!?」
ウル「こッこれは!!!!!」
>>154
1の某女スパイは携帯使ったりするから範疇内じゃない?wwwwww
ロッタ婆さん「あいつらが狙っていたお宝の正体さ。」
ジョセフ「なんだウル。
お前こいつがなんなのか知ってるッつうのかよォ」
ウル「いや、俺が前に手にいれたのは『上海天国』だ。
でもこれは.....」
震える手でその本を手にとるウル。
ロッタ「こいつは上海天vol.2。
伝説の純文学雑誌 上海天国の正当な続編さ。
前作を遥かに超えるボリュームをもった完成形。
ノーマルカップリンクからBL、おねショタ、おにロリ、百合etc....
古今東西ありとあらゆる分野を網羅したもの。
あたしが長年書き溜めたヨイショ本と引き換えにやっとのこさ手に入れたモンだよ。」
ジョセフ「す、すげえ.......
こんなものがこの世に......」
ウル「婆さん、いいのか?
こんな貴重なもんを....」
ロッタ婆さん「いいのさ。あんたたちに持っていてもらった方が、そいつも幸せだろう。」
ウル「ありがとよ!婆さん!
恩に着るぜ///」
ジョセフ「あんた最高だよ!」
ジョセフとウルは感激の涙を流した。
ロッタ婆さん「そんなに感謝されちまうと、また創作意欲が湧いてきちまうネェ。
よし、こんどの即売には若い男同士のカップリングを......」
カレン「腐女子乙。」
ヨアヒム「ばあちゃん!
お願いがあるだら。」
突然ヨアヒムが神妙な面持ちでロッタの前に立つ。
ロッタ婆さん「......どうしたんだい?」
ただならぬ様子のヨアヒムに、ロッタも顔を引き締める。
ヨアヒム「俺、こいつらと一緒に行きたいだら!」
ウル一行「「「「「え?」」」」」
ロッタ婆さん「ヨアヒム....」
ヨアヒム「俺っち、もっともっと自分の技を磨きたいだら。
ばあちゃんやユマやジャンには本当に感謝してるだら!
でも、俺っちをいかせてほしいだっち。」
ロッタ婆さん「いい度胸じゃないか....!
店の前で倒れてた死に損ないのコウモリがよく言ったものさ。
いっておいで!
私たちな大丈夫さ。
あんたはこんなとこで燻るような男じゃないよ。」
ヨアヒム「ばあちゃん.....
ありがとう。」
ロッタの許可をもらったヨアヒムは、ウル一行に向き直る。
「というわけで、皆よろしくだっち。」
一行は新たな仲間、変態吸血レスラー・ヨアヒムを仲間に入れ、サウサンプトンへと旅立つ。
ー
ーー
ーーー
ーーーー
おじいちゃん、きたよ!
おお、よく来たのう。
よしよし。
おじいちゃん、今日はどんなお話をしてくれるの?
ほぅ、お前はそんなにおじいちゃんの話が好きか?
うん!僕、おじいちゃんのお話
面白くってだいすき!
そうかそうか、いい子じゃのう。
じゃあ今日はとっておきのお話をしてあげよう。
二人の囚人が鉄格子の窓から外を眺めたとさ。
一人は泥を見た。一人は星を見た。
男の内の一人はお金持ちの心優しい男。
男の内の一人は貧乏な頭のいい男でした。
貧乏だった彼は力を欲しがり、金持ちの優しい男の家の養子になり彼と義兄弟となりました。
彼はさらに力を欲しがり、金持ちの男の財産を独り占めしようとしましたが、うまく行きませんでした。
彼はさらに力を欲しがり、吸血鬼になりました。
吸血鬼となった彼は多くの仲間を集め、世界を『天国』に導こうとしました。
金持ちの男は彼を殺しに行きます。
そして、その金持ちの男に彼は阻まれてしまいました。
最期は二人とも遠い遠い海の底へ沈んで行き、その運命を共にしたのでした.........
どうかな?このお話は気に入ったかの?
なんだかよくわからない。
その『天国』は良いものなの?
勿論だとも!とっても素晴らしいものだよ。
あの方の考えることは本当に美しい。
おじいちゃんはお話の中の吸血鬼にあったことがあるの?
あぁ。あるよ。
おじいちゃんはね、お話に出てきた吸血鬼の仲間の一人なんだよ。
うわぁ!凄いや、流石おじいちゃん!
さぁ、今日はもう帰りなさい。
お前はもう寝る時間じゃ。
おじいちゃんは寝ないの?
おじいちゃんは昼間に寝ておるからのう。
うん!わかった!
おやすみなさい、おじいちゃん!
あぁ。よくお休み
かわいい政二や。
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
はよ
サーセン
五日病と登山と特に理由の無いネタ切れが私を襲っていました。
投下します。
ここはイギリス南部・サウサンプトン。
ウル一行は手配してもらった船での船旅を終え、この工業都市にたどり着いた。
港の隅で一行は固まって話し合っていた。
その輪の中心にはうずくまるウルの姿があった。
呆れた顔でジョセフが数枚の紙袋を取り出す。
ジョセフ「全く。イイ年こいて船酔いかよ....」
既に紙袋は二枚ほど満杯になってしまっていた。
が、吐瀉物の不快な臭いが辺りに充満することは無い。
ゼペット「この大嵐じゃ。ウルを休ませる為にも直ぐ宿屋に向かおう。」
ゼペットの言葉通り、サウサンプトンは酷い大嵐に見舞われていた。
幸か不幸かその雨風のおかげで臭いがかき消されているのだ。
と、ヨアヒムが一筋の明かりを指差す。
ヨアヒム「お、あれが宿屋っぽいだら。」
カレン「本当ね。急いで運んであげましょう。
身体が冷えるといけないわ。」
ジョセフとヨアヒムの二人掛かりで酔っ払いを抱えるようにウルの両手両足をそれぞれ持ちながら
一行は営業中の宿屋の門を叩く。
幸い席は空いているようだった。
ゼペットがチェックインを済ませたところで、事件は起こった。
大きな鞄が落ちるような鈍い音が宿屋の一階に響く。
見ると、労働者風の白人の男二人がジャケットを着た黒人の男を殴り飛ばしたところだ。
一階はちょっとした酒場になっており、こういう場所での口論やいざこざははっきりいって古今東西
常に起きることである。
どうやら自分たちは職を失ってしまったのに黒人の彼が職にありつけていることが気に入らないらしかった。
18世紀当時はまだまだ黒人への差別が根強く、彼らは劣悪な環境のなかで生きていた。
20世紀後半になってやっと事態は大きく改善されることとなるのだが、今現在でもこの問題は非常に色濃く世界に根付いているのである。
フェイト・プッチにとって今日一日は散々な日だった。
彼が不景気な時代にやっとのことでありつけた仕事は低賃金極まりないものだった。
黒人への労働者差別はいうまでも無く、熟練した高賃金な仕事が彼にまわるはずもなかった。
それに文句をつけてきたのは前の職場で一緒だった2人組。
典型的な白人至上主義者だ。
彼らの以前の賃金は自分の何倍もあったというのに。
酒の席でたまたまあってしまったが運の尽きだった。
職を見つけたことをうっかり漏らしてしまい、理不尽な理由で勝手に憤られ、いきなり殴られたのだ。
聞くに耐えない罵詈雑言がプッチを襲い、さらに暴行を加えようとする
と、拳を振りかぶった瞬間、彼らの眉間に鋭い音を立てて何かが飛来し命中した。
痛みと驚きに彼らはたおれる。
うずくまる彼らの額から転がり落ちたのは、コーラの瓶の蓋だった。
瓶の蓋の飛んできた方向には、195センチはあろうかという大男が栓の無いコーラの瓶を此方に向けていた。
彼の目に光る確かな怒りは、誇り高き黄金色の輝きを宿していた。
てめえ白人のくせに黒人の味方をするのかと栓が命中した男の一人が立ち上がり、喚く。
白人としての誇りは無いのかと。
その言葉にジョセフは青筋を立てた。
以前にもレストランで黒人の友人と共に食事をしたとき、文句をつけてきた客がいた。
こんな下劣な人間が語る誇りなど、道端の塵芥にも劣る価値だとジョセフは思っている。
ジョセフ「てめぇらがどれほど偉ぇッつうんだよ!
この糞ったれどもが!
!?」
さらに痛い目に会いたいのかと殴りかかろうとするジョセフの拳を、大きな手が遮る。
それは大きな男だった。
ジョセフやヨアヒムにもひけは取らないだろう。
黒々とした髪からすると東洋人だろうか。
件の白人たちと黒人の彼との仲裁の為か何やら話し込んでいる。
やがて、矛を収めたのは白人の方だった。
彼らは居心地が悪くなったのか、外の大雨にも関わらず宿屋から出て行った。
プッチと名乗る黒人の彼を優しく起こし、お礼をしたいと言う彼の申し出も
東洋人は丁寧な受け答えで断った。
そして、今度はジョセフ達の方を振り向いた。
その黒い目は、椅子にもたれかかるウルを見つめていた。
ウルもその視線に気づき、驚きの表情を浮かべる。
謎の東洋人「やはり貴方でしたか..」
マントの下に隠れて見えなかったが、振り向いた彼は紺色の軍服に身を包んでいた。
装飾から察するにかなり高い地位の軍人のはずだ。
謎の東洋人「お久しぶりです。
一年...いやそれ以上になりますか。」
ウルを見つめる彼の目は、再開を喜ぶ友の目をしていた。
ゼペット「ウルよ。知っておるのか?」
ウル「あぁ、上海時代の友達さ。
ええと...」
ウルは彼の姿に少し困惑していた。
確かに彼とは一年前の上海で行動を共にした。
ウルのなき父の仇敵 陰陽師・徳壊を討つために。
しかし、以前の彼は土地調査の為の文官だとウルは記憶していた。
だが、彼の着る制服はどう見ても一文官の着れる代物ではなかった。
上等な布で作られているのが一目で見て取れた。
それに、いつも彼が傍についていたあの上官の女性はどこにいったのだろうか。
謎の東洋人「大日本帝国海軍 加藤政二特佐です。」
よく通る声で彼は自らの名と身分を告げ
、ウルに手を差し出した。
ウルもそれにしっかりと応える。
ジョセフ「さっきは助かったぜ。
こっちが更に手ェだしたら面倒なことになりかねなかったからなぁ。
俺はジョセフ・ジョースター。
JOJOって呼んでくれ。」
加藤「いえ。貴方がいなければおそらく私は間に合わなかったでしょう。
感謝します。」
加藤はウルの後ろに屯すジョセフたちを一瞥する。
加藤「新しいお仲間ですか?
彼女や....」
彼女。
ウルのかつての仲間であり恋人。
アリス・エリオットの末路を加藤は知らない。
彼女がウルを救うため、その尊い命を散らしたことを。
だが、ウルが一瞬顔を曇らせて自分に無理に笑顔を作って話しかける様子を見てある程度の事を加藤は察した。
ウル「あれから色々あってさ....
それより、あんたも随分変わったぜ。雰囲気。」
加藤「.....自分にも、色々ありましてね。」
加藤も自嘲気味に笑う。
彼もまた、かつて愛し憧れた女を。
川島よし子中佐を政府の内部闘争で失っていた。
ウルが上海を発った直ぐあとに。
愛する女を守れなかったやり切れない悔しさだけが、彼らを蝕んでいた。
加藤「大変ですよ。外交というのも。
今朝方ニューヨークから着いたばかりなのですが、この嵐でロンドンに行けず足止めを食らっているところです。」
近年、急成長を遂げている大日本帝国。
その躍進のため、加藤も国の手となり足となり休む間も無く働いているようだ。
ヨアヒム「俺様たちもウェールズに行けずに困ってるだら。」
先ほど酒場で聞いた話では、この嵐の土砂崩れだウェールズへの道が塞がれてしまったらしい。
加藤「ウェールズ!?」
加藤が怪訝そうな声をあげた。
ウル「そう。うぇーるず。」
ジョセフ「ウェールズがどうかしたのかよ?」
その不審な態度に、ジョセフが怪しむ。
加藤「いえ。その土地の名をよく聞くもので...
随分と面白い場所らしい。」
ウル「いやいや。なんもねぇよあんなとこ。
いるのもへんないきものくらいだし。」
ジョセフ「ウェールズかぁ....
昔おばあちゃんといったっけなぁ。」
かつてエリナとウェールズに旅行に行ったときの事をジョセフは思い出した。
とれたての海老はプリプリしていてとても美味しかったのを覚えている。
加藤「では、私は自分の部屋に戻ります。
何か御用があれば部屋にいらしてください。」
そういって加藤は二階へ上がって行く。
ヨアヒム「じゃあ俺様はちょっぴりお休みするだら。」
ヨアヒムとブランカも大きな欠伸をして予約を入れた二階に上がって行った。
カレン「なんだか不思議な人ね。
ちょっと怖い感じだけど。」
階段を上がりきり見えなくなった加藤をみてカレンがつぶやく。
ウル「色々あったんだろうさ。
福引会員から特佐だからな....」
ゼペット「?」
ジョセフ「ふーん。なぁんか怪しいぜ?あの日本人。」
カレン「でももしあなたの子供の結婚相手が日本人だったら
あんな感じの孫が生まれるかもしれないわよ?」
ジョセフ「あんなケチな孫いらん。」
そのとき、ウルたちに近づく影があった。
先ほど加藤に助けられたプッチだった。
プッチ「あなた方はウェールズに行きたいのですか?」
ウルたちの会話を聞いていたらしかった。
プッチ「私の新しい仕事場は炭鉱なのですが、それを通ればウェールズまですぐですよ。」
ジョセフ「本当か!?
助かるぜ。」
プッチ「いえいえ。貴方には助けていただいた恩がありますから。
私は明日の朝にここをたつのですが、皆さんも一緒にいらっしゃいますか?」
いつ復旧するかわからない道路を待つよりこちらの方が確実だろうと一行は判断し、彼の提案を受け入れることにした。
ゼペット「じゃあ、わしはチイと飲んでから寝るとするかのう...」
ゼペットが店のカウンターに向かい、ウイスキーを注文する。
ジョセフ「あ、俺も飲んでからじゃあなきゃ眠れねえなぁ。」
ジョセフはウイスキー・コークを頼む。
ウル「俺は.......」
カレン「さっきまでゲロゲロ吐いてた人に飲ませるわけないでしょ。
あ、私は黒ビール。大ジョッキで。」
ウル「」
とうとう加藤さんが…乙ー
深夜、カウンターにはバーテン以外には人が三人いるだけだ......。
ハジけたカレン「オラ!ジジイ!
私の酒が飲めねえっつうのか!!あぁ!?」
その赤毛と同じくらい顔を赤くし、泥酔したカレンがゼペットのグラスに並々とウォッカを注ぐ。
明日は二日酔いのゼペット「うおえええええ.....
カレンさん、もう許して下さい....
@_
ジョセフ「おめぇよオ~!
呂律まわってねぇぜ~!
ヤバイんじゃあねぇろか?」
カレン「お互いさまよ!
あははははは
ははは..
.....う
うえええええええん!!」
突然カレンが泣き出した。
酔っ払いにはよくある光景である。
ジョセフ「怒ったり喜んだり泣いたり。
喜怒哀楽が激しすぎるんじゃあねえのかよォ...」
カレン「うるひゃい.....
私の気持ちらんか知らないクセに...
バカァ...アホォ....あの朴念仁!」
なんか193が上手く書き込めませんでした。
とりあえず193の部分は
ゼペットが酔い潰れたのでフェードアウト
ジョセフとカレンが泥酔状態
だとわかってもらえたら大丈夫です。
ジョセフ「だからあンとき突然帰ったのか.....」
ルアーブルでカレンがウルに抱えられたとき、顔を赤くして帰ったしまったときのことを思い出した。
カレン「べっ 別にウルのことだなんて私は...」
ジョセフ「俺はウルのことなんて一言も言っちゃあいねえぜ?」
ジョセフの策略にまんまとはまったしまったカレンは閉口する。
カレン「......貴方はいつもいつも!
きっと将来は詐欺師かやりての実業家ね。」
その言葉にジョセフは笑い声をあげる。
ジョセフ「そうだな。
不動産王にでもなるか。」
カレン「でも.......だめなのよ。」
急にカレンが暗い顔になる。
カレン「ウルには心に決めた人がいるの。
私が入り込める隙間なんて!
.......最初っから無いのよ。」
カレンの眼から大粒の涙が鼻水とともにポロポロと零れる。
ジョセフ「あー。よしよし。」
カレンを慰めるジョセフも、段々睡魔がこみ上げてくるのを感じていた。
カレン「あうう。ありがろう。
貴方、いい人ね。」
ジョセフ「酔いすぎだぜいくらなんでも。
ホラ、よだれよだれ。涙も拭いとけ......よ...」
寝ぼけたカレンの口から垂れるよだれを紙ナプキンで拭いてやる。
が、途中でジョセフの意識は途切れ
深い眠りへと落ちて行った。
ナプキンを拾い、カレンは大きな音を鳴らして鼻をかむ。
そして、そのまま机に突っ伏して叫んだ。
カレン「わらひ、わらひ初恋らったろにーーーーー!」
ニコル「フハハハハ、我が世の春がキター!」
カレン「うるせー!馬鹿野郎!」
カレンの投げつけたワインボトルが顔面に直撃し、失恋した女の心に漬け込む馬鹿者はサウサンプトンの嵐に放り出された。
ニコルwwwwww
翌日、二日酔いで動けない三人は重たい足取りで宿を出た。
全員が完全に酔い潰れ、カレンにいたっては昨日の事をまったく記憶していなかった。
ジョセフは彼女の名誉よためにも昨夜のことは胸にそっと秘めておくと決めたのだった。
プッチが指定した集合時間まで多色余裕があるので一行がぶらついていると、街の一角から歓声が聞こえてきた。
それに目ざとく反応したのはヨアヒムだった。
ヨアヒム「この歓声、飛び散る汗の匂い....
まさか...!.」
と、ウルたちが何事か聞く間も無くその方向へ走って行った。
ああ、やつが…変態が…
ヨアヒムたちが歓声の方に向かうと、
そこにはなんとプロレスの青空リングが出来上がっていた。
?「フハハハハー!
懐かしいか、その四角いジャングルが!?
憎らしいか、その男の戦場が!?」
ヨアヒム「…そ、その声はっ!?
まさか、師匠っ!?」
カレン「師匠!?」
ヨアヒムが空に目を向けると、そこには屋根で摩訶不思議なインド人が舞っていた。
ヨアヒム「し、師匠ーっ!!」
師匠とよばれたインド人は五メートルはあろうかという屋根からリングの上に飛び降りた。
師匠「元気ですかーっ?! 人は歩みを止め、
闘いを忘れたときに老いていく…
今こそ格闘ロマンの道を突き進め。
ヨアヒムーーーっ!!」
ウル「おい!
医者呼んでくれ、医者ー!」
ヨアヒム「ち、ちがうだら!
この方は、オレさまの師匠、
グラン・ガマ先生だっち!!」
ゼペット「師匠!?」
ゼペットの言葉にガマが自らの筋肉を膨れ上がらせる。
グラン・ガマ「そーのーとーおーりーっ!
私こそ、血湧き、肉踊る、
男臭さナンバー1の天才レスラー!!
んんっ、グランー、ガマぁっ!!」
このオッサン。」
一方のヨアヒムは感涙の涙を流し、喜んでいる。
ヨアヒム「師匠!やっぱり生きてただっちな!」
グラン・ガマ「余計な心配だぞ、ヨアヒム!
日夜鍛錬を極め、心と精神を磨き、世のため人のために力を発揮する!
これぞ、グラン流、格闘術の真髄なり!よもや忘れたとは言わさんぞ!
我が獣道、汗の男道に、進んで足を踏み入れた貴様だ。
その腕がいかほど上達したか、今、見極めてくれようではないか!」
ジョセフ「メッシーナの趣味にあいそうだな。」
ヨアヒム「し、師匠ーっ!!
オレさまの、熱き血潮、
受け止めてくれるだっちか!!
グラン・ガマ「おうよっ!!
さあ、この腕に飛び込んでこいっ!!
ゴルァっ!!」
ガマが恋人を迎え入れるように両手を広げる。
ヨアヒム「わあーっ!
師匠ーっ!」
グレイブヤード....
ジャンヌ「ふふふ、スージーQ!
覚悟!」
ジョインジョインジョインジャギィデデデデザタイムオブレトビューションバトーワンデッサイダデステニーヒャッハーペシッペシッペシッペシッペシッペシッペシッペシッペシッヒャッハー ヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒ ヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒK.O. カテバイイ
バトートゥーデッサイダデステニー ペシッヒャッハーバカメ ペシッホクトセンジュサツコイツハドウダァホクトセンジュサツコノオレノカオヨリミニククヤケタダレロ ヘェッヘヘドウダクヤシイカ ハハハハハ
FATAL K.O. マダマダヒヨッコダァ ウィーンジャギィ (パーフェクト)
スージーQ「お…お…の…れOGOOAHHHA!
こんな弱キャラで攻めてくるとは!」
ジャンヌ「うふふ。練習したのよ。
それにしてもウルやジョセフは一体なにやってるのしら?」
『今その決意を胸に抱き
ヨアヒムの拳が天を突くゥゥゥ!
ガ マ よ!
弟子の熱き魂!ァ その身に刻めエェェェィ!
次回!シャドウハーツ?!
【切れぬ師弟の絆よ!リングに響けェッ!
たとえその身が果てようとオォォォッ!】』
スージーQ「ちょっと!このゲームこんなナレーションあった!?」
ジャンヌとスージーQのやってるゲームって何?乙ー
グラン・ガマ「見事じゃあっ!!
おまえの汗の一滴、確かに受け取った!
新たな技でさらなる高みを目指すがよい!
そして、力を試したい時は、私のもとへ
帰って来るのだ!
青空リングはいつもお前を待っているぞ!」
師弟の愛が確かめられた瞬間であった。
ウル「キモぉ?い!」
ジョセフ「か、帰ろうぜ。
プッチを待たしちゃあいけねぇ。」
カレン「...そ、そうね....」
ゼペット「眼に毒じゃわい」
ブランカ「クウン(ハッキリ言う、気に入らんな! )」
>>205 AC北斗の拳
トキのぶっ壊れ性能(通称:ジョインジョイントキィ)がよくネタにされてる
AC北斗は神ゲー
ウルたちが指定された場所に赴くと、まるでいつ来るのかあらかじめ知っていたかのようなタイミングでプッチが読んでいた聖書から顔を離し、こちらを向いた。
ウル「悪い。カレー臭えインド人に絡まれてて遅れちまった。」
ヨアヒム「カレー臭いとはなんだら!
信じないでほしいだっちよそんな言葉を!?」
プッチは少し鼻を震わせ、微かなカレーの香りを捉えた。
プッチ「……たとえ悪魔だってそんなウソはつかない。
きっと本当だからそう言うんだと思う。
疑いなんかするものか。」
ウル「そう。悪魔ウソつかない。」
ジョセフ「おい。」
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プッチが案内した炭鉱は、サウサンプトンのはずれにあった。
プッチ「気を付けて下さい。
先日大きな事故があって非常に危険ですので。」
ジョセフ「オイオイ!んな危ねえ場所で仕事してんのかよあんた!」
下手を打てば命すら危うい職場である。
だが、プッチはかぶりをふる。
プッチ「" だからこそ " ですよ。
だからこそ私のような黒人がこのような職場にいるんです。
この炭鉱の管理者にとっては黒人の命など代用の効く消耗品でしかないのですよ。」
それは黒人がおかれた残酷な現実である。
>>210~215
どうしたよ?
肩の力抜けよ。
荒らしじゃない?わからんけど
プッチ「なんでこのような目に会うんでしょうね?
運命なのでしょうか?
......わたしは釈迦の手のひらを飛び回る孫悟空ですらないんですかね?」
寂しそうに笑うプッチに、ジョセフが力強く肩をおく。
ジョセフ「....俺の友達によぉ、黒人の奴が一人いんだ。
スモーキーっつうんだけどよ。
こいつがまたニューヨークでスリの常習犯のワルでさ。
でもよォ、いまあいつは大学にはいるために独学で必死んなって勉強してんだ。
政治家んなって世の中変えてぇんだと。
俺ァ、あいつの中に覚悟を見たぜ?」
プッチ「覚悟.....」
ジョセフ「あぁ!」
それは、ジョセフの中に流れる黄金の精神の根底をなすものだ。
プッチ「.....そういえば昨日助けていただいた加藤さんに面白い話を聞かせていただきましたね。
覚悟の出来た世界..幸福に満ち溢れた世界..『天国』。」
ウル「『天国』ねぇ.....。
加藤がそんな事を....。」
プッチ「ええ、あの人は素晴らしい人です。
私も頑張らなくては。
頑張って金を稼いで家族に楽をさせてあげたい。」
プッチの歩みが止まる。
持っていたツルハシを肩に担いで仕事の準備に取り掛かり出す。
どうやら案内はここまでのようだ。
カレン「本当にありがとうございました。
助かったわ。」
ヨアヒム「あんたも頑張るだらよ!」
プッチは気恥ずかしそうに頬を掻く。
プッチ「ええ。あなた方に幸福があらんことを....」
そのまま深い炭鉱の穴に入って行き、彼は見えなくなった。
薄暗い炭鉱を進んでいくと、出口が見えてきた。
ゼペット「やれやれ、一時はどうなることかとおもったが
なんとかウェールズまでいけそうじゃのう。」
ブランカ「ワンッ!」
ジョセフ「ロジャー・ベーコン....
どんな奴やつなんだろうなァ....」
カレン「高名な錬金術師と聞いたことがあるけど....」
ウル「んな期待するような生き物じゃねえぜ。
あのじっちゃんは。
ま、会えばわかるさ。」
一行は炭鉱を離れ、ウェールズへの旅路を急ぐ。
炭鉱を落雷が落ちたかのような轟音が劈く。
崩落事故だ。
作業員達の悲鳴が炭鉱に悲しく木霊する。
事故による生存者は極めて少なかった。
経営者が救出の費用と作業効率の低下を考え、救助要請を渋ったのが原因だった。
遺体安置所に置かれた骸の一つは、血に染まった黒い肌で血塗れの聖書を握りしめていた。
その死に顔は、例えようの無いほどの悔しさと絶望に歪んでいたという。
プ、プッチ…!?
ウル「じっちゃーん!俺だよ!
帰ってきたぜ!」
ここはグレートブリテンおよび北アイルランド連合王国を構成する4つの国々が一つ・ウェールズ。
ケルトの神話を育んだこの地は、古くから魔法使いや魔女の物語が伝わる神秘の地である。
ウル達のいるネメトン修道院跡もその一つ
その中でも特に禍々しく、背徳的な場所である。
1898年10月31日。
ある男が妻の死を受け入れられず禁断の秘術書『エミグレ文書』に記された
死者を蘇らせる呪術に手を出し、惨劇を生み出した場所。
その15年後、1913年には
世界の変革を願う魔人により、星の彼方から『神』が降り立った場所。
神の殺害の為ウルに力を貸したのが、1000年を生きる伝説の魔術師 ロジャー・ベーコンである。
ウル「おーい!じっちゃーん!!」
ウルの呼ぶ声は、ロジャーの住む
いまにも立ち上がり変形しそうな奇妙な家に虚しく木霊するのみである。
ジョセフ「誰もいねぇみてぇだな。」
ウル「おっかしいな...
散歩か?」
カレン「とりあえず、外にでてみましょう。」
一行が外に出ると、あたりは美しい夕焼けに照らされていた。
ウル「どこいったんだ。あのくそじじい。」
ウルが周りを見渡したその時....
「残念だったなぁ!クソジジイならここにはいねぇぞ!?」
何処かで聞いたような野太い声が頭上から浴びせられた。
読み進めてるとだんだんナレーションが大川透で再生されてきた。
ゼペット「お主は....!」
声の主は、サピエンテス・グラティオの戦闘部隊『鉄の爪』のリーダー レニ。
家から伸びる管のような柱の上に陣取っていた。
レニ「あのクソジジイなら、はるか彼方の檻の中さ。」
そこから、彼は躊躇無く飛び降りる。
凄まじい衝撃が彼の足全体につたわったはずだが、彼はケロリとしている。
鍛え抜かれた強靭な身体がそれを可能にしているのだ。
彼の脇に侍する兵隊も、その戦闘技術を叩き込まれた精鋭である。
ウル「どこにやったんだ?」
レニ「言えんな。」
当然、そんな情報を漏らすことはできない。
組織の上に立つものが組織の不利益になることをしては、他に示しがつかない。
ジョセフ「本当は知らないんじゃあねぇの~?」
ジョセフがレニの背後から声をかける。
レニ「............知ってるよ。」
人の弱みを決して見逃さない生き物がいる。
ウル「ウソ臭えなぁ。」
イカサマ師と悪魔である。
レニ「本当だよ!知ってんだよ!
マジで!!」
ムキになるレニの表情を見て二人は、最後の一押しに
わざとらしいほどあからさまに疑っているような身振り手振りでレニを見た。
かわいそうなものを見るような目で見られ、レニの我慢は限界に達した。
レニ「ウソじゃねぇよイタリアだよ!
イタリアのフィレンツェ!!
.........
............
あああああああああー!!」
気づいた時には後の祭りである。
『してやったり』とウルとジョセフはハイタッチ。
聞きたいことは聞けたので、一行はそそくさとその場をあとにしようとする。
レニは自らの情けなさにその場で頭を抱えていた。
フォローしきれない失態に、彼の部下も何も言えずにいた。
部活動や会社でよくある光景である。
レニ「待ちやがれ!」
この失態をチャラにするには彼らを生かして返すわけにはいかない。
そう考えたレニは彼らに勝負を挑もうとするが、彼らはこちらを振り向こうとすらしない。
レニ「無視かよ!」
若干泣きそうな声になったレニの呼び声に、ウル達はようやくその歩みを止める。
ウル「なんだよ?」
レニ「『なんだよ?』じゃねぇよ!!」
レニが言いくるめられた童のように地団駄を踏んで懐から得物を取り出そうとした。
が、それより早くジョセフがいつの間にか手に握っていたロープに
波紋を流しながら、レニを指差しこう告げた。
ジョセフ「てめぇの次の台詞は
『聞いたからにはここがてめぇらの墓場だっつってんだよ!』...だッ!」
レニ「聞いたからにはここがてめぇらの墓場だっつってんだよ!
......ハッ!?」
台詞を先読みされたレニは一瞬固まる。
それが彼の命運を分けた!
ジョセフの引っ張ったロープの先には鉤爪がついており、先程レニが登っていたロジャーの家の柱にくくりつけられていた!
その柱は水道管であり、レニたちが乗って亀裂が入り水が垂れるのをジョセフは気づいていたのだ!
そこへロープから波紋を流せば当然水道管は破裂を起こし、
落下した直径三m 、 重さ1000kgの巨大な鉄管は真下のレニたちにのしかかった!
書いてて何か足んネェなと思ってたんだけどやっと分かったわ
『解説役』がいねぇ......
ツッコミ担当 カレンさんにさせるべきか
原作で途中から空気になったゼペットに活躍の場を与えるか
どこと無くポルポル臭のするヨアヒムにやらせるかか
大穴でブランカか
どれが一番ディ・モールトベネ?
ゼベットかヨアヒムかな
ベロニカ「....アンタ何やってんの...?」
レニが定時になっても帰ってこないので心配になったベロニカが迎えにいくと、
彼は剃り上げた頭に【仕事募集中!】と書かれた張り紙を貼られて放置されていた。
レニ「わ..悪い...
この鉄管、重くて動けねぇんだ。
どかしてくれ。」
ベロニカ「しょうがないわねぇ...
エンヤ!」
ベロニカが従者の名を呼ぶと霧が立ち込め、レニにのしかかった鉄管にパンチで開けたようなまるい穴が連なって発生し、鉄管を缶切りで開けたように切断した。
レニ「助かったぜ。ありがとよ エンヤ。」
割れた鉄管をのけて気絶した部下を背負いながら、レニが礼を言う。
その言葉にエンヤははずかしそうに口籠った。
ベロニカ「ちょっと!私にもお礼をしなさいな!
全く...で、なんでこんなことになってたの?」
レニ「あぁ、あいつらひでえ罠に俺をはめやがってな。
おまけに口車に乗せられて爺さんの居場所まで聞き出しやがって。」
ベロニカ「は!?」
レニ「あ、ヤベ...」
エンヤ「」
ベロニカ「このド低脳がァーーッ!」
>>233 ありがとう。参考になったよ。
ゼペット「次の目的地はイタリアのフィレンツェじゃな」
ゼペットが地図を広げる。
ジョセフ「イタリアか。ヴェネツィアでは波紋の修行で世話になったぜ。」
だが一行が今回行くのは、かの水の都からはるか南
花の都 フィレンツェ。
多くの芸術を生んだ歴史ある街である。
ウル「おし!じゃあその ひれんつぇ に向けて出発だな。」
カレン「フィレンツェよフィレンツェ。
でも当ても無く探すっていうのもね。
何かしらの手掛かりでもあれば....」
カレンが顎に手をやり考えに耽っていると、わざとらしい咳払いが聞こえてきた。
ブーツの地面を叩く音が近づく。
「どうやらお困りのようですね。
よろしければ、力になりましょうか?」
現れたのはコートに身を包んだイタリア人だった。
ヨアヒム「誰だら!あんた!」
「おおっと失礼。申し遅れましたね。
私はヌンツィオ・ペリーコロ。
あなた方と同じく、サピエンテス・グラティオを追っている者です。」
カレン「!?
サピエンテス・グラティオの一員では無くて?」
カレンがヌンツィオと名乗る男につめよる。
ヌンツィオ「まさか!違いますよ。」
ゼペット「では何故ワシらに協力を申し入れる?」
ヌンツィオ「........身分はあかせませんが、サピエンテス・グラティオの存在が邪魔な人間のひとりですよ。
その点はあなた方と同じのはずだ。」
ウル「........」
ヌンツィオ「奴らに関して、あなた方の知らないことも教えて差し上げれます。
勿論、有益な情報もね?
信用してくれとは言いません。
目の上のたんこぶを取り除くまでの同盟..と考えていただければ結構。
....どうです?」
確かに一行にとって彼らは未だ得体の知れない組織だった。
その彼らの情報なら喉から手が出るほど欲しいものだ。
ジョセフ「いいぜ。話を続けな。」
ジョセフの言葉にニヤリとしながら、ヌンツィオは葉巻に火を付けた。
ヌンツィオ「サピエンテス・グラティオの名が世に出たのは...
大戦の起こる前くらいでしたかね。
時を同じくして発生した、残虐な猟奇事件が発端でした。
殺害方法がどれもこれも中世の処刑方法に準じており、人々はその神秘性と異常性に畏怖の念を漏らしました。
公式・非公式を問わずあらゆる組織が彼らに探りをいれましたが、手掛かりはほとんどつかめず
首謀者の特定にまでは至らなかった....。
分かっているのは剣と梟、そして『エイジャ』と呼ばれる宝石が描かれた紋章のみ.....」
ジョセフ「何!?」
ヌンツィオ「どうかしましたか?」
突然うろたえ出したジョセフに、ヌンツィオは怪訝そうに眉を潜めた。
ジョセフ「あ、いや。何でもねぇ。」
自分の考え過ぎだとジョセフは思った。
エイジャは古代ローマ帝国の時代から珍重されてきた宝石だ。
彼等がその美しい輝きに魅せられ、紋章にエイジャをあしらったにすぎないと。
だが、ジョセフの脳裏にある一つの赤石の存在がよぎる。
一年間の戦いでジョセフの命を救う鍵となった、一点の曇りもない完全な赤石『スーパー ・エイジャ』。
波紋増幅装置であると同時に、究極生物進化への鍵でもあった奇跡の宝石。
カーズとの戦いの後ボルカノ火山で紛失してしまい、その行く手がわからなくなっていた。
もし、それがサピエンテス・グラティオの手に渡っていたとしたら.....
ジョセフの背中を氷のように冷たい汗が滝のように流れた。
ヌンツィオ「...まぁ良いでしょう。」
ジョセフの不審な態度が気になったヌンツィオだったが、話を続けることにした。
ヌンツィオ「フィレンツェで占い屋をやっているカルラという女性を訪ねなさい。
きっと力になってくれますよ。」
そう言ってヌンツィオはその場を立ち去ろうとしたが、
ジョセフ「待ってくれ!」
それをジョセフが呼び止めた。
ヌンツィオ「何ですか?」
二本の葉巻に火を付けながらヌンツィオは立ち止まる。
ジョセフ「奴ら...サピエンテス・グラティオが最近海中をサルベージしたりはしてねぇよなぁ?
例えばどっかの火山とかで.....」
ヌンツィオは自分の手帳を取り出し、目的のページにたどり着いた。
ヌンツィオ「ええ。確かに行っています。
ここから700キロほど離れた所にあるヴォルカノ火山で。」
ジョセフ「ッ!!
....そ、そうか。ありがとよ。」
疑惑が確信に変わった瞬間だった。
奴らはエイジャの赤石を使い、何かをしようとしているのだ。
ジョセフ「スージーQ、どうやら俺らはこの事件に無関係じゃあねぇようだぜ!
全何て奇妙な運命だ畜生ッ!」
ヌンツィオに教わった場所は確かに占い屋を営んでおり、フィレンツェで大人気の店だった。
その理由は、店の女主人カルラの弟子であるルチアだった。
ルチアが舞を舞えばタロットカードが一人でに空中で糸も張らずに踊り出す。
その光景は幻想的かつ妖艶だった。
ウル、ジョセフ、ゼペットのエロトリオは彼女の身体を目でおいながら鼻の下を伸ばす。
一方、占われている男は結果が気が気でないのか落ち着かない様子だ。
どうやら自身の結婚運を占ってもらっているらしい。
結果が待ち遠しくて仕方ない様子であり、彼の癖なのか足元には彼の私物が分解されて散らばっていた。
今は手元を見ずに財布を分解している真っ先である。
ほぼ無意識でやっているようだ。
やがてタロットカードの動きが静かになり、その中の一枚が高く舞い上がる。
そのカードを手に取り、結果を確認したルチアはほくそ笑みながら男の耳元に口を当てて結果を告げる。
ルチア「貴方の結婚運はぁ...」
ルチアの報告を黙って聞いていた彼だが、彼女の口が耳元を離れた瞬間笑みがこぼれ落ちる。
どうやら満足のいく答えが得られたようだ。
椅子から立ち上がると、両の腕を身体に巻きつけるような姿勢を取りながらこう告げた。
「祝福しろ。結婚にはそれが必要だ。」
ルチア「また来てねぇ~!」
意気揚々と店を後にした彼に、ルチアは手を振って見送った。
ジョセフ「おいネェちゃん。
落としもんだぜ。大事な商売道具だろ?」
ジョセフが差し出したのは一枚のタロットカードだった。
先程の占いで回収し忘れていたようだ。
ルチア「あぁー。本当だわ。ありがとねぇ?
ふむふむ、隠者のカードねぇ....。
正位置の意味は
経験則、高尚な助言、秘匿、精神、慎重、思慮深い、思いやり、単独行動。
逆位置の意味は
閉鎖性、陰湿、消極的、無計画、誤解、悲観的、邪推。
あなたに当てはまりそうかしらぁ?」
ジョセフ「ほぉー!なかなか的をいてるんじゃあねぇか?
特に思慮深いなんてトコがなぁ。」
カルラ「あんたたち!今日の営業はもう終わりだ!
とっとと帰んな!」
カルラの表情からはこれでもかというほどの不機嫌さが滲み出ていた。
ゼペット「そこをなんとかお願いできないかのう?」
カルラ「しつこいジジイだね!
ウチの看板娘はそう安くないんだよ!」
カレン「私たちは、ヌンツィオという人にこの場所を教わったの!
サピエンテス・グラティオについて、貴方なら何か知っているからって。」
その言葉に、カルラは凄まじい嫌悪感を剥き出しにして怒鳴り散らす。
カルラ「サピエンテス・グラティオだ!?
そんな話はお断りだね!!」
ジョセフ「頼むよ!俺のカミさんの命がかかってんだ!」
カルラ「.......あんたたち、満足に金も持ってないんだろ?」
ヨアヒム「い、痛いトコロをつくだら.....」
確かに今回の旅は貧乏旅行といって差し支えないものだった。
だが、エイジャの赤石が絡んだことで一行はある財団の力を借りることになる!
「待ちたまえ!
金なら払う!彼らに力を貸してやってくれ!」
そう、世界的な財団にして吸血鬼および柱の男たちの研究のスペシャリスト集団
SPW財団の協力を!
スピードワゴン「待たせたな!ジョジョ!」
カレン「あの世界的な石油王と知り合いだったなんて...」
ゼペット「人は見かけによらんもんじゃのう。」
ジョセフ「助かったぜスピードワゴンのじいさん。
あんたが来てくれなきゃあ俺の女装とヨアヒムのダンスで金を稼ぐハメになってた。」
カルラ「死んでもそんなのは頼まん!」
こんな大男たちの女装とダンスなど気持ち悪くて見れたものではない。
スピードワゴン「まぁまぁ二人とも。
とにかく、我々は奴らに関しての情報が欲しいのです。
お金はいくらでも払います。
どうか、教えていただけはくれないでしょうか?」
俺得スレ発見!
スレタイ的に考えて、ディスク1でおわっちまうのかな?
>>247
とりあえずエンディングまでの大まかな流れは考えてる。
ぶっちゃけスレタイミスった気がしないでもない。
Disk2の内容にはいったら新スレで始めるかも。
楽しみにしてるよ乙ー
ニコルとディオが中の人同じって忘れてて、初っぱなからふいたwwwwww
滅多に無いシャドハスレだ、エンディングまで支援するぜ!
カルラ「さっきの言葉を取り消すようで悪いけどね。
この話は金だけで はいそうですか。 と漏らせるようなモンじゃあないんだ。
あんたがうっかり口を滑らしここを嗅ぎつけられたら、身の安全が脅かされる人間がいるんだよ。」
そう言ってカルラはルチアをチラリと見た。
その目は自分の身の保身のみを考える下種の目では無かった。
ルチア「おばあちゃん.....」
愛孫を愛する一人の祖母の優しい目だった。
ジョセフ「無理は承知なんだ!
頼む!この通りだ!
俺は!....俺はもう大事な人間を喪いたくねェんだ!」
ウル「.........俺からも頼むよ婆さん。
サピエンテス・グラティオの追ってが怖えっつうんなら俺たちが奴らを完膚無きまで叩き潰す!
約束だ。」
スピードワゴン「あなた方の安全は、SPW財団が責任をもって保証いたします。
どうかお力添えを.....」
カルラは三人を試すようにじっと顔を見つめる。
彼らに三人の目は、くぐり抜けて来た修羅場は違えど同じ輝きを目に宿していた。
大事な人間を思いやる優しさ。
困難に立ち向かう精神力。
そして何より目の前の恐怖に屈しない勇気。
それは黄金の精神。
それは人間讃歌。
このまま逃げ続けようと、いつかはここも奴らに嗅ぎつけられる。
今までもそうだった。
自分は運命から恐怖から、逃げ続けていたのだ。
だが、自分ももう年だ。
ルチアを連れて逃げ回るこの生活にも、限界を感じ始めていた。
前に進むのは今このときなのかもしれない。
大事なものは『勇気』だ。
彼等の持つ輝きに、カルラは賭けてみたくなった。
カルラ「いいだろう。話してやるよ。」
カルラ「.....若い頃の私は自分の力を鼻にかけ、一花な咲かせようと夢ばかり追っていた。
だが、女のあさはかな野心なんて男に都合よく利用されるのがオチでね。
人生に傷つき、疲れ切っていたよ。
そんな頃さ
サピエンテス・グラティオとなのる秘密結社からの勧誘があったのは。
ヤケになっていた私は結社に加わり、後継者にと弟子までとったが、
その行き過ぎた活動に嫌気がさしてね.....。
一人抜けたのさ。
以来執拗な追っ手を交わしながらあちこちさまよってここに流れ着いたのさ...
それからはこの子と一緒。」
ジョセフ「そうだったのか....
ありがとよ、ばあちゃん。辛ェこと話してくれて。」
カルラは顔を赤くして腕組みをし、そっぽを向いてしまった。
カルラ「ふんっ!そうおもうんならさっさと嫁さん取り戻してくるんだね!
子供の顔くらいなら拝んでやるさ。
それに、運命っていうものから人は逃げられるもんじゃないのよね....。
そして、今日この出会いもまた運命か...」
そう言って、カルラは愛弟子の方を向く。
「ルチア、『星』が動くときが来たよ!
道を誤ったあの子の罪を償うことが私の願いだった....。
それをお前に背負わせてしまうのは申し訳ないが...」
ルチア「ううん!
私もぉ、ちょっとぐらい冒険したいと思ってたしぃ!
おばあちゃんの跡継ぎとして、恥ずかしくないように頑張るよぉ!」
その言葉に、カルラは心配そうな。しかし、どこか嬉しそうな笑みを浮かべる。
カルラ「奴らについての情報だけどね、
この街にある、結社のアジトの場所を教えよう。
そこに探してる人がいるかはわからんが....」
ウル「ありがとよ。 ばっちゃん。」
くるりとルチアが一行の方を向く。
ルチア「そういうわけでぇ、私もご一緒させてもうらうことになりましたぁ!
よろしくぅ!」
一行は占い師ルチアを加え、旅路を急ぐ。
同時刻、フランスのカンヌ
とあるレストランで三人の男女が食事をとっていた。
ニコル「それで居場所を漏らしてしまったわけか.....」
ベロニカ「全く、既に身柄は移しあるからよかったものだけど....
いずれはここも嗅ぎつけられるわ。」
テーブルに座る大柄な男が、先日の失態のことで美男美女に責め立てられていた。
レニ「悪かった!すまねぇ。この通りだ。」
「お待たせいたしまシタ。
前菜・モッツァレッラチーズとトマトのサラダ でごザいまス。」
レニが頭を垂れるテーブルに、美味しそうなサラダが乗せられる。
ニコル「フィレンツェということは、いまごろ君の御師匠様にあっているかもしれないなぁ。」
ニコルが不敵な笑みを浮かべながらベロニカを見る。
ベロニカ「懐かしいわね。
あの人も結社に残っていれば、素晴らしい未来を約束されていたというのに...」
ベロニカがタロットカードの束を手で弄ぶ。
まるで蝶が舞うように優雅にタロットが踊る。
しばらく動き続けたタロットカードの群像の中から、一枚が飛び出す。
それを、白く長い指で摘まみ、絵柄を確認する。
ベロニカ「皇帝のカード....
司るのは
男性的支配 実行 建設 支配 ビジョン 父性 計画 行動力.......
カードの向きは.......」
ニコル「当然!正位置ィィィィ!」
ベロニカ「逆位置よ。」
ニコル「何ィッ!?」
ベロニカ「うっさい。」
ニコル「」
ベロニカ「不吉ね....」
皇帝のカードが司るのは
正位置ならば【着実な成功、強いリーダーシップ】。
しかし、逆位置なら【突然の中止、思わぬ邪魔】。
ベロニカは眉間にシワを寄せた。
レニ「へっ!運命なんてもんは自分で切り開くもんだ!
こんな紙切れに俺らの未来が見えてたまるかよ!」
レニがそんなベロニカの様子を豪快に笑い飛ばしながら料理を口に運ぶ。
レニ「ンまぁーーーーいッ!! 味に目醒めたァーっ!!
「ハーモニー」っつーんですかあ?? 「味の調和」っつーんですかあ??っ」
ベロニカ「黙って食べなさい!」
カルラに教えられた場所にあったのは、フィレンツェ郊外にたたずむ品の良い館だった。
ジョセフ「ここがそうだっつうのかよォ!
とても秘密結社のアジトには見えねぇな。」
カレン「とにかく入ってみましょう。」
豪華な造りの館の階段を登ると、そこには確かにサピエンテス・グラティオの紋章が飾られていた。
ゼペット「やはりここはアジトの一つのようじゃのう....」
奥へ奥へと進み、最上階の扉を開けてみるが....
ヨアヒム「行き止まりだっち!」
ルチア「誰もいないわぁ。」
中には人っ子一人見当たらない。
ウル「ロジャーのじっちゃん、いねえのかな?」
ゼペット「他を探してみるとするか...」
一行がその場を後にしようとしたまさにその瞬間だった。
数多の砲弾が壁を突き破って一行に降り注いだ。
瓦礫のやまに潰されかけながらも、ウルはなんとか立ち上がった。
ウル「みんな無事か!?」
カレン「私とブランカは大丈夫よ!」
ヨアヒム「ふぅ、ひどい目に会うダラ....」
ゼペット「あいたたたたた。」
ルチア「いったぁーい!」
ジョセフ「全く、俺ってば悪運だけは強いのよね。」
「しぶとさだけは相変わらずだな!」
砲弾が開けた大穴から声が降ってくる。
そこには、巨大な飛行船にのったニコルとレニの姿があった。
ニコルはウルをじっと見つめてほう。と驚きの声をあげる。
ニコル「ヤドリギの呪いを受けて二ヶ月になろうというのに、まだ平気でいられるとはな。」
ウル「あんなくそまじない、効かないもんねー!」
ニコル「ふん。まぁいい。
ロジャーならここにはいないぞ?
サント・マルグリット島だ。
そこに幽閉してある。」
意外な展開だった。
攫った本人が自ら監禁場所を漏らすなど普通はあり得ない。
それをするメリットはおそらく.....
ジョセフ「そんなことをわざわざ教えるっつうコトは、俺たちとの取引を望んでいるっつうわけか?」
ロジャーの身代わりの代わりになる『何か』を彼等は求めているコトになる。
つまりは交換取引だ。
ニコル「おやおや、見かけによらず頭がキレるようだ。その通り。
ウルよ、『エミグレ文章』をもってこい!
そうすればロジャーは返してやる。」
聞きなれない名に、一同は首を傾げる。
ウル「知らねえなあ。んなもん。」
ニコル「とぼけるな。お前は知っているはずだ。
生命蘇生を司る秘術書。
そこから生まれた怪物を倒したお前は、それをロジャーとどこかに隠した!
....それはわかっている。」
ウル「..........」
ウルの沈黙が、それが事実であることを告げていた。
一行をあざ笑うかのように高い舞い上がる飛行船は、やがて遠ざかり見えなくなった。
乙ー
カルラ「そうかい....
やつら、以前にも増してやることがえげつなくなってるね。」
ここはフィレンツェのカルラの館。
サピエンテス・グラティオの襲撃を受け、一行はここで作戦を立てることにした。
ジョセフ「それにしてもよォ。その『エミグレ文章』っつうのは何なんだよ?」
疑問を投げかけるジョセフに、ウルがゆっくりと口を開く。
ウル「...今から約一年間、ばちかんから三冊の魔術書が盗まれた。
星の神を具現化させ、古神として降臨させる『バルスの断章』。
太古の神殿を呼び起こし、星の彼方から神を呼ぶ『ルルイエ異本』
そして、生命誕生の神秘を操り、死者の魂を蘇らせる『エミグレ文章』.....。
どれもが世界の黄金律を歪めるほどの力を秘めていたがために、それが世に出るたびに多くの犠牲が出た。
一年前の戦いで偶然にも俺はその三冊の秘術書を手に入れた。
戦いの後、俺とロジャーとでそれを隠したんだ...。」
ジョセフ「死者の....魂...?」
もしそんなことが可能なら、それは命に対する大きな冒とくである。
しかし、それでも喪った者に再び会いたいと願う人間は後を立たないだろう。
ゼペット「そんな代物を何故奴らが....
ウルよ、それをどこに隠したのかは覚えておるのか?」
ウル「あぁ。忘れたくてもわすれられねぇよ。
ウェールズの大亀裂の奥さ。
彼処は瘴気や魔物が立ち込めてて、誰も近寄らねぇからな。」
ヨアヒム「そんなすごいところなら、ぜひいってみたいだら!」
カレン「でも、これからまたウェールズに戻ってさらにカンヌへか......。
時間がかかるわね。」
スピードワゴン「心配はいらん。
財団の作った飛行機ならすぐだ。
時間が惜しい!速く行こう!」
ここはウェールズ。
ネアム地下の大亀裂である。
広がる太古の遺跡は、噴き出す瘴気を伴ってこの世のあらゆる不吉を孕んでいた。
ジョセフ「なんだよこりゃあ...」
カレン「まるで...生きてること自体が責め立てられているみたい。」
ゼペット「これ程の瘴気。
きっとよほど非道なことがここで行われていたんじゃのう。」
ここにいること自体が酷く不快な気分になる。
そんな空気だ。
吐き気すら覚えた。
ウル「先を急ごう......」
一行は隠された秘術書を求め、奥へ奥へと進んで行く。
進ごとにどんどん瘴気は濃くなり、不快感がましていく。
異常が起こったのはそんな時だった。
“........ジョジョ....”
腹の底から絞り出すような声がジョセフの耳を捉えた。
ジョセフ「...おい、誰だ?俺の名前を呼んだのは?」
ウル「ん?誰も呼んじゃいねえけど...?」
ヨアヒム「誰も呼んでないだらよ?」
ゼペット「気のせいじゃろう?」
ルチア「きっと空耳よぉ~。
ねぇカレン?
.........カレン?」
ルチアが目を向けると、そこには何も無いカベに顔を近づけるカレンの姿があった。
カレン「聞こえる....
私を呼ぶ声が....聞き覚えのある声が..」
ゼペット「二人とも!どうしたんじゃ!?」
だが、ゼペットの声は届かなかった。
二人は錯乱したように空を見つめている。
“....カレン....“
カレン「この声は...おばあちゃん?
どうしたの!?私はここよ!?
おばあちゃん、何がそんなに悲しいの?」
フラフラと歩くカレンは、一人で細い通路へと進もうとする。
“......ジョジョ....”
ジョセフ「おい...シーザー...。
おめえなのか!?いるんだろ!!
どこだ!どこにいる!?」
ジョセフもカレンと同じ方向に勝手に進んでいく。
ウル「おい!!二人を止めろ!!
今すぐだ!!!!」
ウルは知っていた。
それはこの遺跡に潜む亡霊たちの創り出す 『死の世界との境界線』なのだ。
もし、彼等の声に反応して『振り向いて』しまえば命はない。
あの通路はそういう場所なのだ。
ジョセフを止めるため、ヨアヒムが動く。
彼を後ろから羽交い締めにする。
ヨアヒム「ジョジョ!!なにやってるだら!!?
ウルの話を聞いてただらか!?
そっちに行っちゃいけないだっち!!!」
ジョジョ「離してくれッ!!!
俺は....俺はあいつとあんな別れ方しか....ッ!
謝らなくちゃあいけねぇんだ!!!」
ヨアヒムを振りほどこうともがく。
カレンを止めるのはウルだ。
カレン「何するのよ!?離して!!!
おばあちゃんが呼んでる!!
貴方も聞こえるでしょう!?」
ウルはカレンに何も言わない。
錯乱している今の彼女に何を言っても無駄だからだ。
カレン「........ッ!..」
ウルは無言でカレンの頬を強く叩いた。
ウル「しっかりしろ!!
ここには誰もいねえ!!
亡霊たちの声に耳を傾けるな!
お前らの魂まで持っていかれちまう!!!」
その言葉と痛みに、虚ろな目をしていたカレンに生気が戻る。
カレン「あ....私....、
.....ごめんなさい。」
ウル「...頭冷えたか?
ほら、さっさとこんなとこでてい...
.....ッ!」
“........ウル..!”
ウル「やめ....ろ!」
カレン「....ウル?」
.....もう苦しまなくていいよ。...
....もう寂しがらなくていいよ。...
......これからは、いつだって私がそばにいるから......
ウル「やめろ!!!
アリスの声真似なんかするんじゃねぇ!!」
カレン「......ッ!」
頭を抱えてウルはうずくまる。
彼の脳裏に浮かぶのは、かつて自分の肩で息絶えた女の姿。
あの痛いほど美しい夕陽の射す列車だった。
ウル「アリス....後ろにいるのか...?」
ゼペット「いかん!!!声に憑かれておる!!
ウルよ!振り向いてはいかん!!」
ゼペットが止めようと駆け出した。
ルチア「だめよぉ!」
だが、それをルチアが止める。
ゼペット「見殺しにしろというのか!?」
ルチア「違うわぁ!これよコレ!!」
そう言ってルチアが懐から取り出したのは、小さなガラス瓶に入った緑色の液体だった。
それを四人の入り込んだ通路に向かって投げ入れる。
暗闇の中でガラスの割れる音が響き、そこから凄まじい刺激臭が立ち込める。
ゼペット「ッ!!この匂いは!!?」
ルチア「ラフレシアの香水よぉ?
とっても貴重なんだからぁ?」
世界最大の花として名高いマレーシア原産の全寄生植物・ラフレシア。
花を咲かすのには2年はかかるが、花が咲いたら約3日で枯れてしまう貴重な花である。
その香りは、この花の花粉を運んでいる死肉や獣糞で繁殖するクロバエ科のオビキンバエ属などのハエの影響で汲み取り便所の臭いに喩えられる腐臭を発するのだ。
その言語に絶する悪臭は、悪霊の声に魅せられたジョセフとウルを現実に引き戻した。
ジョセフ「こいつはくせぇッー!」
ウル「ゲロ以下の匂いがプンプンするぜッーーーー!」
振り向くのも忘れて彼等はゴキブリのように這い出してきた。
ルチア「二人とも生きてるぅ?」
鼻をつまんで仰向けになる二人に、ルチアはしゃがみこんで尋ねる。
ウル「あぁ...。多分。」
ジョセフ「....こんなに臭えって感じるのは生きてる証拠だぜ。
悪かったな。迷惑かけちまって....。」
ゼペット「気にすることは無い。
亡くした者に会いたい気持ちは誰にだってあるもんさ。
じゃが、それでも生き残ったワシらは死者に振り向いてはいかんのじゃよ。
決してな...」
ジョセフ「爺さん....」
ジョセフはスージーQから聞いたので知っていた。
かつてゼペットにコーネリアという娘がいたことを。
だが、彼女は早くに亡くなってしまったそうだ。
どれほどの哀しみが彼にのしかかったのだろう。
どれほどの痛みが彼を引き裂いたのだろう。
どんな気持ちで愛する娘の名前を人形につけたのだろう。
そんな老人の言葉は、とてつもなく重かった。
あれバチカンから盗まれた時期ってクーデルカの頃じゃなかったっけ
↑調べたら10年以上昔った言ってたわ
すまんね
1ではエミグレ写本って言ってたから勘違いしてた
気を取り直して一行が先へ進むと、開けた場所に出た。
逆さにした茶碗のようなドームの中心には石の十字架がそびえており、その真下にそれはあった。
ウルが手にとったそれは、人の頭蓋骨を象った不気味な書物だ。
カレン「これが....」
ウル「あぁ、エミグレ文章さ。
......うッ!?」
ジョセフ「おい!どうした!?」
ウルがそれを持ち上げた瞬間、崩れるように倒れてしまった。
この症状は以前にも見たことがあった。
ウルから巨大な怪物蜘蛛が出てきた時だ。
ウルが意識を取り戻したとき、そこはネアムの遺跡ではなかった。
墓石の石畳に覆われた彼の心象風景 グレイヴ・ヤードだ。
その中心に、エミグレ文書が乱雑に転がっていた。
震える手でそれに手を伸ばす。
表紙に描かれた頭蓋骨の眼窟は、不気味にこちらを見つめている。
ウル「亡くした命を、....再生させる本..」
浮かぶのは恋人の姿ばかり。
だが、かつて自分が倒したエミグレ文章によって生み出された怪物が脳に去来する。
アリスをあんな姿にすることだけは出来ない。
だが、会いたい。
あの柔らかな髪に触れたい。
あの優しさに包まれたい。
声が聞きたい。
あの綺麗な声を。
ウル「.....あれ?」
だが出来なかった。
思い出せないのだ、彼女の声が。
こんなことは今まで無かった。
ウル「どうして....」
彼女の顔ははっきりと思い出せた。
どんな会話をしたのかも。
どうやって出会ったのかも。
だが、その三つだけだった。
『四つ目』が思い出せない。
いや、その時点で何を思い出そうとしていたのかすら思い出せなかった。
ヤドリギが激しく軋んだ。
う…
簿記試験がそろそろなんで勉強態勢に入ります。
つーわけで一週間くらい更新は無いです。
というわけでそれまではアリーヴェデルチ(さよならだ)。
試験頑張れよ!
吉報を待つ
ああああああああああああああ、落ちたわこりゃちきしょーーーー。あわなわさかたまぁがかたわわけわまかかやふざけんなよ!銀行勘定調整表とかだすんじゃねーよ!くたばれこの野郎!このキムチめ!昨日の進撃の巨人の雷句誠のイラストかっこ良かったなぁ。あばば あばば 踊る赤ちゃん人間。部門別計算とか標準原価計算だせよこのやろーー!!ファック ファック!アホーッ!ヤマト2199は乳のデカイナースと褐色のパイロットの子が可愛いですね。藤浪満塁じゃねーか頑張れよ。俺はカープファンだけどね。あ、ゲッツーだ。やるねェ。ああでもね、わかってますよヤマはって試験受けた私が悪いんですよーーーーーーッ!お父さんお母さんお姉ちゃんおばあちゃんおじいちゃんごめんなさい。名や皮だなは輪は。だねらは罠。
....
.......
取り乱しましたごめんなさい。
試験結果は6/17発表です。
そのときに私がおかしなテンションでも養豚場の豚を見るような目で見守ってあげてください。
というわけで今日から更新再開します。
カレン「ウルッ!ウル?」
ウル「...うう」
カレンの声でウルは再び現実世界に帰還した。
酷く気分が悪かった。
気を失ってからの記憶がすっぽりと抜け落ちていた。
カレン「勝手に倒れないでよ!」
もう。と不安と不満を混じらせたため息をつきながらカレンはウルを起こす。
ウル「悪い。ちょっと貧血,」
口調は乱暴だが心配してくれていることの証拠だと思い、ウルはほくそ笑む。
ジョセフ「それがそうなのか...」
ジョセフがウルの手に収まっている古書に視線を向ける。
ウル「あぁ。エミグレ文書さ。
早くでよう。ここは長居するとこじゃねぇや。」
目的の品は手に入った。
目指すはフランス南東部、カンヌの沖合にあるレランス諸島を構成する島の一つ
サントマルグリット島である。
落ち着け素数を数えるんだ
頑張れとしかいえないが、いい結果が来ることを祈ります
同時刻。サントマルグリット島。
そこにはニコルの言った通り、ロジャーが幽閉されていた。
鎖で身体を固定され、鉄仮面で明かりを奪われていたが意識はあるようだった。
....その脇に、足枷を嵌められたスージーQがまるで死んだように微動だにせず眠っていた。
エミグレ文書を回収した一行は、フランスの街・カンヌにやってきていた。
港からはサントマルグリット島が臨めた。
多くの囚人たちを収監しているという噂のあの島のどこかに、ロジャーは捕らえられているのだ。
ジョセフ「そういえばヨアヒムよォ~。
お前がさっきから持ってるその柱は....」
ジョセフが指差したのは、ヨアヒムが抱えている巨大な大理石で出来た大きな柱だった。
陶器のような美しい白色が、ムチムチの筋肉に挟まれて青ざめているようにも見えた。
ヨアヒム「おう!イタリアの海岸で見つけただっち。
なかなか良いチョークだら。」
ルチア「えぇ~?チョークゥ?
違うわよぉ。これは砂糖菓子だと思うなぁ。」
その柱にジョセフは見覚えがあった。
かつて柱の男・ワムウと闘ったときに彼が武器として使った大理石の柱。
それに酷似していたのだ。
ジョセフ「まさか....な?」
そんな偶然があるわけ無いとジョセフは踵を返す。
ヨアヒムが脇に抱えている故ジョセフには見えなかったが、この柱には『何か』を引っ掛ける為の金具と、『何かの生物』が潰されたのか血糊がうっすらこびりついていた。
一行が財団の船でサントマルグリット島に渡ると、本来いるはずの看守が誰一人見当たらなかった。
おそらくサピエンテス・グラディオに金をつかまされて出払ったか、さもなくば始末されたかのどちらかだろう。
どちらにせよ、好都合だった。
これで極力人との接触を避けてロジャーの救出に向かえるのだから。
真っ黒な口を開けた鉄格子の島に、一行は飛び込んだ。
ロジャーは島の最深部に囚われているはずである。
一行は下へしたへと歩みを進める。
途中で開けた場所に出た。
と、そこでルチアが鼻をひくつかせた。
ルチア「あ!この香りはぁ...」
立ち止まり、ゆっくりあたりを見渡す。
ゼペット「あいたたた!なんだか腰にきたぞい!」
ゼペットが倒れてしまう。
カレン「ちょっとみんな!どうし.....っ!!」
カレンも崩れるようにその場に倒れる。
ヨアヒムは後頭部から倒れこんだ。
ジョセフ「な、なんだァ~!敵の魔術かよ!
糞ッ!どっからでも来やがれ!
『呼吸を整え、波紋を練る!』」
ジョセフが息を吸い、波紋を纏う。
ジョセフ「な、なん......だ!
こ.呼吸が出来ね.....え.....」
しかし、喉を抑えて膝をついてしまった。
ルチア「これはぁ、ジギタリスから作った麻痺の香水なのぉ。
だから、嗅いじゃらめぇ....」
ウル「遅えって。」
いつの間にか全員が行動不能に陥っていた。
ただ一匹を除いて。
ジョセフ「ブ、ブランカ!?
そうか、狼の嗅覚は人間の10000倍以上とも言われてる。
おめえの鼻は既に気づいてたってわけなか...
お..い、お前に頼みがある。
この無線機を持っていけ。
狼のお前....でも扱えるように財団に改良してもらった特別製だ....。.」
ジョセフが最後の力を振り絞って紐の付いた無線機をブランカに投げる。
ブランカはそれを空中で咥えると、階段を駆け上がり、見えなくなった。
ベロニカ「オーッホッホ!
どうかしら?私の調合したパルファンは?
気持ち良くて立てないでしょう?
神経に直接作用するから、呼吸をするだけでも苦しいはずよ。」
ジョセフ「糞ッ!それでか、さっきから全然波紋の呼吸が出来ネェのは。」
現れたのは結社の女魔術師・ベロニカだった。
そばにはニコル、レニの姿もある。
レニ「はっ!マヌケな奴らだぜ。
こんな単純なワナに引っかかるとはな!」
ウル「おめえにだけは言われたかねぇぜ....」
ニコル「さっきの狼、直ぐにあぶりだして始末させろ。」
ニコルがウルの懐を物色しながら指示を出す。
レニ「たかが犬一匹だぜ?」
ベロニカ「あんたより利口よ。」
レニ「マジかよ。」
ニコル「これで目的の品は全て手に入った.....。」
エミグレ文書をウルから押収したニコルは、服の袖から赤い石を取り出す。
それは、丸みを帯びた三角のような形をしており、中心には十字架のような模様が浮かんでいた。
ジョセフ「や、やはり、てめえらが赤石を......ッ!」
ニコル「フフフ。マヌケな波紋戦士君と神殺しよ。
君たちからの贈り物、ありがたく使わせてもらうよ。
?
おやおや、気を失ってしまったか。」
ベロニカ「じゃあ、こいつらは私が貰うわね。
うふふ。今夜は寝かさないんだから.....」
ベロニカはちろりと赤い舌を見せて妖艶に微笑む。
ベロニカさんの行為に期待!乙ー
サントマルグリット島の外れをブランカは独り駆ける。
囚われた仲間の救出の為だ。
おそらくあまり時間は残されてはいないだろう。
もたもたしてはいられない。
と、そこでブランカはジョセフに貰った無線機が点滅しているのに気が付いた。
鼻先で軽くボタンを押すと、ジョセフの声がノイズ交じりで聞こえてくる。
ジョセフ『.....この無線が勇敢な俺の仲間に伝わっていることを信じて通信をする。
お前は正体を知られないように声は出さないでくれ。』
ブランカ「..........(ちゃんと聴こえているぞ!)」
ジョセフ『よし、この無線も傍受されている可能性がある。
これからはコードネームで呼び合うぞ。
俺は『カズ』だ!
お前は....そうだな『キャスバル』と呼ぶぞ!』
ハキハキとした声が無線機から聴こえてくる。
キャスバル「......(なんかノリノリだなコイツ...)」
カズ『俺たちは捕らえられた場所から更に西向きへ奥にいったところにある牢屋に閉じ込められている。
幸いロックは外側からなら鍵なしでも空くタイプだ。
まずはここを目指して進んでくれ。
敵兵が巡回しているようだから細心の注意を払って進んでくれ。
健闘を祈る!over!』
キャスバル(ブランカ)は扉からではなく、傍の茂みからの侵入を試みた。
扉の向こうからは多くの気配を感じたからだ。
鬱蒼と木が生い茂る森へと入る
キャスバル「バウッ!(この草の高さなら、気づかれずに前進できるな!
ムム!これは!)」
キャスバルが茂みで見つけたのは、幼い少女の写真が収録された雑誌だった。
恐らく誰かが捨てたのだろう。
キャスバル「ハァハァ!(いいものを見つけた!
これがあれば毎日が天国....ではない!
奴らの陽動に使えそうだ!拾っておこう。決してやましい感情は俺には無い。)」
雑誌を咥えたまま、キャスバルは草むらを駆ける。
と、目の前の壁に開け放された窓を見つけた。
キャスバル「バウバウッ!(あの程度の高さなら侵入出来そうだな!)」
キャスバルは周りの木々や壁の隙間を器用に利用し、窓から屋内へと侵入した。
カズ『流石だな。
ブランクがあるとは思えん。』
キャスバル「(お前はそれが言いたいだけだろ!)」
キャスバル「キャン!(むむう!敵兵が居るな!
できればこのままここに居座ってもらいたいところだ.....
仕方ない。口惜しいがコレを使うか。)」
キャスバルは咥えていた雑誌を地面に置くと、肉球の付いた前足で壁を叩いた。
「なんの音だ?」
音に気がついた敵兵がこちらに向かってくる。
キャスバルはそばにあった鎧の影に隠れた。
やがて、敵兵が先程までキャスバルが潜んでいた場所にたどり着く。
敵兵「こっこれは!
いいものを見つけた!!」
雑誌の存在に気が付いた敵兵は貪るようやそれに釘付けだ。
悠々と後ろを通るキャスバルに気が付きもしない。
キャスバル「クゥン...(大の男があそこまで骨抜きにされるとは....
業の深い品だ.....。)」
キャスバルは誰にも見つかる事なく完璧にスニーキングを行っていた。
と、無線機が点滅している事に気が付いた。
目的地までもうすぐなので、一報入れておこうとボタンを押した。
しかし、無線機から聴こえて来たのは予想外の声だった。
??『あらあら!内緒の電話なんてイケナイ坊やねぇ?
女王様ショックだわ。
これはオシオキが必要ねぇ?そうでしょう!』
カズ『や、やめろ!!!
やめてくれェ!!うわあああああああああああああああああああ!』
キャスバル「バウバウッ!ガルルル!(カズ!どうしたんだ!応答してくれ!!
カズ!!カズ~~~~~~ッ!!)」
凄まじい悲鳴のあと、それっきりなんの応答もしなくなってしまった。
届けられるのは残酷な静寂だけである。
ブランカ「ワオーーーン(無事でいてくれ!!)」
ブランカは勢いよく地を蹴り、風よりも早く疾走した。
仲間のもとへ向かう為に。
ブランカ…お前も男だもんな…乙ー
ジョセフ「う....ここは?」
外部との通信がばれ、ベロニカに妙な香水を嗅がされて意識を奪われたジョセフは、気が付けば仲間と引き離され、怪しい機械に貼り付けにされていた。
ベロニカ「気が付いたかしら?
フフフ!あなたは私の奴隷ちゃん。
さぁ、一緒に楽しみましょう。」
淫靡な手つきでジョセフの身体を舐めまわした。
ジョセフ「何をする気だ.....!」
ベロニカ「やぁねぇ。
この状況を見てわからないの?
頭の悪い奴隷は、女王様キライよ!?」
ペロリと手に持った鞭を舐めるベロニカ。
ジョセフは戦慄し、そして理解した。
この女は今から自分を拷問する気なのだ。
そして、こいつはその事になんのためらいも感じていない。
むしろ快感すら見出しているようにかんじた。
ジョセフ「じ、上等だぜ!
やりゃあいいじゃあねぇか!!」
その言葉を聞くと、ベロニカは青筋を立ててジョセフの身体に容赦無く鞭を打つ。
ベロニカ「ほうらー。
ちゃんという事を聞かないと、お仕置きしちゃうから!」
そういうとベロニカは、ジョセフを拘束している装置から伸びるボタンを押した。
ジョセフ「OGooAHHHA!!!」
装置についた電球が青白く発光し、流れる電流がジョセフの身体を貫く。
ベロニカ「いまのはテスト。
気持ち良かった?」
雑誌を燃やすかのような焦げ臭い匂いがジョセフから煙と共に漂う。
ジョセフ「い、いかれてやがるぜ!
この変態色魔が!!」
その言葉に更に機嫌を悪くしたのか、ベロニカが再び電流の拷問器具を起動する。
ジョセフ「AHYYYYY
AHYYYYYYY AHY!
WHOOOOOOOOOOOOOOO!!!!」
ベロニカ「ウフフ、まんざらでもなさそうね!
やっと喜んでもらえて嬉しいわ。
じゃ、もっとしてあげる!!!」
消し飛びそうな意識をなんとか引き戻し、ジョセフは脳を回転させる。
選択を誤れば、自分に待っているのは黒焦げの末路だ。
シナプスが紡ぎ、ニューロンが導き出した最適の答えをジョセフは口にする。
ジョセフ「>>296 !!」
突然ですが安価です。
みなさん『最適』の答えをお考え下さい。
安価はこれからもちょいちょい挟むかもしれません。
オ、オレのそばに近寄るなああーーーーーーーーーッ
拷問イベント懐かしいな
ジョセフ「オ、オレのそばに近寄るなああーーーーーーーーーッ」
ベロニカ「あらあら!そんなに気持ち良かったのね!
楽しんでもらえて嬉しいわ。
さぁ、もっと味わってね!」
ベロニカは装置のスイッチを再び起動させた。
ジョセフ「ヤッダ― バァアァァァァアアアアア !!」
ベロニカ「3倍か!?痛いの3倍ほしいのか? 3倍・・・イヤしんぼめ!!
じゃあお望み通り
更に更に電圧アーーーップ!!」
ベロニカが熟れた乳を揺らしながら電圧の設定を上げる。
ジョセフ「(あ、頭がおかしくなりそうだ。
次に選択を誤ったらマジにイッちまいそうだぜ。
次に取る行動は >>299 だッ!!)」
拷問イベントwwwwwwww
そういえばシャドハきっかけで高橋広樹さん好きになったな
↑変更 >>302
高橋広樹かっこいいよね。
遊戯王の城之内、デジモンのベルゼブモンあたりが好きだわ
あとヒソカとフォルゴレ
でも確か否定的な事を言えば武器が手に入った記憶が……
安価は
俺には未来を誓った女が居るんだッ!!
てめぇのような心が醜い女にいう言葉なんざもうねぇんだよッ、タコがッ!!
で……
こんな感じでいいのかな?
逃げるんだよー!
おまえは次に支援、という・・・
ジョセフは痺れる頭で作戦を練った。
ジョセフ「(俺の作戦はこうだ!
まず、このクソ女に服従した振りをして拘束を解かせる!
そして次の瞬間、さっき鞭で打たれて切った口の中の血液に波紋を流して攻撃する!
シーザーが使ったというシャボン・カッターの応用版 ブラッド・カッターだぜ!)
ジョセフ「も、もう嫌だ!
逃げたい!
俺は逃げるんだよー!
た、頼む...逃がしてくれよぉ.....!」
ジョセフは歯をガタガタと震わせ、ベロニカに許しを乞う。
ベロニカ「あらあら可哀想に!
そんな捨てられた仔犬のような眼でみないで頂戴.....。
分かったわ。離してあげる。
さぁ、何処へでもお行きなさい。」
ベロニカはジョセフの懇願を見て拘束を解いた。
ジョセフ「あ、ありがとう!ありがとう女王様!!」
ジョセフは情けない声を出しながら頭を下げる。
ベロニカ「うふふ!気にする事なんて無いのよ?」
ベロニカは油断しきっている。やるなら今しか無い。
ジョセフ「今だ!!食らえ!!」
ジョセフは波紋とともに口に溜まった血液を吐き出す。
狙いはぴったりだ。
だが、ベロニカはそれを身体をくねらせ避けてしまった。
ジョセフ「そ、そんな!!?」
ベロニカはジョセフの行動を読んでいたのだ。
ベロニカ「ウフフ!青ざめたわね?
いい顔だわ。
でも、こんなくだらない小細工をする奴隷は女王様いりまちぇん!!」
そう言ってベロニカが鞭で地面を叩くと、魔法陣から大量の魔物が召喚される。
部屋は魔物で埋め尽くされた。
ベロニカ「あらあら!どうして笑っているのかしら?
私のペットに食べられちゃうのがそんなに可笑しいの?」
ジョセフはベロニカを見てへらへらと笑っている。
ジョセフ「あぁ。可笑しくって笑いがとまらねぇよ!
俺の狙いは最初からお前なんかじゃあねえってのに勝ち誇ってるあんたがなぁ!!」
ベロニカ「なんですって!?」
ジョセフの放った波紋カッターは、ベロニカの後ろにあるブレーカーに命中した!
ブレーカーが火花を上げる!
青ざめたベロニカは、ジョセフを睨みつける。
ジョセフ「お前の次のセリフは....」
ベロニカ、ジョセフ「「これが貴様の狙いだったのか!ジョジョ!」」
部屋が暗黒に包まれた。
突然の暗闇に、 魔物は対応が出来なくなった。
だが、ベロニカは冷静だ。
ベロニカ「ふん!こんなもので私を攻略したつもり!!?
問題無いわ!
この程度の暗闇でも闘えるだけの技術を私は持っているわ!
さぁ、かかっていらっしゃい!!」
暗闇の中からジョセフの声が答える。
ジョセフ「問題ねぇのはこっちもら同じだ。
作戦通りだぜ。
拷問のおかげで俺が満足に闘えねぇことも含めてな!
よぉ~く思い出すんだなぁ!
『俺が拘束を解かせる為になんと言ったのか』をよォ~!」
ベロニカ「.......まさか!!!!」
ジョセフ「そのまさかだ!!
俺の作戦の目的は.....」
ジョセフは電撃で震える足に力を込める。
ジョジョ「逃げるんだよォ~~~ッ!!!」
ベロニカ「このビチグソがァァ~~~ッ!!」
ベロニカの攻撃が虚しく空を斬った。
乙ー
朦朧とする意識を叩き起こし、ジョセフは長い回廊をかける。
部屋から脱出するとき、暗闇のどさくさに紛れて奪い返した無線機のスイッチを入れる。
ジョセフ「こちらカズ!!なんとか脱出した!
これから先程話したポイントへ向かう。
そこで合流しよう!」
ジョセフ「ブランカ!おめえ先に着いてたのか!」
ジョセフが捕らえられていた場所に戻った時、すでにブランカによって牢屋の鍵は開けられていた。
ゼペット「二人とも無事じゃったのか!」
ジョセフ「へん!あんな拷問、屁でもねえよ!」
ジョセフが得意そうに腕を組む。
ルチア「あれぇ~?でも上から変な声が丸聞こえだったわよぉ?」
ヨアヒム「なんか焦げ臭いだら...」
ジョセフ「お、おめえら命の恩人に向かってーっ!」
憤慨するジョセフだが、ウルとカレンが追い打ちをかける。
カレン「でも実質助けに来てくれたのはブランカだし...」
ウル「ぶっちゃけ責められ損ね。」
ジョセフ「そうかい!おめぇらはそういう態度をとるっつんだな!
俺がせっかくイイもんを見つけてきたっつうのによォ。」
ゼペット「そ、それは?」
ジョセフが金属が擦れ合う音と共に取り出したのは、幾つもの鍵が付いた鍵束だった。
ジョセフ「拷問部屋から脱出したときについでにくすねてきたのよ!
これでそのロジャーが捕らえられてる部屋へ直行ってもんだ!」
ヨアヒム「ナイスだっち!
相変わらず抜け目の無い奴だら!」
ヨアヒムが嬉々として鍵束を受け取ろうとするが、それをジョセフはさっと手元にしまう。
ヨアヒム「な、なにするだっち!」
ジョセフ…乙ー
ジョセフ「まぁ待ちな。
俺がこれを手に入れるためにした苦労を考えちゃあくれねぇか?」
ジョセフは鍵束を手元に隠したまま芝居がかった口調で続ける。
ジョセフ「俺はあの女に辛~い辛~い拷問に耐えてきたわけだ。
そしてそのおかげで鍵が手に入った。
この苦労をもう少し労ってくれてもいいんじゃあねえか?」
カレン「す、すごいわねー!
さすがジョジョ!」
ウル「すごーい!おめでとー!」
ゼペット「よ!大統領!」
はたから見れば見え透いたお世辞だが、ジョセフはその態度を見て満足そうに口元をゆるませる。
ジョセフ「そ、そうか?」
ヨアヒム「お、俺様尊敬しちゃうだら~!」
ルチア「かぁーっこいい!ジョジョぉ!」
ジョセフ「うんうん。分かってくれて嬉しいぜ俺ァ?
さ、とっておきたまえ!」
おだてられ、調子に乗ったジョセフは手に持った鍵束をウルに渡してしまった。
その様子をブランカは呆れたように見つめる。
ブランカ「クゥン...(これが若さか..)」
全員が集合し、鍵も手に入れた。
全ての準備は整った。
一行はサントマルグリット島の最深部、ロジャーが捕らえられてると思しき独房に向かう。
レニ「よぉ。待ってたぜ。」
独房の中にいたのは鉄の爪の首領・レニ。
奥には鎖で椅子に縛り付けられている小さな老人の姿が確認出来た。
そしてその更に奥の隅には...
ジョセフ「スージーQ!」
鎖で壁に繋がれた妻にジョセフは必死で呼びかけるが、意識の無い彼女に返事は不可能だった。
ジョセフ「てめぇ!俺の女になにしやがった!!」
レニ「さあねぇ。どうしても聞きてぇっうんなら...
俺を倒してからにしな!!!」
咆哮とともにレニの身体は変態する。
浅黒い肌は鉱物を思わせる灰色に変色し、硬質化する。
右手はザリガニかロブスターのような巨大な爪を持った魔手に変化した。
人に重金属を流し込むことで造られる人造兵器 ゴッド・ハンド。
神話の中の怪物が20世紀に現界する。
ゴッド・ハンドが咆哮をあげて翔る。
振り回した爪が、壁を粉砕した。
壁の穴から月光が射し込む。
あの手に掴まれれば一溜まりもないだろう。
物言わぬ残酷な凶刃が、月光を反射しながらそれを知らしめる。
振り下ろされる爪をゼペットは辛うじて避けた。
被っていた帽子が脱げ、ゴッド・ハンドに引き裂かれる。
その瞬間、帽子は切り裂かれたところからセメントで作られた彫刻のように徐々に固まって地面に落ち、粉々に砕け散った。
これがもし自分の頭だったらとゼペットは氷を丸呑みにしたような悪寒に襲われる。
ゼペット「気をつけろ!!
奴の爪には物を石化させる呪いがかかっておる!!」
しかし、ゴッド・ハンドの赤爪は逃がさない。
一番近くにいたゼペットに追い打ちをかける。
糸を絡めて動きを止めようとするゼペットだが、たちどころに石化して砕けてしまった。
凶刃が眼前に迫る。
もはやこれまでか。とゼペットは目をつむる。
恐怖はあったが、それと同時に淡い期待がゼペットの中にあった。
これで娘に会えるのではないか。と。
しかし、その期待は裏切られることとなった。
ジョセフ「ジジイーーーッ!!
俺の前で諦めてるんじゃあねぇぜぇーーーっ!!」
ゼペット「ジョジョ!!?」
ゼペットの一番近くにいたジョセフが、彼を突き飛ばした。
しかし、ゴッド・ハンドの凶刃は止まらない。
ジョセフの手が持ち主を離れて空中を舞った。
ジョセフの絶叫が独房に響く。
ゼペット「ジョジョ....!
お主、わしなんかを庇って!」
ゼペットがジョセフに駆け寄る。
カレン「ジョジョ!
貴方.....腕がっ!」
ジョセフが抑える左手は、手首からさきがなくなっていた。
ジョセフ「お、俺の腕が.......
無いッ!
つーか、最初っから無ェ!!」
カレン&ゼペット「........へ?」
ヨアヒム「そうか!ジョジョは最初っから左手は義手だったんだら!」
ジョセフ「その通りよ!
残念だったなぁレニよォ?
おめぇの攻撃なんざ効かねえのさ。」
ゴッド・ハンドは舌打ちをするが、その表情は余裕を崩していない。
ゴッド・ハンド「.だからなんだってんだ!!
もう一度てめぇを殴れば済む話だぜぇっ!!!!」
ゴッド・ハンドが再び襲いかかるが.....
ジョセフ「ウル!!」
その進撃を突然現れた巨大な岩石が阻む。
ゴッド・ハンド「.こ、これは!!?」
ジョセフ「さァ、次は俺たちの反撃の番だぜ?」
地の悪魔・ソルム。
それがウルが変身した悪魔の名だった。
岩山がそのまま動き出したような外見の姿は、ゴッド・ハンドの突進を難無く受け止めるだけの頑強さを持っている。
ゴッド・ハンド「チッ!しゃらくせえ!
こんなもの!」
ゴッド・ハンドがソルムを投げ飛ばそうとするが、岩石の身体はびくともしなかった。
逆に強力な力で拘束され、動くことが出来なくなっていた。
ソルム「ジョジョ!準備は整ったぜ!」
ジョセフ「了解!!爺さん!!
頼んだぜ!!」
ゼペット「任せろ!!」
ゼペットが糸を繰る。
ゼペットが糸の先に何かを結びつけ、ゴッド・ハンドの爪に引っ掛けた。
ゴッド・ハンド「こ、これは!!」
糸のさきにあったのは、先程斬り落とされたジョセフの義手だ。
もう半分ほど石化が始まっていた。
その義手についたピアスのリングが、ゴッド・ハンドの代名詞ともいえる巨爪に引っかかっていた。
当然、義手が接触している部分から石化の侵食はゴッド・ハンド自身にも始まる。
みるみる石化する身体をみて、ゴッド・ハンドは動揺した。
ジョセフ「ウル!!今だぜ!!」
ソルム「任せろォ!」
ソルムが身体を後ろに引く。
次の瞬間、ゴッド・ハンドがたおれた。
ゴッド・ハンド「な、なんじゃこりゃあ!!」
地面に倒れ、石化して脆くなった赤爪は粉々に砕け散った。
ソルムは、ゴッド・ハンドの前に行こうとする力を利用して相手の腕や肩を正面から手前に引き、倒したのだ。
日本の国技・相撲の特殊技19手が一つ【引き落とし】と呼ばれるものである。
幼い頃、父ととった相撲が意外なところで役立った結果だった。
あぁ、簿記試験の件ですけどね。
見事に落ちてましたわ(笑)
てか合格率低すぎワロリンティウス
東大阪商工会議所での集計で合格率7%って(笑)
これここ数年で過去最低じゃねぇの?
もういいや11月にまた頑張ります。
得物を削がれた時点でゴッド・ハンドに勝ち目は無い。
自然の鉄槌と呼ぶに相応しいソルムの岩石の拳が雄叫びをあげながらゴッド・ハンドを打つ。
身体が限界を超えたのか、姿はもうレニに戻っていた。
轟音とともに壁に激突し、部屋全体にヒビが入る。
もはや勝負はついた。
レニはよろよろと立ち上がる。
その目は敗北を認めた目だった。
レニ「負けたよ.....」
失敗した者には 死 あるのみ。
この組織の鉄則だ。
彼は常にそれに殉じるだけの覚悟はしていた。
ゆっくりと彼の巨大な身体が、木の葉のように落下する。
ウル「レニ!?」
壁に空いた大穴に、彼は吸い込まれ見えなくなった。
ウル「レニーーっ!!」
何故彼の名を叫んだのか。ウルにそれを言葉にするだけの語彙はなかった。
ただ、拳を交えた男に対する敬意がそうさせたのだ。
とある波紋戦士の言葉を借りれば、男の奇妙な友情とでも呼ぶべきものだった。
戦いを終え、一行は捕らえられていたもの達の解放に向かう。
ウルはロジャーの、ジョセフはスージーQのところへ。
ウル「おい、じっちゃん!
しっかりしろ!」
ヨアヒムがロジャーの顔につけられた拷問用の鉄仮面を取る。
ヨアヒム「わ、取っても同じ顔だっち。」
「やかましい!それに、来るのが遅~い!」
拘束されていたのは、骸骨のような風貌のカエルとも火の悪魔ともいえないような不気味な顔の生き物だった。
金属質とも粘着質とも言い難い奇妙な鳴き声である。
ルチア「なぁにぃ?この変な生き物はぁ?」
ルチアのことばに変な生き物は不愉快そうに顔を歪める。
「失敬な娘子ですね!ワタシの名前は >>327 です!」
あれ?安価なの?
ロジャーじゃないの?
おそらく、本編でもあったあのニセネーム変更画面のオマージュだろう
安価は
モハメド・アブドゥルで
試験お疲れ…
SSも楽しみにしてる
試験ドンマイ乙ー
「......なぁんて名前ではなく、私の名前はロジャー・ベーコン。
愛と平和を愛する、永遠のスター・チルドレ....あ痛っ!」
ウルの容赦無い叩きが彼の背に叩き込まれる。
ウル「いいから、そんなの。
あんたのために安価するの大変なんだから!」
「な、何の話....」
ニコル「レニはやられたか....」
カレン「あなたは!」
言葉を遮り、登場したのはニコルだった。
ニコル「君は.....普通の人にはない特別な能力をもっているそうだね?
ひとつ.....それを私に見せてくれるとうれしいのだが」
解放された魔術師を見つめ、言葉を紡ぐ。
その男とは思えぬ色気を帯びた唇に、魔術師は肛門に氷柱を突っ込まれたような恐怖を覚え、叫ぶ。
「ウオオオオオオオオ!!」
ウル「あ!おい!じっちゃん!」
突然走り出した彼の後を追うように一行は走り出す。
最後尾はスージーQを抱えたジョセフだ。
島の回廊を走り抜け、財団の船に乗り、決死の思いでカンヌへと戻った一行。
街の酒場で態勢を整えると、ロジャーは正常にもどったようだ。
エミグレ文書が奪われたことと赤石の所持が確認された時点で、事態は一刻の猶予も許されなくなった。
カレン「そもそも、サピエンテス・グラディオって何者なの?」
ロジャー「ふむ、まずはそこから話すべきですかね。
この二十世紀の終わりに、多くの秘密結社が現れました。
イエズス会や薔薇十字団から派生した、いくつかの亜流派があり、サピエンテス・グラディオもそのうちのひとつでした。
最初は人類平等の理念の元、男女、貧富、階級の差を無くし、主を崇め、お互いを尊重した考えを実践する非常に美しい結社でした.......。」
ロジャー「肌の色を超え、民族の壁を超え、全員が手を取り合って進んでいけるかにみえたそのとき、
一人の男の出現により、サピエンテス・グラディオはその活動を大きく変えました。
新しく頭首になった男は、権力を基盤にした選民主義を唱え、結社に所属することが、優秀な人類であることの証だと熱弁を振るったのです......」
カレン「........」
ロジャー「結社の理想のためには、社会に対し、強引で過激な手段も厭わず行い、
世の中の姿を変えるのだという考えを、人々に植え付けたのです。」
カレン「それじゃ、テロリストじゃない!」
ロジャー「そのとおり、今のサピエンテス・グラディオは危険な人物に率いられたテロ結社に相違ありません。」
ゼペット「放っておいたらとんでもないことになる.......か。」
ジョセフ「ンな事ァどうだったいい!
どうしてだ?どうしてだよ!
なぁオイ、何で目ェ覚まさねぇんだ!!」
ジョセフの腕に抱かれるスージーQはまるで意識が無く、未だ沈黙を続けている。
スピードワゴンがそっとスージーQの手首を握る。
スピードワゴン「脈は確かにある!
だがッ!意識が無いッ!脳が覚醒していない!
これでは植物人間だッ!」
ジョセフ「畜生ッ!何故こんな事に!」
ウル「........」
うずくまるジョセフに、ウルは書けることばが無かった。
いや、そんなものは存在しないとわかっているから何も言わないのだ。
愛する人を喪うことの辛さが痛いほどわかるからだ。
ロジャー「脳が覚醒していない......。
というのは適切ではありませんね。」
ロジャーがスージーQの顔を見つめながら告げる。
ジョセフ「どういうことだ......?」
ロジャー「彼女にいま欠けているもの。
それは魂です。
魂が器たる身体に帰還を果たさない限り、彼女の意識は戻りません。」
ジョセフ「た、魂?」
乙ー
ロジャー「ええ。確か、いまはドンレミの少女とともにウルの心の中にとどまっているようですが.....
妙ですねえ....」
ロジャーが怪訝そうに首を傾げる。
ジョセフ「どういうこったい?」
ロジャー「おそらくドンレミで何か大きな力が働き、ジャンヌとスージーQの肉体から魂が分離してウルの心に移ったのでしょう。」
ロジャーがテーブルにコップを三つ置いた。
それぞれのコップには飴玉が入れられている。
ロジャー「いいですか?このコップがウル、ジャンヌ、スージーQの肉体と仮定します。
中に入っている飴玉は彼らの魂です。」
ロジャーが、スージーQとジャンヌの二つの飴玉を真ん中のウルのコップに入れた。
ウルのコップの飴玉は三つになった。
ロジャー「これが、いままでの状態です。
ウルの中に彼女たち二人分の魂が存在している。
しかし、スージーQの肉体はすぐそばにある。
つまり......」
ロジャーはウルのコップを傾け、スージーQの飴玉をスージーQのコップに返す。
ロジャー「こんな風にスージーQの魂は自らの肉体に帰還できるはずです。
しかし、今現在彼女の魂は肉体に戻っていない。」
ロジャーはスージーQの飴玉をウルのコップに戻した。
スピードワゴン「何故戻らない?」
ロジャー「考られる可能性として一番高いのは、彼女自身が肉体への回帰を拒否している場合ですね。」
スピードワゴン「そんな!何故スージーQはそんなことを!?」
ジョセフ「何と無くだが、俺にはわかるぜェ。」
ゼペット「ジョジョ....」
ジョセフがゆっくりと椅子に腰を下ろす。
ジョセフ「あいつは妙ォ~に人の面倒みたがるところがあるからよォ。
あんな小せぇガキを一人で置いてくなんかできねぇんじゃあねぇかな。」
天井を見上げながら、ジョセフはカーズとの戦いの後、自分を看病してくれていた彼女を思い出す。
スピードワゴンから聞いた、ジョセフの祖母がジョナサンにした看病ほど献身的とは言い難かったが、飾らない妻の看病が心地よかったのは覚えている。
乙ー
ウル「とりあえず、俺がいっぺん確認してくっから待っててくれよ。」
そう言い残してウルは自分の深層意識のなかに落ちて行ってしまう。
止める暇もなかった一行はウルをそばの椅子に座らせた。
カレン「ねぇ...ロジャー。」
カレンが机の上に並べられたコップを見つめながらロジャーにたずねる。
カレン「もし.....もしもよ?
いまウルの中に他人の魂が取り込まれてる状態でその人の本来の肉体が消失していたらどうなるの?」
ロジャー「ジャンヌのことですか.....」
カレン「.........」
ロジャーが言いにくそうに口を開く。
ロジャー「人が本来帰るべき肉体は一人ひとつづつです。
いまの状態は他人の家のスペースを間借りしているようなもの。
いつまでもいられるわけじゃあありません。いずれ限界が来ます。
そして、限界がきて行き場を無くした魂は.....」
ロジャーが飴玉をつまみ、指先で粉々に砕いた。細かい破片が床に散らばる。
ロジャー「消えてなくなります。」
カレン「消えたらどうなるの.......?」
ロジャー「その答えは私には永遠に手が届きません。
皆さんならいずれ答えにたどり着けますが、それを他人には伝えられません。」
吸い込まれるように地面に降り立つウル。相変わらずヤドリギからは裸の自分が生えていた。忌々しくなって蹴りをいれるが、何か変化が起こる気配も無い。
ウル「っと。んなことしてる場合じゃねえや。
おーい!ジャンヌ!スージーQ!!」
二人の名を呼びながら自分の心をさまよっていると、部屋の隅に彼女たちを見つけた。ジャンヌは怒ったような様子で、スージーQは困ったような様子で。
ジャンヌ「スージーQ!!あなたはもうここにいなくてもいいのよ。
早く帰って旦那さんにあいにいかなきゃ!」
スージーQ「でも......」
ジャンヌ「でもじゃないよ!」
ウル「お二人さん。喧嘩?」
ウルを見つけたジャンヌが、彼に駆け寄る。
ジャンヌ「...ウルからも言ってあげてよ。
帰った方がいいって。
あ、ほらまた。」
そういうとスージーQの足元に光り輝く穴が発生した。
スージーQ「ちょっ!またなの~?
しつこいわね本当~!!」
ジャンヌ「あれが自分の身体への帰り道なのよ。
でも、スージーQったら戻りたがらないの。」
スージーQは、その穴に呑まれまいと辺りを走り回る。
ウル「スージーQよォ~。
なんで戻らねえの?
そんなにここ居心地良い?」
スージーQが眉間にシワを寄せて抗議する。
スージーQ「んなワケないでしょ!居心地最悪よサイアク!
狭いし暗いしジャンヌはゲーム強いし!」
ウル「あ!お前おれのメモカーのセーブデータに上書きしやがったな!
全く.....。
旦那も結構マジに心配してんぜ?」
スージーQ「それよ!」
ウル「?」
スージーQが夫の話題が出ると顔を曇らせる。
スージーQ「小さい子どもをほっぽり出して自分だけ帰ってきたなんてあいつに言えるわけないでしょ!?
だからまだ帰らない!」
頬を膨らませ、顔を赤く染めるスージーQ。
ウル「あははははははは!」
突然ウルが笑い出した。
その姿にさらにスージーQは青筋を立てて怒る。
スージーQ「な、何がおかしいのよ!」
ウル「ああいや、悪ィ悪ィ。
夫婦揃って同じようなこと言い出すもんだからよ。」
スージーQ「?」
ウル「あんたの旦那がさ、あんたが小さい子ども残して帰ってくるなんかきっとできねぇって言っててさ。
ホント、お似合いだぜあんたら。」
ウルが可笑しそうに、しかしどこか羨ましそうに笑う。それに釣られてジャンヌもクスクスと笑い声を漏らした。スージーQの頬がさらに赤く染まる。
スージーQ「も~!バカバカバカ!!
からかうな~!!」
ジャンヌ「あ!スージーQ!」
スージーQは走って何処かに行ってしまった。
ウル「ありゃりゃ。
素直じゃねえのな。
でもまぁ、大丈夫そうだな。」
ジャンヌ「....帰るの?」
ウル「おう。二人の顔も見れたしな。
俺も帰る所あるし。」
ジャンヌ「そう.......」
出口の鉄門に向かって歩き出す。
ジャンヌ「.....ウル!私.....」
その歩みをジャンヌの声が引き止めた。
ウル「ん?どした?」
ジャンヌ「.............ううん。なんでもない。
気をつけてね。」
ウル「おう。またな~!!」
手を振って門をくぐると、やがて彼の姿は見えなくなってしまった。
ジャンヌ「私、帰る場所........無いや...。」
ジャンヌ…乙ー
全部読んだ
乙
サントマルグリット島での戦いから数日後、ウルとジョセフたちはロジャーの家に戻っていた。何やらロジャーは見せたいものがあるらしい。
ロジャー「サピエンテス・グラディオが欲しがったもは四つ。
エミグレ文書、私の命、スーパーエイジャ、そしてこれです。」
部屋の中央に鎮座する、少女の悲鳴のような音をあげるエレベーターを下ると、そこには巨大な航空機が格納されていた。
スピードワゴン「こ、これは!?」
ロジャー「核融合熱を利用して運行する超高速飛行船です。
しかも燃料はただの水。究極のハイブリッドエンジンですよ。」
ロジャーが得意そうに飛行船を見上げる。
ジョセフ「確かにすげえな。
だが、なぜこれを欲しがる?
奴らだって巨大な飛行船なら持ってたじゃあねぇか。」
いつぞや自分たちに砲撃をお見舞いした飛行船。
移動ならあれで事足りるはずだ。
ロジャー「良い質問ですね。
答えはスーパーエイジャですよ。」
ジョセフ「?」
ロジャー「ジョジョ。あなたは石仮面とスーパーエイジャによって究極生命体となった柱の男を倒したそうですね。」
ロジャーが黒板に石仮面とスーパーエイジャ、そして角の生えた男の絵を描く。
ロジャー「スーパーエイジャは太陽の光を増幅し、強化することができる。
その力を石仮面に伝達することで柱の男は究極生命体と化しました。
もし.....その力を他のものに使えばどうなると思いますか?」
ジョセフ「!!!
ただの吸血鬼が究極生命体するっていいてえのか!?」
ロジャー「違います。」
ロジャーは頭を振る。
ロジャー「確かに赤石付きの石仮面を使えば、人間でも吸血鬼以上の吸血鬼になれるでしょう。
しかし、精々太陽の克服が関の山。
柱の男が究極生命体たり得たのは、その高いポテンシャルがあってこそ。
ジョジョ、あなたは人や柱の男以外にも石仮面が使えることは知っていますか?」
ロジャーが新しいイラストを黒板に描く。
それは牙の生えた巨大な馬の絵だった。
ジョセフ「あぁ、よぉく知ってるぜ....」
ロジャー「動物の脳に骨針を打ち込むことで、吸血鬼化させる。
石仮面を応用した技術の一つです。」
ロジャー「スーパーエイジャは石仮面のもつ能力を引き上げることができます。
ただの石仮面ではできなかったことがね........
なんだかわかります?」
一行はかぶりを振る。
が、一人青ざめた男がいた。
財団で石仮面の研究を行っていスピードワゴンである。
スピードワゴン「ま、まさか。...『アレ』が可能なのか。」
ロジャー「可能です。恐らくは、この飛行船を奪い、それを行うつもりだったのでしょう。」
スピードワゴンが、震えながらその場にへたり込んだ。
ルチア「ちょっとお~!なんなのよ二人揃ってぇ?
そのお面があれば何ができるのぉ?」
スピードワゴン「.......無生物の、吸血鬼化だ。」
ジョセフ「なに!?」
カレン「無生物....。ただの道具が?」
ロジャー「ええ、『吸血機』とでも言いましょうか。
人の生き血を燃料に、超精密かつ高馬力の動きを可能にする最悪のマシーンです。
技術的にはあと一歩まで来ていたのです。
しかし、通常の石仮面ではパワー不足だった。それこそスーパーエイジャほどのパワーが無ければ起動できません。」
ヨアヒム「もし、この飛行船が吸血機化したらどうなってただらか?」
ロジャー「....時速1300キロ以上で空中を自在に駆け回り飛行する巨大な鉄の怪物が誕生します。」
もし、そんな兵器が誕生すれば、世界の軍事バランスが崩壊するだろう。
それは勃発している第一次世界大戦を超える戦争の発生を意味した。
なんと恐ろしい…乙ー
ロジャーが飛行船を起動させる。エンジンが熱を帯び、唸りをあげる。
ヨアヒム「じいさん。ニコルたちの行き先はわかってるだらか?
ロジャー「もちろん!」
カレン「どこ?。」
ロジャー「サピエンテス・グラディオの首領のいるところです。」
ジョセフ「ほぉーう。いよいよ黒幕のお出ましかい。
で、その野郎はどこにいるんだ?」
ジョセフがそばにおいてある地図を広げた。
ロジャー「ロシアのペトログラードです。」
飛行船が格納されていた鉄扉が開き、発進をつげるサイレンがけたたましく鳴り響く。
スピードワゴン「ロシア!またずいぶんと遠い。」
ロジャー「ええ、さぁ出発しますよ。
皆さん掴まって!
ベーコン号発進!!」
ウル「ベーコン号?」
あんまりなネーミングに一行は閉口したが、そんなことはいっていられない状態だった。飛行船は凄まじい振動のなかで空中に揉まれていたのだ。
カレン「ちょっと!大丈夫なのこれ!?」
ロジャー「話しかけないでください!!」
ロジャーが久しぶりにハンドルを握る老人のような手つきで操縦舵を握る。
ジョセフ「ヒィー!危なっかしくて見てられねぇぜ!!
おい、じじい。そこ代われ!おれが操縦する。」
ロジャー「い、いやだ!これは私が作ったんだ!だから私が運転するんだ!」
ロジャーがジョセフの申し出を拒否して体を捻った。その動きが操縦桿に伝わり、ベーコン号はフォークの変化球のような動きで急激に高度を下げた。
ゼペット「ジジイ!おとなしくジョジョに操縦を代わるんじゃーッ!!」
ロジャー「やかましい!!お前だってジジイじゃないかーっ!
あ、こら!ウル!何をするんです!」
ロジャーがゼペットに食ってかかったすきに、ウルが操縦席から彼を引き離した。
ルチア「いまよぉ!ジョジョ~!」
ジョセフ「おう!任っかせなさぁ~い!
さぁ操縦桿ちゃ~ん。にぎにぎしちゃうぜぇーッ!」
ジョセフが操縦桿を握ると、今までの暴れ馬のような飛行はどこへ行ったのかと思うほど、安定した運行で進んだ。
ロジャー「.........」
ジョセフ「お、おい。じいさん。
んな落ち込むなよ。誰にだって得手不得手はあるもんじゃあねぇか。」
飛行がジョセフのおかげで安定して数時間。ロジャーのテンションは平行線上を走る飛行船とは対象的に下降の一途を辿っている。
カレン「そ、そうよ!あなたはこんなにすごい飛行船を作り上げたじゃない。
自信持って!!」
スピードワゴン「そ、そうですぞ。御老体!
これほどの性能をもつ機体は、我が財団も持ち合わせてはいない。あなたは天才だ。」
ロジャー「ほ、ホント!?」
ロジャーが少年のような輝きを、骸骨のように窪んだ眼窟にはめられたビー玉のような目に宿す。
ヨアヒム「俺様ですらこれがどうやって飛んでるのかわかんないだら!」
ウル「おめーは紙飛行機がなんで飛べるのかもわかってねーだろ。」
ヨアヒム「ば、馬鹿にするなだっち!!
ウ、ウルは説明できるんだらか!?」
ウル「できるぜ。」
ヨアヒム「何!?どうやって飛んでるだら?!」
ウル「浪漫だ。」
ヨアヒム「浪漫か。」
カレン「アホか。」
突然、鐘楼を鳴らすような凄まじいサイレンが船内に鳴り響く。
ジョセフ「こ、これは!!」
青ざめるジョセフ。
スピードワゴン「どうしたジョジョ!?」
スピードワゴンが操縦席に乗り出すと、瞬時に何が起こったのか理解した。
スピードワゴン「燃料が足らない!!
このままでは墜落だッ!!」
ジョセフ「くそッ!なんでだ!燃料漏れってわけじゃあなさそうだが!」
ロジャー「あーーーーッ!」
突然ロジャーが燃料メーターと航空記録を見て叫んだ。
カレン「どうしたのよ!?」
ロジャー「この飛行船でちょいちょい買い物に行ってたんですが、買い物のたびに燃料補給するのが面倒で暫くやってませんでした.........」
ジョセフ「馬鹿野郎ーーーーッ!!
燃料くらいちゃんといれとけーーーッ!!」
ヨアヒム「お、落ちるだらーーーっ」
地面に急降下するベーコン号。眼下にはロシアの街並みが広がっていた。
嗚呼、やっぱりジョセフの乗る飛行機は墜ちる運命か…w
場所を同じくして数刻前ー
ペトログラード、冬の宮殿。
皇族の住まう荘厳な館に二人の男女の姿があった。女は情事の跡が生々しく残る身体を拭きながら窓に目をやる。その視線の先の痩せた背の高い男は、生気の感じられない肌から伸びた髭を骸骨の様に白く長い指で撫でながら虚空を見つめていた。
「申し出ありません。グレゴリー様。
寝過ごしてしまいました。」
サピエンテス・グラディオの女魔術師 ベロニカはさらけ出された乳房を隠すこともなく男に身体を向ける。その光景から、彼らが肌を重ねた数が一度や二度では無いのが見て取れた。
「気にするな。正午まではまだ時間がある。」
ベロニカの方を向いたその目は沼地の様に深く、夜よりも黒かった。帝政ロシアの怪僧 グレゴリー・エフィモヴィッチ・ラスプーチン。そして、サピエンテス・グラディオの首領である。
扉から木を叩く音が届く。宮殿の衛兵だ。
「皇后様の御言葉をお届けに参りました。
夕刻から舞踏会を始めるので、ご出席する様にとのことです。」
ラスプーチンはゆったりとした動作で扉の前に立つ。開けることはしなかった。
「残念だが、今宵は教会に用事がある故出席できぬ旨を伝えてくれ。
それと、明朝には必ず参上いたしますとな。」
畏まりました。という衛兵の声と共に、足音が遠ざかる。
「ようやく起きたというのにもう宴。か。
呑気なものだ。」
あざ笑うようなラスプーチンの態度に、皇族への忠誠心はかけらほども感じられなかった。
「皇太子のご病気を治されてから、皇后のラスプーチン様への信頼は絶大。
少しでもそばにいていただきたいのですよ。」
「皇帝陛下の信頼を得るには必要な努力....か。」
ベロニカの言葉にラスプーチンはほくそ笑む。
血友病という難病に冒された皇太子 アレクセイ を治癒したことがきっかけとなり、ラスプーチンは帝政ロシアの内政に食い込むことに成功した。
そして、政治への助言。それも、故意的に国民の皇帝への信頼が失墜する政策を行う助言を行った。元来政治に向いていなかったニコライ二世はこれを信頼する友の助言と進んで取り入れ、国民の信頼は日に日に失墜し、地に落ちようとしていた。
すべては計画通りだった。
ベロニカ「その努力も、もうすぐ終わりを迎える。
違いますか?」
ベロニカはいつの間にかいつもの服に着替えていた。
「吸血機の製造も順調。燃料も戦場へ赴けば掃いて捨てるほど手に入ります。
すべては完璧です。」
「大ロシア300年の幕引きが主役が躍り出るまでいま暫くの辛抱か....。」
「世界の形が大きく変わるのはもうじきです。」
ベロニカが指先で愛おしそうに修道服に身を包んだラスプーチンの胸元を撫でる。
革命。というには余りにも危険で非人道的極まりない計画だ。
「ベロニカ。」
部屋を出ようとしたベロニカを、ラスプーチンが呼び止めた。
「神殺しの男が現れるのも時間の問題だ。警戒を怠るな。」
「はい。」
「.......それと」
ラスプーチンの目が豹の様に細く怪しさと鋭さを増す。
「ニコルからも目を離すな。
日本の特使との交渉、いらぬ密談を進めている様だ。」
「.......はい。」
ベロニカが部屋を出ると、部屋は静かになった。
「小僧が。つまらぬ復讐心を捨てきれぬか。」
ベロニカとラスプーチンの会話をいままで扉のそばで盗み聞きしていた人間がいた。
名をアナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァ。
ロシア帝国の皇帝ニコライ2世とアレクサンドラ皇后の第四皇女。ロシア大公女である。皇太子アレクセイの実姉でもあった。
「.....フゥ、よく聞こえないわね。
夕べはあんなにお盛んだったのに、昼間はヒソヒソ声だわ。
どうやら、今夜の舞踏会にはこないみたいだけど。きっと何か悪だくみがあるからだわ。」
アナスタシアは考え込む様に腕組みをしていたが、何か閃いたのか太陽の様に笑顔になる。
「そうだ!私がその証拠をつかんで、お父様にご報告すれば、ラスプーチンの正体をわかってくれるはず!!
見てなさい!ロシアを好きにはさせないから!」
アナスタシア 14歳。腐敗する皇国の為、彼女の戦いが始まった。
「とりあえず、イワンに話を聞かなくちゃだわ!」
アナスタシアは先ほどラスプーチンへ伝言を伝えに行ったイワンに話を聞くことにした。
「え!ラスプーチン様のご予定ですか?
司教様は今夜の舞踏会にはでられないそうです。なんでも街の教会にお出かけになるとか。」
「街の教会!?.....何か匂うわね。」
ラスプーチンがそんなところに用があるとはアナスタシアには思えなかった。
「とにかく、昼間は警備がいるから外に出れないわ。
ひとまず部屋に戻って作成を練らなきゃ!」
夜になり、自室近くの警備が手薄になったところでアナスタシアは宮殿を抜け出した。
彼女が信頼する数少ない大人。皇族お抱えの技術士エドガーの元へ向かう為だ。
彼の家は時計屋を営んでおり、部屋には多くの時計が時を刻んでいた。まるで、その時計の数だけ世界があるのではないかと前に弟が話していたのを思い出した。
「あの子が大人になって皇帝になる日まで、私が守ってあげなくっちゃ。
その為にもラスプーチンの正体を突き止めないと!
エドガーまだ?」
大柄の恰幅の良い老人・エドガー。
彼の机には内部機構を調整中のカメラと鉄球が置かれていた。
「こんなものを欲しがって...
またいたずらかなにかしようというんじゃあありせんよね?」
エドガーが孫を心配するような目でアナスタシアを見つめる。
「ちがうわ!私は祖国のために身を粉にしてしてはたらいているのよ!」
アナスタシアは心外そうに頬を膨らませた。
「皇后様や皇帝陛下に心配をかけさせてはいけませんよ。」
「お母様は弟のアレクにかかりきりで私なんか気にも留めないわよ....。」
その顔にははっきりと寂しさが現れていた。
「またそのような....。
ぁ姫様、完成しましたよ。」
エドガーが調整を終えたカメラと鉄球をアナスタシアに渡す。
「わぁ!!ありがとう!エドガー!!」
アナスタシアは大事そうにそれらを抱える。
「いいですか、姫様。この不思議な鉄球もカメラも、決してイタズラには使わぬと約束してください。」
「うん!うん!」
アナスタシアの嬉しそうな様子に、エドガーは目を細めた。
彼ら一家の平穏と安泰を、願わずにわいられなかった。
「さぁ、もうお行きなされ。暗くならないうちに....」
目的の品が手に入り、アナスタシアが扉を開けてでようとノブに手を伸ばした。その瞬間、店に入ってきた客と入れ違いになり、ぶつかりそうになってしまった。
「失礼。」
母に厳しく礼儀は教え込まれていたので、アナスタシアは優雅に対処した。入れ違いになった客も、年の割に随分と礼儀を弁えたその姿に真摯に接した。
「こちらこそ。」
大日本帝国海特佐 加藤政二。
外交の仕事の途中の彼だったが、持っていた懐中時計の調子が芳しくなく、街角に見つけた時計屋に立ち寄ったのだった。
「ほう、これは珍しい。日本製ですな。
どれ、みて見ましょう。」
エドガーは慣れた手つきで時計の分解を始めた。
「お客様は日本の方で?」
紺色の軍服に目をやりながらエドガーが尋ねた。
「ええ。外交でヨーロッパを巡っています。
ロシアは始めて来ましたが、..美しい国ですね。」
加藤は、まどから見えるペトログラードの景色を眺めていた。日本とはまた違う暖かさが感じられる街並みだった。
「ええ。春は短いですが、一番良い季節です。」
「戦争はまだ続きそうですか?」
加藤の言葉に、エドガーは作業の手がふと止まった。頭には皇帝一家の姿と、彼等への不満を漏らす国民の姿だ。
悪いのは皇帝一家では無い。ラスプーチンだ。とエドガーが解いたところで、彼等にとっては税金を使って宮殿でのうのうと暮らす寄生貴族でしか無いのだろう。
「ええ。あいもかわらず。
皆、始めの内はクリスマス中に終わると思っていたのに......」
世界全土を巻き込んだ第一次世界大戦の戦火は、着実にその規模を広げていた。終わりの見えない闘争に、国民は疲れ切っている。
修理を終えたエドガーが、時計を加藤に手渡す。時計は以前と変わりなく、正確に時を刻んでいた。
「歯車が痛んでいたので、新しいのに変えておきました。」
直した者の性格を表すように、丁寧な仕事ぶりだった。
「おお、ありがとう。」
時計を受け取り、再び窓を見つめる加藤。
その視線は、何処か憂いを持った眼差しに変わっていた。
カメラを手にいれ、ラスプーチンの弱みを握るたまにアナスタシアはペトログラードの街に赴く。
ラスプーチンの向かう方角に、教会が無いことは調べがついている。
「やっぱり...
教会なんか、行かないじゃない!」
ラスプーチンは街の郊外にある河の河川敷に人目を避けるように入った。河川敷の影には、修道服に身を包んだあやしげな風貌の男が潜んでおり、ラスプーチンとなにやら話し込み始めた。
「怪しい匂いがプンプンするわッ!」
「例の準備は進んでおろうな?」
「はい、順調に。
前線が膠着状態に入りましたおかげで、首都の警備はガラ空きです。」
ラスプーチンの質問に、相対した男は首を垂れて答えた。
「街宣祝賀会までもう日がない。仕留めるチャンスは一度きりだ。決して気を抜くな。」
「よく聞こえないじゃなきのよ!」
二人の会話は、アナスタシアの距離では聞き取ることが難しかった。もどかしさにアナスタシアは舌打ちをする。
「....街宣祝賀会?.....チャンス?
.....もうじれったいわね!!こうなったら!」
アナスタシアは受け取ったばかりのカメラを構える。決定的瞬間を捉えて父親である皇帝に証拠写真を突きつけるのだ。
カメラがフラッシュを焚いた瞬間、二人がアナスタシアに気づく。
慌ててカメラを隠すが、後の祭りだ。
「これはこれはアナスタシア姫、意外なところでお目にかかれましたな!?
他の姫君たちとちがい、少々お転婆がすぎますぞ。
そんな悪い子では長生きできません。」
ラスプーチンの表情から余裕は崩れない。自分を排除してしまえば事足りると考えているのだとアナスタシアは察した。
「あんた、凱旋祝賀会で何か企んでるわね!?」
「ほう、聞かれてしまいましたか。仕方ありませんね。
美しい姫君の将来を摘み取ってしまうのは残念ですが、すぐにご家族も後から参りますゆえ...」
氷のような悪寒がアナスタシアを貫く。
この男は自分だけでなく、両親や姉弟まで手にかけるつもりなのだ。
「騒いでも無駄です。ここでは誰も助けに来ませんよ。」
ラスプーチンのそばにいた男が口笛を吹くと、何処からか化け物の鳴き声が響く。
ここは危険だ。そう感じたアナスタシアは急いでエドガーの家へ向かった。あそこなら安全なはずだ。
暫く走り、もうすぐでエドガーの家が見えるところまで逃げることができた。
「...ここまでくれば大丈夫かしら...?」
そう思い、一息ついた瞬間だった。
あの修道服の男が呼び寄せた使い魔が空から飛来したのは。
呼び寄せられた使い魔がアナスタシアの命を刈り獲ろうと牙を剥く。追い詰められ、路地裏に逃げ込んでしまった。
こんなところに逃げ込んでしまっては、誰も助けにこないだろう。
が、次の瞬間。
「.....ここは。」
急に男の声がアナスタシアの真後ろから聞こえた。
びっくりして振り向くと、長髪でピアスをあけた怪しい風貌の青年が立っていた。
余りにも急に現れたので、アナスタシアは空から降ってきたのではないかと疑ったほどだ。
だが、助かった。自分は死なずにすみそうだった。
男はキョロキョロと周りを見渡している。
「あ、あの...」
「ここは地球ですか?」
「は?」
「申し遅れました。私の名はヌ・ミキタカゾ・ンシと言います。
年齢は132歳です。マゼラン星雲から地球を調査する為に来ました。」
まさか、マゼラン星人が活躍するのか!?
乙
まさかのミキタカとな
乙
ミキタカ?乙ー
「あの、あなたいまなんて....」
アナスタシアは聞き間違いかと思った。マゼランセイウンなど見たことも聞いたこともなく、一切の心当たりが存在しなかったのだ。
「ん?どうしたんですか。お腹がすいたのならいまちょうどこの星の食べ物があるので差し上げますよ。」
そういって彼が手に持った鞄から取り出したのは、美味しそうなピロシキだった。信じられないことに熱々の揚げたてだった。
一体どこに鞄にピロシキを、それもどうみても揚げたてのものを持っている人間がいるのだろう。しかも、いまこの男は『星』といった。国でも地方でもなく、星と。
それが事実なら彼はこの地球の外側から来たということになるではないか。そのような存在につけられる名称はただ一つである。
「う、宇宙人....!!?」
「ええそうです。たしか去年か一昨年にもこの星のうぇーるずというところにお一人でいらっしゃった方がおられるようですが....。残念ながら滞在先で亡くなられたそうですね。痛ましい事故だったそうで。」
と、そこでいままで空中で停滞していた使い魔がガラスを引っ掻くような不快な鳴き声とともに二人に襲いかかった。ミキタカゾと名乗った彼は背後をとられてしまった。使い魔の爪は彼の頚動脈を正確に狙っていた。
「避けて!危ない!」
アナスタシアが叫ぶが、使い魔と彼の距離ではどう考えてもそれを避けることは不可能だった。
が、次の瞬間信じられないことが起こった。
彼の身体が突然ほどけたのだ。
まるでパイ生地のような厚みのある帯状にほどけた彼は、徐々に細長くその身体を再構築し始める。
変態を終えた彼の姿は、なんと硬い鉄の柱になってしまった。その硬い身体は使い魔の爪を弾き返した。
「こ、これが宇宙人のチカラッ!!」
アナスタシアは興奮した。これが外宇宙の世界なのだ。自分はいま、地球の常識を超えた存在を目の当たりにしているのだ。
「この星には凶暴な鳥が生息しているのですね。」
再び元の姿に戻ったミキタカゾは、ポリポリと頬をかきながら使い魔を見上げる。
「違うわ!そいつは鳥なんかじゃない!
悪い魔術師に操られた使い魔よ!」
「なるほど、躾のなっていないペットというところですか。動物を飼うのが好きな身としては感心できませんね。飼い主は責任を持たなければ。」
ミキタカゾは鞄に手を突っ込み、中身をあさり始めた。そして、おもちゃのようなカラフルな見た目の銃を取り出す。
「そ、それは!?」
「暴れるペットを傷付けずに捕獲するためのものです....が。使えませんねコレは。エネルギーが無い。」
そういって鞄に再びしまってしまう。
つかえなっ!
「チッ!使えないわね!!いいわ!この始末は私がつけてやるんだから!」
アナスタシアはエドガーから受け取った鉄球を手から放つ。
手から離れた鉄球は勢いよく使い魔に命中し、その腕を粉々に砕いた。
「おぉ、凄い!」
ミキタカゾは地球の未だ底の見えぬ技術に感嘆の声をあげた。
この鉄球は内部に仕込まれた精密なカラクリにより回転するようになっていたのだ。回転を伴った鉄球は凄まじいエネルギーでもって対象を粉砕することができた。
だが、アナスタシアは不満そうに首を捻る。
「少し逸れたわね。頭をブッ潰すつもりだったんだけれど!」
使い魔との戦いを屋上から双眼鏡で眺める男がいた。使い魔の主人であり、サピエンス・グラディオの幹部が1人ビクトル。レニ、ベロニカ、ニコルとともに結社の四強と呼ばれる存在である。
ビクトルがアタッシュケースを改造した無線機を起動させると、スピーカーからラスプーチンの低い声が聞こえて来た。
「なんだ?」
「アナスタシア姫の暗殺に放った使い魔ですが、加勢がはいったことにより苦戦しています。やられるのは時間の問題かと。」
「神殺しか?」
「いえ、神殺しではありません。長髪でピアスの怪しい男です。信じられないことにいきなり鉄柱に変身しました。鉄の硬度すらも再現できるようです。」
「....ペトログラードに吸血鬼をいくつか駐屯させてある。作り出した吸血機の武器を持たせた。
いまからそちらに向かわせよう。」
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ~!!」
アナスタシアが放った鉄球は、ダメージを受けて動きが鈍った使い魔の頭部を粉砕し、停止させる。ミキタカゾが様々なものに変身して補助をしてくれたので、終始有利に戦うことができた。
「終わりましたね。アナスタシアさん。」
「ええ、ありがとう。これはお礼よ。
とっておきなさい。」
アナスタシアは懐にしまっていた宝石付きの指輪をミキタカゾに渡した。
ミキタカゾは暫くそれを眺め、クンクンと匂いを嗅いでいたが次の瞬間それを躊躇なく口に放り込んだ。
ポリポリとキャンディを噛み砕くような音が聞こえる。
「ちょ、なにやってんの!?」
「ありがとう、アナスタシアさん。
とても美味しいです。」
最近キャラ名をセリフの前に入れてくれないね、乙一
↑soryy 。普通に入れるの忘れてた。
気をつける。
アナスタシア「ねぇ、さっきからなに?
物凄い血なまぐさいんだけれど?」
アナスタシアが鼻をひくつかせる。使い魔の死体は消滅してしまったので、他の誰かの血のはずだ。
ミキタカ「表の通りの方から匂ってくるようですね。
足音も聞こえてきました。」
二人がいた場所は表通りの建物から切れ目のようにできた路地裏の突き当たりだった。騒ぎを聞きつけた街の住人が様子を見にきたのかと思ったが、その異臭の正体が分かった時に助かるかもしれないという淡い期待は粉々に打ち砕かれた。
アナスタシア「な、なんなのよコイツら~~~ッ!!
き・・・牙をむいてる・・・・・・・ヒィィィィィィ
血塗れの銃を握りしめているゥゥゥ」
表通りから現れたのは、対戦車ライフル銃を携えた醜男たちだった。
「ヒャッハーーッ!!お姫様を見つけたぜ~~~~ッ!!」
アナスタシアの姿を認めた彼らは口を開くと同時に発砲した。
引き金を弾く前にミキタカが靴に変身してアナスタシアに取り付き、屋上まで跳躍したため、寸前のところで弾が当たることはなかった。
外した弾丸は巨大な穴を壁に作る。
まともに喰らえばアナスタシアの細い身体を真っ二つに引きちぎるだろう。
「しゃらくせぇ~~~ッ!!」
しかし、次の瞬間彼らは手当たり次第に弾丸を連射し始める。それも、まるで自動小銃のような連射速度で。
当然凄まじい反動が彼らの身体に襲いかかるはずだが、全く意に介している様子は見受けられなかった。
それは彼らが人外の存在であることの証明だった。
そして、彼らの得物もまたなまともな代物ではないのが明白だった。
ライフル銃の本来安全装置が取り受けられている部分からは不気味な骨針が突き出しており、そこから血液が滲み出ていた。
「ん~!なんだよおめー!腹が減っちまったのかァ!?
しょうがねぇやつだなぁおめーはよォ!!」
アナスタシア「な、なんなのよあいつ!!自分の銃と喋っているッ!!」
アナスタシアの位置からはわからなかったが、吸血機が取り付けられたライフル銃の銃口から不気味な声が発せられていたのだ。
「ウルセ~ッ!!俺様ヲ使いテェナラ飯ヲ寄越シヤガレ~~~ッ!!」
「ったく~ッ!仕方ねえなぁ~ッ!!
じゃあお食事タイムだぜェーー!!
たぁんと召し上がれ~~~ッ!!!」
そういうと男たちは銃口の照準を表通りに合わせた。
向けられた銃口の先には、騒ぎを聞きつけて様子を見にきた街の子供たちの姿があった。
アナスタシア「あ、あいつら何する気なのよ!!?
や、やめなさい!!私の国の人たちを傷付けたら容赦しないんだから!!!」
屋上からの怒声に吸血鬼たちは下種な笑い声で返した。
「お姫様よオ~ッ!!傷付けるっつうのは、こういうことかい!!!!!!」
吸血鬼達がライフル銃を取り回す。
アナスタシア「ミキタカ!!!力を貸して!!
あのままだと、あの子たちが殺されてしまう。
ねぇ聞いてるのミキタカ!!!!!」
靴に変身したミキタカに助けを呼ぼうとしたアナスタシアだったが、返事が無い。
代わりに出てきたのは吐瀉物だった。
靴の内部から染み出してきていた。
心無しか靴も震えているように見える。
アナスタシア「キャアアアアアアア!!
ど、どうしたのよ!ミキタカ!!」
ミキタカ「ギャアアアアアアアアアアアアアアア!!
な、なんなんだこの音はアアアアアアアアアアアア!!
あ、頭がおかしくなりそうだッ!!!!」
靴から人間の姿に戻ったミキタカは、頭を抱えて白目を剥き、泡を吹き出した。
顔には真っ赤な蕁麻疹が発生している。
アナスタシア「音!?別に何の音も.......
そういえばさっきから何処からかサイレンの音が......
て、そんな場合じゃないのよ!!
私の国の人たちが危ないの!!」
既に彼らは新たな弾丸の装填を終えてしまっていた。
ミキタカ「だ、だめだ!!動けない!!!この音をッ!この音を止めてくれ~~~ッ!!」
うずくまったミキタカは、うめき声とともにのたうちまわる。
ミキタカには頼れない。何とかできるのは自分だけ。
そう直感したアナスタシアは吸血鬼達に向き直った。
アナスタシア「やめなさい!!!やめろ!!!その銃を下ろしなさい!!!」
「撃ち方用ォ~~~~~~意イイイイイイ!!!!」
吸血鬼達が引き金に手をかける。銃口は哀れな子供たちをしっかりと捉えていた。
アナスタシア「貴方たち!!逃げて!!早く!!!殺されてしまうわ!!!!
しかし、子供たちは動けなくなかった。
生まれて初めて向けられた本気の殺意に恐怖してしまったのだ。そして、それが生涯に抱く最期の感情となるのだ。
アナスタシア「早く!!!早く!!!!!逃げてよー!!!!!」
アナスタシアが鉄球を投げつけるが多勢に無勢。おまけに不死身の肉体をもつ吸血鬼には焼け石に水だった。
「撃てエエエエエエエエエイ!!!」
アナスタシア「ああああああああああああああああああ!!!!」
アナスタシアの絶叫とともに銃口が火を吹いた。
地面に拳を血が出るほどに叩きつける。
目の前で国民がむざむざと殺されてしまうのに、何もできない。
家族に近づき、国を腐敗させようとするラスプーチンを倒すこともできない。
弟の代わりに父や国を支えることも女の自分には叶わない。
全てが悔しかった。
今にも落ちてきそうな空の下でアナスタシアは泣き叫んだ。
そして次の瞬間、アナスタシアの眼前に何かが落ちてきた。
カレン「ペトログラードへの命中確率シックスナインです。」
ジョセフ「どう考えても100%じゃあねぇかあああああああああああ!!」
それは船首にマリア像をかたどった巨大な飛行船だった。
ルチア「いやああああああああああああ!!」
ウル「あ、死んだわ。」
凄まじい衝撃と共に飛行船は地面に激突した。
ありえないほどの地響きがペトログラードを揺らした。
「な、なんだァ!!こりゃああああああああ!!!」
天空からけたたましいサイレンとともに飛来したそれが吸血機の弾丸を受け止めた。
乙
カレンwwwwww
カレンとシックスナインしたい乙一
アナスタシア「な、なんなのよこの鉄の塊は!?」
突如空から降ってきた飛行船を前にへたり込むアナスタシア。中に誰かいたようだが生きているのだろうか。
アナスタシア「ち、ちょっと!?誰かいるの~?」
アナスタシアの呼びかけに答えるように飛行船のひしゃげた扉が蹴り飛ばされた。中から大柄な英国人が這い出してきた。
ジョセフ「全く。乗った飛行機が落ちるのはこれで三度目だぜ。」
ウル「もう二度とおめーとは乗らねー」
その後に出てきたのは赤い目をした東洋人だった。
次々と飛行機から人間が這い出してくる。皆、かすり傷ていどで重症なものはいない。
その様子に吸血鬼たちは仰天した。
「何だぁ~あいつらは!?こんな墜落に巻き込まれてかすり傷程度だとォ~!!
悪運の強いにもほどがあるぞ!!!」
ジョセフ「ん?牙がある!?
てめえら吸血鬼だな!!」
スピードワゴン「太陽の元でも活動できるか....
厄介だな。」
ウル「へっ!関係ねぇって!
ぶっ飛ばしゃあ終いだ!!」
ウルが天使を思わせる光輪をまとった青白い姿に変身する。
光の悪魔・ピュエラ。
波紋とはまた違う月光のような光が、吸血鬼を容赦無く浄化する。
「こ、こいつ!?神殺しの男か!?
しゃらくせぇ!!蜂の巣にしてやる!!」
吸血鬼たちは手に持った対戦車ライフルを乱射する。放たれ14.5x114mm弾はあたりを穴ぼこチーズに変えた。
ジョセフ「何だぁ~ありゃあ!!?対戦車ライフルを自動小銃みてぇに連射してやがるぞ!!?」
スピードワゴン「あれが吸血機の力だッ!!!!
生き血を吸って手に入れたエネルギーを使い連射性能を格段に高め、その気になれば排莢から装填、発砲まで自動で行う。
あの銃は生きているのだッ!!」
一行は吸血鬼を相手にするがウルとジョセフ以外は彼らを消滅させることができず、決定打を与えることができない。
粉々になろうと彼らは再生できるのだ。
ルチア「何なのよぉ~こいつらぁ!?倒しても倒しても立ち上がってくるわぁ!!」
「げへへへへへ!!
ネェちゃんたちょぉ~~!!俺たちにその肌の奥のうまそうな生き血を吸わせてくれよオオオオオ!!!」
吸血鬼たちが唇の奥の鋭い牙を剥きながらよだれを垂らす。
カレン「..........不潔。」
カレンが嫌悪感を露わにしながら吸血鬼の首を撥ねる。
ルチアも刃のついた扇で吸血鬼を斬り裂いた。
乙一
ヨアヒム「これじゃキリがないだらー!」
決定打を放てるのが二人しかいないこの状況では、完全にこちらが不利だった。
このままでは埒が明かないと何かあたりを見渡すジョセフが天井で目にしたのは、建物から張り巡られたロープだった。
ジョセフ「あれは使えそうだぜッ!
よぉ~し!」
ジョセフは足に波紋を集中させて壁をまるで床のように歩く。壁には雪解け水が伝うことで断続的に潤っていた。波紋効果は充分である。
ジョセフ「へへへ。このロープから波紋を流しておめーらを一気に退治してやるぜッ!
ざまーみろぃ!」
だが、ジョセフの罵声を耳に捉えた吸血鬼たちが彼に気づいてしまった。
「おい、あの男なにかする気だぞ!!
撃ち落せ!!」
吸血機の鉄の雨がジョセフを容赦無く襲う。
カレン「馬鹿!調子に乗るからよ!!」
ジョセフの足元を弾丸が穿つ。
急に足場を砕かれたジョセフは、そのまま地面に落下する。
ジョセフ「し、しまった~!!」
「ぎゃはははははは!!無様な姿だぜ!
格好の的だなぁオイ!」
吸血鬼たちが対戦車ライフルを一斉にジョセフに向ける。
ゼペット「ジ、ジョジョ~!!」
仲間が彼を助けようとするが、吸血鬼たちの壁がそれを許さない。
「へへへ。絶対絶命だなッ!!
覚悟しな!!
こいつを...」
ジョセフ「てめーの次のセリフは『こいつを蜂の巣にしてからお前らも葬式ってやる!』..だ!」
「こいつを蜂の巣にしてからお前らも葬式ってやる!....ハッ!?」
落下しながらジョセフは腕から何かを伸ばした。
長い糸のようだが、先端に釣り針のようなものがついている。
「あ、あれは毛糸か!?あのガキ、自分の手袋を解いて毛糸のロープをッ!!!!
いつの間に!!」
ジョセフ「この釣り針を天井のロープに引っ掛けて、引きずり落としてやるぜッ!!」
ジョセフが毛糸を天井のロープに投げて巻きつけようとする。
「し、しまった~~ッ!」
ジョセフ「へっ!俺の勝ちね~ッ!」
が、放たれた釣り針が虚しく空を切る。
長さが足りなかったのだ。
ロープまではあとほんの数ミリのところだった。
ジョセフ「な、何だと~~~!!!!」
「ハッ、ハッハーーー!!ビビらせやがって!!
今度こそ終わりだーーーッ!」
吸血鬼が再びライフルを構えた。
だが、瞬間。
何者かが飛び上がる。
ジョセフの目の前に飛び込んできたのは、青いコートに身を包んだ少女だった。
この小さな身体のどこにこんな跳躍力があるのだろう。
アナスタシア「ミキタカ!!今よ!!」
唖然とするジョセフの前で少女の履いた靴がパイ生地のような帯状に解け、中からもう一足の靴が現れた。
分裂した帯状の物体は、段々大きくなりその姿はピアスをつけた長髪の青年に変わる。
青年はジョセフの放った釣り針を、天井のロープとしっかりと結びつけ、少女とともに落下していった。
乙一
ジョセフ「おいガキ!!ちっきしょーーッ!!見えねえ!」
彼らの落下ポイントへ目線を下ろすが、かげになってよく見えない。
一先ずは目の前の敵の殲滅をとることにした。
彼らが紡いでくれた糸を引き寄せ、ロープを地面に引き摺り下ろす。突然降ってきたロープに吸血鬼たちはなす術も無く絡まった。
「ウゲッ!なんだこのロープ!!」
ジョセフ「引っかかりやがった!!文字通り一網打尽だぜ!!
喰らえ『波紋疾走』!!!」
雪解け水で湿ったロープを波紋が流れ、断末魔とともに吸血鬼たちは消滅した。
吸血機のライフルもウルたちが破壊し終わったようだった。
ジョセフ「さっきの奴らは無事か!!」
ジョセフが路地をみると、そこには一mほどのクッションに落ちた少女の姿があった。
なにやらクッションに顔を突っ込んで話し込んでいる。
アナスタシア「え?地球調査のために私に同行したい?」
ジョセフ「おい!おめーら無事だったのか?」
アナスタシア「え!?ええ!!大丈夫よ!
(いいけど、周りに正体がばれないようにね!)」
ジョセフ「?誰と話してんだ?」
アナスタシア「な、なんでもないわ!」
吸血鬼の軍勢を退けた一行は、そこでであったアナスタシアと名乗る少女とともに彼女の馴染みの店に訪れていた。
聞けば、彼女はこの国の皇女の一人であり、ラスプーチン打倒の為に戦っているのだという。
カレンとゼペットは家庭教師、ルチアはたびの占い師、ヨアヒムとウルは召使い、ブランカはペット、ジョセフはお抱えの運転手。
という設定で一行はアナスタシアの紹介のもと王宮へと招かれることに成功した。
ロジャーは、スピードワゴンとともに破損したベーコン号の修理に向かった。
財団の工房で修理をするとともにラスプーチンとの戦いに備えて秘策があるらしいのだ。
彼らは凱旋祝賀会までには必ず戻ると言い残し、ロシアをあとにした。
乙一
いよいよクライマックスへ…
続き待ってる
アナスタシアの紹介で皇后 アレクサンドラへの謁見を果たした一行だったが、その態度は冷ややかなものだった。
素姓の知れぬ輩を簡単に宮殿へ招き入れることへの抵抗があるのは、皇帝の留守を預かる身としては仕方の無いことだった。
アナスタシア「お母様!この人たちは怪しい人たちではないわ!」
アレクサンドラ「何故そう言い切れるのですか!
お前はいつも、私の考えに反対ばかりね。」
アナスタシア「だって.....」
アナスタシアは悔しそうに唇を噛む。
いまこの場でラスプーチンの陰謀を暴いたところで、母に聞き入れてはもらえない。そのことはアナスタシアが一番わかっている。ゆえに何もいうことができなかった。
そのとき、扉が開き男が入ってきた。
ラスプーチン「良いではありませんか皇后陛下。」
うすら寒い声色で皇后陛下にするのはサピエンテス・グラディオが首領ラスプーチン。
だが、皇后はその事実を知らない。
アレクサンドラ「ラスプーチン司教!」
ラスプーチン「アナスタシア様は好奇心旺盛なお年頃、冒険の一つや二つぐらいすることでしょう。
せっかくこのような場所で知り合ったご友人なれば、きっと天の縁、主のお導き。」
アレクサンドラ「グレゴリー殿までそのような......」
ラスプーチン「みれば異国の旅人たち。
退屈な宮廷の中、姫様には良い話し相手になるのではありませぬか。」
アレクサンドラ「わかりました....アナスタシアよ。
その方達を連れて下がりなさい。」
結局アレクサンドラが折ることにより、一行はエルミタージュにとどまることとなった。
皇后の意思すら曲げる。
これがいまのラスプーチンの権力のほどである。
ラスプーチン「.....やはり生きていましたね。」
皇后が退出し、その場にウル一行とラスプーチンのみとなった。
ラスプーチンの声色が先程とは打って変わり、どす黒い迫力を帯びる。
ジョセフ「てめーが....!」
ウル「ラスプーチンか。」
ラスプーチン「はい。噂はうかがっていますよ。
神殺しの。それに波紋使い。
おおっと、ここで荒事はよしましょう。
この美しい宮殿を血で穢すのも偲びない。」
拳を構えるウルたちを、ラスプーチンがやんわりとなだめる。
ラスプーチン「私は北の獅子宮にいます。
御用のときはいつでもどうぞ。」
そういってラスプーチンは扉から出て行った。
ラスプーチン「.....やはり生きていましたね。」
皇后が退出し、その場にウル一行とラスプーチンのみとなった。
ラスプーチンの声色が先程とは打って変わり、どす黒い迫力を帯びる。
ジョセフ「てめーが....!」
ウル「ラスプーチンか。」
ラスプーチン「はい。噂はうかがっていますよ。
神殺しの。それに波紋使い。
おおっと、ここで荒事はよしましょう。
この美しい宮殿を血で穢すのも偲びない。」
拳を構えるウルたちを、ラスプーチンがやんわりとなだめる。
ラスプーチン「私は北の獅子宮にいます。
御用のときはいつでもどうぞ。」
そういってラスプーチンは扉から出て行った。
部屋に戻ったラスプーチンは、結社から運び込んだ無線機に手を伸ばす。
周波数を合わせ、無線機に耳を傾けると聞き慣れた声が届いた。
ラスプーチン「....久しぶりだな。こうして連絡をとるのも。」
「あぁ、こちらもなかなか落ち着けるまで時間が必要でね。
ボリシェヴィキの体制を整えるまでに長くかかってしまった。」
ラスプーチン「ボリシェヴィキ....ロシア社会民主労働党の左派か。」
「あぁ、ここまでこぎ着けるのに12年かかった。
いや、弾圧により機能停止した時間から考えれば17年か.....」
ラスプーチン「だが、血の日曜日事件が民衆を立ち上がられた。」
「あぁ。くるぞ、革命の時代だ!労働者と農民の革命的民主主義独裁体制だ。」
ラスプーチン「.....ヒヒヒヒ。
まさか、ボリシェヴィキのトップたるお前が『サピエンテス・グラディオの幹部』でもあるなんてなぁ。」
「薔薇十字団から派生した結社を私と結びつける人間なんていやしない。バレるわけがないよ。
ヨシフももうすぐ流刑地から戻ってくる。ニューヨークのトロツキーも日本の大使と一緒にお忍びで戻ってきてるんだ。
役者は揃ったよ。」
ラスプーチン「ヒヒヒヒ。良いのか?
お前の家は熱心なロシア正教会の信者だろう?
薔薇十字団派生の我々の関係は、危険では無いのか?」
「ふん。あんな腐敗しきった堕落組織など、少年時代に幻滅してるよ。もう見限ってる。
これからは新しい時代の幕開けだ。そうだろう?」
ラスプーチン「あぁ、そうだな。
また連絡するぞ。
我が盟友、レーニン。」
おっつん
そんなに風呂敷広げて大丈夫か?
電話を切ったあと、レーニンと呼ばれた男は不敵に笑う。
レーニン「ククク、そうだその調子だ。
そうやってあの国の内部を腐らせてくれ。
そして、腐った部分は食い荒らした虫と共にこの私が根こそぎ駆除してやる。
馬鹿な男だ。利用されているともしらずに。」
ペトログラード、冬の宮殿は不気味な静寂に包まれていた。屋内に甘ったるい霧が立ち込め、人々は皆眠ってしまったのだ。ルチアによると、これはベロニカのしわざらしい。
催眠効果のある香水と魔術を連携させ、一行とアナスタシア以外を操ってしまったのだ。
これは、本当の意味でこの国が結社の傀儡と化した瞬間でもある。
扉が開き、女が一人はいってきた。アナスタシアの母、アレクサンドラ皇后だ。
虚ろな表情で息子の名を読んでいる。
アナスタシア「アレク?アレクがどうしたの?!」
その問いに答えることなく、アレクサンドラはその場にうずくまり呻く。
そして起き上がった時、彼女の声に異変が起こった。
「どうですかな?皆さん、わたくしの余興は?」
喉から絞り出すような低い声は、不快で不気味な男の声だった。
ジョセフ「ラスプーチン!」
ラスプーチン「弟君は私の膝の上で眠っていらっしゃいます。
まことに可愛らしい寝顔だ。
このまま永遠の眠りについた方が、ひょっとすると幸せかもしれませんね?
皇位から引き摺り下ろされ、幽閉された末に残酷に殺されてしまうよりは。」
アレクサンドラの姿で不吉なことを述べるラスプーチンに、アナスタシアが吠える。
アナスタシア「アレクをそんな目には合わせさせない!!」
掴みかかろうとするアナスタシアを抑え、ウルが前にでる。
ウル「おい聞け。変態ショタコンヤロー。
いまからそっちに行ってやる。首洗って待ってろ。」
ラスプーチン「ヒヒヒヒ、お待ちしておりますよ....?」
ジョセフが、アレクサンドラを微弱な波紋で気絶させる。
これで、しばらくは余計なことができないだろう。
ジョセフ「あのヤローはたしかきたの獅子宮っつうところにいるらしいな。
早く行こうぜッ!」
獅子宮に到着した一行の目に飛び込んできたのは、椅子に寝かされベロニカに喉元にナイフを突きつけられたアレクセイの姿だった。
アナスタシア「アレク!」
ラスプーチン「おっと、お静かに願いますよ皇女。」
ジョセフ「おめーらは何が狙いなんだッ!
結社を使って、ロシアをどーしようっつうんだ。」
ラスプーチン「私はナポレオンに憧れていましてね。」
ラスプーチンが壁にかけられたナポレオンの肖像画を見上げる。
一時的とはいえ、ヨーロッパの大半を支配したナポレオン。
ラスプーチンはそれになろうとしているのだった。
ラスプーチン「くだらぬ夢物語とお思いか?
しかし、この国には世界の六分の一の富がある。
それをうまく使えば不可能なことじゃあない。」
アナスタシア「あなたみたいなつまらない考えを持つ人間が現れるから、国が乱れ、戦争が起きるのよ!!」
その言葉を書き、ラスプーチンが不本意そうに両手をあげる。
ラスプーチン「誤解されては困るな。政治が変わることを一番強く望んでいるのはこの国の民なのですよ!」
アナスタシアの表情に動揺が走ったのをわラスプーチンは見逃さなかった。
ラスプーチン「そんなこと、あなたもわかってるはずだ。
もはや皇帝と民衆の間には埋められぬ溝が出来上がっている。
私などいなくても革命の火の手が上がるの問題!」
アナスタシア「やめて!」
挑発に耐えきれなくなったアナスタシアがラスプーチンに掴みかかろうとするが、ベロニカに阻止される。
ラスプーチン「ならば、革命で流される血は少ない方が国民の為。
そう皇帝一家の血だけで十分!!」
アナスタシア「嫌ァ!聞きたく無い!!」
ジョセフ「騙されるんじゃあねぇぜアナスタシア!!
そもそもこの国の連中が政治を信用しなくなった原因がこいつじゃあねぇか!!
思い出してみろ!!こいつがくる前のロシアを!その頃のお前の国をッ!
それが本当の姿だぜッ!」
アナスタシア「!!」
ジョセフの言葉でアナスタシアの脳裏に
浮かんだのは、もう何年も前の懐かしい風景だった。
国民の為、日々尽力を尽くそうと頑張る父親。
それを支える母親。
大臣たちもそれに応えようと必死になって知恵を絞っていた。
ラスプーチン「ヒヒヒヒ。
そのような過去が一体なんになるというのです?
重要なのは只今なのです!
そもそも、古臭い皇室など今の時代にはそぐわない。
英国の王室も既に実権の無い形骸化が進んでいる。
日本の皇室も、国際紛争で大敗すればいつ消滅したとしても決しておかしくない!!」
ジョセフ「話をすり替えてるんじゃあねえぞこのゲス野郎がッ!
それがアナスタシアの家族が殺されていい理由にはならねぇだろうがッ!」
ジョセフがラスプーチンに殴りかかる。
ジョセフ「『山吹色の波紋疾走(サンライトイエローオーバードライブ)』!!!」
ウル「おらああああああ!!」
それに続くようにウルも追撃を行う。
ラスプーチン「ヒヒヒヒ。」
だが、二人の攻撃は途中で停止する。
まるで見えない壁があるかのように拳が遮られたのだ。
ウル「な、なんだよこりゃあ!?」
ジョセフ「バリアーかッ!?」
ラスプーチンには傷一つついていない。
ラスプーチン「おやおや。その程度で終わりですか?
では、今度はこちらから参りますよ。」
ラスプーチンが両手を前に組むと、若葉のような色の魔方陣が発生した。
ラスプーチン「全能なる主に導かれし聖なるヤドリギの魂よ.....」
ラスプーチンが呪禁を唱えると、それに共鳴するかのようにウルの胸が光り輝く。
ウル「う、うあ"あ!!
がああああああああああああああ!!」
そこは、ニコルによってヤドリギを突き刺された場所だ。
絶叫と共にウルは意識を失った。
ジョセフ「おい!ウル!!」
乙一
更新滞ってるな…
まだー?
すいません。いま期末テストなので更新難しいです。テスト期間が8/2までで8/7~8/20まで北海道に登山しにいくのでもうしばらくかかるかもしれません。
もしかしたらテスト期間と登山の間に軽く更新できるかもしれません。
乙
待ってます
生存報告あったか
よかった
テスト頑張れよ乙ー
やっとこさ北海道から帰ってきました。また再開します。
おかえりー
ラスプーチン「その呪いからは何人たりとも逃れる術はない。」
ラスプーチンめがけてブランカとヨアヒムが飛びかかるが、見えない何かがそこにいるかのように攻撃を弾かれる。
ラスプーチン「無駄です。私のバリヤーを破ることはできません。」
その背後からはラスプーチンの物とは違う不気味な影が浮かび上がる。
「ラスプーチン主教!何事ですか!?」
深夜の回廊から騒ぎを聞きつけた衛兵が扉から列をなして入ってくる。
ラスプーチン「ものどもであえ!!此奴らは皇太子のお命を狙う暗殺者たちだ!!」
ジョセフ「なっ!!」
ラスプーチンの発言に一瞬その場が凍りつく。そして次の瞬間一行に飛びかかる。この宮殿内でのラスプーチンの信頼度を考えれば、ウルたちとラスプーチンのどちらの言葉を信じるかは明白だった。
ジョセフ「おい!おめーら!この状況じゃあなにいっても信じちゃあもらえねぇだろう!
一先ずは逃げる事だけ考えるぞ!」
襲いかかる衛兵たちをいなしながら、ジョセフはカーテンをちぎってロープを作る。
ジョセフ「こいつで脱出するぜ!!早くしろ!!」
ジョセフが窓を叩き割り垂したロープに一行が掴まり、次々と脱出する。
ジョセフ「よぉし!全員脱出したな!俺もとっととずらかるとするかな。」
ジョセフが窓枠に足をかけ、飛び降りようとしたとき、彼を一人の声が呼び止めた。
アナスタシア「待って!ジョジョ!!私も連れて行って!!」
ジョセフ「おめぇはここにいろ!!俺らと居たんじゃあ皇太子様暗殺計画の共犯になっちまうぜ!!」
アナスタシア「そんなことにはならないは!ラスプーチンの悪事を暴けばね!!
違うの!?」
ジョセフ「.....」
アナスタシア「私はラスプーチンを許さない。
この国を汚し、国民を苦しめ、私の家族を蝕むラスプーチンをッ!!
必ずこの手で断罪してやるッ!」
「いたぞ!捕らえろ!!!」
ジョセフ「げ!衛兵ども!見つかったか!
あークソ!!どうなっても知らねーからな!!!」
ジョジョはアナスタシアを抱え、夜の帳に溶けて消えて行った。
危機を脱した一行は一先ずロシアを離れ、ロジャーの導きでサピエンテス・グラディオ創設の鍵を握るある場所に向かっていた。
トルコ(オスマントルコ)は、アナトリアの山奥に位置する秘境ギョレメの谷。
そこにサピエンテス・グラディオの創設者・修道士ヨウィスの存在を見出したからだ。
ジョセフ「な、なんか俺たち歓迎されてないんじゃあねぇか?」
ジョセフ達がギョレメの谷に近づくと、谷に掘られた洞穴から幾つもの黒光りする銃口が向けられていた。
ロジャーが交戦の意思が無いことを示すために両手をあげ、一行もそれにならう。
すると、谷の向こうからコートに身を包んだ人影が現れた。
「やはり貴方がたでしたか。」
ジョセフ「あんたは!」
人影の正体は、ウェールズで出会った謎の男 ヌンツィオ・ペリーコロだった。
ヌンツィオが谷の人々の銃を降ろさせる。
ヌンツィオ「やめたまえ。その武器はここで使うために与えたものじゃあないよ。」
ヌンツィオ「どうやら、君たちが彼を殺しにきたと思ったらしい。」
ジョセフ「彼?ヨウィス主教のことか?」
ヌンツィオ「あぁ。この連中のボス。父親。
いや、神かな。」
ヨアヒム「ヌンツィオさん!納得いかないだら!」
ゼペット「そうじゃ。お前さん何者なんじゃ?」
ヌンツィオは葉巻に火をつけ、一息ついた。
ヌンツィオ「私はヌンツィオ・ペリーコロ。
イタリアを拠点に活動するギャングです。」
ウル「ぎゃんぐ?」
ジョセフ「ヤクザみてーなもんだ。」
ルチア「真っ白いお薬を売ったりするのよぉ。」
ウル「なるほど、ヤクザ屋さんか。」
カレン「で、そのギャングはなぜサピエンテス・グラディオの敵に?」
ヌンツィオ「簡単な話しです。奴らが私らのシマを荒らした。本当なら自分で解決したいところだが奴らの力は強大だ。
そこで、結社に敵対する勢力に接触を行い活動を支援してるんです。
ヨウィス主教やロジャー氏、そしてあなた方。他にも多くの同志がいますよ。
奴らを潰すためにね。」
ゼペット「ギャングが錬金術師に協力を申し出るとはのう。」
ロジャー「わたしも初めは耳を疑いましたよ。」
ヌンツィオ「フフフ。
私は、利害さえ一致すれば悪魔にだって強力しますよ。」
ミス
× 悪魔にだって強力
○悪魔にだって協力
久し振り!
おつ
お久乙ー
ギョレメの谷 内部
ウル「谷っつうより、岩山をくり抜いて住居にしたものって言う方が適切な表現だなこりゃあ。」
カレン「国籍も年齢もバラバラ。みんな助け合いながら生活してるのね。」
ロジャー「これが、サピエンテス・グラディオの本来の理念の元の姿なのですよ。
そして、それを生み出した男が、この扉の奥にいます。」
ゼペット「扉に結社の紋章が....」
ルチア「あらぁ?この紋章にもエイジャの赤石が描かれてるのね?」
ジョセフ「妙だな。
俺ァてっきり赤石はラスプーチンが後から追加したものじゃあないかと思ってたんだが、どうやら違ったみてぇだ。」
乙ー
「お主達か.....
わたしに会いに来たと言う異国人は。」
ジョセフ「あんたが、ヨウィス主教かい?」
ヨウィス「うむ。」
ジョセフ「!
あんた....目が....」
ヨウィス「もう僅かな光を感じることしかできぬ。
......波紋を持ってしても癒せぬよ。」
ジョセフ「は、波紋を知っているのか!?」
ヨウィス「まあのぉ......」
ヨウィス「.......」
ゼペット「どうなされた?ウルとジョジョをじっと見つめて。」
ヨウィス「そなたたちがここに足を踏み入れたとき、懐かしい友が戻ったのかと思った。
それも、2人もな。」
ウル「と...」ジョセフ「友?」
ヨウィス「その心の中に封じられた破壊神の魂が、
その血流に流れる波紋が、
そう感じさせたのだ。」
ウル「破壊神の魂!?」
ヨウィス「うむ。今はその力も、忌まわしいヤドリギの呪いによって封じられておるのだろう。
運命とはかくも奇妙なものよ。」
ジョセフ「おい、じーさん!なに一人で納得してやがんだッ!」
ヨウィス「焦るな。俗世を切り捨てここに逃れて久しい。
お主らのような危険なものどもとあうのは久しぶりでな。
さて、お主らの聞きたいことは分かっておる。
だが、それには少し昔話をせねばならぬな。」
ヨウィス「すべてはあの時から始まった。
仲間を死に向かわせ、弟子に裏切られ、友に見限られた、あの時から....
私は若い頃、人々を助けるためその身一つで病める体を癒すことのできる術を鍛錬の末に手に入れた。
その術の師匠より、私は予言を授かったのだ。
『邪神に立ち向かいし時、そなたとそなたの前に現れし異能の者により世界は救われることとなろう。』
私はその予言を信じ、修行の地を離れたのちに同じ志を持つともとともにこのサピエンテス・グラディオを作り上げた。
そして、若いラスプーチンを弟子にむかえた.....
しかし、野望とそれに見合う力を身につけたラスプーチンは遂にその本性を現した。
私は友と共に戦いを挑んだが、魔神の力の前に敗れ去り、結社を追われ私は光を奪われた。」
ヨウィス「奴は、魔神アスモデウスと魂の契約を結んでおる。
その力がバリヤーとなり肉体を鎧っておるのだ。」
アナスタシア「その、アスモデウスを倒す方法は無いの?」
ヨウィス「アスモデウスに匹敵する力があれば、奴のバリヤーは破れる。」
ヨアヒム「そんまもん、一体どこにあるだっち?」
ヨウィス「......その若者の心の中だ。」
ウル「お、俺?」
ヨウィス「私の友は、ラスプーチンに乗っ取られた結社の暴走を食い止めるため、
一人、星の未来を変えんと戦いを挑んだ。
友は星の彼方から超神を降ろし、全ての秩序をやり直そうとした。
意気地の無い私はそれに怖気づき、友は私を見限った。
そして、アスモデウスに対抗すべく最強の悪魔と契約を結んだのだ。
そう、破壊神アモンと。」
ヨウィス「私は一人、取り残された。
予言を信じ、道を歩んだ先がなんと情けない結果か。
その少しあとか......
風の便りで、かつて私が旅先で波紋の術の存在を教えた同志が波紋に関わったばかりに無惨な死を遂げていたことを知った.....
私が波紋など教えなければ.....」
ウル「おい、その友だちっつうのは.....」
ヨウィス「アルバート・サイモン枢機卿。
そして、同志の名は.....ウィル・A・ツェペリ....。」
ジョセフ「.....シーザーの爺さん...!」
ヨウィス「そして、アモンの魂はいまそなたの心に宿っている。
それはなぜか?
そなたが友を倒し、アモンを服従させたからに相違ない。
招かれた超神は光と成って打ち砕かれ、友の魂は希望の中に消えて行った。」
ウル「.........」
ヨウィス「そして、横のお主に流れる波紋....
懐かしいツェペリの波紋が感じられる....
自らの生命エネルギー全てを与える究極奥義『深仙脈疾走(ディーパスオーバードライブ)』か.....」
ジョセフ「.......」
ツェペリ「お主が受け継いだのか....?」
ジョセフ「いや、受け継いだのは俺の爺さんだ。
だが、ツェペリからは俺も託されてるぜ。大事なモンをよ......!」
ヨウィス「託された......か。
破壊神の魂を、人間の魂を。
アルバートもツェペリも、未来に託したのだな.......。
『邪神に立ち向かいし時、そなたとそなたの前に現れし異能の者により世界は救われることとなろう。』
もしかしたら、あの予言は今この時のことを指しておったのか....。」
ウル「主教....」
ヨウィス「アモンの力を取り戻したいのなら、試練を乗り越えねばならん。」
ウル「試練?」
ヨウィス「そなたの心の何処かに埋れたアモンを見つけ出すのだ。
心配はいらん。そなただけをいかせはせん。
私も行こう。」
ウル「あんたが?」
ジョセフ「同じ波紋使いなら、俺のほうが若いし俺が行ったほうが、、、」
カレン「主教!!
その役目、わたしに!」
ジョセフ「何!?」
ウル「カレン!?」
ヨウィス「......しくじれば、命は無いのだぞ?」
カレン「構いません。」
ヨウィス「.....よかろう、ではついてくるが良い。」
ギョレメの谷 儀式の間
ロジャー「ジョジョ。」
ジョセフ「ん?なんだよロジャー。俺に用事か。
いまカレンとウルが試練に行くとこだぜ。邪魔しねーでくれ。」
ロジャー「いえ!今すぐ伝える必要があります。
ラスプーチンとの決戦に備えてのとっておきの秘策があるんです。
そのためにはジョジョ!
あなたの協力が不可欠なのです!」
ジョセフ「秘策だぁ~ッ!?
なんだいそりゃあ!?」
ロジャー「それはですねぇ~」ゴニョゴニョ
ジョセフ「ふむふむナルホド!!そいつぁ面白そうじゃあねぇか!!」
ロジャー「でしょう!なので、私と一緒にチベットに行って欲しいのです。」
ジョセフ「任せな!今はメッシーナが彼処を治めてるはずだ。
話も通し易い。」
ロジャー「善は急げです!!
直ぐに向かいましょう。
スピードワゴンさんが手配してくれた車と船があります。」
ジョセフ「おう!!」
*アモンの試練ですが、書くネタが思い付かなかったので丸々キンクリさせてもらいます。
ご了承ください。
キンクリ?乙ー
だから、どっぴお なのか…
乙
ウルとカレンがアモンの魂を取り戻し、現世に帰還を果たした。
しかし、儀式に力を使い果たしたヨウィスは最期の刻を迎えようとしていた。
カレン「ヨウィス主教!」
ヨウィス「.....二人とも無事であったか?」
ウル「アモンの魂はちゃんと見つけたよ。
あんたの親友にも会えた。」
ヨウィス「元気そうだったかね?」
ウル「のんきなもんで、すっかり楽隠居さ。」
その時だった。皆が集まっていた部屋の扉が勢いよく開けられた。
飛び込んで来たのはロジャーとともに離れて行動していたジョセフだった。
ジョセフ「皆!主教は!?」
カレン「ジョジョ!!主教の身体に響くわ!」
ジョセフ「す、すまない。つい。」
ヨウィス「..構わん。どうやらわたしはここまでのようだ。」
カレン「何をいうのです!?」
ジョセフ「演技でもねぇこというもんじゃあねぇぜじいさん!
あんたがいなくなったら谷の奴らはどうなる?」
ヨウィス「それは後の者が考えること。
わたしの教えはすべて伝えてある。」
ウル「許してくれ...!
俺は、俺はロシアのためにこの谷の平和が失われてもいいなんて、これっぽっちも思っちゃいない!」
ヨウィス「........」
ウル「悪を倒すために、善が犠牲になるのが耐えられない。」
ヨウィス「よいか?
わたしの存在ともに消え去るような世界なれば、いずれは滅び去るのだ。
受け継ぐ意思を紡ぐものが現れれば滅びなどはない。
その者は、心の中で行き続けることができる。
そうは思わんか?」
ジョセフ「.........」
ウル「アルバートは、後の世をあんたに託していたんだな。」
ヨウィス「いまは、そなたたちにだ。
ロシアへいけ。
幼き皇女の未来を救えるのは、そなたたちだけだ。」
ジョセフ「ウル!!!」
ジョセフが立ち上がる。
それに呼応するようにウルも腰を上げる。
ウル「約束するよ!
俺たちは必ずラスプーチンをぶっ倒す!
ぶっ倒して必ず戻ってくるから。
それまで待っててくれ!」
飛び上がるように二人はその場を後にする。
それをみて、ヨウィスは力強く頷いた。
ヨウィス「彼らは、私と友の業を一身に背負ってくれた。
これで、生きてきた目的を果たせた。
胸をはって会える.....。
ありがとう、と....伝えてくれ...。」
そう言い残すと、ヨウィスはこときれた。
カレン「.......主教!」
ヨウィス「ここは.....」
アルバート「良いところだろう。葛城の風の森というそうだ。」
「やれやれ、やっときたかね。
待ちくたびれたよ。
といっても、私もいまきたところだがね。」
ヨウィス「あ.....」
「ジョジョの孫にあったそうだな?
元気そうだったかい?
きっと彼のような素晴らしい紳士になっているのだろうな。」
ヨウィス「.....ふふふ。残念だが、紳士とは言えんよ彼は。
だが、良い若者だ。」
「そうか、君がそう言うのだからきっとそうなのだろうな。」
アルバート「さぁ、ヨウィス。我々二人はそろそろおいとまするとしよう。
託すものはすべて託した。あとの運命は彼等が決めるだろう。」
ヨウィス「二人....?」
「残念だが、私はもう少しここでサンドイッチでも食べながら待たせてもらうよ。
大事な孫が、まだ来ていないのでね。
用事が済んだらまた会おう。
では、アルバート君。ヨウィスを頼むよ。」
アルバート「そうですか。わかりました。」
ヨウィス「では、又後でな.....。」
「うむ!」
「なぁ!ヨウィスよ!」
ヨウィス「なんだ?ツェペリ?」
「感謝しておるぞ!波紋を教えてくれて、ありがとう!!」
ヨウィス「......!あぁ!」
ジョジョたちがギョレメの谷でヨウィスとの別れを遂げたその頃、アナスタシアの父であるニコライ二世が戦地からの帰還を果たしていた。
血の日曜日事件以後冷え切っていた国民との関係が、凱旋の歓声とともに和らいだようにも見えたがときすでに遅し。
もはや国民と皇帝との溝は如何なる法を持ってしても修復が不可能になるまで崩壊していた。
しかし、それでもアナスタシアは諦めなかった。
ラスプーチンの悪事を暴けば父も母も目を覚まし、国民も国を信じてくれる。
そう信じていたのだった。
ニコライ二世の帰還を祝し、エルミタージュ(冬宮)では盛大なパーティが行われていた。煌びやかな衣装と優雅な音楽。それはまるで悪趣味な喪服と鎮魂歌だった。
祝辞を述べ、ゆっくりと玉座に腰を下ろすニコライ二世。その顔色は晴れない。
ニコライ二世「余は、道化だな。」
その自嘲気味なやつれた顔にもはや皇帝の風格は無かった。ただの一人の疲れた人間だった。
それを少し離れた場所から品定めするように見つめるのはラスプーチンだった。
指と手を使いサインを送る相手はかつてアナスタシアを殺めるために彼が遣わした刺客の一人であり、結社の幹部ビクトル。
懐に短刀を忍ばせ、蛇のように気配を殺してニコライ二世に近づく。
ラスプーチンがアイコンタクトを送る。
決行の合図だ。
ぬるりと光る刀身が、ニコライの胸に振りかぶられた。
しかし、その凶刃はニコライには届かなかった。
黒衣の東洋人が天井を突き破って降りてきたのだ。そのままビクトルに蹴りを見舞う。
突然の襲来に対応ができなかったビクトルは木の葉のように宙を舞った。
劈く悲鳴。
声の主はニコライの妻であり皇后のアレクサンドラだ。
彼女の悲鳴も無理は無い。
彼女にしてみれば愛娘を連れ去った大罪人が再び目の前に現れたのだ。
一刻も早く狼藉者をとらえ、アナスタシアを取り返すことしか彼女の脳内には考えがなかった。
故に扉を開けてやってきた存在は彼女をさらに混乱させた。
アレクサンドラ「アナスタシア!」
敵に連れ去られたアナスタシアが、傷一つなく戻ってきたのだ。
背後には衛兵を連れている。騒ぎを聞きつけたようだ。
ニコライ「おお!帰ったか!アナスタシア」
ニコライには余計な負担をかけぬようアレクサンドラが事態を伏せていたので、彼は旅行から帰ったものとおもいこんでいたようだ。
衛兵に保護され、親子が久々の再開を果たした。
アナスタシア「私、この方達と異国を旅してきたの!
とっても不思議で奇妙な体験をしたわ。」
アナスタシアが衛兵とともに連れてきた多国籍な集団を父に紹介する。
ニコライ「お、おう」
が、ニコライにとってはたったいま暗殺されかかったことの恐怖から事態が飲み込めていないのが現状だった。
短刀を持った男は衛兵に縛り上げられているが、このパーティの只中に侵入できたということはなにかしらの内通者がいたと想定するのが自然だった。
アナスタシア「写真も撮ったのよ。最後のなんて命懸けだったんだから!」
アナスタシアが懐からアルバムを取り出す。
ニコライ「すまないね。アナスタシア。
あとでじっくり見させてもらうよ。
さぁ、早く!!母と安全な所へ!」
彼に娘の写真を見る余裕は無かった。
しかし、それでもアナスタシアは頑なにアルバムを差し出す。
まるで何か大事な伝えたいことがあるかのように。
アナスタシア「お願い。見てお父様。
いますぐに。」
ニコライ「.......」
そのただならぬ気迫に、ニコライもアルバムを手に取りページをめくる。
そして、最後のページに収められた写真を見たとき、彼は全てを察した。
ラスプーチン「ツァーリ(皇帝)よ!この狼藉者は私めにお任せを。」
ラスプーチンがニコライの前に進み出る。
ニコライは号令を下した。
「うむ。衛兵よ。狼藉者をいますぐとらえよ!!
そのものの名は
グレゴリー・ラスプーチン!!」
ラスプーチン「!!」
ニコライはアナスタシアのアルバムのページの最後に収められた写真を掲げる。
そこにはラスプーチンとビクトルの密会の写真が鮮明に写っていた。
決定的な証拠を前に、もはや言い訳は通じなかった。
ジョセフ「へへへ。観念するんだなぁ。
ラスプーチンさんよォ~?
もう逃げられねーぜ!」
冷や汗を垂らし、ラスプーチンは沈黙する。
もはやロシア征服の夢は潰えたかにみえた。
しかし、次の瞬間後方から爆発音と色のついた煙が上がる。
室内に潜んでいたラスプーチンの部下が煙幕をはなったのだ。
ヨアヒム「な、なんにも見えないだら!!」
ゼペット「ラスプーチンめ!この隙に逃げるつもりじゃ!」
煙が晴れると、ラスプーチンは影も形もなかった。
ウル「糞ッ!めんどくせぇな!」
ジョセフ「あいつがこのまま引き下がるとは思えねぇ!
きっとしかけてくるはずだぜ。」
ルチア「仕掛けるってなにを~?」
ジョセフ「俺の推測が正けりゃあ.....」
ジョセフの言葉は最後まで続かなかった。
凄まじい地響きと、火薬の匂いがエルミタージュを包む。
先ほどとは比べ物にならない激しい爆発音も聞こえる。
ゼペット「なにが起こっておるんじゃ?!」
カレン「あれを見て!!」
カレンが窓を指差すと、何時ぞやの結社の巨大飛行船の姿が確認できた。
しかし、その姿は以前とは全くの別物とかしていた。
膨らんだ船体はまるで死体袋のように血液が滲み、染み出した血がペトログラードの街に降り注いでいた。
地上からでもむせ返る血の匂いが鼻を突く。
アナスタシア「吸血鬼化が施されてる!!!」
ゼペット「しかも、どうやら敵船は一機だけでは無いぞ!!」
ゼペットの言葉の通り、飛行船の周りには戦闘機が編隊を組んでいた。
ロシアの主力戦闘機・シコールスキイ S.XVI。
やはり吸血鬼化が施されていた。
アナスタシア「これだけの数を作るのに、一体どれだけの犠牲がッ!!!」
ニコライ「あ、悪夢だ.....」
飛行船と戦闘機から、次々と爆弾が投下させる。
みるみるうちにペトログラードは火の海と化した。
盛り上がってキタ━━━━ヽ(゚∀゚ )ノ━━━━!!!!乙ー
ニコライ「衛兵長!!直ぐに出会え!!
街の消火活動と住民の安全確保!!並びにラスプーチンの手先どもを蹴散らす部隊の組織だ!!」
ニコライの指令がくだる。衛兵たちも国の一大事と非常によく動き、直ぐに大まかな組織編隊は整った。
いつでも出動は可能だった。
だが、その出動に待ったをかける人物がいた。
ジョセフ「もう少し!もうあと数分で良いんだ!!兵隊の出動を待ってくれることはできねぇか!?」
ニコライ「な、なにを?!
娘の命の恩人とはいえそれは聞けん頼みだ。
私は国民を見殺しに出来るほど割り切れていないのだ。」
アナスタシア「そうよ!なにを言い出すのジョジョ!!」
ジョセフ「頼む!もうすぐなんだ!
もうすぐおれとロジャーの『とっておき』がとどく!!
それがあれば外のクソ野郎共を倒すのは訳ねぇ!!
だが!そのためには人出が必要なんだ!
この衛兵隊は、そのためにここに少しとどまっていて欲しい!!」
当然、衛兵からは反発の声が上がる。
国の一大事たる今動けないで何が兵か。と。
だが、ジョセフの案に賛成するものがいた。
アレクサンドラ「わかった。そなたの申し出、承けたまろう。」
アナスタシア「お母様?」
アナスタシアの母、皇后・アレクサンドラだった。
アレクサンドラ「私たちはいままで、ラスプーチン主教....
いや、ラスプーチンに頼りすぎていた!!
その結果このザマだ!!
恐らく我がツァーリの性格も全て把握しておる。
この衛兵隊の出動も見抜かれていると考え行動するのが賢明。
いま出動させてもいたずらに死人を増やすだけであろう。」
ジョセフ「あ、あんた....。」
アレクサンドラ「だが、いまこの瞬間蹂躙されている国民を無視することは出来ぬ!
その『とっておき』が来るまでに奪われる国民の命。
そなたはそれをどう救う!?」
アレクサンドラは気然とした態度でジョセフに問う。
そこに以前のラスプーチンに頼る疲れた姿はなかった。
国のため。夫の為。娘の為。息子の為。
奔走する一人の女だった。
ジョセフ「それは.」
カレン「あなたの次のセリフは、『俺が奴らを引きつけて時間を稼ぐ!!』かしら?」
ジョセフ「おれが奴らを引きつけて時間を稼ぐ!!.......ハッ!!」
ゼペット「全く!一人であの吸血鬼の軍勢と戦うつもりか?」
ルチア「あんなにたくさん~!
きっと一人じゃ直ぐに殺されちゃうわね~!」
ヨアヒム「一人でも戦う奴は多い方がいいだら!!」
ブランカ「バウバウ!」
ジョセフ「お、おめぇら!!」
一行が誰に言われるでもなく次々と装備を整え、四方に散る。
吸血鬼の軍勢を少しでも長く食い止め、ロシアの国民を救う為に。
カレン「そういう事よ。
さ、私たちも出ましょう?」
ウル「あぁ!あんな奴ら生ゴミの日にポイだぜ!!」
ジョセフ「へ、へへへ!
そうだな!!おし!いくぜ!!」
舞うは紅蓮の炎。焼け朽ちる人の肉。阿鼻叫喚の極北の嵐に染まる。
飛行船から降下した吸血鬼の軍勢により国民は蹂躙されようとしていた。
吸血鬼が幼い女の子を抱え、その柔肌に牙をつきたてようとする。
「グヘヘヘヘ!綺麗な羽田だなァ~~~!
犯して喰らってぐちょぐちょにしてやりたいぜ~~~~!!!!」
幼子は声がでない。
恐怖に身体が言う事を聞かないのだ。
ただ、嗚呼これが私の死なのかと達観した自分がいた。
ジョセフ「波紋乱渦疾走(トルネーディオーバードライブ)!!」
だが、その予想は突然現れた筋骨粒々の大男によって砕かれた。
攻撃された兵隊は声をあげる暇もなくまるで熱いシチューのようにどろりとなって溶けてしまった。
ジョセフ「もう大丈夫だぜ。早く冬宮にいきな。
保護してくれる。」
突然現れた大男はそれだけ言い残すと、他の人間を助ける為ペトログラードの街に消えて行った。
カレン「クッ!なんて数なの。キリが無いわ。」
剣で吸血鬼を捌くカレン。
倒しても倒しても敵は湧いてきた。
しかし、ウルとジョセフ以外の決定打をもたないメンバーは苦戦をしいられていた。
カレン「あ!」
死角からの攻撃により、剣をはじきとばされた。
もう武器はない。敵は10はいるだろうか。
絶望的だった。
諦め掛けたその時だった。
聖母マリアを船首に掲げた巨大な飛行船がカレンの頭上に降下してきた。
カレン「ベーコン号!?」
そして、その両翼から放たれた黄金色の光線が瞬く間に吸血鬼たちを粉砕した。
ロジャー「良かった!間に合った!
さぁカレン!乗ってください!!」
カレン「遅いわよロジャー!!
それにさっきのはいったい!?」
ベーコン号の攻撃により難を逃れたカレン。
内部には既に他のメンバーが揃っていた。
皆が救助した住民の姿も何人か見える。
ロジャー「ふふふ。
あれは私が作り出した対吸血鬼用最終兵器『波紋照射装置』です。
SPW財団がドイツ軍と共同で作った小型紫外線照射装置を応用して作りました。
波紋の原理についてはジョジョの紹介でチベットのメッシーナさんからお聞きし、微弱で擬似的ですが波紋を機関内部で発生。
それをエイジャ...(といってもスーパーエイジャほどのものではありませんが)を使い増幅させて放つのです。
吸血鬼などひとたまりもありませんよ。」
ヨアヒム「よくわからんがすごいだら!
助かっただっちよ。」
ルチア「うんうん。とりあえず科学の勝利ってやつなのねぇ~!」
ジョセフ「さぁ、下の吸血鬼はもうロシア兵に任せりゃあいい。
波紋照射装置を組み込んだ武器を渡してある。
俺たちは本隊を叩くぜ!」
飛行船内部。
ベロニカ「ラスプーチンさま!!」
ラスプーチン「何事だ?」
ベロニカ「街に放った吸血鬼の軍勢ですが、尽く消滅しております!!」
ラスプーチン「なに?波紋使いか?」
ベロニカ「いえ....。それが、ロシアの兵隊どもです。
奴らの武器から放った光が当たった途端、吸血鬼が溶けて死んでしまいました!」
ラスプーチンが舌打ちをする。
ラスプーチン「ロジャーだな...。忌々しい!!
製造した吸血戦闘機は全てこの地に集結させろ!!
奴らを一人残らず餌にするのだ!!!」
アナスタシア「奴ら、戦闘機を集め出したわ!すごい数よ!!」
ジョセフ「あぁ。」
アナスタシア「あぁ。じゃないわよ!!
いくらこの船でも、あの数じゃあ勝ち目が無いわ!!」
ロジャー「心配は入りませんよ。
予想の範囲内です。」
ロジャーが船に取り付けられた無線機を掴む。
ロジャー「スピードワゴンさん、出番ですよ!」
スピードワゴン「うむ!此方も準備が出来たところだ!
出撃させる!!!」
無線機の相手はスピードワゴンだった。無線機を通してけたたましいプロペラ音が聞こえる。
ラスプーチン「ほう!」
エルミタージュ後方から上がる反撃の姿に、ラスプーチンは感嘆の声をあげる。
最大速度: 222 km/h。全幅: 8.11 m
。全長: 6.38 m。
RAF(ロイヤル・エアクラフト・ファクトリー ) S.E.5。
スピードワゴンが購入したイギリスの戦闘機であり、例によって財団に改造され波紋照射装置が取り付けられていた。
数ではラスプーチンが優っていたが、機体性能は完全に向こうが上だった。
ラスプーチン「ヒヒヒ。面白い!!
最後まで抗おうというのか!!
いいだろう、受けてやる。
さぁ、来い!神殺しの!!波紋戦士!!
退屈な宮殿のパーティなどより余程楽しい!!
『機』怪な宴の始まりだ!!」
http://youtu.be/ymd5qwSmC5w
飛行船と戦闘機の軍勢が空中を舞う。吸血機が鉄の霰を浴びせれば、波紋を浴びせる。赤と金の光の応酬だ。まるでこの国が血を流しているようだった。
その中にただ一つ、黒翼をもって天翔る異形があった。破壊神・アモン。デーモンの40個軍団を配下に置くソロモン72柱の序列7番の大いなる侯爵。
それが、ウルが受けつぎ、変身する悪魔の名。疾風の如き動きで戦闘機の網目をくぐり抜ける。すれ違いざまに3機の吸血機が落とされた。アモンが打ち漏らした6機をベーコン号が撃ち落とす。しかし、ラスプーチンの飛行船が4機を落とした。
蝿を落とすように、命が燃えた。
血で血を洗う、闘争。
アモンがラスプーチンの飛行船の砲台に右手を突き刺す。鉄の、焼ける。死の匂いがした。
そのまま機体後方まで一気に船体を抉りとる。右側砲台は大破。機体は大きく傾いた。
爆発音を聞きつけたラスプーチンが飛行船の甲板に上がると、爆炎を背景に彼を見下ろすアモンの姿があった。その姿はまさに魔王だった。しかし、それはラスプーチンも同じなのだ。アモンが鉄骨のより強靭な腕に魔翌力をこめて拳を振り下ろす。ラスプーチンはそれを防ぐため、アスモデウスのバリアーを展開した。
二体の悪魔の力が交差し、拮抗し、炸裂する。
周りに跳ぶ戦闘機はその衝撃波を受けて吹き飛んだ。
アモンが咆哮をあげてバリアーに掴みかかる。大気にひびがはいった。
次の瞬間、ラスプーチンの眼前に飛び込んだのは振り下ろされたアモンの拳だった。
世界を破滅に追いやる事もたやすいその拳が、ロシアの上空で唸った。
それは人の作り出したものが抗える力ではなく、飛行船はなす術もなく爆発を起こした。
ラスプーチン「バリアーを....なんという力だ.....。
ここを生き延びねば、先は無いか!?」
吹き飛ばされたラスプーチンが空中を仰ぐと、天は黒い凶神と波紋を放つ船に征服されていた。吸血鬼化した戦闘機も粗方が堕とされてしまい、数える程しか残ってはいなかった。
ラスプーチン「アモンよ、見せてやるぞ!!私の中に宿る真の恐怖を!!!!」
ラスプーチンが狂った笑い声をあげながら空を駆けた。その姿はまるで不幸を運ぶ鳥の様だった。
ラスプーチン「魔人・アスモデウスよ!魂の契約を果たす時がきた!!!
この地を汝の聖域と化すのだ!!!」
ラスプーチンが呪詛を唱えると、地面が割れ、空が泣いた。
ヨアヒム「な、何じゃこりゃあーーーーー!!」
アナスタシア「ロ、ロシアが........!!」
ジョセフ「危険だ!!!一体上昇する!!!」
不吉な魔翌力が地の底から、天から降り注ぎ世界を穢す。
凄まじい砂嵐が吹き荒れ、視界が不明瞭な中、ジョセフはベーコン号を上昇させた。
ゼペット「砂嵐が晴れてきた.......!」
カレン「あ、あれは....!?」
ルチア「なんなの!あの不気味な.......」
轟音と共に現れたのは、古代の遺跡を思わせる巨大な神殿だった。
アモンと同じくソロモン72柱の悪魔が一体。72の軍団を率いる序列32番の大いなる王。魔人・アスモデウスの現界を知らせる神殿だった。
そして、ラスプーチンは人間をやめた。
乙ーsaga入れた方が良いよ
空浮かぶベーコン号から一行はその神殿を臨んだ。
アナスタシア「な、なんなのよ!あの不気味な神殿は!」
ロジャー「アスモデウスの聖域....神殿ともいいます。
ここはもう奴のテリトリーです。」
ロジャーが眼下に広がる景色を睨みつける。
カレン「アレをこのまま放置するわけにはいかないわ。」
ルチア「早く手を打たなきゃねえ~。」
その時だった。ベーコン号の扉を扉をコンコンとノックする音が聞こえた。
ゼペット「な、何じゃあ!ノックする音が!?」
ジョセフ「馬鹿な!!高度1000フィートだぜ!!」
なおもノックの音は続く。扉の外の存在はきっと化け物か何かだろう。まともな神経なら開けることはしない。
しかし、この船には普段からまともな神経ではない.......俗にいうところの馬鹿がいた。
ヨアヒム「はいはい。いま開けるだっちよ。」
ジョセフ「」
ズシンと響く足音。巨大な影。
何か得体のしれないものが、船内に入ってきた。誰かがゴクリと唾を飲む音がする。各々得物を取り出す。恐らく次の瞬間、化け物は飛び出してくるだろう。
緊張の一瞬だった。
アモン「ただいま。」
カレン「」
おいw
フュージョン解けよw
カレン「ウル!びっくりしたじゃない!!そんな格好で!
脱ぎなさいよそれ!」
アモン「脱げねーよ。
んなことより。
おい、ジョジョ。」
ジョセフ「お、おう。」
アモン「いまからあっちに、なぐりこむぞ!」
アモンが眼下の神殿、その中央に位置する三角屋根の建物を指差す。
それはまるでピラミッドのオベリスクのようだった。
アナスタシア「ラスプーチンは、あそこにいるのね!
よし、奴に引導を渡してやる時がきたわ!!
ジョジョ、ちょっと操縦代わりなさい!!」
アナスタシアがジョセフから強引に操縦舵を奪い取る。
ジョセフ「ちょ、おま!やめろバカ!!
これ結構操縦が難し...ああああああああああああああああああああああああ!!!!」
ジョセフの制止も虚しく、ベーコン号はほぼ垂直に急降下を始めた。
ゼペット「やれやれ、また堕ちるのか。」
ロジャー「修理したばっかりなのに......」
轟音と共にベーコン号は、バースデーケーキの蝋燭のように突き刺さった。
ジョセフの乗る飛行機の定めよ…
「........ふざけた来客だな。」
大破したベーコン号を這い出した彼らを迎え入れた痩せた長髪の男は、ゆっくり立ち上がる。
アナスタシア「ラスプーチン!!!」
ロジャー「いけません!!」
詰め寄ろうとするアナスタシアをロジャーが引き止めた。
ロジャー「あの男、正気ではない。
......どうやらアスモデウスに魂を喰われたようです。」
ジョセフ「まじかよ!」
「ヒヒヒヒ。」
ラスプーチン、否。ラスプーチンの皮を被った魔神・アスモデウスがジョセフたちに歩み寄る。
アスモデウス「で、何のようだ貴様ら?
まさか私に挑もうなどと愚かな事を考えているのか?」
ジョセフ「ヒヒヒヒ。そのまさかさ!
おめーみてぇな奴はお呼びじゃねぇのよォ~ン!
とっととぶっ飛ばして新婚旅行の続きを楽しむのさ!」
アスモデウス「下らぬ。
そんな下らぬ快楽よりもっと素晴らしいものがあるぞ?懐疑・不信・快感・恐怖・絶望・悲哀・狂気・憤怒.....。被虐と加虐の混沌による終わりなき闘争だ。破滅の道だ。楽しいぞ?」
ウル「くっだらねぇーな!
御託はいいからよォ、かかってきな!!」
ウルがアモンに変身し、アスモデウスを挑発する。
アスモデウス「......物分かりの悪い連中だ。仕方ない、私がその素晴らしいさを直接享受してくれようではないか。」
唱える呪詛とともに彼の身体が変態を始める。腕骨が二の腕を突き破って不気味に伸び、昆虫の腕のように蠢いた。首はゴキゴキと気味の悪い音ともにホースのように伸び、絡まった髪の毛がその伸びた首にへばりついた。全身の筋肉が膨張し、奇妙な風船のように膨らむと伸びた首も合間って巨大な男性器のような姿だった。
カレン「...不潔!」
カレンがその醜悪な様相に露骨な嫌悪感をあらわにする。
一方、アナスタシアはその破廉恥な姿をまじまじと見つめたあと、急にか弱い乙女のような悲鳴をあげてヨアヒムの背後に隠れた。
曰く、「目の保養」だという。
アモンが翼を広げて滑空しながらアスモデウスに突進する。
しかし、再びアスモデウスのバリアーがそれを遮る。
アスモデウス「舐めるな。先ほどは万全ではなかったのだ。
このバリヤーはいままでのヤワなものとは違うぞ。」
ジョセフ「おい!てめー!知ってっか?!
そういうのをよォ~!言い訳っつうんだぜぇ!!
【波紋疾走】!!!」
ジョセフがバリヤーにさらに打撃を加えた。バリヤーにひびが入る。が、割るには到らなかった。
アスモデウス「ぬうう。小賢しい奴らめ!うっおとしいぞぉ!!!」
アスモデウスがアモンとジョジョを左右の触手で掴む。壁に叩きつけられ、身動きが取れない両者。
アモン「ぉ、オゴォ.....」
ジョジョ「息が....。波紋の、呼吸が.....」
アスモデウス「ヒヒヒヒ。終わりだぁー!JOJOォーー!!!
さぁ、どうする!?いつもの策はどうしたのだ!!
これでは貴様らは.....」
ジョセフ「.......て、てめーの次の台詞はァ~~....」
ジョセフ「これで、貴様らは手も足も出まい!!」
アスモデウス「これで、貴様らは手も足も出まい!!......ハッ!?」
ジョセフ「へへへ!気づかないのか!?
俺たちをつかんでいる限りてめーは攻撃も防御も出来ねーッ!!」
アスモデウス「!!!」
ジョセフ「いつもの策はどうしただとォ~~ッ!?
そんなに見たきゃあやッてやるよォオオオ!!
ヨアヒムーー!!!!やっちまいなぁああああああああッ!!」
ヨアヒム「おう!!任せろだっち!!」
ヨアヒムが、水泳前の準備体操のような動きで腕をばたつかせる。身体から謎のオーラが吹き出した。
アスモデウス「ま、まずい!!」
タックルの態勢で突進するヨアヒム。目指すはジョセフとアモンが作ったバリヤーのヒビ。
ヨアヒム「デストロン・ハンマーああああああああああああああ!!!!!」
アスモデウス「ちばあああああああああああああああああ!!!!」
硝子が叩き割れたかのような音と共にバリヤーは完全に砕け散った。
ジョセフ「へへへ!またまたやらせていただきましたァン!!!」
ちばああああってwwwwww
アナスタシアは腐女子かわいいな
俺のアナスタシアたんが腐っていく…乙ー
バリヤーの破壊衝撃で吹き飛ぶアスモデウス。そのまま壁に叩きつけられた。
ジョセフ「いまだ!畳み掛けるぜ!」
これ好機、と皆がアスモデウスに向かう。アスモデウスはもはや虫の息であり、もぞもぞと触覚を動かすのみだった。
勝ったッ!
恐らくその場にいた誰もがそう確信していた。
だがしかし、相手が悪過ぎた。
アスモデウス。
かつては謀略を巡らせ、あのソロモン王をも失脚させ一時的とはいえ彼から国の実権を奪い取るほどの頭のキレの持ち主である。
ありとあらゆる学問に精通する、天性の策略家にして色欲魔。
それが彼であった。
彼は、バリヤーにヒビがいれられた時点でこうなることを予測し、密かに策を講じていた!
床に半径約5mの魔法陣が出撃する。
牛・人・羊の頭とガチョウの足、毒蛇の尻尾、口から火を噴く地獄の竜。
アスモデウスの紋章だった。
紋章の真上に、ジョセフたちがいた。
逃げることはできなかった。
膨大な魔力が集まり、巨大な正三角形を形成する。
アスモデウス「イビル・クレスト!!!」
それは爆ぜた。
彼らを吹き飛ばした。
ジョセフ「う、.....うう」
爆発の煙漂う中、ジョセフは目を凝らす。
致命傷。とはいかないまでも中々手痛いダメージだった。
周りには仲間が倒れていた。
なんとか意識があるのはウルぐらいのようだった。
ジョセフ「おい、ウル!大丈夫か!?」
かすれそうな声を絞り出すのがやっとだった。
ウル「なんとか......な。」
ウルがヨロヨロと危なっかしく立ち上がる。変身も解けてしまっていた。
ジョセフ「闘えるのは俺たちだけか.....」
2人だけでは勝てる自身が無い。というわけではないがやはり不安は残る。出来ればもう少し人手が欲しいところだった。
立ち込める煙の外側では魔王が牙を向いている。自分たちを捉えようと伸びる触手の、指の骨を鳴らすような音を耳が捉えた。
ウルが唾と共に口から血を吐き出す。吹き飛ばされた衝撃で口内を切ったようだ。
ウル「関係ねえよ。ぶっ倒すだけだ。
これ以上ロシアをこいつの好きにはさせねぇ。」
ウルが構える。ジョセフもそれに習った。
ラスプーチンを倒す。
どれだけその身がボロボロになろうとも砕けない、ダイヤモンドのように硬い覚悟だけが彼らを突き動かしていた。
「私たちもまだ闘えるわ!!」
ジョセフとウルの背後から凛とした少女の声が届く。アナスタシアはブランカに寄りかかりながらも何とか立ち上がった。
ジョセフ「アナスタシア...!」
アナスタシア「国の一大事なんだから!こんなところで私がへこたれてるなんて出来ないッ!」
震える足で、啖呵を切る。その顔には恐怖の色がありありと現れていた。無理もない。皇女といえども、中身は14歳の少女なのだ。
ウル「いい顔だアナスタシア。一緒にあいつ、ぶっ飛ばすぞ。」
ウルが、アナスタシアの肩に触れる。こんな状況でも、彼の口には笑みが広がっていた。
それは皆も同じだった。
ジョセフ「へへへ。3人と一匹か。あんなヘンタイヤローには、充分すぎるメンツだなッ!!」
ジョセフの言葉に、ブランカが元気のより遠吠えで応える。
ジョセフ「行くぜ、ラスプーチン!!
勝負はこっからだ!!」
絶叫とともにウルは再びアモンに変身した。黒翼を傍目かせ、隼の如く翔ける。
アスモデウスは撃ち落そうと怪光線を放つ。
危うく避けたアモンだったが、逸れた光は屈折しながらそのまま再びアモンに向かってゆく。
アモン「んだこりゃ!?ついてくんな!!」
怪光線はまるでアモンの背中に張り付いたかのようについて回る。避けるのに手いっぱいで、アスモデウスへの攻撃に回ることが出来ない。
ジョセフ「ウル!そいつぁ恐らく何処までもついて回る!逃げても無駄だぜ!
先に破壊しろ!!」
アモン「なるほど!!ならこいつはどうだ!
喰らえ!悪魔光線!!!」
アモンが奇妙なポージングとともに額から青白い極太の光線を発射する。
アスモデウスの怪光線はそれに飲み込まれるように消滅した。そしてそのまま、凄まじい爆発音とともに壁に大穴を作る。
その光の網目を掻い潜るようにアモンは近づき、アスモデウスに拳骨を見舞う。
衝撃でバランスを崩したアスモデウスは、そのまま地面に叩きつけられ這いずり回る。
乙ー
アナスタシアがブランカとともに翔ける。ただの少女が狼と同等の速さで走ることができるのは、靴に変身したミキタカの補助があってのことだった。一人と一匹は風になった。その動きはアスモデウスを翻弄する。
アスモデウスが両腕から光弾を発射する。今度は手数で勝負してきた。機関銃のように無数に撃ち出される弾幕を、2人は辛うじて避け続けていた。
柱の影に隠れていたブランカのすぐそばが光弾で大きく抉られる。まるでそこだけ綺麗にくり抜かれたように綺麗な破壊だった。
恐らく一発でも喰らえば致命傷は避けられないだろう。
標的が2人だけではいつかは命中してしまう。アナスタシアは命中率を下げる作戦に出た。
アナスタシア「ミキタカ!貴方、私そっくりに変身することはできる?
三手に別れてあいつを撹乱して攻撃するわよ!」
アナスタシアは自分の足元に話しかける。
ミキタカ「わかりました。やってみましょう。」
ミキタカ「私は捕まりそうになったらクワガタにでも変身して逃げます。」
靴からミキタカの声が聞こえる。
アナスタシア「いい?私が合図したら分離して私に変身してちょうだい!
いくわよ?
3 (tri トリー)
2 (dva ドヴァー)
1 (odin アヂーン)
0 (nol' ノリ)!」
合図とともに物陰に隠れたアナスタシアの靴が脱げ、分厚く巨大なパイ生地のようになる。捻じり、それがひと塊になると徐々に彼女と同じ青い服を着た少女に変えた。2人はお互い背中を向けたまま駆け出した。
ミキタカって何?乙ー
↑ヌ・ミキタカゾ・ンシ
ジョジョ四部の登場人物で変身能力があります。
ーーーーーーー
柱の影から飛び出した2人のアナスタシア。アスモデウスは驚き、攻撃の手が緩む。
ジョセフ「ナイスだぜ!アナスタシア!
これで奴は攻撃範囲を広げざるを得ねえ!」
アナスタシアたちは動き回ることと遠距離からの鉄球による攻撃のみに専念することで、光弾の被弾を逃れていた。ブランカがヒットアンドアウェイの戦法でアスモデウスを撹乱していることも大きかった。アスモデウスが光弾を放っていた時には、アナスタシアたちはすでにその場を動いている。
アモン「俺たちも畳み掛けるぜ!」
アモンが再びアスモデウスに追撃を開始した。
四方からの攻撃に晒されるアスモデウス。その身には確実にダメージが蓄積していった。
ジョセフ「いけるぜ!!奴は弱っている!!」
アスモデウス「小賢しい真似を!!
糞ッ!!本物の皇女を見抜くことができれば.....!! 」
確かに本物のアナスタシアを人質にとることができれば、それを盾に敵を嬲ることは容易い。
しかしもし偽皇女を捕まえてしまえば、さらに小さな物に変身して逃げられてしまう。この勝負の中、そんな大きな隙を作ってしまえば命取りになるのは火を見るよりも明らかだった。
アスモデウス「何か偽物と本物の見分け方が
.........ん?」
アスモデウスが攻撃を何とか耐え凌ぎながらアナスタシアのうちの一人を見つめる。
アスモデウス「...ヒヒ....
ヒヒヒヒヒヒヒヒ!!
見つけたぞ!本物のアナスタシア!!!!」
アスモデウスの指が、攻撃を受けることも構わずアナスタシアの一人を掴む。
白く巨大な指がアナスタシアを締め上げる。
ジョセフ「アナスタシア!?いや、ミキタカなら抜け出せる!!どっちだ!?」
ジョセフは、次の瞬間にはアナスタシアの姿が虫か何かに変身してあの指からすり抜けて脱出することを期待した。
しかし、アナスタシアはうめき声をあげたままで、いっこうに変身しない。
本物のアナスタシアだった。
アナスタシア「ぐぅ!!なん.....で?ばれたのよ!!」
アスモデウス「ヒヒヒ!
お前の顔はあんな可笑しな顔しているのか?」
アスモデウスが巨大な枯れ木のような親指でアスモデウスの首を無理やりもう一人のアナスタシアの方へ向ける。
アモン「な、!!」
ジョセフ「なんだぁ~!あの顔は!?」
ミキタカの変身したアナスタシアは、体型こそそっくりだったが顔は似ても似つかぬ様相だった。
アナスタシア「ち、ちょっとミキタカ!!
あたしの顔はそんなへちゃむくれなんかじゃあないわよッ!!!!」
ミキタカ「え?似ていませんか?
すいません。地球人の顔はみんな同じに見えてしまって....」
アスモデウス「ヒヒヒ。形成逆転というやつだな。
おっと、動いてくれるなよ神殺しの。
ちょいとでも動けば皇女様の首は地面に転がることになる。」
骨のように白く細いゆびが、アナスタシアの首をへし折りたそうに伸びる。
アナスタシア「ヒィ!」
アモン「アナスタシアを離せ。」
アスモデウス「ヒヒヒ。離してやるとも、貴様らを始末したあとに、ブタ箱の中にな。
奴等なら美味しくいただいてくれるくれるだろうよ。」
ジョセフ「アスモデウス!!てめえ何処までも腐り切ってやがるッ!!」
4部はまだ見てなかった、乙ー
↑四部は面白いですよ。個人的には四部が一番『奇妙な冒険』って感じがします。日常の中の不気味さがたまりません。
ーーーーーーーーーーーーーーー
ミキタカ「クッ!!アナスタシアさんがッ!!」
アスモデウスの指が万力のようにアナスタシアの体をきりきりと締め上げる。痛みと恐怖でアナスタシアは悲鳴をあげた。
アナスタシア「ああああああああああああああああ!!!」
アモン「アナスタシア!!!」
アスモデウス「五月蠅いぞ?無礼者め。」
アスモデウスが火球を放ち、アモンを吹き飛ばす。壁に激突し、口から血が噴き出る。
ジョセフ「ウル!!」
駆け寄ろうとするジョセフを、アスモデウスが遮る。
アスモデウス「そういえば、私の大事な城に大穴を開けてくれた狼藉者がいたな。
どこの誰がやったのだったかなぁ!?」
アナスタシアを掴んだ腕とは逆の腕が、ジョセフの肩を貫く。焼け付くような痛みがジョセフを襲う。
ジョセフ「う、うあああああああああ!!」
突き刺さった指から鮮血が伝い、地面を朱に染めた。
ミキタカ「ジョースターさん!」
ブランカ「バウバウッ!!」
アスモデウス「ダニどもがッ!!うざったいッ!!」
ジョセフたちを引き剥がそうと向かってくるミキタカとブランカ目掛けて、アスモデウスはジョセフを投げつけた。身長195cm、体重97kgの巨体が大砲のような速度でぶつかり、三人とも壁に叩きつけられた。
アスモデウス「くくく。これで私に楯突く邪魔者は排除した。
さぁ、アナスタシア姫。大帝国ロシア200年の終焉の時だ。着様の血で祝わせておくれ?」
アナスタシア「あぁああ、ぅ。
ば、化け物め......!」
アスモデウス「それが最期の言葉か?
では........」
果実をもぐようにその身から引きちぎるため、アスモデウスの指がアナスタシアの首にかかった。
「今だ!!!
波紋照射装置、作動せよ!!!!!!」
それは、突然のことだった。
ウルとアスモデウスが戦っていた広間の大扉が吹っ飛ばされ、その中から隊列を成して現れた者たちが、波紋照射装置付きの機銃の雨をアスモデウスに浴びせたのだった。
アスモデウス「うがあああああああああ!!
こ、小癪な真似をーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
ジョセフ「お、おまえたちは、トルコの....!!!」
かれらのなかには、ジョセフの見知った顔たちもいた。トルコのギョレメの谷にいた、ヨウィスの弟子たちだった。
ヌンツィオ「遅れて済まなかった。ちょいと国境を超えるのに手間取ってね。」
ジョセフ「イタリアのヌンツィオまで......!」
「サピエンテス・グラディオは渡さない!!!」
「ヨウィス様から奪ったもの、返してもらう!!!」
見事に連携の取れた動きでアスモデウスを追い詰める。
ジョセフ「す、凄え。こんなに沢山の奴等が....」
ヌンツィオ「言ったでしょう?我々には多くの同志がいると。
ギョレメの人々はもちろん、落とし前をつけるために参入したイタリアギャング。
そして.......」
ジョセフ「そして......?
他に誰が協力してくれるっつうんだぁ?」
ヌンツィオ「!.....いえ、気にしないでください。
ただの独り言です。」
アスモデウス「き、貴様らァアアアアアアアア!!
こ、こいつがどうなっても良いのかァ!?」
アスモデウスが、向けられる銃口にアナスタシアを晒す。
アナスタシア「!!!!!」
ジョセフ「!!!
あのくそったれ!!またアナスタシアを盾に!!!!
グッ!!畜生、体が動かねえッ!!」
アスモデウス「ヒヒヒヒヒヒヒヒ!!
撃てるものなら撃ってみろ!!
不法入国した貴様らが大国ロシアの皇女を射殺などすれば、国際問題程度では済まなくなるッ!!
再び世界大戦の火蓋がきられるコトとなるぞ!!!?
それでも撃てるか!!?」
ジョセフ「ひ、卑怯なマネを~~~ッ!!」
アナスタシア「撃ちなさい!!」
「..............」
その場にいた全ての人々が、まるで時が止まったかのように停止した。その場の誰もが、目の前の震える少女の放った言葉に凍りついた。
アナスタシア「この男は、災いを振りまく!!!放っておけば、それこそ世界を滅ぼしかねないほどの絶望というなの災いを!!
それを回避することが最も優先すべきこと!!!」
この少女は理解しているのだろうか。それが自らの命を放棄することだということを。
アスモデウスごと自分を殺害することを求めていることを。
自らの命と自分の国を天秤にかけ、命を諦められる女の子がどれだけいるだろうか。
アナスタシア「....約束します。
ここで私を撃ち殺そうと、貴方たちを一切罪にとわない!!
ジョジョ!!あんたが証人よ!!!!
.....お母様とお父様にちゃんと伝えて....!」
ジョセフ「アナスタシア!!!本気かよ!!ふざけんじゃあねぇぞてめぇ!!!!」
ジョセフがボロボロの身体で必死に立ち上がろうとするが、足が立たない。血を流しすぎていた。
アナスタシア「覚悟は......出来てる。」
あ、言い忘れてましたけどヌンツィオは五部で出てきたパッショーネの老幹部です。
時系列いじくったせいで五部が90年後のお話になってますが、今作のヌンツィオは十代後半から二十歳くらいのやり手の駆け出しギャングというキャラでかいてます。
今さらだが俺得スレ過ぎ
単にジョセフをねじ込むだけじゃなく、双方の設定を上手く混ぜ合わせ、更に他の部を知っているとニヤリとさせられる演出(キャラ)もある
クロスSSの理想形
アスモデウス「な、なにィッ!!?」
アナスタシアの覚悟をみて、皆が腹をくくったのか、向けられた銃口が再び火を吹く準備を始める。照準はしっかりとアスモデウスの急所に定まる。それは、アナスタシアの心臓の位置でもある。
アナスタシア「ありがとう......」
狼狽するアスモデウスとは対照的に、アナスタシアは穏やかだ。表情には僅かながら笑みさえ浮かんでいた。
アナスタシア「(じゃあね。アレク....。お父様お母様のことをよく聞いて、素敵な皇帝になるのよ.......!)」
「......すまない...ッ!!.........撃てッ!!」
ジョセフ「やめろおおおおおおおおおお!!!」
「貴方は死なせませんよ!アナスタシアさんッ!!!!」
「バウバウッ!!」
銃口が火を吹かんとする刹那、白い影が地を翔る。風よりも速いその影は、四つの脚を持ちそれぞれに靴を履いていた。
その脚は弾丸すら置き去りにして身体を魔神の眼前まで運ぶ。
影が魔神に激突すると、そのまま速さに任せて押し通す。
自らの身の危険も省みない反則的スピードの暴威に魔神は翻弄された。
空中に放り投げられ、無防備の魔神に白い影が天から牙を剥く。
「ガルルルルルルルルル(ストゥージスッ!!技を借りるぞッ!!!!)」
それは、彼の肩に未だに残る傷を創ったとあるボストンテリアの技だった。
「今ですッ!!」
魔神の鼻っ面に喰らい付いた瞬間、四つ脚のブーツが分解され、ひと塊りに集まった。
徐々に形を変形させたそのパイ生地のような物体は、瞬く間にその姿を大人の身長程もある巨大な刀に変える。
その刀の柄を口に咥え、ブランカは跳ぶ。
目指すは皇女を捕らえる魔神の右腕。
脚力と落下スピードを持って、それを叩き斬った。
片腕をもがれ、地面に落下するアスモデウス。
アスモデウス「おおおおおおれェェェェェのォォォォォうでェェェェェ
がァァァァァ????!!」
そこを狙い、アスモデウス目掛けて機銃の掃射音が劈く。
ブランカ「ガルルルルル(堕ちろ。下種が。)」
アスモデウスを鉄の雨が貫いた。
説明してくれるからありがたい!乙ー
蜂の巣になるアスモデウス。致命傷にこそ至らなかったが、もはや動くことは叶わない。
落下するアナスタシアたちはジョセフが何とかキャッチした。
ジョセフ「痛ッ~~!!ウルーーーーーッ!!
いつまで寝てやがんだてめえ!!
さっさと、ケリつけて来い!!」
その言葉に奮起したのか、アモンが再び立ち上がる。
アモン「うっるせえなぁ。.....バーカ。
言われなくても、やってやるぜ!!!」
アモンが翼を広げて天を舞い、両手にエネルギーを貯める。
膨大なパワーが凝縮され、青白い光球を作り出す。
アモン「『これで終わりだ!!』」
アスモデウス「こ、このォオオオ!!この糞の掃き溜めどもがあああああああああああああ!!!!」
それが魔神の最期の言葉となった。
光に触れたアスモデウスは、粉々に砕け散った。
『 アスモデウス完全敗北 死亡 』
これで終わりだ!
が技の名前なんだよな。アモンの技名って適当過ぎるのに、ビジュアルがかっこ良くて笑えるwww
10年位前のゲームと20年位前の漫画だけど、今、プレイしたり読んだりしても最高に面白いよね
>>522
何周してもグラン・ガマイベントで吹く
ラスプーチン「そんな...信じられん..
人の強い意思。そんなもの負けたと...?」
ジョセフ「お前には永遠にわかんねぇだろうよォ。」
アスモデウスの消失により、ラスプーチンは自我を取り戻していた。しかし、もはや虫の息だった。
ウル「アルバートはあんたの百倍強かったぜ。」
ラスプーチン「ヒヒヒ、アルバートか。
本来ヤドリギはあやつを倒すための切り札であった....
ヤドリギがもつ本当の恐ろしさを知っているか?
主が与えたもうたヤドリギは、生命を奪うものにあらず。人の思想、意識、記憶を奪い、心を[ピーーー]道具なのだ。
時が経つに連れ、お前の心は全てを失い、消え去るのだ....!
生きたまま、自分が自分でなくなっていく。
人格や尊厳をかすめ取られ、ただ生きるだけの存在となる。
死よりも忌まわし呪いだとは思わぬか?」
ウル「俺は、変わらない。」
ラスプーチン「無理だ。そう思う意思が失われて行くのだからな。
最後に一つだけ教えてやろう。
ニコルがバチカンのアポイナの塔に向かった。
あやつは塔に封じ込められた憎しみを解き放とうとしている。」
ジョセフ「なんだと?」
ラスプーチン「行け、いってニコルと闘え。
そして、お前達の戦いの無意味さを知るが良い。
ヒヒヒ、........ヒ」
カレン「アポイナの塔に......」
ゼペット「兎に角、早くむかわねば!!」
ニコルを止めるため、一行はその場をあとにする。
彼らが見えなくなるまでラスプーチンはその姿をあざ笑い続けた。
ラスプーチン「ヒヒヒ、どうせ呪いを解く術は無いのだ。余生を楽しめば良いものを。馬鹿な奴らだ。」
そんな彼に近づく足音があった。
「そうかい?私は彼等に敬意を評するがね。」
丸い目と口髭、そしてやや禿げ上がった頭は、ラスプーチンもよく知った男だった。
「何故.....何故お前がそいつ等と一緒にいる...!
レーニン!!!」
ギョレメの谷の者たちや、イタリアギャングの中から出てきた男の名は、ウラジーミル・レーニン。
ロシア社会民主労働党・ポリシェヴィキ党首にしてサピエンテス・グラディオの幹部が一人である。
ラスプーチン「貴様ァッ!!う、裏切っていたのか!?」
レーニン「裏切る?
検討外れな事は言わないでくれ。彼等の味方さ。」
ラスプーチン「み、味方!?」
レーニン「あぁ。君の所にいたのも、僕の目的の為さ。
君にロシア帝国を内部から腐敗させてもらい、国民の不満を限界まで追い上げさせる。
必然的に君と皇族に対する憎しみが募る。
そして、その不満の原因を我々が排除し、この国の実権を握る。
きっと後の世はこんな風に語り継ぐんじゃあ無いかな。
『ラスプーチンなくしてレーニンなし』。」
レーニン「じゃあ、そういう事だから安心して死んでくれ。
君の夢は私が絶対に叶えるよ。それは私の夢でもあるんだから。」
レーニンの合図とともに、部下が動けないラスプーチンを拘束して連れ去る。
ラスプーチン「い、やだ。嫌だ!!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!助けて、助けてくれぇ~ーー!!」
ヌンツィオ「.........哀れだな。恐らく、彼は人類史でも類を見ないほど最低の人間として記されるんでしょうね。」
レーニン「その犠牲を無駄にしない為、私は戦っているのさ。」
ヌンツィオ「犠牲....。あの家族、ロシア帝国の皇族一家も処刑するんですか?
さっき一緒に戦ったのは、そこの末娘ですよ。」
レーニン「目的の為の犠牲はやむ終えない。.....一生恨まれるだけの覚悟はしてるよ。」
二人はその場を後にした。
回廊には、哀れな怪僧の悲鳴が延々と木霊していた。
『ラスプーチン 死亡』
乙
乙ー
ジョセフたちはラスプーチンのいまわの言葉からニコルの消息を追い、バチカンの贖罪の塔を訪れた。
常世の闇を突き破って出てきたような不気味な塔の入り口には、惨殺された門番の死体が散らばっていた。
ジョセフ「どうやらニコルは既に塔の上に行ったようだな。」
塔の頂きの窓からは赤々と明かりが漏れていた。
ウル「ニコルは、一体ここで何をしようとしているんだ?」
ゼペット「その昔、義弟のエリオットから聞いた事がある。バチカンには罪人たちの怒りや憎しみを封じた塔があり、その最上階には開けてはならぬ棺があると。」
アナスタシア「それ開けたらどうなるの?」
ゼペット「人の闘争本能を刺激し、互い互いが死ぬまで殺しあうようになるらしい。
まるで何者かに憑かれたように.......。」
ジョセフ「Survivor(生存者)はいないってわけかい。」
ニコル「久しぶりだな。」
最上階に鎮座し、ニコルはまるで悪の帝王のように待ち構えていた。
カレン「ラスプーチンは死んだわ。」
ニコル「わかっている。所詮、君たちの敵ではなかったってことさ。」
ウル「ニコル、お前は何をしようとしているんだ?
何が望みなんだ?」
ウルの言葉に、狂ったようにニコルは笑い出し、背後にある黄金色の棺にてをつく。
ニコル「この嘆きの棺は、塔の中でしんだ魂の怨念で満ちている。
これを解き放てば、世界中の人々の心の中に入り込み、誰もが持っている闇を増大させる。欲望に忠実になり、活力を希望や生きがいから、怒りや憎しみへと変える。
人間同士が欲望のままぶつかり合い、殺しあう。
この二十世紀を人が血を殺戮の時代に変えて行くのだ!!」
ニコルが剣を棺に突き立てた。
血より赤いマリスが漏れ出し、散らばる。
ニコル「WRyyyyyyyyyyyyyyyy!!
見よ、この赤いマリスの美しさを!
人の負のエネルギーの結晶!!
ウルーーーッ!JOJOォオオオオオオーーッ!!
パンドーラの匣は開かれた!!
憎しみと言う名の「希望」は星の未来を変えていくぞ。
おまえがどのようにあがこうが、戦ったも戦っても払うことのできない、大きな時代の闇が襲ってくるのだアアアアアアアアアッ!!」
マリスを吸収したニコルが、その姿を変異させる。
アモンとは対照的な白を基調とした姿。
魔神アスモデウス、破壊神アモンと同等の力を持つ悪魔。
堕天使アスタロトが現界した。
アスタロト「私はラスプーチンとは違う。
悪魔に魂を食われたりはしないぞ!」
アスタロトが瞬く間に魔法陣を形成させる。
ジョセフ「や、やべえぞこいつァ!!
全員が魔法陣の範囲内に入っちまってる!!」
ウルたちに残酷なまでに白い光が降り注ぎ、すべてを飲み込まんとした。
だが、次の瞬間、アスタロトの背後から稲妻が襲いかかった。
アスタロト「!?! な、何だッ!!」
突然の襲撃にアスタロトの動きが止まる。
さらに追い打ちをかけるように鎌鼬がアスタロトを切り刻んだ。
アスタロト「グウウウウウ!!小癪なァアアアアアア!!」
「未だ、捕らえろ!!!」
低く良く通る声とともに、地面から一人の男が飛び出した。
男は地面をまるでプールのように沈みながら潜行し、凡そ人間には不可能な関節の動きをその腕で行いながらアスタロトを拘束した。
アスタロト「小癪なァアアアアアア!!
こんなチンケな攻撃など無駄無駄無駄ァ.....!」
アスタロトが真空波を発生させ、男をズタズタに引きちぎる。
だが、
アスタロト「な、何イイイイイイッ!!」
男の切り刻まれた肉片は堕天使にまとわりついた。
「..........『憎き肉片(ミートインベイト)』」
アスタロト「う、動けんッ!!!!ば....馬鹿な。
ま....まったく.....か.....体が動かん!?」
「ニコラス・コンラド枢機卿、確保ッ!!」
ニコルの背後から奇襲を行ったのは、サウサンプトンで出会った日本軍人 加藤だった。
ウル「加藤!!?」
アスタロト「き、貴様ァ!!う、裏切ってい.....、」
加藤「少し黙っていてくれ。」
加藤がアスタロトの首を万力のように締め上げ、気絶させた。
同時に空いた手で嘆きの棺を閉じ、封印する。
加藤「この者の命、大日本帝国が預かる。」
ウル「........」
加藤の言葉に答えず、詰め寄るウル。
加藤の腕から衝撃波が生じ、ウルの頬を切り裂く。
ウルの歩みが止まった。
頬から一筋の血が流る。
加藤「貴方とはやりたくない、引いてくれぬか?」
ウル「いやだ。邪魔をするな!!」
加藤「ッ!!」
飛びかかるウルは加藤の放った先程より強い衝撃波で壁際まで吹き飛ばされた。
加藤「私は帝都に戻る。貴方の戦いは終わったのだ、別に生きる道を探してくれ。
....さらばだ。」
マントを翻し、加藤はワープした。
アスタロトを抱えた三人の従者たちもともに消える。
その中の一人を、ジョジョは知っていた。
ジョセフ「あれは、
サンタナ.....!!」
To Be Continued.......
三棚・・・!
というわけで、なんとかDISC1までを終了させることができました。
キリが良い&今月から私生活が忙しくなるのでこのスレはここで終了し、DISC2はまた新しいスレで始めようと思います。
多分、今年中には再開します。
というわけまでその日までアリーヴェデルチ。
まだまだ続くのか…
期待が高まるぜ
最後駆け足だったな…
でも、disk1完走乙!
ジョジョのキャラがうろ覚えなんで、すいませんがサンタナについて教えてくれませんか?
今年中に再開…長くなりそうだ…乙ー
サンタナは一番最初に現れた柱の男だよ
>>544
ありがとう
まさかシャドウハーツとはあああ!
超期待
はよ
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