池袋晶葉「できたぞプロデューサー、幸子の髪ハネが伸びるスイッチだ!」 (47)


※マジキチ展開にはなりません


P「なんだそれ?」

晶葉「ふっふっふ、これを押せば幸子の頭から横に伸びている髪ハネが長くなる。1回で1cmだ」

P「あれ実は寝癖なんだぜ。カワイイよな」

晶葉「知ってる。そこでPに試してもらいたいのだが」

P「どれどれ。見た感じ、赤いスイッチの付いた手のひらサイズの怪しい箱だな」ポチッ

P・晶葉「……………………」ジー


幸子「プロデューサーさんに池袋さん、どうしたんですか? ボクの方を見つめて。ははーん、分かりましたよ。

   ボクがあまりにもカワイイから見とれてしまったんですね。どうぞ、心行くまで堪能してくださいね!」


P「よく分からないな」

晶葉「ちょっと離れてるからな。でも確実に伸びたはずだ」

P「そうか、また後で試してみるよ」

晶葉「くれぐれも悪用しないでくれよ」

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P「まあ、それはともかく、どうしてこんなものを作ろうと思ったんだ?」

晶葉「天才が発明をするのに理由が必要かね?」

P「いや、そうは思わないけど、晶葉の専門はロボットだろ?」

晶葉「ああ。実は、べったら漬けを作るロボットを作ろうと思ったのだが、

   不思議なことにこれができてしまったんだ」

P「本当に不思議だな……」

ちひろ「私としては、Pさんの反応が淡々としていることの方が不思議です」

P「なんだかんだで晶葉の発明にいろいろ触れてきましたので。多かれ少なかれ慣れるもんですよ。

 ……あっ、幸子、今度のフェスのスポンサー氏へ挨拶に行く時間だ!」

幸子「ボクのカワイさに酔いしれて時間を忘れるなんて本当に迂闊なプロデューサーさんですね」

P「はいはいうかつうかつ。とっとと準備しろい!」

ちひろ「ほらほら、急いでください。はい、お二人とも気をつけていってらっしゃい。

    あっ、そうそう。そのスポンサー氏はあまりいい噂を聞かないので気をつけてくださいね」

P「嫌なフラグ立てないでくださいよ、ちひろさん……」

晶葉「それならボディーガードロボットを貸し出すぞ。しかもターボ付きだ」

幸子「池袋さん、いくらボクがカワイイといっても、そこまで大げさなことをしなくても大丈夫ですよ……」

ちひろ「あっ、じゃあこの後、備品用の経費をおろしに銀行へ行くので私に貸してください」


【スポンサー大企業ビル 社長室】

P「失礼いたします。CGプロのPと申します」

スポンサー「…………」

P(気まずい)

P「……本日はお忙しいところにお時間を作っていただき、まことに恐れ入ります。

 こちらが今回お世話になるアイドルの輿水です」

幸子「CGプロの輿水幸子です。このたびのご協力、本当にありがとうございます。精一杯頑張ります!」

P(よし、事前に練習させた通り落ち着いて話せているな。スポンサー氏は自分への礼儀に

 うるさいらしいから、幸子の個性を殺すことにはなるが、まずは無難な挨拶だ)

スポンサー「ふーん、どうも。ま、せっかく金を出すのだから前座とはいえ、

     どんなのが出るか見ておきたかったけどね」

P・幸子「…………」


スポンサー「ま、聞いたことない三流芸能プロだし、スベタとまでは言わんが十人並みだねえ。

     これでもアイドルになれるんだ。へえ~」ジロジロ

P・幸子「…………」プルプル

スポンサー「ま、せいぜい引き立て役として頑張っておくんなさいな」フウ

P「は、はい、是非とも頑張らせて、いただき、ます……」ワナワナ

幸子「…………」

スポンサー「でも、おじさん、夢を追う女の子は好きだよ。そういう娘はいろいろ応援してあげたいね。

     そうだ……輿水君、だったね。何歳?」

幸子「……じゅ、14歳です」

スポンサー「ほう、14歳。ふむふむ」ジロジロ

幸子(なんで顔を近づけてボクを凝視するんですか。うぅ、においが……)

スポンサー「おじさん、このぐらいの年齢の女の子もいけるんだよね。輿水君もアイドルとしてもっと輝きたいよね?

     おじさんはどんな女の子でもシンデレラに出来るんだよ。それ相応のアレがあればね。分かるでしょ?」


P「えーと、あの……」

スポンサー「野暮だねえ。皆まで言わせる気か? ま、そこの付き人君はホテルの手配を頼むよ。今夜11時からでな」

P「あの……それって……どういうことでしょうか?」

スポンサー「話の分からん奴だな。挨拶ってのは要するに枕だろ! まあ、この輿水とかいうのは

     中の下といったところだけど、この俺が抱いてやるっつってんだ。涙を流して喜ぶんだな!」モミッ

幸子(ボクのお尻を触った!? スカートの中に手を……いやっ! 気持ち悪い!!)

スポンサー「だいたい、アイドルなんて俺みたいな力のある人に媚びを売ってナンボだろ」

幸子(プロデューサーさん、助けて……)

スポンサー「まったく、そこに突っ立ってる若造はどこまで愚鈍なんだ。こういうときはすぐに

    『ハイッ!』って返事するもんだろ! だからそんな底辺臭い仕事しかできないんだよ」

P「…………」プルプル

P(俺一人への罵倒なら耐えられるが、幸子への態度は……。しかし事を荒立てると事務所の皆に迷惑が……。

 どうする? この場を切り抜けるには?)



         パシッ


P(あっ……幸子のビンタ……)

幸子「ふざけないでください! シンデレラは心や行いが綺麗だったから "シンデレラ" になれたんです!

   懸命に努力しているプロデューサーさんとアイドルたちを馬鹿にするなんて、あなたは何様ですか!」

P(……何をやってるんだ、俺は。すべきことなど決まっていただろうに、幸子にこんなことさせて……)

スポンサー「」ヒリヒリ

幸子「特にプロデューサーさんは確かに不器用でまだまだ頼りないですが

   どんなときでもボクたちのために駆けずり回って……」




        ドカーン ドゴーン

             ベキベキ ガチャーン



社員「失礼します。社長! 謎のロボットが我が社を襲撃しています!」


スポンサー「」

P「」

幸子「」

スポンサー「……うん? な、なんだと!? どういうことだ!?」


          ワーワー 落ち着いて避難するんだ!

                 ヒエー 機密文書を忘れるな!

                      クソッ CIAめ、強硬手段に出たな!


P「すっ、すみません。お取り込み中のようですので、今日のところはこれで失礼します! 

 後日お詫びに伺います!」ダッ

幸子「きゃっ! プロデューサーさん、急に引っ張らないでください。ボクはまだまだ言いたいことが……」


――――――――


スポンサー「おい、例の書類はどうなった!?」

社員「それが、行方不明で……」

スポンサー「仕方ない。この襲撃事件自体を闇に葬るしか……」


【帰り道 電車内】

P「経緯を社長とちひろさんにメールしたら詳しい話を聞きたいということだけど、

 嫌なら無理しないで帰ろうか?」

幸子「…………」

P(空気が重いです。幸子のことだから、自分が襲われかけたことよりも、大きな仕事を潰してしまった、

 俺に迷惑をかけてしまった、などと思っているのかもしれない。なんとかケアしてあげたいが……)

P「あ、あのな、幸子……ありがとう、そしてごめんな。今回のことは全て俺が悪い」

幸子「…………」

P「本当は俺が言わなければいけないことだったんだ。なのに、幸子に言わせてしまった。

 情けないプロデューサーだよ。本当にごめんな」

幸子「……えぐっ」

P「わわっ、な、泣くな! 大丈夫だ。俺はどうなろうと幸子を含めたアイドルの皆はなんとしても守る!」

幸子「……ぐすっぐすっ」

P(とにかく今は幸子の気持ちを切り替えないと。何か無いかな?)ゴソゴソ


P(おっ、これは……晶葉、ありがとう)ポチポチポチポチポチ

P「あっ、幸子、今気づいたけど、チャームポイントの髪ハネが伸びすぎだぞ」

幸子「……ひぐっ」

P「ほら、鏡で確認して」

幸子「……あっ、本当ですね。いつの間に……って今まで気づかないなんて

   プロデューサーさんの目は節穴ですか?」

P「幸子だって今気づいただろ」

幸子「ボクはボクの顔を見ることができませんからね。いくらカワイイといっても」

P「ああ、カワイイし強いよ、幸子は。だからもっとカワイくなるために鼻をかもうな。ほれ、ティッシュ」

幸子「なっ!? ……ありがとうございます」チーン


P「ほら、カワイくなった。泣いてる幸子もカワイイけど、やっぱり普段の幸子が一番だな!」

幸子「ボクは泣いててもカワイイのは確かですけど、そんなことを言うプロデューサーさんは変態ですね」

P「ははは、俺は変態だったのだー」

幸子「うわあ……」ジトー

P「ちょっとその視線はきついな……。悪かった」

幸子「まったく、どうしようもないプロデューサーさんですね。あっ、駅に着きましたよ。事務所へ向かいましょう。

   …………アリガトウゴザイマス、プロデューサーサン」ボソ


【翌日 CGプロ 面談室】

P「これからのことについて話す。まず、幸子は何も心配しなくていい。いつも通り過ごしてくれ。

 とにかくCGプロはどんな手を使ってでもアイドルを守る。

 実際、俺はともかく社長とちひろさんはかなり頼れる」

幸子「プロデューサーさんも頼れる人になってくださいよ……」

P「ああ、なれるものならな。おっと、話がそれる。例えば社長は多方面に強力なコネを持っている。

 芸能界はもちろん議員、官公庁に財閥、それからこれは俺も本当かどうか知らないが

 イルミナティやウンモ星人の方々ともという話だ」

幸子「もしかしたら、ウサミン星人も本当に……」

P「かもしれんな。それから、ちひろさん。普段は綺麗な事務員だけど――」

ちひろ「…………」ニコニコ

P「――その笑顔の深淵には底知れない何かが……」

幸子「プロデューサーさん、後ろ!」

P「えっ」クルッ


ちひろ「……」ニコニコ

P「あ、あれ、いつの間にいらっしゃったのですか……?」

ちひろ「どうも、底知れない笑顔の千川ちひろです。大体の事情はPさんから連絡を頂いて把握しました。

    幸子ちゃん、Pさんはともかく私や社長に、何かあったらすぐに相談してくださいね」

P「うん、俺はともかく、ちひろさんや社長に相談するんだぞ。

 もしも仮にこんな俺でもいいのならば、もちろんいつでも相談に乗る」

幸子「プロデューサーさんがなんか卑屈になってしまいました」

P「今回の件もあって、自分の身の程がよく分かりました」

ちひろ「そんなPさんには、このスタエナセットがおすすめです!」

P「元気を出して仕事を頑張れという意味に解釈しておきます……」

ちひろ「そうですよ。Pさんはアイドルの才能を見抜く目と輝かせる能力は一流ですから」

P「無理になぐさめてくれなくても結構ですよ……」

ちひろ「本心ですよ、ふふっ」

幸子「その通りです。ボクのカワイさに見合うのはプロデューサーさんだけですから」

大企業とかスペスナズとかSATにもコネあるしなぁ……後アイドル(物理)もいっぱいいるし


ちひろ「ところで、幸子ちゃん、具合はどうですか? 無理しないでくださいね」

幸子「いえ、大丈夫です! あんな奴のせいでボクの心が乱されるなんてありえません!」

P「そうか……。幸子は強くてカワイイな」

幸子「プロデューサーさんもそんなボクにふさわしいプロデューサーになってくださいね。

   では、そろそろ時間なのでレッスンスタジオに行ってきます」

P「あっ、ちょっと待ってくれ、幸子」


ガチャッ バタバタ


晶葉「おはよう」

P「おはよう、来てくれたか、晶葉」

幸子「おはようございます、池袋さん。今日はずいぶんと沢山のロボットを連れていますね」

晶葉「ああ、Pの頼みでな。一晩で作った」


幸子「えっ、人間サイズのロボットを数十体もですか!?」

晶葉「うむ、といっても私が作ったのはロボットを作るロボットだから実質1体分だけどな」

P「というわけで、幸子、外出するときはボディーガードとして1体と一緒にいてくれ」

ちひろ「Su○caを内蔵しているから電車にも乗れますよ」

幸子「なんだかごつごつしていかついロボットですね。黒スーツにサングラスですし」

P「万一のことがあってはならないからな。用心はしすぎるくらいがいい」

幸子「ちょっと怖い感じですが……よろしくお願いしますね、ロボットさん。では、レッスンに行ってきます」

ロボット「……輿水幸子を認証しました」ピッ


ちひろ「幸子ちゃんは出かけましたね。晶葉ちゃん、ロボットたちがかなりの量の

    荷物を持っていますが、何ですか?」

晶葉「ああ、私の発明品の一部だ。事務所の倉庫室に保管してもらいたい」

P「晶葉にはロボットを提供してもらったから、その代わり倉庫を間貸しすることにしたんです。

 社長には話を通してあります」

晶葉「まあ爆発するようなものは無いから安心してくれ」

ちひろ「そうですか。……あっ、何か落ちましたよ」

晶葉「それは私の傑作の1つ、じたばたすると写すぞ君だな」

P「見た目は普通のデジカメみたいだな」


晶葉「ところがぎっちょん、これは言わばタイムカメラでなんと設定した

   日にち・時刻の光景を写すことが出来るんだ」

P「すごいな! 専門のロボット以外でもさすがの発明」

晶葉「それが……実はあちゃら漬けを作るロボットを製作しようとしたのだが、

   不思議なことにこれができてしまったんだ」

ちひろ「ええっ! 不思議を通り越して奇跡ですよ!」

晶葉「だけど現代ではプライバシーという概念があるから使いづらくて

   結局、私のラボを何度か撮影してみただけだ。もちろん大成功だったぞ。

   ちなみに画像のみならず映像と音声も撮れる」

ちひろ「確かに、使いようによっては恐ろしい発明ですね」

晶葉「壊すのも忍びないので、ここで保管してもらうことにした。外見は単なるデジカメだからな」


P「それにしても、急な頼み事だけど応じてくれて本当にありがとうな、晶葉」

晶葉「ど、どうしたんだ!? いきなり素直に礼なんか言い出して」

P「いや、晶葉にはいろいろしてもらっているのに、きちんと感謝の気持ちを表したことが無かったから」

晶葉「だからって不意打ちすることは無いだろう……………………どういたしまして」カァーッ

P「あっ、顔が赤くなった。こうしてみると歳相応の女の子で可愛いな。」

晶葉「なっ、そういうのは幸子に言ってやれ」


P「晶葉だって可愛いぞ。発明もいいけど、大事なアイドルでキュートな少女なんだ。

 昨日連絡したときにも言ったけど、なんとしても守るからな」

晶葉「P……」

ちひろ「はいはい、こんなときにイチャつかないでください」

晶葉「コホン……そうそう、昨日のスイッチだが実は説明し忘れた機能がついている。

  はりはり漬けも作れるようにしようとしたのに、なぜか……」


    ミンミンミン ミンミンミン ウーサミン!


P「すまん、晶葉。社長から電話だ」ピッ

P「はい、Pです。えっ、昨日のスポンサー氏がいらっしゃった!?

 ……分かりました。至急、幸子を連れて向かいます」


【CGプロ 応接室】

コンコン

P・幸子「失礼します」

社長「ああ、P君に輿水君、よく来てくれた。そこに掛けたまえ」

スポンサー「…………」

P「……」

幸子「……」

スポンサー「Pさんに輿水さん、先日はどうも失礼しました。私の方もいろいろと思い違いをしておりました」

P・幸子「!!」

社長「と、まあ、このようにご足労いただいた上で謝罪なさっているわけで、この件は水に流すのはどうかね?」

幸子「……はい、ボクの方こそ昨日は失礼なことを」

P「こちらこそ本当に申し訳ありませんでした」

P(これがあのスポンサーだと!? たった一晩で何があったんだ?)

社長「というわけでこの件はこれで。スポンサー氏からお話があるそうだ」


スポンサー「はい、実はお詫びの気持ちとして今度のフェスでは輿水さんにメインを張って頂きたく存じます」

社長「他の出演者への根回しは私に任せなさい」

スポンサー「そこで、厚かましいお願いですが、フェスではスカイダイビングを披露していただけないでしょうか?

    輿水さんがスカイダイビングをなさっている映像を見まして、感銘を受けたので、

    是非ともまたお願いしたいのです」

P「で、でもあれは天使という言葉を私が勘違いした結果で、年端のいかぬ少女には酷だったと……」

幸子「…………ボクはやります!」

P「幸子、本当にいいのか?」

幸子「はい! ボクは決して逃げません。ボクのカワイさを世に知らしめるためなら、何だってできます!」

P「幸子……ありがとう」

スポンサー「本当にありがとうございます。もちろん、用具やチャーター機は全てこちらで準備いたしますから

     CGプロさんにはご負担をおかけしません」

社長「…………」


晶葉「おっ、P、話は終わったのか?」

P「ああ、多分いい方向にまとまったよ。晶葉にもいきなりボディーガードロボットを作らせてしまって悪かった」

晶葉「なに、私は楽しかったよ」

P「それから、ボディーガードロボットは継続して使わせてもらいたい。

 俺やちひろさんが迎えに行けないときもよくあるからな」

晶葉「メンテナンスは任せてくれ。ちょうどメンテナンスロボットの実施データが欲しかったところだ」

P「あっ、ロボットといえば、昨日スポンサー社でロボットの襲撃事件があったのを知ってるか? 

 凄い時代になったものだな」

晶葉「えっ、ロボット関係の情報なら確実に私の耳に入るはずだが、そんな話は聞かなかったぞ?」

P「まあ襲撃と言ってもどうやら窓ガラスが数枚割れた程度らしいし

 大したニュースバリューじゃないのかもな」

晶葉「…………」


――――――――


スポンサー「ああ、例の事件については外部の目撃者2人が消えればなんとでもなる。

     ……輿水とPとかいう奴だ」


【フェス当日 チャーター機内】

P「幸子、またこんなことをさせるはめになって本当にごめんよ」

幸子「何言ってるんですか? 情けないプロデューサーさんですね。ボク自身が飛ぶと言ったんです」ガタガタ

社長「輿水君、足が震えているようだが、今からでも取りやめにするかね?

   どうかくれぐれも無理をしないでくれたまえ」

幸子「大丈夫です! ボクはカワイイから何でもできます! それに、池袋さんがくれたヘルメットもありますし」


――――――――

 【前日】

 晶葉「幸子、明日はこのヘルメットをかぶるといい。頭部の形状に合わせて形が変わるから

    しっかりと保護できるはずだ。その……こう言ったら非科学的だが、お守り代わりだと思ってくれ」

 幸子「池袋さん……ありがとうございます。明日はボクのカワイさを空一面に咲かせてきますよ!」

――――――――


P「そうか、俺も晶葉の発明品をポケットに入れてるよ。

 非科学的だってあいつに怒られるかもしれんがお守り代わりだな」

幸子「……プロデューサーさんと池袋さんって本当に仲がいいんですね」

P「俺は幸子とも仲良しのつもりなんだが」

幸子「ボクはカワイイから当然ですよ。…………だから天使のカワイさをみなさんに見せてあげます!」

P「なら俺にはもう言うことが無い。全力で応援するから、カワイイ姿を見せてこい!」

社長「うむ、輿水君はアイドルの鑑でCGプロの誇りだよ」


スタッフ「そろそろ時間です。スタンバイ願いまーす」

P「幸子……頑張れ!」

幸子「…………」コクリ


  ダッ

  ババッ


  ビュオオオオオオオオオオオオオ


幸子「っ…………」

幸子(すごい風圧です。でも2回目ですから、前よりは冷静でいられそうです。

   今度は最後に引っかかるような失敗はしません)


  ピーッピーッ


幸子(高度計が鳴りました。そろそろパラシュートを開きましょう)


  バサッ ブチブチブチッ


幸子「」


幸子(パラシュートの紐が全部裂けて、外れた!? こ、ここで慌ててはいけません。

   カワイイボクは冷静に予備のパラシュートを開きます!)


  ………………………………


幸子「」

幸子(ひ、開きません……。プロデューサーさん、ボクのカワイイ人生はここまでのようです……)


晶葉『……おい、幸子! どうしたんだ!? もうパラシュートを開かないと危ないぞ!』

幸子「い、池袋さん、ヘルメットに通信機が付いていたんですね」

晶葉『それどころじゃないだろう! トラブルか?』

幸子「はい。パラシュートが予備も駄目でした……。プロデューサーさんに遺言を伝えてくだs」

晶葉『何を言ってるんだ! あきらめるな! 待ってろ!』


【数分前 チャーター機内】


P「幸子……」

社長「今は輿水君を信じて、祈ろうじゃないか」


スタッフ「…………」スッ

P「……うわっ、危ないな! 何するんですか!?」サッ

スタッフ「……」グワッ


  ドカッ ゴッ


P「ふう、やっててよかった通信空手。なんでいきなり襲ってきたんだろう?」

社長「……とりあえず彼を縛っておこう」


パイロット「――――」チーン


P「えっ、うわっ、パイロットが失神しています!」

社長「何っ!? ……どうやら薬を打たれたようだな。幸い命に別状は無さそうだ」

P「でもこのままじゃ墜落ですよ!? どうしましょう!?」

社長「落ち着きたまえ。任せなさい。大抵の航空機なら操縦できる。昔取った杵柄だ」

P(社長の過去とコネについて気になる今日このごろです……)


晶葉『おいっ、P、聞こえるか!?』

P「あっ、晶葉!? えっ、どうして?」

晶葉『よかった、例のスイッチを持ってるな? この前、説明しそびれたが、

   そのスイッチには通信機能もついているんだ。……ってそんなことより、スイッチを力の限り連打しろ』

P「えっ? 何? どういうこと?」

晶葉『いいから、早く!!!』

P「あ、ああ、分かった」ポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチ……


【上空】

幸子(お父さん、お母さん、プロデューサーさん、ボクは幸せでした……)

晶葉『幸子!』

幸子「ああ、池袋さん、ボクの最期のメッセージですが……」

晶葉『縁起でも無いことを言うんじゃない! 今、幸子の髪ハネはかなりの長さになっているはずだ。

   それに合わせてヘルメットも変形している。髪ハネを翼にして滑空するんだ!』

幸子「……はい!? えっ、な、なんと……?」

晶葉『だから幸子の髪ハネが長くなってるから、それで飛ぶんだ!』

幸子「何が何だか……」


晶葉『できなきゃ死ぬぞ! 首はヘルメットで保護されるから大丈夫だ!! とにかく頭で飛べ!!!』

幸子「わっ、分かりました! ううっ……」


  フラフラ


晶葉『飛べ! 王道の空初期値!』

ちひろ『晶葉ちゃん落ち着いてください!』


幸子「ひええ」


   フラフラ ユラユラ


   …………スーイ スーイ


幸子「……や、やりました!! ボ、ボクはかもめ、いや、美しい白鳥、いや、カワイイ天使!!」

晶葉『よし! 後はうまく軟着陸だ!』



――その時、空から不思議な影が下りてきたのです


「あれは誰だ?」

「誰だ?」

「誰なんだ?」


――それは……


幸子「ボックでーーーーーーーーす!!!」


【地上】

P「すゎちぃくぉ~! 無事でっ、無事でよかったああああああ!!」

幸子「ちょっ……プロデューサーさん、落ち着いてください。ひどい顔ですよ」クルッ


バシッ


P「」

幸子「あっ……髪ハネが……。ごめんなさい、プロデューサーさん」

P「幸子は悪くない! 悪いのは俺だ。……ごめん、本当にごめんな。大丈夫か? どこも傷付いてないか?」ガバッ

幸子「わわっ、いきなり抱きつかないでください。ボクは大丈夫ですから」

P「晶葉のおかげで助かったけど、俺が、俺がもっとちゃんと安全を確認していればよかったんだ」エグッエグッ

幸子「いきなり泣きださないでください。プロデューサーさんは悪くないですよ。

   どうやら、いつの間にかパラシュートが掏り替えられていたみたいですから」

社長「落ち着きたまえ、P君。今回の件は私の責任だ。まさかあそこまで露骨な強硬手段にでるとは……」


幸子「社長さん……? それで、ステージは? ボクを待っている皆さんは?」

社長「残念ながら中止にしようということで、話を……」

P「さっきまで命の危険にさらされていたのに、ステージに立つつもりか!?」

幸子「ファンの人々がボクたちを待っているんです! 当然でしょう!」

社長「その目は……本気かね?」

P「……分かった。幸子がそう言うのなら、俺たちは全力で応援しよう!」

社長「無理だけはしてはいかんぞ、輿水君」

幸子「……」コクリ

――――――――

  ワー! キャー!

        カッワイイー!

            イツモヨリ カミハネ ナガクネ?

                        カミハネ ペロペロ

 
幸子「遅刻しちゃいましたけど、カワイイボクのために待っているなんて、いい心がけですね!

   そんな皆さんへのご褒美はボクの歌です。それでは聴いてください! To my darling...」


【数時間後 スポンサー大企業ビル社長室】

スポンサー「くそっ! アホか!! あんなふざけた助かり方があるか!!!」


コンコン


スポンサー「うるさいっ! 下がってろ!」


ガチャッ


スポンサー「誰だ! 許可も得ずに! 失敬だぞ!」

ちひろ「どうも、お初にお目にかかります。CGプロの千川ちひろと申します」

スポンサー「CGプロォ? あのクソ忌々しい三流芸能プロダクションか。アポも無しに何の用だ!」

ちひろ「単刀直入に申します。我が社の輿水、P及び社長を殺害しようとしたのは、あなたですね?」


スポンサー「つまらぬ言いがかりだ。なんとも下品な女だな、貴様」

ちひろ「証拠ならここに」ピラ

スポンサー「なんだこの写真は? こんなもの合成に決まっている。ふざけるな」

ちひろ「動画もありますよ」ピッ


 スポンサー『パイロットを眠らすにはこの薬を使え。後は掏り替えたパラシュートで脱出しろ』


ちひろ「私も迂闊でした。あなたがそこまでの強硬策に出るとは思っていませんでしたから」

スポンサー「なぜそんな動画が!?」

ちひろ「まったく、池袋博士さまさまです」

スポンサー「……? おい、貴様、それでいくら欲しいんだ。言ってみろ」

ちひろ「……私はスタドリ等の特許をいくつも握っています。どれだけ疲れていても1本で全快するドリンクです。

    しかも人体に無害。これが如何ほどの富を生むのか想像するのは容易ですよね?」

スポンサー「……」ギロ

ちひろ「でも私は原価割れどころではないくらいの格安でPさんに提供しています」


スポンサー「……」

ちひろ「なぜなら、私はアイドルの皆とPさんが大好きですから。

    本当は無料で差し上げたいところですが、人体に無害とはいえ仕事のために

    際限なく飲み続けかねませんからね、あのプロデューサーさんは」

スポンサー「何の話だ? ……一体、貴様……何者だ……?」

ちひろ「例の書類も拝読いたしました。ずいぶんえげつないことをなさっていますね」

スポンサー「まさか、あのロボット襲撃事件も貴様が!?」

ちひろ「話がそれました。とにかく、私は私の愛する者たちを傷つけるような輩を許しません」パチン


ガチャッ スタスタ


ロボット「…………」グッ

スポンサー「うわっ、何をする! やめろ!」ジタバタ

ちひろ「この黒眼鏡はロボットですから、買収もあらゆる抵抗も無駄ですよ」


スポンサー「くそっ! 一体何をする気だ!?」

ちひろ「この期に及んでも謝罪の言葉の1つも出ないとは……正直呆れました」

スポンサー「おいっ! 放せ、放すんだ!」

ちひろ「あのスタッフさんは素直に、丁寧に謝罪してくださりましたよ。

    人間の器官って2つあるものもありますよね。彼は深く反省しているから、片方だけで済みました」

スポンサー「おいっ、警備員は何やってる? 誰かなんとかしろ! 何でこんなに静かなんだ!?」


   シーン


ちひろ「このビルに、いえ、この国にあなたの味方は、もはや1人もいません」

スポンサー「馬鹿な、ありえない、何かの間違いだ……」

ちひろ「多少のコネとそれなりのお金があれば、ほとんどのことはできちゃうんです。さあ、行きましょう」


スポンサー「何! どこへ行くというんだ!?」

ちひろ「○○国ですよ。あなたはそこでボランティアをします」

スポンサー「ちょっと待て! どういうことなんだ!?」

ちひろ「あそこなら政変が続いているお陰で司法がガタガタですからね。他ではできないボランティアができますよ。

    新薬ゴニョゴニョとか、あるいは臓器ホニャララとか」

スポンサー「分かった、俺が悪かった! それ以外なら何でもする! 勘弁してくれ!」

ちひろ「警察も探偵もあなたを見つけることはできないと思いますよ」

スポンサー「頼む! おい、放してくれ!!」

ちひろ「もっとも、あなたはあなたの自由意志で引退し、どこかへ引き払った……ということになりますけどね。

    さらに財産の一部は妻子に譲り、残りは全て寄付をするようにというあなたの実印付きの手紙が後日見つかります」

ロボット「…………」ググッ

スポンサー「うっ……いてっ! 後生だから……お願いします……」

ちひろ「そして私は今日のこの時間この場所にはいなかったことになります」ニコォッ

スポンサー「ひいい……どうか、どうか助けてくれえええ……」ジョボボボ

ちひろ「あら、いい歳のおじさまが情けないですよ。あなたを掴んでいるのは

    ロボットですから、漏らしても動じませんけど」ニコニコォ


――――――――――――

――――――――

――――


【数日後 CGプロ】

幸子「どうにか成功したからよかったですけど、皆さんに迷惑をかけてしまいましたね」

P「いや、むしろ幸子のパフォーマンスを見たアイドルさんたちが今まで以上に

 熱心になったって感謝されたよ。幸子もうかうかしてると追い抜かれるぞ」

ちひろ「あのスポンサーの悪評を知っている方からは、うちのような小さい事務所なら

   揉み消せると考えて不埒なことをされたのではないかと心配されましたよ」ニコニコ

P「でも、事故(?)の責任を取って引退して外国へボランティアに行くなんて、実は筋の通った人物だったのかもな」

幸子「本当にそうですかね?」

P「まあ、それは置いておくことにして、あるアイドルさんは幸子を見て

 『うきゃー! すっごーい☆ お空スイスイーって飛んでるー! かーっくいー!』

 って喜んでたらしいぞ」

ちひろ「皆さん事情を考慮してくださいました。

    『忌まわしき災いの消え去りぬるころおいに再びまみえんことを!(落ち着いたらまた一緒にフェスしましょうね!)』

    と言ってくださるシンデレラガールさんもいらっしゃいましたよ」

P「いろいろあったけど、幸子が無事でよかったよ」

幸子「みんな池袋さんのおかげですね! そういえば、今日は池袋さんを見かけてませんが」

P「晶葉なら、髪の毛が伸びるスイッチがあるという噂が広まってしまって……」


PaP「お願いします! 俺たちの希望となるスイッチがあると聞いたんです!

   どうか、どうか不毛の荒野にシュヴァルツヴァルトのお恵みを! 」ダダッ

晶葉「だ~か~ら~、あのスイッチは幸子にしか効果が無いんだ」ゴオオオオオ

PaP「そんなことを言わずに是非ともお願いいたします」ダダダッ

晶葉「それに、あれは偶然出来たものだから二度と作れないんだって」ビュゴオオオオ

きらり「にょわー! きらりんもお空飛びたーい!!」ダダダダダッ

茜「とにかく走る! 青春ですね!! ボンバーーーーーっ!!!」ダダダダダダッ


P「ターボ付きロボットに乗った晶葉を走って追いかけるとは……」

幸子「恐ろしいほどの体力ですね……」


晶葉「P! 幸子! なんとかしてくれー!!」


おしまい

以上です
ありがとうございました


ちひろさん怖い

CGプロってよく考えなくても怖いところだよね

乙、その国ってトーラスって企業とか待ってたりしない?

コジマは、マズい・・・

安心の最新医療、アスピナ機関はあなたの協力を歓迎いたします

PaPはハゲなの?

俺PAPだけどあんまりハゲてないよ乙

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