「もうお姉さんだもん」(5)

初めてのSSもどきです。
元ネタはありません。

おそらく2レスで終わります。
ご批評いただければ幸いです。

詩子(うたこ)ちゃんは、元気な6歳の女の子。
おばあちゃんに買ってもらったランドセルをしょってウキウキ気分。
来週からピカピカの一年生。
もううれしくてたまりません。

「私、お姉さんなるの」

そういってお母さんのお手伝いも始めました。
お母さんと一緒にお皿を洗ったり、夕飯の準備をしていると本当にお姉さんになった気分になります。

そんな夜、詩子ちゃんは目を覚ましました。

「・・・・・・お、おしっこぉ」

どうやら詩子ちゃんはおトイレに行きたいようです。
でも、いつも遊んでいる部屋は真っ暗です。
見回すと寝る前まで遊んでいたお人形は、魔女のおばあさんのような笑顔を浮かべているように見えます。
でも、新しい勉強机の上に置かれたランドセルを見ると、すこしだけ勇気が湧いてきました。

「わ、私。・・・・・・お姉さんになるんだもん」

自分を元気づけると、お布団から足を出し立ち上がります。
目の前に、蛍光灯の紐が揺れるのが見えました。
しかし、詩子ちゃんはなかなか紐を引くことができません。
真っ暗の中から、何かが見つめているような気がしているのです。

「こ、こわくないよ!」

紐を力強く引くと、辺りが一気に明るくなり、少し目がくらみました。
部屋が明るくなると、お人形も怖い笑顔でなく、詩子ちゃんを褒めてくれているようなあったかい笑顔に戻りました。

部屋のドアを開けると、廊下が伸びています。右手には一階に下りる階段があります。
電気はついておらず廊下の先も、階段の先も見えません。
詩子ちゃんは、怖くなったのかドアを閉めてしまいました。
チラっと覗いてはドアを閉める。を数回繰り返した後、心もとない動作でランドセルを抱えると、廊下に飛び出しました。

「私。お姉さんになるんだもん。」

ランドセルをキュッっと抱え、廊下の電気スイッチがあるところまで歩き出します。
一歩進むごとに、フローリングの床は、ギシギシを音を立て、不安を煽ります。

おっかなびっくりに歩みを進めた詩子ちゃんは、スイッチの場所までくると、ためらいなく電気を点灯させます。
去年までは、なかなか届かなかったスイッチに簡単に手が届き、誇らしい気持ちでいっぱいです。
さっきまでは見えなかった廊下の先にあるトイレのドアが見えます。
詩子ちゃん、小走りにドアへと駆け寄り中に入ります。

トイレで用を足している最中、トイレの外からギィーという音が何回か聞こえました。
怖くなったのか一瞬水音が小さくなります。
トイレの前でその音は止まりました。
急いで後始末をして、ゆっくりとドアを開けます。
するとそこには、パジャマ姿のお母さんが立っていました。

「1人で夜におトイレ行けたね。偉い偉い」

詩子ちゃんは、安堵した表情を一瞬だけ浮かべ、大好きなお母さんに抱き着きます。

「だって、私もうお姉さんだもん」

またひとつお姉さんになった詩子ちゃんの、ちいさなちいさな冒険のお話でしたとさ。

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