茄子「えーと……ドッキリですか?」
ヴァレンタイン「違う。私は『鷹富士茄子』をトップアイドルにするため、君をプロデュースする事に決めた」
ヴァレンタイン「……それとも、私のこの決断は君にとって『害悪』だったかな?」
茄子「害悪だなんてそんな、滅相もない!こ、光栄の極みです。大統領閣下」
ヴァレンタイン「まぁこれで君は今後の活動における資金面や人脈の心配をしなくても良くなったわけだ」
ヴァレンタイン「この巡り会わせも……一種の『幸運』とでも捉えてくれればいい」
茄子(流石に『福引でアメリカ旅行が当たる』→『道歩いてたら合衆国大統領に声かけられて直々にプロデュースされる事になる』)
茄子(っていうのは幸運にしてもちょっとブッ飛び過ぎてる気がするんですけど……)
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ヴァレンタイン「他に何か質問はあるかな?」
茄子「……では一つだけ。何故あなたは大統領の地位にありながら私のプロデュースをしようと思われたのですか?」
ヴァレンタイン「フン……いいだろう。いい質問だ」
ヴァレンタイン「鷹富士茄子、君は『男が女にひかれる基準』あるいは『女が男にひかれる基準』についてどう考える?」
茄子「それは……性格だったり、外見だったり」
ヴァレンタイン「違う。『吉』であるかどうかだ。自分にとってその男が……あるいは女が『吉』であるかどうかなのだ」
ヴァレンタイン「そして茄子……君は私にとって『吉』の存在だ。私も君にとってそうでありたいと思うのだが、いかがかな……?」
茄子「つまり、私の幸運が欲しいって事ですか?」
ヴァレンタイン「少し違う。君のその幸運をルール無用の『ゲス野郎ども』に渡すわけにはいかない。そういう事だ」
茄子「……」
ヴァレンタイン「気を悪くしてしまったのなら謝ろう。だが……私が君をプロデュースするという『流れ』」
ヴァレンタイン「この『流れ』に身を任せた方が確実に『幸福』になれる……それだけは忠告しておこう」
茄子(『幸福』……)
茄子「お時間ありがとうございました。それではこれで失礼します」
ヴァレンタイン「ああ。アイドル活動、頑張ってくれたまえ」
バタン・・・
ヴァレンタイン(どうなっているのだ?この次元は……)
ヴァレンタイン(『S・B・Rレース』も行われていなければ『ジャイロ・ツェペリ』や『ジョニィ・ジョースター』……『聖なる遺体』の消息も掴めない)
ヴァレンタイン(そもそも『時代』すら変化してしまっている。『自動車』や『携帯電話』……見た事も無いはずのこれらの使い方を私は『理解している』)
ヴァレンタイン(そして何よりも奇妙な事は……この次元に来てからというものジョニィ・ジョースターに撃ち込まれた『無限の回転』が止まっている事だ)
ヴァレンタイン(あの回転は『有限』だったのか?次元の壁さえ超えるあのエネルギーが)
ヴァレンタイン(それともやはりあの女……『鷹富士茄子』が関係しているのか)
ヴァレンタイン(彼女の姿を始めて見た時……『聖なる遺体』にさえ匹敵する『神聖さ』を感じた)
ヴァレンタイン(『幸運の女神』と噂されているらしいが……今まで渡って来た次元には彼女は存在しなかった。だとすれば……)
ヴァレンタイン(……)
ヴァレンタイン「どちらにしろ、今彼女の傍を離れるのは得策ではない。私と共に居る事で『幸福』を感じてもらわなければ……」
ヴァレンタイン(それがこの国の繁栄に繋がるはずだ……)
~~2日目・大統領府執務室
茄子「おはようございます」
ヴァレンタイン「おはよう。今日の予定は定まっているのか?」
茄子「はい。歌とダンスのレッスンをしてもらう予定になっています」
ヴァレンタイン「そうか……ああ。一つ質問していいかな?」
茄子「何でしょう?」
ヴァレンタイン「茄子。君、酒は飲めるか?」
茄子「ええ、まぁ。二十歳ですから」
ヴァレンタイン「種類は?『ビール』か?『ウィスキー』か?それとも君のとこの『ニホンシュ』や『チャーシュー』とかいう奴の方がいいのか?」
茄子「クスッ……それ、もしかして『焼酎』の事言ってます?」
ヴァレンタイン「すまない、日本の文化には疎くてね。……だが君が望むのなら、今日中に最高級の奴を取り寄せよう」
茄子「じゃあ、ビールで」
ヴァレンタイン「分かった。レッスンが終わった後、執務室に来るといい……警備員には伝えておく」
茄子(案外優しい人なのかも……?)
茄子(でもなんだろう、この人の奥底にある『ドス黒い感覚』は……)
ヴァレンタイン「どうした?何を見ている?」
茄子「いえ、何でもありません。レッスン行ってきますね」
バタン・・・
ヴァレンタイン「さて……」
ヴァレンタイン(今のうちに茄子のライバル共を叩き落としておかないとな。茄子の……この国の幸せをたかがアイドルなどに邪魔される訳にはいかない)
~~夜
茄子「失礼します」
ヴァレンタイン「やぁ。レッスンの方はどうだった?」
茄子「トレーナーさんにいきなり『妙な期待はするな』って言われちゃいました……確かに私、少し浮かれちゃってたかもです」
ヴァレンタイン「無理もない。いきなりこんな状況になって平静を保てる人間などそうは居ないからな」
茄子「お気遣いありがとうございます。グラス空ですね……お酌しても?」
ヴァレンタイン「ああ。ありがとう」
茄子「……はい、どうぞ」
ヴァレンタイン「では、この国と君のアイドルとしての未来に……乾杯!」
茄子「かんぱーい!」
ヴァレンタイン「んん…………ブハーーーーーーーーーッ!イエスッ!イエスッ!」
茄子「良い飲みっぷりですね。いよっ、大統領!」
ヴァレンタイン「フフフ……世辞が旨いな、茄子。君も飲め」
茄子「はい。では少々……ぷはぁ。とても美味しいですね」
ヴァレンタイン「肉も魚もナッツもある。好きな物をツマミにするといい」
茄子「ありがとうございます」
・
・
・
・
・
・
ヴァレンタイン「……ふぅ。茄子、私が何故今日君を酒の席に呼んだか分かるか?」
茄子「……さぁ。何故でしょう?私の趣味の『隠し芸』でも見るためでしょうか?」
ヴァレンタイン「カワイイな……そうやって何かを『秘める』君の姿は……凄くカワイイ」
茄子「お褒めにあずかり光栄です。大統領閣下」
ヴァレンタイン「要件を言おう。私がここに君を呼んだのは取るに足らない質問をするためだ。君はただ『YES』と頷いてくれればいい」
茄子「……」
ヴァレンタイン「ーー鷹富士茄子、君に『トップアイドルになる覚悟』はあるか?」
茄子「あります」
ヴァレンタイン「そうか。なら」
茄子「ーーが、それは『公正な勝負』を経た上での話です」
ヴァレンタイン「……ほう?」
茄子「失礼を承知で申し上げますが……今の大統領には何か『ドス黒いもの』を感じます」
茄子「私が『YES』と頷いた瞬間、私の道を妨げるものを全ていとも容易く消し去ってしまうような……そんな『容赦の無さ』が質問に含まれていたような気がするんです」
茄子「ワガママかもしれませんが、それでは駄目なんです。私はトップアイドルへ『自力』で昇りつめたい」
茄子「ですから、もし他の誰かが同じ質問をしてきたのなら私はためらいなく『YES』と言えますが、今のあなたには言えない。それが私の正直な気持ちです」
ヴァレンタイン「イイ……茄子。凄くイイぞ、その表情。柔らかいが芯の通っているスッキリした表情だ……とてもそそられるよ」
茄子「……」
ヴァレンタイン「いいだろう。君が『公正な勝負』を望むのならーーそうすればいい。私は手を出したりしないし、権力を使って結果を改ざんしたりもしないと『誓う』」
ヴァレンタイン「だが……私の方からも一つ条件を付けさせてくれないか」
茄子「何でしょうか?」
ヴァレンタイン「何が何でもトップアイドルになる事……『必ず』だ。誓えるか?」
茄子「……!はいっ、私、必ずトップアイドルになりますっ!」
ヴァレンタイン「よし……なら、今日は帰ってゆっくり休むといい。付き合わせてすまなかったな」
茄子「いえ、とても楽しかったです……あ、グラスがっ!」
ヴァレンタイン「『Dirty Deeds Done Dirt Cheap』……どジャアァぁぁ~~~~ン」
茄子(地面に落ちようとしていたグラスを……消した!?)
ヴァレンタイン「まぁちょっとした『手品』みたいなものだ。……驚いたかい?」
茄子「は、はい……」
茄子(手品?……もっととんでもない『何か』としか思えなかった……)
ヴァレンタイン「ではお開きにしよう。鷹富士茄子、明日も頑張りたまえ」
茄子「あ、はいっ。今日はありがとうございましたっ」
ヴァレンタイン「ああ。私も君と飲めてよかったと感じているよ。心からね」
~~3日目・夜・執務室
茄子「うぅ……」
ヴァレンタイン「……何かあったのか?見るからに元気がないじゃあないか」
茄子「トレーナーさんに言われた事がイマイチ分からなくて……今日一日怒られてばっかりでした」
ヴァレンタイン「そのトレーナーは君を一日中苦しめたのか……くっ、何だが私までかなりムカついてきたぞ」
ヴァレンタイン(トレーナー風情がこの国の『幸せ』を邪魔するとは……後で消すとしよう)
茄子「あ、いえトレーナーが憎いとかそういう事ではなくてっ!私がトレーナーさんの要求通りに出来ないのが悔しいっていうか」
ヴァレンタイン「……成程。参考までに聞かせてもらいたいんだが、そのトレーナーはどんなアドバイスを君に伝えたんだ?」
茄子「ダンスの回る動きなんですけど、動きが硬いって言われて……どうすればいいのか聞いたら『筋肉に悟られるな』って」
茄子「筋肉を押さえつけようとすればするほど動きは固くなるから、力は皮膚までで止めろって言われたんです」
ヴァレンタイン「それはまた……難しい注文だな」
茄子「イメージはあるんです。風の中の木の葉がバレエ・ダンサーのようにくるくる『舞うイメージ』って言うか」
ヴァレンタイン「ふむ。参考になるかは分からないが……ひとつ私の『特技』を披露しよう」
茄子「特技、ですか?」
ヴァレンタイン「まぁ見ていたまえ。『靴音を消して歩き』……」
茄子「……!」
ヴァレンタイン「『足でマンドリンを弾くッ』!」
~♪~♪~♪~♪
茄子「す、すごい……!」
ヴァレンタイン「若い頃、ダンス・パーティーに来ている女学生をナンパするために必死こいて編み出した技だ」
ヴァレンタイン「……君の言う『イメージ』に近い技術ではないかな?」
茄子「は、はいっ!それです、それがやりたいんです!」
ヴァレンタイン「では伝授しよう……手を借りるぞ」ギュッ
茄子「あっ……」
茄子(こ、この人スゴく強い力で握ってくる……!なのに……『イヤじゃない』……どうして……?)
茄子「あ、あのっ……お手柔らかにお願いします、ね?」
ヴァレンタイン「『約束』する」
ヴァレンタイン「そう張り詰めていては踊れないぞ、茄子」
茄子「す、すみません……ちょっとその、緊張しちゃって……普段はあまりこんな事ないんですけど」
ヴァレンタイン「フン……そういう時は飲むに限る。缶ビールの一気飲みの方法知ってるか?『流し込むぞ』……口を開けろッ!」
茄子「○△☆□×Φ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!?」
・
・
・
・
・
・
茄子「も、もっと飲ませてくらさい……ビールすきぃ」
ヴァレンタイン「どんどん飲むと良い……そら」
茄子「あ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♪」
ヴァレンタイン「ステップの方も良くなってきたんじゃあないか?」
茄子「うぃ~~~~~~~~~~~……あらよっとぉ!ひっく。どーれすかぁ?ヴぁれんたいんさ~ん」
ヴァレンタイン「ふむ……大分軽やかになってきたじゃあないか。流石茄子だ」
茄子「これ、わたしの、じつりょく、ですよねぇ?ぐーぜん、かんけい、ないれすしぃ」
ヴァレンタイン(……)
ヴァレンタイン「ああ。この『技術』を会得できたのは君自身の実力だ。君は大した子だよ、茄子。カワイイぞ……」
茄子「えへへへへへへへぇ~~~~……もーっとほめてくれたらぁ、わたし、もーっと上手くなっちゃうますかもよ~?」
・
・
・
・
・
・
ヴァレンタイン「はいご一緒に。どジャアァぁぁ~~~~~~~~~~~~~~ン」
茄子「どじゃあぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~んっ♪」
ヴァレンタイン「どジャアァぁぁ~~~~~~~~~~~~~~ン」
茄子「どっじゃあぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~んっ♪」
ヴァレンタイン「完璧だ……最早崇拝しかない。ここに『神殿』を立てよう」
茄子「はらひれほらひれ……もう、らめぇ……」
ヴァレンタイン「おっと。……少し飲ませすぎたか」
茄子「えへへへ……ヴぁれんたいんさぁん……どじゃぁーん、ですよぉ……♪」
~~4日目
ヴァレンタイン「ン?電話か……」
『おいおいヴァレンタイン大統領よぉ。アンタこの子に何したんだ』
ヴァレンタイン(……茄子のトレーナーか。そういえば一度も顔を見た事がなかったが)
ヴァレンタイン(この私に無礼な口調で話してくるという事は……技術だけを買われて我が国に来た『礼儀知らず』の『異邦人』と言ったところか)
『二日酔いがひどくてレッスン出来たもんじゃない。歌もダンスもお手上げだとよ』
『お、おええええええええええええええええええええええええ……』
『あ~あまたゲロっちまったよ……』
ヴァレンタイン「今日は休んでいいと伝えてくれ。車で大統領府まで連れて来てくれると助かるんだが」
『悪いがお断りだ。俺は自分の車には女を乗せない事にしてる』
ヴァレンタイン「……仕方がない。私が行こう」
『それがいい。この子のためにもな』
『あ、頭が……ギンギンする……』
ーースタジオ
ヴァレンタイン「茄子」
茄子「あ、大統領……わざわざすみませ、うぇぇぇ……」
ヴァレンタイン「気にする事はない。肩を貸そう」
茄子「あ、ありがとうございます……うぅ」
ヴァレンタイン(まぁ元はと言えば私が無理矢理飲ませたせいなんだがな)
茄子「うっぷ……ぎぼちわるいです……」
ヴァレンタイン「無理をする必要はない。今日はゆっくり休め」
茄子「あの……大統領」
ヴァレンタイン「何だ?」
茄子「今度……おえっぷ、ライブバトル、やってみたいんですけど……」
ヴァレンタイン「ライブバトル?……それはつまり、ステージに立ちたいって事でいいのか?」
茄子「は、はい……そうです」
ヴァレンタイン「理解した。全米を挙げてバックアップしよう。場所は『ウッドストック』あたりでいいかな?」
茄子「いえ、自前でコンサートを開くのではなくて……指定された場所で同じレベルのアイドルと競い合うっていうか」
ヴァレンタイン「成程。アイドルとしての高みに至るために『試練』を受けたいという事か」
ヴァレンタイン「いいだろう。そのライブバトルとやらに私の許可が必要なら今ここでサインするよ」
茄子「そ、それでですね……出来れば、その、大統領にもプロデューサーとして、見に来て頂けたらなぁ……って、思ったんですけど」
ヴァレンタイン「それは難しいかもしれないな……私には合衆国大統領としての『使命』がある」
茄子「……そう、ですよね。ワガママ言ってすみませんでした」
ヴァレンタイン「ちなみに、そのライブバトルとやらはいつやるんだ?」
茄子「3日後ですけど……?」
ヴァレンタイン「フム……『空いている』」
茄子「え?」
ヴァレンタイン「私も信じられないが……その日『だけ』が空いている」
茄子「そ、それはまた……ラッキーですね、アハハ」
ヴァレンタイン(有り得ない……これも『力』だというのか?『鷹富士茄子』の……)
茄子「あのっ。私、頑張ります。頑張りますから……」
ヴァレンタイン「分かっている。君のライブを見に行くと『約束』しよう。……そのためにはまず二日酔いを一刻も早く治さなくてはな」
茄子「うぅ……頑張ります。おぼろろろろろろろろろろろろろろ……」
ヴァレンタイン「……本当に大丈夫なんだろうな?」
~~5日目・夜
ヴァレンタイン「調子はどうだね?」
茄子「はい、ようやく元に戻ってきました」
ヴァレンタイン「それは何よりだ。……君にはどうしてもトップアイドルになってもらわなければならないからな」
茄子「勿論です。大統領の期待に応えられるよう、精いっぱい頑張りますっ」
ヴァレンタイン「ああ。頑張ってくれたまえ……くっ」
茄子「大統領、凄く眠そうですよ。大丈夫ですか?」
ヴァレンタイン「まぁ、ここの所少しやる事が多くてな……あまり寝てないんだ」
茄子「それはいけません。少しお休みになっては?」
ヴァレンタイン「そうしたいのは山々だが……生憎この執務室には『ベッド』と『枕』がない」
茄子「このソファーならベッドの代わりになります。『枕』は……私のココを試してみませんか?なんちゃって」
ヴァレンタイン「ほう……」
・
・
・
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・
・
茄子「……どうでしょうか?」
ヴァレンタイン「悪くない。中々上質な枕だ」
茄子「ふふふ、安心しましたっ。それじゃ、ゆっくり堪能してくださいね♪」
ヴァレンタイン「……」
茄子(これで少しは気を許してもらえるかな……?)
ヴァレンタイン「茄子。まだ何か『秘めて』いるな?凄くカワイイ表情をしている……」
茄子「ひゃっ!?き、急にお腹の方に向き直らないで下さいっ!」
ヴァレンタイン「何か問題でもあるのか?」
茄子「ですから、その、流石にお腹に吐息が当たるのは少し恥ずかしい、と言いますか」
ヴァレンタイン「君は『枕』だ。甘んじて受け入れてくれ」
茄子「うぅ……えげつないです」
ヴァレンタイン「そうやって恥ずかしがる君の顔もイイ……夢中にさせたくなる」
茄子「~~~~っ……!あ、明日も御仕事たくさんあるんですよね?早く眠って疲れを取って下さいっ」
ヴァレンタイン「そうさせてもらうよ」
茄子「もう……」
ヴァレンタイン「……Zzz」
茄子(ドス黒いものを確かに感じるのに……それでもこの人は、悪ではないような気がする)
茄子(……不思議な人)
~~6日目・夜
ヴァレンタイン「茄子、その手に持っている大玉はどう使うんだ?」
茄子「あ、これですか?トレーナーさんに頂いたんです。バランスボールって言いまして」
茄子「こう、仰向けになって……んん~~~~~~~~~~~~~~~~っ!」
茄子「……ぷはっ。って感じで背筋を伸ばしたりするのに便利なんですよ」
茄子「内臓にもいいし姿勢も良くなるとかで」
ヴァレンタイン「ほう」
ヴァレンタイン(ボールの上で仰向けになってこちらを見上げている姿というのは……とてもセクシーだな)
ヴァレンタイン「その『バランスボール』……私にも貸してくれるかな?」
茄子「ええ、もちろんです。どうぞ」
ヴァレンタイン(ほう……随分綺麗な真円球なんだな。歪みが一つもない)
ヴァレンタイン「では……ふんっ!」
・・・・・・・ゴリッ
ヴァレンタイン「ぐおあああああああああああああああああああああああああああっ!?」
茄子「だ、大丈夫ですかっ!?」
ヴァレンタイン「せ、背骨が……」
茄子「よっぽど凝ってたんですね。いきなり思いっきり伸ばしちゃうからですよ」
ヴァレンタイン「こ、このヴァレンタインがここまで『凝り固まって』いたとは……!」
茄子「……ちょっと、動かないで下さいね」
ヴァレンタイン「な、何をする気だ『鷹富士茄子』っ!私の腰に触れるなッ!」
茄子「大丈夫です。ちょっとマッサージするだけですから……えいっ」
ヴァレンタイン「む……」
茄子「どうですか?痛みます?」
ヴァレンタイン「……いや。さっきよりはマシになった」
茄子「じゃあ、続けますから……動かないで下さいね?」
ヴァレンタイン(まさか大統領である私がこんな小娘に『組み伏せられ』執務室の床に『這いつくばらされる』とはな……)
茄子「よい……しょっと」
ヴァレンタイン(ま、『良し』としよう……不快ではないしな)
ヴァレンタイン「茄子。明日はライブバトルだが……大丈夫か?」
茄子「……はい。大丈夫ですっ」
ヴァレンタイン(……)
ヴァレンタイン「そうか。期待しているよ……もうちょっと上を頼む」
茄子「はいっ」
~~7日目・ライブハウス
ヴァレンタイン(小さい会場だな……ま、駆け出しならこんなものか)
茄子「あ……大統領っ。ほんとに来てくれたんですね!」
ヴァレンタイン「ああ。私に出来る事は君の勝利を『祈る』事ぐらいだがな……」
茄子「十分です。私、凄く頑張れそうな気がします」
ヴァレンタイン「ちなみに、君の対戦相手は誰なんだ?」
茄子「ああ、それなら向こうに居る……あの子ですよ」
ーーー
P「よくぞ……ここまで頑張ってきた」
P「僕のアイドルよ……」
ほたる「プロデューサーさん……」
P「君には今までのプロダクションで培って来た経験がある」
P「『サバイバル』も『ロワイヤル』にも……これまでの『ツアー』にもミスは無かった」
P「そして今君がかいてるこの『汗』の感じなら」
P「『行ける』ッ!しっかりと実力はついているぞッ!!」
ほたる「……はいっ!私、絶対に勝ちますっ!」
ーーー
ヴァレンタイン「あの女か……」
ヴァレンタイン(いい目だ。今までの修練に起因する揺るぎない自信がある)
茄子「なんだかとても不幸な子らしくて、前勤めていたプロダクションが倒産してからやっとここまで戻って来たみたいなんです」
茄子「しかも自動車事故から彼女をかばったプロデューサーが下半身不随になったとか……『幸運』、おすそ分け出来たらなぁ」
ヴァレンタイン(……)
ヴァレンタイン「そろそろリハーサルの時間だ。楽屋に居た方がいいんじゃあないのか?」
茄子「あ、そうですね。では失礼しますっ」
ヴァレンタイン「そこの『白菊ほたる』のプロデューサー」
P「……何か御用でしょうか?ファニー・ヴァレンタイン大統領」
ヴァレンタイン「車椅子なのによく頑張っているな。君のその『姿勢』は尊敬に値する……今日はよろしく頼むよ」
P「こちらこそ」
ほたる「あ、あのっ!よろしくお願い申し上げますっ!」
ヴァレンタイン「ああ。お互い『正々堂々』やろう」
~~ライブバトル終盤
司会「白菊ほたるさんで『チョコレート・ディスコ』でしたァァァーーーーーーッ!」
ほたる「みんなー!ありがとーっ!」
茄子「次は私の番ですねっ!聞いてください『ボース・サイド・ナウ』!」
~~♪
ヴァレンタイン(ダンス・歌ともにほぼ互角……ここからは戦局で言うところの『一手』だな)
ヴァレンタイン(『一手』見誤った者の敗北という事か……)
茄子(ほたるちゃんの歌も踊りもスゴかった……今まで見た事も無いくらいに)
茄子(これが『ライブバトル』……か、勝てるのかな……私なんかで)
茄子(ううん、きっと大丈夫。だって私は……!)
ヴァレンタイン「……!」
・
・
・
・
・
・
司会「以上!鷹富士茄子ちゃんで『ボース・サイド・ナウ』でしたァァーーーッ!」
茄子「ありがとうございましたっ!」
司会「では、結果発表です!今回のライブバトルに勝利したのは……」
P「……」
ほたる「……っ」
ヴァレンタイン「……」
茄子(大丈夫。勝てる、勝てる、勝てる、勝てる、勝てるッ!)
茄子(ヴァレンタインさんが見に来てくれた、こんな大事な勝負なら……仮に技術で負けてたって経験で負けてたって、『勝てるに決まってる』!)
茄子(だって私は……)
茄子(私は『幸運』なんだから!)
司会「勝利したのは……『白菊ほたる』ッ!!!」
茄子「………………………え」
ヴァレンタイン「……」
P「ほたるっ!勝ったのは『君』だッ!」
ほたる「……ぁ……プロデューサーさん、私……」
ほたる「う……うぅ……!」
P「良かった、本当に……本当に……!」
司会「ではこれで今回の『ライブバトル』は閉幕となりますっ!皆さんお疲れ様でしたァーーーーッ!」
ヴァレンタイン「茄子……楽屋に戻ろう」
茄子「……」
ヴァレンタイン「茄子」
茄子「は、い……分かり、ました……」
ヴァレンタイン(ここが限界、か……)
ーー楽屋
茄子「すみません、でした」
ヴァレンタイン「……何がだね?」
茄子「折角見に来て頂いたのに、敗北してしまって……恥をかかせてしまって」
ヴァレンタイン「……ひとつ質問しよう。結果発表の時、君は『最後の最後』何を頼った?」
茄子「……」
ヴァレンタイン「答えてくれ」
茄子「……私の『幸運』です」
ヴァレンタイン「そうか。『鷹富士茄子』、私は人の運命を一枚の『壁』のようなものだと考えている」
ヴァレンタイン「『壁』はそれだけでは善くも悪くもない。ただの壁だ」
ヴァレンタイン「不運の壁であれ幸運の壁であれ、全てはそれに相対する人間の姿勢で決まる」
ヴァレンタイン「壁を『あえて』乗り越えてその身を苦痛に晒し、己のさらなる段階へ進むのか。それとも」
ヴァレンタイン「『隠れ蓑』にしてダンゴムシのように縮こまるのか……?」
茄子「……っ!」
ヴァレンタイン「『自分は『幸運』あるいは『不運』だから『勝利』や『敗北』をする……こんな考えには何の意味もない」
ヴァレンタイン「未来の事を完全に予知できる人間が居ない以上、一つの戦いでの勝利や敗北が『吉良』なのか『害悪』なのか」
ヴァレンタイン「そんなことは誰にも判断出来ないからだ」
ヴァレンタイン「君が敗北した原因はそこにある。君自身の運命への向き合い方に」
ヴァレンタイン「『白菊ほたる』はあのプロデューサーと共に己の壁から身を乗り出し、牙を突き立てた」
ヴァレンタイン「今までの言動を鑑みるに……あるいは君もそうしたかったのかもしれないが」
ヴァレンタイン「結果的には最後の最後、君は壁に隠れてしまった。今の『自力』を晒す事を恐れてしまった」
ヴァレンタイン「本当に君が幸運ならここで勝とうが負けようが関係ないはずなのにな……いつかは『真の勝利』へ辿り着くはずなのに」
ヴァレンタイン「なのに君は目の前の戦いにさえ勝利出来ればいい、と自分の幸運を都合よく捻じ曲げようとしてしまった」
ヴァレンタイン「それが敗因だと私は考えるが、どうかな……?」
茄子「……」
茄子「う、ぐ、っ……えぐっ……」
ヴァレンタイン「……いいか茄子。『生長』しろ。真に自分の幸運を信じているのなら、いくつもの勝利と敗北を重ねて『生長』するんだ」
ヴァレンタイン「ゆっくりと『生長』していけばいい。そうすれば最後に勝つのは君なのだ……私はそう信じている。君のプロデューサーとして、いつでもな……」
茄子「…………は゛い゛っ!」
ヴァレンタイン「しかし君に涙は似合わないな……この『ハンカチ』で拭うといい」
茄子「ずみま、せんっ……お借りします……!」
ヴァレンタイン(……)
茄子「……あのっ、大統領っ!」
ヴァレンタイン「ヴァレンタインでいい。泣き顔を見た女に役職で呼ばせるほど私は野暮ではないつもりだ」
茄子「……ヴァレンタインさんっ!私、わたし絶対『トップアイドル』になります!絶対に!」
ヴァレンタイン「フッ……期待しているよ。頑張ってくれたまえ」
ヴァレンタイン(壁に隠れていたから敗北した、か。……私も……)
ヴァレンタイン(あるいは、そうなのかもしれないな……)
とりあえずここまで
休憩します
~~19日目
ヴァレンタイン(あの日から、茄子はいままで以上に『夢』対して真剣になった)
ヴァレンタイン(必ずトップアイドルになると決心していた。飢えたように、なにがなんでも…………………………)
ヴァレンタイン(執務室に顔を出さなくなる事も増えたが、私はそれを嬉しくさえ思った)
ヴァレンタイン(互いに励まし、励まされ、時に飲み明かし……どこまでもお互いを慈しみあった)
ヴァレンタイン(まさか……大統領であるこの私がスティーブン・スティールのように『父親ぶる事に幸福を感じている』のか?)
ヴァレンタイン(どちらにせよ鷹富士茄子との日々は、私に変化をもたらしている。それは確かな事だ)
ヴァレンタイン(そして、今日もまた……変化は訪れる)
ヴァレンタイン「……入りたまえ」
茄子「失礼します。ヴァレンタインさん、今日はなんとトレーナーさんから新しいレッスンを頂きました!」
ヴァレンタイン「ほう……どんなものだ?」
茄子「『アイドル力は無限の力だ、それを信じろ』です」
ヴァレンタイン「随分な精神論だな……まぁ信じるのは大切だが、それはレッスンと言えるのか……?」
茄子「私は……いい言葉だなって思います」
ヴァレンタイン「まぁ、君が満足しているならそれでいいが。……すまないが、グラスが空だ。酌してもらえるかな?」
茄子「もちろんです。では失礼して……このくらいでいいでしょうか?」
ヴァレンタイン「ありがとう。君に注いでもらった酒はいつもより美味い」
茄子「相変わらずお世辞がお上手ですね、『大統領』♪」
ヴァレンタイン「随分そっけない呼び方だな。ここ最近会ってないから私の事を忘れてしまったのか?」
茄子「あ……いえ、そんなつもりでは」
ヴァレンタイン「もう一度君に私の匂いを刻み付けておいた方がいいかな?答えてくれ、『鷹富士茄子』」
茄子「ぁ…………こういうのは、その、もう少し順序を……それにここ、執務室ですし……」
ヴァレンタイン「興奮するか?本来ならファーストレディーだけの特権だ。……目を閉じろ」
茄子「……んっ……」
ガチャッ
莉嘉「やっほー!城ヶ崎莉嘉だよっ☆お邪魔しまーすっ」
茄子&ヴァレンタイン「「!?」」
莉嘉「……ありゃ。ホントにお邪魔しちゃった?」
ヴァレンタイン「貴様何者だッ!どこから入った!」
莉嘉「どこから、って……玄関からだけど?」
ヴァレンタイン「何……!?ここは『合衆国大統領府の執務室』だぞッ!そんな馬鹿な……!」
茄子「り、莉嘉ちゃん!?どうしてこんなところに!?」
莉嘉「何かお姉ちゃんが茄子さんと『セッション』したいから伝えてきなさいって」
茄子「『セッション』って……一緒にライブするって事?」
莉嘉「うんっ☆私も茄子さんと一緒に『セッション』したいから、遥々ここまで来たの!」
ヴァレンタイン(『不気味』だ……この女、何から何まで『不気味』過ぎる!今のうちに排除しておかなければ……)
ヴァレンタイン(『Dirty Deeds Done Dirt Cheap』……『挟んで消す』)
茄子「……ヴァレンタインさん、ダメですっ!」
ヴァレンタイン「っ!……駄目、とは何のことだ?鷹富士茄子」
茄子「今、とても恐ろしい目をしていました。殺人も厭わないような……私、ヴァレンタインさんを『殺人者』にしたくありません」
ヴァレンタイン「……」
莉嘉「ふぇ?サツジンシャ?チャンバラ用のエキストラの事?」
莉嘉(……でもあれって確か『タテシ』って読むんじゃなかったっけ)
ヴァレンタイン「お前、城ヶ崎莉嘉……とかいったか?」
莉嘉「あ、うん。そーだよ☆」
ヴァレンタイン「『セッション』への返答はNOだ。今すぐにお引き取り願おう」
莉嘉「えー……」
ヴァレンタイン「帰れと言ってるのが分からないのか?」
茄子「莉嘉ちゃん、今回は……」
莉嘉「……分かった。帰る。おさわがせしまして、まこともーしわけありませんでしたっ!ふんっ!」
バタン・・・
ヴァレンタイン「今の奴、知っているのか」
茄子「城ヶ崎莉嘉ちゃん……昔の知り合いで、私と同じようにアイドルをやってるっていうのは知ってるんですけど、それ以上は何も……」
ヴァレンタイン「……すまないが、続きはまた今度だ。調べなければいけない事が出来た」
ヴァレンタイン「そして、さっき起こったことについて『何も聞かないで』ほしい。君を巻き込みたくない」
茄子「……分かりました。では私は先に寝させて頂きますね」
ヴァレンタイン「ああ。……いい夢を」
茄子「……」
・
・
・
・
・
・
ヴァレンタイン「そんな女は見ていないだと!?」
警備員「はい。いくら来たと言われましても……私共は厳戒態勢で監視しておりましたし、こちらのカメラでもそのような影は一切捉えておりません」
ヴァレンタイン(馬鹿な……だとするとあの城ヶ崎莉嘉とかいう女は『スタンド使い』……?)
ヴァレンタイン(あるいは奴の後ろ……『お姉ちゃん』とかいう奴の可能性もあるな)
ヴァレンタイン「……なるべく早く『城ヶ崎莉嘉』について調べておけ。洗いざらいだ!」
警備員「はっ!了解しました!」
~~20日目
ヴァレンタイン(城ヶ崎莉嘉。日本でアイドルをやっている小学生……奴の親族にもプロデューサーにも変わった点はない)
ヴァレンタイン(流石に一日ではこの程度の事しか分からないか……)
ヴァレンタイン(だがなるべく早く対策を打たなければ……あの女は『危険』だ)
茄子「『敬意を払って回転の更なる段階へ進め』……うーん」
ヴァレンタイン「……それが新しいレッスンか?」
茄子「そうなんですけど、今一意味が分からなくて」
ヴァレンタイン「敬意を払え、か……まぁ大切な事ではあるが」
美嘉「あ、アタシその意味知ってるよ★」
莉嘉「私もー!教えてあげよっか?茄子さん☆」
ヴァレンタイン「ッ……!」
ヴァレンタイン「どこから入って来たッ!貴様ら二人ともッ『射殺』するぞッ!」
茄子「え?………………え?」
ヴァレンタイン(『城ヶ崎莉嘉』と『もう一人』!いきなり我が執務室の中に現れたッ!扉を開けた形跡は……『無い』!?)
美嘉「おっと、挨拶がまだだったね。アタシは城ヶ崎美嘉。莉嘉の姉だよ★」
美嘉「要件は莉嘉と一緒で『セッション』の申し込み。んで、大統領閣下………………」
美嘉「『撃てるもんなら撃ってみなよ』……ココ狙ってね、コ・コ★」
ヴァレンタイン「言われなくとも始末させてもらうッ!」
茄子「ッ……!」
・
・
・
・
・
・
茄子「……?」
ヴァレンタイン「何……!?」
美嘉「撃てないよね。弾は入ってるし、どこも故障してないのに……『引き金は引けない』」
莉嘉「ふっしぎー☆」
ヴァレンタイン「ならば『D4C』ッ!」
ヴァレンタイン(『挟んで』別次元に飛ばすッ!)
美嘉「わっ、新聞紙!?」
ヴァレンタイン「挟めば、なんてこと………………ン?」
美嘉「自分でもよく分からないんだけど……少なくとも『なんてこと』なくはナイみたいよ、今のアタシって★」
ヴァレンタイン「うっ…………!」
ヴァレンタイン(こ、こいつ『挟んでも消せない』!?そもそも『触れる事さえ出来ない』……!まさか『城ヶ崎莉嘉』も!?)
美嘉「どういうわけか……アンタがアタシに危害を加えたり捕まえたりする事は絶対に出来ないのよねぇ、これが……」
美嘉「すでに無理。自分でもどうしてそうなるのかは理解できないけどね……なんとなく分かる」
美嘉「ヴァレンタイン大統領……アンタはもうアタシの話を聞くしかないのよ」
美嘉「話を聞くだけでいいのよ。『伝言』を……何の問題もないでしょ?」
ヴァレンタイン「……」
茄子(美嘉ちゃんと莉嘉がいきなりここに居てヴァレンタインさんが排除しようとして…………???)
美嘉「もう一度お誘いするよ……アタシ達と茄子さんで『セッション』やらせてくれない?」
ヴァレンタイン「……NOだ」
美嘉「本当にいいの?そこまで頭回らないようには見えないけど★」
ヴァレンタイン「NOだと言っているッ!」
美嘉「そう……ま、いいケドネ。それじゃあ今日はこれでお暇するわ★」
美嘉「あ、そうそう……茄子さん」
茄子「は、はい!?」
美嘉「回転の真実に辿り着きたいのならアドバイスをアゲル★『黄金長方形の軌跡』で回転すると上手くいく……かもね」
莉嘉「それは無限への軌跡だからねー☆」
茄子(黄金……長方形?無限への軌跡……?)
ヴァレンタイン(回転……無限……だと!?)
美嘉「これでお話は終わり。またね★」
莉嘉「バイバーイ☆」
ヴァレンタイン(……消えた。『跡形もなく』)
茄子「ヴァレンタインさん、今のは……」
ヴァレンタイン「……」
茄子「……まだ、話せない事なんですね?」
ヴァレンタイン「……すまない。君に秘密を作っておきたくはなかったんだが」
茄子「いえ、しょうがないです。だってヴァレンタインさんは大統領なんですから」
ヴァレンタイン「……茄子」
茄子「あっ……」
ヴァレンタイン「約束する。決してこの国と君を……『不幸』に巻きこんだりはしない」
茄子「……はい。私、ヴァレンタインさんの事を『信じます』」
茄子「何があっても……」
ヴァレンタイン「ありがとう……茄子」
~~20日目・夜
ヴァレンタイン「……日本にいる、だと?」
警備員「は、はい。日本の『7765プロダクション』に……二人とも。テレビ電話も繋げます」
ヴァレンタイン「繋いでくれ」
警備員「は!」
・・・・・・・・・・・・・・・・
ーー日本
ちひろ(あら、外国の方からテレビ電話?珍しいですね)
ちひろ「はい、こちら7765プロ事務所ですが……」
『急な電話で申し訳ない。見て貰えば分かると思うが、私は合衆国大統領ファニー・ヴァレンタインだ』
『このテレビ電話はホワイトハウスから直接繋げている』
ちひろ「……へ?」
『城ヶ崎美嘉と城ヶ崎莉嘉という名前のアイドルがそちらにいると伺った。二人の顔を見せてもらえないか?』
ちひろ「だっ、……だっ、だっ、だっ、大統領~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!?」
莉嘉「どうしたのちっひー、素っ頓狂な声出しちゃってー」
美嘉「スタドリ山ほど売れたとかー?」
『……!』
ちひろ「あ……あのね……美嘉ちゃんに莉嘉ちゃん……アメリカの大統領が……あなたたちに代わってほしいって……」
莉嘉「あめりかの?」
美嘉「だい、とー、りょー?」
莉嘉「……」
美嘉「……」
美嘉「……ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!?」
莉嘉「お姉ちゃん、アメリカは分かるけどだいとーりょーって何?」
美嘉「た、多分……この世で一番偉い人……だと、思う」
莉嘉「そーり大臣より?」
美嘉「うん……格が違うんじゃないかな」
莉嘉「へぇー。そんな人がアタシ達に何の用なのかな?」
美嘉「…………ごめんちょっと話しかけないで今頭の中整理してる」
莉嘉「はーい」
美嘉「ち、ちひろさん。イタズラって可能性はないの?」
ちひろ「でもどう見ても生放送ですし……声も姿もニュースで見た時のまんまですし……」
美嘉「本当に、本物……なの?」
ちひろ「……多分」
『すまないが、時間が無いんだ……出来るだけ早く頼むよ』
美嘉「あ、あああああああああああああすみませんすみませんっ!莉嘉、お姉ちゃんについてきな!」
莉嘉「おー!」
『……』
美嘉「おはよう……じゃない、こんにちは……でもない、こ、こんばんはです。ヴァレンタイン大統領」
美嘉「お、お初にお目にかかります、アタシが城ヶ崎美嘉です。アイドルやってます、一応……」
美嘉「で、こっちの小さい金髪が妹の莉嘉です……けど……」
『率直に聞こう。回転についてどこまで知っている?君は私の『敵』か?』
美嘉「……はい?」
『無限の回転について、何か知っているか?』
美嘉「すみません、何を言ってるのかよく分からないんですが……」
『……』
『成程。協力感謝するよ、ありがとう。では私はこれで』
ちひろ「ち、ちょっとお待ちください大統領閣下!大統領閣下は確か『鷹富士茄子』ちゃんをプロデュースしておられますよね!?」
『確かにそうだが……それが何か?』
ちひろ「た、只今当プロダクションでは世界中のプロデューサーさんに向けて疲労回復『スタミナドリンク』と」
ちひろ「元気100倍『エナジードリンク』を一本100円で販売しているのですが……!」
美嘉「~~~~~~~~~っちひろさん!何もこんな時にそんな事……!ホントに怒るよ!?」
ちひろ「だ、だって大統領閣下疲れているみたいだったからっ!ついっ!」
『……30000本ずつだ』
美嘉「へ?」
『30000本ずつホワイトハウスに送ってくれ。協力感謝する。では』
ちひろ「……」
美嘉「あ、切れちゃった……なんだったのよ、もう」
莉嘉「お姉ちゃーん。ちっひーがー」
美嘉「何ー?ってうわっ」
ちひろ「ヒ……………ィヒ…………ィヒ………ろ、くまん、ぼぉん……♪」
美嘉「立ったまま気絶してる……」
莉嘉「……幸せそうだね、とっても」
・・・・・・・・・・・・・・・・
ーーアメリカ大統領府・寝室
ヴァレンタイン(『城ヶ崎美嘉は日本に存在し、回転について何も知らなかった』)
ヴァレンタイン(これでハッキリしたな……)
ヴァレンタイン(城ヶ崎姉妹は……この世界に『二人ずつ』存在する)
ヴァレンタイン(こちらの世界で普通にアイドルをやっている者、そして)
ヴァレンタイン(回転の知識を持ち、突如現れては『伝言』を残し消える者……『本来なら存在しえないハズの』)
ヴァレンタイン(同じ存在を同一の次元に二つ存在させるためには次元の壁を超える以外に方法はない)
ヴァレンタイン(そして次元の壁を超えられるエネルギーはこの私の『D4C』と)
ヴァレンタイン(基本世界のジョニィ・ジョースターが持つ『無限の回転』のみ……だとすれば)
ヴァレンタイン「回転の『エネルギーの余波』があの二人のビジョンを形作り、『こっち側』に染み出してきているのか……」
ヴァレンタイン(もしそうならば……いずれは……)
ヴァレンタイン「……くっ」
コン、コン、コン・・・
ヴァレンタイン「……入れ」
茄子「失礼します」
ヴァレンタイン「……茄子。どうしたんだ?」
茄子「……」
ヴァレンタイン(私のベッドの中に……潜り込んでくるだと?今までこんな事はなかった)
ヴァレンタイン(まさかコイツ『ホット・パンツ』の能力で作られた偽物じゃあないだろうな……?)
茄子「……突然こんな無礼な真似をして、本当に申し訳ありません」
茄子「でも、少しでもあなたから離れると……私、とても不安になってしまうんです。何も手に付かない……」
茄子「なんだか……ヴァレンタインさんがどこか遠くへ行ってしまうような気がして」
ヴァレンタイン(この表情……何かを『秘めて』いる……)
ヴァレンタイン「茄子。君にはそれ以外にも何か明確な目的があるんじゃあないのか?」
茄子「……」
ヴァレンタイン「ここから先は私の単なる想像だ。事実と異なるなら罵倒してもらってかまわないから、そのつもりで聞いてくれ」
ヴァレンタイン「……私が何かしらの不幸な目に遭うと直感した君は、何か自分に出来る事はないかと考えた」
ヴァレンタイン「そして自分が傍にいる事で己の『幸運』で私を守ろうとした」
ヴァレンタイン「もし本当にこの通りなら、一人の男として冥利に尽きる話ではあるがな……」
茄子「……その通りです。ヴァレンタイン大統領、私はあなたを守りたい。一人の女として」
茄子「この世のあらゆる残酷さからあなたを守ってあげたい。私にそれが出来るのなら……!」
茄子「私にとって最も恐ろしいことはあなたを失う事です」
茄子「私がレッスンから帰って来たら、『今日はどうだった?』と聞いてくれるだけでいい……それだけで……」
茄子「それだけで……」
ヴァレンタイン「……」
茄子「抱きしめて……くれるんですか?こんな私を……」
ヴァレンタイン「君だから抱きしめたんだ。鷹富士茄子……だが見失うなよ、君にとっての勝利は『トップアイドル』になる事だ。それを忘れるな」
茄子「勿論です。ですが……どうか今日は、このままで……」
ヴァレンタイン「……」
ヴァレンタイン(『祈りたい』……このまま、彼女と共に無事に時間が過ぎていく事を……)
~~21日目
ヴァレンタイン「茄子。レッスンへ行かないのか?」
茄子「今日は一日ヴァレンタインさんの傍にいます。何故か分からないけれど……そうしなければならないと思います」
ヴァレンタイン「そうか……君がそう決断したのなら、私は何も言わない」
茄子「何かお手伝いできる事があったら言ってくださいね?」
ヴァレンタイン「ああ。頼りにさせてもらうよ」
里奈「わぁ~☆かーいがいしぃねぇ!すっかりホンサイのフーカクって奴?」
ヴァレンタイン(近い!昨日よりも『更に』!『迫ってきている』ッ!)
ヴァレンタイン「『机の下』……何人だッ!?」
莉嘉「あ、見つかっちゃったー☆」
美嘉「よっす!朝っぱらからラヴラヴ光線出しまくりだね、ファニー・ヴァレンタイン大統領★」
里奈「新人のォ~、藤本里奈でェッス!よろしくちゃーっす☆」
里奈「いや~事務所のコが机の下居心地ぃぃ☆動きたくなぃ☆っていうから入ってみたケド……これは確かにヤバィね!ドキドキって感じ」
茄子「……お願いします。今すぐ立ち去って下さい。ヴァレンタインさんに話しかけないでっ」
里奈「あ、イラッてる?チョーウケルー……でも、そーぃぅわけにもぃかないのォ。オトナのじじょーって奴☆」
ヴァレンタイン「要件はなんだ」
里奈「『セッション』☆これがラストチャンスッスよォ~?」
ヴァレンタイン「……」
美嘉「どうする?大統領★」
ヴァレンタイン「……『OK』だ。君たちの提案を受け入れる」
莉嘉「オッケーッ!じゃあ時間は明日の正午。場所は……『マンハッタン』の『トリニティ教会前』でどうかな☆」
ヴァレンタイン「承知した」
里奈「ちャ~んと『幸運の女神』さん☆連れて来てくれなぃとヤだかんねェ~?」
ヴァレンタイン「分かっている」
茄子「……」
茄子(また消えた……煙のように……)
ヴァレンタイン「……」
ヴァレンタイン「茄子。話がある」
茄子「大切な……話、なんですね?」
ヴァレンタイン「ああ……。私はこれから君に全てを『告白』する」
・
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・
・
・
~~22日目・夜・寝室
ヴァレンタイン「軍人時代、訓練の途中遭難して死にそうになっていた私は聖なる遺体の心臓部を得た事で復活し、同時に『スタンド能力』も得た」
ヴァレンタイン「以前、落ちそうなグラスを消した事があっただろう?あれが私の能力……『挟む』事で物体を別次元へ行き来させる『D4C』」
ヴァレンタイン「そして私はこの国を『幸福』にするため聖なる遺体の全ての部位を集めようとした」
ヴァレンタイン「その過程で何度も死にかけては別次元の私と入れ替わったし、たくさんの『殺人』も犯した」
ヴァレンタイン「そして遺体争奪戦の末ジョニィ・ジョースターという人物に出会い、彼に無限の回転を撃ち込まれた」
ヴァレンタイン「どれだけ次元を越えても消滅する事無く向かってくる『無限の回転エネルギー』……今、それが迫っているんだ」
茄子「『スタンド能力』『異次元』『聖なる遺体』『無限の回転』……」
ヴァレンタイン「……やはり、すぐには理解出来ないか」
茄子「ヴァレンタインさん。あなたが話してくれた事は全て『信じます』」
茄子「今……あなたの身に起こっている事に私は少しの疑いも持ちませんし、幻覚や妄想だと決めつけたりもしません」
茄子「その上で聞きたい事は……『私に何が出来るのか』という事です」
茄子「あなたが秘密を打ち明けてくれたという事は……それを解決する『決意』をしたという事ですよね?」
ヴァレンタイン「そうだ。……鷹富士茄子、明日の正午訪れる『無限の回転』が私を捉えた瞬間……『無限の逆回転』を撃ち込んで欲しい」
ヴァレンタイン「そうすれば+と-で相殺するはずだ」
茄子「ですが、どうやって『無限の逆回転』を発生させればいいのか……」
ヴァレンタイン「必要なのはおそらく『黄金長方形の軌跡での回転』『馬の力』『真円球』の3つだ」
ヴァレンタイン「……前、君はトレーナーに『バランスボール』を貰っていたな?アレは『真円』だ……アレを使う」
ヴァレンタイン「そして『馬』は……私が走らせる。君は後ろに乗っていればいい。『女神』として……」
ヴァレンタイン「だから君に求める事はただ一つ。『黄金長方形の軌跡』でバランスボールを回転させる事だ。出来るか?」
ヴァレンタイン「『黄金長方形の中に黄金長方形を描く事で得られる軌跡』で真円球を回転させる事が……」
茄子「『黄金長方形の軌跡』…………多分、出来ると思います……いえ、やってみせます。絶対に……!」
ヴァレンタイン「すまない……君を巻き込みたくはなかった」
茄子「いえ。私、巻き込まれた事を『幸せ』だと思います。あなたの力になれるのだから……」
ヴァレンタイン「ありがとう…………………………『鷹富士茄子』」
茄子「……っ」
ヴァレンタイン「……怖いか?」
茄子「正直、不安です。明日の事を想像するのが……」
ヴァレンタイン「物事の片方の面だけ見るのはやめろ……たとえば明日の事なら、『馬に乗りながら私にボールをぶつける場面』を想像してみればいい」
茄子「……?」
ヴァレンタイン「信じられるか?合衆国大統領であるこの私が君にデカいゴムのタマをブン投げられて命を救われるんだ。こんなシュールな光景はない」
ヴァレンタイン「君のタマが激突したとき……私はどんな悲鳴をあげるのか?『ぷぎっ!』か?『ぐあばああああああ!』か?」
ヴァレンタイン「白目を剥いてションベンちびりながら『ヤッダーバァァアアアアアアア!』なんて言うかもしれないな……」
茄子「………………ぷっ、ククク……す、すみませっ、ちょっと笑いをこらえるのが……!」
ヴァレンタイン「フフフ……笑えばいい。そうする事で君の不安が少しでも和らぐのなら」
茄子「本当に……優しいんですね。ヴァレンタインさんって」
ヴァレンタイン「……私は冷酷だよ。だからこそ何人もの自分と他人を見捨ててこれた」
茄子「確かに、『今まで』は冷酷な殺人者だったのかもしれませんけど……『これから』は違うかもしれない」
茄子「……『生長』していけば良いじゃないですか。国も自分も他人も全部全部ーー大切に出来る人に」
ヴァレンタイン「!」
茄子「そのために私の力が必要なら、どんなことでもお手伝いしますから。……あなたのためなら……」
ヴァレンタイン「……」
茄子「……」
ヴァレンタイン「もし、私に撃ち込まれた無限の回転が消え去ったら……この国が真に『幸福』になる時が来たら……君のソロライブをやろう」
ヴァレンタイン「『ウッドストック』で……とびきり規模の大きい……国民全ての脳髄に刻まれるようなスゴい奴を……」
茄子「ふふ、じゃあ今から猛レッスンしないとですね」
茄子「……もし、本当にそんなライブをする時が来たら……見に来てくださいますか?」
ヴァレンタイン「ああ。君の晴れ姿を一番近くで見守る事を『誓う』よ」
ヴァレンタイン「だから今日はゆっくり眠ってくれ、茄子……」
茄子「ヴァレンタイン……さん……」
茄子「Zzz……」
ヴァレンタイン「……」
ヴァレンタイン(『祈って』おくかな……明日の『試み』と……いつか開かれる『ウッドストックでのライブ』の成功を……)
~~22日目・正午・トリニティ教会前
ヴァレンタイン「チャンスは一度……『無限の回転』が私に触れる瞬間、私は君や馬に被害が及ばないよう飛び降りる」
ヴァレンタイン「そこに『無限の逆回転』を撃ち込んでくれ……頼むぞ」
茄子「やってみせます。絶対に……!」
茄子(あなたに借りっぱなしだったハンカチ……今、私のポケットの中にある)
茄子(回転を止める事に成功したなら……その時こそ、このハンカチをあなたに返したい……ありったけの『感謝』を込めて……)
美嘉「お、キタキタ★」
莉嘉「馬に乗ってるーーーー!変なのっ☆」
里奈「つーことはァ、『覚悟』出来てるって事ォォォォ☆」
莉嘉&美嘉&里奈「「「『生贄』は……どっちかなっ☆★☆」」」
ヴァレンタイン(三人のビジョンが……『回転』し……一つに溶け合っていく……)
無限の回転「チュ……」
無限の回転「チュ……チュミミィィィン……」
ヴァレンタイン「来たか……ついに…………茄子のいるこの世界に………………」
ヴァレンタイン「行くぞ茄子ッ!最早『逃走』も『別次元へ隠れる事』もしないッ!ここで決着をつける、君と共にッ!」
茄子「はいッ!」
ヴァレンタイン(馬の力を茄子に伝えるように……馬自身が彼女を乗せる事に感謝するように走らせる……!)
無限の回転「チュミミィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィンッ!」
ヴァレンタイン「今だッ!『飛び降りる』ッ!茄子、やれェェーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」
茄子「馬の力を利用した『黄金長方形』…………『無限の逆回転』ッ!」
ヴァレンタイン(……………………………………………………………………………)
ヴァレンタイン(………………茄子のポケットから何か『出てきている』………………………?)
ヴァレンタイン(…………………あれは……『私のハンカチ』……?回転して……私の方へ……投げられたボールと同じ軌道で……)
ヴァレンタイン(……しかもボールよりもずっと早いスピードで……こちらへ『向かってくる』………………)
ヴァレンタイン(……………………………………『楕円』………………………………………)
茄子「や、やった!『無限の逆回転』が炸裂しましたっ!これで回転は止まる……!」
ヴァレンタイン「……」
茄子「…………え?」
ヴァレンタイン「……」
茄子「何……………………?」
茄子「何…………?なんで………………?」
茄子「なんでヴァレンタインさんの体の『無限の回転』が止まらないんですかッ!?」
ヴァレンタイン「茄子……落ち着いて聞いてくれ」
ヴァレンタイン「……君がボールを投げた瞬間、君のポケットに入っていた『ハンカチ』が回転しながら私に引き寄せられた」
ヴァレンタイン「元々私の所持品だったからな……私が無限の回転を受ければ同じように回転し、同じように消滅する」
ヴァレンタイン「そしてハンカチは私の身体に辿り着くまでにその『回転』で投げられたボールの一部を削り取り……ボールは『楕円球』となった」
ヴァレンタイン「鷹富士茄子。君は『楕円球』を投げたんだ……回転は不完全。『無限に限りなく近い有限』となって……消えた」
ヴァレンタイン「『試み』は失敗した……」
ヴァレンタイン「おそらく私はこれから『無限の回転を受けた場所』へ引き寄せられ、『生き埋め』にされるだろう……永遠に……」
茄子「…………………………………………」
茄子「………………………………………………ぁ」
茄子「あああ……………………………………………………」
茄子「うあああああ……あ、ああっ……あああ」
茄子「うあぁぁぁあぁぁ……あ……あぁあ……ああああああああああああああああああああああああああっ!」
茄子「ああああああああああ……うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
ヴァレンタイン「……泣くな、茄子」
茄子「わ、私のっ……私のせいでっ……!」
ヴァレンタイン「……茄子。君と出会ってから……『私はいつも祈っていた』……そして『私の祈りはいつも裏目に出た』」
茄子「え……」
ヴァレンタイン「君がライブバトルで勝てる事を『祈り』……」
ヴァレンタイン「君と無事に過ごす日々が続く事を『祈り』……」
ヴァレンタイン「今日の試みが成功する事を『祈り』……」
ヴァレンタイン「それらは、ついに叶えれることはなかった。だが私はこの『祈り』を無意味なものだとは思わない」
ヴァレンタイン「『裏目に出た』事は……『幸運』だった」
ヴァレンタイン「事の成功や失敗に関係なく、『祈る事』そのもの存在する『確かな意味』……それに気づく事が出来た。『清らかな気持ち』に……」
ヴァレンタイン「それはまぎれもなく……君のおかげだ」
茄子「ヴァレンタイン、さん……?」
ヴァレンタイン「ありがとう……ありがとう茄子、本当に……本当に……『ありがとう』……それしか言う言葉がみつからない……」
ヴァレンタイン「そして『祈って』おくよ。君がトップアイドルになれる事を………………幸せにな、茄子……」
茄子「ヴァレンタインさんっ!?ヴァレンタインさんっ!嫌、嫌ぁ!」
茄子(消えていく……『煙のように』……)
茄子「うう……う……」
茄子「う……ううっううううっ……あああ」
茄子「うあああ……ああああああああ……」
茄子「うわあああああああああぁああああああああああああああああああああぁああああああっ……」
・
・
・
・
・
・
茄子「……」
茄子(運命は『壁』……)
茄子(なら、私がしなければならないことは壁に隠れてメソメソ泣くことじゃない……!)
茄子(壁を乗り越えて、『さらなる段階』へ……!)
茄子(ヴァレンタインさんから受け継いだものを、さらに『先』へ進める事……!)
茄子「ヴァレンタインさん……私、なります。『トップアイドル』に……なにがなんでも………………絶対に!」
~~数年後・ニューヨーク州サリバン郡ベセル
茄子「集まってくれた皆さん、今日は本当にありがとうございました!」
茄子「……私はこのライブを当初計画していた『ウッドストック』ではなく、ここで出来た事を幸運に思います」
茄子「だってそのおかげでこうして、想像よりずっと多くの人に私の歌を聴いてもらう事が出来るんですから!」
ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!
茄子「……次が最後の曲です。この曲を、私の一番大切な………………………………」
茄子「………………………………………………………………………………………」
茄子「………………一番大切な、ファンの皆さんに捧げます!聴いてください」
茄子「……『My Funny Valentine』!」
終わりです。ここまで読んでくださって本当にありがとうございました!
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