・オッレルスが安価でヤンデレ包囲網を突破することが目的
・EDはオッレルスが全てのヤンデレを突破するか、特定のキャラと添い遂げること
・原作完全改変
・キャラ崩壊(主にヤンデレ)
・エログロあり(?)
・>>1は安価としては遅筆
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金髪に痩身、緑色の目を持つ青年がいた。
オッレルス。
魔神の一歩手前まで迫る実力を持ちながらも人の問題に首を突っ込みまくるため、世界のありとあらゆる魔術的組織から狙われるという問題児である。
「……やれやれ」
そんな彼の頭を悩ませる存在がいた。
黒い革のマントにつば広の帽子。衣装は肌の露出は極めて多く、魔女を彷彿させる姿である。
魔神オティヌス。
北欧神話において主神の名を冠するのが見た目十四歳ほどの少女というのも変な話だが。
「やっと、見つけたぞ」
ポツリと主神は呟く。
その目にはほんの数秒前まであった神々しさや威圧感はなく、ただ欲望だけがドロドロと渦巻いている。
「さあ、一緒に帰ろう」
「……、」
何でもないように言った少女にオッレルスはため息をつく。
もう何度めかわからない。いつ始まったのかもわからない。一度目はイタリアで小さな魔術組織を潰した時だった。二度目はシベリアである。その後は間隙なく現れ続けた。
「どうしんだ? さあ……」
ゆっくりと前に手を差し出す少女にオッレルスは答えた
「安価↓2」
「おまわりさんこっちです」
オッレルスは少女の言葉を無視して、強く言った。
正直、警察ごときが魔神をどうこうできるわけはないが、それでも何かに縋りたいという気持ちはあるのだ。
「……、」
対して魔神はその目をわずかに細める。
そしてわずかに息を吐き、
「理解できないな。その気になればいくらでも、何度でも私と引き分けることはできるだろう。……そして、理解できないな。何故、私をそのように嫌う? お前を理解できる者は私だけだ。私を理解できるのも私だけだ。ならば、私と一緒にいることこそお前にとっての幸せのはずだが?」
「全ての『人間』が君のような精神をしてると思うか?」
「ほう、お前は人間だったのか」
意外そうに目を見開く。
その目のおぞましさに人間らしく恐怖したオッレルスはわずかに一歩、後ずさる。すると、後ろに下がっただけ、同じ距離オティヌスは前に出てくる。
(逃がす気はない、か……)
こんなのを相手にしては永遠に決着がつかない。何らかの行動を起こすべきだろう。
オッレルスはそう決断すると、体に力をいれた。
オッレルス目線でどうする? 安価↓2
素早く後ろへ術式を組む。転移系の術式だ。
「……また逃げるのか」
オティヌスもそれに呼応するように術式を組み上げる。
しかし、オティヌスは魔神の影響があう。無限の可能性の副産物として成功、失敗の可能性が常に五分五分となってしまうのだ。
組み上げたのは妨害系の術式。成功する確率は低いがそれでももっとも妥当な選択だろう。
だが。
「甘いな、オティヌス」
これはオッレルスの計算通りだった。術式への魔力供給を意図的に断ち切り、オティヌスの妨害術式を自壊させる。
ビキビキ! とガラスにヒビでも入ったかのような音と共にオティヌスの魔術は『失敗』に終わる。本来ならそれでも成功する確率は五分だったのだろうが、オッレルスは同じ魔神の領域に片足を突っ込んでいる。一度くらいなら意図的に失敗を誘発させることもできるということなのかもしれない。
「な――――」
オティヌスが次の行動に移る前にオッレルスは『北欧玉座≪プリズスキャルヴ≫』を使う。
説明のできない力が周囲を巻き込み、オティヌスを吹き飛ばす――――
――――はずだった。
「……あれ?」
無情にも力はオティヌスの妨害術式に触れて自壊してしまう。
そして突き出された右手はそのままオティヌスの胸へと突き出される。
「ほう……いやに積極的ではないか」
「いや、待て。これは何かの間違いだ。こんなはずでは――――」
「そうしたいなら最初からそう言えばいいのだ」
唐突な柔らかい感触に慌てふためくオッレルスを押し倒し、魔神は二コリとほほ笑む。
いやな寒気がオッレルスの背中を駆け抜け、体中に広がっていくのがわかる。
(……妨害を完全に破壊しきれていなかったか)
おそらく、魔神なら無茶苦茶な矛盾だらけの妨害をそのまま押し通せることもあるのだろう。それにしてもこんなタイミングでそれを引き当てるとはついていない。
(まさにギャンブルだな……)
彼だからこそそんな冗談交じりで済むが、他の誰かなら死んでいるレベルだろう。
現実逃避するオッレルスの耳元でオティヌスは囁く。
「どうした? いつものように抵抗はしないのか? しないのなら受け入れるということでいいんだな?」
「……冗談じゃない」
こんな受け入れ方をするなら、そもそも逃げてはいないだろう。もっとも目の前の少女にそう言ったところで聞く耳など持たないだろうが。
「冗談? 私はお前に冗談を言ったことなどないぞ。お前に伝える全ての言葉が真実だ。――――愛してる」
小さな体を預け、オティヌスは何度も酔いしれるようにそう囁き続けている。それも、無防備で。
(今なら……いけるか?)
オッレルスの脳裏にそんな思考がよぎる。おそらく、大丈夫。いけるはずだ。
オッレルス目線でどうする? 安価↓2
「だが断る」
オッレルスはばっさりとそう言い捨てた。
「え……?」
オティヌスはあり得ないものを見るような目でオッレルスを見据える。
心なしか、オッレルスを拘束する力が弱まったようにも思えた。
「……ッ!」
自分の肩に乗っている少女の手を強く払いのけ、素早く距離をとる。
未だ茫然としているオティヌスを傍目に術式を組み上げ、今度こそ転移する。行き先は自分の家がある場所だ。
映像が途切れるような呆気なさと共にオッレルスの姿が消える。
「そうか……やはりあの女か? そうなのか? ……オッレルス」
じんじんと赤くなった右手を愛おしそうに見つめながら、オティヌスは呟く。
匂いを嗅ぎ、犬のように舐める。
そして何かを悟ったようにもう一度呟いた。
「あの女なんだな……」
「ふぅ……」
自分の家につくとオッレルスはようやく平常心を取り戻した。魔神の領域に達しようとしている者がここまで揺さぶられるのは珍しい。相手が本物の魔神とあっては無理ないが。
質素な二階建ての家だった。
一階には簡素にテーブル、キッチン、入浴場などがあり、二階には幾つかの部屋がある。もっとも部屋の数と住んでいる人間の数は釣り合っていない訳だが。
「おかえり」
肩までかかる金髪。前髪がきれいに整えられており、いわゆるパッツンとなっている。さらに額の上には大きなゴーグル、服装は作業着にエプロンという女性が紅茶を啜り、くつろいでいる。
シルビア。
王室派の近衛侍女を務めていた経歴を持ち、世界に二十人といない聖人でもある。
彼女はゆっくりと立ち上がり動きやすそうな靴をコツコツと鳴らしながら、
「……何かあった?」
オッレルスは少々困ったように肩をすくめる。それなりに長い付き合いではあったし、彼女自身もそういう勘は働くほうではあったが、ここ最近は特にそう思う。
その鋭さに少々呆れながらもオッレルスは、答える。
「安価↓2」
「犯されそうになっただけだ」
「また随分と不穏な話だね」
つまらなそうに呟いて、座るオッレルスを見てシルビアは眉をひそめる。
しかし、オッレルスがどういう気持ちなのかはわかるので深く聞くようなこともしない。
「アンタは無茶し過ぎだ。狙われているとわかってるのに外に出て派手に暴れちゃ、魔神が察知しない訳がないだろうに」
「……かもしれない。でもこればっかりは性分というヤツでね。自分で制御しきれるものじゃない」
「ならせめて……もう少し、ここにいる時間を増やすとか」
「わかってるだろう。そんなことすればここがばれて安全地帯がなくなるだけだ」
オッレルスの個人的な見解としては一週間も同じ場所にいれば、オティヌスは必ず追いかけてくる。特殊な認識阻害を家そのものにかけていると言っても、魔神相手にどこまで通用するかわかったものではない。やはり同じ場所に留まるのは得策ではないだろう。
「私もついていく。それじゃダメか?」
「ダメだ。あれを相手にできるのは俺だけだ。いくら君でも足手纏いにしかならない」
「……そう」
残念そうに俯き、シルビアをティーカップを片付けにキッチンへ向かう。
だが、オッレルスは気付かなかった。シルビアはキッチンへ向かっている間、思索にふけっている自分を一瞬も見逃さずに見ていたことに。
明けて、翌朝。
「本当に行くんだ」
「ああ、解決策もここでは見つかりそうもないしね。どこかで情報でも集めて見るさ」
そう言って、シルビアの頭を軽くポンポンと叩く。最近のシルビアはこれをするだけで大抵上機嫌になるのだ。……逆にこれでダメな時は何をしてもダメだが。
「ん……」
幸福感を味わうように目をつむり、シルビアをその手を受け入れる。
オッレルスはしばらく頭を撫で続け、頃あいでやめる。
シルビアが少し悲しそうな顔でその手を見つめるが、
「また、今度」
「……うん」
これで納得してくれる。シルビアがこんなに甘えるというのはオッレルスが一番驚いているが、それで行動の幅が広がるならば、問題ない。
「それで、どこに行くの?」
「……そうだな」
シルビアの質問にオッレルスは目的地すら決まっていなかったことを思い出す。よほど、オティヌスから逃げることにしか考えが向かっていなかったのだろう。
そんなことを思いつつ、少し考えオッレルスは答えた
「安価↓2」
「……幻想殺し」
ふと、浮かび上がったワードを呟く。
シルビアは怪訝な顔をになり、
「? 新しい術式か何か?」
少しいぶかしむような表情をするシルビアを見てオッレルスは思い出す。
(そういえばシルビアには『あの少年』の話はしていなかったな。……といっても私自身、風の噂で聞く程度でお目にかかったことなどないのだが)
「……オッレルス?」
顔を覗き込んできたシルビアに少々驚きながらも、平静を保つ。
「しかし、その幻想殺しってのは……?」
「なあに、しがない少年の右腕だよ」
なり損ないはそれだけ言い残すと、住み慣れた家を後にした。
千葉。成田国際空港。
日本の玄関口ともいえる空港にオッレルスは到着していた。元々用意してあった服などの必需品の確認、紙幣の交換を済ませ、空港を後にする。
「さて……どうしたものか」
思いつくように日本まで飛んできたのはいいが、肝心の幻想殺しがどこにいるのかわからない。知っていることと言えばその少年の名が上条当麻ということくらいだ。
(魔術での探査も難しいな。幻想殺しにあえて術を破壊させ逆探知する方法もあるが、それではオティヌスに気付かれる可能性も高い)
仮に地球の裏側である南アメリカに彼女がいたとしても、精々数時間で日本に降り立つだろう。そんなことになっては本末転倒である。
「……仕方ない。こっちを使うか」
オッレルスはあえて科学的な携帯電話を取りだす。主流のタッチ式ではなくボタン式なのは変える必要もないからだ。
アドレスから適当に見つくろい電話をかける。
(さて……出てくれるといいが)
オッレルスの電話相手 安価↓2
『あれ? まさかもう帰る気になってくれた?』
オッレルス自身なぜかわからないが、電話をかけたのはシルビアだった。
「いや……何となく声を聞きたくなった」
『お、ソイツは嬉しい御指名だねえ……』
どこかうっとりとした声にオッレルスは既視感ある寒気を覚えながらも会話を続ける。
「ところで、そっちは問題ないか?」
『ああ……アンタがいないせいだ少しさびしいけどね』
「そうか……」
やはりオティヌスにはばれていない。このまま行けば隠し通せるだろう。
少しの間があって、シルビアが口を開く。
『あ、あのさ……』
「何だ?」
珍しくおどおどした声のシルビアにオッレルスはどことない不安を覚えながら耳を傾ける。
『帰ってきたら、二人でどこか行かない? ほら、お互い積もる話もあるだろうし……』
「構わないが……唐突にどうしたんだ?」
『いや別に――――それじゃ!』
通話の切れた携帯画面を眺めながら、オッレルスはもう一度呟いた。
「……どうしたんだ?」
今日はここまで。
ヒント!
1このスレでオッレルスが死亡することはほぼありません。というかないでしょう
2男性キャラは基本的に敵対しません。もちろん例外あり。
3女性キャラは一部のぞいてヤンデレ化する可能性があります。
4無理に包囲網を突破しなくても誰かと逃亡エンドもできるかも?
5BLだけはない。断じてない!
以上の要素で進めていきます。
皆さんお疲れ様でした。
乙です。
上条さんや一方通行、浜面にフラグ立ってた連中はどうなるの?
>>35
時系列が原作前なので御坂くらいですかね。完全な平行世界ということで……
それでは開始
「……あまり魔術に頼るのもよくないな」
オッレルスの顔は若干やつれていた。なぜなら、魔術も使えず慣れない科学機器で上条当麻についての情報を探っていたからだ。
少々時間がかかり三日ほど過ぎたが、その時間で所在がつかめたのは幸いだろう。
「さて、行くか……」
家のインターフォンを押す。出てきたのは見た目二十代前半、下手すれば十代にも見える上品な雰囲気を持った女性だった。
上条詩奈。言わずもがな上条当麻の母親である。
(これが幻想殺しの母親か……。雰囲気だけなら一級品だ)
わずかに目を細めたオッレルスに、詩奈は首をかしげる。
「あらあら……どちら様でしょうか?」
「……アンドレア、と申します」
オッレルス。そう名前を明かすのは簡単だが、万が一この接触が誰かに知れた場合には彼女が危険にさらされる。そう思ったオッレルスはイギリスではポピュラーな男性の名前を名乗った。
これなら、相手もこの女性からの情報をあきらめる、という効果もあるのだが。
「上条当麻を探しているのですが……」
「当麻さんなら学園都市ですよ?」
「そうですか……いきなり失礼しました」
目的が果たせないとあれば、すぐに立ち去る。これがオッレルスなりの行動パターンだった。
しかし、対象が学園都市にいるとはついていない。考えてみれば情報がとぎれとぎれだったような気もしていたのだが。
(だが、どうする……? 学園都市に正当な手順で入ろうとすれば時間がかかりすぎる。かと言って、魔術で強行突破しようものなら、オティヌスが勘づく……いや、まともな策がないならあえてリスクを冒すのもありだが……)
方法はそれなりにあるのかもしれない。
だが、ほとんどの方法にネックが存在している為、賭けになってしまうだろう。
「……、」
歩きながら、少し考えて。
オッレルスは決断を下した。
安価↓2 学園都市への侵入方法
(あまり手間はかけさせたくないが……状況が状況だ)
そう考えたオッレルスは再び携帯を手に取る。
オッレルスにはよくわからないが、多少の暗号保護のような機能もあり学園都市のネットワークレベルでなければ暗号突破はできない仕様らしい。
(しかし、自分本位で頼むのは初めてかもしれんな)
今まで誰かを頼ったことはあった。シルビアだけではない。道行く人々を助け、助けられてきた。それでも『誰かの為』という大義名分があったものだ。
たった一人の女から逃げるため、なんていうのはおよそオッレルスらしくない理由ではある。
しばらくたって。相手は通話に応えた。
オッレルスの電話相手↓2(学園都市の禁書キャラ1名)
『……久しぶりだな』
どこか陰鬱な雰囲気を纏った声で内通者……土御門元春は言う。
「ああ、最後に会ったのはいつくらいだろうな?」
『さあな。貴様といつ会ったかなんぞ覚えていたくはない。……持ってくるのはいつも面倒事ばかりだからな』
「すまない……今回もそれなんだ」
申し訳なさそうに言って、オッレルスは電話越しに頭を下げる。
『何だ』
「学園都市に侵入したい。……訳あって魔術は使いたくないんだ」
『確かに俺の立場ならお前一人どうとでもなるが……イヤ、聞くのはよしておこう。それだけで済むのなら万歳ものだからな』
「ああ……それと」
最後にオッレルスはわずかにほほ笑んで、土御門へと告げた。
「あの時の恩とかいう仁義は今回をもってチャラにしよう。もう、お互い関係ないということでな」
『……お前がそう言うならそうしよう。しかし、いいのか?』
心配そうに尋ねる土御門にオッレルスは迷いなく答える。
「――――ああ」
そして、オッレルスは難なく学園都市へと侵入した。
土御門と最後になるかもしれない会話を二言ほどかわし、別れる。
学園都市へと来たのが初めてのオッレルスにとっては見慣れない光景が続いていた。地理もよくわからず、右往左往のあり様だ。
一時間ほど歩いただろうか。少し疲労感を覚えたオッレルスは公園のベンチへと腰をかける。
最初に出てきたのはため息だった。最近は回数が増えたような気がする。
オッレルスの執拗な追跡。安らげるはずの家でときどき感じる獣のような視線。休む、などという言葉から離れていただけに、ベンチに座ることすらありがたいものに思えてくる。
「……、」
しばらく何も考えずにいたオッレルスは、人の視線が向いているような気がして、前を向いた。
オッレルスを見ていた人物 安価↓2(禁書キャラ1名)
「……、」
見れば黒髪にツンツン頭の少年がこちらをじっと見ている。
オッレルスはその顔に見覚えがあって、思わず問いかけた。
「上条当麻君かな?」
「え? あ、はい。そうですが……」
唐突に名前を聞かれ、答えた少年は上条当麻だった。
いきなり目的の人物に出会えたのは僥倖だが、あの魔神の特性を考えると『不幸』が待っている可能性もあるのが恐ろしいところではある。
「えと……俺になにか用ですか?」
問いかけられ、オッレルスはベンチからゆっくりと立ち上がる。
一瞬、目を閉じることで自分の言葉をまとめる。そして、静かに言った。
「安価↓2」
言おうとしたが。
腹がグゥ、と鳴る。思い出してみればまともに食事をしていないことに気付いた。
「……すまないが、お腹すいたから何か食わしてくれるか?」
「え、ええ?」
何かシリアスなことを言いだすような雰囲気だったのに出てきた言葉は突拍子もないものだった。
そんな意外な展開に慌てふためく上条だが、何とか言葉を続ける。
「えと……まあ、いいですが」
そして場所は移り、近くのファミリーレストラン。安さが売りの店で、オッレルスはカロリーの高いステーキをほおばっていた。
(……やはりこんなもの)
元々、期待していなかったとはいえ肉の身に締まりはなく油もただ多いばかりだった。そんな味に失望しつつも上条へと視線を移す。
「君はよかったのか?」
「実は俺ってずっと不幸で……さっき財布を落としたばかりなんですよ」
幻想殺しの特性はおよそ知っていたが、これではあまりにも上条が哀れである。
そう感じたオッレルスは、
「君も何か頼むといい。お金なら私が出す」
「え、でも……」
「人の善意は受け取っておくものだ」
結局、押される形になった上条はオッレルスと同じものを注文した。
やはり高校生の食欲はすさまじく、ものの十分で数百グラムの肉を平らげてしまう。
しばらくの間があって、上条は問いかけた。
「それで……俺に何か用があったのでは?」
「安価↓2」
わずかに考えて、オッレルスは決断する。
こんな普通の少年を巻き込む訳にはいかない、と。
「……いやなんでもない」
先ほどとは真逆の発言に上条は眉をひそめる。
「……何か困ったことがあるから俺に声をかけたんじゃないんですか?」
「ああ……だが、この問題は君じゃ解決できないことがわかった」
巻き込みたくない。素直にそう言えばこの少年は是が非でも聞き出して首を突っ込む。そういう自分によく似た人間であることがわかった。わかってしまった。
(クソ……自分の不幸に呆れてもう少しクズに育ってくれればよかったのに)
母親もそうだが親が優秀なのだろう。
オッレルスとしては頼みの綱が一つ消えてしまうのは残念だが、上条を頼るのは最終手段とすることにした。
「そう……ですか。でも、俺にできることがあったらいつでも声かけていいですからね!」
そう言った上条とオッレルスは店の前で別れる。もう彼のような善人を巻き込まないようにしようと心に決めながら。
「……さて、また振り出しだが」
次はどうしようか。オッレルスは夕焼けに染まった学園都市の町並みを歩きながら眺め、考えた。
オッレルスの次の行動 安価↓2
「……、」
そういえば。
学園都市には科学者すらさじを投げたほど訳のわからない能力者がいるというのを聞いたことがある。オッレルスの記憶が正しければ名は削板軍覇。
オッレルス同様『説明のできない力』を使う彼となら何らかの攻略法が掴めるかもしれない。それに魔術ではなく超能力からのアプローチで新しい発見もできるはずだ。
とは言ったものの当てがない。学園都市で最も貴重な超能力者の一人を魔術抜きで捜すのは手間のかかることだ。繰り返すがオッレルスは魔術を使いにくい状況にある。
「どこからどう捜すか……だな」
オティヌスが自分の居場所が学園都市にあると知るまでの時間も長くはない。
そう思ったオッレルスは歩きだす。
どうやって削板を見つける? 安価↓2
路地裏。そんないかにもな場所にはいないだろうとダメ元でオッレルスは足を踏み入れるが……。
「すごいパーンチ!」
ドゴォ! という音共に吹き飛ぶ人の影。何よりあの説明できそうもない無茶苦茶な力の『圧』。
間違いない。世界最大の原石、削板軍覇だ。
「全く。この程度で負けるなんて根性がねえな!」
白い学ランに鉢巻。旭旗のTシャツを着こんだ少年はさわやかに言う。
「……、」
オティヌスや上条とは別の意味で関わりたくない人物リストに登録されそうな人間ではあるが、もう彼くらいしか方法は思いつかない。
そう思索するオッレルスに気付いたのか、削板はゆっくりと歩み寄ってくる。
「おお、どうしたんだお前? 迷子か?」
こんなところで迷子もないだろう。そう思いながらもオッレルスは答えた。
「安価↓2」
「実はそうなんだ。助けてほしい」
素直に伝える。おそらくではあるが、削板の能力はただ敵を吹き飛ばすにはとどまらないはずである。
「そうか! で、どうしたいんだお前は!」
明らかなテンションの差に若干辟易しながらもオッレルスは話を進めていく。
「倒したい女がいる」
「女!? 弱い者いじめに俺を巻き込むつもりか!」
「安心したまえ。その女は五分の確率で世界を滅ぼせる。いつでも、な」
その言葉を聞き、削板はわずかに頭の中で意味を考える。それは自分にとってどういう意味があるのかを。
そして、結論を出す。
「……面白そうじゃねえか。世界を滅ぼせる相手と戦う。お前、なかなか根性のあるヤツだな」
「いいや、君を頼っている時点で私は根性なしだよ」
褒められ、自虐しながら二人の怪物はゆっくりと歩き出す。
削板はかなり気前のいい人物だったようだ。自分の所有するマンション(ただしほとんど帰らない)の空き部屋を貸してくれる。さらには料理もそこそこのものを出してくれて、オッレルスとしても予想外のことが多かった。
だが、なぜこんなに家事が得意なのかを聞くと「根性だ!」とのこと。本当に訳のわからない男である。
そして、数十分後。削板御用達の河原で二人は『魔神攻略』への活路を模索し始める。
「んで……ソイツは五分五分の確率で何でもできて、普通のヤツなら失敗の五分に賭けるしかねえんだな」
「ああ。私はとある理由から必ず引き分けに持ち込めるのだが……何としても勝たなければいけない事情ができてね。君の力を頼ったという訳だ」
「おお、任せとけ! 漢なら頼まれたことは最後までやりとおすぜ!」
おそらくお得意の根性論から来る言葉なのだろうが、今度の相手はそれだけで押し通せるほど甘くはない。
(さて、どうアプローチしてみるかな。何度も試せば、居場所がばれる。……やれやれ、こんなことでまで制限を受けるとは……)
オッレルスは自分と第七位の力の特性を鑑みて、結論を出した。
オッレルスの出したオティヌス攻略法 安価↓2
「……自分にメロメロにする」
その言葉に恋愛方面はからっきしな削板は首を傾げる。
オッレルスは口元をほころばせ、『北欧玉座≪プリズスキャルヴ≫』を起動させ川へと打った。
ドパーン! という派手な音と共に、水しぶきがあがる。
瞬間。世界のどこかで魔神を唇をゆがませた。
「すげえなお前! ……でも今のとメロメロがどう関係するんだ?」
「……言いたくはなかったがその女は私に歪んだ愛情を持っていてね。おそらくこれで私がここにいると気付く。……明日の昼には私の元へたどり着くだろう」
呆れ気味に言って、オッレルスは言葉を続ける。
「そこで、だ。それを利用する。彼女が私に気をとられている間に君は彼女へありったけの一発をぶつけて欲しい」
「不意打ちなんて根性ねえことはしたくねえ」
「安心しろ。君が何かする前には気づくさ。ただ私が最優先な彼女はあえて無視する可能性が高い。……これでも不意打ちと言えるか?」
「うーん……無視されるのも腹立つなあ。そういうことなら俺も協力するぜ!」
削板は強く拳を前へ突きだす。
「……何だい?」
「仲間の証だ!」
こんな茶番に……、と言いだしそうになるのを抑えオッレルスはそれに応え拳を合わせる。
(……全ては明日だ)
オッレルスは静かに夜空を見上げながら決心した。
ここで決める、と。
「フ、フフ……フフフフ」
魔神には一瞬で理解できた。彼が意図的に自分に場所を知らせたことに。
「そうか……オッレルス。迎えに来てほしいのか。そうかそうか……」
ブツブツと呟きながらオティヌスは丁寧に魔方陣を組み上げていく。
正直のところ、いつからオッレルスを愛するようになったかは彼女自身わからない。だが気付けばオッレルスを求めるようになっていた。
最初は間抜けな男だと思った。たかが猫一匹救うために魔神の座を明け渡す程バカで間抜けな男だと。
だが、魔神の力を手に入れ暴走するオティヌスの前に彼は何度も立ちふさがった。いくら引き分けるとは言っても、相手は格上。そこまで執着する理由はないはずだ。
そして、彼はオティヌスとの戦いが終わると、オティヌスに傷つけられた人々に慈愛の目を向け、何人もの人間をすくっていた。
だが、オティヌスはこの時すでに根っこまで歪んでいたのかもしれない。手に入れたいと思った。あの目を、あの溢れるばかりの博愛を全て自分だけに向けてほしいと思ったのだ。それが異常だとも気づかずに。
だから、彼女は歪んでいく。己の過ちに気付かないまま、歪んでいく。
「ああ、待っててねオッレルス。すぐに迎えに行くから……」
組み上げた魔方陣が光を放ち、オティヌスの姿が消えた。
「……やあ、軍覇。おはよう」
「ああ、おはよう」
久々に安心できる眠りについたオッレルスの目覚めはさわやかだった。
対して削板はかつてない強敵との戦いに緊張しているのか口数は少ない。
削板のつくったフレンチトーストとコーヒーを口に運び、オッレルスは口を開いた。
「大丈夫か? 表情が硬いが……」
「ああ……武者震いなんて久々だぜ」
おそらく恐怖も混ざっているのだろう。『武者震い』と表現できるだけマシかもしれない。
自分すらもあの女には時々恐怖を覚えるのだから。
「それで……作戦は昨日どおりだな」
「ああ」
「……なあ、お前さ。その女を倒したらどうするんだ? 何かやることはねえのか?」
目的を問いかけているのだろうか。だがオッレルスにはやることは少なくない。
多少の信頼を込めて、オッレルスは答えた。
「安価↓2」
「シルビアに勝ちたいな」
純粋な力、という意味では無い。前から気になっていたこともある。視線の正体だ。同居人がシルビアしかいない以上、彼女が犯人なのだが、信じたくないという思いもオッレルスにはある。オティヌスと同種ではない、と。
「そのシルビアってのは強いのか?」
「……いや、おそらく君よりは弱いだろう。それに私が言っているのは純粋な力の比べあいではないし、そもそも勝つという表現も曖昧だからな」
「そうなのか……じゃあ、これが終わったら俺と一本勝負してくれねえか? お前みたいなヤツと正面から戦ってみてえんだ」
「ああ、構わない。それを成功報酬としよう」
「言ったな! 約束だからな!」
食器を丁寧に片付け、彼らは部屋を後にする。
場所は誰も巻き込みたくないとの意見の一致から、近くの廃ビルの近くにある空き地を選択した。それでも狭すぎるくらいだが、これ以上広い敷地は安全とは限らないらしい。
削板は近くの廃ビルに隠れタイミングをうかがう。後は時間との勝負だ。
「……さて、そろそろ来ると思うが」
簡単な魔術を発動し、餌は用意完了だ。高く仕切られた塀に背中を預け、時を待つ。
そして、五分ほどあって彼女は来た。
「オッレルス!」
まるで恋人を見つめるかのようなうるんだ目でオッレルスを確認し、そのまま駆け寄る。
オティヌスはぎゅっと服を手で掴み。胸に顔をうずめる。
「やっと、わかってくれたんだな。オッレルス。私は嬉しいぞ。これからずっとお前と一緒なんだからな……」
どうやらまいた餌に上手く食いついてくれたようだ。できることならさらにオティヌスを油断させる必要がある。
その判断に従い、一芝居うつためにオッレルスは魔神の耳元へと囁きかける。
「安価↓2」
「ああ……俺もうれしいよ」
鍔広の帽子から伸びている金髪を優しく撫で、囁く。
「ん……はぁ」
オティヌスの服を掴んだ指先に力がこもり、呼吸が荒くなる。
完全に警戒が解かれた。タイミングは今しかない。オッレルスはアイコンタクトでわずかに顔をのぞかせていた削板へと合図を送る。
直後。
「すごいパァァァァンチ!!」
音速なみの速度の拳がオティヌスの体へと突き刺さった。オティヌスの小さな体はふわりと宙を舞い、地面へと叩きつけられる。
「ど、どうだ!?」
「わからない……油断するな。相手は本物の怪物だ」
巻き上げられた砂塵の向こうでオティヌスは――――
コンマ判定↓1
奇数 立っている
偶数 気絶している
≪今日はここまで。皆さんお疲れ様でした≫
――――砂塵の向こうで魔神はたっていた。
「……俺の全力の一撃が効かねえのか。なかなか根性あるじゃねえか」
悔しそうに呟く削板を一瞥し、オティヌスは口を開く。
「オッレルス。……これはどういうことだ?」
「……、」
オッレルスは答えない。かわりに強く言った。
「軍覇、逃げろ。ここは私が引き受ける。どうやら作戦は失敗だ」
「だけど――――」
オッレルスが削板を説得しようとした寸前だった。
すさまじい衝撃と共に削板の体が薙ぎ払われ、その意識が刈り取られた。
「邪魔者がいて話づらいのか、オッレルス。ほら、これで二人きりだ……さあ、教えてくれ。これはどういうことだ?」
ここで冷静を保てなければ相手にペースを握られてしまう。オッレルスは極めて冷静に答えた。
「安価↓2」
ヤンデレ開始!
開始します、
「どういうつもりも何も、お前は何を期待していたんだ?」
そう。そもそも受け入れるくらいなら、逃げたりはしない。オッレルスはそんなに弱い男ではないからだ。
「どう、してだ……?」
オティヌスの瞳は驚きに満たされる。肩は小刻みに震え、まるで世界の終わりでも見ているような姿だった。
「どうして私に冷たくする? 私はこんなにもオッレルスを愛しているのにどうしてお前は私を否定する!?」
「……答える義理はないはずだ」
一度、二人の魔神の力が激突する。周囲に烈風が吹き荒れ、オッレルスの金髪がなびく。
そしてオティヌスは涙さえ流しながら、言葉を続ける。
「お前のせいなんだ。お前の存在全てが魔神のはずの私を女にした! お前がいなければこんな世界などとうに滅ぼしている。……私は、私は――――」
「安心しろ。私がお前に心を許す日はないだろう。永遠にな」
そこまで言われて、オティヌスの瞳が怪しく動いた。
「そうか、あの女か。あの女なんだな? ……お前は優しいからな。いつも人の気持ちを気にしてしまう。全く、仕方のないヤツだな」
そう言うと、オティヌスは手元から一枚のカードを取りだす。
そこに刻まれた魔方陣を見て、オッレルスはぎょっとする。
「待て、お前……まさか!」
「フフ……心配するな。ものの五分で帰ってくる。そうなれば今度こそ私達は一緒になれるからな?」
フッとオティヌスの姿が消える。転移術式を使って異動したのだろう。
行き先は――――
(クソ! 間に会え! ……シルビア――――)
――――住み慣れたあの家だ
オッレルスが到着した時、すでに家はボロボロだった。
屋根は吹き飛び、窓ガラスは割れ、シックで落ち着きのあった内装は見る影もない。
必死でシルビアを捜す中、少し離れた場所から爆音が聞こえる。
(――あそこか!)
必死で走り、爆音の場所へと到達する。
そこでオッレルスが見たのは――――
「あ……うう」
「オッレルス! ……待っててよかったのだぞ?」
血まみれで倒れているシルビアとそれを乱暴に踏みつけるオティヌスだった。
オッレルスは半ば茫然としながら、
「……オティヌス、どういうつもりだ」
「どういうつもりもなにも……お前と私の仲を引き裂こうとする愚か者に罰を下していただけだ。しかし『聖人』ともなるとさすがにしぶとくてな。お前にさびしい想いをさせてしまったか?」
オティヌスは申し訳なさそうに視線を下に移し、シルビアの背中を踏みつける力を強める。
「……オッレルス、私は、いいから……逃げろ」
痛みをこらえながら必死にそう言うシルビアの姿を見て、オッレルスは歯ぎしりする。
そしてオッレルスは――――
行動or台詞安価(どちらでも可)↓2
行動する前に頭の中でプツンとなにかが切れた。
素早い動きでオティヌスとの距離を詰め、顔面に飛びひざ蹴りを喰らわせる。
「あ……がっ?」
オティヌスは何をされたのかわからないといった表情で崩れ落ちる。
そしてもう一人。シルビアも茫然としていた。体が、いつの間にか別の場所へ移っている。
(……オッレルス。まさか、攻撃と同時に私を……吹き飛ばした?)
いくら重傷とはいえ聖人の肉体はこの程度の衝撃ではびくともしない。
しかしそうなるとおさまりがつかなくなるのはオティヌスだ。
たらりと流れた鼻血を手でふき取りながら、彼女は問いかける。
「ハハハ……なかなか激しい愛情表現じゃないか」
「悪いがシルビアには退場してもらった。ここから先は私とお前だけだ」
「そうか……二人で愛を語り合おう」
半ば戯言のような言葉を吐き出すオティヌスに、呆れを覚えながらオッレルスは答える。
「安価↓2」
「そうか」
オッレルスは呆れのあまり否定することすらしない。
だが、彼にしては珍しく顔を険しくし語気を強めながら、
「残念だが、私に語ることはない。お前は潔く諦めて地獄の門番にでも一人寂しく語っていろ」
「……それが答えか。お前は本当に罪づくりなヤツだよ。私をそんなに弄びたいか」
一度目を閉じ、ゆっくりと開く。
直後、彼女の顔がこれまでで最も歪む。魔神としてではなく己の女としての欲望に負けた哀れな怪物として。
「オッレルスゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」
彼女の叫びと同時に無数の『説明できない力』が交錯し、周囲の地形を変えていく。
しかし、当の本人たちにはかすり傷一つない。
(やはり、正攻法では引き分けか……)
現状維持ならまだいい。もし負けようものなら何をされるかわからない。
「オッレルス……私のオッレルス……」
ゾンビのようにゆっくりと近づいてくるオティヌスに『北欧玉座≪プリズスキャルヴ≫』を放つ。
防がれる。
「無駄だよ、オッレルス。お前と私は引き分ける。お前は攻撃を防げるが、自身の攻撃は通せないだろう?」
オティヌスは自身の優位を確信していた。
だが、直後。
横からの唐突な衝撃にオティヌスは地面を転がり、意識を飛ばした。
「ハア……ハア……」
「……無理をする必要はなかったんだぞ――――シルビア」
オッレルスの言葉にシルビアは二コリと笑い、倒れた。
シルビアは温かいベッドの上で目を覚ます。横ではオッレルスが優しく自分を見つめている。
「思ったより早く意識が戻ったな。さすが聖人だ」
「……ここは?」
「生憎と家は使い物にならなくてね。近くで応急処置的な魔術を施した後、ホテルを借りることにしたんだよ」
よく見れば、綺麗な部屋だった。証明、カーテン、タンス。ありとあらゆる家財道具が落ち着いた作りになっている。
オッレルスは肩をすくめて、
「まあ、ダブルのベッドがある部屋しかなくてベッドは一つだがな」
「別に……構わないよ」
シルビアは軽くほほ笑み、起き上がろうとする。
だが、
「――――ッ!」
鈍く走った痛みにシルビアは顔をしかめる。
「やめた方がいい。私でもあの女の魔術で与えられた傷は完全に治療できなかった。しばらく安静にしておいた方がいい」
「そうだね……そうさせてもらう」
しかし眠れるはずもなく、シルビアはぼうっと天井を見つめる。
二人の間に沈黙が流れた。
行動or台詞安価(どちらでも可)↓2
オッレルスはシルビアの手をそっと握った。
「……どうしたの?」
怪訝な顔をするシルビアの顔を見ることもできずオッレルスはじっと下を見つめていた。
やがて、ぽたぽたとベッドのシーツに染みができはじめる。
「……俺のせいで君を危険な目にあわせてしまった。……すまない」
徐々に涙の量が増えていく。オッレルスは自身の罪悪感に押しつぶされそうだった。
「……いいって。私はアンタと別々になる気はないし。それにアイツに不用意に近づいた私もバカだったんだ」
「しかし……」
「だから背負いこみすぎ。そんなことだとケガが直りしだいお仕置きフルコース確定になるけど?」
満面の笑みを浮かべたシルビアに安堵したのかオッレルスは目を細める。
そして、ほほ笑みながら言った。
「……こんな、情けない俺についてきてくれて……ありがとう」
数分後。
泣きつかれたのかオッレルスは深い眠りに落ちていた。すぅすぅと寝息をたて心地よさそうに眠っている。
その寝顔を見ながら、シルビアは黒い笑みを浮かべた。
(……本当にあの魔神がバカで助かったよ。正直、あの女は私じゃ倒せない分だけ面倒だった。それにお人よしのオッレルスが許す可能性だってあった。……でも、あの女は本当にバカだった! 私を傷つけることでオッレルスとの関係は修復不可能。全部……全部、私の思い通りだ!)
愛すべき男の頭を優しく撫でながら、シルビアは喜びのあまりわずかに声に出した。
「これでオッレルスは……私のものだ」
翌日。昼ごろのことだった。
ホテルのボーイが来訪者がいると言ってきたのでオッレルスは通すことにした。
「……しかし、誰だろうな」
「さあ? まさかオティヌスではないと思うけど……」
だが、あの魔神の行動を読めるものなどいないだろう。警戒するに越したことはない。
二人は顔を見合わせ、笑う。
「フフ……どうしたのさ」
「いや、君を見ていたらあの女にも勝てる気がしてね」
「そう……」
内心ほくそ笑むのを隠しながら、シルビアはそっけなく答える。
しばらくして、その来訪者は部屋へと入ってきた。
来訪者はだれ? 安価↓2(禁書キャラ1名)
入ってきたのは腹をぽっこりと膨らませた女性だった。
「……フレイヤ、とでも名乗っておくね」
「……北欧神話における女神、か」
「まあ、私はフレイヤを参考に魔術を組んでいるだけで名乗るほどの才能はないんだけど」
二人の会話が進んでいくのを不機嫌そうに眺めていたシルビアが口を挟む。
「それで、何の用?」
彼女が何のために来たのか。
そもそも二人は彼女がどの組織に所属しているのかさえ知らない。
思い出されるのは件の魔神との激突くらいだが……
「ふむ……確かに気になるな」
オッレルスがそう呟くと、フレイヤはゆっくりと答えた。
「安価↓2」
「責任……とってくれるよね?」
「……はい?」
とろんとした瞳をしながらお腹をさするフレイヤにオッレルスは茫然とする。
そして、一番驚くのはシルビアだった。
「ほお……オッレルス。おめでたならちゃあああんと私に報告してもらわないと」
「ま、待てシルビア。これは彼女が嘘を……痛い痛い! 右手おれちゃう!」
聖人の力を使い本気で腕を折りにくるシルビアの手を抑えようと必死に悶える。
それにしてもこのけが人のどこにそれほどの力があるのか。オッレルスとしても不思議でならない。
「……で、どうなの? 私とこの子の責任……とってくれるの?」
首を傾げて問いかけるフレイヤにオッレルスはあわてながらも言う。
「……少し真面目になろうか。私は君と会ったのは初めてだと思うんだが。……私は君に責任を取らねばならないようなことをしたのか?」
その問いにフレイヤは慄然と答えた。
「安価↓2」
「私はオティヌスに助けてもらうじゃずだった」
フレイヤは目をどろりとさせながら、言葉を続ける。
「けれど貴方がオティヌスを倒したせいで、彼女の行方が分からなくなった。どうしてくれる?」
魔神へ助けを求める。今のオティヌスに助けを求めるなど無謀の極みだが、正確に情報を傍受できていないのだろう。彼女の『無限の可能性』を求めてフレイヤは世界を渡り歩いていたらしい。
「なるほど……」
事の顛末を聞いた上で。オッレルスは口を開く。
「さて……君はどっちだ? 母親か? ……それともお腹の中にいる胎児か?」
鋭く向けられた質問にフレイヤははっとしながら、答える。
「……母親」
「そうか……いや、正確には違うだろうな。母親の自我が胎児に飲み込まれかけた結果、意識の混濁が起きている。……そうだな?」
フレイヤはこくりと頷く。
「……私はどちらも助けたい。助かりたい。でもそれはできない。だから矛盾を矛盾のまま世界に組み込めるオティヌスの力が必要だった。なのに! お前のせいで台無しだ!!」
確かに。
善意の末にこの状況に陥っているのならオッレルスにも多少の原因はある。たとえ、自身の身が危険だと思ってもオッレルスにはそういった責任感が芽生えてしまう。
フレイヤはそんなオッレルスに顔を近づけ強く、投げかける。
「……どうしてくれるの?」
「安価↓2」
「……結婚しよう」
オッレルスはしばし考え、そう呟いた。
「はあ!? アンタはこんな出会って間もなくて信用ならない女と結婚する気!!!?」
「……、」
シルビアはベッドの上で叫び、フレイヤは目をぱちぱちとさせ呆然とする。
「……本気?」
「いや、実際にはそういう意味ではない。おそらく私の『北欧玉座≪プリズスキャルヴ≫』を使えば母親の自我を霧散させるのを延長できる。……それにこれでも責任を感じてはいる」
フレイヤはそれでも懐疑的な目を向け、
「……方法が見つかる保証はあるの?」
「確実かと思う方法はなくもない。……だが、リスクが高すぎる。それに私はオーディンと呼ばれのはあまりにも中途半端だからな。しかし、フレイヤは愛を司る神でもある」
「……でもへその緒を切れば母さんは死んでしまう。それに、世界は最後まで母さんを拒み続けた。そんな状況で安い言葉を信用しろと?」
おそらく母親もこの状況を望んではいないはずだ。
子が犠牲にならなければ自身を助けられないこの状況を。そして、子に自分の弱さを心配させているこの状況も。
それらを考慮した上で、オッレルスは答える。
「安価↓2」
「なるようになるさ」
オッレルスは素っけなく答えて、肩をすくめる。
「……信用ならんな」
「問題ない。フレイヤはアースガルドにいる男神の全てから愛されるほどの美貌を持っている。一度くらい、運命がほほ笑んでくれるだろうよ」
「……お前しか頼る相手がいない。本当に頼むぞ?」
「何もできない、という訳じゃないよ」
オッレルスは不敵に笑い、フレイヤは顔をそむける。
それをシルビアは、ベッドの上から見つめていた。
ホテルでチェックアウトを済ませた三人は目的もなく外を歩く。
「……それでこれからどうする?」
「そうだな……フレイヤを何とかしないと始まらない。打開策はあるだろうが私一人でどうこうできる話でもなさそうだ」
「……やれやれ。またどっかに行くんだろ? 今度はついていくよ?」
「ああ、異論はない」
どこか親しげな雰囲気を漂わせる二人を見て、フレイヤは目を細める。
(……なるほどねえ)
しばらく話していたオッレルスがフレイヤを振り向き、目的地を告げる。
三人の目的地 安価↓2
「病院? それならもう……いや、わかった」
「ああ、君の状態を調べておきたい」
オッレルスは何かを確認するように言う。
「……それじゃ、行こうか」
診断に行った結果は最悪だった。
母親が妊娠二年だとわかったとたんに医者は怪物でも見るような目で「手に負えない」とだけ言った。おそらくどこに行ってもこんな回答しか得られないのだろう。
「なるほど……君たちがどれほど苦しんできたかはよくわかった」
「なら、この絶望的な、誰かが死ぬしかない状況であなたはどんな手をうつの?」
正直、ヒントは少ない。しかし、オッレルスは世界でも屈指の魔術師である。ここで何もできないというようなことを言っている訳にもいかない。
それに、北欧神話以外にも方法はあるはずだ。魔術ではなく科学でもかまわない。
オッレルスは探るような感覚で言った。
「安価↓2」
≪今日はここまで。皆さんお疲れさまでした≫
「ローマ正教の救済が専売特許の男を頼ってみるか」
「……?」
フレイヤは何のことかわからず、首をかしげる。
「無理もないな。彼はローマ正教ではトップレベルの機密だ。だが……機密にされるだけの価値はあると思うがな」
「そうか、それでソイツの名前は?」
オッレルスは静かに答えた。
「右方のフィアンマ。……事実上のトップだよ」
オッレルスは軽い調子で魔方陣を組み上げる。目的地はローマだ。
イタリアにて、その男は本を読みながら眉をひそめた。
「やれやれ……あのなり損ないめ。何をしでかす気だ」
「どうしたの?」
後ろでは黄色を基調としたパンクファッションのような格好した女性が怪訝な顔をしている。
しかし、髪から瞳。服までが赤に染まった男はそれを無視して呟いた。
「ふむ……アイツが来るとなれば相応の出迎えが必要だな」
>>165
救済(ヤンデレ)
別にオッレルスはよほどのことをされない限りはシルビアを見捨てないだろ
男女のパートナーなら恋愛感情が生まれるのは普通だし……
ふっと光が一瞬だけ放たれ、三人の人影が降り立つ。
「ふぇぇ……こりゃすごいね」
フレイヤは一瞬で移り変わった景色に驚いたのかあたりをきょろきょろと見渡しながら言った。
「まあ、オティヌスから逃げるのに何度も使ったからね。慣れたものさ」
どこか虚ろな目でオッレルスは言う。
それにしてもよくあの魔神を追い払えたなと思う。逃げることに必死でほったらかしにしてしまったのは心残りだが、シルビアと逃げることしか考えていなかったので仕方ない。
「……で、オッレルス。どうやってその右方のなんたらと接触するの?」
「ああ、それは問題ない」
オッレルスは何でもないように答えて、後ろを見る。
そこには全身が真っ赤に染まった痩身の男が一人。
「俺様に何か用か? 哀れななり損ない」
右方のフィアンマ。
ローマ正教二十億人の切り札である『神の右席』のリーダーにして、ローマ教皇すらも彼の判断に従わざるをえない程の実力者。
そんな男の皮肉にオッレルスは苦笑いしながら、
「さて……用があるのは事実だが、哀れというのは聞き過ごせないな」
「フン、魔神の女に散々追い回されておきながら、他にどういう表現があるのだ?」
そこまで知っているのか、とオッレルスは苦笑いする。しかし、そこまで知ってるのなら話は早い。
「……助けてほしい女性がいる」
オッレルスの言葉にフィアンマはわずかに唇をゆがめる。
「俺様は暇ではない。……そこの妊婦を救えなくもないが、見返りの一つくらいはほしいな」
「……どのような」
「それは貴様に任せる。もっとも俺様が納得するような、という条件はつくが」
どのような条件を出すべきか。少々、迷ってからオッレルスは告げた。
「安価↓2」
「何かあった時はフィアンマ、貴様を何があっても庇護してやる」
真剣な目で言ったオッレルスの言葉にフィアンマは失笑する。
「そうかそうか……俺様が何か痛い目でも見たときには守ってくれるのか。そんなヤツがいれば連れてきて欲しいくらいだよ。……そうだな、あの魔神でも持ってくるか?」
皮肉を言った後、フィアンマはフレイヤを顎で示す。
「……だが、気に入った。今回はそれで手を打とう。そのかわり、貴様には俺様に協力する義務ができたぞ?」
「ああ……構わないよ。それで彼女と胎児が救われるのなら」
オッレルスは頷き、フィアンマは歩きだす。
二十分後。
フィアンマの手引きによって三人は地下室へと通された。
「何だこりゃ……この部屋には魔術的記号が一つもないんだけど?」
「本当だ……まるでまっ白な画用紙そのもの」
二人の言葉にフィアンマはニヤリと笑う、
「どうだ? 俺様が財産を擲って創り上げた地下室は。ここならどんな術式も新しく生み出すことができる」
「なるほど……まっ白な画用紙に何を書くかというのは個人の自由だからな」
素晴らしい、とオッレルスは素直に称賛した。
「さて、本題に入ろうか」
切りだしたのはオッレルスだ。
フィアンマもそれに続く。
「母体の生命活動に必要な力を授けるのは俺様の『第三の右腕』があれば簡単だ。この女の体を一つの世界と見立てて救済すればいい。……しかし、胎児と違い母体には俺様の力に耐えきれる程の能力はないとみたが?」
「それについては問題無い。最初は胎児と切り離さずに力を送ってくれ。胎児なら二分程度耐え抜くはずだ。……切り離す作業は私が行う。そしてシルビア」
オッレルスは横にいる、シルビアに顔を向ける。
「君にはフレイヤを保護する役割を与えたい。主に体への負担を軽減させてくれ」
「……仕方ないな。アンタがそう言うならそうするよ」
シルビアは頭を掻きながら言って、一瞬フレイヤを見た。
フレイヤはシルビアの視線に気づかないのか、涙を流しながら言った。
「ありがとう……こんな私の為に」
「それは成功してからの言葉だ」
オッレルスはフレイヤの頭を優しく撫でた。
フィアンマは精緻な魔方陣をものの五分で組み上げた。
この魔方陣は天体、方角などの条件を一切必要としていない。しかし、この魔方陣は誰がどんな魔力を通すかで効果が大きく変わる。
「中央に立つんだ、フレイヤ。……途中で体に激痛が走るだろうが、私達はやめることはできない。シルビアの魔術と自身の気力を頼りにしてくれ」
「は、はい……」
魔方陣の中央に立ったフレイヤは力なく答えた。
「では……始めるぞ」
フィアンマがそう呟き、『第三の右腕』を振るう。魔方陣が赤く光、くるくると回転しながらフレイヤのお腹で止まる。
瞬間。フレイヤの全身に形容しがたい激痛が走った。
「ぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!?」
体をのけぞらる。瞳の焦点は合っておらず、彼女自身も何を見ているのか理解していないだろう。
フィアンマは変わらず右手から魔力を流し続ける。
「行くぞ……胎児と母体を強制的に切り離す。フィアンマ!」
「任せろ。母体はまだ無事だ」
オッレルスが『北欧玉座≪プリズスキャルヴ≫』を使い、胎児と母体を切り離す。これ自体は胎児の意思でできないこともないので、比較的簡単だった。
後は母体が生きていられるかどうか、である。
シルビアは自身の魔力を全開にして、痛覚軽減と母体への生命力供給を並行して行う。これができるのも彼女が『聖人』としての力を持っているからだろう。
「……ッ、まだ!? このままじゃこっちの魔力が――――」
それでもシルビアが限界を感じ、叫んだ直後だった。
フィアンマは術式の使用をやめる。魔術的な拘束が解かれたことでフレイヤの体は力なく地面に倒れた。そしてその横には細く繊細な金髪の子供が眠っていた。
その様子を見て、フィアンマは結論を出す。
「――――成功だ」
一時間後。
フレイヤは体中に感じる疲労感と共に、ベッドの上で目を覚ました。
「目が覚めたようだね」
オッレルスはベッドの右にある椅子に腰をかける。
「あ、あの……私、助かった? 赤ちゃんは……」
「安心したまえ。君の横でぐっすり眠っているから」
フレイヤは反対の左を向く。そこには金髪の子供が可愛らしい寝顔で眠っていた。
「……ああ」
言葉は出なかった。
ただ、子供を抱き締めてそのぬくもりを感じる。それだけで涙はとめどなく溢れ、枕を濡らしていく。
ようやく手に入れた幸福。その一端をフレイヤはしばらく味わい続けた。
その様子を見て、オッレルスはほほ笑む。やはり人が幸せになる瞬間こそが自分にとっての幸せだといわんばかりに。
「さて……その子にも名前がいるだろう。君がつけるんだ」
「私が……?」
オッレルスは当然だろうと言って、またほほ笑む。子供の名前を聞くためならどれだけの時間も待ち続けるだろう」
その様子にあわてながらも。いとしい子の手を握り、フレイヤはその名前を告げた。
「安価↓2」
「……べレス」
オッレルスの記憶が正しければソロモン神話における男女の仲を取り持つ力を持った72柱の悪魔だったはずである。別名をべレト、ビュレト、ビレスなどともいう。
「……しかし、何でそのような悪魔の一人を模した名前を?」
「……//// それは言えない」
フレイヤはほんのりと頬を赤く染めると、オッレルスから顔をそむけ口ごもる。
フレイヤなりの考えもあるのだろう。そう思ったオッレルスはあまり拘泥せずに会話を続ける。
「さて……これで一応君たちは救われたわけだが。これからどうする? 必要なら社会復帰程度の手助けはしてあげられるが……」
「あ、そのことなんだけど……」
フレイヤは探るように言う。
「その……あなた達についていってもいいかな?」
「……別に私達といても楽しくはないと思うぞ?」
「それを決めるのは私とこの子だから……ダメかな?」
上目遣いで懇願するフレイヤにオッレルスは答えた。
「安価↓2」
ええんやで、シルビアも面倒みのいい自慢のパートナーだからな
>>183 ちょっと変えますね。さすがにオッレルスじゃなくなる……
「ああ、いいよ。シルビアも面倒みのいい自慢のパートナーだからな」
ほほ笑み、優しく頭を撫でる。
「ん……」
ほんの数秒だが、フレイヤはその心地よさに任せ目を瞑る。
オッレルスはその様子に安堵しながら、
「今日は子供と二人きりでいるといい。……一日くらいゆっくりしたところで何も起こらないさ。君はもう救われたんだからな」
「……ありがと」
まるで夫婦のような雰囲気。全ては順調なはずだった。
ただ一人。シルビアは除いては。
(……へえ、私のオッレルスを誑かす気? ……どうしてやろうかね)
翌日。
フレイヤの部屋から先に出てきたのは、べレスだった。
「……おはよう、なり損ない」
余りに綺麗な言葉にオッレルスは少々意外そうな顔をする。
「もう言葉がしゃべれるのか」
「二年間も母さんを支えてきたんだ。これくらいは楽勝」
ピースサインをしながら無表情で言ったがその顔はやはりあどけない。
この子にも子供らしい幸せを与えなければ、とオッレルスは確かに感じた。
朝食の席についた、べレスは一言。
「……これじゃ食べられない」
「フレイヤに食べさせてもらえばいいだろう。親子とは総じてそういうものだ」
「……はずかしい」
赤くなりながら、べレスは顔をそむけた。
しばらくして、シルビアとフレイヤも朝食の席につく。
大した用意もないため、簡単なフレンチトーストしかないのだが。
「ほら、あ~ん」
「母さん、恥ずかしいって……自分で食べられるし」
「ほらほら、そんなこと言わずに……あ~ん」
「むぐ……」
ほほえましい光景を見ながらオッレルスはフレンチトーストを口に運ぶ。
そんなオッレルスを冷めた目で見ていたオッレルスにシルビアは問いかける。
「……一応の目的は果たせたけど。今度はどうするの? いつまでもローマにはいられないでしょ?」
「安価↓2」
「カエル医者とか言うなんでも治せる医者が学園都市にいるらしい、会いに行かないか?」
「……学園都市、か。まあ、アンタがやらなくても私が入る手筈は整えるけど……今さら医者なんか必要か?」
言われてみればそのとおりではある。フレイヤとべレスは無事に救われた。おそらく、医者に会う必要もないだろう。
それでもオッレルスはあえて医者の名前を口にした。
「うーん……学園都市だって。べレス、行きたい?」
「……母さんとなら」
そんな会話を横でする親子を一目見る。
シルビアはそのオッレルスの意識を自分に向けさせようと、
「なあ、学園都市である必要あるか?」
目的を問いかけられ、オッレルスは答えた。
「安価↓2」
「フレイヤとべレスの健康状態を確実に調べるならそれがベストだからな」
オッレルスは肩をすくめながら、
「待っている間に俺はシルビアとデートもできるし」
「な……」
一瞬だけ言葉の意味が理解できず、理解してから慌てふためく。
てれたように頬を赤くしシルビアは、
「わ、わかった。そういうことならさっさと行こう!」
「シルビアもそんな表情をするんだな」
「~~~~っ、うるさい!」
一時の休息をえて、四人は学園都市を目指す。
そして。
オッレルスの転移術式とシルビアのバカ力で学園都市へ侵入した。
フレイヤは素直にすごいとほめたたえ、べレスは半ばあきれた表情を二人へ向ける。
「さて……君たちは念のためこの病院で診察を受けてくれ。その後は自由にしていい。ホテルは――――」
必要なことを伝えた後、親子と別れシルビアと歩き出す。
「それで、デートってどこに連れて行ってくれるの?」
「そうだな……>>194」
あの魔神を倒すのに一時協力してくれた友人がいてね
先に彼を紹介したいんだがどうだろうか?学園都市の案内役も欲しいからね
「あの魔神を倒すのに一時協力してくれた友人がいてね。先に彼を紹介したいんだがどうだろうか? 学園都市の案内役も欲しいからね」
「ふーん……ま、いいけど」
以前、その男は魔神に挑み敗北した。その時は余裕がなく、おいてけぼりの形になったので、オッレルスとしても何らかのけじめをつけたいと思っていたところだ。
以前、路地裏にいたのを参考にしてもう一度路地裏に入ってみる。普通なら女性と入る場所でもないが、シルビアにとってはどうでもいいことだ
案の定、削板はそこで何かをしていた。
(……誰かと戦っている?)
見ると、削板の旭旗のTシャツはわずかに汚れていた。
そして、さらに奥からその相手は現れた。
削板と戦っていた人物 安価↓2
奥から現れたのは綺麗な茶髪、薄い紫のワンピースにストッキングの少女。
麦野沈利。学園都市第四位の超能力者。
戦闘力としてはトップクラスを誇る削板を圧倒的な火力で追い詰めていた。
「ハハハ! ナンバーセブンも大したことねえなあ! 終わりか、オラァ!」
「クソッ! さすが第四位、大した根性だぜ!」
『原子崩し』をかわしながら、叫ぶ削板に「それは違う」と言いたくもなるが、オッレルスはひとまず彼に近づく。
「おお? お前はあの時の!」
「……再開の挨拶は後でいいだろう。君は何で、彼女に狙われている?」
削板はオッレルスの問いに率直に答えた。
「安価↓2」
≪今日はここまで。皆さんお疲れ様でした≫
「彼女の友達が倒れていたから介抱していたら襲っていると勘違いされたみたいだな!」
「……胸をはって誇らしげに言うことでもないだろう」
しかし、彼女の能力を見るに人を殺すのは簡単なレベルに達しているだろう。もちろんオッレルスの敵ではないが。
だが、そうなると退屈なのはシルビアだ。
「……デートってのは始まらんのかね」
「すまないな。これが終わったらすぐにでも行こうじゃないか」
オッレルスは麦野へゆっくりと近寄りながら、言った。
「ああ? テメエもナンバーセブンの仲間か?」
「……友人と呼べる程度にはな。女性に手荒なマネはしたくない。ここは眠っていてくれ」
ドゴッ! と麦野の脳が揺さぶられる。力なく、倒れた麦野を確認してからオッレルスは携帯を取り出す。
シルビアは怪訝な顔をして、
「……どこに電話かけたの?」
「何、救急車を呼んだだけだ。正当防衛とはいえね」
「うーん……あれ?」
何か違和感を抱いた削板は一人首を傾げるのだった。
オッレルス→シルビアの好感度が高いおかげでシルビアのヤンデレが表に出ても「君を元に戻してみせる」展開になる
そもそも女の相棒や幼馴染ポジって「主人公は好意を持っているけど現状を保ちたいからそれ以上進まない」のが多い
てか、2人の関係そんな感じ
>>205
まあそうなんですよねー
でも他のキャラとも絡んでほしいなー(チラッ
それでは開始
「久しぶりだな、軍覇」
オッレルスがそう言うと、削板も明るく「おう!」と答えた。
そして首をかしげる。
「そういやそっちの姉ちゃんは誰だ?」
「ああ……彼女はシルビアだよ。私の連れ……でいいのかな?」
「お前の恋人か何かか?」
「ハハハ……違うよ」
あっけなく否定したオッレルスにシルビアは表情を曇らせる。
しかし、オッレルスは気づかない。
「そうか……まあいいや。それよりお前、この前はどうしたんだ! 急にいなくなるから驚いちまったぞ!?」
「すまないな。あの時は切羽詰まっていたんだ」
「まあ、いいんだがよ。約束だけは守ってもらうぞ!」
「もちろんだ。……実は、頼みがあってね。学園都市で何かいい場所はないか?」
オッレルスの問いに削板は珍しく敏感に気づいた。
わずかにニヤニヤしながら、彼は言った。
「安価↓2」
「彼女とデートならセブンスミストでウインドウショッピングはどうだ?」
削板の言葉にオッレルスは意外そうな表情をする。
「……何だよ」
「いや、正直に言うと君からそんな気のきいた言葉が聞けるとは思わなくてね」
「俺だって服くらい買うぞ! だからウインドウショッピングくらいはする!」
おそらく彼の買っている服は他人とは一線を画しているだろう。彼の服装を見れば当然である。
しかし、ショッピングというのはありがたい。これならシルビアも喜んでくれるだろう。そう思ったオッレルスは削板に案内を頼む。
「任せろ!」
削板はそう答えて、セブンスミストへと案内を始めた。
二十分もしないでオッレルスとシルビアはセブンスミストへ到着した。
削板は何に気をつかったのか到着すると、「後は二人で楽しめよ!」とだけ言い残し、猛スピードで走り去った。
シルビアはその姿を親指を突きたてながら見送る。
「……さて、どこへ行こうか」
「ほらほら、デートなんだから私を楽しませなさいよ」
何か誘うように言ってくるシルビアにオッレルスは苦笑いをする。
少し廊下を歩き、オッレルスはどこに入るかを決めた。
オッレルスが選んだ店 安価↓2
「あそこにしようか」
オッレルスは無難に服屋を選ぶ。
「しかし、あんなところ場違いじゃないかね」
「大丈夫だろう。この国には客は神様などという文化もあるしね」
肩をすくめてオッレルスは店へと入っていく。
元々、オッレルスの服装自体は普通なので周囲からは何の違和感もない。
若者向けの明るい雰囲気の店内ではあるが内装や売られている服自体は意外なほど大人っぽいものもあった。
「ふむ……種類はかなり多いのか? やはりこういう部分は疎いな……」
オッレルスが何気なく服を見ていると、シルビアが横からツンツンと肩をつついてくる。
「なあ……せっかくだから私の着る服選んでくれよ」
「……いいのか? 俺はそういうのはてんでダメなんだが……」
「そんなの私も一緒さ。アンタが選ぶから意味があるんだよ。初デート記念ってやつ?」
総じて女性は記念をつくりたがるのか、とオッレルスは考えながらもシルビアに似合いそうな服を選んでいく。
そして、一着の服を選んだ。
オッレルスの選んだ服 安価↓2
「どう……かな?」
ゴーグルがなく、慣れない服を着た所為だろうか。シルビアは違和感とわずかな羞恥に頬を赤く染めながら試着室から出てきた。
水色に若干の紫の入ったカッターシャツのような長めの半そで、白のパンツにサンダル系の太いヒールの茶色ブーツ。
白のパンツはシルビアの綺麗な足のラインを際立たせている。特に驚いたのはゴーグルを外したシルビアは少し子供っぽく見えるということだ。前髪がそろっているからだろうか。
われながら上手くいった。そう思いオッレルスは素直に感想を口にする。
「綺麗だよ」
シルビアの頬を染めていた赤がより強くなり、オッレルスと目を合わせることすらかなわない。
「これ、買う」
シルビアは必死にそう呟くので精いっぱいだった。
その後もしばらく店を見て回っているときだった。
『現在、電気系統でトラブルが起こっており――――』
端的にいえば店外への避難アナウンスだった。買い物などを楽しんでいた客はどんどん外へと出ていく。
二人もまたその流れに従おうとしていた。
「どうしたのかね?」
服装を普段のものに戻していたシルビアが呟く。
「……電気系統のトラブルごときでここまでするとは思えない。おそらくは別の問題……それも客に言えないレベルのものだろう」
そこまで言ってオッレルスは一人の少年を見つける。
向こうもオッレルスを確認したようで、こちらへと駆け寄ってくる。上条当麻だ。
「あ……あの時の。すいません、これくらいで髪を二つに束ねた女の子みませんでしたか?」
上条は手でその身長を示す。
「いや……見てないが」
「クソ! 本当にどこ行ったんだ!」
その女の子は見つかっていないようだ。そうなってくると先ほどの予想も重なり、オッレルスも一抹の不安を覚える。
「手伝おうか?」
「いや、それは……実はここだけの話、爆弾が仕掛けられているらしいんですよ。ちょっと盗み聞きしてしまって」
上条はひそひそと話す。よほど巻き込みたくないのだろう。だからこそ一人で捜しだそうとしている。
助けたいが、科学の街で魔術師が動くのもどうだろうか。考えながらオッレルスは結論を出した。
オッレルス目線でどうする? 安価↓2
「……シルビア」
「あーはいはい。そう言うと思ってたよ。んじゃ、行きますか」
思いのほか快く受け入れたシルビアに一瞬驚きを見せながらも走り出す。
「あ、あのちょっと!?」
「大丈夫だよ。私達は爆弾ごときではどうにもならんさ」
上条の叫びを無視して、二人は店内を走る。
「しかし、どこに行ったんだろうね」
「さあ? 子供の行動原理は理解できんからな」
しばらく会話すると、軽くアイコンタクトをかわして彼らは二手に分かれる。
コンマ判定下1桁 ↓1
0~3 上条が発見
4~6 シルビアが発見
7~9 オッレルスが発見
「い、いた……」
女の子を見つけたのは上条だった。
手には何かカエルのような人形をかかえている。
「ちょっとアンタ! こんなところで何やってんのよ!」
そして、そこに茶髪の少女とやや遅れて花飾りの少女が走ってくる。
上条から事情を聞き、子供が無事見つかったことに安堵する。
「あ、風紀委員のお姉ちゃん! メガネの人がこれを渡してだって!」
差し出された人形を花飾りの少女が受け取った直後。茶髪の少女は異変にきづく。
そう、その人形が爆弾であることに。
「初春さん! その人形が爆弾よ!」
叫んでコインを取りだす。
だが。
(汗で滑って――――)
初春は人形の異変に気付き、とっさに人形を飛ばして女の子に覆いかぶさるが爆弾の威力を考えればそんなものは気休めにはならない。コインを拾っている時間もない。
――――爆発した。
それでも茶髪の少女が最後に見たのは爆発へ右手を構えるツンツン頭の少年だった。
そして。
その光景を無表情に見ていた人物がいた。周囲が騒ぐ中その人間だけは終始無表情だった。
「……、」
しばらく眺めて、その人間は人ごみの中から路地裏へと歩を進めていた。
爆発事件を起こした人物 安価↓2
ツインテールの少女はどこかさびしげな表情をして、路地裏へと消えていく。
「待ちたまえ」
そこに立ちふさがる金髪の青年、オッレルス。
彼は穏やかな声で、
「……テレビで何度か見たことのある服装だな。常盤台中学校、だったか?」
「正確には女子がつきますけれども……私に何か御用ですの?」
「いや……君だろう? 爆発事件を起こしたのは」
オッレルスの言葉に白井は眉をひそめた。
ジャッジメント
「何を言ってますの? 私はこの街の治安を守る『風紀委員』ですわよ? そんな落ちぶれた犯罪者では……」
「君は嘘をつくのが下手なようだね。そんな表情じゃまるで気付いてくださいとでも言っているようだぞ」
「……ッ」
苦虫をつぶしたような表情をする白井にオッレルスは言った。
「だが……もし君に治安を守るという使命があって、この事件を起こさざるを得ない状況があったというなら……私に話してはくれないか? 力になれるかもしれない」
「……>>232」
例えば、もしあなたの大切な人を破綻させるようなことを知っている人物にこの事件を引き起こすように言われたらあなたはどうしますの……?
わたくしが起こしたことはそういうことですの……
安価下
「……例えば」
白井はゆっくりと口を開いた。
「もしあなたの大切な人を破綻させるようなことを知っている人物にこの事件を引き起こすよう言われたらあなたはどうしますの……?」
問われて、オッレルスは答えなかった。ただ静かに少女の口から洩れて来る言葉に注目する。
「私が起こしたことはそういうことですの……」
「ふむ……つまり君の大切な人には危機が迫っていてそれを回避するためにこの事件を起こした、と」
オッレルスは確認作業として呟いた。しかし、彼の中での答えはもう出ている。
「……だが、君が大事に思っているようにその人も君を大事に思っているのではないか? このことを知ればその人はきっと……」
「ええ、悲しむでしょうね」
白井は呆気なく認めた。
そのうえで。
「ですが……誰かがやらなければお姉さまは苦しんでいた! アナタにはわからないでしょうが、私はお姉さまの笑顔のためなら何でもできますの。……わかってますわ、こんなことは無茶苦茶だってことくらい。しかし、遅かった。間違いに気付いた時にはもう、私は戻れない場所まで来ていましたの。私は……もう戻れない。ならば、せめて……お姉さま一人だけは何としても幸せになってもらいたくて! 今の私はその為なら何でもできますの。邪魔な人間……アナタを殺すことだって!!」
強く、長く、叫ばれて。殺気もあった。少女の決意が本物だということもわかった。
それでもオッレルスの表情は変わらない。この少女もまた助けるべきなんだろう、という考えは変わらない。
だからこそオッレルスは白井へと伝えた。
「安価↓2」
「そうか」
オッレルスは認めた。
少女の決意を尊重しながらもまたオッレルスは揺らがなかった。
「なら、俺が君を止めてあげるよ」
優しく、子供ができないなにかを親切に手伝う大人の表情でオッレルスは言う。
そして、白井にとってはその差し伸べられた救いの手こそもっとも嬉しくて……怖かった。
この人も巻き込んでしまうのではないか。この人も自分が弱いせいで死んでしまうのではないか。
「……やはり君は人を殺すには優しすぎるようだ。本当の悪人は人を殺す時に泣いたりはしない」
気がつけば、白井の目からは涙があふれていた。言われてようやく気付く程に白井は泣いている。
「こ、れは……どう、して……ですの?」
「君が人殺しにはなれないという証だよ。爆弾というクッションがあって今までは強く自覚しなかったからだろうが、私と直接戦い、どちらかが死ぬとわかったとたんに恐怖したのだろう、君自身がね。……君はやはり正義よりの人間のようだ」
「うう……ああああ」
足がプルプルと震える。恐怖を自覚し、体中から力が抜けていく。地面に立つことすらできない。
「……君は若い。それだけの強さと優しさがあればやり直せるさ」
「……はい、ですの」
オッレルスが差し出した手を白井はそっと握る。
この日。学園都市で一人の少女が救われた。
「そんな……嘘、黒子が犯人だなんて、嘘でしょ?」
白井から話を聞いたオッレルスは、白井が『お姉さま』としたっていた第三位、御坂美琴へと事情を説明した。
無論、御坂は信じないと叫ぶ。学園都市の黒い部分を知らない人間なら当然の反応だ。
「それで……誰よ! 黒子にそんなふざけた命令をしたヤツは!!」
「残念だがそれ以上の話を聞けば彼女に被害が及ぶ。だから聞かないことにした」
襟首を掴んでオッレルスに叫ぶ御坂。それを彼は冷静にいなす。
「そう……確かにそうね。黒子にそんなことあってはならないわ。私の大切な後輩に傷一つもついていいはずがないわよね」
「それで……君はどうするんだ?」
「そうね……まずは首謀者を見つけて黒子が何でこんなことしてるか聞いて、殺す。……私の後輩を傷つけたおとしまえは命で払ってもらうわ」
御坂の瞳から生気が消えていく。そしてドロドロとしたなにかが渦巻き始める。
その瞳が一瞬、あの魔神のもののように思えてオッレルスは言った。
「そんな考えはやめるべきだ。私は一人、そうやって道を踏み外した女を知っている。今の君はその女と同じ目をしている」
「……アタシには関係ないわ。それとも他にやり方があるっていうの?」
殺しに来るかという程の殺気を纏い、御坂は右手に電流を迸らせる。
その様子に危機感を覚えながら、オッレルスは言った。
「安価↓2」
474 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします sage saga 2013/10/04(金) 16:51:27.74 ID:V7M+YGvt0
>>250だけど、>>247は「好き」とは書いてなかったから告白にはならないと思ってたら……
上条さん鈍感だし、「捨てられたくない」とかならただ慰めるかと……
みんな、本当にすまん!俺ももっとゆっくりやりたかった!
どう書けば、告白する展開じゃなかったのかな……
補足説明ぐらいしておくべきだったか……?
「なら、俺は俺のやり方で君を見守る」
ここでもオッレルスは少女の決意を曲げさせるようなことはしなかった。
かわりに一つくさびを打つ。
「踏み外しそうになったらぶっ飛ばしてでも進ませ続ける。……これではダメかな?」
「……ぶっ飛ばすね。第三位にそんなことできるのは格上くらいでしょうね。ま、いいわ。そういうことにしといてあげる」
「ありがとう」
立ち去る御坂にオッレルスはそっとほほ笑みかけた。
オッレルスはそのままホテルに戻った。
御坂は気にかかるが、今日のところはシルビアやフレイヤとゆっくりしようと考えたからだ。
「やっほー」
出迎えたのは意外にもべレスだった。
「問題無かったか?」
「うん、極めて良好だって。あのフィアンマって人すごかったんだね」
「まあ『世界を救う程の力』を持つ魔術師だからな。当然と言えば当然さ」
肩をすくめ、自室へと向かう。
それを見たべレスはオッレルスのズボンを掴み、言った。
「今、戻らない方がいいよ」
「何故だい?」
「……シルビアが部屋で待ち伏せてる。何か武装してた」
「……、」
ダラダラとオッレルスの背中をイヤな汗が駆け抜ける。
デートをほったらかされたのだ。シルビアとしてもおさまりがつかないだろう。
そんな、オッレルスにべレスは言った。
「とりあえず母さんが会いたいって」
≪今日はここまで。皆さんお疲れさまでした≫
「オッレルス……似合う?」
出会った途端にフレイヤはオッレルスに近づき、問いかけた。
フレイヤが着ていたのは白のワンピース。元々、容姿が幼いせいもあってか、とても一児の母には見えなかった。
「よく似合っているよ。買ったのかい?」
「うん、べレスに何か買って上げようとしたらこれ買えって……」
賢い二歳児だな、と思いながらもほほえましい話にオッレルスの口も自然とほころぶ。
しかし逆にフレイヤの表情は、険しくなった。
「……シルビアが呪文みたいに言ってたよ。『アイツがまた人を助ける。後先も、誰かの気持ちも考えずに』って。……私みたいなのって初めてじゃないの?」
「ああ……そうだな。何度もあるさ。ついてくると言い張ったのは君が初めてだからね」
「……最低」
フレイヤはわずかに呟く。
「どうして自分勝手なことするの? アナタには居場所もあって、幸せを作り上げられる環境も整っている。それなのに……どうして、それを失うリスクのある行動をとるの? ……私には理解できない」
今まで不遇な環境に身を置いていたからこその言葉。それだけに重みがあり、一言で切り捨てることはできない。
そしてフレイヤには理解できなかった。自分の幸せを危険にさらす意味が。だからこそ問いかけた。自分が一番失いたくないものを失うかもしれない人間に、問いかけた。
オッレルスはそれに答える。
「安価↓2」
それが私の性だからだ
乙
今のところのヒロイン(?)はシルビア、フレイア、オティヌス(脱落?)でいい?
あとこのまま原作の話に関わったりできる?禁書一巻や実験編とか
オッレルスとフレイアがいっしょに歩くと夫婦に見えそうwwww
「それは俺が魔神のなり損ないたる所以だよ」
魔神になり損ねた理由はもはや、人助けですらなかった。たった一匹の猫を助けるために彼は病院から病院へと走り続けたのだ。後悔はした。涙も流した。でも同時に百回同じ場面に遭遇しても百回同じ選択をできるという不思議な自信もあった。
それを、普通の者では考えられないだろう? そう伝えるようにオッレルスは自虐した。
「……そんなことない」
フレイヤはしかしそれを否定する。
「オッレルスは、私とべレスを助けてくれた。……今まで全ての人間が見捨ててきた私に何の見返りも求めず、ただ助けてくれた。嬉しかったんだよ、私。だから私は……」
言葉を続けようとして、必死にそれを抑える。
まだ、本心を告げるには早すぎる。だから必死で言葉を飲みこんだ。
「どうかしたのかい?」
「ううん、なんでもない。早く行かないとシルビアが爆発しちゃうよ?」
ごまかすように笑い、打ち消す。
オッレルスは慌てたようにシルビアの部屋へと向かった。
その後ろ姿をボーっと眺め、とことこと歩み寄ってきたべレスに問いかけた。
「べレス……お父さんもほしくない?」
「……母さん?」
フレイヤの目がドロドロと蠢いた。
「それでー? 私をほったらかして、どこに行ってたのかなー?」
「……何で俺はベッドに縛られているんだ?」
オッレルスの四肢はベッドにつながれていた。
シルビアはその横に腰をおろし、冷たい目で見降ろしている。
「……そんなのオッレルスが私を置いて行くからに決まってるじゃない」
怒るのは無理もない。オッレルスもある程度の覚悟はしていた。
しかし、シルビアの目はまるで……、
(ここにも……なのか?)
懸念を深めるオッレルス。
唐突にシルビアは拘束を解いてオッレルスにのしかかった。
シルビアのきれいな金髪が視界を覆い、甘い匂いが鼻をくすぐる。
「なあ……」
シルビアがゆっくりと、オッレルスの胸に顔をうずめたまま、口を開いた。
「オッレルスさ……私の気持ち考えたことあるか? いつも待たされて、やっと帰ってきて一緒にいられると思ったらすぐ別の場所へ行く。……あの魔神とだって何回も殺しあって……毎回、心配してるのに。……なあ、私はお前を失いたくないんだよ。だから……ずっと隣にいてくれよ。……オッレルス」
少しずつオッレルスの体を這って、顔を目の前まで近づける。互いの顔に吐息が当たるほどの距離だ。近づいた所為からかシルビアの頬は赤く、息も荒い。
懇願するように見つめるシルビアに、オッレルスは答えた。
「安価↓2」
「それは、できない」
躊躇いを覚えながらもオッレルスは言った。
そうしたくない、という意味では無い。約束できない。
おそらく、シルビアの隣にいたとしても、オッレルスは困っている誰かを助けに行くだろう。そうなれば約束してしまった分だけ、なおシルビアに辛い目を見せてしまう。
オッレルスにそんなことができる度胸はなかった。
「そう……か」
シルビアはポツリ、と呟く。目からはわずかに涙があふれていた。
「なら……せめて、今日くらい隣にいさせて?」
「構わないさ。否定する権利など俺は持っていないからな」
服を握る力が強くなる。
オッレルスはそれをほほ笑みながら見つめ、やがて眠りについた。
(……私より大事なものがあるならそれを壊すしかない、か)
オッレルスの胸に身を預けながら、シルビアもまた眠りについていった。
翌朝。
オッレルスとシルビアはほぼ同時に目を覚ました。
「それで……今日はどうするの?」
シルビアの問いにオッレルスはわずかに考える。
元々、フレイヤとべレスの健康状態を確認するために来ただけにやるべきことはもうない。もちろん気になることくらいはあるのだが……。
「安価↓2」
「……デートしようか?」
「へ?」
「いや、昨日は随分とさびしい思いをさせてしまったからね。もちろん君次第だが……」
「いいに決まってるでしょ」
即答して、シルビアは笑う。
表に出るのもだるかったので、ルームサービスで朝食をとる。
食べ終わると、さっそくシルビアが話を切り出した。
「それで、今日はどこに行くんだ? できればいろんな場所に行ってみたいんだけど」
「そうだな……」
昨日と同じ轍を踏まない為にパンフレットにも目を通した。
その記憶を引っ張り上げ、オッレルスは行き先を決定する。
デート場所 安価↓2
「二十二学区あたりでも見て、エンデュミオンでも見にいこうか」
「ふーん……まあ、いいけど」
素っ気なく答えて、シルビアは身支度をする。選んだのはオッレルスに買ってもらった服だ。
フレイヤとべレスにデートの旨を伝える。フレイヤが渋い表情をしたが、べレスがうまくおさえてくれたようだ。
「……これからこの服にしようかな」
「外出時はいいかもしれないな」
そんな雑談をかわしつつ、二十二学区を回りエンデュミオンへ到着する。
「思ったより未完成なんだね」
「そうだな……完成は九月か。まあこれほどの宇宙エレベーターだ。学園都市も苦心して作るのだろうな」
高くそびえたつタワーを見上げながら二人はゆっくりと内部へ足を踏み入れる。
今のところは科学館のような形態をとっていた為か、一部の箇所は一般の人にも開かれており、学園都市の技術の程を垣間見ることができる。
「……やはり魔術と違って手早く準備が整うのだな。超能力とやらは」
「ま、才能のあるヤツが力を使えばそうなるだろうね」
アナウンスや映像で流れる技術には超能力のものもあった。さすがに肝心なところはぼかしているが、それでも魔術との決定的な相違はわかる。
そして、興味深そうに見ては会話をする夫婦のような空間の中でシルビアは確信した。
(オッレルスに相応しいのは私だけなんだ)
しばらくエンデュミオンを見て、気付けばお昼時だ。
「お腹すいた」
シルビアが端的に言うので、オッレルスはランチを取れる場所を捜す。
街をわずかに見渡して、オッレルスは店を選んだ。
安価↓2 オッレルスの選んだ店
選んだのは静閑なたたずまいの料亭だった。
「和食、か」
「ああ。せっかく日本にいるのだから、和食をと思ってね。……それにここなら邪魔も入らないだろう?」
オッレルスの言葉にシルビアは口元を緩ませる。
「そうだね。二人で楽しむとしますか」
料亭は高級感こそないが、質素で落ち着いたつくりとなっており日本のイメージを植え付けるかのような雰囲気だった。
畳に座布団。そんな中で二人はゆったりと腰をおろした。
「……、静かだね。こんな場所にいると少し前のことも忘れてしまいそうになる」
「忘れればいいのに。それに、女の前で他のことを考えるなんて最低じゃない?」
そんなものか、とオッレルスは呟く。今まで人を助けてばっかりいたせいか一般との感覚が乖離してしまっている。
しばらくしてシルビアが、
「そういえばオッレルス。アンタ何頼んだの?」
シルビアはイギリス王室にいたせいか、日本食というものに縁がない。
安心しろ、とオッレルスが言う。
運ばれてきたのは西京焼きを中心とした懐石料理である。店では一番高いメニューのようだ。
「俺のおごりだ。お金の方は任せろ」
「へえ……わかってるねえ。さすがオッレルス」
にやりと笑い、懐石料理を口に含んでいく。
元々、バランスのよい日本食であるがシルビアの口にあったようですぐに食べ終わってしまう。
「はー……おいしかった」
「ああ、個人的には茶碗蒸しなんかがよかったかな?」
オッレルスも気に入ったようで、にこやかに料理を堪能した。
料亭を後にして、しばらく歩いていた時だった。
「あのさ……手、つないでいい?」
「……またどうして、急に」
シルビアの唐突な言葉に少々面を食らう。
だが、シルビアは「いいでしょ。デートなんだから」とだけ言うと強引に右手を奪い、掴んだ。
「何かホントに恋人になったみたい……」
「……、」
うっとりとしてオッレルスの手の感触に浸りながらシルビアは歩く。
そして、その二人を見据える影があった。
二人を尾行していた人物 安価↓2(禁書キャラ1名)
「……、誰だ」
先に気付いたのはオッレルスだった。シルビアもその言葉に後ろを振り向く。
そこには地面につきそうな程伸ばした銀髪に緑の手術衣。男性とも女性とも、老人とも子供とも、聖人とも囚人ともとれる雰囲気を持った人間が一人たたずんでいた。
アレイスター=クロウリー。世界最高最悪の魔術師。
アレイスターは無表情のまま答えた。
「何、君ほどのビッグがこの街に来てくれたのだ。私自身が出迎えないとな」
「……いいのか。存在がバレても」
「ここは私の創り上げた街だぞ? そんなヘマはしないさ」
悠々と言って、一歩前に出てくる。
オッレルスの体に何とも言えない緊張感が走り抜ける。なぜこのタイミングなのか。相手の思考が読めない。
「……何が目的で私に接触した?」
探るように問いかけたオッレルスにアレイスターはそっけなく答える。
「安価↓2」
「なあに、君にはこの都市にあまり首を突っ込んでほしくないと“お願い”しにきたんだよ」
お願い。すなわち懇願。今はそれで済んでいるがもし下手な行動をとれば、すぐに警告……そして実力行使に変わっていくだろう。
オッレルスには傷ついて欲しくない人間がいる。そこまで見越しての行動だった。
「……、」
「そう、険しい表情をしないでくれ。私も魔神の一歩手前まで来ている人間と真っ向から戦うのは避けたいんだ。できればな」
一方的に話を進めてはいるが、魔神と戦える可能性もある人がこの世界に何人いるのかという問題がある。そしてその一人にアレイスターがいる。
敵の実力は未知数。ここは戦うべき場面では無い。
「……とは言っても何もするな、とは言っていない。『プラン』に干渉しないのであれば君には何も関係のない話だ。関わる可能性を危惧したこちらの杞憂であることを祈るよ、オッレルス」
それだけ言い残すとアレイスターの影は消えた。
「……オッレルス」
シルビアがそっと呟いた。
ホテルに戻った後もオッレルスの表情はさえなかった。
(まさかあの男がこの街の長だとはな)
そもそも男がどうかも怪しいが。
「オッレルス……大丈夫?」
「ああ、大丈夫さ。それよりもすまないね。せっかく楽しもうと思っていたがとんだ邪魔が入ってしまった」
「いいさ。今日のは仕方ない。悪いのはあっちだしね。でも……やっぱりああいう危険なヤツらが出てくるならアンタの行動には賛成できない。……少なくともこの街からは離れるべきじゃない?」
気になる少女がいる。しかし、シルビアやフレイヤ、べレスを危険にさらすことはできない。
迷いながらオッレルスは答えを出した
「安価↓2」
残るor残らないで物語が分岐します
「……わかった」
オッレルスは見知らぬ街よりも近くにいる人間を選んだ。
本人としては苦渋の決断だが、やむをえないだろう。
「うん、それでいいんだよ?」
シルビアは今までで一番うれしそうな笑顔を見せた。
翌朝。
突然だが学園都市を離れるという話をフレイヤとべレスにしてから四人は学園都市を離れた。
「私は構わないよ」
「……母さんがいうなら」
二人は快く受け入れる。
アレイスターの思惑があったのか内側から出るときは存外、苦労しなかった。意図的に警備を甘くしていたのだろう。
「……さて、しばらくはどこかでひっそりとしていようか」
そして一カ月程の時間が過ぎた。
ある日、べレスがオッレルスと二人で話したいと言ってきたのだ。
最近は魔術の施しもしていて、真面目な子だけに彼の険しい表情にオッレルスも何か違和感を覚えた。
「それで……?」
「……実は、母さんがシルビアにいじめられてるかもしれない?」
「? それはつまり……」
理解しがたい話ではあったがべレスは真剣な面持ちで語った。
フレイヤが洗濯をしているときにオッレルスと二人きりで出掛けたことなどを責め立てたらしい。
オッレルスにはシルビアがそんなことをするとも思えなかったが、シルビアに聞いてみるとだけ言い残し、その場は治めた。
「シルビア……話がある」
「何?」
部屋にシルビアを呼び出す。
まさかとは思ったが、不安はぬぐいきれない。ときどき見せるシルビアの目はオティヌスのそれと全くの同質だったからだ。
「べレスが言っていたよ。君がフレイヤに嫌がらせまがいのことをしているとね。……君がそんなことをするとは思えないが、べレスが安易な嘘をつくとも思えなくてね。……実際のところどうなんだい?」
「はぁぁああああ……」
シルビアが深くため息をつく。そして、呆れながら言った。
「そんな聞き方しても本当のこと言うとは限らないでしょ? 仮に……本当だとしてアンタはどうするの?」
「安価↓2」
「……君との関係を見直すよ」
「……ふぅん。そう」
シルビアは顔を俯ける。
その表情は読み取れないが、おそらく必死に何かを噛み殺しているのだろう。
「具体的には?」
「取り敢えずフレイヤとは距離を置いてもらう。一人で頭でも冷やすといい。何かおいしいものでも……」
オッレルスが言いかけた時だった。
シルビアが聖人の身体能力を使い、一瞬でオッレルスをベッドに押し倒した。
「……何のつもりだい?」
冷静に問いかける。オッレルスにはシルビアをほどくことなどたやすいからだ。それよりもシルビアの真意をしる方が先である。
「……私さ、怖かったんだよ。フレイヤとアンタが二人で出掛けたってべレスが言った時に嫌な予感がした。……で、フレイヤのヤツ、オッレルスとの話してるとすごくうれしそうな顔するんだ。……私は! オッレルスを奪われたくなかった! ただ、隣にいたくて……あの魔神がいなくなって、ようやくそうなると思ってたのに……」
オッレルスの体にしがみつきぶるぶると震える。
その様子を見ながら、オッレルスはシルビアに告げた。
すいません安価↓2です
ぎゅっとオッレルスは強くシルビアを抱きしめた。
「あ……」
シルビアの体から力が抜ける。よほどオッレルスに弱いのか表情から力が抜け、赤みを帯びた頬ととろんとした瞳がオッレルスに向けられる。
その頭を優しく撫でながら、オッレルスは囁く。
「……言いたいことがあるなら、今のうちに言っておいた方がいい」
その言葉に暗示をかけられたようにシルビアは素直に口を開いた。
「フレイヤが羨ましい。……いや、私はオッレルスを一人占めしたいんだ。アンタを手に入れようとする女を全て殺してやりたいくらいに……。なあ……私だってこんなことしたくはないんだ。でも、もう自分の意思じゃどうしようもないんだよ……だから、オッレルス。私だけ見ててくれ。それだけできっと……全部、上手くいくから」
シルビアはオッレルスの耳元で直接囁いてきた。
しかし、オッレルスは簡単に他人の考えに感化されるような人間ではない。そんなことはシルビアもわかっているはずだ。
「本気、なのか……」
「……うん」
頷いたシルビアの目に迷いはない。
オッレルスもまた、今抱いている本音を話した。
「安価↓2」
「……そういうことなら、俺はやはり、君との関係を見直すよ」
「え……」
オッレルスは冷たく告げた。
シルビアの目がウルウルと潤いを帯びていく。
「もちろん、君と永遠に一緒に居る方向とは真逆のスタンスで」
「そんな……どうして、わた、私は……」
「安心しなさい。これに関してはフレイヤからも話を聞いた上で私が公平に判断しよう。必要以上の罰を与えるつもりはないさ」
一人称が『俺』から『私』に変わった。これはオッレルスの中でシルビアが他人にひとしくなったということだ。
「いや、いや……」
「それまでは大人しく待っていられるね?」
シルビアを優しくベッドに寝かせる。シルビアはそれでもダダをこねる子供のように拒否を続けたが、オッレルスはそれを無視して部屋を去った。
そしてリビングでべレス、フレイヤと三人でオッレルスは話をすることにした。
まず、フレイヤはシルビアから陰湿な嫌がらせを受けていたことを涙ながらに吐露し、オッレルスも話のつじつまがあっていることからそれを事実だと認めた。
「それで……君はシルビアとどうしたい?」
フレイヤは涙にぬれた顔をオッレルスへ向けると言い放った。
「安価↓2」
「ただ謝ってもらって、仲直りして出来ればもっと仲良くなりたい」
「……本当にいいのか? 個人的な心情からシルビアを庇いたい俺が言うのも難だが今の君には彼女を一発殴るくらいは許されるぞ?」
オッレルスの言葉にフレイヤは首を振った。
「……それじゃ、ダメ。きっと、そんなことをすればいつか見返りを受ける。それに、今ここで私がシルビアを殴ったってそれはシルビアの怒りをまた生むだけだから……」
つい最近まで不幸で理不尽な境遇だったからこそ、言える言葉。
オッレルスはフレイヤの手を優しく握った。
「ありがとう……フレイヤ」
「……ううん」
そして、シルビアをフレイヤに謝らさせた。
シルビアはフレイヤに感謝しながら、涙を流す。フレイヤはその頭を優しく撫でた。見ようによっては聖母のように見えただろう。
だが。
オッレルスにもわからないようにフレイヤはシルビアへ囁いていた。
(ねえ……私のおかげでアナタはオッレルスから離れなくて済んだ。どういう意味かわかるよね?)
ピク、と肩を動かしたシルビアを手で制しフレイヤは囁き続ける。
(まあ……いてもいいって言っちゃったからどうしようもないけど……。私の邪魔何かしたらオッレルスにあることないこと話すからね? そしたら今度こそ言えなくなるねー?)
今度はフレイヤが主導権を握った。ただそれだけの差だった。
今日はここまでです。皆さんお疲れ様でした。
ぶっちゃけますが、文章やヒロインのドロドロ感は出せてますかね? 自分では判断難しくて……
質問・意見などは気軽にどうぞ
乙
とりあえずシルビアとフレイヤがヒロインで固定?これ以上は増ええないよね?
>>186の安価で「イギリス」を選んだ場合が気になるが結果は同じかもしれないからな……
あとドロドロ感は出せているよ
オッレルスほどの実力者だとパートナー探しにも一苦労だな
最低ラインが聖人レベルだからな
シルビアはあの一件以来、オッレルスと目に見えて距離をとるようになった。厳密には立場が上になったフレイヤがそうさせているのだが。
「オッレルスー。これこっちまとめとくね?」
「ああ、頼む」
フレイヤは対照的にオッレルスと距離を詰めている。べレスとも
しっかりコミュニケーションすることで「いい母親」を演じているのだ。
とはいっても、フレイヤ自身もべレスのことは愛している。オッレルスも愛してしまったというだけの問題だ。夫と呼べる人間もいないから問題ないだろうというわけだ。
(……ま、あの脳筋女がヘマしてくれたおかげなんだけどね)
バカな女で本当によかったと思う。
また学園都市でも御坂美琴が動いていた。
「……アンタが、天井亜雄ね」
ゆっくりと伸ばした指の先には白衣を着た男がいた。
天井亜雄。『絶対能力者進化実験』の関係者の一人である。
「……第三位、『超電磁砲≪レールガン≫』か。だが、遅いぞ。実験はもう止まらない!」
「ええ、そんなこと知ってるわよ」
認めたくないであろう事実をあっけなく認め、それでも御坂は電流を迸らせる。
「私の目的は元凶全てへの復讐よ。……そして最後は私自身」
そう、言い残すと容赦なく天井に電撃を浴びせた。
わずかに焦げたにおいを発する死体を無機質な目で見つめ、御坂は研究所を完全に破壊した。
かくして復讐は始まり、終わりへと向かう。
いくら確執が生まれたとはいえ、彼らの生活は単調なものだった。
貯蓄はオッレルスの手元に充分あるし、家事もフレイヤとシルビアが分担すればそれほどの量にはならない。
忙しいのは魔術の鍛錬に励むべレスくらいか。もともと、頭のいいこともあってオッレルスも教えるのには苦労しなかった。
「……基本的なことを一週間で覚えるのか。才能があるとはいえさすがだな」
「……早く、母さんを守れるくらい強くなりたいから」
しかし、まだ二歳児の子どもである。焦る必要はないのではないか。
「……ねえ、オッレルスは魔神の一歩手前まで強いんだよね?」
「ああ、そうだな」
「何でそこまで強くなれたの? どうして魔神にならなかったの? オッレルスには魔神になる権利が与えられたんでしょ?」
最近、考えた事もなかった。
思い出すように眼をつむり、言った。
「安価↓2」
「子猫を助けようとしているうちチャンスを逃してしまってね。正直後悔しているよ」
魔神の力が魅力的だったというだけではない。オティヌスという歪な怪物を生みだしてしまったことに対する自責の念。
結果論になるのかもしれないが、それでもオッレルスは責任を感じてしまう。
どこから間違えたのか。どこまでが正解だったのか。そんなものは誰にもわかりはしない。結果を知るその時までは。
「だからこそ俺がなるべきだったかもしれないし、他の誰かが手に入れるべきものだったのかもしれない」
ただ、それでもオッレルスにはやはり一つの確信があった。
「……もし俺が同じ場面に百回遭遇していたとしても俺は百回同じ選択をしているさ。そして百回愚かだったと自分を責めるだろうね」
べレスはその口を真剣に見つめていた。二年間、自分を見捨てずにあえて苦しい道を選んだ母とオッレルスを重ね合わせているのだろうか。
ややあって、べレスはそっと呟いた。
「……もし、僕にやりたいことが二つあって。そのどちらを選んでも後悔するとしても……僕は選ぶべきなのかな?」
二歳にしてこの領域まで達しているのか、とオッレルスは正直舌を巻いた。
確かに、最善の選択をいつもとれるわけではない。苦渋の決断という言葉もある。
べレスより十倍以上生きてきたであろうオッレルスにもどう伝えるべきかの迷いはあった。
それでもオッレルスは告げる。
「安価↓2」
「例え後悔することになったとしても、選ぶことは決して間違いではないよ」
「んー……でもわかってて間違えるなんて」
「君は余程、頭のいい人間のようだね。ただ、合理的すぎる。それは確かに効率的かもしれんが周りからは理解されにくいものだ」
過去は変えられない。今は変えにくい。未来は変えられる。
その為には最短の道筋だけでは決して得られないものだってあるはずだ。
友人、恋人、家族。
フレイヤが『見捨てない』という一見、無謀な選択をしたからこそべレスは今ここに立っている。
「……わかった。ありがとう」
「気にする必要はないさ。俺にも君を保護する義務はあるわけだし」
べレスの頭を優しく撫で、べレスは目をつむりその温かな感触を享受した。
「ねえ……今日、一緒に寝てもいい?」
そう聞いてきたのは意外にもフレイヤだった。
「俺は構わないが……べレスはいいのか?」
「べレスはもう練っちゃったよ。起きるときはいつも私が朝食作っている最中だからバレないよ」
二コリとほほ笑んで、オッレルスの布団へと入ってくる。
オッレルスもシルビアに何度かせがまれたことがあったので抵抗なく受け入れる。
「……はぁ」
フレイヤは体を丸まらせ、オッレルスにしがみつく。ほのかに匂うシャンプーの香りの所為か、思考が薄らぐのを感じた。
「しかし、君がシルビアを許すといったのは正直驚いた。……具体的な不幸の原因が見つかって怒りに身を任せるかと思っていたからな」
「そんなことしたらオッレルスが困るでしょ? それに……」
「それに……?」
「あ、ううん。何でも無い。でも……オッレルスが私のことどう思ってるかは気になるかなって」
上目遣いでオッレルスの端正な顔を見上げる。
しかし、どこか真剣さも見えるのでオッレルスも答える。
「安価↓2」
「娘思いの優しい女性だと、尊敬しているよ」
「え、いやそういうのじゃ……まあ、いいか。そういうの鈍感そうだし」
「どういう意味だい?」
「自分で考えて?」
「……、」
思い当たる節が全くない。人の機微には敏感な方だという自負はあるし、今だって自分の素直な気持ちを伝えたはずだ。
「わからないな。教えてはくれないのか?」
「うーん……仕方ないなあ」
もったいぶる様に言ったフレイヤはクスリと笑う。
そして、オッレルスの体の馬乗りになり、顔をギリギリまで近付けた。
「……これでもわからない?」
「……いや、君の意図は充分伝わった」
目は潤い、頬は赤い。こういうのを女の顔とでも言うのだろうか。
オッレルスには正直わからなかった。
それでも、何となくわかった。
(……彼女は男から愛されたことがなかったのだったな)
べレスも男ではあるが、それ以前に自分の子供である。そういう風にはなりようがない。となれば対象は必然的にオッレルス一人になってしまうのだろう。
フレイヤはオッレルスの表情が動くのを確認すると上から横へと戻り、今度こそ目を閉じた。
心地よさそうに眠るその顔に触れながら、オッレルスは思った。
(俺も人間、だったな)
八月二十八日。
『御使堕し』なる超巨大術式が発動した。
たった一人(?)の天使が天界から堕とされたことにより、全ての人間の内面と中身が入れ替わってしまうというものだ。
オッレルスはとっさに防御術式を張ったおかげで難を逃れたが、他はどうだろうか……。
「……、」
おそるおそる、オッレルスは一階へと降りた。
幸いなのかオッレルスが一番のようで、まだ誰もいなかった。
「あ……オッレルス起きてたの? すぐに朝食を――――」
「……おはよ」
「……、」
わたわたとリビングにフレイヤが入り、キッチンへ向かう。
べレスは眠い目をこすりながら、椅子へと向かう。
シルビアは何かを恐れるようにオッレルスから目をそむける。
最近の日常と化している出来事だったが……
それぞれ誰に入れ替わっていた?
↓2 フレイヤ
↓3 べレス
↓4 シルビア
フレイヤは髪の毛の先端だけを三つ編みにした少女。
べレスは十二歳程度の小柄な少年に。
シルビアに至っては全身真っ赤な男……フィアンマになっていた。
(……こんな時に遊んでいるのか? あいつは)
しかし、目線が高くなった所為からかべレスだけはしきりに首を傾げている。話せばどうにか理解してくれそうだ。
それにそれぞれの見た目が以外にマッチしているのは助かった。フレイヤの見た目がガチムチなボディビルダーだったりしては最悪だ。……べレスがお姉さん系の美女のなるのもどうかと思うが、それはそれで需要があるのか? とオッレルスは一人首を傾げる。
「オッレルス……? どうしたの?」
フレイヤが心配そうに声をかけてくる。
何かするべきだろうか。オッレルスはそう考え、一歩前に踏み出す。
オッレルス目線でどうする? 安価↓2(アバウトな行動方針でも可)
「何でもないよ」
フレイヤの頭を優しくなでる。
「ん……」
フレイヤは甘い声を出し、オッレルスが撫でるのをやめると我に返ったようにキッチンへと向かった。
(さて……どうするべきか)
いつまでもこのままという訳にはいかない。誰か頼りになる人間に協力を仰ぐべきだろう。
その時だった。
「……お客様」
シルビアの無理矢理したような無愛想な声に、オッレルスは玄関をみる。
おそらくこの異変に気付いて、オッレルスに会いに来た人間だろう。
オッレルスは魔術師の間ではなかなかの有名人なので、居場所が何かの拍子に見つかったとしても無理はない。
会いに来た人物 安価↓2(禁書キャラ、一名)
「……イギリス清教所属、神裂火織と申します」
入ってきたのは身長一八〇センチ程、左右非対称のジーンズにTシャツといった服装の大人びた黒髪の女性だった。
オッレルスは椅子をすすめ、座らせると話を切り出す。
「さて……このさいどうやって私の所在を掴んだかはどうでもいい。何故ここにきた?」
「話が早くて助かります。実は……この術式の原因を探る協力を仰げないかと……」
神裂はチラリと三人を見る。その中には神裂の知っている顔も一人おり、その術式の規模を示していた。
オッレルスとしてもそうしたいところだが、罠という可能性も否めない。
「……それで私に何をしろと言うんだい?」
そんなことはわかっている。しかし、あえて相手の口から引き出すことで優位を保つ。
神裂はそんなオッレルスの意図に気付かず、口を開いた。
「安価↓2」
「どれだけの人がこの魔術の影響を受けているのかもしくは受けていない人間を一緒に調査して欲しいのです」
オッレルスの持つ博愛主義を見抜いてなのか、神裂そのものがそういう主義なのか。
どちらにしろオッレルスとしても原因を探る必要はあると感じた。……ありえないかもしれないがこれほどの術式を完成しえる女をオッレルスは一人、知っている。
「……つきましては日本に飛んでもらいたいのですが」
神裂曰く、そこに術の大元があり術者も近くにいるらしい。
「オッレルス……日本に行くの?」
フレイヤが心配そうに問いかけてくる。
オッレルスは優しくほほ笑んで、
「ああ……悪いが今回は一人で行かなければならない。少々、厄介なんだ」
「わかった……私、待ってるから」
「できるだけ早く戻るさ」
神裂と家を後にするフレイヤはその後ろ姿をうっとりと眺めながらも、黒く笑った。
(……ここで決めちゃうか)
その笑みはシルビアへ向けられたものだった。
日本。学園都市近郊の海だった。
「えーと……?」
そこには黒髪にツンツン頭の少年。上条当麻もいた。彼の『幻想殺し』が術の効果から逃れさせたのだろう。
上条は状況をイマイチ理解できないようで、
「なあ、これってどういう状況なんだよ!? 俺だってよくわかんねえんだぞ?」
「ええ、私もあなたではないと思います。……しかし、術者はあなたの近くにいると思われるので……」
見た目と中身が入れ替わっていない人間はいないか、との問いに上条は首を傾げる。
ここだけの話だが、上条は七月二十八日に記憶を全て破壊されている。そんな見分けなどつくはずもない。
「お、ねーちんは問題なく行けたようだにゃー?」
そこに現れる場違いな雰囲気を纏った金髪の少年。彼はアロハシャツにサングラス姿だった。
土御門元春。
「……君が私を手引きさせたのか」
「いやーこっちから頼みごとしちまうのはまずいとは思ったんだけど、結局こうなっちまったぜい」
すまないな、と言うその目に申し訳なさは全くない。
「土御門。あなたの方はどうだったのですか?」
「ああ。引き受けてくれたぜい?」
土御門がそう言うと、後ろから一人の人影が現れた。
土御門がつれてきた人物 安価↓2(禁書キャラ。一名)
≪今日はここまで。お疲れ様でした≫
「全く……僕だって暇じゃないんだがね」
「土御門……よく取り戻せましたね」
ステイルは神裂、土御門と同じ状態である。術式には気づけたがいかんせん技量が足りなく、防ぎきれなかったのだ。
ステイルは舌打ちしながら、
「僕が最大主教の分まで働かされるのはまだいいんだがね。……そこの男と協力するのなどゴメンなんだが?」
煙草の灰を弾きながら、上条を指す。
神裂はそれを咳払いで制すると、話を切り出した。
「……私達はこの戦力でことに当たらなければなりません。最悪、背後に魔術組織などの影を感じたり、天使自身との交戦があったとしても、です」
「それなら、問題ないぜい? こっちには神のなり損ないがいるからにゃー?」
「それは私にとっては皮肉ともとれるが?」
土御門が腹を抱えて笑い、オッレルスはほほ笑む。
三人の何とも言えない視線が突き刺さった。
乙
これだと魔術サイド関連は関わることになるのかな?
ここから原作とかかわったりすることができるのかな?
エンディミオンは微妙だとしても法の書あたりはかかわることができる?
オッレルスは上条と二人で宿泊先の旅館を目指していた。
「久しぶりだね、上条当麻」
「あ、ああ……」
オッレルスの言葉に上条は歯切れ悪く、答える。
そこに若干の違和感を覚えながらもオッレルスは話を進めていく。
「それにしても、災難だったな。右腕に感謝するといい」
「……俺の家族はみんな、気づいてねえみたいだしな」
肩を落としながら言って、上条はため息をつく。
不幸体質はここでも健在のようだ。
「……だけど、この『御使堕し』ってのを何とかするには術者か儀式場を見つけるしかねえんだろ?」
「ああ、そうだね」
「……なら、こんなことしてる暇ねえんじゃ」
「逆に焦って見つかるものでもないしね。君が気にすることじゃない」
「そういうもんなのか……」
上条と土御門が海に行っている間、オッレルスは神裂と二人きりとなった。
(うう……気まずい)
神裂が何か話しかけようにも、オッレルスの雰囲気にあてられて思うように言葉が出ない。魔神一歩手前、というよりも男としての雰囲気の所為だろうか。
「……そういえば」
読んでいた文庫本を閉じ、オッレルスは問いかける。
「君は天草式の女教皇を務めていたはずだ。……また、どうしてイギリス清教に身を寄せたんだ?」
「……私は世界に二十人といない『聖人』です。そのせいで仲間は私の背負うはずだった不運を背負ってしまう。……そんなことに耐えられなかったんです」
幸運の嫌悪。上条当麻とは真逆の性質。
二人の間に重たい雰囲気が流れる。
「す、すいません……少し言い方が悪かったです」
申し訳なさそうに言った神裂。
しかし、オッレルスはそれを気にせずに神裂へ告げた。
「安価↓2」
「うん、聖人と呼ばれる者で周りを考える事のできる者がいたとは知らなかった。……今回の件は面倒だが君に会えただけでも有意義なものになりそうだ」
率直な感想だった。
シルビアの一面を見せつけられ、意気消沈しているところだっただけに素直にうれしかった。
「……いえ、私はそんなに大した人間ではないです」
「いや、君は少なくとも善人ではあるよ」
周りの女性は常にどこか歪んでいた。
オティヌス、シルビア。……もしかするとフレイヤもなのかもしれない。
「……あなたも苦労してきたのですね」
「まあそれなりには、な。……君のものに比べれば矮小でしかないのだが」
「いえ……しかしよかったです。あなたは意外と人間らしいようで」
「……そうか」
ミーシャ=クロイツェフ。
また一人、『御使堕し』を逃れた者が現れた。
「……しっかし、よく一人でここがわかったもんだぜい」
「第一の問いですがそちらの少年が術式の中心に近い存在であるのは明白です」
「……なあ、土御門。やっぱり俺の右腕でどうにかならないのか?」
「そいつは無理……てか、もう遅い」
土御門はサングラスの奥で鋭い眼光を光らせながら言う。
「そうだろ? ……『神の力』」
「……第一の解答ですが、ふざけているとしか思えません」
「いやいや……上やんに近づくさいに警戒しすぎたんじゃないか? 『天使の力≪テレズマ≫』が漏れまくってたぜい?」
ミーシャ……『神の力』はもう隠しきれないと悟ったのだろうか。
その瞳が赤く光る。夕暮れの空が唐突に夜空へと変貌を遂げ、辺りを覆い尽くす。
「……『一掃』。投下まで残り三十分」
ぎょっとした表情を見せたのは土御門だった。
「……上やん。逃げるぞ。これは俺達がどうこうできるレベルじゃない!」
「は……? 逃げるってどうやって――――」
「俺たちは儀式場を見つけるぞ! 天使の顕現に儀式場が呼応してる。……特定は容易だ!」
土御門が上条の腕を引っ張って逃げるのと入れ替わりでステイルが『神の力』に立ちふさがる。
彼は煙草を砂浜へと放り投げる――――その小さな炎はやがて大きなものとなり周囲を飲み込んでいく。
ステイルは上条当麻に、小さく確かにこうつぶやいた。
「――頼むぞ。僕ごときでは十分と持たない」
彼にしては珍しい、弱音だった。
同時刻。
オッレルスと神裂もやはり異変に気付いていた。
「……来ましたか」
「早すぎるな。想定外としか言えん」
海を見つめながら、神裂は歯ぎしりする。しかし、神裂程の焦りはオッレルスにはない。
「私はステイルの援護に向かいます。……もとからそういう予定でしたから」
神裂は静かに言う。
「……あなたはどうされますか? あなたならどう行動しようとも文句は言えませんが……」
これこそがオッレルスの評価だろう。聖人すらも一歩引くほどの実力。それを評価されたのだ。
オッレルスはわずかに考え、決断を下す。
安価↓2
1『神の力』と戦う
2儀式場を見つける
「……手伝うさ。それに私クラスでなければ本物の天使相手は厳しかろう」
嘯くように言って、笑う。
神裂もそれを聞いて安心するように頷いた。
「……では、行こうか」
オッレルスが窓を開ける。下まで降りる時間がもったいない。
「あ、あの。……最後に一つ、いいですか」
オッレルスは偽りの夜空を見上げながら、言った。
「言いたい事があるなら、全て終わってからにしよう」
「はあ……はあ……助かったよ。あと三十秒遅ければ、僕は死体決定だった」
到着した二人の見たのはボロボロのステイルだった。
砂浜はところどころクレ―ターになっており、ステイルの切り札である『魔女狩りの王』すらも圧倒的な力の差でごり押しされていた。ステイルはルーン二十四文字に加え、新たに七文字を作り上げた天才魔術師であるにも関わらず、だ。
「msrtw魔神svzq損skhj」
オッレルスを見据え、認識不能な言葉を吐く天使を見てオッレルスは笑った。
「――――来るといい。もっとも君が本気でかかって私を倒せるのかは非常に怪しいが、な」
戦いが、はじまった。
オッレルス目線でどうする? ↓2
「――――神裂、一気に決めるぞ」
魔神の前に天使など敵ではない。そう言わんばかりの強気な言葉だった。
「私の力を踏み台にしろ」
『北欧玉座≪プリズスキャルヴ≫』を行使する。
神裂はそれに合わせるように軽く地面を飛んだ。――その足元から説明のできない力が生まれる。神裂はその力を踏みしめる地面の代わりにして、大きく宙を舞う。
「はあっ!」
宙に浮いていたことで油断していたのか。襲いかかる水の柱も届かず、神裂はミーシャの目の前まで到達する。横合いから水の結晶が飛来するが、オッレルスとステイルの防護により、届かない。
(……この肉体そのものには届かないはず――――)
神裂はタイミングを計らいながら、構えを取り、七天七刀を強く握りしめる。
「――――唯閃」
神裂が天使を切り裂いたのと同時に、夜空が本来の夕空へと戻った。
『御使堕し』は無事に解決した。術者は上条当麻の父親、刀夜だったらしい。発動原因は偶然だったようだ。もっともこれだけの術式を自在に発動されたらたまったものではないが。
「私達は今日にもイギリスへ戻ります。報告もありますしね……それと今回の事態に関してイギリス清教は黙認を通すつもりです」
世界中の魔術組織に狙われているオッレルスにとっては安息を得られるチャンスだろうか。
ありがとう、と一言残して去ろうとすると神裂が呼びとめた。
「あ、あの……まだ昨日のことを伝えてません」
「……聞きたいことはもうないが?」
「いえ、私個人が伝えたいことです」
すぅ、と深呼吸をする。ほほ笑みながら彼女は言った。
「ありがとうございました。……あなたのおかげで自分の背負っているものが少し軽くなったような気がします」
「気にするには及ばないさ」
オッレルスにとって久しぶりに見る、純粋な女性の笑顔だった。
「……私、ここ出ていくね」
帰って一番に聞いたのはシルビアのそんな言葉だった。
どこか悲しげに言うシルビアにオッレルスは問いかける。
「……、何があった」
「何も。……私がここにいても邪魔だと思ってさ」
チラリとべレスとフレイヤを見る。
べレスはわからない、と両手を上げ、フレイヤも首を横に振る。
こうなってしまっては何がなんだかわからない。
「……本当にそれだけか? 他に理由があるんじゃないか?」
「許してもらったことには感謝してる。……けど私が耐えられない。こんなところ……」
何か言おうとして、噛みしめる。
涙さえ流しそうなくらいに肩を震わせるシルビアにオッレルスは言った。
「安価↓2」
「別に邪魔だとは考えていないよ。何がそんなに嫌なんだ?」
オッレルスの問いにシルビアはただ首を横に振る。
駄々っ子のようなシルビアに嫌気がさしたのか、オッレルスは二人きりになるために部屋へと連れ込む。
「さあ……これで隠す必要もない。思う事があれば正直に話なさい」
「……どうせ、信じてくれない」
「それは聞いてみないとわからない」
自分がどんなにクズだったとしてもオッレルスはこの態度を変えないだろう。
そんなことを痛感しながら、シルビアは言う。
「フレイヤが……私に出て行けって脅した。……信じるわけないよね。こんな女の言葉なんて」
オッレルスは少々信じがたい言葉に、戸惑いを覚えた。
「……ねえ、こんな無茶苦茶な話、信じてくれる?」
「安価↓2」
「いや、信じるさ」
オッレルスは優しく言って、頭を撫でた。
シルビアは一度も嘘は言わなかった。やってることは間違っていたかもしれない。それでも彼女は正直に全てを話していた。それを踏まえてオッレルスはいう。
「この前だって、俺に嘘はつかなかったからね」
再び一人称は『俺』になる。安っぽい同情の意味では無い。シルビアの正直さを信じたからである。
シルビアの両目から涙があふれ始める。見られたくないのか、オッレルスの胸へ飛びつき隠す。
「……ありがとう、信じてくれて」
「……ああ、信じるさ。君のその正直で真っ直ぐな瞳を」
「……何?」
今度はフレイヤを呼んだ。彼女の目にはわずかに不安が見て取れる。
「……シルビアに出ていけと脅しをかけたらしいね」
じっとフレイヤを見据える。
しかし、フレイヤはため息をついてベッドに腰をかけるとふてくされるように言った。
「私ってそんなに信用できない? ……それともシルビアを信用するの? あなたに隠れてそんなことするわけないじゃん」
それに『聖人』に脅しをかけても私じゃ無理だよ、とフレイヤは自嘲した。
確かに事実ではあるが、以前のことをネタにしていたとしたら……。
(ダメだ、そんな人間不信のような考え方では)
フレイヤは悩むオッレルスの姿を見ると、そっと歩みより横に座る。
入浴を終えたばかりなのか、甘い匂いはいつもより強かった。
わずかに目を細めたオッレルスにたたみかけるようにフレイヤは腕をオッレルスの体に回していく。
「……ねえ、私はシルビアを許した。すっごく辛かったんだよ? 自分よりずっと強い人を許すなんて。私が追い出せって言えばオッレルスはきっとシルビアを追い出すでしょ? オッレルスって優しいもんね。でも……それじゃオッレルスが可愛そうだと思って、それで許したのに。シルビアはそれをまた……私を陥れようとしてる。私は神でも聖人でもないから……もう、シルビアを信用できないよ」
ぽろぽろと見せる涙が嘘には見えなくなった。どちらを信じればいいのか。どちらを選んでもどちらかが確実に悲しむだろう。
……かつてべレスに言った言葉を思い出した。「例え後悔しても選ぶべきだ」と。
オッレルスは……選んだ。
「安価↓2」
≪今日はここまで。皆さんお疲れ様でした≫
「ごめん、俺はシルビアを信じるよ」
最後まで。オッレルスはシルビアを、パートナーを信じた。
「……そう。ううん。いいの、いいんだよ?」
「……何がだ」
フレイヤの目から涙がぽろりと落ちた。
救われない、とは思っていた。でも、最愛の子を得たのだ。それ以上を望むのは愚かだったかもしれなかった。
それでも諦めたくない、と。フレイヤの嗚咽は止まらなかった。
「……また二人きりか。寂しくなったね」
本心とは真逆の言葉を出しながら、シルビアは俯いて見せる。
案の定、心配したオッレルスはシルビアに寄り添った。
「君が気にすることじゃない。……私が選んだことだ」
べレスもフレイヤもいなくなった家は戻っただけなのに広く感じられた。
「それで……これから、どうする?」
「そうだな……」
尋常ではない程の虚無感に苛まれながらもオッレルスは言った。
「安価↓2」
乙
ヤンデレにならない女キャラって誰?ヒントはちょっと欲しい
あとこのまま原作の魔術サイド問題と関われない?
シェリーの件や法の書とオリアナと十一巻の件と関われるかが気になる
>>381
ガチでヤンデレ化しないキャラがいるとすれば……オルソラ?
基本的にこんな(ヤンデレ化が)早い、普通、遅いで決めてるので……明確に決まってるわけではありません。
>>382
ヒント!
フレイヤもオティヌスも死んだ訳じゃない
>>384
それは考えてました。ぶっちゃけ500レスくらいで終わりそうなので。
それでは開始!
イギリス。
イギリス清教の足元に位置する場所だが、オッレルスは一時的にその追跡を免除されている。……もっともいつまで続くかは怪しいが。
「……君にとっても懐かしい場所だろう」
「まあ、ね。……キャーリサ様あたりが飛んできそうだ」
ため息をつきながらも明るく笑うシルビアにかつての暗さはない。おそらくオッレルスと二人きりになったことで立ち直ったのだろう。
「……さて、どこかに行くか? まだ昼だし、ホテルも予約済みだからな」
シルビアはわずかに考え、故郷で最初に見る場所を決めた。
「安価下2」
ね~ちん御礼参りの時間だぁぁぁ!
「女子寮に戻ってもいいかしら。色々と挨拶したい人たちがいるから」
精神的余裕からか。答えも聞かずに歩き出す。
オッレルスは呆れたように口元をゆるめて、それについていくのだった。
「……なーんでアンタがここにいるんだ?」
女子寮に行くと、褐色の女性が呆れた顔で出迎えた。
シェリー=クロムウェル。イギリス清教、暗号解読者の一人。
そして、もう一人。神裂火織。
彼女は顔を俯かせて、プルプルと肩を震わせている。
(え? この前、イイ感じに別れたのは何だったんですか? ……いえ、そういうキャラじゃないのはわかってますが……もうちょっと臨場感ある再開がよかったのに……)
神裂火織さん十八歳。意外とロマンチストである。
シルビアはと言うと、そんな神裂に気付きもせずずかずかと、
「いやー? 神裂は久しぶりかな? まーたいつの間にか身長も胸も成長しちゃってー?」
神裂はゆっくりと再開の言葉を吐いた。
「>>391」
すいません……安価↓2で
「お久しぶりですね、シルビア。来てくださるなら連絡をいただければよかったのに。あなたはお変わりないようですね」
「まあ、これが私のとりえでさ」
ほほ笑んで言ってから、シルビアはオッレルスを見る。
シルビアにつられて視線を移してしまった神裂。
「あ、あの……この前は本当にありがとうございました」
「……オッレルス? どういうこと?」
「話しただろう? 外見と中身が入れ替わる……」
直後。
シルビアの額に青筋が浮かぶ。聞きたいことは他にあるらしい。
「あのね、そこは納得したけど……知らない間に女の知り合い作ってるなんて聞いてないんだけど?」
シルビアの手がボキボキとうなりを上げる。
ああこれヤバイやつだ。
そう思いながらもオッレルスは必死で弁明を試みた。
「>>400」
落ち着いてくれ……君が落ち込んでいたときに協力を頼んでいたから紹介しづらかったんだ……すまない
でも少し話して共闘しただけだから心配ないよ
この間家に来たじゃないか
「落ち着いてくれ……君が落ち込んでいたときに協力を頼んでいたから紹介しづらかったんだ……すまない」
オッレルスはシルビアの後髪を撫で、囁く。
「でも少し話して共闘しただけだから心配ないよ」
これくらいしなければシルビアは納得しない。というか、どんどんオッレルスへの依存度が強まりつつあるのだ。
よしよしこれくらいすれば大丈夫だろう。そう思ったオッレルスには一つ地雷があった。
「……お二人は恋人か何かなのですか?」
「うん、まあ夫婦みたいなもんかな?」
「え? ちょっと待て! 神裂、顔を真っ赤にするな。これは何かの間違い……シルビア、待て! その右手を沈めるんだ!!」
結局、踏みぬかなくて済んだ地雷を踏みぬくオッレルスであった。
≪>>401 その時は姿の入れ替わり自覚できなかったってことで……≫
「クソ……」
叩かれた頬をさすりながら、オッレルスはシルビアと並んで歩く。
シルビアは相当不機嫌なようで、顔も合わせてくれない。
「……なあ、もういいだろ?」
オッレルスがそう言うが、シルビアは一向に機嫌を直さない。
「何でもするとかでもダメか?」
シルビアはその言葉を待っていたと言わんばかりに、
「じゃあキスして」
「……え?」
最悪の角度から攻め込まれた。
そんな命令をされるとは思っていなかっただけに、思考が追いつかない。
だが。
「――――っ」
背後に感じた確かな殺気。オッレルスは冷たい目で後ろを振り返る。
そこに佇むは、一人の騎士。
「……久しぶりだな、シルビア。そして来てもらおうか、なり損ない」
「騎士派のトップが私に何の用かね?」
一触即発の雰囲気の中でシルビアとオッレルスは第二王女キャーリサの自室へと通された。
部屋はとてもシンプルな構造になっており、ところどころにはキャーリサの趣向にあった物品が並べられている。
「よく戻ってきたし」
「……、」
シルビアの表情はさえない。この王女が持ちかける話は面倒が多いとの経験があるからだ。
オッレルスは怪訝な顔して、
「下女のシルビアはともかく何故私まで……」
「理由は二つある。まずは一つ」
キャーリサは一枚の紙を放り投げる。
「これはシルビアの書いた誓約書だし。第二王女である私に従うとな。……ああ、それとお前に口を挟む余地はない。これはシルビア自身が記したものだからな」
釘を刺され、シルビアは苦虫をつぶしたような表情になる。事実のようだ。
しかし、なぜこんな昔のものを持ち出したのか。
「クーデター。……イギリスはこのままではダメだ。誰かが何かを変えん限りはな。その時の為に『聖人』の力を借りたい」
おそらく、シルビアは人質。本命はオッレルスをけん制し、あわよくば味方に引き込むためのもの。
誓約書と私情。
シルビアは試すように問いかけたキャーリサに言った。
「安価↓2」
「お断りだね」
シルビアは強く言い放った。
「あの糞ババア二人を出しぬけるとは思えない。やるならあの二人が死んでからにしろ」
かつて忠誠を誓ったのであろう相手に対する態度ではない。しかし、同時にこれがシルビアの強さでもあるのか。
「……、」
騎士団長が無言で剣を抜く直前だった。
「いい」
キャーリサが右手で制す。
騎士団長はわずかに頭を下げると一歩後ろへ下がった。
「まあ、今のは軽いジョーク……とでも受け取ってくれればいいし。問題は二つ目」
投げ出されるもう一枚の紙。術者の声を録音する為のものだった。
そして、声は語り始めた。
『イギリス王室……今すぐオッレルスを捕まえて私の元へ連れてこい。拒否した場合は五分の確率で世界が滅びるだけだ。場所は――――』
少し前までは毎日のように聞いていたおぞましい声。
声は必要最低限の情報だけを伝えると、最後にこう言い残した。
『愛してるぞ――――オッレルス』
「……という訳だ」
キャーリサはため息をつく。
「時間は明日の日没まで。はっきり言って五分の確率は見過ごせない。……それにヤツはどうもお前らがイギリスに来るのを予測していたようだし」
「だとすれば私に直接渡せば……」
「おそらく邪魔が入ると思ったのだろう。こうなってはさすがに私らも動けんし」
しつこいな、とオッレルスは歯ぎしりする。
「……これは当然かもしれんが、お前は行く。こちらも助っ人とやらを何とか用意しよう」
「そうか……」
「一人で行かせるのは国家の一角を担うものとしては恥ずかしいが……な」
キャーリサは天井を見つめ、息を吐いた。
翌日、正午。
人が不自然にいない街の片隅でオッレルスは一人の少女と相対していた。
オティヌス。魔神の領域に至った、歪んだ愛を持つ少女。
「ああ……オッレルス。会いたかったぞ」
「私は二度と会いたくはなかったがな」
世界の密かな危機とあっては見過ごせるオッレルスではない。しかし、こんなところでまで自分本位に行動するのかと、呆れと苛立ちは隠せない。
「最後に聞いておこう。……お前は誰を選んだんだ?」
ニヤリと唇を歪める。今までで一番何を考えているかわからない。
不安を覚えながらもオッレルスは答えた。
「安価↓2」
「まだ決めていない」
オッレルスは決断力のある男ではない。悩み、迷い、葛藤する愚かな人間だ。
だが、それでも。
人として何をしたいのかははっきりとわかる。
「だが、少なくとも君じゃないのは確かだ」
「……、」
オティヌスは何かを確認するように片方しかない目を閉じた。
そして、見開く。
「そうか……なら今すぐに、私を選ばせてやろう」
直後。無数の力が交差した。
シルビアはオッレルスの元を目指していた。
一人で行かせられるはずがないからだ。一人にすると彼が傷ついてしまう。何よりも自分自身が不安でおかしくなってしまいそうになる。
だが。
「はいはい、スト―ップ」
目の前にはピンクのドレスを着た女性が一人、立ちはだかっていた。
フレイヤ。
シルビアは舌打ちしながら、
「ったく、どこに行ったのかと思ったら……べレスはいいのか?」
「べレスは今、ぐっすり眠ってるからね☆ 今はオッレルスに纏わりつくゴミ虫の胎児が先決」
「そうか……」
シルビアは腰の後に装備してあったムチを手に取ると、言った。
「なら、遠慮なく退治させてもらう!!」
拮抗する魔神と魔神。
その戦いを見つめ、人影は地面へと降り立った。
キャーリサの用意した助っ人 安価↓2
「……、」
人影はゆっくりと地面に降り立った。
肘と関節にローラースケート用のプロテクター。膝ほどまでのワンピースに男物のズボン。
ブリュヒルド=エイクべトル。かつて『主神の槍』の一部製造に成功した程の魔術師。ワルキューレと聖人を併せ持つ。
「助太刀にきた」
「助かる。今のままでは泥沼だった」
二人は多くの言葉を交わさなかった。
ブリュヒルドは聖人の力で高速移動すると、オティヌスに迫る。
対応しようにもオティヌスはオッレルスの攻撃に対処することで精いっぱい。
――――通った
しかしブリュヒルドの確信は空振りに終わる。
オティヌスは足を強く踏みつける。地面に亀裂が走り、ブリュヒルドの踏み込みを封じ込める。
オッレルスが反応した。彼はオティヌスの意識がそれた一瞬で飲み込まんばかりの『北欧玉座』を放つ。これまでにない、全力の一撃だった。
「――――っ」
オティヌスの体が吹き飛び、地面を転がる。起き上がろうとするが、ブリュヒルドの追撃を浴びて、起き上がることすらできない。
だが、オティヌスは頭から血を流し、笑っていた。死を寸前にしても、だ。
「……何が、おかしい」
歩みながら問いかけるオッレルスにオティヌスは笑って答えた。
「全て、全てだ。……もし、ここで死ぬとしてもお前に殺されるなら幸せだ。お前の姿を見て死ぬなら幸せだ。さあ、私はもう抵抗もしない。好きにしろ。……だが、最後に――――」
声を聞かせながら殺せ、とオティヌスは言った。
オッレルスは瞳を閉じる。わずかに考え、決断を下した。
オッレルス目線でオティヌスをどうする? 安価↓2
≪今日はここまで。皆さんお疲れ様でした≫
「……私には君を殺すことはできない。歪んでいるとはいえ、私なんかを愛してくれたのだから……」
殺すのは怖いことだ。死ぬのも怖いことだ。
大人としてオッレルスは最後にそう伝えたかった。
「いやだ……いやだ……お前がいなければ生きられない」
ぽろぽろとダダをこねる子供のように泣きじゃくるオティヌスにそれでも告げる。
それでも、オッレルスは告げる。
「逃がす。もう私なんか相手しないで自分で他の相手を捜せという。……もう、なんでも力で手に入れようとするな」
少女は強すぎた。それゆえに力の使い方しか覚えられなかった。
それでも人を愛することを覚えてしまった少女は不器用なまでに追い続け――歪んだ。
少女はまだ泣き続けている。
「……いいのか?」
立ち去り際、ブリュヒルドの問いにオッレルスはほほ笑み、答えた。
「ああ」
「……アンタじゃ私には勝てないよ」
地面に倒れるフレイヤ。それを見下ろすシルビア。
勝負は決していた。
「諦めるものか……ッ!」
必死にもがくが、起き上がれない。才能のなさに涙が出てくる。
シルビアはそれを見つめ、審判を下した。
シルビア目線でフレイヤをどうする? 安価↓2
安価間違っているような……
安価下
もうヤンデレハーレムでいいやん!と思うこの頃……
あと五和は原作でヤンデレだからここでは一周して普通になってそう
「起きなよ」
そっと手を差し出す。その眼はぎらぎらとした光を帯びている。
シルビアはニヤニヤと告げる。
「……この前はアンタのおかげでオッレルスから離れずにすんだからね。今度は私がそうしてやるよ。……覚悟しておけ。お前は今から私の下僕だ」
シルビアの手がフレイヤへと伸びる。
その、直前。
「やめろ! 僕の母さんに触るな!!」
ぎゅわ! と伸びた小さな手をかわす。
「この身体能力……まさか『聖人』とはねえ」
アンタにはもったいないよ。そう言って、シルビアは笑う。
「シルビア……母さんに、僕の母さんに!」
怒り狂い、きれいな青の瞳を揺らすべレスにシルビアはやさしく
告げる。
「大丈夫。今、仲直りしたからね?」
「嘘だ! 母さんを下僕にするって言ったじゃないか!」
「……ねえ、あなたの母さんも似たようなことしようとしたんだよ? それにべレスは関係ない。だから気にしなくていいよ?」
べレスはシルビアの小馬鹿にしているような言葉に答えた。
「>>426」
それで納得するわけないだろ!
「それで納得するわけないだろ!」
拳を強く握りしめ、シルビアを睨む。
聖人相手に物おじしない態度は称賛に値する。しかし、それはただの無謀とも呼べた。
「やめなさい……べレス」
フレイヤが悲痛の声をもらす。
母としての防衛本能のようなものだった。
「あなたじゃ……勝てない。お願いだから……母さんの言う事を聞いて?」
「でもそれじゃあ母さんが……ッ!」
「私は……大丈夫だから」
二コリ、と苦しみを紛らわせるようにフレイヤはいう。
また、これなのか。
世界から憎まれ、当たり前の幸せを傍受できない。自分を見捨てればそれで済む問題をそうしようとせず健気に愛し続ける。
「どう、して……」
泣きながら問いかけるべレスにフレイヤは答える。
当たり前だ、と言わんばかりに。
「――あなたの母さん、だからだよ」
そして、母さんを助けてほしい。子供の純粋な願いは届いた。
「どういう状況だ、シルビア」
佇む金髪の青年、オッレルス。
彼が全てを終わらせるべきなのか。
「……およその状況は把握している」
シルビア、フレイヤ。
やはりこの状況を作り上げたのはこの二人だ。
「オッレルス――――」
シルビアが何かを伝えようと口を開く。
オッレルスはそれを手で制し、フレイヤへと歩み寄る。
差し出された手を掴み、立ち上がったフレイヤは頬を染めながら言った。
「……ごめんなさい。オティヌスに脅されててああするしか……」
べレスを殺す、と言われていた。もっともではある。しかし、シルビアの個人的な感情では信用したくない。
だが、オッレルスは客観的に判断する。
「――ひとまず、戻ろう」
イギリスへの報告はブリュヒルドへ押し付けるように任せた。もっとも事情を話すと、哀れんだ目で了解してくれたわけなのだが。
二部屋とったホテルのうち一室。そこでフレイヤと向かい合うオッレルス。
ポツリとフレイヤが口を開く。
「私がいけないの。オティヌスにオッレルスと会えるって話を聞いて……べレスがいるのに私、欲ばってオッレルスもって思ったの」
「……、」
フレイヤが何を言いたいかはわかる。だが、あえてフレイヤから聞き出そうとした。
全て終わらせるために。
フレイヤはゆっくりと立ち上がり、オッレルスに抱きつく。
ずっとこの一時をつくるために接していたのか、と思うとオッレルスはわずかに後悔にかられた。もっと早く応えているべきだったと。
「オッレルス……もう、気付いてるよね? でも言わせて。私は――オッレルスが好き。大好き。べレスと同じくらいに……好き」
とうとうこの時がきた。
オッレルスはそんな感慨を持ちながら、答えた。
「安価↓2」
「自分も君が好きだ。だけど、君の言うそれとは意味が違うと思う」
オッレルスに預けられたフレイヤの体がわずかに跳ね上がる。言葉の意味を理解してしまった。
だがそれに気付いてもなお、オッレルスはつたえる。これ以上は自分の精神が持ちそうもない。少しでも早く答えを出したかった。
「……ごめん、君の気持ちには答えられない」
「……うぇぇん」
フレイヤが最初にとった行動な泣く、だった。何の考えも思惑も持たずにただオッレルスの肩で泣き続けた。
オッレルスもそれに抵抗するようなことはしなかった。為すがままにさせる。
――――それしかできなかった。
べレスが入ってきたことでようやくフレイヤはそれを止めた。ただ、べレスに抱きつきベッドに寝転がっただけなのだが。
べレスが指でドアを指すので、それに従い部屋を後にする。最後まで、本当に気遣いのできる二歳児だった。
それから、一週間ほどがたった。
フレイヤとべレスは結局、イギリス清教預かりとなった。単純にフレイヤが無気力になったのが原因だ。
オッレルスは貯蓄を使い、山に家を建てた。周囲の土地もまとめて購入したため、誰も訪問者はいない。シルビアと二人の静かな生活だ。
「……オッレルス」
話がある、と言ってシルビアはオッレルスの隣に座る、肩に頭を置いてシルビアは口を開く。
「全部終わった。フレイヤもオティヌスもいない。……だから、もういいよね?」
オッレルスは天井を見つめる。
どうするべきか迷った。正直いって踏み込むのも維持するのも引き下がるのも怖い。……思えば、こんな中途半端だからこそ一時はイギリスという一国家すら巻き込んでしまったのだろう。
「オッレルス。私はアンタを愛してる。……だから、ずっと一緒にいたい」
短い中でいろいろあった。精神的には人間に過ぎないのだが、オッレルスはそれでも踏ん張った。
これで、最後。オッレルスはゆっくりと答えた。
「安価↓2」
「ありがとう。君と一緒なら幸せだ」
最初からこうすればよかったなんて思わない。
この一瞬を得るために、ここまでやってきたと思えば全ては必要な過程だった。
人は死に瀕した時、一番生きていると感じられる。そういう説がある。
なら、今までがあったからこそオッレルスはシルビアと一緒にいたいと思えたのだ。だから、無駄ではない。
「……嬉しい」
シルビアが体を反転させ、オッレルスを抱きしめる。いつもよりも女らしく見える彼女は目元に涙を浮かべていた。
オッレルスはいつものように優しく頭を撫でる。後ろ髪へ手を伸ばすとシルビアはオッレルスの目の前に顔を持ってくる。
二コリ、とほほ笑んだシルビアが目を閉じるのに誘われたのか。手でシルビアの顔を近づけさせ――
――――二人は口づけをかわした
ただ、そこにいれるだけでよかった。ただ、自分を必要としてくれるだけでよかった。
「行こうか、シルビア」
どんな扱いでもかまわない。自分だけが彼にとって特別であってほしい。そう願った。
「ねえ」
「うん?」
そこにある幸せが自分を支配する。おそらく世間じゃ、姿を消した二人の男女の行方を気にするものもいるだろう。彼に助けられるはずだった者もいるだろう。
それでも構わない、と思う。自分が幸せになったぶん誰かが不幸になるのは仕方ないのだ。
「愛してるよ」
「唐突になんだ……俺もだよ」
今日もシルビアはオッレルスと並んで歩く。いつか死ぬ日までの幸せを謳歌しながら。
―fin―
と言う訳で完結。早すぎ……初めてなので調整が難しかったしいろいろとつたない部分もあったと思いますが、最後まで見ていただいた方には感謝、安価に参加してくれた方にはさらなる感謝ですね。
……このスレはとりあえず分岐点をやってみようと思います。予定は↓です
1学園都市に残った場合
2>>375で両方でていった場合
この二つですね。
それとアンケート。次はもうちょっと長いのを別キャラでやりたいなー……なんて。
次の被害者候補
1トール
時系列……新約八巻後のif世界
流れ……オティヌス、マリアンによる監禁
2木原加群(ベルシ)
時系列……新約四巻前
流れ……グレムリン、学園都市からバケージシティでの戦い
3垣根帝督
時系列……15巻より若干前
流れ……オッレルスと同じ感じ。ただ、垣根が他の目的を持っていて、ヒロインも多い(?)
4その他
こんな感じです。意見・要望も受け付けます。
今日はここまで。皆さんお疲れ様でした
遅くなってすいません。次は垣根くんでいきます。最終的には全員やると思いますが。
まずは分岐1をやっていきます。
それでは開始。
「……残るさ」
オッレルスは静かに、しかし確かな意思を持って言った。
シルビアに危険な目を見せてしまうかもしれない。
だが、それでもやらなければいけないことがある。助けたい、と思った少女がいる。それだけで充分だった。
「……どうして?」
シルビアは今までにない冷たい目で言う。自分の思い通りにいかないのが気に入らないのか。食いかかりそうな勢いだ。
「……すまない」
オッレルスは視線をそらしながら呟いた。
「……ひっ」
どうやら、御坂美琴は既に黒幕へたどり着いていたようだ。
天井亜雄。『絶対能力者進化実験』の主導者とされる人物である。
「そーれにしてもこんな簡単に見つかるとは」
御坂は適当に呟くと、指先に電流を迸らさせる。
それを見て、額に汗を浮かばせる天井は叫んだ。
「……第三位、『超電磁砲≪レールガン≫』か。だが、遅いぞ。実験はもう止まらない!」
「ええ、そんなこと知ってるわよ」
認めたくないであろう事実をあっけなく認め、それでも御坂は電
流を迸らせる。
「私の目的は元凶全てへの復讐よ。……そして最後は私自身」
天井へ電流が直撃する直前。声が響いた。
「待ちたまえ」
御坂は声の方向を振り向く。
そこには金髪の青年がたたずんでいる。いつ、現れたかもわから
ない。
「……何しに来たの」
もはや、人を殺すことすら躊躇しなくなった少女へオッレルスは
告げる。
「安価下2」
「止めに来たんだ彼と」
「……彼?」
御坂はその言葉に表情を曇らせる。
研究室の外、暗闇の奥から現れたのはツンツン頭の少年。上条当麻。
「……何を、やっているんだよ。お前」
上条はゆっくりと、口を開く。
「……アンタには関係ない。これは私の問題よ」
そう言って、再び天井へ手を伸ばす。
「そうだ」
その途中、思い出したように御坂は問いかけた。
「首謀者だけ教えてね。……ぶっ殺してやる」
オッレルスは静かに目を閉じ、上条は茫然と御坂を見つめた。
「ふざけんなよ……」
ポツリと上条が口を開いた。
「お前、そんなことで全てが解決するとでも思ってんのかよ!? お前が死んだら白井はどうするんだ! 他にも悲しむ人はいるだろう!!」
「うるさい!」
御坂は振り返ると、上条へと飛びかかる。地面にたたきつけられた上条に馬乗りになる形で、彼女は反論した。
「もう、遅い! 私は……黒子を、この街で一番大切な後輩を巻き込んでしまった……」
ぽたぽたと上条の顔に御坂の涙がこぼれていく。
大切な何かを不器用なまでに守ろうとして、取り返しのつかないミスを犯した。だから最後まで突き進んでしまおう。そう考えてもやはり、耐えられなかった。
その様子をみて、口を開いたのはオッレルスだった。
「安価↓2」
すいません…ちょっと体調すぐれないんで今日はここまで
安価↓でお願いします
昨日は変な切り方して申し訳ありませんでした
開始します。
「…そんなに言うなら、突き進んでみるかい?」
オッレルスは御坂を試すように言った。
しかし、その一言には重みがある。失敗を見てきた者の言葉にも聞こえる。
「ただし、その道は間違っているし、君の望む結果は出ず…誰も幸せにはならないだろう。君は『意地でも貫く』と考えるより『どういう落とし所が一番か』考えるべきだと思うよ」
あまり広くはない研究室に静寂が流れる。
ややあって、口を開いたのは御坂だ。
「じゃあ、どうしろって言うの? もう私にはこれしか道がない。いまさら妥協しろって言うの? アンタは知らないから言えるんだ! あの子たちは……普通に人間らしくて、私よりもずっとやさしくて……だから、もうこうするしかない」
それで皆が幸せになれる。そう思う。そう思いたい。少女は全てを自分一人で終わらせる選択をした。
だが、
「ふざけんなよ……」
上条は押し倒されたまま、しかし強く言い放つ。
「そんなことやったって……お前が救われないだろ」
御坂の眼が大きく見開く。一番、気づきたくなかった、見て見ぬふりをしていたポイントだった。
そして、その様子を見て上条は静かに言った。
「安価↓2」
「お前とお前が守ろうとしている人全員救われなかったらそんなのハッピーエンドじゃねえだろうが!」
「……っ」
御坂は歯を食いしばる。
上条の言いたいことはわかっている。だが、相手が悪すぎる。どうしようもない。
そもそも触れることすらかなわない相手とどう戦えというのか。
「安心するといい」
オッレルスがゆったりと告げる。
「君に何も背負うなとは言わん。いくらでも自分の無力さを責めるといい。……だがな、それとこれとは違う。私達は知ってしまった。その上で君を助けるぞ。……いいね?」
「……うん」
少女らしくコクンと頷いて見せた。
去り際に。オッレルスは天井に問いかけた。
「このバカげた実験の首謀者は誰だ?
答えなければ殺されるとでも思ったのか。天井は躊躇なく答えた。
「>>457」
これを考えたのは木原幻生だ
「これを考えたのは木原幻生だ」
木原幻生。学園都市の中核をなす『木原一族』の中でも相当のマッドサイエンティスト。
そして、御坂にとっては聞き覚えのある人物。
「……木原」
「ふむ……私も噂くらいは聞いたことがあるな」
上条は首を傾げて、二人を見る。
「さて……行こうか。ここに用はない」
三人は近くのファミレスで遅い夕食を取っていた。主に御坂の、だが。
「ろくに喉も通らなかったのだろう。私が出すから好きなだけ食べなさい」
言われて、躊躇する。御坂は実験やら生活保護の手当てをたっぷりともらえる立場だからだ。今は持ち合わせがないが、充分に払える現金を用意できる。
しかし、成長期の欲望には勝てず。パスタを早口で食べていく。
「……それで、アンタはこれからどうしようと思ってたの?」
「>>460」
とりあえず、計画の全貌、進行状況、最終的に彼女達をどう落ち着けるかを決め、それを現実化するための策を練る…かな
ああ…勿論、首謀者には相応の社会的制裁、例えば三角木馬に乗せて拷問みたいなことを食らわせる前提でだが
「とりあえず、計画の全貌、進行状況、最終的に彼女たちをどう落ち着けるかを決め、それを現実化をするための策を練る…かな」
オッレルスはパスタをおいしそうに頬張る御坂をほほえましそうに見て、いう。
しかし、直後。オッレルスの目が切り替わる。
「ああ…もちろん、首謀者には相応の社会的制裁、例えば三角木馬に乗せて拷問みたいなことを喰らわせる前提でだが」
「それは身体的制裁だと思います!」
上条が鋭くオッレルスの言葉に突っ込む。同級生にそれを喜びそうな青髪とかがいるために洒落になっていない。
「問題無いさ。私の知り合いに拷問のスペシャリストがいてね。私も全身漆塗り三角木馬からの鞭打ちなんてことをされて、危うく目覚めるところだったくらいだからな」
「健全な中学生の前で何てこと暴露しているんですか! って御坂さん、アナタは意味を理解しちゃいけません!! ああもう、不幸だーーーーーーーー!!」
普通に上条が店の迷惑なだけだ。
翌朝。ルームメイトのいないことに一抹の寂しさを覚えつつも、御坂はすっきりと目覚めた。寮監もルームメイトの不在から、何かを察してくれたのか「無理はするな」とだけ言い残すと休ませてくれた。人の心を察してくれるというのは優しさだと思う。
朝食のフレンチトーストを一人、食べる。やはりさびしい。
「……、」
昨日までとは違う決意を持って、御坂は寮を後にした。
御坂目線でどうする? 安価↓2
「……来たね」
「ええ」
御坂はオッレルスと木陰の椅子に座る。白一色で染められたその椅子はとてもシックな構造となっている。
そこに溶け込んだ二人は気軽に会話を交わす。
「それで、アンタ……勝算はあるの?」
「無論、あるさ。少々実験試料を拝借したが、穴も多い……例えば最強と仮定されている被験者の少年が格下に敗北するとかね」
「……、」
確かに、理論上はそうなる。だが、そんなことが可能だろうか。
可能だと思わせる何かがオッレルスにあるのは確実だが、御坂はまだもう一つの技術についてを知らない。
「心配するな。最後はきっとうまくいくさ」
そう言ってオッレルスは立ちあがる。
御坂にもわかった。ここからが、敵の思惑を超える時なんだ、と。
「それで……最初はどう反撃するの?」
「安価↓2」
「協力者が必要だ。我々だけでは、不足の事態になったときに対処しきれないかもしれん」
魔神一歩手前、第三位の超能力者、幻想殺し。
これだけの戦力ならば、大体の事には困らないだろう。だが、万が一の事態には対応できないかもしれない。
「……協力者って当てでもあるの?」
「あるにはあるが……」
確かに協力してくれるかもしれない。だが、オッレルスと繋がりのある人間はほぼ確実に魔術サイドだ。科学の街で表立って動くのはさすがにまずい。だが、第一位に挑むほどの者が学園都市に何人もいるとも思えない。
(……、)
わずかに考えて、オッレルスは行き先を決めた。
オッレルスの指定した人物 安価↓2(禁書キャラ、一名)
≪今日はここまで。皆さんお疲れ様でした≫
「……一人知り合いに当てがある。彼女を頼ろう」
「……?」
そんなわけで軽く連絡を取る。彼女はものの一時間程で到着した。
ブリュヒルド=エイクべトル。
彼女は不機嫌そうに言う。
「私も暇ではないのだがな。……できれば、手短に済ませてもらいたい」
「助けてほしい少女がいる。……厳密には手伝ってほしい、かな」
涼しげに言ってから、オッレルスは笑う。
一方、後ろで御坂は一人慌てていた。
(なんか変な格好の人現れたし! ……でも学生って感じでもなさそう。一体、どうするんだろ)
そんな思考にふける御坂を傍目に二人は会話を進めていく。
「ものによるが……どうせ、この街に来たんだ。科学に干渉することは確実だぞ。戦犯となる覚悟はあるのか? 世界から狙われる覚悟は?」
オッレルスは静かに笑って、答えた。
「安価↓2」
他のスレもやってみたいという欲が出始める今日このころ……
それでは開始
「それくらいの覚悟はとうの昔にできている。誰かのために役に立てるならこの身など安いものだ」
オッレルスは何のためらいもなく答えた。
死ぬのは怖い。戦うことも怖い。オッレルスにはそういう人間としての恐怖心がある。
だが、それ以上にオッレルスは誰かが傷つくのを黙って見ていることの方が怖かった。
「目の前で困っている人を助けるのが僕の使命だからね」
これこそがオッレルスにとっての全て。他には何の思惑もない。
「……そうか。お前がそこまでの覚悟なら私も協力しよう」
ブリュヒルドはあきらめたように言う。彼女もまた、巻き込まれるように覚悟を決めた。
「ありがとう。……早速だが、どうしようか。御坂美琴」
「ここで私に振っちゃう? まあいいわ……とりあえず、は」
安価選択 ↓2
1関連施設へ行く
2一方通行に直接会う
「……一方通行に直接、殴りこむわよ」
強気な一言だった。どこかに自信も感じられた。
もちろん、彼女はブリュヒルドとオッレルスの実力を知らない。
だが、何となく感じていたのかもしれない。二人の強さを。
「私は、彼を呼ぼう」
オッレルスは携帯から電話をかける。
相手は一人、上条当麻だ。
駒は出揃った。
運命は回る。
「……こちらの人は誰でせうか?」
「何、私の知り合いだよ」
あまり深く教えるのはお互いにとって不利益だろう。そう考えて、オッレルスはそっけなく答える。
四人は一方通行を目指していた。学園都市の第一位だ。つまり……。
「……やっぱ襲撃はばれてたか」
実験を守るために何者かが、四人に立ちふさがる。
四人を妨害した人物 安価↓2
「ったく。第一位の尻ぬぐいなんざやりたくねえが……仕事なら仕方ないよな」
四人の前に立ちふさがったのは高級ブランドのジャケットを身にまとった金髪の少年だった。
垣根帝督。学園都市第二位の超能力者。
御坂は垣根へ向けて、言葉を発する。
「……実験の協力者? 道を譲るなら今のうちよ」
「おいおい、格下がどの面下げてそんなこと言うんだ? 俺としちゃあさっさと終わらせて女でも漁りてえっての」
下らなそうに呟く垣根。
だが、御坂は『格下』という単語に反応する。
「……どういう意味かしら」
「ああ? 俺が第二位ってだけの話だ。……まあ、楽に死なせてやるから安心しろ」
垣根の背中から三対六枚の翼が現れる。その姿はまるで天使だった。
「……私が相手取ろう。どうせ、こういう時のために持ち上げたのだろう?」
「……すまないな。面倒に巻き込んで」
オッレルスの言葉にブリュヒルドはわずかに笑った。
「心配するな。私個人としても、あの天使には興味がある!」
音速で突撃したブリュヒルド。その手にはいつの間にか槍のようなものが握られている。
それをかわしながら、垣根は口笛を吹く。
「すげえな。……それに見た目も悪くねえ」
「生憎だが、私は貴様のその翼にしか興味はない」
「そうかい。そりゃ残念だ」
二人の怪物がが激突した。
「ちょっと! あれ本物の第二位よ!? あの人一人でどうにかなるの!?」
「問題無い。彼女もまた、本物の実力者だからな」
走りながら、オッレルスは御坂の問いに答える。
怪物、と言わなかったのはあの魔神がオッレルスの心に根強く残っているからか。
「……おい! あそこに!」
辿りついた操車場には白い中性的な少年に踏みつけられる少女。
一方通行と『妹達』がいた。
「あァ? なーンで一般人つれこンでンだよ、オマエ」
「うう……」
血を流す頭を踏まれ、さらに痛みが増す。少女の表情が苦痛に歪んだ。
それを見て、御坂は口を開く。
「安価↓2」
「……ぶち殺す」
「待て、御坂!」
上条の静止を完全に無視して、御坂は能力を発動した。
近くにあった線路。そのレールを磁力で操作して、全てを一方通行へとぶつける。
ドゴンバガン! と無茶苦茶な音が地響きのように響き渡る。
だが、一方通行はそれを反射一本で防ぎきり涼しい表情でいた。
「おいおい……オリジナル様かよ。ま、このパワーだけは褒めてやる。よくできましたァ」
パチパチと拍手を茶番のように鳴らす。
「ま……いいモン見せてもらった駄賃だ。受け取れよ!」
足元のクローンを蹴り飛ばす。空中へと放り出された『妹達』が地面へ頭が打ち付けられる直前に上条が飛び込んでキャッチする。
御坂は怒りで自分とウリ二つの少女に気付かないのか、目をどろどろと濁らせている。
「殺す、殺す……殺してやる!!」
「はァ? やってみろよ」
御坂は挑発に乗り、自身の全てをぶつけた。
電撃。弾かれる。
磁力操作での攻撃。弾かれる。
彼女の代名詞『超電磁砲』。弾かれる。
「終わりかァ?」
一方通行は最後まで首をコキコキと鳴らしながら余裕綽々としていた。
次は、一方通行の番だった。
その、直前。オッレルスが重い口を開く。
「安価↓2」
「一方通行くん……だったかな?」
「あァ?」
オッレルスは静かにいう。
一方通行の動きが止まった。しかしそんなことはどうでもいい。今は言うべきことを言うだけだ。
「君は何故この実験を? level6になって何がしたいんだ?」
「……何を言い出すかと思えば、そンなことか。決まってンだろォ? 俺は『最強』なンかじゃ満足できないンだよ。俺が目指してンのはその先にある。挑もうってことすら馬鹿馬鹿しくなる程の力……『無敵』なンだ」
「そうか……」
オッレルスは一度目を閉じて、開いた。
その目は異様な光を帯びている。
「では今から君のプライドやら何やらをぐしゃぐしゃに潰してしまう前に聞いておきたいんだが……もしよければそうなる前に君の口から『申し訳ございませんでした。もう二度と他者の命を奪いません』と誓ってくれないか?」
その光の正体は哀れみだった。
「私もやっていいことと悪いことの区別もついていない幼い子をあまりいたぶりたくないんだ」
見下ろすような言葉。一方通行にとっては初めてだった。
だからこそ、こみあげる怒り。そして、目の前の人間の愚かさに対する侮りと軽蔑。
「この俺を前にして神様気取りってかァ? 面白ェ……オマエからスクラップにしてやるよォ!!」
一方通行の触れただけで人を殺せると言われる程の手が迫る。
しかし、オッレルスは冷静だった。最後にはほほ笑んですらいた。
直後。説明のできない力が一方通行を襲った。
(――――何だ、こンなベクトル……!?)
二度や三度では済まない。幾万ものベクトルが一方通行を襲った。
一度も、解析の糸口すらつかめない。
「何だ、何なンだ! オマエはァ!!」
「そうだな……」
自身をどう小姓するべきか。少し迷って、オッレルスは答えた。
「安価↓2」
≪>>489 誤字報告。小姓→呼称です。失礼しました≫
「魔法使い、かな」
オッレルスの言葉と共に、再び一方通行の体が地面を転がる。
一方通行の身体能力はかなり低い。自身の能力に頼り過ぎた所為だ。
(クソ……どうすりゃァいい? どうすりゃァ……)
そして視界に入るツンツン頭の少年。戦っていないのは彼一人だけだ。
まるでチンピラのような行いだが、この際何でもいい。あの男の能力さえ掴めるのならば。
そして、オッレルスにはそれを止めることはできた。だが、あえてしなかった。一方通行はいつでも倒せる。問題はそこではなかったからだ。
一方通行が上条と『妹達』の前に立つ。
「さァて……オマエらだけ仲間はずれもかわいそうだしなァ」
一方通行の目は狂気に駆り立てられていた。
上条は立ち上がり、一方通行と対峙する。
それでも一方通行の猟奇的な、何かを恐れるような目を見て思ったのだ。
「お前……何でこんなバカげた実験をしたんだ?」
「あァ? だからさっき言ったろォ? 三下は頭の出来が悪いから困るンだよ」
人を殺す、という意味がわかっていないのか。
上条は右手を握りしめ、言った。
「安価↓2」
≪今日はここまで。皆さんお疲れさまでした≫
「あぁ、俺は馬鹿だよ。テストだって毎回赤点で補習三昧だし、周りからはあることないこと言われまくるのもしょっちゅうだ」
上条は、呆気なく認めた。
その上で、上条は信念を持って言う。
「けどよ、そんな俺でもわかる。こんなことは絶対にやっちゃいけねぇってことぐれえはな! 馬鹿なりのやり方で筋を通させてもらうぜ」
言葉を終えると同時だった。
上条は一方通行へ全速力で突進していく。
「はァ?」
一方通行から間の抜けた声が漏れる。ただ無策に突っ込むなど馬鹿としか思えない。
地面をつま先で軽くたたくと、砂利が一気に射出される。
「……ッ!」
上条はその砂利の衝撃にたまらず、吹き飛ばされる。懸命に息を吐き、痛みを紛らわせる。
オッレルスもあえて、その様子を静観していた。
一方通行はその様子を見てこう思った。
アイツの訳のわからない力には限界射程があるのだ、と。
一方通行はオッレルスに余裕で話しかけた。
「ほらほらどうしたァ? 何とかしねェとお仲間が死ンじまうぞォ?」
「……そうだな」
一方通行にはわからせるべきことがたくさんある。
どうするべきか。オッレルスは行動に移した。
オッレルス目線でどうする? 安価↓2
これ中止になる理由になるのか…?
>>498-499
樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)が破壊されてないのでこのままでは……って感じです
それでは開始
「ぐがァ!?」
一方通行の体が吹き飛ぶ。上条当麻のちっぽけな拳の射程圏内へと。
上条の右手が強く握りしめられる。
(バカが……ッ、そンなモン反射で――――)
一方通行はほくそ笑む。右腕が曲がり、苦痛にゆがむ少年の表情が思い浮かぶ。
だが。
その拳は一方通行の『反射』を突き抜け、額へと叩き込まれた。
一方通行にとっては初めて感じる痛みだった。人に殴られる、という単純な痛み。オッレルスの与えた全身への均等な痛みとは全く違う。
「……『妹達』だってな、生きてるんだ。命があるんだよ。クローン製造ってのは確かにやっちゃいけねえのかもしれねえ。……だけどな、お前が殺していいことになんのか!? くだらないモンに手出しやがって……覚悟しろ。俺の最弱はちっとばっか響くぞ!!」
何一つ抵抗できない弱者のように、学園都市最強は敗北した。
「……、」
「目が覚めたようだね」
一方通行は公園のベンチに寝かされていた。目の前にいるのは金髪の青年ただ一人だ。
どういう訳か少し前までの痛みすら感じない。
「どォいうつもりだ……?」
「実験は中止にはならない。このままではね。……まあ、私と上条当麻、それに御坂美琴が殺戮対象に加わるくらいか」
オッレルスは何でもないようなことのように言った。
一方通行は怪訝な顔をして問いかける。
「……俺にどォしろって言うつもりだ。言っとくが俺は何としても『無敵』になりてェンだ」
何のために『無敵』を求めるのか。それを何となく察したうえでオッレルスは最強の少年に言った。
「安価↓2」
「こんな方法で『無敵』な手に入れたら“虚しさ”が残るだけだよ……」
一方通行は地面を見つめ、考えた。
確かにそのとおりだろう。だが、そんな綺麗言を言ったところで何にもならない。自分の力は究極的には誰かを傷つけれても、守ることはできない。
そんな自分にどうしろと言うのか。
オッレルスは道を示した。
「そんなことより私達と一緒に来ないかい?」
「……、」
オッレルスの言葉に嘘偽りはない。それは一方通行にもわかる。それに、オッレルスの力を知ることは一方通行にとっても重要なことかもしれなかった。
「……わかった」
「なら、友好の証だ」
差し出されるオッレルスの手。
一方通行は『反射』を解いて、握りしめた。
「……あ、あのありがとうございました」
一方通行の実験拒否。意外な形で『絶対能力者進化実験』は収束を迎えた。
研究者たちは一方通行を説得したが、そもそも力関係的に一方通行へ強制できるはずもなかった。送り込んだ『妹達』も気付けば、カエル顔の医者の元へ送り込まれてしまう。あの医者の前には彼らの持っているちっぽけな権力も無意味だった。
深く頭を下げた御坂の顔を上げさせ、オッレルスは言う。
「今回のことは私一人の手柄じゃない。君もよく頑張っていたさ。上条当麻もな」
「でも……私、ただ突っ込んで迷惑ばかり……」
「だとしても君には妹を守るという大事な役目がある。そればっかりは君にしかできない。そうだろう?」
「は、はい……」
「さて……私もそろそろ行かなければ。待たせてる人がいるんでな」
「あ、あの……!」
行こうとしたオッレルスを呼びとめる。
御坂には何故呼びとめたのかもわからなかった。ただ、ここで何か言っておかなければ会えないような気がして。
御坂は、言った。
「安価↓2」
「ま、また会えますか!?」
御坂があまり大きな声で言うので、オッレルスも少々意外そうな表情をとる。
「あ、すいません……でも、その……ちゃんとお礼がしたくて」
御坂は恥ずかしそうに頬を赤らめ、俯く御坂にオッレルスは言った。
「ああ、また会えるさ」
「は、はい!」
御坂の表情はこれまでにないような笑顔だった。
「……で? オッレルス。これはどういうこと?」
「……、」
しかし、彼は忘れていた。シルビアがいることを。
ブリュヒルドにうっかりホテルの場所と部屋番号を教えてしまったが為にシルビアと会わせてしまったのだ。しかも隣にはフレイヤとべレスがいる。二人にまでばれる訳にはいかない。
「いや、これは俺のミスってヤツでね。……すまない」
「ふぅん……ま、言い訳は後でたっぷり聞かせてもらうから。今はこの女を追っ払ってくれないかな?」
まるで自分の聖域へと足を踏み入れた愚か者を見るようにブリュヒルドを睨む。
ブリュヒルドとしては教えられてきたのだから、とばっちりなことこの上ない。
オッレルスは気まずくなりつつも、
「それで……あの少年とはあの後どうなったんだい?」
「安価↓2」
「いい友人として、交流しているよ。話せば案外イイ奴だということも判明したしな。一歩手前で救済できてよかったと思う。たとえそれが独善だとしてもだ」
「そうか……」
「そうそう。私が携帯を持っていないと知ったら『ペア契約』とやらを勧めてきてな。……正直よくわからんかったが料金が格安になり、科学に触れることができるのはありがたい。という訳でやってもらった」
ブリュヒルドは男物のズボンの内側から最新のタッチ式携帯を取り出す。幾つかバージョンアップの施されているタイプらしい。
しかし、ブリュヒルドにとってはいい経験程度かもしれないが、オッレルスの知識が正しければペア契約は恋人同士などの親しい者がするはずなのだ。
つまり……
(狙っていた、というのはあながち嘘でもなかったのか)
ブリュヒルドは強い。不安定ではあるものの、第二位でも苦戦するレベルには達しているだろう。確かに倒そうとするよりはいいが……。
科学の人間と深すぎる関わり合いはまずい気もする。しかし、これが深い付き合いであることなどブリュヒルドにはわからない。オッレルスにも確信がない。
おそるおそる問いかける。
「彼は……何と言っていた?」
「安価↓2」
「なんとも」
「……そうか」
最悪の事態だけは回避できてる……と信じたい。
しかし、もう一つ問題はある。そろそろシルビアの我慢に限界がきているのだ。
「……オッレルス?」
「いや、うん。でもブリュヒルドの寝る場所もないし」
「んなもん適当にどっかの部屋でも借りればいいだろうが! ああ!?」
「待て、シルビア! 怒るのは美容によくない。ストレスというのは……」
「……そう邪険に扱わなくても部屋くらいちゃんととっている」
ブリュヒルドの言葉にオッレルスは救いを見た。
だが、一瞬で覆される。
「私の部屋にもベッドが二つあってな。……お前さえよければ貸してやらんでもないぞ?」
「オッレルス……今日はフルコース決定ね♪」
「……、」
オッレルスはただ、思った。
終わった、と。
翌日。
呼びだされ、オッレルスは一方通行に会った。
「どうしたんだい?」
「……俺はもっと強くなれンだろォ? さっさと方法を教えろ」
「……、」
強さを与えるべきか、他の何かを与えるべきか。
今後に関わるだけに迷い、オッレルスは言った。
「安価↓2」
「人を、特に好きな異性をまずは持て。じ自分を守ることは猿でもできるが大切な人を守る事は難しい。その人を守る事が最強への近道だ」
「……、」
言っていることはわかる。壊すことよりも守ることの方が難しいのだって理解できる。
だが、今の一方通行には大切な何かなどない。
(見つけろ。そう言ってンのか……)
それだけははっきりとしていた。
「……大丈夫さ。君にならきっとできる。だが、もし自分の勝てないと思った相手と戦うのなら、逃げていい。私が引き受けよう」
「いいのか。俺は何千もの命を奪ってきたンだぞ」
「なら何千もの命を救えばいいだけさ」
もう還らない命もある。だが、失われそうな命を救えばそれは間違いなく彼の功績となる。罪は消えない。だが功績も消えないのだから。
「後は、君自身の問題だ」
そう言ってオッレルスは去った。
何気なく公園のベンチに座り込み、考える。
人との繋がりが希薄な一方通行にとっては見つけるのが問題だった。
その時、目の前の地面に人影が浮かんだ。
目の前の人物 安価↓2(禁書女性キャラ、一名)
≪今日はここまで。皆さんお疲れさまでした。……何かヤンデレ無関係なような≫
「……あァ?」
目の前に立っていたのは緑の服にミニスカート。青い瞳と金髪は典型的な西洋人を表している。
そして、何となく感じる圧迫感。オッレルスよりは劣るが同一のそれ。
「いっやーゴメンね? あんまり気になる見た目だったから見てたんだ」
彼女は自分の名をサローニャと言った。
サローニャ=A=イリヴィカ。一方通行は知らないが、ロシア成教系の魔術師だ。
「何か用でもあンのか」
「いや、学園都市に観光できてたんだけどね? 結構、広くて迷っちゃった♪」
自分の頭をこつんと叩く。萌えキャラアイドルでも狙っているのか。
邪魔くさい、と思いつつも気づく。
(これがあの野郎ォが言ってたことなのか……?)
正直に言ってわからない。
「ねえねえ、ここで会ったが百年目。早く紹介してよー」
日本語の使い方が明らかに間違っている。
しかし、言いつけ(?)を無視するわけにもいかず彼はベンチを立つ。
「わかった」
いくつか回った。
思い当たったのは宇宙エレベーターやセブンスミストくらいだが、サローニャは喜んでついてきた。
デートでいいのか? 世間と感覚が違いすぎる一方通行にはわからない。
ファミレスに来た時だった。何となく聞いてみた。
「オマエ、本当に観光だけが目的なのか?」
どうも、一般人とは思えない雰囲気を感じての一言だった。
パフェをほおばりながら、彼女は答える。
「安価↓2」
しばらく一方通行目線でしかもヤンデレじゃない……
それでは開始
「私は『ここ』の人間じゃないんだよね。ちょっと訳あってここの街を見学しろって頼まれてるんだ。もしもの時のためにどうしても必要だから……」
サンドリヨンが瞳をそらす。
一方通行はそれを何の感慨も抱かずに見つめた。何を、どう守るのか。その方法が一方通行にはわからない。
「ま……そんなこと起きないとは思うけど」
「もしもの時ってヤツがかァ?」
「うん。もっとも、そのもしもがあったとしても君には関係ないと思うよ?」
本当にそうなのか。自分は何か知るべきことがあるのではないだろうか。学園都市第一位と言っても所詮は子供だ。
何となく、金髪の青年の言っていたことがわかった。
(もっと他人を知れってことか……?)
おそらく手っ取り早く好きな異性を見つけろと言ったが、それはあくまで方法の一つなのだろう。要は守りたいものを見つければいいのだ。
この少女は自分にとってどういう存在になるのか。
何かに恐れながらも一方通行は言った。
「安価下2」
≪人いないみたいなので安価下採用します≫
「お前のことを、もう少し知りてェンだが。いや別に他意はねェぞ?」
「そういうこと言ったら逆にあるように見えちゃうんじゃない?」
「……そういうモンなのか」
不敵に笑ったサローニャから視線をそらす。
こういうことを含めての人間関係なのか。一方通行にはまだわからない。
「さて……どうしたものか」
オッレルスにしては珍しく短絡的な行動だった。
学園都市第一位との明確な交戦。その場にいただけならまだしも、攻撃までしている。戦争の理由としては申し分ないものだった。もっともこの街のトップがそれを望んでいるかは別の話だが。
(やれやれ……こういう時は組織に入ってなくてよかったと思えるな)
シルビア、フレイヤとべレス辺りには迷惑をかけてしまう。
当然だ。
目の前に突如として現れた人物がそれを肯定させている。
「……やってくれたな」
アレイスターは恨むように言った。
「おかげで私の計画にブレが生じた。……君はこのことをどう考える?」
「安価↓2」
≪人いねえ……次から安価下にします≫
「ちょっとした悪戯じゃないか。大目に見てくれよアレイスター・クロウリー。君だって気もの『プラン』とやらにこれ以上俺の介入と干渉をされたくないだろう?」
ニヤリと不敵に笑い、挑発する。
殺すことはできなくもない。多少の時間はかかるが相手にはならない。
だが、それは最終的には修正不可能な誤差を生む。それを見越しての挑発だった。
だからこそ、アレイスターは別の手をうっていた。
「……安心しろ。私の『プラン』は君のようななり損ないがどうこうできる程、甘くはない」
言葉を残し、消える。
しかし、確かにアレイスターはこう宣言した。
修正可能だ、と。
アレイスターによる『プラン』修正は既に始まっていた。
サローニャが襲撃されたのだ。
暗殺という形だった。秘密裏に処理しきれなければ、戦争に発展する。学園都市外での死も必要条件だ。
「……誰がやりやがった」
出会って間もない少女が重傷。一方通行の中に不思議な怒りが芽生えた。
そして、一方通行は決断した。
サローニャを襲撃した人物 安価↓1
「……何用であるか」
サローニャを襲撃したのは大柄な男だった。誰もいないのをいいことに五メートル程のメイスを手にしている。
後方のアックア。ローマ正教二十億の切り札とも言われる『神の右席』のメンバーである。
一方通行はもちろんそのことを知らない。だから学園都市の暗部の一人、くらいの認識だった。
眉ひとつ動かさないアックアに不信感を覚えながらも一方通行は問いかける。
「何で、アイツを殺そうとした?」
「……詳しくは語れん。だが、このまま行けば戦争が起きかねない状況ではあった。それだけは伝えておくぞ。学園都市最強の能力者」
「オマエ……俺を知ってて、その態度か。気に入らねェなァ」
強気に言いながらも、むやみに突っ込んだりはしない。オッレルスやツンツン頭の少年のように『反射』をすりぬける方法を持つ人間がいると知ったからだ。
「……少年。私も貴様の経歴をわずかながらに見聞きしている。一度顔を合わせただけの人間を無条件で助ける人間とも思えなかった。……何故、私の元へきた?」
報復なのか、復讐なのか。それとも自己満足なのか。
アックアは問いかけている。一方通行のどこにそんな感情があったのか、と。
一方通行はゆっくりと口を開いた。
「安価↓1」
≪今日はここまで。皆さんお疲れ様でした≫
「さァ……生憎俺もなンでオマエをぶち殺しにきたかわかンねェンだよ」
それは事実だった。気付けば、アックアの目の前に立っていた。
わかっているのに、誤魔化すように彼は言った。
「あー……多分あれだな。最近イライラしてたから適当な理由で誰かを因縁つけてぼこぼこにしてストレス解消したかったンだよ」
これも事実だった。
そんな一方通行に対して、アックアは何かに失望したように息をはく。
「そうか……では貴様は私には勝てん。間違ってもな」
「ンなモンやってみなきゃわかンねェだろォがァ!!」
脚力のベクトルを操作し、音速並みの速度でアックアへと突っ込む。常人なら反応すらできずに敗北するところだ。
しかし、アックアは何てことのないようにメイスを横に振るった。
ギュワワン! という歪な音と共にメイスが反射される。
(どォやら、コイツは肉体強化ってところみてェだな)
反射が正常に働くことすら久しぶりのような気がする。だが、これが普通だ。
アックアは上手く力を受け流したようだが、反射を破ることはできない。
「ふむ……力だけは大したものだ。だが、貴様は勝てん。貴様には信念がないからだ」
信念ならあった。打ち砕かれはしたもののあれは間違いなく信念だったはずだ。
だが、アックアは否定する。
「あれは信念とは呼ばん。……精々、野望どまりの願いだ。少年らしいと言えばそうなるが、無駄ではあった」
「なら……何か信念なンだ?」
「そうだな……組織に縛られるなとは言わん。全てに逆らえとも言わん。だが、ここ一番でどんなに自分が無力で、周りが無謀と言っても、ルールが規制してもやりとおす。これが信念と言えるかもしれん。形は人それぞれだかな……貴様にはそんななにかがあるか?」
「安価↓1」
今日は安価下2で三十分こなかったら下を採用します。
それでは開始。
「上等だァ、俺がアイツを守るのは無敵になるためだけじゃねェンだよ。意思やプライド全てをもう一度、一から作り直すためだ。だからお前には何があっても勝たなきゃならねェ!」
心の底から強く言う。こんなに大きな声で叫んだのは生まれて初めてかもしれない。
自分でもこんなに大きな声が出せたのか、と驚くくらいだ。
しかし、そんなことは関係なかった。全身全霊、全ての力を持って後方のアックアへと突撃する。
「……見事である」
青き最強の傭兵は彼の信念を認めた。同時に、思った。
やればできるじゃないか、と。最初からそうしていればよかったのだ、と。
直後。
二つの巨大な力が激突した。
「……さて、頃合いだな」
アレイスターの警告をオッレルスは無視した。ならば、それ相応の報いを与えるべきだ。
「ハハハ……まさか、大罪者がこんな場所に隠れてるとはな」
笑ったのは隻眼の少女、オティヌス。アレイスターが招き入れたのだ。
「……わかっているな?」
「もちろんだ。私はオッレルスさえ手に入ればそれでいい」
「来たな……」
オッレルスは学園都市の空を漠然と見上げた。しかし、間違いない。あの魔神が学園都市に入り込んだ。
場所は公園。しかし、彼女が人気のない場所で会ってくれるとは限らない。
オッレルスは転移術式で素早く移動し、廃ビル群の中へと溶け込む。どうせばれるなら早い方がやりやすい。
「オッレルス!」
同じような場面だ。また、この街で魔神と出会ってしまった。
オッレルスは呆れや焦燥に駆られながらもオッレルスは目の前の少女を見据える。
オティヌスは唐突に言う。
「……今日は襲ってもいいな? もう我慢ならん」
「安価下2」
「がっつきの早い女は嫌われるぞ。もっともお前に愛や献身などと言う言葉が理解できるとも思えんがな」
「……、」
黙り込むオティヌスにオッレルスはたたみかけた。
「俺はじゃじゃ馬より淑女の方が好きだしな」
「つまり私は選べんと……。そういう訳か」
オティヌスの唇が三日月のように歪んだ。これまでのような自暴自棄になりかけの笑みとは明らかに違う。
オッレルスの中に嫌な予感が広がっていく。そもそもこの女を招く可能性のある人物の存在に気付く。
オティヌスは囁いた。
「さあ、ショータイムだ」
「オッレルス!」
その言葉と同時に現れたのは二人の女性と一人の子供。
シルビア、フレイヤ、べレスの三人。
そして、それだけにとどまらない。
「ちょ……何、これどういう状況!?」
第三位の少女、御坂美琴までもが参戦する。
四人の女性は微妙な距離を保ったまま、円を作っていく。最早、お約束のような動きだった。
べレス一人がオッレルスの袖をひっぱり、二歳児では語彙的に足りないなにかを訴えようとしている。
正に一触即発。この場を収められるのはやはりオッレルス一人だけだ。
「さあ……オッレルス。なかなか面白い絵面だろう? これでお前もやりやすくなったな」
ふざけるな、という言葉をかみ殺す。ここでオティヌスの悪ふざけに、どこかの誰かの思惑に負ける訳には行かない。
オティヌス、シルビア、フレイヤ、御坂美琴。
この修羅場を抑え込むべく、オッレルスは言った。
「安価下2」
「オティヌス……! 皆ここから逃げろ!」
オッレルスは精いっぱい強く言った。
真っ先反応したのはシルビアだ。
「アンタをおいては逃げられない!」
「シルビア、君が前に勝てたのは文字通り運が良かっただけだ。俺以外は相手どれるはずがない」
冷たく言ってのける。そこまで言わなければ彼女は退かない。
だが、シルビアだけではない。フレイヤも御坂も去ろうとはしない。何か、執念に燃えたような目だった。
「……私にも残る理由くらいあるよ」
「えと……私も、返すべき恩があります」
「……母さんだけは、守る」
結局、誰一人逃げない。自分勝手な理由で魔神と戦おうとする。
しかし、このままでは自分以外は死んでしまいかねない。
オッレルス目線でどうする? 安価下2(台詞or行動安価)
(……苦肉の策だ)
オッレルスのとった行動は意外だった。オティヌスを押し倒し、あてがう。
「あ……フフ、オッレルス。やっとその気になったか」
オティヌスは一瞬でオッレルスしか見えなくなったのか。細い指を胸から下へとずらしていく。
オッレルスが一瞬だけ、アイコンタクトを送った。
直後。
シルビアの攻撃を先頭に三人の容赦ない攻撃がオティヌスを襲う。
御坂はさすがにオロオロして、大丈夫なのかと心配しているが話をする時間がない。
わずかにでも怯んでいる隙に御坂を抱きかかえ、一気に逃走した。
「……死ぬかと思った」
「私は突然、オティヌスに色仕掛けしたアンタを殺すとこだった」
くだらない会話をして、五人はどっと力を抜く。べレスは母親の膝に頭を預けている程だ。
魔神の顔すら思い出したくない。そう思いつつ、オッレルスは御坂に話しかけた。
「……すまないな。巻き込んでしまって。必要なら家まで送るが……」
「安価下2」
≪今日はここまで。皆さんお疲れさまでした≫
「送ってくれるのはすごい助かるんですが、まずは休憩しませんか? ヘトヘトで、もう動けないですよ」
そういえば御坂は相当慌てた様子で駆けつけていた。大方、アレイスターが情報操作でもしたのだろうがそれにしても常盤台からの距離はかなりある。疲労がたまるのも無理ない。
「ああ、構わない。そっちのベッドで仮眠をとるといい」
「ありがとうございます……」
フラフラと歩いて、ベッドに倒れ込む。ものの一分くらいで寝息がすぅすぅと聞こえてくる。
シルビアはそれを淀んだ目で見ていた。
「……オッレルス。アンタは人がよすぎる。いつまでものらりくらりやってるからあの女につけこまれるんだ。いい加減にはっきりさせるべきじゃないか?」
「安価下2」
ヤンデレが消えつつある今日この頃
それでは開始
「俺はあの白い少年がサローニャと結ばれるまでは選ぶ気はない」
厳密に言えば、一方通行が間違いを犯さないと安心できるまでだろうか。とにかく、この街ではまだやるべきことがあるのは間違いない。
「そう……なら、終わったら選ぶんだね」
「約束はできないがな」
オッレルスは吐き捨てるように言った。
眠る御坂の顔を見つめ、やさしく頭をなでる。
シルビアはそれを恨めしそうに見つめていた。
一方通行は激痛とともに、ベッドの上で目を覚ました。
(あの野郎ォ……普通に反射見破ってンじゃねェよ)
最後にアックアは反射の直前でメイスを引き戻し、反射を破ったのだ。なぜ生きているのかが不思議なくらいだ。
いや、生かされたのか。しかし、一方通行の中には不思議と怒りや屈辱はなかった。
「……一方通行」
そんな思考にふけっていると、サローニャが入ってくる。
サローニャは泣きだしそうな声で問いかける。
「……どうして、会って間もない私のために……」
「安価下2」
「俺が好きでやってンだ。テメェが気に病むこたァねェ」
そう言って、乱暴に頭を撫でた。
サローニャはそれを目を閉じて受け入れた。
「んもう、アクセラちゃん! もっと優しく撫でないと」
「……何だその変な呼び方」
「……ダメ?」
「いや、別に構わねェ……」
上目遣いで言われれば断れない、というのは嘘ではなかったのか。一方通行が知らないことだった。
もしかすると。サローニャと一緒に居ればもっといろんなことが知れるかもしれない。
サローニャになにか言いたくなった。顔を近づける。
「? どうしたの?」
「安価↓2」
「テメェは今までどンな生活してきたンだァ? 純粋に気になったンだがァ」
「うーん……話すのはいいけど。秘密にしてくれる?」
一方通行は頷いた。
サローニャはそれに安心したようにほほ笑み、話を始める。
「私ね……ロシア成教の人間なんだ」
「ロシア……確か世界三大宗教とか何とかってくくりだったよなァ」
「うん。私はそこの下っ端なんだけどね。この街でいう超能力まがいのことができちゃうんだよね」
一方通行は特に抵抗を示さない。
オッレルス、アックア。科学だけで理解しきれない法則は既に体に叩き込まれているからだ。
サローニャもそれを気にせず話を続ける。
「で……まあ、私は前線に出てはちょくちょく捨て駒扱い。情報が来ないってこともあったかな。それでも生きてるから結構強いはずなんだけどね……」
「アイツは別格だろ……勝てねェのが普通だ」
自分自身でも何故勝てたのかと思う。
第一位にも微妙な相手をこんな少女がどうこうするなど、酷な話だ。
「後……学園都市とロシア成教は基本的に関係は悪い。このまま、一緒にいると色々まずいんだけど……」
魔術と科学。一方通行には大体理解できた。
サローニャは魔術サイドにとってはそれほど重要でもないかもしれない。しかし、一方通行は科学サイドにとっては宝のような存在だ。
自分なんかのためにいいのか。彼女はそう問いかけていた。
一方通行は答える。
「安価↓2」
「地獄の底までついて行かせろ。科学で一番でも魔術じゃ雑魚じゃ笑い草じゃねェか」
「……いいの?」
一方通行はサローニャの呟きを無視した。
伝えれば、答えたことになるから。
「お前を守りながら魔術に名をはせるなら一石二鳥だしなァ」
「……ふぇぇ」
じわり、とサローニャの目から涙があふれる。見られたくないのか、ベッドに顔をうずめたサローニャを一方通行は優しくなでた。
「反則だよぉ……」
「いいじゃねェか。お前がやれって言ったンだろ」
少年は立場と引き換えに、居場所を手に入れた。
数日後。
オッレルスは一方通行がサローニャと一方通行が無事に付き合いだしたという情報を入手した。
これで、助けるべき人間は全て助けた。後は自分だけだ。
(どうするべきか……)
選ぶという約束は破りたくない。だが、恋愛感情というのがオッレルスにはよくわからなかった。
思考のまとまらないまま、彼は歩きだした。
オッレルスが会う人物 安価↓2 (シルビア、フレイヤ、オティヌス、御坂から選択)
「あ、あわわわわ……」
「……何だかよくわからんが、大変そうだな」
突然、オッレルスが現れたことによりパニック状態に陥る御坂。
オッレルスは御坂を落ち着かせつつも、公園のベンチに腰をかけた。
「……今回はこちらの都合に巻き込んでしまって、済まなかったな」
「先に巻き込んだのは私ですし……でも、」
御坂の聞きたいことはわかる。
だが、それを教えれば御坂は何らかの影響を受ける。第一位のように望んで血の道を選んだ訳じゃない。
そもそも何で御坂に会おうと思ったのか。
御坂もその雰囲気を感じ取ったのか、
「あ、すいません……あんまり話したくないですよね」
御坂の声も遠くから聞こえているようだった。
漠然としたまま、オッレルスは口を開いた。
「安価下2」
≪今日はここまで。皆さんお疲れさまでした≫
「君のような、元気で明るくて優しい人に出会えて本当に良かったと思っているよ。まだまだ世の中は捨てたものじゃないとね」
「は……い////」
頬を赤らめる。
御坂としてはそういう感情はないつもりだったが、なぜか抑えきれない。
オッレルスはそれに気付いてか気付かなくてか、言葉を続ける。
「あの場にいた隻眼の少女だがね。……少々人格に問題があってな。パートナーの女も、どうにも感情的過ぎる。もう一人に関してはときどき思考が読めない。一番まともなのは子供くらいだよ」
御坂も名前は知らない。だが、記憶力には自信がある。
引っ張りだした記憶から、答えをだす。
つまり。
(オッレルスさんて……もてるんだなあ)
まるで別世界の王子様のような雰囲気だった。でも、彼は自分と妹のためだけに動いてくれた。
目立つのが嫌いなのか、妹には顔も見せないらしいが。
とくん、と。御坂の中で何かがうずいた。きっとこれはオッレルスに向けられたものなのだろう。
気付けば、御坂はオッレルスに言っていた。
「安価↓2」
原作でもヤンデレはいかなくても思い女だもんな……ミコッちゃん
ちょろさ=病みやすい
このスレの法則
それでは開始
「オッレルスさんって、その……どんな子が好みですか? あ、あの別に深い意味はなくってですね……」
自分で言った時点で怪しいのだが、オッレルスもそこまで御坂を問いただす気はない。
「……それは女性のタイプ、ということでいいのかな?」
「は、はい」
内心、何言ってるんだろうみたいな心理状況になりながらもオッレルスの顔をじっと見つめる。
自分が何で聞いてしまったのかはわかっていた。でも、何となく別世界の人のような気がして、一歩踏み出せない。
(冷静に考えれば黒子を止めてくれたのもオッレルスさんな訳だし……)
意識し始めると思考がオッレルスで埋め尽くされてしまう。
混濁した御坂の耳にオッレルスの言葉が入ってきた。
「安価下2」
……おしとやかなタイプかな?
特に最近はそういうタイプと会って心を安らぎたいよ……ボソッ
>>583の一行目は「?」なしで
>>583の一行目はせめて「……おしとやかで優しい女性かな」にできませせんか?
連呼すいません
「……おしとやかなタイプかな。特に最近はそういうタイプと会って心を安らぎたいよ……」
後半のボソリともれた呟きを御坂は聞き逃さなかった。
しかし、御坂は自分の行いにおしとやかさがないことに気付く。
「はぅぅ……」
オッレルスもかなり本気で落ち込む御坂に面を食らったのか、
「気にすることはない。君だって充分に女らしいさ」
「でも……」
御坂は自分の体を見て、ため息をつく。
どこぞの第五位のような体のメリハリが自分にはない。
「……見た目だけで全てが決まる訳じゃないだろう」
「そう、ですかね」
「少なくとも私はそこまで気にするようなことはしないさ」
オッレルスの言葉に安心したのか、御坂もほっと息を吐く。
正直、短絡的かとも思ったが御坂自身オッレルスの雰囲気にやられていた。
そして。
(オッレルス……どういうつもり?)
それを見る影は御坂への殺気を隠すことすらしていなかった。
御坂と別れ、ホテルに戻る。
シルビアが額に青筋でも浮き出しそうな様子で待ち構えていた。
「シルビアらしくもない……あの程度よくあることじゃないか」
「私は、アンタにそこまで怒ってない。……許せないのは御坂ナントカって方」
名前くらい覚えているのに、言わない。
シルビアの怒りは相当なものだった。
「なあ、アイツがそんなによかったのか? 私よりも魅力的だったのか?」
「安価↓2」
なぜそんなことを言うんだ?
「俺はロリコンじゃないよ……」
十四歳。ロリコンという枠組みにいれるべきかは怪しいが、少なくとも成熟しきっていない少女だ。
シルビアの態度がおかしい、確かにそう感じた。
「大体あの子はまだ子供じゃないか……さすがに嫉妬は大人げないんじゃないか?」
「うるさい……」
シルビアが肩を震わせながら、口を開いた。
「私はアンタが私を選ぶと思って……なのに、アンタはよりによってあんな小娘のところに!」
「……まだ十四歳だぞ。いくら第三位とはいえアフターケアというのも重要だ!」
シルビアはオッレルスの言葉に激しく首を振った。
その姿に英国に仕えていた面影はなく、ダダをこねる子供のように我がままな女が一人いるだけだった。
「……もし、アンタが私を捨てたら。私は死ぬしかない。アンタなしじゃ生きられない……!」
嗚咽さえもらしながらシルビアは言った。
地面に倒れ込み、オッレルスの膝をすがるように握る。
その姿にオッレルスは哀れみさえ覚える。
「安価↓2」
君らしくない
そんな悲観なことを言うのは君には合わないよ。いつも通りに俺に文句言ってたりするほうが君らしいよ
「君らしくない。そんな悲観的なことを言うのは君には合わないよ。いつも通り俺に文句言ってたりするほうがきみらしいよ」
そうでなければこっちの調子が狂う、とオッレルスは付け足す。
確かにシルビアもいつも通りに越したことがない。
だが、オッレルスの周りに害虫が多すぎる。
それを隠し、シルビアは『いつも通り』にふるまう。
「ったく……アンタはここ最近、女に絡みすぎ! こっちの身にも――――」
「ハハハ……」
あまり唐突に切り替わるシルビアに苦笑いしながらもオッレルスは安心した。
これで大丈夫だ、と。
「……何だ?」
「いやあ、アンタに聞きたいことがあって」
オッレルスに散歩と誤魔化したシルビアはブリュヒルドと会っていた。
シルビアのぎらぎらと血走った眼に、ブリュヒルドも警戒を強める。
「アンタ、オッレルス狙ってるだろ?」
「何のことかわからんな」
「とぼけるなよ。私は本気だぞ」
一人感情を高ぶらせるシルビアにブリュヒルドは答えた。
「安価↓2」
勘違いするのはお前の勝手だが、決めつけで私を巻き込まないで欲しい
あと言っておくが私は一応心に決めた相手がいるからあんな男には興味は無い
「狙ってるというよりもう自分のモノだと思うくらいだけど?」
ブリュヒルドの表情が一気に変わった。ギアが変わったとでも言うべきか。
「ああ、そう」
シルビアも笑った。何かの喜びを隠しきれない程の歪んだ笑顔だった。
べきぼき、とシルビアの手がなる。
「……テメエだけは自分の拳で殴んねえと気が済まねえわ」
「奇遇だな。私もこの手で殺したいと思っていたよ。直接、な」
直後。
学園都市の簡素な林が風により、ズタズタに引き裂かれた。
異変を察知したオッレルスはすぐに向かった。
学園都市でこれ以上の悪目立ちはさすがにまずい。
にも関わらず、目の前ではよく知った二人の女性が殺意むき出しで殴り合っていた。
顔には痣があり、足もふらふら。それでも殴り合いだけは止めようとしなかった。
しかし、オッレルスが現れるとシルビアはそれに気付く。
「オッレルス! 今すぐコイツを片付けるから待ってろ!!」
「何を言ってるかさっぱりだな」
オッレルスは二人に対し、言った。
「安価↓2」
「ここで熱くなって関係ない人に危害を加えるつもりか? そんなことをして勝ったとしてもそいつに振り向く男がいると思うかい? 普通は軽蔑されて口を聞くことすらしなくなるぞ」
それを伝えたのはシルビアへの信頼の強さ、オッレルスの優しさだろう。これだけでもシルビアにとってはありがたい事実だ。
しかし、それを見逃さなかったのはブリュヒルドだった。
彼女はふらふらと歩み寄るとオッレルスの胸に倒れかかった。
「……悪いが部屋まで運んでくれないか?」
「構わないが……治療はいいのか?」
「体よりも精神がきついな」
オッレルスが他の女と寄り添うのを茫然と見つめるのは何回目だろうか。
だが、シルビアは見た。
一瞬、自分に向けられたブリュヒルドの顔が挑発的な笑みを受けべているのを。
「大丈夫か?」
「何とか、な」
ブリュヒルドを部屋のベッドに寝かせる。
しばらく様子を見て落ち着いたと判断したオッレルスは部屋に戻ろうとする。
だが。
「……けが人を一人にするつもりか?」
ブリュヒルドがオッレルスの服の袖を握り話さない。
微妙な時間が二人を包む。オッレルスにとっては久しぶりの静かな落ち着いた時間かもしれない。
ブリュヒルドは何も言わず、無表情でオッレルスを見つめている。
オッレルスがゆっくりと口を開いた。
「安価↓2」
「…わかったよ。何かして欲しいことはあるかい?」
シルビアのしたことに対する謝罪の意味もあった。
何を言われるかは不安だが。
「……そうだな。別に隣にいてくれればそれでいい」
「そうか」
また、微妙な雰囲気が流れる。近いようなそうでもないような。
ブリュヒルドは体を横にしてオッレルスへと向ける。
「……元々シルビアが私を襲ったのは私があることを言ったのが原因でな」
「? どういうことだ?」
ブリュヒルドはわずかに笑みをこぼす。
弄ばれるのが楽しい、とでも言わんばかりの顔だった。
「お前が私のモノだ、と言ってしまってな。……本当は好きとだけ伝えるつもりが、アイツの態度が癪にさわった」
「安価↓2」
「アレはなかなか素直じゃない節があるからなあ。あまりおちょくってやるなよ?」
肩をすくめてオッレルスは言う。
さっきのだってシルビアのこじれた感情の制御の一つだった。
「素直じゃない、か。……逆にあれより素直な女を私は見てみたいものだな」
「……そういうものか? なかなかひねくれたヤツだと思うが」
「ああ、あれはかなり素直だよ。それと……」
ブリュヒルドはゆっくりと起き上がる。
じっとオッレルスを見据えて言った。
「一番素直じゃないのはお前だ。……女性の告白を何だと思っている」
「やれやれ……ばれていたか」
「言ったのは私だ。気付かなかったとは言わせん」
ずいと顔を近づける。
オッレルスもそれを無視できなくなり、答えた。
「安価下2」
≪今日はここまで。皆さんお疲れさまでした≫
「正直な話、俺は君のことはよく知らない。だから、答えを出すことはできない。保留、ってことにしてくれると助る」
「保留、か……」
ブリュヒルドは笑った。
まるで予想をしていたように。
オッレルスはその様子に違和感を覚えた。
直後。
ブリュヒルドが体をくるりと回し、オッレルスをベッドへ倒し込んだ。
「……ケガはいいのか?」
「とっくに直ってるさ。……こういうタイプは初めてか?」
「正直なところ困惑している」
「フフ……安心しろ。私も初めてだ」
ブリュヒルドの服はいつものワンピースではなく、白のYシャツだった。
はだけたYシャツからは黒の下着が露出している。ズボンの類も履いていなかった。
「どうした? 抵抗一つくらいしてみろ。いやだ、と言えばどけるぞ? 私はあの魔神程バカではない」
ブリュヒルドの顔がギリギリまで近づいてくる。もし、受け入れれば、一瞬でオッレルスにむしゃぶりつくつもりだろう。
オッレルス目線でどうする? 安価↓2(行動or台詞安価)
安価は、↑
それにしてもセイリエとはいったいなんだったのか……
安価で進行だから仕方ないが話がおかしくなってきてるな
「はは、これは一本とられたな。参った参った、今回は俺の負けだ。やはり女性というのは一筋縄ではいかないようだな」
オッレルスはブリュヒルドの体をどかして、苦笑いをする。
ブリュヒルドも言った通り、それ以上どうこうすることはしない。
「さて……シルビアも気になる。そろそろ戻らせてもらおうか」」
「ああ……しかし世話のかかるパートナーだな。交代してもいいか?」
「悪いが今は考えられないな」
「……それもそうか」
だがブリュヒルドは笑う。
今は……か、と。
「頭は冷えたか?」
「……まあ、ね」
シルビアはベッドに寝転がり、天井を見つめていた。
彼女の目は静かに瞬きを繰り返しており、その様子にオッレルスもとりあえずは安心する。
「君は感情的になりすぎる」
「……無理だね。もう一生治んないと思う。それとも方法でもあるの?」
「安価下2」
「感情的になりそうになった時は手に胸を当てて大切なものや人の事を考えて深呼吸するんだ。大切なもの、俺なら子供たちとかな」
「……なるほど、ね」
シルビアは天井からオッレルスへ視線を移し、笑った。
「……そうだな。お前を信じるよ」
「そうか……俺を信じるか」
オッレルスはそっとシルビアの頭を撫でる。
シルビアが嬉しそうに笑った。ある意味ではこれで充分なのかもしれない。
「ふぅ……」
オッレルスは一人で公園のベンチに腰をかけた。
正直に言うと、疲れはたまっている。ただでさえ学園都市に居る訳にはいかないのだが、離れることもできない。
何気なく下を見ていると、目の前に影ができる。
「よォ……」
目の前に立っていたのは白い少年。一方通行。
彼は隣に腰をかけると、手にしていたコーヒーを啜る。
「……オマエのおかげで俺は何とか人間でいられた。まさか本当に彼女なンてできるとは思わなかったがなァ」
「そうか」
一方通行はオッレルスの顔を一瞥すると、
「オマエ、アイツに会う前の俺みてェな顔してるぞ。……どォかしたか」
「安価下2」
「なに、大したことではないよ」
オッレルスは誤魔化すように言った。
「それよりも君の方はうまくいったみたいだね。いい顔しているよ」
「そうかァ?」
そう言いながらも一方通行の唇はほころんでいる。
彼にとっては今までになかった感覚。これが幸せだとは本人すらも気づいていない。
「ああ。今の君は憑き物が落ちたような顔だ。……今なら実験再開もあるまい」
「あァ……オマエのためでもある。実験はもうやらねェ」
ただ、と一方通行は付け足した。
表情にわずかな影がさす。
「……ときどき思うンだ。何千もの命を奪った俺がこンな風にしてていいのかってなァ」
「安価↓2」
「いいんじゃないかな」
オッレルスはほほ笑み、答える。
「例えば君が幸福だろうと不幸であろうと、逝った彼女達への贖罪にも愚弄になるわけでもないのだから。……逆に言えば君は贖罪する事はできないという事でもあるがね」
「……、」
それは残酷なことなのかもしれない。それは耐えられないことなのかもしれない。
しかし、一方通行にとっては大事な存在ができた。これからも増えるはずだった犠牲を確実に減らしたのだ。それも自分の意思で。
たとえ彼がどれ程の悪人であってもその事実だけは揺るがない。
だが。
「それでも俺は、耐えられねェ。……手に入れるモンは手に入れた。だからこそ見えてきたモンがある。俺は……」
空き缶を握りつぶしゴミ箱に投げ捨てる。
一方通行はそこまで来た。そこまで人間性を取り戻した。居場所一つでここまで変わる。
「……だから、オマエも抱え込みすぎるな。オマエだって人間なンだ。無理することはねェ」
「安価↓2」
「ふふっ、ありがとう。その時はよろしく頼むよ」
「あァ。……俺なりに恩返しさせてもらう」
一方通行も笑う。元の容姿のせいか恐ろしさはあるが、一時のような毒気はなかった。どちらかというとビジュアル系とでも言うべきか。
しかしオッレルスも不安定なのは間違いない。下手すれば一方通行以上に。
「……久しぶりに落ち着いて話ができたよ。ありがとう」
「やめろ、気持ち悪ィ。……まァ、これでも感謝はしてるンだ」
一方通行はサローニャと約束があると言って、立ち去った。
よく続くものだとは思う。おそらく相性というヤツがいいのだろう。オッレルスは自分どころか相性のいい相手がいるのかさえ怪しいが。
「あの……」
入れ替わる形で御坂が隣に座った。
「すいません。見かけてしまったので、つい……」
「別に気にしないさ。それに知り合いに会って無視というのもすっきりしないだろう」
「は、はい……」
御坂は緊張しながら話す。まだ雰囲気に慣れていないのか。
だが、それでも御坂には見えた。
「オッレルスさん……少しやつれてませんか?」
「ん、ああ……そうかもな。最近疲れがね……」
「安価↓2」
≪今日はここまで。皆さんお疲れさまでした≫
「もし、悩みとか不安とかありましたら、私でよければ聞きますよ…?」
「……、」
確かに不安はぬぐえない。しかしこんな少女を巻き込んでいいのか。
御坂の目には迷いはない。
「純粋にオッレルスさんが心配で…私に言ったところで、なんの問題の解決にもならないかもしれないですけど…」
「いや、助かるさ。気休めなんかじゃない。そういうのは素直にうれしい」
思えば、この少女には他の女性にある刺々しさがない。ただ、ありのままにオッレルスを受け入れようとしている。この優しさは他にはない長所……オッレルスはそう感じた。
「君は優しいな。……言っちゃ悪いがあれだけの事があったんだ。多少の人間不信はあるだろう?」
「安価↓2」
原作では中々見れない敬語ミコッちゃん
大人の男性だから?
ここの御坂って人殺してんだよなあ
「確かに、ないと言えば嘘になりますけど…でも、オッレルスさんは一緒にいると安心するというか、暖かいものに守られているというか…そんな感じなんです」
御坂の言葉に迷いはない。ありのままの言葉だった。彼女にとってオッレルスは大きな存在である。
人を殺すという過ちを止めて、実験すらも止めた。
飄々とした雰囲気も御坂には未知のものだった。
だが、同時に。
それは子供の好奇心に過ぎない、ともとれる。
事実オッレルスは御坂の思い描いているような強い人物ではない。
「私は……君の思っている程強くはないさ。悩むし、苦悩する。……正直に言おう。女性というのは難しくてね。考えても考えてもわからない。……そうだな、君もまた一人の女性だ。君は女性とはどういうものだと思っている? 自分自身がどういう女性だと思っているかでも構わない」
「安価下2」
「そうですね…私自身まだ子供ですからあまり参考にはならないかもしれないんですけど、女性は支えてあげたり、包容的であるべきもの…と思います。私自身はちょっと感情的になりすぎてしまう事が多いので、まだ女性らしさはないかなーっと思いますね」
そう言って笑う御坂の表情は確かに幼さが残る。
ただオッレルスはだからこそ確実な安らぎというのを手にれられたのかもしれない。
「……君はいい女性になりそうだな」
「そう……ですかね。えへへ」
「ああ、間違いない。君は将来、必ずそういう風になるさ」
ベンチから立ち上がり、オッレルスはほほ笑んだ。
もしかすると、彼女なら自分を癒してくれるかもしれない。
疲れ果てたオッレルスの心の弱音だった。
「へえー。あの女の子って第三位だったんだ」
オッレルスは久しぶりにフレイヤと会っていた。
隣ではべレスがクッキー相手に悪戦苦闘している。どうやらボロボロと零れてしまうようだった。
フレイヤはそんなべレスの口元をふきながらも言葉を続ける。
「それで女性について聞いたと……」
「ああ。最近本気でわからなくてな。シルビアもオティヌスもブリュヒルドも……君にも理解できないところはなくもない」
「まあ、他人の思考なんて読めても理解できるか怪しいしねー」
「……君は女性とはどういうものだと思うんだ? やはりデータはある程度あると助かる」
「安価↓2」
「一緒に人生を過ごす相棒」
決められた答えを返すかのようにフレイヤは答えた。
「……、」
オッレルスは少し考える。
フレイヤがどういう意図で言ったのかわからないが、フレイヤとオッレルスの間では少なからず解釈の誤差がうまれている。
「それは……男性にとってか?」
「そうだよ。だって、男は普通は女と結婚するし……子供が男の子でも相棒にはなるでしょ?」
「確かに……そういう意味で男性は女性と共に過ごす時間は極めて長いと言えるな」
「そうそう。でもね……逆に言えば女性側も男性の影響受けてるんだよ? ねえべレス~」
「母さん苦しい……」
べレスを抱きしめ頬ずりするフレイヤを見て、やはり母親なんだと思う。
顔を見ることすらかなわなかったせいか、親子の愛情はより深い。依存ともとれるほどの執着度だった。
「ねえねえ、べレスは私のことどう思う?」
「……優しい」
「じゃあオッレルスは?」
酒でも入っているかのようなテンションで問いかける。勢いに任せたいのだろう。
オッレルスは答える。
「安価↓2」
「良い母親だよ。こういう親に子供はなつくのだろうな。やはり、女性というのはすべからく包容力が大事だからね。君にはその包容力が感じられるよ」
オッレルスの目が遠くなる。彼にとってはそれこそがすべてなのだろうか。というより、周りの女性があまりにも強烈すぎるため、そういう部分を求めているのだろうか。
「包容力ねえ……まあ、私は一応の母親だし、あるのかな?」
「母さんは……ある」
「おお、そうかそうか」
頭を撫でる。べレスも嬉しそうに目を閉じた。
その様子を眺めながらオッレルスは、
「自分でやったこととはいえ、やはり疲れることも辛いこともある。私も人間だな」
「んー……確かにシルビアもそういうタイプじゃないし。これはチャンスあり?」
「……何のチャンスだ?」
「私、一応は夫いないから隣あいてるよってこと」
「安価↓2」
≪今日はここまで。皆さんお疲れさまでした≫
「…考えとくよ」
オッレルスは渋るように答えた。
というよりは、ほとんどの相手がそういう兆候を見せているために判断がつきにくくなっているというのが本音だろう。
確かにフレイヤから女性らしさを感じるのは事実だがそのへんの感覚が麻痺している。
「むぅ……面白くないなあ。もうちょっといい返答できない?」
「そうだな。もう少し環境が落ち着いたら、そうしよう」
「うーん……距離感はいい感じなんだけどな」
「ああ、遠くなく近くなく。ほどほどだとは思うが……それを言ったら意味ないだろうに」
「あえて言うのは作戦。……オッレルスなら逆に効果的でしょ?」
自分にもよくわからない。
オッレルスが首を傾げると、フレイヤは静かに笑った。
帰り際、べレスが呼びとめた。
「どうした?}
「あ、あの。えと……」
珍しく何かを含むように黙り込むべレスにオッレルスは優しく言う。
「言いたいことがあるならはっきりと言った方がいい。後で後悔はしたくないだろう?」
「じゃ、じゃあ……オッレルスって誰が一番タイプなの?」
「まさかべレスからそんな質問がくるとはね」
べレスは恥ずかしいのか頬をわずかに赤く染める。体はそわそわとしているし、苦手な分野なのだろう。
何と言ってもまだ二歳。精神の成熟など御坂にすら遠く及ばない。
「そうだね……」
「……今までで会った人だと、助かる」
「安価↓2」
「シルビアとか君のお母さんとか芯の強い女性が好きかな」
その言葉を聞くとべレスの瞳がぎらついた。
それを慌てて、隠す。
「そ、そう……それじゃあ……」
「何だい?」
「お、おと……おと、」
べレスの口が何かを言おうとして、止まってしまう。
オッレルスも怪訝な顔になって、
「どうした?」
「あ、なんでもないや……ハハハ」
照れくさそうに走り去るべレスの行く先はやはりフレイヤのもと
だった。
フレイヤは愛する子の頭をなでながら、
「どうだった?」
「……やっぱり恥ずかしい」
べレスも母親の胸に顔をうずめながら答えた。
翌日。
オッレルスは削板にあった。
本人曰く、修行中らしい。
「それでどうした! 前よりも根性のねえ顔しやがって」
「……限界、かもな」
オッレルスの口からポツリと弱音がもれる。
その表情は力のないものだった。
「女性を甘く見ていた。……ここまでとはね。あの執念にぎらついた獣のような目。あれがどうしても、ね」
「……情けねえな」
「ああ、情けない。まさかこんな悩みがここまで大きくなるとは思えなかった。……君なら根性でどうにかするんだろ?だが誰もが君にはなれないんだ」
オッレルスの言葉の意味は削板にもよくわかった。
ただ、それでも削板は言う。
「安価下2」
「だが、諦めたらそこで終わりだ。男ならやれるとこまでやってみろ!」
削板の叫びと共にカラフルな爆発が彼の後で発生する。
やれるところ。それがどこかはオッレルスにはわからない。
「やれるところまで、か……」
「ああ、そうだ。俺も協力してやる。だから全力でぶつかるんだ!」
オッレルスが最後に全力を尽くしたのはいつだったのだろうか。五年前か十年前か、それよりもっと前か。もうわからない。
それで構わないのかもしれない。今やるべきことは何なのか理解する必要すらないのだ。
やりたいことをやれるだけやる。
オッレルスにとってはそれがベストな行いだ。今までのように折り合いをつけて、都合よくかわすのではもう駄目だから。
「ありがとう。君のおかげでようやく決心できた」
「へへ……後はお前の根性次第だ!」
削板は強く拳を前に突き出した。
オッレルスもその拳に自分の拳を合わせた。
何をするべきか。
オッレルスは考える。
周りの人間にとってではない。自分のために。たとえ自己中心的だと罵られても構わない。それは間違った行為ではないのだとオッレルスは確信する。
人を助けることも一種の自分勝手な行いなのだから。
「……、」
オッレルスは、決断した。
安価↓2 誰にどうするか自由安価
「……ハァ」
オッレルスは優しい。それだけに何をどうしようにも人の感情を考えてしまう。
だからこそ、彼は滅茶苦茶な策に打って出た。いうなれば淘汰に任せるようなものか。
シルビア、フレイヤ、御坂、ブリュヒルド……はてにはオティヌスすらもいる。
互いをけん制しあう彼女らを制して、オッレルスは口を開いた。
「私には一人を選ぶことはできなかった。……これから言う事は無謀であり、君たちの感情を完全にないがしろなものにしている。そしてそれを覚悟した上で言っている、と思ってほしい」
五人は一様に固唾をのんだ。
オッレルスとしては誰かが暴走するのだけは避けたい。
「……全員を選ぶ。酷い言い方をすれば自分一人の欲の為に君たちを自分のモノにすると思ってくれ。そして、幻滅してここから去るのも構わない。私を殺しにかかるのもいいだろう。ただし……今後、争うのは絶対にダメだ。君たちはなまじ強いだけに、周りも傷つける。それだけは、ダメだ……」
オッレルスにとっての本心。最後まで言いきれた、と安心する。
しかし本題はここからだ。彼女達の反応がどうなるか。
安価↓2 シルビア
安価↓3 フレイヤ
安価↓4 ブリュヒルド
安価↓5 御坂
安価↓6 オティヌス
行動or台詞安価
「お前がそう言うならまあわかった」
ギラリと他四人を睨みつけながらもシルビアは言った。
「べレスもいるからね?」
フレイヤはにこやかに答える。表情に影が濃く感じるのはオッレルスが疲れているからだろうか。
「わかった(どうせ私が一番だしな)」
「えと……オッレルスさんて、宗教の大丈夫でしょうかね?」
ブリュヒルドが勘違いしているのは見え見えだが、オッレルスはスルーした。
御坂には「問題無い」とだけ言うと、御坂も笑った。
「全く……これだから魔神のなり損ないなんだよ」
オティヌスはオッレルスの膝をカクリとおとさせると、「まあいいや」と抱きつく。
これが正解なのかオッレルスにはわからなかった。
「まさかアンタがあんな思い切ったことするなんてね」
全てが終わり部屋に戻った後、シルビアが言った。
確かに、オッレルスも自分がそんなことをした理由が理解できなくもない。危険も多かった。
「……んで? 本心はどうなんだ? これが最高の結末ってわけでもないだろう? ホントはどうしたかったんだ?」
「安価↓2」
「聞くのは野暮っていうやつさ。まあ、俺的には穏便なほうですませてよかったよ……」
「ふーん……私としては大誤算だけどね」
シルビアは肩をすくめた。そして、オッレルスが座っているベッドの横に腰をかける。
シルビアは柔らかく笑う。
「本当は私が一人じめして……ってのが全員の共通見解だったはずだ。まあ、第三位は別としてね。おかげで仲良く分けあいましょう、なんていう下らない結果だ」
つまりは妥協案といったところだ。
いや、オティヌスのあたりは逆に距離が狭まる結果になるのだから僥倖なのかもしれない。
「でも……覚悟してるよな?」
シルビアはオティヌスをベッドに押し倒す。
きっかけを掴んだことでよりやりやすくなったのだろうか。
「下手すれば毎日……だぞ? 魔神あたりは加減なんか知らないだろうな。アンタに耐えられるか疑問だよ」
「安価↓2」
「人の限界をたやすく超えさせるのが魔術だろう? 大丈夫、たぶん、たぶん……」
「アンタ絶対したことないだろ」
オッレルスは事実、そういう経験はない。それゆえに不安なのだが……。
シルビアは一切意に介さず、ベッドに寝転がる。
「じゃあ……今のうちに試してみなよ」
「いや……だがな」
「いいじゃない。一番長い付き合いの私が初めてくらい大丈夫だって」
「……、」
やはり決心が鈍る。正直、どうすればいいのかわからない。
シルビアはオッレルスの腕を掴む。
倒されたオッレルスの目の前にはシルビアの顔が現れる。
息がかかる程の距離で彼女は言った。
「なあ、どうなんだよ?」
「安価↓2」
≪今日はここまで。皆さんお疲れ様でした≫
「私だって人並みに性欲はあるさ」
三大欲望の一つというだけあって、それは絶対にオッレルスの中に存在する。しかし、そういうチャンスはあってもオッレルスのどこかで恐怖はあった。
そこまでいけば、もう後戻りはできない。助けるだけ助けて後は流れに任せていた今までとは全く違うことになってしまう。
「……それをするかどうかは別にして、な」
「あー……もう、うっとおしいな!」
シルビアが自分の体の上にオッレルスの体を持ってくる。
彼女はオッレルスの首に手を回すと、言った。
「襲いたいなら襲えよ。……ったく、一回くらい欲望のままってのを味わってもいいと思うぞ?」
「……、」
ニヤニヤとするシルビアを見つめ。オッレルスは――――
オッレルス目線でどうする? 安価↓2(行動or台詞安価)
エロは無理だったらキンクリでも許せる
でも、見たいな~という気持ちはある
>>684
書くには書いたんですが、初めてで全然書けねえ……めっちゃ下手になっちゃいました
それでは開始。
オッレルスはシルビアの腹に手を這わせ、確かめるように胸へと持っていく。
シルビアの目が細まる。首に回していた手をオッレルスの頬まで持ってくると、耳元で囁いた。
「キスしたいな……」
「……わかった」
唇を合わせる。
最初は探るような浅く短いものだったが、徐々に長く深いものへと変わっていく。
しばらくの間、二人の口の間で響く水音だけが部屋に流れた。
「……いつまでするのさ」
「すまないな、正直夢中になってた」
「……とかいいつつ、ずっと胸揉んでるくせに」
軽く言葉を交わしつつ、オッレルスの顔が下へ下へと下がっていく。
そしてシルビアの胸で止まると、一気に吸い上げた。
「んん、ぁああ……」
体が敏感に反応し、思考が蒸発する。しかしシルビアはオッレルスの頭を抑えて離さない。
顔をうずめると、わずかに甘い香りがした。少し汗っぽいのにそう感じるのは、シルビアが興奮状態な証拠か。
すっとシルビアの両腕から抜けたオッレルスの手が、シルビアの入口に触れる。
「や……」
「大丈夫だ、できる限りはな」
すでに息は両方とも荒らいでいる。
ぐちゅ、と水音をたてて奥へとオッレルスの指が侵入する。
「あ、気持ちい――んん!」
オッレルスが指を動かす度にシルビアは喘ぎ、腰を動かしていく。
シルビアの指がオッレルスの胸をつたう。
彼女の目が細まり、唇が歪んだ。
そこでオッレルスは記憶は途切れた。
日が明ける。
オッレルスは重苦しい倦怠感とともに目を覚ました。
隣ではシルビアが下着姿のまま、オッレルスを見つめている。
「……はぁ」
「ため息なんてつくなよ」
「イヤ……それはいいんだが、途中から記憶が曖昧でね」
「安心しろ。わたしもだ」
そう言ってシルビアはクスリと笑う。
その表情は昨日とはまた違うものだった。
「で、どうだったんだ? 初めての感想ってやつは」
「安価下2」
「ノーコメントだ」
「ええー。私女だから興味あったのにー」
「……お前こそどうなんだ」
「アンタが言うまで秘密」
いつものエプロンとゴーグル姿へと着替えていく。
オッレルスもベッドから起き上がり、服へと袖を通す。
最後にシルビアは笑って言った。
「……今日から毎日コレだな。まあ死ぬなよ」
「……、」
オッレルスの背中を嫌な汗がつたった。
「どうした? そう怯えるな。今は何もせんさ」
オティヌス。
ある意味では最大の地雷と言えるだろう。
彼女は隻眼をぎらつかせて言う。
「シルビアと何があった」
「……、」
「答えない、ということはそのままの意味でとらせてもらう。本人からもノーコメントということは聞いてるしな。というか気になる……その、な?」
「安価↓2」
「マッサージしてやった。肩と腰が疲れていたようだったからな」
「……ふーん」
オティヌスは目を軽い調子でソファから立ち上がるとオッレルスを見下ろす。
ばれる、ばれる。
オッレルスの中で焦りが広がる。特にオッレルス関連でのオティヌスの勘は鋭いレベルを超えている。
「なら今度、私もお願いしようか。マッサージ」
オッレルスの肩をポンと叩き去っていく。
諦めるようにオッレルスは天井を見つめた。
「……よォ」
「一方通行、か」
別の意味でやつれたオッレルスに白い少年は声をかける。
またサローニャはいない。彼なりのルールでもあるのだろうか。
「どうした?」
「オマエ……誰とやった?」
「ストレートすぎるな……今の私なら君を全力でぶっ飛ばすぞ?」
「いや……そォいう雰囲気にはなるンだがよォ……やっぱ俺は一万近い人間を殺してきた。オマエは気にするなって言ったが、まァそンなモンは気にしねェってのは俺の勝手だ。だが……アイツを考えると」
「話せず、触れれず……か」
一方通行が恐れるのは彼女からの拒絶。究極的に一方通行の居場所は彼女の元にしかない。
オッレルスにもわからなくはない。しかも、彼がそうなって暴走するのは面倒だ。抑えられるだけに面倒なのだ。
「安価↓2」
「私も、手を伸ばさない事が誠実さだと、言葉をかけない事が優しさだと思ってた事もあった」
ゆっくりと、子供に言って聞かせるように口を開く。
一方通行もまた、静かにそれを見つめる。
「あれこれ理由をつけ、何もしない事が正しいというのは、実はあまりないものだよ」
身をもってそれを実感した。
その選択は最悪ではないが、決して前に進めない。
今の選択だって最善ではないかもしれない。だが、確実に前に進んだ。
「私は君たちがどういう間柄かはわからないからあまりアドバイスできないが……君自身が後悔しない選択をする事を祈るよ」
「そォか……」
一方通行だってそれはわかる。
でも、今までの選択は流されてきた。
だからこそ、例えここで全て終わるとしても最後くらいは。
自分自身で、と。
「話?」
オッレルスと別れ、一方通行は家にサローニャを呼んだ。
もしかすると、拒絶されるかもしれない。
オッレルスもまた、その保険としてアドレスと電話番号を教えた。暴走を止める為のものだった。
一方通行は重々しく口を開いた。
「……俺は過去に一万近い殺人を行った。絶対能力者になる為だけに、それをやったンだ。俺の両手は汚れきってる。……オマエを今ここで殺すのも簡単だ。もし、今後……」
言葉に詰まる。その先を言えば……いや、もう後戻りはできないのか。
「俺と……一緒にいてもいいなら――――」
その先は本当に言えなかった。
サローニャも、おおよその見当はつく。そういう部分も見てきた。
その上で、彼女は答える。
「安価↓2」
≪今日はここまで。皆さんお疲れ様でした≫
「……その言葉をずっと待ってた」
サローニャは静かに言った。
青く綺麗な瞳が潤いを帯びていく。
「どんなあなただっととしても私は一方通行ちゃんを支えるよ。私がもし一方通行ちゃんを嫌った所で帰ってこないものは帰ってこないんだし、これからを大切にしながら償っていこうね」
オッレルスと言ってることは真逆だ。重さで言えばオッレルスの方が彼女より勝っているのだろう。
ただ、彼の言葉よりも目の前の少女の言葉の方が一方通行には大切なものだった。
オッレルスは確かに償えない、と言った。しかしサローニャは償えると言った。
それがすべてだ。
「いいのか……俺は、俺は!」
「いいよ。もう、怖がらなくて。一人で抱え込まなくても。私がいるから」
サローニャが一方通行の隣へ座る。
柔らかく甘い匂いが一方通行の鼻を刺激した。
「だから……ずっと一緒にいよう?」
「……あァ、何があってもオマエを守り抜いてやる」
こんなものは幻想かもしれない。いつか壊れてしまう脆いものかもしれない。
それでも構わない。彼には守りぬける自信があった。
根拠なんか必要ない。
「大好き」
「好きだ」
簡単な言葉をかわし、二人は口づけをかわした。
オッレルスには最後に一つ問題があった。
御坂美琴である。
学園都市に住む彼女を外には連れだせない。第三位の立場を考えればなおさらだ。
「私達はいずれここを出ていく。……君はどうしたい?」
自分を選んでくれた彼女の希望はできるだけ叶えたい。
彼女もそれはわかる。だが無理をさせてもいいのか。
悩みながらも御坂は言った。
「安価↓2」
あるぇー?原作美琴より大人。原作ならムリヤリでも付いていくのに……
原作のほうが重い女
女は万事面倒臭い生き物だ。それを我慢し、どこまでも付き合ってやるのが男の甲斐性だよHAHAHAHA!
ってうちのダディが昔言っていたよ
「大人になるまではカゴの中の鳥でいるつもりです」
御坂は自嘲するように笑った。
しかし、その目には確かな光がある。
「でも、大人になれば巣立てるからその時にあなたの所に必ず行きますっ!」
少女らしく純粋に、思った事を伝える。
御坂にはわかっていた。それだけでオッレルスは全てを理解してくれると。
きっとこれだった。御坂がオッレルスを好きになった理由はこれだったのだ。
「……ああ、待っている。その時は私も迎えにいくよ」
「はい!」
全ては解決した。
後は学園都市を去り、御坂が来るのを待つ。それだけだ。
だが。
「……まだお前がいたな」
アレイスター=クロウリー。
彼だけが学園都市の中でオッレルスへの圧力をかけえる。
「君のおかげで『プラン』が本当にめちゃくちゃだ。……まさか一方通行にまで手を出すとはな」
ふと、オッレルスは思った。
この人間は何なのか。
男なのか女なのか。子供か老人か。聖人か囚人か。
「お前の『プラン』とはなんだ? お前はなにを目指し、どこに向かっている?」
答えないかもしれない。殺しにくるかもしれない。
オッレルスは注意深く、アレイスターの口を見つめた。
「安価下2」
「それは、君が一番わかっているだろう?」
哀しそうに笑うアレイスターを見て、全てを悟った。
少し前まで、自分があんな顔をしていたと思うとなおさらこみあげるものがある。
「……誰だ」
「そんな事は君に関係ない。……君は幸せになった、勝ち取れた。それで全て解決さ」
違う。
オッレルスではなくアレイスターが救われない。
力のあるアレイスターの影響力は高い。
目の前にいる人間だけではない。これから傷つく誰かのためにもオッレルスは口を開く。
「答えろ。誰だ」
「安価↓2」
「……リリス、だ」
重々しくアレイスターは言った。
オッレルスもまた、目を細める。
まさかとは思う。しかしありえない話ではない。
歴史上、存在しないとすら思われていた存在がある。
すなわち、アレイスターの子供。
「まさか……実在したのか!?」
「私もまた人間だ。家族を持ち、平和と安定を望んだこともあった」
だが、とアレイスターは言葉を続ける。
「全ては壊れた。妻が憑かれたあの時に、私は代償として死に行く妻をただ見て、嘆くことしかできなかった。……思えばリリス……娘が壊れたのはあの時からだ。あの子は未だに、私への愛憎の狭間で生きている。私は……殺さなければならない。そのために全てを動かしていた」
アレイスターの目からは不思議と怒りは見えない。やはり、達観して全てを見通せるだけのことはあるのか。無意味な行動は決してしようとしなかった。
しかし……。
「娘は死んだ、と伝承にはある……あれは偽物なのか」
「半分正解だ。娘の肉体は消失している。だが、精神はまだ確かに生きている。確かに、な」
「どこにいる……まさかとは思うが、誰かが化けている可能性はないな?」
「安価↓2」
「『妹達』の一人に憑依した」
「……確かなよりどころを持てば、容姿の作り替えも可能。狙い通りということか」
オッレルスは何でもないように言って、振り向く。
アレイスターは理解しつつも、問いかけた。
「どこに行く?」
「魔力があふれ出ている。……隠れる気もないだろう。あるべきものをあるべき場所へ帰すだけさ」
アレイスターは何も言わずに消えた。
ここで傍観することが最善と判断したのか。
とにかくオッレルスの目の前には見た目は御坂によく似た少女だった。
「お父さんはどこ? お母さんもいない。捜さないと」
少女は無垢なまでに首を傾げる。
善悪の感情すらないのか。
「……、」
できることなら説得で終わらせたい。今度ばかりは加減できる相手ではない。
オッレルスはゆっくりと言った。
「安価↓2」
「ついてくるがいい。お姉さんの居場所は知っている」
「お姉さん……? 私、お姉さんがいるの?」
やはり、憑依されている。御坂のクローンではないだろう。
そもそもリリスが狙って憑依したとは思えない。
だが、アレイスターの娘だけあって魔力はかなりのものだ。
「お姉さん……でもいたらいいなあ、お姉さん。でも妹もお兄ちゃんも弟も欲しいな。……」
リリスが周りをオロオロと見回す。
そして初めて気付いたようにオッレルスに言った。
「ねえおじさん。お父さんを知らない?」
「安価↓2」
今日はここまでにします。
安価は↓2
そろそろ終わりますね。垣根くんも準備します。
それでは開始
「父さんは今ビーカーの中で逆さになって半笑いを浮かべてるよ」
オッレルスはため息をついて、言葉を続ける。
「嘘だと思うだろう? これマジなんだよ…………」
長い間だった。
リリスは何かを確かめるように首をかしげて、うなずく。
「へー、お父さんはそんなことしてたんだ。じゃあもうすぐ会えるね!」
リリスはかりそめの容姿を幼くはしゃがせ、飛び回る。
今頃、あの男は半笑いではなく苦笑いでも浮かべているのだろうか。
「行こう。準備はできている」
窓のないビル。
魔術と科学を動かし、君臨する男が坐している玉座。
そして、哀れな男の逃げ場所。
「お父さんだ!」
容姿のすり替えは意味のないものだった。さすがはアレイスターの娘だ。
透明な壁に張り付き、彼女は言った。
「お父さん! 何でそんなところにいるの? リリスが来たよ」
「安価下2」
≪安価下でいきます≫
「おかえり」
アレイスターは目を細め言った。
その瞳は確かに、娘に会えたことを喜んでいるようだった。
だが。
「そして、さよならだ」
リリスの体が唐突に引き裂かれた。
ほぼ八つ裂きに近い状態で、リリスは窓のないビルの奥まで吹き飛ばされる。
「アレイスター!」
「黙れ……これは私とリリスの問題だ。君には何もせん。それに……これが成功すれば『プラン』は終わりをつげる!」
世界を変えるであろう。知っている者ならそう考えてきたアレイスターの計画。その正体はたった一人の娘を殺すためのものだった。
アレイスターは目を大きく開き、感情をむき出しにして言う。
「妻がエイワスの憑依で死んだ時……全て終わるはずだった。リリスを殺し、私も死ぬことでな。だが……娘はあの時に力を手に入れ、私もあの医者に救われてしまった……。だからこそ私は全てを終わらせなければならない。このビルにはいい試験体もいたことだしな」
煙の奥から現れたリリスは傷一つついていない。というより、再生している。
リリスの両目がぎょろぎょろと動いた。
「お父さん……お父さん……」
「アレイスター! やめるべきだ!」
「娘も私も本来なら死んでいるべき人間だ。……それにここで私が死ねば少なからず、世界は平和になる」
そうかもしれない。
アレイスターが生きているというだけで魔術サイドと科学サイドで戦争が始まるからだ。
だが、それでいいのか。そんな終わらせかたでいいのか。
オッレルスは、言った。
「安価下2」
「させるかっ! 父娘で心中なんて絶対許さない」
拳に自然と力がこもる。
このままで終わらせてはいけない。オッレルスはそう判断した。
「…この際はっきり言っておこう。私は、ものすごいエゴイストだ。少なくとも自分の目の前で起こる悲劇は全てハッピーエンドに変えなければ気がすまない"子供"なんだ。だから無関係であろうがなんだろうが関係なく、止めさせてもらう!」
窓の無いビルに無数の説明できない力が吹き荒れる。
アレイスターを守り、閉じ込めるビーカーに亀裂が入っていく。
確実に、オッレルスの限界が引き上げられている。
だが、それでも。
「邪魔だ」
「おじさん、邪魔」
届かない。
そもそも存在している次元が違うのか。人を殺す、という行為に対する認識が違うのか。
なにかが違うことは決定的だった。
(どうする……こちらの攻撃は届くが、アレイスターはビーカーによる防護術式。リリスに関しては魂そのものでなければ意味がない! ――――どうすれば)
「汝欲するところを為せ、それが汝の法とならん、か」
まだ、役者がそろっていない。そのことにオッレルスは気付く。
青白い、プラチナの輝きを放つ天使。エイワス。アレイスターの妻を母体として降り立った世界の外側。
「苦戦しているようだな。手を貸そうか?」
「何故……このタイミングだ」
「何て事はない。興味と価値を感じた。それだけだ。しかし私の存在で君もまた希望が残る。……どうして欲しい? 君の選択に従おう」
おそらく、今ここで何を言ってもエイワスは従うだろう。エイワスにとってはそれがやりたい事なのだから。
利用するしかない。単独で二人を抑えるのは不可能に近かった。
「安価↓2」
≪安価↓で統一し忘れた……すいません≫
「…仕方ない。この解決法は邪道であるだろうが…」
オッレルスとしても第一希望ではない。しかし、二人が助かるならそれでいい。
全ては、エイワスにゆだねられる。
「ならば、始めようか」
プラチナの翼が父娘の間に割って入る。
アレイスターが目を剥く。その目はこれまででもっとも強烈な目だった。
「エイワス……貴様、さえいなければぁぁああああ!!」
「ふむ。確かに私にも非はあるのかもしれん……だが、そんなものはどうでもいい。最後に始めようじゃないか。祝宴を……な」
逆恨みをエイワスは受け止めた。
その表情は明らかに女性のもの。あるいはそれを演じているのか。アレイスターのために。
オッレルスがそれを考える暇はなかった。
「お母さん……?」
「終わり、だ」
エイワスはほんの一瞬だけ全力をだした。
全てが青に染まり。
そして。
「……何とか、生きてるか」
オッレルスは茫然と空を見つめている。
全てが終わった。学園都市にそびえていた窓の無いビルは世界から存在を消した。
エイワスの手によって。
「さて……私はそろそろ消えるが」
エイワスはわずかにほほ笑んだ。
まるで、オッレルスを見透かすように。
「何か聞きたいことがあるのではないか?」
「……君はアレイスターを愛していたのか? いや、そもそも君はエイワスなのか? 君はアレイスターの――――」
妻じゃないのか。
エイワスは悠然と答える。
「安価↓」
≪今日はここまで。皆さんお疲れさまでした≫
「ああ誰よりもアレイスターを愛した自信のある最愛の妻だったと自負しているよ。彼がそれに気付いてくれたかはわからないがね」
エイワスは自嘲するように笑った。
オッレルスもそれを問い詰めることはしなかった。
だが、このままでは彼女は永遠にエイワスを演じ続けなければならない。
「報われないな」
「……私はどっちが本物かなどどうでもいいと思っている。どうせ、私が彼を愛しているという事実だけは変わらないのだから」
今度こそエイワスが消える。
こんな、何一つ悪意がない悲劇もあるのか。
オッレルスは膝を抱え、顔を伏せた。
負けた。
最初に思い浮かぶのはその言葉だけだ。
エイワス。あれはもしかすると、という気持ちはある。
でもそれを認めるわけにはいかない。認めれば、自分から逃げているような気がしたから。
どちらにしろ自分はもう長くない。
「お父さん……」
隣には愛する娘もいる。死に際としては最高じゃないか。
少なくとも、世界最悪と言われる自分には。
「それでいいのかい?」
だが、それを許さない人間が一人だけいた。
『冥土返し』。
医者として彼は言う。
「満足か。何一つ娘にしないまま、死んで満足か。……君はまだ助かる。娘も、だ。君のするべきことは死ぬことじゃないはずだ」
「安価↓2」
アレイスターが長引くかも?
それでは開始
「ではなんだというんだ? ヘヴンキャンセラー。私には何かもう何かする気力は残っていないよ」
アレイスターは力なく答える。
それに、と言葉を続ける彼を医者は止めなかった。
「何百年も生きてシングルファーザーになるとは飛んだ笑い話じゃないか。母を見殺しにした私はこの子の父にはなれない……」
「それがどうした」
力強く否定する。
押し付けだろうがなんだろうが、医者は自分の信念を言葉に出していく。
「確かに君にこの子の父親になる権利はない。しかし、この子が君を父と呼ぶ権利はある。君にそれを否定することなどできるのかね?」
「……都合のいい話だ」
「人なんてそんなものだ。私が人の心を無視して命だけを確実に守っているのも所詮はそんなものだ」
だが、それがもし許されるならば……。
「お父さん……」
リリスがアレイスターにしがみつく。その姿は父を愛する美しい娘の姿だった。
アレイスターは娘の頭をなでながら、目をゆっくりと閉じる。
「さあ、どうするね?」
「安価下2」
「リリス、何か食べたいものはあるかい? これからずっとお父さんだけだしかいないが私は君と一緒にいる事を約束さえてくれ。お母さんの分まで二人で生きよう」
強く抱きしめた。二度と放さないように、失わないように。
もう、離れたりはしない。逃げたりもしない。
死ぬまで、限りある命でただ娘を愛することを誓う。
「さて……もう行こうか。君たちはこのままだと後一日もつかどうかだからな」
「ああ……よろしく頼む」
統括理事会の解散。
世界を揺るがすには充分過ぎる出来事だった。
魔術サイド。とくにローマ正教は学園都市に対して強気な姿勢を見せ始める。
そんな中、イギリス清教のトップは全く動かなかった。
いや、逆だ。
ローラ=スチュアートは学園都市へと向かう準備を進めていた。
黒い笑みを浮かべながら。
「最大主教。……わざわざあなたが行かなくとも」
「ステイル、これは私でなければ務まらないことにつき……心配には足らないわ」
赤髪の神父が怪訝な表情をとる。
これを理解できるものなどこの世界に何人いるのか。
(アレイスター……アナタは私のモノ。あの時から永遠に)
一方通行。サローニャ=A=イリヴィカ。
二人はかつてあったビルを思い浮かべながら、空を見ていた。
そこにあの不思議な威圧感を誇るビルはない。
「……サローニャ。行くぞ」
「お、ついに一方ちゃんの本気? 楽しみだなあ」
一方通行は何気なくサローニャの手を掴む。温かく柔らかい感触だった。
サローニャも一瞬驚くが、それだけだ。笑って、握り返した。
「……サローニャ。もしこれから俺が生き残れるかわからないって言ったらどォする」
真意はわからない。
だが、何か覚悟を決めた。それだけは確かに伝わった。
「安価↓2」
「『行かないで』って抱きしめて泣いちゃおっかな?」
「……、」
割と真剣な表情をする一方通行にサローニャは肩をすくめる。
「うそうそ。絶対生きて帰ってこれるようおまじないしてあげるよ。だから、絶対帰ってきてね?」
顔を近づけようとして思い出したように遠ざかる。
その口元にはわずかな笑みがあった。
「日本だと約束する時指切りげんまんをするんだよね? ほら約束」
小指を出すのに躊躇して、サローニャに促される。
強く結んだ小指を見つめて、一方通行は思う。
よかった、と。
小指を放して今度は自分から口をつける。
「……必ず、戻る」
「うん、待ってる」
一方通行は学園都市を駆け抜ける。
愛する者ともう一度、会うために。
「アレイスター! やはり生きていたりね」
「……イギリス清教のトップが私に何の用だ」
「いじらしい……個人的なものだとわかっていたるくせに」
ローラは大人っぽく笑って見せる。
頭から爪の先まで、アレイスターを手に入れるために存在しているようだった。
しかし、リリスが叫んだ。
「この人殺し! 私は知ってるぞ! お前が何をしたか!!」
リリスは表情を怒りにそめ、拳を握る。
すでに見た目は『妹達』のものではない。アレイスターと同じく、銀髪のストレートヘアだった。
ローラは首を傾げてとぼける。
「何のことたるかしら? リリス、私は貴方も……」
「やめろ」
アレイスターが言葉を切った。
表情にはわずかな曇りが見える。
「何だ。リリスは何を知っている……答えろ、ローラ=スチュアート」
「安価↓2」
≪安価下にします≫
「教えてあげたら、身も心もわたしのモノになってくれたるの? そんな『親の仇』を見るような目はやめてほしいわん?」
挑発するようにローラは言った。
アレイスターにはそれですべてが理解できる。できてしまった。
これなら知らない方がよかったかもしれないとさえ思う。
だが、知ってしまった。もう戻れない。
「そうか……君が私の妻を戻れないようにしたのか」
「全てはアナタのためなのよん♪ だってあの女じゃアナタにはついていけないでしょう?」
それに、とローラは付け足す。
「元々、愛してもいなかった女なんかいらないと思いたるわよ?」
「安価↓2」
「愛していなかった、それは正しいかもしれんな」
アレイスターが認めると、ローラの笑みが深まる。
だが、アレイスターはそこで終わらせない。
「いつも一緒にいてそれが日常になりそれが当たり前だったから互いに忘れていたのだろう。互いに理解していなかったのだな。最後まで……」
今さら気付く自分が憎かった。
もっと早く気付けていれば違う結末があったはずだ。
戻ることはできない。だが、何かを変えるためにやり直すことはできるはずだ。
強い決心と共に、彼は言う。
「私達に理解できないことを女狐如きに理解して欲しいなんて思わないさ。目の前から消えろ、さもなくばこの子の父として君を倒すことになる」
「……アナタを傷つけるなんて、心苦しいの」
「安心しろ。お前は私とリリスに触れることすらかなわない」
「そう……」
ローラが目を閉じ、開く。
直後だった。
父娘の力と女狐の強大な魔力が正面から激突した。
「……動いたのか」
オッレルス達はすでに異変を察知していた。
御坂だけは飲み込めていないが、何となく状況は理解している。
窓の無いビル消失。事態は一刻を争う。
オティヌスが言った。
「……また一人で行く気か?」
「君はともかく他は明らかに役不足だろう」
「それは、やってみないとわからんだろう」
ブリュヒルドがゆっくりと立ち上がり、言った。
シルビアも面倒くさそうに、しかし喜びを表情にしながらソファから立ち上がる。
「やれやれ……行くしかねえだろう?」
「あ、あの……私はオッレルスさんに従います。よくわからないし」
「じゃあべレスはお留守番。できる?」
「……僕も戦う」
我がままで勝手な女達だった。御坂だけが従う、と言っている。
オッレルスはため息をつきながら言う。
「安価↓2」
≪はい安価下ですね!≫
「わかった、この際だ。全員で行こう」
今まで自分で背負いこみ、失敗した。
ならば信じるべきだ。自分が選んだ選択と目の前の女を。
たとえどれだけエゴだと罵られても構わない。
そして選んでもらった女性は強く思う。
やっとか、と。
アレイスターは一歩も動かない。いや、動けない。
「お父さん……」
リリスの首をローラがしっかりと掴んでいた。
おそらくアレイスターが最速の攻撃をぶつけるよりも速くリリスを殺せるだろう。
この女ならやりかねない。
アレイスターの頬を汗がつたった。
「リリス……これからは私がお母さんになるたるのよ?」
「放せ! お前にそんな資格はない!」
「あらら……これはしつけが必要なるわね」
首を掴む力を強める。
リリスの表情が苦悶を浮かべるのを見て、アレイスターはたまらず言った。
「……何をすればいい」
「簡単よ。死ぬまで私だけを愛しなさい。リリスはいても構わない。ただし一番は常に私でありたること。これだけなるわよ?」
「安価↓2」
「ならば、一生君を愛し抜こう」
「お父さん!」
全ては娘のため。
そんなことはローラにもわかっている。だが、それで構わなかった。洗脳など後でいくらでもできるからだ。
アレイスターは負けた。あの時のように。
しかし、今回はそこで終わらない。
「アレイスター」
後ろから声が響く。
また、あの男か。そう思った。
でもそこに留まらなかった。五人、女性がいる。
「やれやれ……いい加減時代の移り変わりを感じろ、年寄りのもうろくは見るに堪えん」
隻眼の少女が呆れたように言う。
他の四人も珍しく意見を一致させるような反応を見せていた。
「これってどういう状況ですか?」
「さあな……美琴、あの子は君に任せる。やってくれるか?」
「は、はい!」
御坂が嬉しそうに答える。
こんな少女まで使うのか、と糾弾する人は確実にいるだろう。
それでいい。
彼女達は間違いなくこの時を待っていたのだから。
たった一人の男の背中を守る瞬間を。
「アレイスター……なぜ諦めた。なぜ誰かを頼らない。お前には私がいただろう。なぜ、望まぬ結末を選んだ」
「安価↓2」
今日はここまで安価は下
安価は常識と節度をもってお願いします
それでは開始
「すまないが、君ではイマイチ頼りにならないほど強い相手だ。巻き込んだら悪いだろう? それに、私の道は私が決める」
「……、」
確かにオッレルスにアレイスターの行動を止める理由は一つもない。
だが、それでは来た意味がない。
黒く笑う女狐も、最悪の魔術師とその娘も関係ないのだ。
これは自分勝手にやっていることだ。だからアレイスターの意思なんて関係なかった。
「私は戦うぞ。今回は背中を預けられる人間がいる。それだけで充分だ。戦える」
「フフフ……まさか、勝てると思いたるの?」
「いや、無理かもしれんな。よくて三割だろう。……だが、三割もあれば充分だ!」
無数の力がローラを襲う。
しかし、イギリス清教のトップである彼女は顔色一つ変えなかった。
軽く右手を横に振る。それだけで見えない壁がオッレルスの攻撃を止める。
「勝てる確率……? そんなもの〇であるにつきよ?」
「……どォいうことだ」
一方通行は道路の真ん中にたたずんでいた。
周りにはあり得ない程、人がいない。昼間の活気はどこにも感じられなかった。
「誰だ」
短く、刺すように言った。
物陰からゆっくりと人影が現れる。
一方通行を妨害した人物 安価下2(禁書キャラ、一名)
目の前に現れたのは黒髪の先端を結んだ少女だった。
レッサー。魔術結社『新たなる光』のメンバー。
もちろんそれを一方通行は知らない。
「うひゃー……写真で見るより五倍は怖い見た目ですね。ま、仕事なんで割り切りますけど」
少女は呑気そうに言った。
第一位と戦うという意味を正しく認識できてないのか。それとも相当の自信があるのか。
とにかく雑魚にかけている時間はない。
「何の用だ。俺はガキのじゃれあいに付き合ってられるほど暇じゃねェぞ」
「まーまー……そう気張らないで下さいよ。私だって好きで命かけてる訳じゃないんですから」
サローニャに近い部分を感じる。
わずかに感じる圧迫感がそれを証明していた。
「オマエ……魔術師とかいうヤツか」
「へー、そこまで知ってるんですか。あのロシア成教が教えちゃいましたか……」
「……先にはっきりさせておこォか。狙いは俺とアイツか? ……それとも両方。他にあるのか?」
「安価↓2」
「あなたを倒せないのは知ってますいますが足止めくらいは出来ますからね。サローニャのことでしたら奪いには行きませんよ。どうせ行けませんしね!」
少女の体が浮いた。それもビル三階分には相当している。
しかし一方通行は動かない。
レッサーにも仮説はあった。
一方通行の反射は全てを反射している訳ではないという仮説である。もし全て反射しているなら、酸素や光などの生きるために必要なものまで反射してしまう。だから何らかの穴があるはず。
その穴が魔術。
だが。
学園都市第一位はその上を行く。
レッサーが『鋼の手袋』を使う寸前。その本体が崩壊する。
「な……!」
「アホか。俺には魔術師の女がいるンだぞ。ンなモン、とっくに解析済みだ」
本当に一瞬だった。
レッサーなど遊び相手にもならない程、一方通行は成長していた。
そして、一方通行はゆっくりと少女に手を差し伸べる。
オッレルスは茫然と立ちつくす。
目の前には五人の女性が倒れている。
魔術を知らない御坂や、そもそもの才能がないフレイヤはわかる。ローラの実力を鑑みればシルビア、ブリュヒルドも当然だろう。
だが、オティヌスまでもが一方的に叩きのめされた。無限の可能性が通用しない。
「だから言ったのだ」
アレイスターが口惜しそうに言う。
そもそも一人の人間を世界の外側にまで飛ばすことをできる彼女が無限の可能性ごときを攻略できないはずがない。
アレイスターでようやく互角だが、リリスを抑えられていては何もできない。
結果、敗北した。全ては終わった。
ローラは軽くあくびしながら、
「さあ、帰りたるわよ。アレイスター、リリス。これからイギリスで三人幸せに暮らしましょう?」
「……ああ」
「いや……いやぁぁぁぁああああ!」
泣き叫ぶリリスに何も言えない。
だが、学園都市には無謀にも立ち向かう人間はまだいた。
「おいおい。何かと思えばしけた面下げたおっさんが女に囲まれてんのか。……いい女連れてるなあ、もったいねえ」
目の前に立ちふさがるのは金髪に痩身、高級ジャケットを纏った少年。
垣根帝督。
アレイスターは垣根に文章を読み上げるように言った。
「やめたまえ。君では触れることすらかなわんぞ」
「安価↓2」
「アンタの常識は通用しねぇ。俺は非常識だからな!」
垣根が翼を発生させ、振るう。烈風が吹き荒れる。
その風は不自然に周囲を傷つけていく。
「よく見りゃ、俺の知り合いも倒れてやがる。何が何だかだぜ」
というか垣根は一度見た顔を忘れない。死んだ相手はともかくとして、だ。
そしてただ一人立っている金髪の男の前に降り立った。
「おい、どういう状況だ」
「……イギリス清教のトップが統括理事長をさらいに来た」
「じゃあ、あの銀髪がアレイスターか……今までと見た目が違うな。大方、もう一つの技術でも使ってたのか?」
「そんなところだ」
治療したいのはやまやまだが、そんな時間はない。
今は垣根と協力することを優先する。
「……まずは娘の奪還だ。そうすればアレイスターもこちらにつく」
「クソ、これ終わったら直接交渉権もらってやる」
二人が同時に動く。
オッレルスはローラへと全火力を集中させる。
当然、届かない。
だが、あまりの衝撃にほんの一瞬だけローラの視界が奪われる。
垣根がその一瞬を逃さなかった。
ローラによる魔術攻撃を受けながらも、リリスを取り返す。
「げほっげほっ! ……どうなってやがる。体が動かねえ」
垣根は口から血を流しながらも、立ち上がる。
これで条件は整った。オッレルスが確信した直後。
ローラが笑いながらアレイスターに触れる。
二人の体が消えた。
森の中だった。目の前の女の性格から本当に森かは怪しいが。
とにかくアレイスターはローラに手を引っ張られながら、小さな木造の家につく。
家は相当前から準備されていたのか、かなり古かった。
「さあ、今日からここで二人きり……」
うっとりとするローラはアレイスターをソファに押し倒す。
邪魔者がいなくなった所為かローラはアレイスターの体中をさわりつくす。
アレイスターは重々しく問いかける。
「いつからお前はこんな女になっていた。お前は権力者のように強欲な女だったはずだ」
「安価↓2」
「それはあなたの勘違いではなくて?」
「……、」
確かにそうかもしれない。
最初からこういう女をアレイスターが都合よく解釈していた。
妻が死んだという現実と彼女が殺したという事実から逃げるように目をそらしていただけなのかもしれない。
だからこそ。
「なら私はお前を愛せない。お前が妻を殺したからだ」
「私の体にはあの女の血がこびりついてる。その血を愛せばいいのではなくて?」
ローラの長い金髪がアレイスターの顔を包んだ。
その甘い匂いにアレイスターの理性が薄れかかる。
「惨敗、だな」
「おい……」
五人の女性はベッドで眠っている。目を覚ます気配はない。
オッレルスは神妙な面持ちで言っている。
「まさか彼女がここまでの実力者とは……油断した」
「おい! これ何とかしろ!」
オッレルスはとぼけたように垣根を見る。
垣根の体にはリリスが抱きついていた。離れないように強く抱きしめているのか、垣根が放そうとしても放さない。
「アレイスターがいない今、何とかできるのは君だけだ。頼むぞ」
「ふざけんな! お前の話じゃコイツは八十歳くらいなんだろ!? 完全にボール球なんだよ!」
「見た目は問題ない」
オッレルスが放り投げるように会話をきった。
呆れる垣根をリリスは瞳を潤ませ、見つめる。
「垣根……私、キライ?」
不思議と涼しげな香りが垣根の鼻をかすめる。
垣根は女性経験こそ豊富だが、恋愛経験はない。正直、どう対応すればいいのかわからない。
相手はアレイスターの娘。怒らせてはまずいと垣根は言葉を濁らせる。
「嫌……嫌いじゃねえが」
「じゃあお父さんいない間、抱き枕ね。あとお嫁さんにしてもらう」
「何で!?」
「だって助けてくれた」
それだけで自分を信じるのか。
これまで何人も殺してきた自分を信じるのか。
一方通行はどこぞの外国人に現をぬかしているようだが、垣根はそんなに甘い人間ではない。
悪はどこまでも非常であるべきだった。
「……俺はそんな優しい人間じゃねえ。今までもこれからも、だ」
「関係ない」
「俺を好きになっても意味はねえ。後悔しかしねえよ」
孤独。
それは垣根にも理解できる。この少女をそう呼ぶことくらい。
でも、話が違う。自分もまた孤独であるべきだ。
「だから離れろ」
冷たく、突き放す。
リリスは答えた。
「安価↓2」
「やだ、私と同じみたいだし二人でいれば寂しくないでしょ?」
リリスは二コリと笑う。
垣根にはそれが気に入らなかった。
その優しさも、少女らしい可愛らしさも。
怖かった。だから拒絶した。
「……うるせえ」
リリスを突き飛ばし、部屋を飛び出す。
やれやれ、とオッレルスも後を追う。
「てーとく……」
「私が話してくるから。待っていられるね?」
「うん……」
垣根は公園のベンチで茫然と座っていた。
オッレルスは缶コーヒーを渡して、隣に座る。
「……好意を向けられるのが怖かったのかい?」
「……、」
「まあ初めてなら無理はない。……しかし行為を向けられないのも虚しいと思うぞ?」
オッレルスにはわかる。
感情をすて、非情に走った人間はこんなことでは動揺しない。
つまり、垣根はまだ人間ということだ。
「どう思ったんだい? 今のうちに気持ちを整理しておきなさい。君にはまだ働いてもらわなきゃ困るからね」
「安価↓2」
「そりゃ自分が知らない感情を誰かから向けられたら怖いに決まってるじゃねーか」
垣根は好意というものを知らない。
人間は未知というものに恐怖を覚える。それが形あるものなら虐げ、形なきものなら逃げてきた。人はそれを繰り返す。
しかし、オッレルスは知っている。
たとえその感情を知らなくても、手に入れることはできる。
垣根の上に存在している少年は自分の力で手に入れたのだから。
「一方通行は自力でそれを知った」
「アイツと一緒にすんな。俺はそんなに子供じゃないんだ」
「……、」
「俺はな。裏で何があるのか知っちまった。人を信じられる程、子供じゃなくなっただけだ」
「安価↓2」
≪今日はここまで。皆さんお疲れ様でした≫
「君はあの娘の好意には裏があると思えるのかい?」
オッレルスはほほ笑みながら言った。
垣根が決めることではある。
しかし、オッレルスはそんな理由で彼を見捨てることなどできない。
「君と……いや君以上に人間の感情や裏面を見てきた私でさえそうは見えなかったよ」
特に異性についてなら垣根は遠く及ばない。
独占欲、嫉妬心。そんな醜い一面は確かに持っているかもしれない。リリスも例外ではないかもしれない。
だが、同時に。
女性には男性にはない優しさがあることをオッレルスは知っている。
「……、」
垣根はオッレルスの言葉をかみしめる。
自分は本当に井の中の蛙なのかを考える。
結論は出ているのだ。後は納得するだけだった。
「……難しい感情論は無視しよう。君はあの娘をどう思っている?」
「安価↓2」
そろそろ終わるが長いなあ……
それでは開始
「アレイスターが戻ってくるまでは施設に預けるさ。俺は育てられないだろうこの子をよ。一日一回は顔見せには行くがよ」
オッレルスはそれを否定も肯定もしなかった。
今垣根に必要なのは、とにかく誰かを自分の意思で守るということだから。
第一位も第二位も人と関わらなさ過ぎたのだ。
「……だが、やっぱ笑えてくるなあ。あのアレイスターに娘なんざ」
少し表情に影を落とし、垣根は呟く。
「何か思いついたのかい?」
「ああ、アレイスターが帰ってきたら最高のサプライズでも用意してやるぜ」
一方通行は間に合わなかった。だが、収穫もあった。
イギリスの魔術師であるレッサーを確保したのだ。
少女を動けないように拘束して、一方通行は距離をとる。
「あのー何かのプレイですか?」
「アホか。テメェに欲情なンかしねェよ。それよりも話してもらうぞ、洗いざらいな」
「……、」
「レッサーちゃん。黙ってると私から過激にいっちゃうからね? 一方ちゃんは百倍過激だけど」
「むしろ守備範囲です」
余裕を見せてはいるが少女の頬は汗がつたっている。
一方通行の強さは一瞬だが、肌で感じている。
「そンじゃァ……オマエの雇い主から聞こうか。後はなにを依頼されてたか、だ」
「安価下2」
≪安価↓でいきます≫
「ふふふふふ。私の口を割りたいならえっちい拷問デモしてみることですね! ふふん!」
ダラダラと流れる汗の量が増える。
恐怖を押さえつけるために挑発的なことを言って、自らを奮い立たせる。
だが。
「オイオイ……いいのかァ?」
「一方ちゃんはテクニシャンだからねー……こりゃ奴隷コース確定かな?」
「!!?」
一方通行は余裕綽々な様子で舌を舐めずる。
サローニャに至ってはニヤニヤとレッサーの首を触り始める。
しかし言いだした手前、逃げる訳にもいかない。
「そんなの私の経験の前には無意味ですっ!」
「ン、じゃァ遠慮なくいくわ」
一方目線でどうする? 安価↓2(台詞or行動安価)
≪連投は判断に任せます。今回は人が少ないのでOK≫
「よ……」
一方通行は自分の体をレッサーの後へと移動させる。
腕をするするとレッサーの体に這わせる。
「ひ、ひぃぃ……」
ゾワゾワと体を撫でる感触にぶるぶると縮こまる。
当然、一方通行がそんな程度でやめるはずがない。
「さっきの余裕はどうしたァ?」
首筋に一方通行の唇が触れる。しばらく一方通行はレッサーの首に顔を埋め続ける。
「あ、んん……」
舌を動かすたびにレッサーは敏感に反応した、息も荒らいでいる。
拘束されながらも必死に抵抗する力が緩まると同時に、一方通行は少女の耳を口に含んだ。
「ひゃ……」
右手で胸を乱暴にもみしだき、左手はレッサーの下へとずらしていく。
レッサーは無意識のうちに足を開き、受け入れる。
だが、一方通行は下着へと触れる寸前で手を止める。
「……さァて、そろそろ言ってもらうぞ。お前の雇い主と依頼内容だ」
「……、」
「言わねェならここで終わりだ。次はハードなヤツでいっても構わねェぞ」
右手の力を強め、自白を促す。
耳元で囁いたため、一方通行の吐息が逐一レッサーを刺激していた。
少女は瞳をとろんとうるませながら答えた。
「安価↓2」
≪今日人少ないですね……安価↓統一します≫
「しゃべったら、…つづきシてくれますか…?」
瞳だけでなく声もとろんとして、さっきまでの覇気がない。
それでもただで言わないのは魔術結社の一員という自覚からなのか。
「……あァ、してやる」
ゆっくりと、言う。
その遅さはレッサーにとってはもどかしく、誘惑的な一言だった。
まだ十代前半とはいえ、そういう欲求は少なからずあった。それを一方通行が表面に出しただけなのだ。
「いぎりす、せいきょ……ろーらすちゅあーとです。いらいは……学園都市危険因子の足止め」
しばらく休憩をとる形になったため、レッサーも徐々に回復し始める。
体は火照ったままだが。
「よく言えたなァ……そンじゃ――――」
一方通行が行為を再開しようとした寸前。
強烈な殺気が彼の体を突き抜け、一気に現実へと引き戻される。
サローニャが額に青筋を浮かべていた。表情は笑顔だが、全然雰囲気と一致していない。
彼女に引きずられる形でレッサーと距離をとる。
サローニャは一方通行の耳元で強く囁いた。
「どういうつもり? いくらなんでもやりすぎちゃんじゃないかな?」
「いや……悪ィ」
「もしかして私より、ああいう子供ちゃんの方が好みちゃん?」
「それはねェ! オマエが一番だ!」
「うん、じゃあ今夜は覚悟しといてね」
一方通行の背筋からイヤな汗が流れ始める。
後ろでは拘束されながらも、行為の再開を待ちわびる少女。
目の前には体を擦り付け、欲情的な笑みを浮かべる恋人。
まずい、と一方通行の直感が言う。
「はやくぅ……」
体をそわそわさせ、ねだるレッサー。
生殺しはさすがに可愛そうという気もしなくはないが、サローニャも怖い。
どうするべきか一方通行は判断に迷った。
少女の柔らかい感触が頭から離れない。
「一方ちゃん?」
「一方通行さんん……」
二人の少女に見つめられながら一方通行は決断した。
一方目線でどうする? 安価下
「……クソ」
折衷案。
そう呼べるのかも微妙だが、これしかないと一方通行はレッサーの頭に手を置く。
まだあいているもう片方をレッサーの下着へと当て、準備をする。
レッサーもそれを受け止めるために目を閉じる。
(悪ィな、一瞬で終わらせる)
ベクトル操作により、レッサーの脳内に大量の脳内麻薬と電気信号が加分泌される。
具体的には女性が絶頂に達するだけの量が。
今度は片手を下着の中へと入れる。
一瞬だけのつもりだったが、確かに湿った感触に一方通行の手が吸いつかれる。厳密には一方通行が少し放すのを惜しいと思ったからだ。
しかし、そこで止まることはなく下着の上部へと手をずらす。
「ひ……ん、はぁ、」
息を大きく洩らしながら喘ぐ少女を無視して、一方通行はわずかな突起を指ではじいた。
「ああ……!」
あまりに一瞬すぎたためか、声を上げる暇もなく少女は達する。
一方通行はそれを一瞥すると、拘束を解いた。
「……オマエに用はねェ。好きにしろ」
「安価↓」
「さ、サローニャさん! この人強いです。勝てなかった……」
「まあ……一方ちゃん夜は別人だからねえ」
「サローニャ。余計なこと言うんじゃねェ……」
一方通行はごろりとソファに寝転がり目を閉じる。
血を見る感覚と性的興奮が近い、と感じたことがあった。
でも、違う。殺人は理性を失うようなものだった。
性的興奮は一方通行にとっては好きという気持ちだったのかもしれない。
元々、ホルモンバランスの不安定な一方通行にとって、それはわかりやすく、安心できた。
うっかり殺すという心配も不思議とないから。
「……しかし、羨ましいですね。あんなカッコよくて強い男性が彼氏なんて。まあ地の身体能力はアレっぽいですけど」
「まあ、自慢はできるよ?」
「今、体感して思ったんですけどアナタのいう夜の彼ってどんな感じですか?」
「安価↓」
≪今日はここまで・。お疲れさまでした≫
「発情期の野獣だよ野獣。気分じゃない時は誘ってもダメだけど、したい時は私が気絶しても自分が満足するまで放さないもん」
「うわあ……」
レッサーはつたない知識でその様子を想像する。
しかし、ちょっと過激にしすぎたようで、首を振りわずかに悶えた。
「……ヤバイですね」
「うん、ヤバイよ」
「オイ! 何変なこと言ってるンだ、サローニャ!」
「でも事実だし」
三日が過ぎた。
アレイスターの表情にも疲れが見え始めている。精神的にも辛い。
ローラはそれを知ってか知らずか、アレイスターを抱きしめる。
温かく柔らかい感触がアレイスターを包んだ。
「やっと二人きりになりたるわね……幸せだわ」
「私は最悪だがね」
「フフ……今に幸せにしてあげる」
不敵な笑みを浮かべる。
しかし、アレイスターは性的欲求などとうに失っているし何よりローラなどこれぽっちも信用していない。
「ねえアレイスター……どうして私があの女を消したと思いたる?」
「安価↓2」
「嫉妬かね? それとも私に相応しくない、用意する代替の者の方がよりよいと判断してか? それとも自分の計画や仕事関係に利用できるからか……」
アレイスターはローラの表情をうかがいながら言う。
しかし、目の前の女狐は何も言わない。
そして誘うように隣へ座り、肩に頭をおく。
アレイスターは構わず言葉をつづけた。
「いずれにせよ、酷く独りよがりのエゴイズムだが」
「そうかしら?」
ローラは笑う。
まるで最初からどう返答するか決めていたかのように。
「なら……たった一人の娘を殺すために二百三十万の人柱を捧げようとしたあなたも同じではなくて?」
ローラの手がアレイスターの太ももに手をおき、なでる。
それを愛おしそうに見つめながら彼女は言う。
「でも私はあなたを……あなただけを愛し続けたるわ。たとえ世界を敵に回してでも」
きれいな瞳はアレイスターだけを写している。
愛されているのか、束縛されているのかわからない。
だがこのままなら間違いなくローラの傍で残りの命を終えることになるだろう。
「だから……ずっと私の傍に、ね?」
「安価下2」
「お断りだ。私には大切に育てなければならない置き土産があるのだよ。それを成し遂げるまでは君を愛せない」
「愛せない……フフ」
ローラはそれでも笑う。
これも彼女にとっては想定内のことだった。
「なら愛せるようにすればいいの?」
「……どういう意味だ」
ローラはアレイスターの膝に頭をおく。
目をつむり、嬉しそうに頬ずりしながら言った。
「あなたの愛する対象を私一人にしたるだけよ?」
魔神の少女は唐突に目を覚ました。
覚まされた、という方が正しいか。
とにかく少女は隻眼を動かし、オッレルスを捜す。
「オッレルス……」
「オティヌス……目がさめたのか」
「いや、あの女が無理矢理意識を戻したといったところか。他もじきに目をさます。だが、まあ……」
オティヌスは一瞬だけ瞳をそらす。
何かを知ってしまった、という意外そうな表情で言った。
「……あの女め。どうやら私達の意識に自分の意思を混濁させてくるとは。それも『自分の愛する者と自分を邪魔する全てを滅ぼす』とな。全く、大した女狐だよ」
オッレルスの腰かけているソファに座り少女は言葉を続ける。
「理解できなくもない。私だってあの四人は邪魔だ。お前を今すぐに独占したいくらいさ。……こう考えるとあの女もわかっているな」
「安価↓2」
「他の子たちが寝ている今だけなら独占してもいいぞ?」
「ほお……」
オティヌスの目が細まる。
その目は確かな光を帯びていた。瞳にオッレルスの顔が映る。
人払いの術式を施したのか、周囲から人の気配が不自然に消えた。
オティヌスはオッレルスをソファに押し倒す。
「……ならこのまま永遠に眠っていて欲しいな」
「それは私が困るな」
「それもそう、か」
オッレルスは視線を下へとずらす。
露出の多い衣装は少女の白い肌を存分に際立たせていた。
「オッレルス。私がお前を独占するということはお前もまた他の女を気にする必要もないということだ」
すとん、と腕をたたみオッレルスの体へ体重をかける。
わずかに唇をゆがませ、オティヌスは甘く呟いた。
「あの聖人の女にしたようにすればいい。……今なら何をしても問題無い」
「……、」
オッレルスの体の中心が熱を帯びる。
記憶にはなくとも、感覚的な部分がシルビアとの行為を思い出させる。
この少女はどうなのか、と。
目を細め、理性を保ちながらもオッレルスはオティヌスの背中に手をおいた。
オティヌスもそれに反応し、上目遣いでオッレルスをみつめる。
オッレルス目線でどうする? 安価↓2
背中へもう片方の手もまわし、抱きしめる力を強める。
オティヌスもそれを受け入れ、さらに脱力した。
それを確認すると、オッレルスはオティヌスの顔を自分の前まで持ってくるように促させる。
そのまま、一気に口をつけた。
一瞬で放そうとオッレルスが顔を放そうとする。
だが、オティヌスはそのオッレルスの顔を両手でわしづかみにすると舌を口内へと侵入させた。
ぬるぬるとした感触が口の中へ広がり、オッレルスを支配する。
「フフ……お前もこういうのには弱いようだな。安心したぞ」
口を放すと同時に、オティヌスは言った。頬は紅潮し、息も荒い。
それもまた、オッレルスの本能を刺激する。
「当たり前だ。所詮は人間に過ぎないのだからな」
「……ぁあ、そんな目で見られるとおかしくなる」
「そうなりたいと言ったのはお前だぞ」
体を反転させ、オッレルスは自分の体を上にする。
オティヌスは抵抗することなく、ソファへと身を預ける。
直情的で受動的な目がオッレルスを見つめた。
嗜虐的な感覚を刺激するようなその瞳に、オッレルスはいたずら心を動かす。
耳元に顔をやり、囁いた。
「……オティヌス。どうして欲しい? お前の望みどおりにしてあげよう」
「いつから……そんな意地悪になったんだ」
「さあな。自分でも驚きだ」
甘く囁かれ、オティヌスは誘惑に耐えることもせずに言った。
「安価↓2」
≪今日はここまで。皆さんお疲れさまでした≫
「抱いてくれ。むさぼるように、私を求めてほしい」
「ああ、わかった」
革のマントを乱暴にはぎとり、その奥にある頼りない衣装までも一気にはぎとっていく。
少女の体は白く、シルビア程の成熟さはないものの確かな魅力を感じた。
首筋から未熟な体へと指を這わせる。
「はああ……」
嬉しそうにそれを享受するオティヌスを見て、首筋に顔をうめ舐めた。
オティヌスが顔をそらし、受け入れるのを見て胸へと手を運ぶ。
「ん……」
刺激に慣れてきたのかオティヌスの声が小さくなる。
それが気に入らないオッレルスは顔を胸へと持っていき、口に含んだ。
「や、はあん――――!」
口の中で突起を転がし、時折甘噛みした。
びくびくと小さな体が悶え、細い指がオッレルスの髪を乱暴に包む。
「はあ……はあ……オッレルス、下も」
「ああ……これだけ濡れてれば問題無さそうだ」
オッレルスは唇をわずかに歪ませると一気に指を中へと入れる。
急な刺激に声を出す暇もなく腰だけを浮かせる少女を掻きまわす。
「ああ! や、気持ちい――」
快感に浸る少女と口を合わせる。
徐々に中の湿気が増えていくのを確認し、オッレルスは手の速度を一気に速めた。
「や、ん! イク! ああ、ん――――」
快楽のあまり、涙さえ浮かべ頬を紅潮させる少女は絶頂の余韻に浸る。
そういう行為に慣れていない所為か一度で、休憩をとる。
「意外な弱点だな。少し前なら想像もできなかった」
「……うるさい。これでもまだ肉体は十四歳程度でしかないんだぞ」
恥ずかしそうに顔をそむける少女に思わず笑いがこみあげる。
こんな少女を邪険にしていたのかと思うと少し大人げなくも感じる。
「さて、と」
オティヌスは何かを決心するように息を吐く。
「今度は私がお前の望みを叶えてやろう。どうして欲しい?」
まだ熱の帯びた体をオッレルスへ押し当てる。
柔らかい感触を味わいながらオッレルスは答えた。
「安価↓2」
エロレベル高すぎぃ……
それでは開始
「イマラチオをしてもらおうか」
猟奇的に笑うオッレルスを見て、オティヌスは思わずため息をつく。
「……お前がそんなこと言うとはな。というよりそういうの興味あったのか」
「好きにしろと言ったのはそっちだろう」
「まったく……」
文句を言いながらもオティヌスはオッレルスのズボンへと手をかける。
躊躇なく口に含んだオティヌスにオッレルスは言う。
「歯は立てるなよ……痛いから」
こくりとうなずき少女は上下に運動を始める。
タイミングをはかり、オッレルスもその髪を乱暴に掴んだ。
無理やり押さえつける征服感に青年は興奮し、
支配される無力感に少女は快感を覚える。
「オティヌス……気持ちいいぞ」
(この変態め……こっちは匂いで蕩けそうだというのに――)
オティヌスの頬が赤みを増す。
それはオッレルスには美しく見え、限界など知らないまま興奮だけが増していく。
自分がこれほど欲求を持っていたのは驚きだった。
「オティヌス……出すぞ」
「んん……!」
どくんどくん、と口に広がる未知の感覚に少女は思わず肩を浮かせる。それをオッレルスは強引に押し込む。
全て飲みほし、オティヌスは思い切りよく頭をあげた。
「ふぅ……なかなか飲みにくいな」
「……飲み物じゃないだろ」
「それはお前の認識だろ?」
終わったという安心感からかオッレルスの上へとのしかかり、オティヌスは体重をかける。
心地よい重みを感じながら柔らかい髪をなでた。
「……それに、このまま全員眠ったままなら毎日これだと思うとおしいな、素直に」
「安価下2」
すいません…人いないみたいなので提案であげます。
申し訳ありません。
このスレをhtmlして垣根すれで心機一転したいと思います、
勝手な話なので意見もとっておきますが……
とりあえず一端きります
垣根スレたてて、html化しておきます
次は過疎らないようにしたい……!
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