モバＰ「ただいま戻りました」

ちひろ「お帰りなさい。出張ご苦労様です」

モバＰ「いやあ、思ったより大変でした」

ちひろ「成果は出たんですよね？　メール見ましたよ」

モバＰ「ああ、それじゃあ話は早い」

ちひろ「メールに書かれてた新人アイドルですか？」

モバＰ「ええ、今日一緒に来てるんですよ」

ちひろ「それじゃあ、早速入って貰いましょうよ」

モバP「ああ、入ってくれ」

愛海「こんにちわ」

ちひろ「この子が新しくスカウトしてきた子ですか？」

愛海「はじめまして、これ、履歴書です」

ちひろ「あら、丁寧に……どれどれ……」

モバP「そう言えば俺も、詳しく履歴書を見るのは初めてだな」

ちひろ「いい加減ですね」

モバP「いやいや、直接話を聞いたってこと。目で見るのは初めてですよ」

ちひろ「名前は……なんとお読みするんでしょうか」

愛海「あ、すいません。名前にフリガナつけてませんでしたね」

モバP「あ、フリガナならコレ、ネームプレートはもう作ってますから」

ちひろ「ありがとうございます」

ちひろ「ふーん……」

ちひろ「面白い名前ですね？」

愛海「そうですか？」

モバP「ちひろさん、人それぞれ家庭の事情があるでしょうに、それはちょっと……」

ちひろ「！！」

ちひろ「そうですね。私が無神経でした。ごめんなさい」

ちひろ「ただ、馬鹿にしたつもりじゃないんです」

愛海「あはは、大丈夫です。結構私の名前は読みにくいって言われます。初めての友達なんかにも良く言われますから」

愛海「あまりしつこく言ってくる子は、揉みますけど」

モバP「揉む？」

愛海「あ、気にしないで気にしないで」

ちひろ「読みにくいとは思わないけれど」

愛海「そうですか？」

愛海（『愛』を『あ』、『海』を『み』と読ませるのは割とあるけれど、『愛海』で『あつみ』は珍しいんじゃないのかなぁ）

愛海（アイドル界だと、珍しくはないのかなぁ）

ちひろ「読み方だけなら、そんなに無茶じゃないですね」

モバＰ「ええ」

ちひろ「ただ、強いて言うなら『つ』がどこから出てきたんだろうとは思いますけれど」

モバＰ「ああ、正直それは俺も思った」

愛海（『つ』？　ああ、『愛海』で『あみ』と思われたんだ。うーん、『あつみ』とは一見じゃ読めないか）

ちひろ「まあ、些細なことですよね」

モバＰ「そうそう」

ちひろ「インパクトがあっていい名前だと思いますよ」

モバＰ「そうでしょう？　俺も名前を初めて見たときそう思ったんですよ」

愛海「インパクト……ですか？」

ちひろ「いや、決して馬鹿にしたりしてる訳じゃないのよ？」

モバＰ「そうそう。確かに世間一般には驚く名前かも知れないが、アイドルとしての掴みはバッチリじゃないか」

愛海「はあ……」

愛海（『あつみ』ってそこまで凄い名前かなぁ？）

ちひろ「これからよろしくお願いします、棟方さん。いや、名前で呼んでもいいかな？」

モバＰ「棟方……」

モバP・ちひろ「愛海（アッガイ）さん」

愛海「」

モバＰ「どうした、愛海（アッガイ）？」

ちひろ「愛海（アッガイ）ちゃん？」

愛海「違いますからね？　あつみ、ですから」

モバP「！？」

ちひろ「え？　愛を『ア』と読んで、海を『カイ』と読むのでは」

モバP「続けて読むと」

ちひろ「アッガイ」

愛海「だから違います」

モバＰ「え？」

ちひろ「それじゃあもしかして」

モバＰ「愛海（アッグガイ）？」

ちひろ「愛海（ズゴック）？」

愛海「愛海（あつみ）！！！！」

モバP「……そうだったのか。道理で、ご両親と話を詰めていたときに妙な顔をしていたはずだ」

愛海「気づけよ、そこで」

ちひろ「きっと、ご両親は芸名だと思ったのでは」

モバP「ああ」

ちひろ「それじゃあ……」

モバP「そういうことだな」

ちひろ「本名が『アッガイ』で芸名が『あつみ』」

愛海「逆！　逆！！」

　
　
　
？？「何してるにゃ？」

ちひろ「ああ、いいところに」

モバP「ちょうどいい、新人を紹介しておこう」

愛海「はじめまして、これからお世話になります棟方……」

モバP「アッガイ君だ」

愛海「違います」

ちひろ「アッガイちゃんですよね」

愛海「違います」

？？「新人さんにゃ？　よろしく」

ちひろ「この子は、前川……」

モバP「ザクだ」

前川ザク「だから違うといつも言ってるにゃあああっ！！！」

前川ザク「みくはみくだにゃあああ！！」


　　　


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おわれ