右京「呪いのビデオ?」 (586)

相棒とリングのクロスSSです。

リングの内容は基本映画版をベースにしてますが所々で
原作の設定も入っています。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1377950275

東京都某マンション


8月25日、PM23:30


ここに一人の男性の変死体が見つかる、しかしそれは…

伊丹「マンションから転落死か、それにしても…」

芹沢「一体何なんですかねこの顔は…?」

三浦「俺も刑事歴長いがこんな顔は見た事ねえな…」

その変死体はまるで恐ろしいものを見たかのような形相をしていた。

伊丹「これってアレか?死後硬直でこうなったのか?」

米沢「いえ、死後硬直でもこれほど顔面の筋肉が硬直するなんてまずあり得ませんよ。
これほど不可解な事件は我々だけでは無理だと思い、その手の専門家をお呼びいたしました。」

伊丹「ちょっと待った!何だその専門家ってのは?」

カイト「どうも♪」

右京「その専門家です。」

伊丹「ゲッ…特命係…」

三浦「これはこれは警部殿、お早いご到着で。」

芹沢「まぁ、確かに専門家ですね…」

伊丹「あのねぇ…警部さん、いつもいつも言ってますけど…」

芹沢「まぁいつもいつも解決してくれちゃってますからね。」

伊丹「コラ芹沢!プライドを持て!!」

右京「それで被害者の身元は?」

芹沢「ハイ…被害者の名前は吉野 賢三、仕事はTV局のディレクターです。
ただしここ1週間ほど会社を無断欠勤が続いていたそうですが…」

三浦「1週間も無断欠勤…?何でそんな事を?」

芹沢「その件についてなんですが…今被害者の同僚の方が来てくださっているんですが…」

小宮「同僚の小宮です、あの吉野さんは本当に…」

伊丹「えぇ、お亡くなりになりました。それで彼が1週間も無断欠勤をした理由を知りたいんですけど…」

小宮「吉野さんが無断欠勤をした理由ですか…その前に吉野さんの部屋を
見せてもらえないでしょうか?」

右京「部屋の中ですか?それはまたどうして?」

小宮「それは部屋についてからお話ししたいので…」

伊丹「わかりました、まぁ外で話すのも難ですしとりあえず吉野さんの部屋に行きましょうか。」

三浦「おい米沢、被害者の部屋に入れるか?」

米沢「入れる事は入れますけど…」

昨日テレビで見たんだが貞子3Dは「どうしてこうなった」って感じだったから期待

相棒vs超能力モンスターッ!!?

~吉野の部屋~


8月25日、PM23:50


そこは資料が散乱して散らかっており更に驚くべき奇妙な点があった。
居間にあったTV…それがガムテープでモニター部分を覆っていたが
それが何故か解けていた。

右京「米沢さん、このTVの周りなんですが…これは最初からガムテープで覆われていたのですか?」

米沢「えぇ、これが意味するところがまったくわかりません。」

右京「ですよねぇ、TVを見たくなければ電源を切ればいい。
なのにわざわざTVのモニターをガムテープで覆う、正直僕にはこの行動の意味が分かりません。」

カイト「モニターが壊れてたとかそんなんじゃないんですか?」

右京「いえ、TV自体が故障しているというわけでもないようですね。
至って普通に動きますが」pi pi

カイト「本当だ、普通に映像が映りますね。」

伊丹「あの…警部殿!勝手に被害者の部屋を弄らないでください!」

芹沢「それにしてもこの部屋の資料…気味が悪いですね。
資料にある新聞の切り抜き、これ全部15年前の日付ですよ。」

三浦「15年前だと?何だってそんな物が…」

小宮「あの刑事さん…ちょっといいですか。
吉野さんのビデオデッキにビデオが入っていませんでしたか?」

伊丹「ビデオデッキ?吉野さんは今時レコーダーじゃなくビデオ使ってんですか?」

小宮「いえ…ちょっと事情があって…それであるんでしょうか?」

三浦「米沢、どうなんだ?」

米沢「えぇ、一応押収した証拠品からビデオテープがありましたけどこれが何か?」

右京「失礼、おや?このテープですがラベルに『COPY』と書いてありますね。
もしかしてダビングされたものでは?」

米沢「とりあえず中身を調べるため一応鑑識で預かりましょうか。」


小宮「ダ…ダメだぁぁぁぁ!?
このビデオを見ちゃダメなんだ!頼む、調べないでくれぇぇぇぇ!!!!」


そう言うと小宮はそのビデオを床に叩きつけ再生が出来ないように壊してしまった。

伊丹「ちょっと…アンタ!証拠品に何してんだ!?」

しかし伊丹の怒鳴り声は小宮の耳には届かなかった、それどころか
彼は次第に妙な事を口走るようになった。

小宮「まさか…嘘だろ…やっぱり噂は本当だったんだ!?
どうする…次は俺だ…俺の番なんだ…」

カイト「あの…大丈夫ですか?しっかりしてください。
とりあえず居間の方にでも腰を掛けて落ち着いてくださいね。」

小宮「居間…あぁ…ハイ…わかりました…」

右京「カイトくん、暫く小宮さんに付き添ってあげてください。
彼は心身衰弱なさっているようですので。」

カイト「ハイハイ、わかりましたよ。」

伊丹「それにしても15年前の事件か、しかしこれ…どれも事故死扱いだよな。」

三浦「あぁ、記事を読む限りじゃ事件性はなかったはずだ。」

芹沢「被害者は何でこんなモノを調べていたんですかね?」

その記事の切り抜きにはこう書かれていた。


大石智子:17歳、○月×日、横浜の自宅で急性心不全で死亡


岩田秀一:19歳、○月×日、交差点でバイクで信号待ちをしていた際に事故により死亡
(なお事故死する直前に急性心不全に見舞われてた模様。)


辻遥子:17歳、○月×日、恋人の能美武彦とドライブ中に急性心不全で死亡


能美武彦:19歳、○月×日、辻遥子と同くドライブ中に急性心不全で死亡


右京「けどコレまた奇妙ですね。」

伊丹「また警部殿は勝手に口を出して…それで奇妙な点とは?」

右京「被害者のみなさんが同じ日にしかも死因まで同じで亡くなっています。
これは偶然なのでしょうか?」

三浦「本当だ、確かに日付と死因が同じだ…しかしこれが何だと?」

芹沢「そうですよ、ただの偶然じゃ…」

右京が疑問を抱いていた時、米沢から被害者の検視結果が報告された。
それはまた奇妙なモノであった。

米沢「たった今検視の結果が出ました、被害者は転落する直前に既に心臓発作を起こし
急性心不全で亡くなっていたらしいです。」

右京「また急性心不全ですか、切り抜きの被害者たちと同じ死に方…これを偶然で
片づけて良いものでしょうかねぇ…」

伊丹「しかし急性心不全という事はつまり…事故か?」

三浦「まぁつまり…被害者はベランダに出た途端に急性心不全になりそのまま転落した。
そういう事になるな。」

米沢「現状で考えればそういう事になりますな、ただそうなるとあの被害者の
恐ろしいモノを見た形相が気になるところですが…」

伊丹「まぁ事件性が無いならそれに越した事はねえな、後は参考人にいくつか事情聴取
してそれで事件は終わりだ。」

しかしその時誰もが予想しえない恐ろしい事態が起きた。


8月26日AM0:00




小宮「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!?」




先ほどカイトに連れられて居間で休憩を取っていた小宮がとんでもない断末魔の悲鳴を上げた。

カイト「小宮さん!しっかりしてください!!」

右京「カイトくん!どうしたのですか!?」

カイト「それが小宮さんが急に苦しみだして…」


小宮「うぐぎぎぎぎぎぎ!!!!ガハッ…」バタッ


伊丹「おいどうなってんだ!こいつ何か持病でも抱えているのか!?」

カイト「そんな事知りませんよ…ダメだ…この人もう息していません?!
急いで救急車呼んでください!!」

右京「……」

その後救急車が駆けつけ小宮の心肺蘇生が施されたがその甲斐虚しく彼は死んでしまった。

~警視庁~


内村刑事部長の部屋

8月26日、AM9:00


ここに伊丹、三浦、芹沢、そして特命係の右京とカイトが呼び出されていた。

内村「馬鹿者!刑事が参考人を目の前で死なすとは何事だ!!」

中園「お前たちは市民を守る警察官だろうが!一体何をやっていた!?」

伊丹「お言葉ですが…小宮さんは急性心不全で亡くなってしまい、我々も手を施したのですが…」

三浦「あまりにも突然だったもので、どうする事も出来なかったのです。」

芹沢「一応病院の報告だと彼は病死扱いという事ですが…」

内村「当然だ、こちらに落ち度があってたまるか。」

中園「しかし事情聴取中に急性心不全はあまりにも世間体が悪過ぎます。」

内村「また謝罪会見か、痛たた…胃が痛くなってしまった、お前やっておけ!」

中園「えぇ!またですか!?」

内村「何だ、不満があるのか?」

右京「えぇ、不満です。」

内村「杉下…また現場に居たそうだな、今度という今度は…」

右京「お叱りは後ほど、被害者の吉野さんは15年前に急性心不全で亡くなった4人の
若者の急性心不全の病死を調査していました。
そして吉野さんご自身も転落する直前に急性心不全で亡くなっている、それに同僚の方まで…
この一件を事故死で処理するのはあまりにも不可解です、調べておく必要があると思いますよ。」

内村「黙れ杉下!捜査に口を挟むな!」

右京「ちなみに被害者の吉野さんはTV局の人間です、報道の方がこの事件をただの
事故死だなんて扱うとは僕には到底思えませんがね…」

カイト(黙れと言われても全然黙らねえし…)

中園「くっ!しかし杉下の言う通りですよ、下手にマスコミに騒ぎ立てられるよりは
建前だけでも捜査をすればこちらの面子も保てます!逆にここで捜査を打ち切れば…」

内村「警察が無能と騒ぎ立てられるか、よしいいだろう!お前たち…
形だけでも捜査をやっておけ!とにかくマスコミをこれ以上騒がせるな!」



伊丹、三浦、芹沢「「ハッ!」」



内村「それと特命はこの件には一切関わるな、これ以上胃が痛くなっては敵わん…」

~特命係~


8月26日、AM10:00


角田「よ、暇か?聞いたぞお前ら、また内村部長に怒られたそうだな…って元気ねえな。」

カイト「…ハァ…」

右京「落ち込んでますねぇ…」

カイト「そりゃ落ち込みますよ、小宮さんは俺の目の前で亡くなったんですから…
ところで杉下さん、その資料ってもしかして…」

右京「えぇ、吉野さんの部屋にあった大石智子、岩田秀一、辻遥子、能美武彦の4人の
事件の資料を調べています。
調べれば調べるほどこの事件が奇妙である事がわかりましたよ。」

カイト「それってどういう事なんですか?」

右京「僕は最初、被害者の死亡日時、及び死因が同じだと言いましたよね。
しかし警察の捜査資料を見ると彼らの死亡時刻は全て同じ時刻を刺しているのですよ。
最早これは偶然という言葉で片付けていい事件ではありません!!」

カイト「同じ日、同じ死亡時刻、そして同じ死因…こんな事ありえねえよ…」

角田「確かになぁ…偶然の一致にしては恐ろしいモノだと…ちょっと待て!
岩田秀一と能美武彦…この二人何処かで聞いた事ある名前だな…何だっけ?」

カイト「本当ですか?」

角田「ちょっと待ってろ、今調べてくる!」

右京「角田課長が調べを終えるまで恐らく時間が掛かるはずです。
それまでは…我々も行きますよ。」

カイト「行くって何処へですか?」

右京「吉野さんの勤めるTV局ですよ。」

カイト「わかりました!」

~TV局~


8月26日、AM11:30

右京とカイトはさっそく亡くなった吉野と岡崎の同僚に事情聴取をしようとしたが
既に伊丹たちがそれを行っていた、だがあまり捗ってはいないようだった…

右京「吉野さんと小宮さんの死について何か心当たりはないか同僚のあなたにお尋ねしたいのですが…」

早津「…」

伊丹「無駄ですよ警部殿、俺たちが聞いてもこの人黙ったままですから…」

カイト「この人まるで死んだ小宮さんみたく生気の抜けた表情してますね。」

早津「小宮…あぁ…刑事さん助けてください!俺まだ死にたくないんですよ!?」

芹沢「ちょ…ちょっと急にどうしたんですか!?」

早津「ハァ…ハァ…あれを見ちまった俺にはもう時間が無い…ダメだ…
もうすぐ…俺は死ぬ!」

三浦「落ち着いてください小宮さん!そうならないためにも我々警察が絶対に
貴方の事をお守りしますから!」

早津「ダメだ…やっぱり俺たちは呪われちまったんだ!?」

カイト「呪われた?一体何にですか?」

早津「そ、それは…」

右京「それはひょっとしてビデオテープが関係しているんじゃありませんか?」

早津「何故それを?まさかあなた方もビデオを見たんですか?」

右京「いえ、僕らはあのビデオを見ていません。
ですがあなたのその怯えた表情…そして小宮さんが死の直前に見せた不可解な行動…
それらを推理すればあのビデオに何かあると誰でも気づきますよ。」

早津「…これから話す事、刑事さんたち信じてくれますか?」

右京「あなたが話す事が真実なら、我々はそれを信じるだけですよ。」

カイト「何があったのか話していただけますね!」

早津は小さく頷き怯えながらも語り始めた。

早津「俺たち…というか吉野さんは…15年前にうちの局のディレクターの『浅川陽子』が
追っていた『呪いのビデオ』に関する取材をしていたんです。」

右京「『呪いのビデオ』?」

伊丹「何だそりゃ…バカバカしい…」

三浦「シッ!ようやく喋ってくれたんだ、少し黙ってろ!」

カイト「そういえば俺が学生の頃そんな噂が流行ってましたよ、見たら1週間後に
必ず死ぬ『呪いのビデオ』!けどすぐにその噂消えちゃいましたけど…」

早津「俺たちは15年前…浅川さんの頼みでその件をいくつか調べていたんです…
そしたら…浅川さんが死んだって話を聞いて…」

右京「その浅川さんという方は『呪いのビデオ』の所為で亡くなられたのでしょうか?」

早津「いえ、彼女は呪いのビデオを見て1週間経ったのに生きていたんです!
けどその後すぐに交通事故に合って死んだと聞きましたが…
それから15年後…俺たちも『呪いのビデオ』を見たんです、まずは
吉野さんが先に18日に見て…次に翌日の19日に小宮さんが…それに最後に俺が22日に…
順番通りなら次に死ぬのは俺なんですよ!」

右京「ひとつよろしいでしょうか。あなた方はその『呪いのビデオ』とやらを
何処から入手したのですか?」

早津「岡崎さん…昔ここにいた同僚なんですけど…その人も15年前浅川さんに『呪いのビデオ』
の取材を手伝っていたらしいんですけど…」

カイト「けど…どうしたんですか?」

早津「その後、急に発狂して自分から精神病院に…だからウチじゃ『呪いのビデオ』に
関するネタは一切タブーになったんです。
それが1週間以上前に突然…吉野さんがある特ダネを掴んだから『呪いのビデオ』を
なんとかして入手したいと言い出して…それで当時の岡崎さんの机を探していたら
『呪いのビデオ』が出てきたんです…」

右京「なるほど、それが吉野さんのマンションにあった『COPY』のラベルが貼ってあった
『呪いのビデオ』という訳ですね。」

伊丹「あの…ちょっといいですか、警部殿。」

右京「はぃ?」

伊丹「今の話全部聞く限りだと…その…捜査一課じゃオカルトは扱っていないというか…」

三浦「まぁその…我々も忙しいので…」

芹沢「そのですね、この一件全部特命係にお任せした方が良いんじゃないかというのが
我々の判断でして…」

カイト「つまりは今の話を聞いて馬鹿らしくなって俺たちに丸投げってわけですか?」

伊丹「あのなぁ!捜査一課はオカルト専門外なんだよ!まぁ『呪いのビデオ』とやらで
また死体でも出たら呼んでください、では!」

伊丹たちはこれ以上事件性は無いと判断し、後は特命係に一任するといいさっさと帰ってしまう。
残った右京とカイトは引き続き早津から事情を聞く事にしたが…

早津「あの人たち…俺が言った事…全然信じてなかったですよね…
あなたたちも馬鹿な事言ってるなってそう思ってますよね…」

カイト「いや…そんな事ないッスよ!俺ら信じてますから!」
(と言っても本当のところは伊丹さんたちと同じで半信半疑なんだよね。)

早津「あの…試に写メでも何でもいいから俺を写してもらえますか?
そうすればわかりますから…」

右京「わかりました、カイトくん。ちょっとやってみてください。」

カイト「了解ッス。」パシャッ

カイトは自分のスマフォで早津の写真を撮ってみた、するとどうだろうか。
画像の早津の顔はまるで白い靄みたいなのが掛かっていた。

右京「カイトくん…キミ…画像撮るの下手ですねぇ。」

カイト「いや…俺はちゃんと撮ったし手振れすら起こしてませんって!」

早津「ずっとなんですよそれ…『呪いのビデオ』を観てからずっとそんな画像になって…
最初に気付いたのがTVのカメラに自分が映った時でした。
最初はカメラの不調だなって思ってたんですけど…他の人はそんな事なくて…俺だけ…
ねぇ…俺やっぱり呪われているんですよ!刑事さん助けてよ!!!!」

カイト「落ち着いてください!こんな画像の顔に靄が掛かったくらいじゃ人間死にませんから!」

早津「何言ってんだ!『呪いのビデオ』に関わってもう何人もの人間が死んでんだぞ!?
アンタらこの現状を見てまだ信じられないってのかよ!?」

右京「ひとつよろしいでしょうか。」

早津「ハァ…ハァ…一体何ですか?」

右京「先ほどあなたが仰った15年前に事件を調べた浅川さんは1週間経っても死ななかった
そうですがそれはつまり呪いを解いたという事ですよね、つまり呪いを解く方法は必ず
あるとそういう事じゃありませんか?」

早津「そうです…俺らも浅川さんが1週間経っても生きてたからてっきりあのビデオは
インチキだと思ってたんです…けど実際はこうして…
浅川さんは恐らく呪いを解く方法がわかったんだ!それさえわかれば俺も死なずにすむのに…」

カイト「あの…その浅川さんは『呪いのビデオ』に関して何か言ってなかったんですか?
例えばメモとか残してたりとか…」

早津「それが浅川さんは…事件の事はひとりで調べていて…呪いを解いた直後…
彼女は突然失踪して当時の資料は全部失われたんです、そしてその時オリジナルの
『呪いのビデオ』も焼いてしまったそうです…」

右京「オリジナル?もしかしてあの『COPY』のラベルが貼ってあった『呪いのビデオ』は
ダビングされたものではありませんか?」

早津「そうです、浅川さんか紛失しないようにって何本かテープをダビングしてたらしい
んです。
その1本を恐らく岡崎さんが入手したんだと思います…
そうだ…ビデオだ!あの『呪いのビデオ』に呪いを解く鍵があるはずだ!
刑事さん!ビデオは今どこにあるんですか!?」

カイト「残念ですが…」

右京「テープは壊されてしまいました、小宮さんが事件現場に行った時
突然テープを破壊してしまったもので…修復も出来ない状態です…」

早津「そ…そんな…もうダメだ!あのテープが無ければ俺は…死んじまうよ!?」

右京「落ち着いてください、我々があなたの呪いを解く方法を必ず調べます。
ですからあのテープの内容を教えて頂けますか?」

それから早津はテープの内容について細やかに説明をした。
彼は記憶力のよい人間とは思えなかったが、それでも『呪いのビデオ』を鮮明に覚えていたのだ。
彼が見た映像は以下の通りだった。

時列はリング2の後か。らせんだと人類、仮面ライダーアギトみたいなとんでもない事になってるからな。

冒頭のメッセージ『終いまできけ、さもないと亡者に喰われるぞ。』


ひとりの老婆が『その後、体はなあしい?しょーもんばかりしているとぼうこんがくるぞ。いいか、たびもんには気ぃつけろ。うぬは、だーせん、よごらをあげる。
あまっこじゃ、おーばーの言うこときいとけぇ。じのもんでがまあないがよ』と話しかける。


鏡に映る髪を結う着物を着た30代後半~40代前半の女。
次にまた鏡に人が映るがそこには先ほどの着物の女性ではなく
髪が長くて白い服を着ている少女が映る。


何かに苦しむ人々の姿、白い布を被り指を指す男性。


新聞記事、噴火についての内容が記されている。


サイコロが振られる音、そして『嘘吐き!嘘吐き!』と人々から罵声される。


空が映るシーン、だがそれは何故か丸く映っている。


人の眼、何度か瞬きをしてその瞳に映る『貞』という文字。


井戸、周りは木々に覆われた森で井戸はかなり古く一部分が欠けている
特徴のある物であった。


最後にまたメッセージが出る、内容は『これをきいた者は、1週間後の
この時間に死ぬ運命にある、死にたくなければ…』

早津「とりあえず幾つか覚えている事を絵にして描いてみました、これです。」

早津は先ほどの説明の他に『呪いのビデオ』の映像を幾つか絵にして右京たちに見せた。
髪を結う女性と髪の長い少女、白い布を被る男性、井戸の光景。
正直どれも意味不明なモノばかりであった。

カイト「これだけじゃ何がなんだかわかりませんよ…」

さすがにカイトがお手上げと思い根を上げたが右京はある疑問を早津にぶつけてみた。

右京「先ほどのお話でひとつ気になる点があります、最後のメッセージに
『死にたくなければ…』とありますが、それから何か表記されてませんでしたか?」

早津「それが…その…」

カイト「どうしたんですか?」

早津「肝心の最後の部分が上書きされてたんです!その所為で俺たちは呪いを解く方法が
わからないんですよ!」

右京「ちなみに上書きしたのは?」

早津「浅川さんがダビングした際にはもう上書きされていたはずです。
恐らくメッセージを消したのは浅川さんが入手する前かと…
それに上書きされた内容は15年前にやってたバラエティ番組でたぶん誰かの悪戯じゃ…」

右京「なるほど、大体の事は分かりました。それでは我々はこれで失礼します。」

右京とカイトは早津から必要な情報を聞き出し足早に帰ろうとするが
早津は鬼気迫る顔で右京たちにこう言った。

早津「お願いです!俺にはもう4日しかないんです!
だからそれまでに呪いを解く方法を見つけ出してください!」

~特命係~


8月26日


PM13:00


TV局を後にした右京たちは特命係の部屋に戻り角田課長の報告を聞いていた。

角田「それでな、この岩田秀一と能美武彦の二人はかつて城南金融で麻薬を売ってた
密売人なんだよ。まぁそういってもこいつらは下っ端中の下っ端でな、
都内じゃ足が付くから伊豆とか箱根辺りの遠くのペンションに行って麻薬を売ってたんだよ。」

右京「なるほど、彼らは麻薬の前科がありましたか。」

角田「当時こいつらの客はほとんどが高校や大学のガキ相手で、勉強の効率アップ
だとか言って商売してたらしいよ。」

カイト「それじゃ亡くなった『大石智子』や『辻遥子』もその二人の客だった可能性が?」

角田「たぶんそうかもしれんな、ちなみにこいつらが最後に取引場所に使ってたのが
『伊豆パシフィックランド』っていう貸別荘だそうだ。」

右京「なるほどわかりました、カイトくん行きましょう!」

カイト「ちょっと杉下さん!まさか杉下さんもあんな『呪いのビデオ』なんて信じてるんですか?」

右京「以前言いましたが僕はオカルトに興味津々でしてね、特に幽霊や超能力なんて
興味を注がれませんか?」

カイト「まったく…まぁ早津さんを落ち着かせるのもいいかもしれませんね、俺も付いてきますよ!」

角田「けど行ったってもう何も無いけどね…」

カイト「え?そこ今はもう潰れちゃったんですか?」

角田「あぁ…15年前だったかな、その別荘の床下にある『井戸』から『死体』が出てきてね。
それ以来気味悪くて人が寄り付かなくなって潰れちまったんだとさ。」

カイト「『井戸』…『死体』…杉下さん…まさか!?」

右京「課長、そのお話詳しくお聞かせ頂けますか?」

角田「あぁ、ウチも当時その別荘に張り込みとかしてたからその事件はよく覚えてるが
死体を見つけたのは二人の男女だったそうだ、男の方は『高山竜司』、女の方は…
『浅川玲子』…確かそんな名前だったな。」

カイト「『浅川玲子』ってそんな…!けど二人は何で死体を見つけたんですか?」

角田「警察も事情を聞こうとしたんだが高山って男が翌日、自分の家で死んでてさ…
そんで浅川って女の方も事件後行方不明でわざわざ実家の方まで尋ねに行ったら、
なんと驚いた事に親御さんが変死体で発見されてたんだよ!
まぁそういっても親御さんも歳だったし死因もわからなくはないんだけど…」

右京「急性心不全…ではなかったのでしょうか?」

角田「よくわかったね、そんで事件から暫くしてようやく所在が分かったんだが
その後浅川って女がトラックにはねられてさ、即死だったよ。
結局何で二人が死体を発見できたのかは今でも謎のままなわけだわ。」

右京「という事は…その死体は身元不明のまま無縁仏で処理されたという事でしょうか?」

角田「いや、一応死体の身元は判明しているんだがね…
親類が遺骨を引き取りに来てたみたいだしたぶん実家の墓に供養されてんだろう。」

右京「ちなみにその死体の名前はわかりますか?」

角田「よく覚えてるって言ったろ、仏さんの名前…何故だか知らんが頭に
こびり付いて離れやしないんだよな。
それで名前は『貞子』、さだが『貞』の字の『山村貞子』という名だ。」

カイト「『貞』ってあのビデオの内容の…杉下さん…まさかこれってやっぱり…」

右京「えぇ、『呪いのビデオ』…本物かもしれませんね!」

とりあえずここまで

リング側はリング2以降の話になっています

らせん、ループ、貞子3Dの設定は無しで


乙 リングって一言に括っても色々あるんだな…

乙! リング2は確か新たなノロイ生んだから、大好きだった。 

乙。まさかこの前のひぐらしクロスの人か?

>>6
昨日の貞子3D見ましたけど石原さとみ無双…何アレ?
けど貞子役の子は可愛かった

>>7
さすがの右京さんも念力には勝てないかも…

>>36
原作者曰く人類貞子化=進化だとか…


>>49
原作だけでもリング、らせん、バースディ、ループ、エス
実写版は最初に放映された2時間SP、それにご存じ映画版、TVドラマ版、
おまけにアメリカのTHE RING、更にあまり知られてませんが韓国版なんてのもあるとか…

>>50
2のラストはあれも中々恐いですよね

>>51
いえ全く違います
けどあの人のSSは読んでましたがすごい面白かった…

ループまでしか知らないけど エスってなんぞ?

ホラーは好きだけど相棒を知らない俺に右京さんがどんなのか教えてくれ。

~静岡県警~


遺留品係


8月26日、PM15:00


右京とカイトは先ほどの角田課長の話を聞きここ静岡県警の遺留品係に来ていた。

職員「それではこちらでお待ちください。」

カイト「まさかその日のうちに静岡県警の遺留品係を尋ねるなんて、杉下さん行動早過ぎですよ。」

右京「何を言っているのですか、早津さんの呪いはあと4日までなんですよ。
我々には時間も手掛かりも少ない、迅速に行動するに越した事はありませんよ。」

職員「お待たせしました、『伊豆パシフィックランド』での事件の資料です。」

右京「どうもありがとう、やはり思った通りです。カイトくん、これを見てください。」

カイト「これは15年前の『伊豆パシフィックランド』の宿泊者名簿…これは!」

右京「えぇ、『岩田秀一』、『能美武彦』、『大石智子』、『辻遥子』、の4人の名前が載っています。
それに彼らが泊まった日、この○月□日は…ひぃ…ふぅ…15年前の彼らが亡くなった
○月×日の一週間前です、つまり彼らは…」

カイト「『伊豆パシフィックランド』に泊まった日…全員で『呪いのビデオ』を観た…
そういう事ですか?」

右京「それから彼らはビデオに細工を施してしまった、恐らくただの悪戯半分だったのでしょうが
まぁ本物だとは思わなかったのでしょうね、その所為で彼らは最初の犠牲者になってしまった。
そしてそれから数日後…見てください。『浅川陽子』…彼女もここに泊まりに来ていますよ。」

カイト「それじゃ『呪いのビデオ』は元々ここに置いてあって…
それが『浅川陽子』によって持ち出された…」

右京「そういう事になりますね、それで『井戸』から見つかった『山村貞子』の死体の
検視報告書も見たいのですが…」

右京は職員に『山村貞子』の検視報告書を尋ねたがこの時職員の顔は思わず真っ青になってしまった。
少し渋った様子を見せながら職員は右京たちに『山村貞子』の検視報告書を見せた。

職員「こ…これが『山村貞子』の検視報告書です…」

カイト「大丈夫ですか?顔が真っ青ですよ。」

職員「…」

右京「拝見します、これは…どういう事ですか?」

カイト「何かおかしな点でもあったんですか?」

右京「『山村貞子』は『井戸』で死亡してから死体の検視報告では1年しか経過していません。
しかし発見者である『高山竜司』と『浅川陽子』の証言によれば彼女
が井戸に落とされたのは、その30年も前だというのですよ!?」

カイト「何ですかそれ!まさか『山村貞子』は『井戸』の中で30年も生き続けていた
わけじゃあるまいし…」

職員「彼女が『井戸』の中で生きていたのは間違いありませんよ…」

カイト「それって…どういう事なんですか?」

右京「詳しいお話を聞かせてもらえませんか。」

それから職員は恐らくは話したくはないだろう事について右京たちに当時の状況について話を語り始めた。

職員「あれは15年前、私も現場に駆り出されたのですが…『井戸』の中に入ってみると…
壁のあちこちに彼女が壁をよじ登ろうとして痕跡があったんですよ!」

カイト「つまり『山村貞子』は『井戸』に落とされた時まだ生きていたんですか?」

職員「ハイ、私が壁を見回すと彼女の削げ落ちた爪が見つかりました。
検視報告書を見てください、『山村貞子』の爪…割れてるでしょう…」

右京「確かに…彼女の指はかなりの負傷が確認されています。」

職員「恐らく『山村貞子』は生きながらあの『井戸』の中に閉じ込められたんだと思います。
発見者の話によると『井戸』はコンクリートの蓋がされてあって例えよじ登れる事が
出来たとしても外に出る事は不可能だったでしょうね…」

カイト「つまり『山村貞子』は自ら自殺したのではなく…」

右京「何者かの手により『井戸』に閉じ込められた…という事になりますね。」

カイト「けど一体誰が…?」

右京「それはまだわかりません、ところで『山村貞子』の死体は親族の方が引き取られた
と聞きましたが?」

職員「えぇ、『山村貞子』の叔父にあたる『山村敬』という老人が引き取りに来られました。
確か大島の実家の方へ遺骨を持ち帰ったと聞きましたが。」

右京「大島ですか…『山村貞子』の死体が発見された『井戸』に行ってみたいのですが
現在でも『井戸』は存在しているのでしょうか?」

職員「あの場所…ご存知かもしれませんが死体が出た騒ぎで近寄らなくなりましてね、
けど何年か前に国がそこに施設を作りたいから買い取ったそうですよ。
何の施設だか明かされていませんが周辺住民もあんな薄気味悪い場所を
買い取るモノ好きがいてくれて助かったと喜んでいましたがね。」

カイト「じゃぁ立ち入るのは…」

職員「ちょうど『井戸』があった辺りに建物を作ったみたいですし恐らく『井戸』なんて
もう取り壊されたでしょう、それにあそこはちょっとした施設ですから警察といえど
無許可で立ち入りは許されんでしょうな。」

カイト「どうやらここで行き詰りのようですね。」

右京「…」

~花の里~


8月26日、PM19:30

伊豆から戻った右京とカイトはいつもの花の里で夕食を食べていた。

右京「…」

幸子「思いつめた顔をなさって…何か考え事ですか?」

カイト「まぁこの人が考え事するのはいつもの事なんで気にしないでください。
けど…どうしますか?当時の事件関係者のほとんどが死んでてろくに話を聞けませんよ?」

右京「明日…大島に行ってみようかと思います。」

カイト「まさか『山村貞子』の遺骨を引き取った『山村敬』を尋ねる気ですか?」

右京「えぇ、今のところ手掛かりはそれしかありませんからね。」

カイト「なるほど…けど山村貞子は何で伊豆の『井戸』に閉じ込められてたんですかね?
一体『山村貞子』の身に何があったんだ?」

右京「なんとか彼女の足取りを掴めれば良いのですが。」

カイト「『呪いのビデオ』の内容…今のとこ判明したのは『井戸』と『貞』の字だけか。
せめてもうひとつくらいわかればな…何でしたっけ『しょーもん』がどーたらこーたら…」

右京「『しょーもんばかりしているとぼうこんがくるぞ。』ですよ、これくらい
一発で覚えておくものですよ。」

カイト「無茶言わないでくださいって、みんなが杉下さん並の記憶力があるわけじゃないんですから…」

幸子「あの…今のもう一度言ってもらえますか?」

カイト「え?みんなが杉下さん並の記憶力があるわけじゃないって言っただけですけど?」

幸子「いえ…そこじゃなくてさっき杉下さんが仰った…」

右京「『しょーもんばかりしているとぼうこんがくるぞ。』の事ですか?」

幸子「そう、それです!確か刑務所に居た時に大島出身の人がいて
その人がよく方言で言ってたんですよ、『しょーもんばかりしているとぼうこんがくるぞ。』って!」

カイト「まさかこんなところでヒントが出て来るなんて…それでこれ何て意味なんですか?」

幸子「確か…『水遊びばかりしていると幽霊が出て来るぞ』そんな意味だって言っていましたけど…」

カイト「『水遊び』…『幽霊』…ますますオカルト染みてきやがる…
これじゃ捜査一課の伊丹さんたちがお手上げになるのも無理ないっすね。」

右京「幸子さん、どうもありがとう。やはり大島に何かあるとみて間違いないですね!」

カイト「けど早津さんの呪いの日まであと4日…つーかもう今日も終わりますし
実質3日くらいしかありませんよ。
そんな短期間で俺たち二人だけで45年以上も前に死んだ人間の足取りを追うのは
正直厳しくないですか?」

右京「そうですね、まぁ一応手は打っておいたので心配する必要はないと思いますよ。」

カイト「?」

~警視庁~


組対5課


同時刻

大木「お疲れっす。」

小松「お先に失礼します、あれ?課長残業っすか?」

角田「まぁな、特命の連中には世話になってるからちょっと調べ事をね…」

~大島~


フェリー乗り場


8月27日、AM10:00


アナウンス「ご乗船ありがとうございました、またのご乗船をお待ちしております♪」

カイト「片道2時間、ようやく着きましたね。」

右京「さて…それじゃ山村さんのお宅へ向かうとしましょうか。」

カイト「あ、その前に一応ここの駐在さんに来る事連絡しておいたはずなんですけど…
おかしいな、誰も来やしない?」

右京「キミ…駐在さんを旅行会社のツアーガイドと勘違いしてませんか?」



??「す・ぎ・し・た・さ~ん!お待ちしていましたよ!!」



右京「おや…この声は?」

カイト「何だこの垂れ幕は!?」

その垂れ幕にはでかでかと…



―歓迎!特命係御一行様!!―

大島へようこそ!!



…と書かれてた。

カイト「恥ずっ!どうなってんだこれ!?」

右京「それでこんなところで何をしているのですか陣川くん?」

陣川「ハッ!実は近年この大島にも犯罪の魔の手が押し寄せているようなので
この陣川公平がその魔の手から大島の人々を救うため参上した次第です!」

カイト「つまり何かヘマやらかしてここに飛ばされたって訳でしょ、何やってんすか?」

右京「まぁそれはともかく陣川くん、さっそくですが我々は山村さんのお宅へ行きたいのですが…」

陣川「その前にせっかく垂れ幕まで作ったんですし、みんなで仲良く写真を撮りましょうよ♪」

カイト「あのですねぇ…俺ら別に遊びに来たわけじゃ…」

右京「まぁいいじゃないですか、どの道フェリーは午後まで便がありませんし記念に一枚くらい。」

陣川「それじゃ行きますよ、ハイチーズ!」


パシャッ


それから右京とカイトは陣川の運転する車に乗り山村宅へと向かっていた。

陣川「いやー、嬉しいな!杉下さんとまた捜査が出来るなんて♪今度はどんな事件なんですか?」

カイト「いや…まだ事件と呼べるほどのモノじゃないんですけど…」

右京「45年前に失踪した『山村貞子』なる人物の足取りを追っているんですよ。
既に彼女は亡くなっていますが彼女の遺骨を引き取ったという、
『山村敬』という人物に会いに来たのですよ。」

陣川「前任の駐在の話だと『山村』という家は以前はでっかい網元だったらしいんですけど
今は旅館を経営してるって話ですよ。」

カイト「旅館?」

陣川「確か先代はもう15年前に死んで今は息子夫婦しかいないのですが…」

右京「15年前ですか。」

~山村家~


8月27日


AM11:00


右京たちは訪れた山村家が営む旅館を訪れ、女将である『山村和枝』に『山村貞子』に
ついての話を聞こうとしたが…

和江「帰ってください!」

カイト「あの奥さん…我々はお話を聞きたくて…」

和江「養父はその『貞子』さんの所為で死んでしまったんですよ!
それもあなたたちのような本土の人たちに何度も関わったばかりに!!」

右京「失礼ですがそれはどういう意味でしょうか?」

和江「よくも白々しい…とにかくお話する事はありません!お帰りください!」

陣川「あのねぇ…奥さん、こちらは本庁から来てて…」

右京「いえ…陣川くん、我々は今日のところは帰りましょう。失礼します。」

和江「…ハァ…」

~駐在所~


8月27日、PM19:00


陣川「すみません、まだ夏休みの時期ですので旅館を取れなかったもので…」

カイト「日帰りの予定がまさか1泊する羽目になるなんて、おまけに陣川さんの駐在所でとは…」

陣川「なんだぃ!文句あるのか!?」

右京「元々日帰りで済ます予定でしたが、まぁ夏休みだと思って満喫しましょう。」

カイト「けどあの奥さんの態度…一体何があったんですかね?」

陣川「実は杉下さんたちには黙っていたのですが…これも前任の駐在から聞いた話なんですけどね…
15年前に当時の山村家の当主の『山村敬』氏が本土に行ったきり帰ってこなくて…
暫くしたら死体で発見されたとか…」

右京「なるほど、そんな事があったわけですか。ところでお亡くなりになった原因は?」

陣川「なんでも急性心不全だったとか…まぁ歳だったんでしょうね。
かなりの高齢だったという話ですから、遠出した無理が祟ったんじゃないんですかね?」

カイト「急性心不全…まさか『山村敬』さんも…」

右京「『呪いのビデオ』に巻き込まれた可能性が高いですね!」

その時駐在所の部屋の中である写真を発見した。
それは苦しみ…もがいている人々、白い布を被っている男性の写真が貼られていた。

陣川「あぁ、この写真ですか?昔この大島で噴火がありましてね。
その時に撮られた写真だそうです、なんでも大変だったらしいですよ。
突然の噴火で住民は大混乱、ガスは蔓延するし…当時はガスマスクなんて無かったから
白い布を頭に覆って対応してたとか…」

カイト「杉下さんこれって…」

右京「えぇ、間違いないようですね。」

―「ごめんくださ~い。」

駐在で話し合っていた右京たちのところへ一人の50代くらいの女性が訪ねてきた。
女性は何やら荷物を持ってこちらへやって来たようだが…

陣川「お、来た来た!待ってましたよ!」

女性「ハイ陣川さん、頼まれてた夕食持ってきましたよ。」

カイト「陣川さん…これは一体?」

陣川「まぁ旅館は駄目でしたけど、一応わざわざお越しいただいたわけですし
せめてご馳走くらいはと思いまして近くの旅館に夕飯をお願いしたんですよ!」

カイト「おぉ!陣川さんなのに気が利きますね♪」

陣川「それ…褒めてるつもりなのかい?」

右京「失礼、ひとつお尋ねしたいのですがよろしいでしょうか。」

女性「ハイ…なんでしょうか?」

右京「実はですね、恐らくこの島の方言なのですが…
『その後、体はなあしい?しょーもんばかりしているとぼうこんがくるぞ。
いいか、たびもんには気ぃつけろ。うぬは、だーせん、よごらをあげる。
あまっこじゃ、おーばーの言うこときいとけぇ。じのもんでがまあないがよ』
これの意味を知りたいのですがご存じありませんか?」

女性「随分と古い方言を使うんですね、そんな方言使うのこの島でも
かなりの年寄りじゃないと使いませんよ。
確か意味は…
『その後、身体の具合はどうだ? 水遊びばかりしていると、お化けがくるぞ。
いいか、よそ者には気をつけろ。 お前は、来年子供を生むのだ。
娘っこだから、お婆ちゃんの言うことはよく聞いておけ。
地元の者で構わないじゃないか』という意味ですね。」

カイト「身体の具合はどうだ?水遊びばかりしているとお化けがくる?
よそ者には気を付けろ?お前は来年子供を生む?おばあちゃんの言う事は良く聞け。
地元の者でも構わないじゃないか?
これ…もう何の事だかさっぱりわからないんですけど?」

右京「つまりこれはお年寄りの忠告なのでしょうね、里帰りした若い未婚の女性を
心配しての忠告でしょうね。
若い女性のお身体の心配をして、よそ者への警告、子供の出産、
大体こんなところでしょうかね。」

カイト「そうだ、あの奥さんくらいの年齢ならたぶん知っているんじゃないんですか?
俺たち『山村貞子』って女性を調べに来たんですけどね…」

女性「『山村貞子』ってひょっとして貞ちゃんの事かい?」

右京「『山村貞子』さんの事…ご存じなのですか?」

女性「ご存じも何も私はあの子とは同級生だからね、けどあの子は15年前に…」

右京「えぇ、それは存じてます。その『山村貞子』さんの事について何か存じている事は
ありますか?」

女性「アンタら…貞ちゃんのお母さんの『山村志津子』さんについて知っているかい?」

カイト「『志津子』?いや…奥さん、俺たちは『貞子』さんについて聞いてるんですけど。」

右京「カイトくん、ここはとりあえず黙って聞いておきましょう。」

女性「『山村志津子』…昔からこの島にいる連中の間じゃこの人の名前が出ると
みんな口を閉ざしてしまうんだよ。」

それから女性は語り始めた、かつて『山村志津子』は過去に伊豆大島の噴火を予知した
超能力者であった事、彼女の噂を聞きつけた『伊熊平八郎』という本土から来た学者が
『志津子』と不倫関係に陥りやがて子供を身籠り生まれた子が貞子である事、
そして…

女性「それから暫くして従兄弟の『山村敬』さんが『志津子』さんを売り出そうと
マスコミを集めて公開実験をやったらしいんだよ。
実験は成功したらしいんだが『志津子』さんはマスコミ連中からやれインチキだのと
衆目の前で罵られてね…それが原因で発狂しておかしくなったのさ…」

カイト「酷い話だな、『山村志津子』さんは見世物にされちまったわけですね…」

女性「酷いのはその後さ、その実験中にインチキだと騒いだ記者が死んじまったんだよ。
死因は急性心不全…ただの病死扱いだったけどこれは『志津子』さんが
呪い殺したんじゃないかって当時噂されててね…」

右京「ひとつ聞きたいのですが、その実験に娘である『山村貞子』さんは
現場に立ち会わせていたのですか?」

女性「そうだと思いますよ、これは貞ちゃんから聞いた話ですから。」

右京「あなたは『貞子』さんと随分親しかったみたいですけど彼女は
どんな人だったのでしょうか?」

女性「大人しいけど優しい子でしたよ、けど小学校卒業して母親の『志津子』さんが
亡くなったらすぐに父親と一緒に本土の方へ行っちゃったんですけどね。」

右京「では彼女が生前この島に帰ってきた事は?」

女性「大人になってから何度か母親の『志津子』さんの法事で戻ってきたはずだと思いますけど…」

話を終えた後、女性は帰って行った。
右京とカイトは先ほどの話を『呪いのビデオ』と照合してみた。

カイト「さっきの話で大きく前進しましたね。つまり『山村貞子』は
何度目かの法事でお婆さんから忠告を受けていた。」

右京「『老婆の方言』、『噴火の記事』、『逃げ惑う人々』、『白い布を被った男性』、
そして『サイコロの音』、『インチキという人々の罵声』、恐らくこれは
『山村志津子』の超能力の公開実験の光景を意味しているのでしょう。」

カイト「明日もう一度山村家に行ってみましょう、あの家絶対に何か隠してますよ!」

そして翌日


~山村家~


8月28日、AM8:00


ドンドン


陣川「山村さん、駐在の者です!昨日も言ったように『貞子』さんの件でお話があるんですけど!」

右京、カイト、陣川の三人は朝早く再び山村家を訪れていた、しかし留守なのか人の気配が無かった。

右京「もしかしたら何かあったのかもしれません、家の中にお邪魔してみましょう。」

カイト「いいのかな…こんな事しちゃって…」

陣川「何を言うんだ!警察官が市民の安全を考えるのは当然の事じゃないか!」

右京「陣川くんの言う通りですよ、さぁ中へ入りましょう。」

カイト「まったく都合がいいんだから…お邪魔しま~す。」

家の中に入ってみるもののやはり人の気配はしなかった、三人は家の中を探索すると
『ある部屋』に辿り着いた、その部屋には割れた『鏡』が置いてある和室だが
右京とカイトはその『鏡』に見覚えがあった。

カイト「この『鏡』…鏡面部分が割れてますけどこれ間違いないですよ!」

右京「えぇ、あの女性が髪を結っていた『鏡』と同じ形をしていますね。
しかし何故鏡面が壊れているのでしょうか?」

陣川「あの杉下さん…部屋の隅に置いてあった古い写真があるんですけど…
映っているのは女性です、年齢は30代後半といった感じですかね?」

陣川が見つけた写真、その写真に写っていた女性は早津の描いた
『髪を結う30代後半~40代前半の女性』と同じ顔をしていた。

カイト「ビンゴですよ杉下さん!やっぱりこの家に何かあるんですよ!」

右京「…そろそろ出てきては如何ですか、和江さん?」

和江「いつから気付いていたのですか?」

右京「表の車はそのままでしたし靴はキレイに整ったまま、外出した形跡が無い事くらい
一目瞭然ですよ。」

陣川「なるほど!さすがは杉下さん!一発でそんな事を見破るなんて!!」

カイト「いや見破ってないのアンタだけだから…」

和江「正直…もう私疲れたんです。この家…呪われているんですから…」

カイト「呪われている…どういう事ですか?」

和江「その写真の女性が原因です。」

右京「この写真の女性…『山村志津子』さんですね。」

和江「そうです、私は元々この家に嫁として入ったので『志津子』さんどころか
『貞子』さんの事も知らなかったんですけど…
15年前の事でした、今のあなた方みたく『貞子』さんや『志津子』さんについて
尋ねてきた男女の二人組が来たのです。」

カイト「『浅川陽子』と『高山竜司』の事ですね。」

和江「二人は義父に『貞子』さんと『志津子』さんの事を聞いた数日後に
本土で『貞子』さんの遺骨を引き取ってくれとの連絡が入りました。
養父はその遺骨を引き取り…それから…」

右京「海に埋葬したのですね。」

和江「そうです…海は『貞子』の生まれた場所だと養父は常々そう言ってましたから。
そのすぐ後です、養父が死んだのは…」

陣川「けど急性心不全だと伺いましたよ、高齢だったし仕方ないのでは?」

和江「何も知らないくせに!あなた…養父がどんな顔で死んでたかわかりますか?
まるでこの世のモノとも思えない恐怖に怯えた死に顔をしていたのよ!!」

カイト「恐怖に怯えた死に顔…ですか。」

右京「亡くなった吉野さんや小宮さんと同じですね。」

和江「それから暫くしてからよ…ウチの中に幽霊が出始めたのわ。『志津子』さんの幽霊が…
あなたたちが入ったこの部屋…泊まりに来るお客から気味の悪い女が髪を結いながら
こちらを見つめているって…私も…もう何度も見ているわ…」

右京「ひとつお聞きしたいのですが、あなたは昨日僕たちが訪れた時に
『あなたたちのような本土の人たちに何度も関わったばかりに』と仰いましたね。
『何度も』…つまり僕たちや浅川さんたちの他にもここに『山村親子』について
尋ねに来た人がいるんじゃないのですか?」

和江「えぇ…子連れの若い女性が『貞子』さんについて訪ねてきました。
女性は確か名前が『高野舞』と名乗ってましたけど。
そういえば彼女が来てから『志津子』さんの幽霊が出始めたような気が…」

右京「『高野舞』…ですか、彼女は何故子供を連れていたのでしょうかね?」

和江「そんな事知りませんよ、いいえ…もう何も知りたくない…」


和江はそのまま俯いてしまい泣き出してしまった、後で帰ってきた旦那に彼女を託し
右京とカイトは島を立ち去ろうとする。
しかしフェリー乗り場に乗り込もうとした二人の前に昨日駐在に夕食を
届けに来てくれた女性がやって来た。

フェリー乗り場


8月28日、PM12:00


カイト「どうしたんですか!そんなに慌てて?」

女性「間に合ってよかった!実は思い出した事があるんだけどね。」

右京「わざわざフェリー乗り場まで駆けつけてくれたのです、一体どういった
ご用件なのでしょうか?」

女性「私、一度だけ山村の家に遊びに行った事があるのよ。
『志津子』さんの事件があってから暫くはあの家にあまり人が近寄らなくなったんだけど
私は貞ちゃんの友達だったから…親に黙って遊びに行ったのよ。
それでね…その時に既に気が振れた志津子さんが私を睨んでて…それで恐くなった私は
貞ちゃんとはぐれて家の中で迷子になったのよ。
その時だったわ、私は貞ちゃんを見つけたんだけど…けどそれは貞ちゃんじゃなかった。」

カイト「ちょっと待ってください!それはつまり『貞子』さんの姉とか妹じゃないんですか?」

女性「いいえ…当時あの家に女の子は貞ちゃんしかいなかった、その女の子は貞ちゃんと
同じ外見をしてたけど貞ちゃんじゃない…根拠のない直観だけど私にはその確信があった。
その子は長い黒髪で顔を隠していたけどその隠れた顔から気味の悪い目つきで
私を睨んできた、恐くなった私は急いで逃げたんだけど…
気付いたらその子はいなくなっていた、それにいつの間にか貞ちゃんも戻ってたって話よ。」

右京「『長い髪で顔を隠した女の子』…ですか。」

カイト「それって…あの『呪いのビデオ』で『志津子』さんと一緒に居た…」

右京「えぇ、その子と見て間違いないでしょう。」

カイト「なんだか怪談染みた話ですね、杉下さん…今の話聞いてどう思いますか?」

右京「…さぁ、まだ何とも言えませんね…」

東京に戻った直後彼らは警視庁の特命係の部屋に戻っていた。


~特命係~


8月28日、PM16:00

角田「それじゃぁ何かい?二人して大島で一泊してたってのかい?
まったく窓際部署は気楽でいいねぇ…こっちは忙しい合間を縫って手伝ってあげたのにさ…」

カイト「わかってますって、だからお土産買ってきましたから!ハイ、大島名物のくさや♪」

角田「お前さぁ…若いんだからもっと小洒落た物買って来いよ…
まぁそれはともかくとしてだ、調べておいた件だが面白い事がわかったぞ。
『山村貞子』の死体を発見した『浅川陽子』と『高山竜司』だがこの二人…
なんと元夫婦だったんだとさ!」

カイト「元夫婦?」

右京「やはりそうでしたか、若い男女が長時間一緒に行動しているのですから
もしかしたら二人はただならぬ関係かと思っていましたが…なるほど。」

角田「それでな二人には子供がひとりいたんだが…
名前は『浅川陽一』といって事件当時はまだ小学1年生だった。
まぁ両親は死んじまって親類も『高山竜司』の方は天涯孤独だったようだし
『浅川陽子』も前に言ったが両親が死んじまって…
それで仕方なく当時『高山竜司』の教え子ってのが引き取ったそうだ。」

カイト「教え子が?親族でもない人間が引き取ったんですか?
いくら恩師だからってそこまでしますかね?」

角田「そこは俺には言われてもわからんが…とにかく二人は今でも一緒に暮らしているらしいぞ。」

右京「ちなみに『浅川陽一』を引き取った教え子の名前は?」

角田「当時大学生で今は城南大学の教授の『高野舞』って女だ。」

カイト「『高野舞』!杉下さん…この事件一体どうなってんですか!?
調べれば調べるほど謎が深まるばかりじゃないですか!」

右京「…角田課長、『山村貞子』について何かわかった事は?」

角田「そっちはさっぱりわからんかった、何しろ45年も前に失踪した人間の足取りを
掴む事なんて無茶過ぎる…当時彼女がなんらかの事件に関わっていたのなら
警察のデータに名前くらい残っているかもしれんが生憎何も無くてな…
前科者のリストだって調べたんだぞ…それでも何も出なかったよ。」

カイト「けど彼女は何かの事件に巻き込まれて『井戸』に閉じ込められた、つまりこれって…」

右京「そう、つまり警察には届け出されていない事件に彼女は巻き込まれた。
いえ…もしかしたら彼女自身が巻き起こしてしまったのかもしれませんね…」

カイト「けど足取りは掴めず仕舞い…これでお手上げですかね?」

角田「フフフ、…と普通は思うだろ、だが組対5課の課長を舐めるなよ!
実はな『貞子』の方は無理だったが父親の『伊熊平八郎』の居場所が判明したんだよ!」

カイト「『伊熊平八郎』って『山村貞子』の父親ですよね!まだ生きてるんですか!?」

角田「そうだ!だが結核を患っているらしくてな、現在は『南箱根療養所』に入院している。」

~南箱根療養所~


8月29日、AM10:00


翌日、右京とカイトは朝早くに『南箱根療養所』を訪れていた、目的は勿論
『山村貞子』の父である『伊熊平八郎』から『呪いのビデオ』を解くためである。
二人は『伊熊平八郎』の病室までやってきたが彼は結核を患いその命は残りわずかと
いった様子である。
ちなみに今日で早津の命は残り一日であった…

看護師「あの…『伊熊』さんは結核が悪化してもう余命幾許もない状態ですのでくれぐれも
無理はさせないで上げてください。」

カイト「わかっておりますって。」

右京「出来れば我々と伊熊さんだけでお話ししたいので席を外してもらえますか?」

看護師「わかりました、何かあれば知らせてください。」

こうして看護師は病室から出て行き、室内には右京とカイト、それに『伊熊平八郎』の
三人だけで話を始めた。

カイト「『伊熊』さん、わかりますか?我々は警視庁の者なんですけど!

伊熊「…シュコー…」

カイト「ダメですね、ピクリとも動きもしない…
まぁ酸素マスクつけてるし喋るのは無理そうですけど」

右京「『伊熊』さん、僕たちはあなたの娘である『山村貞子』さんについてお尋ねしたい
のですがわかりますか?」

伊熊「!?」

『山村貞子』この名前を言った直後『伊熊平八郎』の反応は明らかに変化があった。
そして彼は酸素マスクを取り次の言葉を言った、それは…

伊熊「サダコ…スマナイ…ダガ…オマエハキケンナンダ…ダカラワタシハオマエヲフウイン…スルシカナカッタ…」

カイト「危険…何を言ってるんですか?」

右京「…『伊熊』さん…単刀直入に要件を申し上げますが僕たちは彼女の作った
『呪いのビデオ』の謎を解くためにこちらに伺いました、何か心当たりはありますか?」

伊熊「『ノロイ』…ソウカ…アノコハイマデモノロイツヅケテイルノカ…ムリダ…アノコノノロイヲトクコトハデキナイ…」

カイト「ちょっと…何を言ってるんですか?」

伊熊「モシモノロイヲトクコトガデキルノナラ…ソレハ…ノロイヲフヤスシカナイ…」

右京「!?…やはりそういう事ですか…」


伊熊「グフッ!」


カイト「『伊熊』さん!?」

この後『伊熊平八郎』の容体は急変し彼は面会謝絶となってしまった。
これ以上の聞き込みは無理だと判断した二人はその場を立ち去るしかなかった。

~特命係~


8月29日、PM16:00


結局二人はろくな情報を得られずに帰ってきた、しかし既に右京はある確信に
思い至っていた。

カイト「ねぇ…杉下さん…」

右京「はぃ?」

カイト「本当はもう呪いを解く方法わかっちゃったんじゃないんですか?
それなのに何で教えてくれないんですか?」

右京「確かに…僕は『山村貞子』が仕掛けを施した『呪いのビデオ』から
助かる方法を見つけ出しました…しかし…」

カイト「何故教えないんですか!早津さんにはもう残り9時間しかないんですよ!?」

そうカイトは正義感強く右京に強く訴えた、しかし右京の口から出た返事は
ある意味そんなカイトの訴えをあざ笑うモノだったのかもしれない。

右京「キミ…これから僕が言う事に大人しく聞く自信はありますか?
何があろうと…怒らず…そして絶望しないと…」

カイト「わ…わかりました…もう覚悟は出来ています、だから話してください。」

そして右京はカイトの前で『呪いのビデオ』の真相を語り始める、だがそれは
決してすべてが円満に解決するための糸口などではなかった…

右京「そもそも『呪いのビデオ』を解く方法は至って簡単なのです。
知ってしまえば誰もが実行できる…そんな方法です。
『山村貞子』はそうやって『呪い』を増やそうとしていたのでしょうね。」

カイト「『呪い』を増やす…どういう事なんですか?」

右京「『呪いのビデオ』の老婆が言っていた言葉…
『その後、体はなあしい?しょーもんばかりしているとぼうこんがくるぞ。
いいか、たびもんには気ぃつけろ。うぬは、だーせん、よごらをあげる。
あまっこじゃ、おーばーの言うこときいとけぇ。じのもんでがまあないがよ』
これこそが最大のヒントだったのですよ!」

カイト「けどその意味って…
『その後、身体の具合はどうだ? 水遊びばかりしていると、お化けがくるぞ。
いいか、よそ者には気をつけろ。 お前は、来年子供を生むのだ。
娘っこだから、お婆ちゃんの言うことはよく聞いておけ。
地元の者で構わないじゃないか』っていうお年寄りが良く言う忠告みたいなモン
でしょう、これのどこにヒントがあるんですか?」

右京「全てがヒントなのではありません、この言葉のある一部分…そう…
『うぬは、だーせん、よごらをあげる。』これが最大のヒントなのです!」

カイト「確かそれ『お前は、来年子供を生むのだ。』って意味じゃ…」

右京「そう…『子供を生む。』これこそが最大の手掛かりなのですよ!」

カイト「最大の手掛かりって…それどういう意味なんですか?」

右京「『岩田秀一』、『能美武彦』、『大石智子』、『辻遥子』、『高山竜司』、
そして15年後に『呪いのビデオ』を観て亡くなった『吉野賢三』…それに『小宮』
恐らく他にも被害者はいるかもしれませんがこれだけの被害者が出しながら
何故『浅川陽子』だけが1週間経っても生き残っていられたのか…
それはつまり他の被害者は誰も1週間以内に行わなくて彼女だけが行った行為が
あったのですよ!!」

カイト「『浅川陽子』のみが行った行為…それって『山村貞子』の死体を『井戸』から
見つけ出した事じゃないんですか?
いや…違う…それなら何で『高山竜司』が死んだんだ?」

右京「『浅川陽子』と『高山竜司』もそう思っていたのでしょうね。
恐らく二人はこう思ったはず、『井戸から貞子を救い出し供養すれば呪いは止まる』と…
しかし彼らは読み違えてしまった…結果『高山竜司』のみが死んでしまったのです。」

カイト「じゃぁ…『浅川陽子』だけがやって『高山竜司』だけがやらなかった行為…
一体何だ…『子供を生む』…『呪いを増やす』…『呪いのビデオ』…
『COPY』のラベル…ハッ!?
杉下さん…俺…わかっちゃった気がするんですけど…まさか…けどそんな…
そんな簡単な方法で助かるんですか!!?」



右京「そう…被害者の中で『浅川陽子』だけが行った行為…『呪いのビデオ』の
複製…つまりダビングして他の相手に見せる事なんですよ!!」



カイト「なら…すぐにこの事を早津さんに教えなきゃ…あっ…」

右京「そうです、その『呪いのビデオ』はもう小宮さんが吉野さんの部屋で
処分させてしまったからテープをダビングする事はもはや不可能です…」

カイト「けど『山村貞子』の目的ってなんですか?こんな事をして何になると思ったんですか!?」

カイトは当然の疑問を右京にぶつけた、右京はカイトの疑問に答えるべく
黒板に三角形をピラミッド方式に4層ほど区切って書き、
それぞれ上が上位層、2番目が中位層、3番目が下位層、そして4番目が最下層と説明した。

右京「この上位層をたとえば『浅川陽子』としましょう。
『浅川陽子』は生き残るために『呪いのビデオ』を複製し他者に見せる。
更に見せられた他者はそれを他の者に見せようとする、これが2番目の中位層です。
それから『呪いのビデオ』は巡り歩き…
最後にこの4番目の最下層の人間たちに行きつきます。
しかし彼らは既に『呪いのビデオ』の存在を知っている…既にそこまで浸透している
のですから知らないという方がおかしい…ですから当然見ないという反応をするでしょう。
そうなると死ぬのは3番目の下位層の人間たちが当てはまります。」

カイト「何だよこれ…考えただけで頭がおかしくなる…
杉下さん…この連鎖が途中で途切れる可能性はありますよね?」

右京「勿論…いくつかはあるはずです…が…どれかひとつは必ず残って
この4番目の最下層まで辿り着くのだけは間違いありません。
そしてこの3番目の下位層…計算すれば全人類の4分の1…およそ四人に一人が
死ぬ計算になるでしょうね。」

カイト「そんな…これじゃまるでウイルスじゃないですか!?」

右京「ウイルスですか…うまい例えですね。
ですが無論これは机上の計算ですから実際はこれよりも被害が大きいはずです。
しかしそれは未然に防げました、恐らく偶然でしょうが小宮さんが
『呪いのビデオ』を破壊してくれたおかげでこれ以上の被害は出ないでしょう。」

カイト「じゃあ『早津』さんが助かるには…」

右京「『呪いのビデオ』を複製して他人に見せる事ですが…かりに出来たとして
誰に見せる気ですか?
見せられた相手には更に他の誰かに見せてそれの繰り返し…
ですがそれもいずれは終わりが来て先ほど話した結果になるのですよ。」

カイト「ならもう『早津』さんは助からないって事なんですか?」

右京「残念ながらそうなりますね…」

カイト「ならせめてここまでの経緯を『早津』さんに話しましょう、一応俺たちは
早津さんにこの件を頼まれた訳だしせめて最期まで付き合ってあげないと…」

右京「そうですね、彼にはすべてを知る権利があります。」

こうして右京とカイトは早津にすべてを伝えるべく彼の会社へ向かった。

しかし早津は会社には来ておらず、それどころか家や携帯に掛けても留守で

散々探し出して彼が実家にいる事を突き止めた。

しかし残り時間は5分を切っていた。

早津の実家


8月29日、PM23:55


右京とカイトは早津の実家を訪ねたが彼は自分の部屋に引き籠っており
両親の言う事にすら聞く耳を持てなかった。

カイト「早津さん!警視庁の甲斐とそれに杉田です!このドアを開けてください!
お話があるんです!」

早津「それってまさか助かる方法が見つかったんですか!?」

右京「残念ですが…あなたを救う方法は見つかりませんでした。」

早津「そ…そんな…」

カイト「申し訳ありません…せめてあなたの最期まで俺たち付き合う事にしました…」

早津「俺…俺…死ぬのなんて嫌ですよ…まだまだやりたい事たくさんあるし…
それに…嫌だぁぁぁぁぁぁ!!!!死にたくなんかないよ!!?」

それから右京とカイトは『早津』に『呪いのビデオ』の経緯を説明した。
『山村貞子』の事や『山村志津子』、『伊熊平八郎』、等の事を…
しかし『呪いのビデオ』の呪いを解く方法だけは教えなかった。
これ以上下手な希望は持たせたくはないという配慮だったのかもしれない。

早津「なるほど、そういう事でしたか…『山村志津子』、『伊熊平八郎』、
確か浅川さんが当時『吉野』さんや『岡崎』さんにそんな名前の人たちを
調べるように頼んでいたのを思い出しましたよ。
あ、もう時間だ。不思議なモノですね…人間死期を悟るとこんな穏やかな気持ちに
なれるなんて…」

そして彼のタイムリミットが残り5秒を切り出した。











早津「うっ!」

8月30日、AM0:00


右京「早津さん!?」

カイト「しっかりしてください!」


早津「…」


早津「……」


早津「………」

早津「あれ?俺生きてる…生きてるぞぉぉぉぉぉぉぉ!?」

そう、早津は死んでいなかった。それどころか彼は元気よく飛び跳ねていたのだ。
これにはさすがの右京とカイトも首を傾げた。

カイト「これってつまり…『呪いのビデオ』がインチキだったって事なんですかね?」

右京「…」

ヴィー ヴィー ヴィー


その時右京の携帯に連絡が入った、その相手は…

陣川『どうも杉下さん!こんな夜分に申し訳ありません!実はですねぇ…』

右京「もしもし陣川くんですか、今立て込んでいますので…はぃ?」

カイト「陣川さん…こんな時に…空気読めよな。それで何の用事だったんですか?」

右京「どうやら先日大島で撮った写真を僕の携帯に送ってくれるそうですが…」

カイト「どうかしたんですか?」

右京「陣川くんが言うには写りが悪いとか言っているのですよ。」

そして陣川から送られてきた画像を見て右京は何故早津が助かったのかがようやくわかった。

右京「なるほど、そういう事でしたか。どうやら『早津』さんは自分でも知らないうちに
既に複製していたのですね。」

カイト「な…何を言っているんですか?大体『呪いのビデオ』はもう『小宮』さんが壊したから…」

右京「『絵』ですよ、『早津』さんが僕らに見せた『呪いのビデオ』の内容を描いた絵…
あれが恐らくダビング代わりになったのでしょう。」

カイト「けど…誰に見せたっていうんですか?あの絵を見たのは俺と杉下さんしか…まさか!?」

右京「先ほど陣川くんが僕の携帯に転送した画像です、見てください。」


そこには右京、カイト、それと陣川が写っていた、しかしまともに写っていたのは陣川だけで
右京とカイトの顔には以前にカイトが早津を写メで撮った際の白い靄が掛かっていたのだった。


右京「どうやら『山村貞子』の『呪い』は既に僕らに行き渡っていたようですよ。」

とりあえずここまで。

本当は昨日のうちに上げたかったのですが書ききれず
こんな時間になってしまいました…

>>53
貞子3Dに合わせて発売されたリングシリーズの新作小説です
詳しくは書店に行って買ってください

>>54
ちょうど今日の相棒でシーズン1の1話放送するらしいので
それを見ればわかるかと…


今更ながらの補足説明ですが

呪いのビデオの死亡時刻がビデオを見た1週間後のビデオを見た時刻ではなく

1週間後の日付変更になってますがこれは正直一々ビデオを見た時刻とか面倒なので

そうしただけですので細かいツッコミは無しで

>>44
こちらで『浅川玲子』って表記しちゃいましたが正しくは『浅川陽子』です
間違えてすみません。

~カイトの家~


8月30日、AM6:30


カイト「…」

悦子「ねぇ享…大丈夫なの?帰って来てから顔が真っ青なんだけど?」

カイト「え…あぁ…大丈夫だって!ハァ…」

右京から自分たちが『山村貞子』の『呪い』を受けていると知ったカイトは
それから自分がどうやって自宅まで帰宅できたのか思い出せない程に落ち込んでいた。

カイト(俺が『呪いのビデオ』の『絵』を見せられたのは8月26日だ。
今日を合わせてもあと4日しかない…どうしたら…)

悦子「ちょっと…本当に大丈夫なの?何かあったらちゃんと言いなさいよ。」

カイト「何度も言わせんなって、俺は大丈夫だからさ。早く朝飯食おうぜ!」

その時カイトはある事を閃いてしまった、自分も『早津』と同じく
『呪いのビデオ』の『絵』を誰かに見せれば助かるのではないかと…
その瞬間カイトの脳裏には先日自分の目の前で死んだ『小宮』の死に顔を思い出してしまった。

カイト(俺もあんな風に苦しんで死ぬのかな…イヤだ…あんな死に方は絶対に御免だ!)

カイト「な…なぁ…悦子ってさ…『呪いのビデオ』の噂って聞いた事…!?」

この時自分が悦子に何を言おうとしたのか…すぐに後悔し止めた。
いくら自分の命を守るためとはいえ愛する者を犠牲にしたら死ぬより後悔するだろうと
思ったからだ。

カイト「ゴメン!今言った事すぐに忘れてくれ!それじゃ俺もう職場に行くわ!」

悦子「ちょっと待って亨!今『呪いのビデオ』って言ったよね。
私さぁ、その噂についてちょっと気になる話を昔チラッと聞いた事があるんだけどね…」

カイト「だからさっきの話は忘れろって…マジで!どんな話なんだよ?」

~特命係~


8月30日、AM9:00


カイト「杉下さん!重大な事がわかりました…っていねぇし…
やっぱあの人も所詮は人間か、自分があと4日後に死ぬなんてわかれば仕事どころじゃないよな。」

右京「お早うございます。」

カイト「うわぁっ!?後ろにいたんですか…脅かさないでくださいよ!
俺てっきり…いえなんでもありません。」

右京「はてさて何を言っているのやら…それで先ほど大声で叫んでましたが
何かわかったのですか?」

カイト「実は俺…悦子に『呪いのビデオ』の事を話しちゃって…」

右京「まさかキミ…『早津』さんみたく悦子さんに『呪いのビデオ』の『絵』を見せて
彼女に『呪い』を…」

カイト「いや!そんな事しませんよ!まぁギリギリで思いとどまったんですけどね…
…ってそうじゃなくて悦子が昔聞いた『呪いのビデオ』に関わる噂話があるんですけど!」

そしてカイトは悦子から聞いた話を右京に語った。

悦子が聞いた話によればとある『女子学生』が古い屋敷に迷い込んだ夢の話らしい。

その『女子学生』は広い屋敷の中で迷子になり、ふと気づくとある階段の前に近付いていた。

彼女はその階段を上ろうとするがその階段を上の階から奇妙な不気味さを感じてしまい、

上る事が出来なかった。

そんな時であった。



「「ギャァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!」」



若い女の叫び声が聞こえた、気になった『女子学生』は屋敷を飛び出し声のした庭へ向かった。

そこには古びた『井戸』があり、それに白い服を着た『髪の長い若い女』を襲う『中年の男』が

彼女を殺そうとして…

カイト「その『長髪の女』は『中年の男』によって『井戸』の中に落ちていったという話です。」

角田「ヒィィッ!?恐えな…何だそれ…怪談か?」

カイト「あ、課長お早うございます…ていうか居たんですね。」

角田「コーヒー貰いに来たのにお前らが変な話をして気付かなかったのが悪いんだろ。
それにしてもさっきの話なんだよ…朝っぱらから恐がらせるなっての!」

右京「今の話…どこかおかしくありませんか?」

カイト「そりゃ夢の中の話ですからねぇ、おかしいところはあるでしょう。」

右京「いえ、そうではなく…何故その女子学生は階段の上に恐怖を感じたはずなのに
舞台が突然『井戸』の方に移るのかです…
『女子学生』、それに『中年の男』と『長髪の女』…僕はこの物語には、
あともう一人登場人物がいるように思えるのですがね…」

カイト「それよりどうすんですか!俺たちあと4日しかありませんよ…」

右京「僕はもう一度『早津』さんを尋ねようと思います、思えば亡くなった『吉野』さんは
何故15年も前の『呪いのビデオ』を手に入れようとしたでしょうか?
彼は『特ダネ』を掴んだと言っていました、この事が少し気になると思いませんか?」

カイト「気になるって…記者が『特ダネ』掴むなんて当然でしょ、メシの種なんですから。」

右京「確かにそうでしょう、しかし15年前に事件を追っていた『浅川陽子』が死に、
もう一人の同僚の『岡崎』さんが精神病院に入院しなければいけない事態になり
TV局内でも曰くつきの『呪いのビデオ』ですよ。
当時関わっていた彼らはその危険性を十分理解してたはず、それなのにあえて
調べなければならなかった。何故なのでしょうかね?」

カイト「あーっ!もうわかりましたよ、さっさと『早津』さんとこ行きましょう!
残り4日ですよ、4日!」

右京「それと課長にはひとつお願いがあるのですが…」

角田「え?また!?」

カイト「気になるって…記者が『特ダネ』掴むなんて当然でしょ、メシの種なんですから。」

右京「確かにそうでしょう、しかし15年前に事件を追っていた『浅川陽子』が死に、
もう一人の同僚の『岡崎』さんが精神病院に入院しなければいけない事態になり
TV局内でも曰くつきの『呪いのビデオ』ですよ。
当時関わっていた彼らはその危険性を十分理解してたはず、それなのにあえて
調べなければならなかった。何故なのでしょうかね?」

カイト「あーっ!もうわかりましたよ、さっさと『早津』さんとこ行きましょう!
残り4日ですよ、4日!」

右京「それと課長にはひとつお願いがあるのですが…」

角田「え?また!?」

とりあえずここまで

書いてて思いますがどうもカイトくんは普通過ぎてキャラが立たせにくいかなと…

あんな超人な右京さんとタメを張れる初代相棒の亀山さんや2代目の神戸さんは偉大過ぎたと

改めて思いますわ…

乙ー
普通な分、右京さんの超人っぷりが際立つと思う

TV局


8月30日、AM11:00


早津「いやぁ!生きてるって本当に素晴らしいですよね♪
昨日からまるで鉄板でも入ってるのかと思うくらい重い肩がすんごい軽くなりましたよ!」

カイト「そりゃよかったですね…まったく俺たちに呪いを移しておいて気楽なモンですよ…」

右京「まぁ僕たちが言えた義理ではありませんよ、我々は危うく彼を見殺しにするところ
だったのですからね…」

早津「それで今日はどういったご用件来たんですか?」

右京「そもそも『吉野』さんが掴んだという『特ダネ』とは何なのか、それについて
伺いたいのですが。」

早津「『特ダネ』?えぇ、確かに『吉野』さんは何か『特ダネ』を掴んだと言ってましたが
まだ確定した情報じゃなかったので俺たちには教えてくれませんでしたね。
けど亡くなる前に政治絡みの事を調べてたのは間違いないですよ、何度か張り込みを
していたらしいですから。」

カイト「政治絡み?『呪いのビデオ』と『政治』なんて全然接点が無いじゃないですか?」

右京「ちなみに張り込みをしていた相手…どなたかわかりますか?」

早津「そういえば…一度だけ張り込みに連れて行ってもらったんですけど…
確か相手は片山雛子先生でしたね!」

カイト「片山雛子ってあの女性国会議員で総理補佐官じゃないですか!?
将来の大物と噂されてる若手議員と『呪いのビデオ』…ダメだ…全然当てはまんねえや…」

右京「片山議員ですか…なるほど、大変参考になりました。」

早津「それじゃ俺は仕事があるのでこれで!それとこの『呪いのビデオ』の『絵』ですけど
俺が持ってても仕方ないんで刑事さんたちにあげますよ、あぁ…生きてるって素晴らしいなぁ♪」

カイト「まったく…『特ダネ』って本当は片山議員のスキャンダルか何かでしょう。
絶対『呪いのビデオ』とは無関係っすよ、もうこれ以上『早津』さんから
肝心な情報は聞けませんよ。」

右京「では次に行きましょうか。」

カイト「まさか…片山議員のとこに乗り込んで…
『呪いのビデオで人が死んだのですが何か心当たりありませんか?』と尋ねる気ですか?
言っておきますけどそんな事したら門前払いされちゃいますよ!」

右京「いえ、行くのは片山議員のところではなく…」

~城南大学~


高野舞のオフィス


8月30日、PM14:00


右京とカイトは15年前『高山竜司』の教え子であり、
『浅川玲子』と『高山竜司』の一人息子である『浅川陽一』を引き取った
『高野舞』の下を尋ねていた。
彼女のオフィスに招かれた右京とカイトだがその部屋に右京はある疑問を抱いた。

舞「その…警察の方がお話って一体…」

右京「その前にちょっと気になる事が、大学教授の方なのにこの室内にはTVは勿論
PCすら置いてない…いえ、『鏡面的』な物がほとんど置いてないのはちょっと
不思議に思いましてね。」

舞「あの…まさかそんな事を尋ねに来たんですか?」

右京「すみませんねぇ、細かい所まで気になるのが僕の悪い癖でして…」

カイト「率直にお伺いします、高野さん…あなたは『呪いのビデオ』について何か
心当たりはありますか?」

カイトが『呪いのビデオ』訪ねた瞬間、『高野舞』の顔は真っ青になった。
この反応を見た右京とカイトは彼女は『呪いのビデオ』に関して、
重大な事を知っているという確信した。

舞「『呪いのビデオ』…何故あなた方がそれを…」

右京「実は我々も『呪いのビデオ』を見てしまったのですよ…」

カイト「俺たちのタイムリミットはあと4日しかありません。
当時の事…話していただけますか!」

舞「正直に申し上げます…私は…『呪いのビデオ』は見ていません。
けど…その所為で私の恩師である『高山竜司』が死んだのは存じています。
私から言えるのはそれだけです…」

カイト「いや…嘘だ!さっきの反応…あなたは間違いなく何かを知っているはずだ!」

舞「…」

舞はそれっきり黙秘した、さすがに令状も取れていない捜査なので強硬手段も出来ないが、
このままでは拉致が明かないと踏んだ右京は彼女にある脅しをかけてみた。

右京「そういえばこの大学にはそのお亡くなりになった『高山竜司』さんの
ご子息である『浅川陽一』さんが在学中だと聞いているのですが…」

舞「まさか…あなたたち…また『陽一』くんを使って…帰ってください!
もうお話する事なんかありません!!」


コンコン


右京「どなたかノックなされてるようですが?」

舞「まさか…」

陽一「『舞』さん、大声上げてどうしたの?廊下まで響いたよ。」

高野「『陽一』くん!どうして…ここに?」

右京「すみませんねぇ、どうしてもお話を聞きたいものでして。
僕らもこれでも切羽詰まった状況ですので申し訳ないと思ったのですが…」

舞「まさか『陽一』くんを呼んだのはあなたたちなんですか!」

そう、右京は予めこの大学に在籍している『浅川陽一』を『高野舞』の部屋に来るよう
お願いしていたのだ。

カイト「すいません、本当はこんな事したくはないんですけど…」

右京「これまでの関係者のみなさんの殆どが『呪いのビデオ』や『山村貞子』に
関するお話になると口を閉ざしがちでしたのでこうする以外なかったのですよ。」

陽一「あの…僕に話って何ですか?」

カイト「あなたのお母さんである『浅川陽子』さん、それとお父さんである『高山竜司』さん…
二人について話を聞こうと思いましてね。」

右京「『陽一』さん、当時の事知っている事があるなら教えて頂けますか?」

陽一「母さんと父さんの事ですか…母さんは僕が小さい頃に死んじゃったし…
父さんなんか生まれてから一度も会った事すらないですよ…」

カイト「お父さんと会った事が無い!?」

右京「二人は離婚してますからね。
離婚したのは『陽一』さんが物心つく前の事だったのでしょう。」

カイト「じゃあ『高山竜司』さんはろくに子供と会っちゃいなかったのか…
それなのに『高野』さん…あなたよく『陽一』さんを引き取ろうとしましたね。
実の父親の『高山』さんですらもしかしたら面識がないかもしれない息子をですよ?」

舞「いけませんか!恩師の息子を引き取ったら犯罪とでも言う気ですか!?」

右京「カイトくん、言い過ぎですよ!
しかしカイトくんの言い分も一理あります、実の父親ですらまともにあった事の無い
子供を引き取った、美談ではありますが疑う余地が無くも無い。
もしかしたらあなた方には15年前に何かそうなるだけの『事件』が起きたのではないですか?」

舞「あの…だから…それは…」

右京「『高野』さん、あなたの態度から察するにあなたも『山村貞子』の力に
恐怖を感じているようですね。
ですから…これだけは約束させてください。
僕たちはあなたたちの平穏な日々は絶対に壊しません!」

カイト「俺たち話を聞いたらさっさといなくなるんで、安心してください。」

舞「わ…わかりました、けどその前に『陽一』くんに席を外させてください。
彼には教えられないから…」

陽一「『舞』さん!僕はもう大人だよ!それに僕も気になってたんだ。
もうおぼろげな記憶しか覚えてないんだけど小学校の母さんが死んだ時期だけ
どうも記憶が曖昧で…僕も真実を知りたいんだよ!!」

右京「知らせてあげるべきだと思いますよ、彼ももう大人です。」

カイト「そうですよ、『陽一』くんはあなたが思っているほどガキじゃありませんって!」

舞「それではお話します、あれは先生が亡くなった直後でした…」

そして『高野舞』は15年前に自分の身に何が起こったのかを右京とカイト、
それに『浅川陽一』に話し始めた。

彼女は『高山竜司』の死亡後に『浅川玲子』の同僚である『岡崎』と知り合い
彼から『呪いのビデオ』に関する話を聞いた。

それから『岡崎』と一緒に『浅川玲子』の行方を追う事になり、
それから暫くして『浅川玲子』とその息子である『浅川陽一』を見つけたが…

舞「当時の『陽一』くんは…『貞子』の怨念にとり憑いつかれていた…
こんな事警察の方が信じてくださるとは思いませんけど…」

カイト「いや!信じますから大丈夫ですって!」

右京「構わずお話を続けてください。」

舞「その『貞子』の怨念で『浅川』さんはトラックに撥ねられて…即死でした。
私と『陽一』くんはその時現場に居たので…その時の酷い有様は今でも忘れられません…
そして私は『貞子』の謎を解くために『貞子』の生まれ故郷である大島へ向かいました。」

カイト「やっぱりあなたは大島の…あの山村家に向かったんですね!」

舞「えぇ、その時に『志津子』さんの鏡を…壊してしまって…」

右京「なるほど、アレはあなたが壊したのですか。」

舞「その後…あの恐ろしい『実験』が行われたんです…」

右京、カイト「「『実験』?」」

それは『川尻』という精神科医が『浅川陽一』にとり憑いついた『山村貞子』の怨念を
除去するという実験であった。

『高野舞』の話によればその実験の前に、最初の犠牲者である『大石智子』の死亡現場に
居合わせていて、後に精神病院に入院した『倉橋雅美』を使って実験を行ったが

その実験の所為で『倉橋雅美』は危うく死亡しかけたという極めて危険な実験だったらしい。

それから実験は開始されたが…

『貞子』の怨念は人の制御出来るモノではなかった、『貞子』の怨念は暴走し、
実験の場にいた殆どの人間は『貞子』に殺されたという…

ちなみに『山村貞子』の叔父である『山村敬』もこの実験に参加していたとの事だった。

カイト「そんな実験が行われていたのかよ…」

右京「なるほど、『山村敬』さんもこの実験に…やはり彼の死も『呪いのビデオ』に
関わるモノでしたか。
しかしひとつ疑問が、それほど大勢の犠牲が出ながら何故あなた方だけが助かったのですか?」

舞「それは…先生が私たちを救ってくれたからです。」

右京「先生?つまり『高山竜司』の事ですね。」

舞「あの実験の時…気付いたら私は『井戸』の中にいたんです…
必死になって一緒に『井戸』に落ちた『陽一』くんを探しいたんですけど見つからなくて…
諦めていたらそこへ先生が現れて…」

陽一「思い出したぞ!?そうか…あの人は父さんだったんだ!
小さい頃『舞』さんと一緒に『井戸』に落ちた記憶があって…その時誰か男の人に助けられて…
それから手を握られて…その人の手を握った瞬間に怒りとか憎しみみたいな、
ドス黒い感情が一気に抜け落ちていった覚えがあります…」

舞「それから私は必死に『井戸』を這い上がりました、気が付くと元の場所に戻っていたんです。」

カイト「かつて『呪いのビデオ』を使ってそんな実験が行われていたのかよ…」

右京「なるほど、あなたが『陽一』くんを心配する理由がよくわかりました。
それにしても実験ですか…かつて『山村貞子』の母親である『山村志津子』も
無理矢理超能力の実験を行われ、そして娘の『貞子』も…因果ですねぇ。」

陽一「『呪いのビデオ』…そういえば思い出した事があるんですけど…
昔、母さんが僕に『ビデオをダビングしてお爺ちゃんに観せろ』って言ったんですよ。
これって何か関係ありますか?」

カイト「それって…まさか…」

右京「なるほど、『浅川玲子』はそうやって息子であるあなたを助けたわけですか。」

陽一「あの…何か知ってるんですか?」

右京「それは…」

カイト「ちょっと杉下さん!すみません、俺らもそれ以上は知らないんで…」

陽一「はぁ?」

右京「ところで…精神病院に入院なされている『岡崎』さんなのですが、
先ほどの『高野』さんのお話では彼は『呪いのビデオ』を観てないそうですね。
にも関わらず『岡崎』さんは精神病院へ入院する事になった、その辺の事情に
何か心当たりはありますか?」

舞「そういえば…私と知り合った時『岡崎』さんは女子高生に『呪いのビデオ』の
取材をしてて、その子『沢口香苗』というんですけど、ただ…その子も…」

右京「『呪いのビデオ』で死んだと?」

舞「はい、死に顔が酷かったって聞きましたから…
私が知っている事は以上です、これ以上お話しする事は…」

右京「えぇ、大変参考になるお話でした。どうもありがとう。」

カイト「最後に俺からもいいですか?特に『陽一』さんに聞いてほしいんですけど…」

陽一「何でしょうか?」

カイト「今日の事…いや…『呪いのビデオ』の事なんか全部忘れちゃってください!
こんな事憶えてたらあなたたち絶対不幸になっちゃいますから!
突然押し掛けて変な事言ってると思いますけど…とにかくこれで失礼します…」

こうして右京とカイトは『高野舞』のオフィスを後にした。
帰りの車の中で右京はカイトにある事を尋ねた。

右京「キミ、先ほど僕が『陽一』さんに尋ねられた際…思わず会話を遮りましたね。
彼には知る権利があったはずですよ。」

カイト「そんな事言われなくてもわかってますよ…けど何も知らないとはいえ…実の祖父を
自分の命が助かるために犠牲にしたなんて俺には伝えられないですよ…」

右京「なるほど、それがキミの考えですか。」

カイト「何すか?文句があるなら聞きますけど。」

右京「文句なんてありませんよ、それが正しいと思うならキミは胸を張るべきだと思いますがね。」

カイト「それって皮肉ですか?それよりこれからどうしますか?
確かに『高野舞』の話は参考になりましたが結局『実験』は失敗じゃ…」

右京「いえ…大変参考になるお話でしたよ、なるほど…これで繋がってきました。
さぁ行きますよ、カイトくん!」

カイト「次はどこへ行く気ですか?」

右京「勿論、精神病院に入院してる『岡崎』さんのところですよ!」

このSS書いてる人って相棒とひぐらし書いた人ですか?

いやあー、マジ面白いッ!! メモと写真がまさか呪いの『代行』になるとは・・・・これはらせんの浅川のメモと同じだな。
考えてみれば、本土の人間がすべての災いのはじまりなんだよな。触らぬ神に祟りなし。いかにこのことわざが大事で、大切なものかわかるな。
リング最大の謎は、「呪いのビデオの噂はどこから来たのか」だな。高山はこう言ってた。
「みんなが不安に思った事が噂になる。あるいは、そうなってほしいっていう期待かな」
そうなってほしい期待が貞子を怪物にしたんだろうね。

相棒とかドラマをSS化なんて無謀だろって思ったらスルスル読めて驚愕
文才あるわ

少し前のひぐらしクロスも面白かった

~精神病院~


8月30日、PM17:00


右京とカイトはさっそく精神病院に行き受付で入院している『岡崎』を尋ねようとするが…

カイト「え!『岡崎』さんは退院した!?」

看護師「ハイ、1ヶ月くらい前に身内の方が引き取りに来ましたよ。」

右京「ちなみにお尋ねしたいのですが引き取りに来られた身内の方はどんな人たちだったのでしょうか?」

看護師「確か背広姿の男性が数名…だったと思います。
兄弟とか言ってましたけど顔は全然にてませんでしたね、ハハハ。」

右京「ちなみに退院されたのは何曜日の事でしょうか?」

看護師「そりゃ勿論日曜日ですよ、休日を利用してやって来たと言ってましたからね。」

右京「ところでここにもうひとり入院なさっている『倉橋雅美』さんにも
お話を伺いたいのですが…」

看護師「彼女をですか?正直彼女の面会は許可しにくいのですが…」

右京「ある事件でどうしても彼女の協力を得たくて、どうかお願いします。」

看護師「わかりました…担当の医師に言ってみます。私ちょっと席を外しますから。」

カイト「嘘言っちゃって…精神障害の人間の証言なんかに刑事能力無いでしょうに。」

右京「おやおや、僕は別に嘘など言ってませんよ。
彼女は僕たちが追っている『呪いのビデオ』の事件に協力をしてくれればそれは事実ですから。」

カイト「ハイハイ、屁理屈捏ねたら杉下さんの右に出るヤツなんていやしませんよ…」

それから1時間も待たされようやく二人は医師の立会いの下『倉橋雅美』と面会
する事が出来た。

しかし右京とカイトは彼女が自分の病室から面会室まで来る過程に思わずギョッとした。

何故なら彼女の視界に『ある物』を見せないために看護師が布で隠しながらここまで
歩かせてきたのだからだ。

そしてようやく会えた『倉橋雅美』と話を始めようとするがこの15年間で彼女は
驚くほどに窶れてしまった。

彼女の年齢はまだ30代前半だというのにその髪は最早白髪だらけ、
目も恐らく満足に寝てないのだろうか大きな隈が出来ていた。

『倉橋雅美』の状態を見たカイトはとてもじゃないが彼女から満足な話は聞けないと
判断するがそれでも右京は敢えて彼女に話を切り出した。

右京「『倉橋』さん、今日はあなたにお話が合って来たのですが。」

雅美「…」

右京「『呪いのビデオ』…ご存知ですよね。」


雅美「あ゛…あ゛ぁぁぁぁぁぁ!?」


『呪いのビデオ』…その言葉を聞いた瞬間、彼女はいきなり大声を叫びだした。

医師「『倉橋』さん!しっかりして…大丈夫ですからね、鎮痛剤用意して!早く!」

カイト「ちょ…ちょっと本当に大丈夫なんですか!?」

彼女は髪を掻き毟りまるで何かに怯えてしまいその場で暴れ出した。
カイトも彼女が暴れないようにと抑えるのを手伝っていたがその拍子に自分の
スマートフォンを落としてしまった。

カイト「いけねっ!携帯落っことしちまった…」



雅美「あ…あぁぁ…キャァァァァァァァァァ!?」



この瞬間彼女はこの世のモノとは思えないほどの叫び声を上げてその場で気絶してしまった。
最早話を聞くどころではない状態になった『倉橋雅美』はそのまま病室に戻されてしまうのだった。

右京「…」

カイト「あの…俺…何かしました?」

右京「僕が見た限り彼女はキミが落としたスマートフォンを見てあんな叫び声を上げた
ようですが…」

カイト「けど…こんなモン見たくらいで何で気絶するほど怯えるんですか?」

医師「いや…申し訳ない、こちらから最初に注意しておくべきでした。
彼女はTVの画面や鏡などを極端に嫌いそれに恐怖しているらしいんですよ。」

右京「TVの画面を?それは何故でしょうか?」

医師「実は彼女…ここに入った直後なんですが…今はあんな状態ですがその頃は
まだ口が訊けたんですけどね、当時妙な事を言ってたんですよ。
『TVの画面から髪の長い女が出てきて殺しに来る』って…」

カイト「TVの中から…」

右京「髪の長い女が出てくる…なるほど、これは確かに信じがたい話ですね。」

医師「そんな話は恐らく彼女の幻覚か何かだと思ってウチの職員は誰も相手に
しませんでしたよ…
ただ一人を除いてね。」

右京「その一人とはもしや『川尻』という名の精神科のお医者さんではありませんか?」

医師「えぇ…確かに『川尻』という名の医師が当時『倉橋雅美』の担当医でしたが…
あなた方どこでその事を?」

右京「それはお気になさらず、ところで『川尻』医師が当時残した資料とか残っていませんかね?
できれば拝見したいのですが。」

医師「そんな物残っちゃいませんよ、『川尻』さんが死んだ時に警察の人が
全部証拠物件だとか言って持ってったんですから!」

カイト「じゃぁまだ警察に保管されてるかも!」

右京「カイトくん!すぐに警視庁に戻りましょう!」

右京とカイトは警視庁に戻ろうとするがその前に右京は河原に寄り道をしていた。

~河原~


8月30日、PM19:00


カイト「どうしたんですか?こんなとこに車止めて?」

右京「ひとつやらなければいけない事がありましてね…」

そう言うと右京はある物を取り出した、それは…

カイト「それは確か早津さんから貰った『呪いのビデオ』の『絵』じゃないですか!
そんなモンどうすんですか?」

右京「こうするのですよ。」


カチッ  ボッ


カイト「燃やした…」

そう、右京は早津から貰った『呪いのビデオ』の『絵』を燃やしてしまった。
それは次第に燃え広がり灰となり、さらにその燃えカスを足で踏み粉微塵にして
河に流してしまった。

右京「これでこれ以上『山村貞子』の『呪い』が他の人間に降り注ぐ事は無くなりましたね。」

カイト「えぇ、これで心置きなく死ねますね…ハハ…」

右京「そんなに早く諦める必要もないと思いますがね…あと4日あります。
必ず僕たちが助かる糸口は見えるはずですよ。」

カイト「そうだといいんですけどね。」

右京「それよりもキミにひとつ言っておきたい事があります。
これから先誰に尋ねられようと決して『呪いのビデオ』の内容を教えないでください。」

カイト「え?だって『絵』なら今…杉下さんが処分しちゃったじゃないですか?
内容なんかもう伝えられないですよ。」

右京「『山村貞子』の『呪い』は『呪いのビデオ』に限らず…『絵』になっても
『呪い』が有効でした。
つまりもしかしたらですよ…これは僕の想像になりますが…
彼女の『呪い』は『手記』や最悪…『口頭』での説明でも『呪い』が可能かもしれません!」

カイト「そんな…今更そんな事言ってもこの件に関わっている人が
どれだけいると思ってるんですか!?
『山村貞子』や『伊熊平八郎』の事を調べた角田課長や
花の里で老婆の方言を教えてくれた幸子さん!捜査一課の伊丹さんたち!
それに大島の陣川さんや『山村和江』さんとか彼らにも既に『貞子』の『呪い』が
かけられているんですか!?」

右京「いえ、彼らには肝心の『呪いのビデオ』の内容は明かしていません。
大島で撮られた陣川くんの写真を見るに呪いに掛かっているのは今のところ…
僕たちだけのはず。
つまり僕たちが『歩く呪いのマスターテープ』みたいな物なんですよ。」

カイト「つまりこれからは極力誰にも頼らず捜査しなきゃいけないって事ですか…
ハハ…まったくやってくれるよ『山村貞子』…」

右京「そう悲観する事もありませんよ、相手は15年前の亡者です。
どんな時でも今を生きる人間が既に死んだ人間に負けるはずはありませんよ!」

カイト「まったく…頼りになるんだかわからねえ相棒だなぁ…」

右京「何か言いましたか?」

カイト「いいえ…なんでもないッスよ、それより早く警視庁に戻りましょうよ。
なんてったってあと4日なんですからね…」

~警視庁~


遺留品置場


8月31日、PM13:00


カイト「ふぁぁぁぁぁ…」

右京「たかだか一日徹夜したくらいで欠伸ですか?気が弛んでますねぇ。」

カイト「あのねぇ…こういうのは生理的なモノなんですよ!
そんな事より…見当たんないッスよね、『川尻』医師の遺留品…」

右京「書類上ではここに置いてあるはずなんですがねぇ。」

警視庁に戻ってさっそく『川尻』の遺品を探す右京とカイトであったが
どういうわけだかその遺品は見つからず気付けば日を跨いでいるといった有様であった。

カイト「遺族が引き取ったんですかね?」

右京「それなら書類にその事が記載されているはずなんですが…
そんな記載はされていませんね。」

カイト「まさか俺たち以外にもこの事件を調べてる連中がいたりして…なんちゃってねぇ。
そんなヤツらいないですよね、こんな『呪いのビデオ』の存在信じられるわけが…」

右京「いえ、それは間違いないと思いますよ。
僕たち以外にもこの事件を嗅ぎまわっている人間が他にもいる事は間違いありません。
もしかしたらその連中が持っていったのかもしれませんね。」

カイト「マ…マジっすか!?けど何でそんな事がわかるんですか?」

右京「昨日の精神病院に行った時、『岡崎』さんが退院したという話を聞きましたよね。
あの話を聞いて変だと思いませんか?」

カイト「変って…確か兄弟が連れて帰ったとかそんな話でしたよね…それのどこが
おかしいってんですか?」

右京「確かに兄弟がいる事には何の問題もありません、どこの家庭でも兄弟の一人や二人
くらいはいるでしょう。
しかしですよ、いくらなんでも日曜日の休日に背広姿で迎えに来る身内なんて
いると思いますか?」

カイト「あ…言われてみれば…けどその連中『岡崎』さんを連れて行って何をする気なんだ?」

右京「まだそこはわかりませんが、まぁ察するに…ろくでもない事でしょうね。」

カイト「ハァ…そういえば結局『岡崎』さんが何で精神病院に入院したのか
わからず仕舞いで引き上げちゃいましたね。」

右京「あぁ…それについては大体の察しがついています、恐らく彼は『貞子』ではない
別の『呪い』を受けたのかもしれませんね。」

カイト「別の『呪い』?『貞子』以外にも呪うヤツがいるんですか?」

右京「『高野舞』の説明によれば『岡崎』は精神病院に入院する前に『沢口香苗』という
女子高生の少女に『呪いのビデオ』に関する取材をしています。
恐らくこの『沢口香苗』が原因ではないのでしょうか。」

カイト「あぁ…そういえばそんな事言ってましたよね、けど取材を受けたくらいで
相手を呪ったりしますかね?」

右京「ここから先は…僕の想像になりますが…もしかしたら…
『岡崎』は『浅川玲子』から『呪いのビデオ』の死を回避する方法…すなわち
ビデオをダビングして他者に見せる事を伝えられていたんじゃないのでしょうかね?
考えてみれば当然かもしれません。
関わった人間に対応策を教えていても不思議じゃないと思いませんか?」

カイト「ちょ…それ本当ですか!?
いや…でも待てよ、それが本当なら『岡崎』は『沢口香苗』にダビングの方法を
教えてあげればよかったじゃないですか!
それなのに何で『沢口香苗』は死ななきゃいけないんですか!?」

右京「ここでひとつ注目すべき点があります、それは『川尻』医師による
『呪いのビデオ』の『実験』です。
といっても『陽一』くんが被験者になった『実験』の方ではなく昨日お会いした
『倉橋雅美』の方の『実験』ですがね。」

カイト「その実験の席に『岡崎』も立ち会っていたという事ですか?」

右京「恐らくそうでしょう、しかし『実験』は被験者である『倉橋雅美』が死にかけた
という結果でした。
その光景を目の当たりにした『岡崎』はどういう心境だったと思いますか?」

カイト「そりゃ恐怖したでしょ、もしかしたら『岡崎』はその実験に立ち会うまで
『呪いのビデオ』については半信半疑だったかもしれないし…あぁ!?」

右京「そう、その実験を見た『岡崎』は『呪いのビデオ』に恐怖し、
『沢口香苗』を見殺しにしてしまった…結果『呪いのビデオ』が広まる事はなくなりましたが…」

カイト「代わりに今度は『貞子』ではなく『沢口香苗』の『呪い』が『岡崎』を発狂させたと…
なんてこった、この事件に関わる連中は軒並み不幸になっていきますね…」

右京「そうでしょうかね、不幸になる方の大半が面白半分で鬼の住処を突く者たちですよ。
昔から言うじゃないですか、『触らぬ神に祟りなし』と…
まぁだからと言って殺人が許されるわけではないのですがね。」

カイト「まったく杉下さんは相変わらず言う事がきついッスよね…
けど杉下さん…話は戻しますけど…俺たち以外にも『山村貞子』について
調べまわっている人間がいるとしても…ここ警視庁ですよ。
天下の警視庁から証拠物件持っていくとかありえないでしょう!」

右京「それが出来る人間がいたとしたらどうですか?」

カイト「たとえば誰ですか?」

右京「片山雛子とか…」

カイト「いやいや…何でそこで彼女が出て来ちゃうんですか!
いくらなんでも飛躍しすぎですってば…
けどマジで無いですよね、『川尻』の遺品…まさか本当に誰かが持って行ったのか?」

右京とカイトが雑談と推理を交わしながら『川尻』の遺留品を探していたが
結局見つからず諦めていたところに米沢が現れた。

米沢「杉下警部探しましたよ、ていうかこんなところで何をしているんですか?」

カイト「そのちょっとある事件を捜査してて…」

右京「『川尻』という精神科医の遺品なんですけどねぇ…米沢さん心当たりありますか?」

米沢「無茶言わんでくださいよ、杉下警部じゃあるまいし都内で起きた事件の遺留品の
持ち主なんか一々覚えていませんよ…
ただ…1ヶ月くらい前ですかね、政府の役人がここに来て何かの証拠品を持って行ったのは
憶えてますが…それがお役に立つ話かどうかは…」

カイト「いや…米沢さん…たぶんそれです。」

右京「えぇ、そういう事でしたか、やはり僕ら意外にもいるようですね
ところで米沢さん…僕に何かご用でしょうか?」

米沢「おぉ、そうでした!実はですな…」

とりあえずここまで

>>127
こっちの補足説明で『浅川陽子』って書いちゃいましたがよく調べたら『浅川玲子』でよかったようですね
たびたび間違えてすんません、以後『浅川玲子』で統一します。

昨日更新しようと思ったんですが中々書ききれなくて結局今日ageる事に
筆が遅くてすみません。


しかしまだ呪いにルールがある貞子だったから良かったが、これが呪怨だったら右京さんでもどうしようも無かったな

乙ー!!
二人は無事助かる事が出来るのかどうか…

>>139-145
カイトくんはこれからの成長をお楽しみにという事ですかね
来月から始まるシーズン12はどんな活躍してくれるんでしょうか?

>>165
いえ別人です、何故か知らんが自分…ひぐらしSS書いた人と間違われる…

>>167
ウチの場合は『絵』がビデオ替わりになったんですけどね
らせんで『本』が有効『絵』なんか余裕だろと思いまして

>>168-169
あざーっす

>>170
あれは凄かった、ひぐらしと相棒の相性良すぎですわ。

>>194
布団の中に潜り込んだりいきなり抱きついてこられたら推理関係無しで
対処できませんわ…
けど俊雄くんだけなら右京さんなんとかなるかも…伽椰子はさすがに無理!

>>195
今はこれからの展開をお楽しみくださいとしか言えません。

~内村刑事部長の部屋~


8月31日、PM15:00


右京とカイトが米沢に呼ばれて部屋に入るとそこには伊丹、三浦、芹沢、
それと中園が既に到着していた。

内村「貴様ら…事件には関わるなと言っておいたはずだぞ!」

中園「それにお前らも何故特命に事件の捜査を任せた!
捜査一課の刑事としての責任感が無いのか!?」

伊丹「そう言われましても…」

三浦「オカルトは捜査一課の専門外でして…」

芹沢「大体あの事件はもう自殺で方が付いたんじゃないんですか?」

米沢「ところがそうは問屋が卸しませんでした、実は被害者の『吉野』さんの部屋から
被害者以外の指紋が見つかりましてね…他殺の件が浮上してしまったのですよ。」

芹沢「た…他殺!だって被害者は急性心不全じゃないですか!?
他殺になるわけが…」

内村「もしかしたら急性心不全を引き起こす『何か』があって被害者はその所為で死んだ…
という可能性もあるかもしれん、今一度徹底的に洗い直せ!」

中園「そういう訳だ、わかったなお前たち!」

カイト「内村部長珍しく冴えてますね。」

右京「ですね、ところで米沢さん。その発見された指紋は何処から出てきたのでしょか?」

米沢「それがですな…なんとあのTVに巻かれていたガムテープの粘着部分から
指紋がベッタリと出てきましてな、こんな基本中の基本を見落とすとは
鑑識の不手際と思われてしまいますなぁ…」

右京「確かあのガムテープ…取れ方が妙でしたね、あの破れ方はまるでTVの外側ではなく
内側から破れたみたいな破れ方でした。」

カイト「それって…まさか…あの『倉橋雅美』が言ってた事じゃ…」

右京「『高野舞』のあの異常という程までに徹底した鏡面の無い部屋…
『倉橋雅美』のTVの画面を極端に嫌う衝動…『倉橋雅美』の言ってた事…
間違ってはいなかったのかもしれませんよ。」

カイト「『TVから山村貞子が出てきてビデオを観た人間たちを殺している』ってんですか?
こんな事信じられませんよ…」

内村「おい特命係!何を話している?貴様らに発言を許可した憶えはないぞ!!
ところで貴様ら、この事件について色々と嗅ぎまわったようだな。
これまで調べた事を全部一課に寄こせ!」

中園「そうだ、他殺の件が見えた以上この件は捜査一課が行う!」

カイト「ちょ…ちょっと待ってくださいよ!
どうすんですか杉下さん!一課に情報を教えたら最悪一課の連中全員呪い殺されちゃいますよ!?」

右京「…」

内村「どうした?何故言えんのだ?従わなければ貴様ら二人を謹慎処分にしてもいいんだぞ!」

中園「3日間の謹慎だ、まぁお前たちにとっては屁とも思わんだろうがそれでこちらの
捜査の邪魔をしないというなら安いモノだ」

カイト「3日も謹慎!?そんな事されたら3日後俺たち死んじまう…
どうすんですか杉下さん?このまま謹慎処分なんか喰らう訳にはいないんですよ!」

右京「止むを得ないですね、もしかしたらこれも『山村貞子』の思惑かもしれません。」

内村「ちょっと待て、今…何と言った?」

内村は先ほどの右京の言葉にある反応をするが右京はそんな事はお構い無しに
米沢にある事を頼んだ。

右京「米沢さん、先ほど言ってたガムテープから発見された指紋ですが
至急照合してほしい人物がいます。」

米沢「そう言われましても…既に前科者や関係者の指紋を照合していますが?」

右京「いえ、それとは別で…静岡県警の遺留品係の方に、ある人間の指紋と照合すれば
恐らく一致すると思いますよ。」

米沢「わかりました、それではすぐに問い合わせます!」

伊丹「指紋が照合って…杉下警部はもう犯人が分かっているんですか!?」

芹沢「何だ、それなら事件は早期解決じゃないですか♪」

三浦「それで犯人は一体誰なんですか?」

右京「それは…米沢さんからの結果を待った方が賢明だと思いますがね。」

カイト「杉下さん…大丈夫なんですか?捜査一課を巻き込んで…もしもの事があったら…」

右京「恐らくですが『呪いのビデオ』の事さえ言わなければ…大丈夫かと。」

右京は『呪いのビデオ』に関する事だけははぐらかていたが内村は何か思いつめた表情で
右京たちにある事を問い詰めた。

内村「杉下…お前…先ほど妙な事を言ったな。もう一度言ってみろ。」

右京「…と言いますと?」

内村「女の名前を言ったろう!もう一度言え!」

それと同じタイミングで先ほど照合に行っていた米沢が戻ってきたが…
その顔はどこか青ざめていた。

カイト「米沢さんの顔…真っ青ですね…」

右京「米沢さん…照合終りましたか?その顔を見ると僕の予想通りのようですね。」

米沢「杉下警部…私に何がなんだかさっぱりですよ…」

中園「おい!お前たちだけでわかった顔をするな!?我々にもわかるように説明しろ!!」

右京「それではご説明します、被害者の自宅のガムテープから見つかった指紋は
45年前に『井戸』に閉じ込められ、そしてそれから30年後に、
静岡県の『伊豆パシフィックランド』にある貸別荘の床下にある『井戸』から
死体となって発見された『山村貞子』という女性のモノと一致したのですよ!」



伊丹、三浦、芹沢、中園「「なにぃぃぃぃ!?」」



内村「そんな…バカな…」

カイト「そりゃ驚くよな…」

伊丹「ま…まさかその『山村貞子』って女が犯人なんですか?」

三浦「バカッ!そんな訳ねえだろ!45年も前に死んだ人間が殺人なんか行えるもんか!?」

芹沢「でも指紋が…これはどう説明すれば…」

中園「そ…そんなモノは偽装工作でも行えばどうにでも出来る!
捜査一課の刑事たる者がお化けなんぞ信じてどうする!?」

内村「あ…あぁ…」

中園「杉下!貴様…こんな世迷言を調べていたのか!
まったくふざけるにも限度というものがあるぞ!謹慎だ!謹慎!とっととこの場を去れ!!」

カイト「まぁ…信じてもらえるとは思ってませんでしたが…」

右京「いえ…まったくの偶然ですが…案外うまくいったかもしれませんよ。」

カイト「?」

中園が怒鳴り声を上げて右京とカイトの二人を謹慎処分にしようとしたが、
意外な人物がそれに待ったをかけようとした。

内村「待て!」

中園「部長…どうなされたのですか?」

内村「杉下…もう一度聞くぞ、『山村貞子』は45年前に『井戸』の中に閉じ込められたのか?」

右京「それは間違いありませんよ、お疑いなら静岡県警に問い合わせてみてはどうでしょうか?
発見された当時の捜査資料は残っていますが。」

内村「いや…いい…」

内村は誰の目にも明らかなくらい何か隠し事をしていた、勿論それを見逃す特命係
ではなかった。

右京「今度はこちらから質問させて頂きます。部長…何を隠しているのですか?」

内村「いや…私は何も…」

カイト「正直に答えてください!この事件で既に二人も亡くなってるんですから。
いや…今までのをカウントしたら被害者は二人どころじゃないんですけどね!」

中園「お…お前ら!部長に対して失礼だろうが!」

伊丹「そうだ!」

三浦「そうですよ!」

芹沢「いい加減にしてください!」

特命係の無礼に怒った中園と伊丹たちであったが…実はその矛先は右京たちにではなく…

伊丹「部長!いいから吐いてくださいよぉ!」

三浦「つらいのもわかりますがねぇ…」

芹沢「一遍やってみたかったんですよ、部長への尋問♪」

中園「何をやっとるんだ貴様ら!?」

内村「えぇい!黙れ!!良いだろう、話してやる…その代わり聞いても後悔するなよ?」

中園「一体どういう事なのですか部長!?」

内村「45年前…俺は『山村貞子』と会っているんだ。」


中園「なっ!?」


伊丹「んっ!?」


三浦「だっ!?」


芹沢「とっ!?」


米沢「?」

カイト「一体いつどこで『貞子』と知り合ったんですか!?答えてください!!」

内村「えぇぃ!落ち着け!黙れ!鬱陶しい!
あれは俺がまだ学生の頃…当時劇団でアルバイトをしていてな。
その劇団は『劇団飛翔』と言って…そこそこ有名なとこだった。」

カイト「劇団?何で『貞子』と劇団が関係するんですか?」

右京「まぁ黙って聞きましょう。」

内村「ある日の事だ、主演女優の『葉月愛子』という女が死んだ。
彼女を殺したという疑いの目を掛けられたのが…その『山村貞子』だ。
当時『貞子』はまだ駆け出しの身で…俺はただの学生アルバイト…正直庇いたかったが
そうなると俺にも疑いの目が掛けられる…そうなれば将来ある俺の身が危ないと思い…
結局俺は彼女を庇う事が出来なかった…」

芹沢「部長って若い頃から器が小さかったんですね…」

伊丹「『三つ子の魂百まで』って事だな、元々ヒーローになれない性分なんだろ。」

内村「何か言ったか?」

三浦「いえ!何も言ってません!黙って聞いています!!」

内村「まぁ…それで、疑われていた『貞子』を『遠山』とかいう若い音響スタッフが
よく庇っていたのを覚えているよ、…ってこんな話はどうでもいい!
その後代役の主演女優に『貞子』が抜擢された。」

カイト「ちょっと待ってください!
駆け出しの役者がいきなり主演ってあり得ないでしょ!どうしたらそうなるんですか!?」」

内村「確かに『貞子』は当時まだ駆け出しだった、だが彼女にはそんなモノを軽く補う
天性の美しさがあった。
黒く長い髪が印象的でそれにあの神秘的な美しさ…もしあのまま銀幕の舞台で活躍
していたら恐らく後世に名を残す名女優だったろう。」

右京「しかし…そうはならなかった…そうですね。」

内村「そうだ、それから『劇団飛翔』による舞台『仮面』が始まり『貞子』は
いきなりの大抜擢ながら見事に演じて魅せた。
当時私はなけなしの小遣いを使い観客席で観たがそれはもう凄かった…
その演技には人を魅了させる力があったのは間違いない。」

伊丹「あの偏屈な部長がここまで他人をべた褒めするとは…」

三浦「『山村貞子』…一体何者なんだ?」

中園「な…何があったんですか?」

内村「女だ…気が付くといつの間にか40代くらいの中年の女が舞台に立っていた。
見覚えの無い女だった…言っておくがその女は役者じゃないぞ。
観客席からも見えたが、劇団の連中がその女の存在に驚いていたからな…
それから奇妙な耳鳴りがした…思い出すと吐き気がするくらい嫌な耳鳴りだった…
そんな奇妙な現象を止めようと舞台袖からひとりの男が『貞子』に近付いた。
その時会話の内容は聞こえんかったがその男は『貞子』を宥めようとしていたらしい。
そして事件が起きた…」

カイト「事件って…」

伊丹「何があったんですか?」

右京「恐らく…死人が出たのですね。」

内村「そうだ!『貞子』を宥めようとした男は急に苦しみだし…舞台から倒れた!
後で聞いた話だが死因は急性心不全だったそうだ…
その光景を間近で見た『貞子』は悲鳴を上げた、すると今度は天井から照明が落っこちてきて…
もう会場内は大パニックになった、俺も無我夢中で逃げ出したよ。
あとで聞いた話だが…その後劇団員は『山村貞子』を含めてほぼ全員行方不明になったらしい。
生き残ったのは一部の…大道具や音響のスタッフくらいしかいなかったという話だ…」

内村部長が生前の『山村貞子』を目撃していた、それだけでも衝撃的な事実であったが
『貞子』が劇団に所属していたという新事実にさすがに右京とカイトは驚きを隠せなかった。

カイト「あの『山村貞子』が劇団にいたなんて…
しかし何で会場内でパニックを起こそうとしたんでしょうか?
内村部長の話通りならその舞台が成功してたら彼女には輝かしい未来が待っていた
はずじゃないんですか?」

右京「確かにキミの言う通りです、彼女が会場内でパニックを起こす必要は正直に言って
殆どその必要はなかったはず、にも関わらずそのような大惨事が引き起こされてしまった…
少々引っかかりますねぇ。
部長、ひとつお尋ねしたいのですがその舞台には…黒髪の長い少女はいませんでしたか?」

内村「そういえば…いたな…小学生くらいの…髪が長くて顔が見えない少女が
舞台袖にいたようないなかったような…」

右京「なるほど、そういう事ですか。」

内村「ハァ…気分が悪くなってきた…特命係、さっき言ったように…お前らは謹慎だ!
それと俺はもう帰る、現場の指揮は…中園、お前に任せる…やっておけよ。」

中園「ハッ!わかりました、お気を付けて!
聞いた通りだ、杉下、それと甲斐、お前たちは3日間自宅謹慎だ!さっさと家に帰れ!」

こうして右京とカイトは自宅謹慎を命じられてしまった。
しかしそれでも思わぬところから『山村貞子』の重要な手がかりを得る事は出来た。

カイト「『貞子』が劇団員だった…意外ですね。」

右京「案外『山村貞子』という女性は…何処にでもいる夢を抱く普通の女性だった
のかもしれませんよ。」

カイト「それよりも…どうしますか?
3日も自宅謹慎なんて…家で死ぬのは構わないですけど…正直このまま何もしないで
死にたくはないんですけどね…」

右京「それについては…まぁ…どうとでもなりますよ。」

とりあえずここまで
部長と貞子ってたぶん年齢的に同世代だからこういうのもありかなと


>>222と223の間なんか場面飛んでない?

>>234

本当だ抜けてました…

>>222と223
この間の文章です、抜かしてすんません、指摘されるまで気づかなかった…

内村「劇は見事なモノだった、誰もが彼女に魅了していたよ。
しかしそんな最中だった、ある声が聞こえてきたんだ。
『的中!』、『的中!』、という意味の分からん声だった…
観客の誰もが何かの演出だと思ったのだが舞台にいた『貞子』だけが
妙に怯えていたのを覚えている、そして奇妙な事が起きた…」

>>222
の文章ちょっと書き直しますね
↓になります。

カイト「ちょっと待ってください!
駆け出しの役者がいきなり主演ってあり得ないでしょ!どうしたらそうなるんですか!?」」

内村「確かに『貞子』は当時まだ駆け出しだった、だが彼女にはそんなモノを軽く補う
天性の美しさがあった。
黒く長い髪が印象的でそれにあの神秘的な美しさ…もしあのまま銀幕の舞台で活躍
していたら恐らく後世に名を残す名女優だったろう。」

右京「しかし…そうはならなかった…そうですね。」

内村「そうだ、それから『劇団飛翔』による舞台『仮面』が始まり『貞子』は
いきなりの大抜擢ながら見事に演じて魅せた。
当時私はなけなしの小遣いを使い観客席で観たがそれはもう凄かった…
その演技には人を魅了させる力があったのは間違いない。」

伊丹「あの偏屈な部長がここまで他人をべた褒めするとは…」

三浦「『山村貞子』…一体何者なんだ?」

カイト「まぁ…俺たちも今のところただ者じゃないって事くらいしか
わかってないんですけどね…」

内村「劇は見事なモノだった、誰もが彼女に魅了していたよ。
しかしそんな最中だった、舞台の音響からある音声が流れてきたんだ。
『的中!』、『的中!』、という意味の分からん男の声だった…
観客の誰もが何かの演出だと思ったのだが舞台にいた『貞子』だけが
妙に怯えていたのを覚えている、そして奇妙な事が起きた…」

~カイトの家~


9月1日、AM8:00


カイト「ハァ…あと2日か…長いようで短かったな俺の人生…」

悦子「ねぇ亨、アンタ今日非番だっけ?」

カイト「上の人にいきなり昨日から3日間の謹慎を言い渡されてさ。
まったく冗談じゃないっての、こっちは文字通り命懸けだってのによ…」

結局、内村部長の言われるがままに大人しく謹慎処分を受けた特命係。
カイトは残り2日のタイムリミットを、このまま大人しく部屋で過ごさなければいけない
自らの境遇に対して焦りと不安、そして諦めの感情が入り混じっていた。

悦子「まったく…アンタ刑事になってからまだ1年しか経ってないじゃない!
そんな事じゃ出世出来ないわよ!
あーあ!こんな男見限ってもっと将来性のある男とくっ付こうかな!…チラリ…」

カイト「いいんじゃねえの…俺たぶんあと2日で死ぬかもしれないし…」

悦子「ちょっと!冗談だってば!本気にしないでよまったく!」

カイト「なぁ…俺が死んで葬式やるとしても、絶対ウチのクソ親父だけは呼ばないでくれよ。
来たら俺絶対あの親父を『呪う』かもしれないから…」

悦子「ねぇ…本当にふざけるのやめなさいよ!
亨…たぶん謹慎とか言われてふて腐れているだけなのよ、外に出れないならさ…
ホラTVでも観ようよ!昨日新作のDVDレンタルしてきたからさ気分転換に観ようよ!」

カイト「TVねぇ…」

悦子の勧められるままにTVを観ようとしたカイトだがその時…
一昨日、精神病院に『倉橋雅美』を尋ねた際に言われたあの言葉が頭を過った。



『TVの画面から髪の長い女が出てきて殺しに来る。』



カイト「ダメだ!TVを付けるな!?」

悦子「ちょっと…亨!何してんのよ!?」

カイト「え?」

気が付けばカイトはガムテープを取り出しTVのモニターをグルグルに巻いていた。

カイト「何で俺こんな事を…ハッ!そうか…死んだ『吉野賢三』さんも…
だからあんな行動をしたのか…」

悦子「ねぇ亨…アンタおかしいわよ!一体何があったのか話しなさいよ!」


カイト「「うるさい!もう俺の事は放っておいてくれよ!!」」


悦子「…」

カイト「ゴメン…怒鳴って…けど俺、今本当に余裕無いんだ…」

悦子「わかった、私もう仕事に行くね。」

カイト「…たく…女に八つ当たりかよ…カッコ悪いな俺…」

カイトは悦子に八つ当たりなんてする気はなかった、しかし死への焦りが
彼を徐々に追いつめていた。
カイトは居間のソファーに寝っ転がり先ほどの悦子への八つ当たりを後悔していた。


カイト「クソッ!せめてこんなところに閉じ籠ってないで捜査出来ればいいのによぉ!
そしたら悦子に八つ当たりなんかしないですんだのに…
そういや…杉下さんどうしてんだろ?あの人も俺みたく焦りと苛立ちでテンパってるのかな?
あぁ…どうせ死ぬならあの人のテンパってる姿を見たかったなぁ…」

右京「僕がどうかしましたか?」





カイト「「え゛え゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」





カイトが驚くのも無理はなかった、いきなり右京が自分の部屋に現れたのだから。

カイト「なななな…何でウチに杉下さんが居るんですか!?」

右京「先ほどマンションのエントランスで悦子さんにお会いしましてね。」

悦子「せっかくだからウチに上がってもらったの、まったく部下が心配だから
わざわざ様子を見に来てくれるなんて杉下さんっていい上司じゃない!
こんな人中々いないわよ!」

カイト「あの悦子さん…この人も俺と一緒に謹慎処分受けたんですけど…」

悦子「それじゃあ私、今度こそ仕事行くからね!行ってきます!」

右京「行ってらっしゃい。」

カイト「つーか思いっきり馴染んでるし…
それで杉下さん、アンタ何でここにいるんですか?俺と一緒に謹慎処分受けた身でしょうが!」

右京「えぇ、確かに我々は謹慎処分を受けました。
しかし…ですよ、警察官たる者が凶悪極まりない犯罪者を野放しにしておけると思いますか?
そしてその凶悪極まりない犯罪者『山村貞子』を止められるのは間違いなく
僕たち特命係しかいません!」

カイト「まったく…警察官は階級社会ですよ、上司の命令に逆らっちゃいかんでしょ…」

右京「それともキミは残りの2日間を部屋の中に閉じ籠って過ごしますか?
それも悦子さんに八つ当たりをしながら。」

カイト「ちょ…何でそんな事知ってんですか!?」

右京「先ほどエントランスでお話を聞きましてね、まぁ無理もないでしょう。
残り2日間の命となれば誰だって焦りと苛立ちは隠せませんよ。」

カイト「まったく悦子のヤツ…お前は俺の母ちゃんかっての…」

思わず悦子に愚痴るカイトだが、そんなカイトに対して
右京はある質問をした、それはカイトの行く末を決める大事な選択だった。

右京「カイトくん、僕はキミに強制はしません…が選んでください。
このまま残り2日間を部屋の中で大人しく謹慎するか…
それとも僕と一緒に捜査を行い、『呪いのビデオ』と『山村貞子』の謎を解き明かして
生き残る方法を探索するか!
まぁどちらを選んでも僕はキミの選択にとやかく言う気はありませんがね…」

カイト「そ…その前にひとつだけ質問させてください。
何で俺なんかと…杉下さんの推理力なら俺なんかいなくたって一人でどうにでもなるじゃ
ないですか!」

カイトは当然の質問をしてみせた、自分は昨日内村部長に自宅謹慎を言い渡されてから
心の中は動揺し怯えていた、『残り2日間を大人しく家の中で過ごせ!』というのは…
今のカイトにしてみれば事実上の死刑宣告同然であった。
自身と同じ境遇である右京は毅然と振る舞い今も堂々とした態度でいる。
それなのに何故自分が必要とされるのか?カイトにはそこがわからなかった。

右京「キミ…僕が『山村貞子』の『呪い』が恐くないと本気で思っていますか?」

カイト「え?」

そう言うと右京は自分の手の震えを見せた、カイトは初めて右京の弱い姿を見てしまった。
いつもは敢然と犯罪者の罪を暴く右京が他人に弱みを見せたのは恐らくカイトの前に
特命係に在籍していた亀山薫、神戸尊にすら見せなかったはずだからだ。

右京「恐いのはキミだけではありません。
所詮僕もただの人間ですよ、死が迫ってしまえばどんなに取り繕っても
動揺を隠せませんからねぇ…
だから頼りになる相棒に傍にいてほしいんですよ。」

カイト「まったく恥ずかしい事言わないでくださいよ。聞いてるこっちが赤くなりますから…」

右京の本音を聞いたカイトにもう迷いは無かった、彼は先ほど右京が問いかけた選択の
答えを伝えた。

カイト「しょうがないっすね…俺も杉下さんと一緒に捜査しますよ!
俺だって『山村貞子』を野放しにするわけにはいきませんからね!」

右京「そうですか、ありがとう。
ではさっそく事件についてですが昨日の内村部長の話で色々と新事実が判明しましたね。」

カイト(アレ?切り替え早くね?今のってまさか演技じゃ…
ひょっとして俺…杉下さんに騙されてね?)

右京「どうかしましたか?」

カイト「い…いえ、なんでもないですよ!
え~と昨日の内村部長の話ですよね、確かに『貞子』が劇団員だったというのは
衝撃的な事実でしたけどそれ以外は特に真新しい発見は無かったじゃないですか。」

右京「えぇ、確かに『山村貞子』が劇団員だったというのは僕も正直驚いてますが…
注目すべき点はそこではなく内村部長がスピーカー越しで聞いたあの言葉…です。」

カイト「それって確か…『的中!』…『的中!』って言葉の事ですか。
確かにおかしいですよね、これって何なんでしょうかね?」

右京「えぇ、気になって調べてみたんですよ。そしたらこんなモノが出てきたのですよ。」

そう言うと右京はある一枚の紙をカイトに見せた。
それは帝都新聞社の一枚の新聞記事であるが日付を見てみると1956年となっていた。
記事には一面でデカデカと右京たちが気になる文が掲載されていた。
その文とは…



―インチキ超能力者、実験中に人を殺す!?―



という見出しが載っていた。

記事の内容は二人が『南箱根療養所』で出会った『伊熊平八郎』が『山村貞子』の母、

『山村志津子』による超能力の公開実験を行った事についての記載であった。

その記事によると『山村志津子』は千里眼による超能力で様々な実験を衆目の前で

成功させるがある一人の記者が『インチキ!』と疑いの声を掛けた。

その言葉にショックを受ける『志津子』だが次の瞬間…その記者は急に苦しみだして倒れた。

死因は『急性心不全』、一応捜査は行われたが事件性は無いという事で『志津子』は

逮捕される事もなく事件は打ち切られたとの記載だった。

カイト「杉下さん…この記事って…」

右京「帝都新聞が57年前に発行した新聞です、まぁこれは当時の記事をコピーした物ですが…
気になるのはこの文面です、ここを読んでください。」

カイト「え~と、『なお、実験にはサイコロを使いどんな目になるのかを当てるかを
行う内容であった。』…サイコロ…?」

右京「『サイコロ』…これを僕たちは以前に見たはずですよ。」

カイト「『サイコロ』?…あぁ!?そうだ!『呪いのビデオ』の内容に『サイコロ』
が振られる場面がありましたよね!けどそれが何だっていうんですか?」

右京「僕の推理が正しければ恐らく…」

カイト「それにしてもこの記事の内容酷過ぎですよね。
『山村志津子』に対する批判や中傷が酷過ぎますよ、そりゃ死人が出たからしょうがない
にしてもこれはちょっと一方的じゃないですか?」

右京「おや、キミもそう思いましたか。
僕もそこに違和感を感じましてね、その事についてこれから調べようと思うんですよ。」

カイト「調べるたってどうすんですか?
この記事が書かれたのはもう57年も昔の事なんですよ。
書いた記者はとっくに死んでいるか…生きていたとしても定年になってますから!」

右京「実は…帝都新聞には一人友人がいましてね。
まぁ現在は既に帝都新聞を辞めてフリーのジャーナリストですが…
これからお話を伺いに行きますよ。」

カイト「帝都新聞に友人ねぇ、随分と都合がいいですね。」

右京「それとこれから行く場所にキミも強ち無関係というわけじゃありませんよ。
ある意味、キミの先輩に当る人もいますから…」

カイト「へ?」

こうして二人は右京の言う帝都新聞の友人に会いに車で向かう事になった。
しかし…そんな右京とカイトを尾行する一台の車が後ろにいた。

―「行ったか。」

―「ヤツら何処に向かう気だ?」

―「着いたようですよ、けどこのマンションは…」

―「間違いない、このマンションは…かつて杉下右京の相棒だった亀山薫のマンションだ!」

ここまで、続きは出来たら夜に

~亀山のマンション~


9月1日、AM10:00


右京「亀山くん、それに美和子さん、お久しぶりですね。お元気そうでなによりです。」

亀山「そういう右京さんこそ、お変わりないようで!」

美和子「本当に、けどすみません…サルウィンに行ってから音沙汰無しにしてしまって…」

カイト「あの…杉下さん、こちらの方々は?」

右京「おやおや、僕とした事が…紹介しましょう。
こちらは亀山薫くん、以前特命係で僕と一緒に働いてくれていた人です。
現在はサルウィンという国にボランティア活動をなさっています。
それとこちらは美和子さん、亀山くんの奥さんです。
彼女は以前帝都新聞社に勤めていましたが。」

カイト「あぁ…なるほど、この人が俺の先輩…どうも、特命係の甲斐と言います。」

美和子「うわっ!イケメンだ!」

亀山「それじゃキミは俺の後輩になるわけか!さぁ…どうぞどうぞ!
三人とも上がって、上がって♪」

そう、右京が訪れたのはかつての相棒、亀山薫の妻である美和子に話を聞くために
ここにやって来たのだ。




カチャッ  カチャッ  カチャッ



亀山「ささっ!亀山家特製のコーヒーですよ、どうぞお飲みください。」

居間に通された右京とカイトはテーブルに亀山が用意したコーヒーを飲んでみた。
普段は紅茶やコーラを飲む二人だがその味は…


右京「……頂きます、おや…これは…」

カイト「いい豆使ってますね!どうしたんですかこれ?」

亀山「でしょ!実はこれサルウィンで採れた豆なんですよ♪」

美和子「薫ちゃんたら商才があったらしくあっちでコーヒーの豆を栽培して
この商売が軌道に乗っちゃって大成功しちゃったんですよ。」

亀山「まぁ…ボランティアの海外援助だけに頼っているわけにはいかないですからね。
自分たちで何か出来る事があればと思って始めたわけですけど…」

右京「悪い事ではないと思いますよ、それで現地の方々の生活が向上なされているなら
キミは自分がやっている事を誇るべきだと僕は思います。」

亀山「右京さん…あざーっす!それで…キミが今の右京さんの相棒なんだっけ?
え~と甲斐くん。」

カイト「えぇそうです、あ!俺の事は『カイト』って呼んでください。
『甲斐亨』なんで『カイト』、覚えやすいでしょ♪」

美和子「はぁ~!特命係にこんな若いイケメンくんがやってくるなんて…
しかもこの子、右京さんから指名もらって特命係に来たそうよ!
捜査一課でヘマやらかして飛ばされた薫ちゃんとは大違い!」

亀山「うるさいよお前!言ってる事が親戚のおばちゃんみたいだぞ!
大体なぁ…指名って何だよ!?キャバクラじゃあるまいし…」

美和子「誰がおばちゃんかね!?これでもまだ『お姉さん』です!」

カイト「愉快な人たちですね。」

右京「えぇ、彼らを見ていると飽きる気がしません。
ちなみにですが角田課長がいつも特命係に置いてあるコーヒーを飲みに来るのは
亀山くんがコーヒーを飲んでいたからですよ。」

カイト「あぁ、なるほど…ってこんな事聞きに来たわけじゃないでしょ!?」

亀山「そうですよね、右京さんがこんな雑談をしにわざわざウチを尋ねたりしませんよね。」

美和子「それでどういったご用件なんでしょうか?」

積もる話もようやく終わり、右京はいよいよ本題に移った。

右京「実は正直…キミたちを巻き込みたくはないのですが…
僕たちも余裕が無くて…この記事を見てほしいのですが…」

亀山「何だこりゃ?超能力?」

美和子「この記事…帝都新聞のモノだけど…57年も前の記事だよ!?」

右京「えぇ、以前帝都新聞にお勤めになっていた美和子さんにならこの記事に関する
詳しい話をご存知かと思いましてね。」

美和子「……けど…うん…まぁもういいか、私も帝都新聞やめちゃったわけだし
右京さんたちに話しても問題ないでしょう!」

右京「その言動から察するに何か曰くつきの話のようですが…」

美和子「ハイ、私も帝都新聞に勤めていた頃…年配の先輩から聞いた話なんですけどね…
この話…現在でも社内じゃタブーにされている話でして…
その記事に載っている死んだ記者ってのがウチの…帝都新聞の記者なんですよ。」

カイト「帝都新聞の記者?なるほど!
仲間の記者が殺された、だから『山村志津子』の事をこんなボロクソに叩いた内容を
書いているわけですね!」

美和子「いいえ、それだけじゃないの。この記事を書いた人は…死んだ記者の婚約者なのよ。」

右京「婚約者?つまり亡くなった記者の方とは恋仲だったわけですか。」

美和子「その人…名前は『宮地彰子』と言うんですけど…
彼女は当時これは殺人だって騒いで、けど警察は病死と判断して処理してしまって…
それで一人で色々と調べていたらしいですよ。
警察の調書を見たり実験の録音されたテープを手に入れたり…
他の新聞社がその事件を事故の見出しで出したのにウチだけ『山村志津子が殺した!』なんて
内容を書いたものだから当時のお偉いさんは怒り心頭だったそうですよ。」

カイト「そりゃそうですよね、一応病死なのに殺人の見出しになんてしたら
嘘の記事書いた事になっちゃうし…」

右京「なるほど、『山村志津子』の公開実験を調べていたわけですか…
それで『宮地彰子』さんは現在どうなさっているのですか?是非ともお会いして
彼女からもお話を伺いたいのですがねぇ。」

美和子「それが…ですね…彼女45年前に急に失踪したんですよ!」

カイト「い…いなくなった!?どうしてですか?」

美和子「45年前…彼女は同僚の記者に事件の真相を暴くと言ったきり帰ってきませんでした。
ただいなくなる時なんですけどね…これが社内でも問題でして…彼女…
ヤクザから拳銃を購入していたらしいんですよ!」

カイト「け…け…拳銃!マジですか!?」

右京「ほう、それは確かなのですか?」

美和子「それがどうも本当のようなんです、当時『宮地彰子』の同僚が…
彼女の机に拳銃を一丁持っていたのを目撃してて恐らく誰かを殺そうとしたんじゃないかって…
これが帝都新聞で『宮地彰子』の話がタブーにされている理由なんですよ。」

カイト「誰かを殺そうとしたってまさか…」

右京「それで美和子さん、彼女は何処に行くのか行先を言ってはいなかったのですか?」

美和子「えぇ、一応言ってたいたそうですよ。ただ…」

右京「ただ…どうなされましたか?」

美和子「その行先なんですけど…確か劇団だって言ってたそうですよ、名前が…」

右京「『劇団飛翔』…そんな名前ではありませんか?」

美和子「そうそう!そんな名前です!…けどその劇団…」

カイト「俺たちも知ってますよ、本番中に人が死んだんですよね。
つまり彼女も『劇団飛翔』のメンバーと一緒に…」

右京「間違いないでしょうね、『宮地彰子』と『劇団飛翔』は何らかの事件に
巻き込まれてしまい…恐らく全員…死んだものだと思われます。」

カイト「『宮地彰子』が調べていたのは間違いなく『山村志津子』の事でしょうね。
彼女は『志津子』が婚約者を殺したと疑い調べていたんですよ!」

右京「美和子さん、当時の『山村志津子』の公開実験でまだご存命の記者の方は
いらっしゃいますかね?」

美和子「いないそうですよ、その『山村志津子』の公開実験…それを見てた
記者全員が実験から10年以内に全員死んだらしいんです。」

カイト「10年以内に死んだ…じゃあやっぱり…
けどどういう事だ?『山村志津子』ってもうその前にもう亡くなったじゃないですか。
何で『宮地彰子』は12年以上も前に死んだ『志津子』の事を調べ続けていたんだろ?」

右京「…」

美和子「それは私にもわからないわ、けど…同じ女で記者だから彼女の境遇は
ちょっと理解出来るところがあるんですよね。
私だって薫ちゃんが誰かに殺されでもしたら私情優先した記事を書いちゃうかもしれないし…」

亀山「おいおい、嬉しい事言ってくれちゃってさ♪」

右京「なるほど、大変参考になりましたよ。美和子さん、どうもありがとう。」

美和子「そんな…気にしないでください。
けど右京さんはこんな事件調べてどうする気なんですか?
いくらなんでもこれ45年前の事件ですよ、もし『宮地彰子』が生きていたとしても
残念ですけど…もう時効扱いじゃないですか?」

カイト「杉下さん…どうしますか?事件の事…教えても問題無いですかね?」

右京「美和子さんはジャーナリストですからね、下手に隠し立てするよりも
ある程度の情報を言っておいた方がむしろ警戒になるでしょう。」

カイト「なるほど、それもそうですね。」

右京「それでは説明します、といっても詳しい事は言えませんが、
最近都内である事件が発生しましてその事件にもしかしたら…
『山村志津子』の娘が関わっている可能性があるのですよ!」

美和子「『山村志津子』に娘がいたんですか!なるほど、それで調べていた訳ですね。」

亀山「なるほど、つまりその人物が『山村貞子』なわけですね!」

右京「…はぃ?…」

カイト「えぇ、俺らが調べた限りだとどうやら娘の『貞子』にも特殊な力があると…」

右京「カイトくん、ちょっと話をやめてもらえますか…」

カイト「え…でもまだ途中ですよ?」



右京「「いいから!」」



右京はこれまで平静にいつも通りの佇まいでいたが急に声を荒げてある事に注目した。

それは…

右京「亀山くん…キミ…どこでその名を知りましたか?」

亀山「へ?何を言ってるんですか右京さん?」

右京「僕とカイトくんは確かに『山村志津子』の名前は話の流れで教えましたが…
娘の『貞子』の名前はまだ明かしていませんでした。
勿論美和子さんも先ほどの会話から察するに『貞子』の存在どころか名前すら知らなかったはず…
それなのにキミは『山村貞子』の名前を知っていた。
それに…僕はこのテーブルについてからひとつ疑問があるのですが…」

カイト「じ…実は…俺もさっきから気になってるんですけど…」

美和子「薫ちゃん…私もなんだけど…」

亀山「ちょっとちょっと何だよみんな!わかるように説明してくれなきゃ俺だって困っちゃうよ?」

亀山はみんなが自分を茶化しているんだろうと思い冗談半分でいたが
右京、カイト、美和子の三人は奇妙な疑問を感じていたのだ。

右京「何故キミはコーヒーを三つも用意したのですか?」

カイト「俺たちは二人しかいないんで、てっきり亀山さんか美和子さんが飲むモノ
かと思ってたんですけど…」

美和子「私もてっきり薫ちゃんが飲むかと思ってたから何も言わなかったんだけど…
それなら私の分も注いでくれるはずだよね?」

亀山「なんだ、そんな事気にしてたのか!ハハハ、みんな神経質なんだからもう♪
だってさぁ…」

全員が感じていた疑問に亀山は笑って答えるが、その答えに亀山以外の全員が
驚きを禁じ得なかった。









亀山「だって右京さんたち三人でウチに入ったじゃないですか!
右京さんとカイトくんとそれと白い服を着た髪の長~い女の人、あの人が『山村貞子』さんでしょ?」













右京「亀山くん!それは本当ですか!?
そういえばキミは確か玄関口で『三人とも上がって』と言いましたね。
『山村貞子』は…僕たちと一緒にこの家に入ったのですか!」

亀山「えぇ本当ですよ、俺確かに見ましたモン。
右京さんたちが玄関に居た時にうしろに髪の長い女の人が入りましたから。
そんで気になって名前を尋ねたら小声で『山村貞子』って自分から言ってましたよ。」

カイト「ハハ…何言ってんすか?お…俺ら今二人しかいないじゃないですか!
そんな髪の長い女なんかいないですよ。」

美和子「そうよ薫ちゃん!事情はよく知らないけど私だって玄関にいたけど
女の人なんかいなかったよ!それに今だっていないじゃない!?」

亀山「そこがおかしいんだよな、俺もウチに入るところまでは確かに見たんだが気が付くと
いなくてさ…まったく何処行っちゃったのかね?」

カイト「す…杉下さん…まさか亀山さんって…」

右京「キミが察する通り彼は霊感が強くて、なんでも以前は亡くなった友人の霊が見えたとか…
正直僕も肖りたいと常々思っているんですがね、いやはや…こればかりは生まれつき
なのでしょうか、残念ですねぇ…」

カイト「いや…そんな事じゃなくてですね!この家に『貞子』が…」

カイトがそんな不安を過らせた時であった。


ピンポ~ン


ドンドン! ドンドン! ドンドン!


玄関からチャイムが鳴った、それからすぐに玄関を叩く音がした。
まさかこれは貞子が!という恐怖がカイトの頭を過ったがそんな事も知らずに
家主である亀山はドアを開けようとしていた。

亀山「たく…誰だよ?チャイム鳴らしたんだからこんな力強くノックする事はねえだろ!」

カイト「ちょ…ちょっと待ってください亀山さん!開けるのは危険ですよ!?」

美和子「そうよ、薫ちゃん!私も事情はよくわかんないけど…とにかく様子見よ!」

亀山「あのねぇ…ここは俺の家なわけ、こんな無作法に玄関叩くヤツがいたら
文句のひとつくらい言わなきゃ相手がつけ上がるだけだって…ね!」

カイト「ダメだ亀山さん!離れて!?」



ガチャッ



玄関の先にはきっと『貞子』がいる、そう思ったカイトであったが、
その心配は必要なかった、何故なら…

伊丹「『元』特命係の亀山ぁ~!久しぶりだなこのヤロウ!!」

亀山「テメェ!伊丹!何で俺んちに押し掛けてきてんだよ!?」

伊丹「うるせぇ!こっちだってな、誰が好き好んで警察辞めたお前の家になんか
来るもんかよ!」

カイト「い…伊丹さん…どうなってんだ?」

芹沢「あぁ、やっぱり居た。先輩、三浦さん、カイトがいましたよ!
これならたぶん杉下警部も中にいるはずですよ。」

三浦「やはり…大人しく謹慎なんかしていませんでしたか。」

右京「これはこれはみなさん、やはり先ほどから僕の車の後を付けていたのは
あなた方でしたか。」

亀山「右京さんたちの後を付けていた?伊丹!どういう事だ?」

伊丹「どうせ特命係が大人しく謹慎なんざしてるはずがねえと思ってな!
だから後を付けてみたらどういう訳かお前の家に着ちまったんだよ!
あぁ…喉乾いた、茶と菓子くらい持って来い!俺は客人だぞ!」

亀山「うっせえ!お前みたいなヤツに誰が茶なんか出すか!
代わりにな!塩撒いてやる!喰らえ!うら!うら!」


バサッ  バサッ  バサッ


伊丹「バカッ!やめろ!服に付くだろうが!」

美和子「ちょっと二人ともこんな玄関口で騒ぐのやめなさいよ。
近所迷惑でしょ!?」

カイト「けどこの家の中には…『貞子』が…」

伊丹「『貞子』だぁ?お前まだそんな事言ってんのか?そんな何年も前に死んだ人間が
いるわけがねえだろ!」

亀山「何言ってんだお前?それと『貞子』って髪の長い女性ならさっき帰ったよ。
なんか妙に苦しそうだったけど。」

カイト「か…帰った?つまりもう安全って事?」

右京「どうやらそのようですね…まったく亀山くん…
キミという人は頼りにならないようでいて頼りになる、本当に不思議な人ですねぇ。」

亀山「それ…褒めてるのか貶しているのかどっちなんですか?」

カイト「じゃあもうここに『山村貞子』はいないんですね…よかったぁ!
安心したら腰が抜けちまった…ハハ…」

伊丹「よかねーよ、ほら立て!さっさと行くぞ!」

カイト「行くって何処へ?」

三浦「どうせお宅らの事ですから何か事件の情報を掴んだんでしょう。
正直我々はこの事件をどう捜査すべきか恥ずかしながら皆目見当も付きませんのでね…
こうして警部殿の動向を探ってたわけですよ。」

伊丹「利用出来るものはなんでも利用する、それが捜査一課のモットーだ!」

芹沢「いや…そんなモンをモットーにしてるの先輩だけだから…」

カイト「一応俺と杉下さんは…謹慎中なんだけどこの人たちそんな事お構い無しなんだろうな…」

伊丹「いいから早く行くぞ!こんなところにいると亀山菌が移る!」

亀山「俺だってお前のツラなんざ二度と見たかねえやい!」

右京「その前にひとついいでしょうか、これ先ほど亀山くんが『山村貞子』に淹れた
コーヒーのカップなんですがね、見てください。」

カイト「うはっ!コーヒー全部飲み干してるよ!」

右京「芹沢さん、このカップを至急鑑識の米沢さんに調べてもらってください。
では僕たちもそろそろ行きましょう、お騒がせしてすみませんねぇ。
亀山くん、それに美和子さん。」

美和子「いえいえ、そんな。大して役に立ったかどうかもどうかもわかりませんけど…」

亀山「もし人手がいるなら手伝いますよ、サルウィンから戻って身体を持て余してますからね!」

右京「いえ結構、既に一般人であるキミを巻き込むわけにはいきません。
そのお気持ちだけで充分ですよ。
それよりも…この件はすぐにでも忘れてください、あなた方の命に係わります!」

カイト「とくにさっきみたく『髪の長い女』を見たら絶対に声とか掛けないでください!」

亀山「わ…わかりました、右京さんの言う事に間違いはないですからね!
捜査の方頑張ってください!」

こうして右京たちは亀山のマンションを去って行ったが彼らの去り際を見送る
亀山と美和子だったが…

美和子「ねぇ…薫ちゃん、さっきの右京さんたちの言動からして『山村貞子』って
もう死んでいるらしいんだよね。それなのに何で捜査しているんだろ?」

亀山「さあな、俺たちの知らないところで何かが起きているんだろ。
まったくこんな時自分が警察官じゃないのが歯がゆいなんて思っても見なかったぜ。」

美和子「ところでさ、薫ちゃんさっきその『貞子』って人の事見たんだよね。
どんな印象だった?」

亀山「そうだな、一言で言うなら…『暗い』かな…
いやな…陰湿とかそんなんじゃなくて…何かを想っている…そんな感じがしたな。
まぁ俺もよくわかんねえんだけど…」

美和子「そっか、私にはわからんねぇ。」

亀山「ところで…右京さんには言えなかったんだが、実はあの人たちの帰り際にな…
また見えちゃったんだよ…『山村貞子』…なんともなけりゃいいんだけどな…」

右京とカイトの安否が気になる亀山…
しかし亀山の不安を余所に右京とカイトの『呪い』のカウントダウンは着々と進行して
いくのであった。

今日はここまで

>>268

この亀山さんがサルウィンでコーヒーの豆を栽培してるというのはこのSSだけの
設定になりますので決して本編でもやってると誤解なさらないでください。



名前を聞かれたら名乗る
出されたコーヒーは飲み干す
貞子地味に律儀で萌えた

貞子も始球式やるぐらい丸くなったきたしな

>亀山「何言ってんだお前?それと『貞子』って髪の長い女性ならさっき帰ったよ。
>なんか妙に苦しそうだったけど。」
まさか亀山さんが伊丹んに蒔いた塩のせい?

>>295
多分靴も脱いでちょこんと座って飲んでたんだろうな

おいついた
貞子わからないが面白い

ちなみに伊豆大島航路にフェリーはないぞ、2時間で行けるのは高速ジェット船セブンアイランド、それと5-6時間かけていく貨客船さるびあ丸とかめりあ丸
細かい事が気になるのが僕の悪い癖、というわけではないが一応

~議員会館~


片山雛子のオフィス


9月1日、PM13:00


右京とカイト、それに伊丹、三浦、はここ議員会館の片山雛子のオフィスで
彼女が来るのを待っていた。
(ちなみに芹沢は先ほどのカップを鑑識に持っていくため右京たちとは別れて行動中)
何故このような事態になったかというと…

伊丹「おいカイト!片山雛子が警視庁から証拠品を取って行ったのは本当なんだな?」

カイト「いや…政府の役人らしき人物が持って行ったってだけなんで、
それが片山雛子の部下かどうかだなんてわからないですけど…」

伊丹「いいや!俺の勘に狂いはねえ!
やっぱりあの女は前から睨んでいた通り何か隠していると思ってたんだよ!
今日こそ化けの皮をはがいてやるぜ!!」

そう、こうなったのも先ほど亀山のマンションを出た後にカイトが思わず
片山雛子の事を伊丹の前でチラリと話してしまったのが原因であった。

三浦「俺はどうも嫌な予感がしてならないんだが…
大体片山議員には過去の事件で散々煮え湯を飲まされたんだぞ。
また同じ事の繰り返しになるんじゃないか?」

伊丹「いいや今度こそ大丈夫だ!何故なら俺の勘がそう告げているからだ!」

三浦「あぁ…なら今度も駄目そうだな…」

カイト「ねぇ…杉下さん…どうすんですか?
まだ片山雛子が関わっているという可能性があるだけで証拠とか0なんですよ。
言い逃れなんてされたらそれまでじゃないですか!」

右京「しかし今の現状では埒が明かない、なにより僕たちには時間が無い。
それを踏まえれば多少無茶でも揺さぶり位は掛けてみたいと思いましてね。」

カイト「揺さぶりねぇ…」

カイトが不安になるのも無理はなかった、確かに現状では片山雛子を逮捕できる証拠は
何つ出ていやしない。
それなのに何の策も無いまま議員会館まで訪れて、下手をすれば今度は謹慎だけじゃすまない。
クビになるかも…と思ったがよく考えてみれば自分はあと2日の命なわけだから
そんな心配をする必要もないかと考えを改めカイトは腹を括った。

そして片山雛子が部屋にやって来た。

雛子「杉下さん、それと捜査一課の方々、どうもお久しぶりです。随分とご無沙汰ですね。」

右京「ええ、本多篤人の事件以来ですね。その後もご活躍なさっているそうでなによりです。」

雛子「それで今日はどういったご用件でいらっしゃったのですか?
まさか謹慎中のあなた方がこんな世間話をしに来たわけじゃないのでしょう。」

右京「おやおや、僕らが謹慎処分を受けた事をもうご存知でしたか。」

雛子「杉下さんが来られるんですもの、一応警視庁の方へご報告しておきましたので…
そしたらあなた方は現在謹慎処分を受けていると言われましてね。
まぁ私にはどうでもいい事ですけど。」

カイト「俺らの謹慎処分をもう把握してるなんていくらなんでも片山雛子警戒し過ぎでしょ…」

三浦「警部殿と片山雛子は以前にも色々と確執があったからな。
向こうが警戒しても仕方ないさ。」

伊丹「単刀直入にお伺いします、先日都内で亡くなった『吉野賢三』さんですが
どうも亡くなる前にあなたの事を張り込みしていたらしいんですよ。
何か心当たりはご存じありませんかね?」

雛子「そう言われましても、ご存知かと思いますが私の仕事は守秘義務のある
事柄ばかりですからおいそれと話せないんですよ。
特に…令状も無い捜査ではお話しする事も出来ませんが…」

伊丹「かーッ!相変わらず痛いところつきますよね!」

雛子「これでも魑魅魍魎跋扈する国会で仕事してるんですよ。
訳のわからない話に振り回されるのは御免ですので。」

三浦「まぁ…こっちもただの参考程度の話ですので、そんなに警戒なさらないで
ほしいのですが…」

雛子「それは無理な話でしょう、あの杉下右京を前にして警戒するなという方が
どうかと思いますけど…」

右京「僕から言わせてもらうなら、何も疾しい事が無いなら警戒する必要が無いと思いますがね。
警戒するのは何かよからぬ事を企んでいる…そう解釈してしまうかもしれませんよ。」

カイト「あの…杉下さん、そんな喧嘩腰で迫っちゃ話なんか聞かせてもらえませんよ。」

雛子「ところでこちらのお若い方は?もしかしてあなた…神戸さんの後任になったっていう…」

カイト「ハイ、今度特命係に配属された甲斐亨といいます!どうぞよろしく!」

雛子「確かお父様が警察庁の…」


カイト「「親父は関係ありません!!」」


雛子「まぁ確かに警察庁のあなたのお父様とはお近づきになりたいですけど…
個人的にあなたの心情は察する事は出来るわよ、私も政界に入った直後は…
父親の後釜継いだばかりで親の七光りだとか言われたから…」

カイト「…」

珍しく自分の心情を察してくれる片山雛子に思わず好感を抱くカイトだが、
そんな感情はこの後の彼女の豹変した態度にすぐに弾け飛ぶとはこの時のカイトには
まだ想像もつかなかった…

雛子「それで…杉下さん、もうこれで話は終わりですか?
それならお帰り頂けませんかしら、これでも私は忙しいので…」

右京「その前に僕の推理を聞いていただけますかね、まぁ多少超常的現象も含みますが…」

雛子「杉下さんの推理?少し興味がありますね。いいわ、どんな推理を聞かせてもらえるのかしら?」

右京「それでは、事件の発端は45年前…いえ、57年も前に遡ります。
当時『伊熊平八郎』という学者が大島に住む『山村志津子』という女性を被験者とした
超能力の公開実験が行われていました。
そこで彼女はあらゆる実験を成功させましたがひとりの記者がこの実験を「インチキだ!」と罵った。
その直後、記者は急性心不全で亡くなった…『山村志津子』が殺したのではと
疑いを掛けられた『志津子』は発狂し…そして亡くなった。」

雛子「……気の毒な話ですがそれが何か?」

右京「話は続きます、それから12年後…
『山村志津子』の娘である『山村貞子』は成長して『劇団飛翔』に入ります。
彼女は女優になる気だったのでしょうね、しかしそうはならなかった。
劇の本番中に『貞子』は予想しなかった事態が起こり…舞台で死人が出ました。
その直後…劇団員たちは行方不明…になりました。」

雛子「そんな半世紀も前の事件を話されても困るんですけど…
杉下さん、あなた本当に何しに来たんですか?」

右京「57年前に亡くなった記者には当時婚約者がいたそうです。
名前は『宮地彰子』、彼女は『山村志津子』の公開実験を調べていたそうですよ。
それはそうでしょうね、婚約者が殺されたのだから…
そして彼女は『山村志津子』の公開実験から12年後に娘の『貞子』が所属する
『劇団飛翔』に赴きます、目的は恐らく『貞子』を殺すため…
そのために彼女は拳銃を用意したそうですから。」

伊丹「け…拳銃…」

三浦「復讐のために娘の『貞子』を殺そうとするなんて…」

カイト「以前帝都新聞に勤めていた美和子さんから聞いた話です、間違いないはずですよ!」

雛子「ですからそれが何か?」

右京「少しおかしいと思いませんか、『山村志津子』が亡くなったのは公開実験が
行われてからすぐの事だったとか…
それなのに『宮地彰子』はその後も事件を調べ続けた。」

カイト「それは…娘の『山村貞子』を殺すためじゃないんですか?」

右京「ではそれは何のために?」

伊丹「決まってるでしょ!『志津子』を殺せなかったから代わりに娘の『貞子』を殺して
婚約者の恨みを果たしたかったんですよ!」

右京「なるほど…恨みですか。その考えにも一理あります。
しかしそれなら何故さっさと『貞子』を殺さなかったのでしょうかね?
ただ殺すだけならいくらでも機会はあったはずですよ、それに『宮地彰子』は
警察の調書や実験の時の録音テープまで調べていたとか…
何故でしょうかねぇ。」

雛子「前置きが長いのは杉下さんの悪い癖ですね、恐らく杉下さんはこう言いたいのでしょう。
公開実験で記者が死んだのは『山村志津子』の所為ではないと…」

右京「そう!まさにその通りなのですよ!さすがは議員、冴えていらっしゃる。」

雛子「まさか…その記者を殺したのは私だとか言わないですよね。
言わなくてもわかると思いますけど57年前なんて私は生まれてませんからね!
それなのに私を疑うなんて馬鹿げてますわ!」

右京「いえいえ、さすがにそんな事は考えていませんよ。
57年前の公開実験で記者を殺害したのは…『山村貞子』です!」

伊丹「なんだって!?」

三浦「なるほど!それなら辻褄が合うな!」

右京「そう、『宮地彰子』は12年掛けて調べて気付いたのでしょうね。
自分の婚約者を殺したのは『山村志津子』ではなく…娘の『貞子』だと!」

カイト「けど『貞子』って事件当時は確かまだ小学生くらいの年齢だったはずです!
大の大人を殺すなんて不可能ですよ!」

右京「『山村志津子』は公開実験に及ぶほどの超能力を有していた。
そして娘の『貞子』も間違いなく能力を持っていて…もしかしたら母親以上の
能力の素質を持っていたかもしれない、超能力に年齢は関係ないと…
そう考えられませんか!」

カイト「けどそれじゃ45年前に『劇団飛翔』で起きた事件は…
あれは一体どういう事なんですか?」

右京「あの事件も『山村貞子』の仕業でしょう。
しかし彼女はそもそも舞台中に人を殺そうだなんて思っても見なかったはず…
引き起こすきっかけを作ったのは『宮地彰子』が原因でしょう。
彼女は『貞子』の本性を暴くために舞台の本番中にあるテープを流したのですよ!
それこそが…」

伊丹「まさか…内村部長が聞いたという『的中!』…『的中!』…の音声!
それがを流していたのが『宮地彰子』だというのですか!?」

三浦「しかしいくらなんでも勝手に音響いじくったら劇団の誰かにバレるんじゃ…」

右京「もしかしたら劇団の中にもいたのかもしれませんよ。
『山村貞子』を疎んでいた人物が…あの劇団で最初に起きた『葉月愛子』の事件で、
『貞子』は一度疑われていますからね。
そんな『貞子』を疎んでいる人物がいたとしてもおかしくはないでしょう。
その人物と協力して『宮地彰子』は『貞子』の本性を暴いた、つまり45年前の事件は…
『宮地彰子』によって引き起こされたのですよ!
いえ…劇団のほとんどが失踪した事を考えればもしかしたら…
『劇団飛翔』の団員たちと『宮地彰子』は『山村貞子』の本性を暴き出し…
あわよくば『貞子』を殺害しようと企んでいた、しかし計画は失敗し…
彼らは返り討ちにあってしまった、恐らくこれが45年前の事件の真相でしょう。」


パチパチパチパチ


片山雛子は右京の推理を聞き、その推理に対し拍手を送った。
だが彼女の心情は内心穏やかではなかった。

雛子「素晴らしい推理でしたね杉下さん、けどその事件はもう45年前に起きた事件ですよ。
けどいくら法改正で時効が無くなったとはいえさすがにその…
『宮地彰子』という記者や、『劇団飛翔』の団員たちを裁く事は出来ません。
それに『山村貞子』という女性も…この場合正当防衛になるんでしょうかね?
まぁ彼女が団員たちを殺したという事もですが。」

右京「実は…ここまでは正直前置きの話なんですよ。
これから話す本筋の推理を語る前に議員にはどうしても知ってほしくて。」

雛子「今までのが前置き?これから話す事が本筋?何を仰ってるんですか??」

カイト「とりあえず黙って杉下さんの推理を聞いてください。
話はそれからいくらでも聞きますから!」

雛子「ハァ…わかりました、どうぞ続けてください。」

右京「それでは話します、45年前…『宮地彰子』、それに『劇団飛翔』の団員たちを殺した
『山村貞子』ですが彼女もまた無事ではいられなかった。
何者かの手により伊豆の『井戸』に閉じ込められてしまい、それから30年の月日が経ち…
『浅川玲子』、『高山竜司』の手により死体を見つけてもらったのですよ。
何故二人は30年も前に閉じ込められた『山村貞子』を見つける事が出来たのか…
それは…15年前に巷で噂になった『呪いのビデオ』が関係しているからですよ!」

雛子「『呪いのビデオ』?杉下さん…あなた自分が何を言ってるのかわかってますか?
警察官がそんな非科学的な事を…」

カイト「片山さん!とにかく最後まで聞いてください!お願いします!」

雛子「…わかったわ、それで『呪いのビデオ』とやらがどうしたんですか?」

右京「彼女は先ほども言ったように母親である『志津子』以上の超能力の持ち主です。
そんな彼女の思念が『呪いのビデオ』を生みだしたのでしょうね。
事実その『呪いのビデオ』の所為で当時…
『岩田秀一』、『能美武彦』、『大石智子』、『辻遥子』、『高山竜司』、『沢口香苗』、
そして15年後の現在では『吉野賢三』、『小宮』とこれだけの犠牲者を出しています。
ちなみにこの方々は我々が確認できた人数であり…
恐らく『呪いのビデオ』で死んだ人間はまだいるはずですよ!」

雛子「あの…杉下さんの仰る事が全然わからないんですけど!
いきなりやってきて事件の聴取に来たかと思えば急に50年以上も前の事件についての
推理を語り出して、おまけに今度は『呪いのビデオ』!?さすがの私も怒りますよ!!」

カイト「まぁ…そりゃそうですよね。」

伊丹「無理もねえよな…聞いてる俺らですら付いていけねえや…」

三浦「まぁ警部殿には何かお考えがあっての事だろうがさすがにこれは…」

雛子「もう我慢できません!今すぐお引き取りください!
これ以上くだらない話に付き合う気はありません!!」

カイト(この人怒ると恐いな…TVのイメージとは大違いだ…)

普段は温厚なイメージで世間からも注目を集める片山雛子だが、そんな彼女でも
突然やって来られて『呪いのビデオ』の話をされれば怒りたくもなるだろう。
だが右京の推理は終わらない、いや…ここからが重要なのだから。

右京「いいえ、まだ帰るわけにはいきませんよ。大事なのはここからなのですから。
15年前、精神病院の『川尻』医師が『倉橋雅美』という少女を担当しました。
この『倉橋雅美』というのは先ほど述べた『呪いのビデオ』を見て亡くなった
『大石智子』の死亡現場に居合わせた少女です。
この当時彼女は『大石智子』の死にトラウマを感じてしまい、精神病院に入院してましたが
彼女が『呪いのビデオ』の影響を受けた事を知った『川尻』医師は『山村貞子』の
怨念の除去を行う実験をしました。
しかしその実験は失敗…『川尻』医師もその最中に死亡したとの事です。」

雛子「それが何だと言うんですか?どう考えても私にはその『川尻』という医者が
マッドサイエンティストだという印象しかないのですけど!」

右京「僕たちは彼の遺品を探しました、当時の同僚の方の証言によれば
遺品はまだ警察にあるのではと聞かされましてね…」

カイト「しかしありませんでした、持って行ったのは政府の人間だと言われてますがね。」

雛子「政府の人間って…あなた政府の人間が世間にどれだけいると思っているんですか?
あなた方警察官だって一応政府の人間でしょうが!」

カイト「あ…いや…それは…」

右京「持って行ったのは防衛省の人間だそうです。
その日の警視庁の来庁者の記入リストを見ましたからね、恐らく間違いないでしょう。」

雛子「ぼ…防衛省?何で防衛省が精神科医の遺品を持って行ったのですか?」

右京「恐らく『山村貞子』の実験を聞きつけたのでしょう。
『川尻』医師が行った実験は恐らく国がある程度絡んでいた可能性があります。
さて、そこで僕はひとつ考えてみたのですよ、『呪いのビデオ』…
もしこれを手に入れたらどうしようと思いますかねぇ。
たとえばカイトくん、キミはどうしますか?」

カイト「そりゃ…そんな危険なモン処分しますよ、何があるかわからないし…」

右京「それでは伊丹さんと三浦さんは?」

伊丹「見ただけで死んじまうんですよ!誰がそんな危ないモン持っていられますか!
捨てちまいますよ!」

三浦「俺も伊丹と同じ考えですよ、警部殿…それが一体何だと…」

右京はカイト、伊丹、三浦にもしも自分が『呪いのビデオ』を手にしたらという
質問を順番に行った、そして最後に片山雛子にも質問をしてみた。
彼女の答えは…

雛子「私なら………みなさんと同じ意見です。
そんな危ないモノはさっさと処分するのが当然でしょうね。」

右京「……なるほど、それが片山議員の『本音』だと一応受け止めましょう。
さて、みなさんは『呪いのビデオ』を手に入れたらどうするかの質問にどなたも
処分すべきだという回答でしたね、この行動に僕からは文句なんて言いません。
いえ…それどころかあなた方はむしろ正しい行動を取ったと思いますよ。
ですがもしも…もしもですよ、この『呪いのビデオ』を手に入れた者が
何かよからぬ事を企んだとしたらどうしますか?」

カイト「よからぬ事?」

伊丹「どういう事ですか警部殿?」

右京「見たら1週間後に必ず死ぬ『呪いのビデオ』、死んだ人間は急性心不全を起こし
その死は多少不自然だろうが病死扱いされる。
もしも悪意ある人間が『呪いのビデオ』を悪用し特定の人間に見せたらどうなるか…
『呪いのビデオ』を見せられたその特定の人間は1週間後に急性心不全で死亡、
警察は病死と判断し殺人事件ではなく病死として処理されてしまう。
これ…完全犯罪が成立すると思えませんか?」

雛子「……」

この瞬間先ほどまで怒声を口にしていた片山雛子が急に静かになった。
これを見逃す右京ではなかった、そして右京の推理はまだ続いた。

右京「そう、悪意ある人間の手に『呪いのビデオ』が行き渡り、呪いを回避する方法を
知り得ているならその人物は間違いなく『呪いのビデオ』を悪用するはずです。
ましてやそれが国家ともなればどうでしょうか?特に防衛省ともなればねぇ…」

カイト「一体どうなるっていうんですか?」

右京「先ほど述べた事を拡大するだけですよ、敵対する国家に『呪いのビデオ』の
映像を公開させる。この映像を見た対象の国家は…1週間後…恐らく死体の山が出来ている
でしょうね…大量殺戮がいとも簡単に行えておまけに核ミサイルのように周囲への
汚染を気にする必要もない、ましてやただビデオの映像を公開しただけなので
周辺国からは疑われたり報復される恐れすらない…
究極の殺人兵器『呪いのビデオ』…恐ろしいと思いませんか?」

雛子「プッ…フフフ…アハハハハハハ!
『超能力』?『呪いのビデオ』?『防衛省』?杉下さんの荒唐無稽な話を
黙って聞いてましたけど本当に頭大丈夫ですか?」

カイト「なら…証拠を見せてあげますよ!杉下さんいいですか?」

右京「えぇ、僕は構いませんよ。どの道この事を信じてもらうには多少の無茶は
致し方ないと思っていますからね。」

カイト「片山さん、あなたの携帯で今すぐ俺と杉下さんを撮ってもらえますか?
それで杉下さんが言った事が全部本当だってわかりますから!」

雛子「わかりました、撮りますよ。」


パシャッ


片山雛子はカイトに言われた通りに自分の携帯で右京とカイトを撮るが、
二人を撮ったその写真には右京とカイトの顔に白い靄が掛かっていた。
さすがにこれには驚く片山であったが…

雛子「こんなの…トリックか何かでしょう?
まったく忙しい国会議員を相手によくもこんなふざけた真似を…もういいです!
お引き取りください!!」

右京「えぇ、もう結構ですよ。
こちらこそお手間を撮らせて申し訳ありませんでした。」

結局右京たちは片山雛子から肝心な事を聞けずに彼女のオフィスを後にする。
しかし右京たちが帰ってすぐ秘書たちに彼女はある2つの場所へ連絡を取ろうとする。

雛子「ねぇキミ、すぐに防衛省の『山岸邦充』長官と連絡を取ってくれる。急いで!」

秘書A「わかりました。」

雛子「キミは…警察庁に連絡して。」

秘書B「警察庁にですか、どなたに連絡を取ればよろしいのでしょうか?」

雛子「勿論、警察庁長官官房付の神戸尊さんによ!」

議員会館から出た右京とカイト、それに伊丹たち。
しかし伊丹たちは最早話に付いていけないと嘆き「あとはお好きにどうぞ。」と
言って去って行った。
残った右京とカイトは残り1日半のタイムリミットで動くかを考えていた。

カイト「どうするんですか?
まさかこのまま防衛省に乗り込んで『呪いのビデオ』は無いか調べますか?
まぁ…令状無いから無理でしょうけど…」

右京「そのような強硬手段に及ばなくてもそろそろ何かしらの動きがあると思いますがねぇ…」

カイト「動きって…どういう事ですか?」

右京「先ほど片山議員の前であれだけ真相を述べたのです。
恐らく彼女は今頃急いで各方面と連絡を取っているはずでしょうね。
まぁ無理もないでしょう、恐らく彼女も肝心な部分は聞かされてないはずですからね。」

カイト「え?だって…『吉野賢三』は死ぬ前に片山雛子を張り込んでいたはずじゃ!?」

カイト「え?だって…『吉野賢三』は死ぬ前に片山雛子を張り込んでいたんでしょ!
彼女が黒幕じゃないんですか!?」

右京「カイトくん、これは僕の片山雛子に対する個人的な見解ですが…
彼女は一見何かよからぬ事を企んでいる策略家…なのは確かでしょうが、彼女自身が…
直接手を下す事はしない…いえ、そもそもそのような危ない橋を渡る人物ではない。
つまり『限りなくクロに近いシロ』だという事ですよ。」

カイト「なんか…言ってる事がよくわからないですけど…とにかく彼女はこの件には
関わってはいないって事なんですかね?」

右京「まぁ…それでも恐らく触り程度には関わっていると思いますがね…」



ヴィー ヴィー ヴィー


右京とカイトが片山雛子の人物像について話してる最中に右京の携帯に一通の電話が掛かってきた。
その相手は…

右京「おや?…この番号は…」

カイト「誰からですか?」

右京「今日は昔の馴染みと縁があるようですね、もしもし。
これはまた随分とお久ぶりです、はぃ?わかりました、すぐに伺います。」

カイト「電話…誰からでしたか?」

右京「キミのもう一人の先輩である神戸尊くんからでした。
今僕らが調べている件ですぐに話があるので警察庁に来てくれとの事です。」

カイト「警察庁…ですか?」

右京「どうしました?行きますよ。」

カイト「まぁ…親父と会う訳じゃないから大丈夫だよな。」

カイトは嫌煙する父親と会わぬ事を祈りつつ右京とともに警察庁へと向かった。

警察庁


9月1日、PM15:30


右京とカイトは神戸により警察庁に招かれた部屋の一室である話を始めていた。

神戸「杉下さん、こうして面と向かって会うのは本当にお久しぶりですね。」

右京「えぇ、本当に。仕事の方は大丈夫なんですか?」

神戸「まぁ…なんとかやってますよ。正直苦手な上司がいますけど…」

右京「長谷川宗男元副総監…あの人の下ですからね。」

神戸「大丈夫ですよ、苦手な上司は杉下さんで慣れましたから…」

カイト「あの…杉下さん、こちらの方は?」

右京「彼は神戸尊、現在は警察庁勤務ですがかつては特命係にいた事もあるんですよ。
ちなみにキミの前任者になります。」

カイト「あれ?前任者って…じゃあさっき会った亀山さんは!?」

神戸「彼は僕の前に居たんだよ、亀山さんが辞めた直後で僕が配属された訳だよ。
キミが…新しく特命係に配属された新人くんだよね、よろしく神戸尊です。」

カイト「あ…自己紹介遅れてすみません、甲斐亨です。みんなからはカイトって
呼ばれてますけどね。」

神戸「甲斐?ひょっとして…そういえば甲斐次長の息子さんが警視庁にいるって噂を
聞いた事があるけどまさか…」


カイト「えぇ、その出来の悪い息子です!!」


神戸「何か気に障ったようだね、ゴメンよ。」

カイト「いやぁ…気にしてませんから、ハハハ!」

神戸(目が笑ってないんだけど…)

右京「ところで神戸くん、僕らを呼んだという事はひょっとして…」

神戸「杉下さんの察しの通り、先ほど片山議員から連絡があったんですよ。
なにやらとんでもなく荒唐無稽な話を彼女の前で言ったそうですね。」

右京「荒唐無稽…まぁ確かに…そうかもしれませんね。」

カイト「…ったく!片山雛子…もう警察庁にチクッたんですか!
お偉いさんってのはクレームにだけはいち早く対応しやがるな!!」

神戸「まぁ…片山議員からの連絡はそんなクレームじゃなくてですね…
今から話す事は守秘義務が課せられます、こうしてお二人をわざわざ警察庁に呼ばなければ
ならない程の重要な話だというのを予め承知してください!」

カイト「重要な話…それって一体…」

右京「神戸くん、話してもらえますか?」

神戸「杉下さん、覚えていますか?
かつて亀山さんと相棒を組んでいた頃に逮捕した『小菅彬』の事を…」

右京「『小菅彬』?彼はまだ刑期満了してないはずですが?」

神戸「それがですねぇ…」

カイト「ちょっと待ってください!その『小菅彬』って何者なんですか?」

神戸「そうか、キミは知らないよね。」

右京「無理もありませんね、あの事件は関係者以外には伏せていましたから。」

何も知らないカイトのために右京はかつて『小菅彬』が起こした事件について説明した。

『小菅彬』、彼はかつて自分が勤める国立微生物研究所である事件を起こした。

彼は研究所の高度安全室に保管されているウイルスを強奪し、
その際に同僚の職員である後藤一馬を殺害しウイルスを所持したまま逃亡。

後に外部に持ち出されたウイルスがBSL(バイオセーフティーレベル)の、
レベル4で作られたウイルスであった事が発覚する。

すぐに警視庁は警戒態勢を敷き、『小菅彬』を確保する事に成功、最悪の事態は回避された。

しかし彼の真の狙いは防衛省が密かにレベル4の施設を稼働させている事を世間に公表して、

日本人の危機感と防衛意識を植え付けるのが本当の目的だった。

ちなみにこの事件は右京が亀山とともに捜査した最後の事件でもある。

カイト「そういえば…思い出しましたよ!
俺が新米警官だった頃、突然上から警戒態勢だって言われて…
俺なんか非番だったのにいきなり召集されましたよ…けど犯人の名前は明かされませんでしたね?」

神戸「前代未聞の犯罪だったからね、彼の身元は一切明かさずに秘密裏に逮捕された訳さ。」

右京「『我が子』…」

カイト「どうしました?」

右京「いえ、『小菅彬』は自ら作ったウイルスを我が子だと言ったのを思い出しましてね…
しかし何故彼の話題を持ち出すのですか?会話の意図が見えないのですけど…」

神戸「実は…防衛省の『山岸邦充』長官が『小菅彬』を秘密裏に出所させたんですよ!」

カイト「それ本当ですか!?だって相手は犯罪者じゃ…」

神戸「静かに!
この事は世間には公表されてないし警察庁でも極一部の人間にしか知らされてないんだから!」

カイト「あ、すいません…
けどそれじゃ国が犯罪者相手に司法取引したってわけじゃないですか!
こんな事態あり得ませんよ!?」

神戸「まぁ…そうなんだけどさ…」

右京「しかし彼が逮捕されたのは2008年の5年前、何故今頃になって彼が出られたのでしょうか?」

神戸「それは…国が以前にも犯罪者と司法取引した前例を作ったからですよ。」

右京「なるほど、本多篤人の一件…あれが思わぬ引き金になってしまいましたか。」

カイト「本多篤人って確か赤いカナリアの元幹部で現在は死刑囚の…
そういえば3年前に死刑執行された本多が実は生きてておまけに出所していたとかで
大騒ぎになりましたよね!」

神戸「そう、詳しい事情は言えないけど本多の時に一度超法規的措置が執行されてね。
その前例の所為で『小菅彬』も無期懲役だったはずがこうして晴れて出所してしまった
という訳ですよ。」

右京「ちなみに彼が秘密裏に出所したのはいつ頃の事でしょうかね?」

神戸「これがつい最近でして、1ヶ月前なんですよ。
…といっても本多の時のようなすぐにされたわけではなくて、
本多の一件を知った防衛省が3年掛けて『小菅彬』を出所させたわけですけどね…」

カイト「1ヶ月前…確か警視庁から『川尻』の遺品が持ち去られたのも1ヶ月前ですよね。
けどこの件に何故片山雛子が関与しているんですか?」

神戸「それは…」

右京「それは片山雛子も『小菅彬』の出所に一役買ってしまったのでしょうね。
恐らくですが防衛省に『小菅の研究は国益になる』とでも言われたのでしょう。」

神戸「まったくもって杉下さんの仰る通りですよ。
まぁ…僕も『小菅彬』の出所を手伝わされた身ですのであまり強くは言えませんけどね…」

右京「なるほど、『小菅彬』の出所に防衛省…色々と見えてきましたよ。
恐らく『吉野賢三』は防衛省が片山雛子と協力この『小菅彬』の出所についてを、
彼女を張り込んでいる内に知った。
そして彼らが『呪いのビデオ』、それに『山村貞子』について関わっている事を知った
『吉野賢三』はかつての同僚である『岡崎』の机から『呪いのビデオ』を見つけてしまい…」

カイト「『吉野賢三』と『小宮』は死んだ、『早津』さんは偶然助かったに過ぎませんけどね…
でもこれでこの事件の黒幕がわかりましたよ、すぐに防衛省へ行きましょう!」

神戸「そういう訳にもいかないんだよ、その『山岸』長官は現在出向中で
戻ってくるのは明日になるそうです。」

カイト「明日って…嘘だろ…」

右京「なるほど…そうきましたか。」

カイトが不安になるのも無理はなかった、明日は『呪い』のタイムリミット残り1日になる。
つまり…それを過ぎれば…右京とカイトは…

右京「どうやら明日…すべてに決着を付けなければいけないようですね!」

ここまで
小菅彬って誰?と思った方は相棒シーズン7の8話、9話を見てください。
亀山さん最後の事件です。

よりにもよって、小管かよ! 関わった奴ら全員、貞子の罰が当たりそう・・・

~防衛省~


9月2日、AM9:00


ついにタイムリミットの日がやって来た、今日を過ぎれば右京とカイトは『呪い』
により死んでしまう。
それを防ぐためにも彼らは防衛省にやって来たわけだが…

カイト「ついに今日ですね…」

右京「えぇ、なんとかして『呪い』を解く方法を見つけなければいけませんからねぇ。」

カイト「それはいいとして…」

大河内「何かな?」

神戸「さぁ行きましょうか、アポは前もってしといたのでご安心を♪」

カイト「神戸さんはともかくとして…何で大河内監察官がここにいるんですか!?」

右京「正攻法で防衛省の長官に会うのですよ、僕らでは無理ですからねぇ。
神戸くんと大河内さんにお願いしたまでですよ。」

カイト「だからって大河内さんまで呼ぶ事ないでしょ…
俺たちこれでも謹慎処分受けている事を自覚しましょうよ…」

右京「そんな心配今更だと思いますがねぇ…」

大河内「ご心配なく、特命係への処分は自宅謹慎から30%の減俸に変更になったので
何の問題もありません。」

カイト「あの…それ…個人的にすんごい大問題なんですけど…」

大河内「ならばこれに懲りて勝手な勤務違反は控えるように、わかりましたか?」

カイト「ハイ、重々承知しました…」

神戸「まぁ…杉下さんの下で働いている内は勤務違反をするなって方が無理なんだけど…」

右京「おやおや、僕が他人に勤務違反を率先する事なんて一度でもしてませんよ。」

神戸「ハハハ…」(自覚ないのかよ!?)

カイト「とにかく早く急ぎましょう!俺たちには時間が無いんだから!」

こうして彼らは長官の部屋に通され待っていたが…

………………


(1時間経過)


………………

(2時間経過)


………………


(3時間経過)


………………


(4時間経過)


………………


(5時間経過)


………………


そしてついに6時間経過した頃今まで沈黙を守っていたカイトが立ち上がりこう叫んだ。


カイト「「だーっ!!いくらなんでも待たせ過ぎだろ!?」」


大河内「場所を弁えなさい!ここをどこだと思っているんだ!?」

右京「しかしカイトくんの言う事ももっともですね、いくらなんでもさすがに6時間は
待たせ過ぎでしょう。
神戸くん、疑う訳ではありませんが…キミ…ちゃんとアポを取りましたか?」

神戸「お言葉ですが…ちゃんと取りましたよ、長官の秘書に連絡を取りAM9:00に
『正式』にお会いする約束を頂きましたからね!」

右京「ですがこの場には現れていない、これはいくつか考えられますね。
①長官が約束を忘れてしまっている。
②我々が来る事を知っているが無視している。
③何かトラブルに見舞われてしまいこの場に来る事が出来ない。」

神戸「①は無いでしょうね、この僕がちゃ~んとアポを取りましたし
昨日の今日ですよ、忘れる訳がないじゃないですか!」

大河内「②も無いでしょう、仮にも警察庁が正規に面会する約束をしたのですから、
それをすっぽかすなんてまずあり得ない。
もしそんな事をしたら両者に確執を生む事くらい長官も存じているはずです。」

カイト「じゃあ残る可能性は…③の何らかのトラブルに見舞われたと…
けど一体何があったというんですか?長官のスケジュールなんかわかりませんよ!」

大河内「とにかく連絡を取ってみましょう、私は少しの間席を外すので失礼する。」


バタンッ


大河内が部屋から出たと同時に右京はいつもの悪い病気が出てしまい周囲の者を
手当たり次第物色し始めた。

カイト「ちょっとちょっと杉下さん!ここ長官の部屋ですから!
何やってんですか!自重してくださいよ!?」

右京「すみませんね、引き出しとかあるとつい中身を見てしまう癖がありまして。
細かい所まで気になるのが僕の悪い癖でしてねぇ…」

カイト「だからってここ…お偉いさんの部屋なんだから自重してくださいよ…」

神戸「まあまあ…この人の下に就いたらこんな事日常茶飯事になるから早く慣れた方が良いよ。」

カイト「いやいや、そこは慣れちゃダメでしょ…」

右京「おやおや…こんな物が出てきましたよ。」

神戸「それ…ファイル…ですね。」

カイト「何か書かれてるけどこれは…『ProjectRING』?」

そのファイルに書かれていた内容は、昨日右京が雛子の前で述べた内容とほぼ同じ事が
載っていた。

57年前に行われた『山村志津子』の公開実験、45年前の『劇団飛翔』での団員たちの集団失踪、

15年前に発生した『呪いのビデオ』、それに『井戸』で見つかった『山村貞子』の死体、

既に防衛省は右京たちが調べていた『呪いのビデオ』の事を予め把握していたのだ。

そして『呪いのビデオ』を使い大量殺人兵器を製造しているというとんでもない内容が
書かれていた。

カイト「な…なんだこりゃ!?」

神戸「まさか…こんなのあり得ないでしょう!絵空事にも限度というものがありますよ!」

右京「いえ、ここに掲載されている内容はどれも事実のはずです。
『呪いのビデオ』さえあれば実行可能なのですからね!」

神戸「杉下さん…一体どういう事なんですか?」

右京「そもそも『小菅彬』を出所させた理由は『呪いのビデオ』にあったのです。
恐らく『呪いのビデオ』の制御と更なる強化。」

カイト「制御はともかく…強化って何でそんな事を!?」

右京「通常の化学兵器と同じでいくら強力な殺人兵器を作ったところでそれを制御
出来なければ意味が自分たちまで死んでしまいますからね。
それに強化、殺すのに1週間も時間を掛けるのではなく一瞬で人を死に至らしめる事が
出来る様になればどうなりますか?
それこそ…万が一相手から報復される心配も無い、時間も掛からない。
まさに理想の殺人兵器になるのは間違いないでしょう。」

神戸「なるほど、いくら強力な兵器を手に入れても使い勝手がわからなければ宝の持ち腐れ…
だから防衛省はウイルスに詳しい『小菅彬』を出所させたかったわけですね。」

右京「恐らく防衛省はこう考えていたのでしょうね、この『呪いのビデオ』には
ウイルスの作用があるのではないかと、だからウイルス開発の専門家である
『小菅彬』を出所させる必要があったのでしょうね。」

神戸「なるほど、核保有国ではない日本にしてみればその『呪いのビデオ』とやらは
喉から手が出るほど欲しいモノですからね。
多少の無茶(超法規的措置)をしてでも『小菅彬』を出所させたのも、これで納得出来ましたよ。」

カイト「けどこのファイル…肝心の研究施設についての記載がありませんよ。
これじゃ場所がわかりませんね。」

神戸「防衛省がこんなやばい研究を行っていますからね。
研究所の場所はおいそれと記入出来なかったという事ですかね?」

右京「さて困りましたね、肝心の場所がわからない事にはその研究施設に乗り込む事すら
出来ませんよ。」

先ほど長官の居場所を聞きに行った大河内が部屋に戻ってきたが、誰に聞いても
長官の居場所はわからないという返事だったという。

大河内「申し訳ない、秘書や他の幹部にも問い質したのですが…誰も長官の行方を
知らないとの事です…」

神戸「防衛省のトップが行方不明ってこれどう考えても不味いでしょ!
警察に届けてもらわないと!」

大河内「落ち着け、お忍びでの行動かもしれん!
どちらにしろ我々は迂闊に手を出す事ができん事には変わりはないが…」

カイト「そんな事言ってる場合じゃないッスよ!大河内さんもこのファイルを
読んでください!」

大河内「ちょっと待て、何で長官のファイルを勝手に見ている?
まさか杉下さん…あなた長官のオフィスを勝手に…!?」

右京「お叱りは後ほど、とりあえずそのファイルに目を通して頂きたいのですが。」

大河内「まったく、減俸どころの処分じゃ済まされませんよ…これは!?」

右京の言われた通りファイルを見た大河内は驚愕する。
『呪いのビデオ』、『山村貞子』、それらを使い防衛省が大量殺人兵器を作ろうとしているのだから。

大河内「これが本当なら大事ですよ!公安を動かさなければ…」

カイト「公安に動いてもらうのにどれだけ時間が掛かりますか?」

大河内「どんなに早くても明日になるだろう。」

カイト「明日…ダメだ…それじゃ間に合わない!?
今日中に長官とその研究施設を見つけ出さなきゃいけないのに…」

神戸「無茶言わないでくれよ、公安がそんな簡単に動かせるわけがないだろ。
それにそのファイルだけで実際動いてくれるかどうかも分からないんだから…」

カイト「クソッ!!」

苛立つカイトだが無理もなかった。
既に『呪い』のタイムリミットが半日も過ぎているのだから…

大河内「しかしこの『ProjectRING』は何故『RING』なのでしょうか?
この『RING』という言葉に何の意味があるんだ?」

神戸「『RING』…日本語訳にすれば輪の事ですよね。」

カイト「終わりも無ければ始まりも無い、『呪いのビデオ』を解くには他の相手に
ビデオを見せなきゃならない…それの繰り返し…
つまり皮肉で付けた名前じゃないんですかね?」

右京「終わり…始まり…カイトくん!それです!!」

カイト「え…な…何がですか!?」

右京「僕とした事が…迂闊でした!こんな事にも気づかなかったとは…」

神戸「何がわかったんですか?」

右京「そもそも『呪いのビデオ』はどうやってこの世に出てきたと思いますか?」

カイト「そりゃ『山村貞子』の『怨念』が『念写』したんでしょ、まあ非科学的な話ですけど…」

右京「そう、『念写』ですよ!僕はオカルトに詳しいのですが『念写』とは能力者の
思念を映像機器に送り込む事ですが、その行為を行うにはある法則があります。
それは距離です、『山村貞子』が作った『呪いのビデオ』はオリジナルのビデオだけでなく
ダビングしたビデオにすら『呪い』が降りかかっていた。
何故その様な事が出来たか、それは『山村貞子』があの『呪いのビデオ』を念写した場所が
『伊豆パシフィックランド』、その下に『貞子』が閉じ込められた『井戸』があったから…
つまりあの場所で『呪いのビデオ』が『念写』されたのは『山村貞子』の『怨念』が
一番強い場所であったからなんですよ!」

カイト「『怨念』が一番強い場所…けどそれが何だというんですか?」


ヴィー ヴィー ヴィー


右京の携帯に電話が掛かってきた。
その電話は米沢からの連絡であった、亀山の家で採取した『山村貞子』が飲んだ
カップの鑑識結果が出たとの報告であった。

右京「もしもし、米沢さんですか。
えぇ…なるほど、そのような結果が出ましたか、どうもありがとう。」

カイト「今の連絡は米沢さんからですよね、一体何がわかったんですか?」

右京「亀山くんの家で採取した『貞子』が飲んだコーヒーのカップから
池やドブ川に生息する微生物が検出されたそうです。」

カイト「微生物?それってつまり…」

右京「『呪いのビデオ』、つまり『山村貞子』の『念写』を研究するのに最適な場所、
つまり今の考えが正しければ…」

カイト「あの『山村貞子』が死んだ場所、『伊豆パシフィックランド』の床下にあった
『井戸』が『怨念』の一番強い場所ってわけですか!」

右京「恐らくそのはずです!以前僕らが静岡県警の職員に尋ねたところ、
あの場所には国の施設があるとか。
しかし近隣の住民はおろか、警察の人間でさえその施設が何なのか知らされていない…
些か奇妙に思えましたがそこが『ProjectRING』の研究施設で間違いないでしょう!」

大河内「しかし…現段階では捜査機関は動かせません…行くのは我々だけになりますよ。」

神戸「おまけに相手は防衛省…令状も無しで踏み込むにはあまりにも無謀過ぎますね…」

右京「普段なら…令状を取らねばいけませんが…」

カイト「そんなモノ取ってたら『呪い』のタイムリミットが迫ってしまいますよ!」

右京「仕方ありません、大河内さんはこちらに残って令状の手配をお願いします。
現地には僕とカイトくん、それに神戸くんが行きましょう!」

神戸「わかりました、車の運転は僕に任せてください。
杉下さんのフィガロよりも僕のGT-Rの方がスピード出ますからね。
けどその代わりスピード違反とかうるさい事は言わないでくださいよ!」

右京「えぇ、キミの運転の荒っぽさはよく知ってますから。」

カイト「神戸さんの運転…大丈夫なのかな?」


ブオン! ブオン! ブオン!


ギャルルルルル


こうして右京とカイトは神戸のGT-Rに乗り込み激しいエンジン音を鳴らしながら
一路伊豆にある『山村貞子』の『井戸』へと向かった。

大河内「頼みましたよ、特命係のみなさん。」

大河内は三人の乗ったGT-Rを見送りつつ、急いで令状の手配を急いだ。

この時の時刻は既にPM16:00、右京とカイトの残り時間は…あと8時間…

GT-Rに三人乗りは辛そう

~『伊豆パシフィックランド』跡地~


9月2日、PM18:00


2時間後、神戸はGT-Rアクセル全開でようやくかつての『伊豆パシフィックランド』跡地、
現在は防衛省の『ProjectRING』の研究施設がある場所へとやって来ていた。
この場所こそが全てが始まった場所であり、『呪いのビデオ』が念写された場所である。

神戸「ついに来ましたね、ここが…ところで二人とも口数が少ないけど大丈夫ですか?」

カイト「いや…全然大丈夫じゃないですよ。
神戸さん…信号機片手で数える程度しか止まってないから車酔いが…ウゲェ…」

右京「キミ…サイレン鳴らしてなかったら間違いなく覆面パトカーに捕まっていましたよ…」

神戸「大丈夫ですって!これでも腕は確かですから♪」

カイト「いや…そんな心配してないから…」

神戸「コホン、それよりもですが…守衛をどう突破しましょうか?
見たところ警備の人間がいるようですよ。」

右京「しかし…おかしいですね。
あの警備員ですがうつ伏せになっていませんか?」

カイト「本当ですね、まさか居眠りしてるんじゃ…」

右京の言う通り研究施設の門には警備員がいるがうつ伏せで伏せていて何かがおかしい…
試に警備員のところに近付いてみると…なんとそれは…

神戸「し…死んでる!?」

カイト「しかもこの死に方は!」

右京「間違いありません、『吉野賢三』や『小宮』と同じ死に方です!」

カイト「けど何で警備員が死んでるんだ?
『呪いのビデオ』を見たとしても死ぬのに1週間掛かるはずだし…おまけにビデオは
とっくに処分されたはずじゃ…」

右京「…」

この警備員は何故こんなところで死んでいるのか、右京とカイトが疑問に思う中
神戸は研究所の入り口であるモノを発見する。

神戸「杉下さん!あの研究所の入り口にある車を見てください!
この車…政府の高官が乗る専用車ですよ!?」

カイト「じゃあこの車って長官の専用車なんですか?」

右京「恐らく間違いないでしょう、しかし…運転手の方も亡くなっていますね。
この分ですと…既に研究所の殆どの人間が死んでしまったかもしれません…」

カイト「それじゃあ長官が約束の時間になっても来なかったのは…」

右京「この状況を察すると長官は約束を忘れたりすっぽかした訳ではなく
この事態に巻き込まれてしまったから…ですね。」

カイト「これが『呪いのビデオ』…いや『山村貞子』を利用した結果かよ…」

右京「神戸くん、キミ…今すぐ近隣の所轄にこの事態を知らせてください!
施設内で死人が出たとなれば最早令状は要りませんからね、急いでください!」

神戸「しかし杉下さんはどうするんですか?」

右京「僕はカイトくんと一緒にこの施設に生き残っている方を見つけます。」

カイト「任せてください!杉下さんは絶対に死なせませんから!」

神戸「…」

神戸は少し考えた後、すぐに思考を切り替え右京たちにこの場を託す選択を選んだ。

神戸「わかりました、近くの所轄に出動要請した後すぐに戻りますからそれまで無事でいてください!
それと…杉下さんの事だけじゃなく…自分の命も守るんだぞ、後輩くん!」

神戸はカイトの方をポンッと軽く叩いた後、GT-Rに乗り近くの所轄へと向かった。

カイト「何か今の神戸さんのキャラに合わないような…」

右京「恐らく嬉しいのではないですかね?
神戸くんにとってキミは特命係で最初の後輩ですから…」

カイト「そんなものですかね?まあいいや、さあ行きましょう杉下さん!」

右京「残り6時間…最早猶予もありませんがね!」

残り6時間、右京とカイトはこの施設のどこかにある『貞子』の『怨念』がこもった
『井戸』を目指す。

~研究施設~


9月2日、20:00


研究施設に入った右京とカイトだがそこには職員たちの死体の山だった。
施設に入って2時間経過したが生きている者は見つからなかった…

カイト「ダメですね、生存者は確認できませんでした。
しかも全員急性心不全、死に顔は『吉野賢三』みたくあの恐怖に引きつった顔してましたよ。」

右京「やはりそうでしたか、ところでコレ見てもらえますか。」

カイト「この部屋にある資料…全部『山村貞子』のこれまでの出生から『劇団飛翔』や
『井戸』に閉じ込められるまでの調査資料じゃないですか!
何でこんな物が…」

右京「恐らく防衛省は45年前…いえ、57年前から調べていたのでしょうね。
『伊熊平八郎』の研究、つまり『山村志津子』や『山村貞子』の能力を軍事利用できないかを…
そして15年前に起きた『呪いのビデオ』による事件、全て調査したようですよ。」

カイト「こんなに調べてどうする気なんだ?」

右京「『呪いのビデオ』を制御、そして強化を図ろう『山村貞子』のルーツを
探ったのでしょう、その成果で何が得られたのはわかりませんが…おや?」

カイト「どうしたんですか?」

右京「『貞子』の小学生時代にあった事件について書かれたレポートです。
どうやら『貞子』は大島での小学生時代にクラスメイトの全員と海で遊んでたようですが
彼女一人だけが砂浜にいたが…
それから高波が襲ってきて『貞子』以外のクラスメイトは全員死亡したとの記述がされています。」

カイト「こっちにもありますよ、これは…中学生時代に虐められていた貞子が
ある日突然学校中のガラスが壊れたって…」

右京とカイトはこれまで貞子が起こした事件のレポートを読んではいたがどれも
『呪い』を解く手がかりになりそうなものは無かった。

カイト「ダメですね、俺たちの『呪い』を解く手がかりは全然見つかりませんよ!」

右京「えぇ、ここにあるのはあくまで『貞子』のルーツのみでしょう。
肝心の手掛かりがあるのは…先ほど調べまわって鍵の掛かっていた部屋がありました。
恐らくそこでしょう。」

カイト「けどあの部屋は電子ロックが掛かってますよ、簡単には入れませんって…」

しかしその時であった。


ガシャッ ガシャッ ガシャッ


二人の耳にある音が聞こえた、それはまるで施錠されたロックが解除された音であった。

カイト「今のってまさか…」

右京「どうやら『山村貞子』が僕らを招いているようですよ、行きましょう!」

その頃先ほど右京たちと別れた神戸は一路近隣の所轄へ向かっていたがその道中の事であった。

神戸「あれ?なんだかブレーキが弱いな、どうしたんだろ?」

神戸の運転するGT-Rは何故かブレーキの効きが弱くなっていた、そんな時だった。
後ろに何かいる…そう思った神戸がふとバックミラーを見る、しかしそこには誰もいなかった。

神戸「何だ気の所為か…」

そして視線を正面に戻すとなんとそこには白い服を着た髪の長い女が道路の前に立っていた。

神戸「うわぁっ!?」

神戸は咄嗟にブレーキをしようにも効きもしない…こうなればと思いハンドルを切った。
だが…



ドガッシャーン!!


シュゥゥゥゥ



先ほどの女性を避けようとした神戸のGT-Rは周辺の木にぶつかり大破してしまい、
神戸自身もなんとか車内から出たが体中傷だらけで思うように動けなかった。
そこへ先ほどの女が近づいてくるがこの時神戸はこの女性の外見を見て、
右京たちが捜査中である人物『山村貞子』だとわかった。

神戸「あなたが…『山村貞子』さんですね…何故こんな事を…」

貞子「…」

神戸「答えてください!」


ガシッ


神戸は自分の質問に沈黙をする『貞子』に対して思わず手を掴んだ。
するとどうだろうか、その手にある指の爪はボロボロでまるで拷問で引っこ抜かれた
みたいな状態であった。

神戸「なっ…!」

貞子「…」

神戸に迫ろうとする『貞子』、そんな『貞子』の後ろから赤い火の玉らしきものが見えた。

神戸「ハハハ、こんなところが死に場所か…死んだら城戸充に謝りに行くか…」

貞子「…」

神戸「杉下さん、無事でいてくださいよ…」

迫りくる貞子を前にそんな事を思いながら…神戸は死を覚悟しそっと目を閉じた…

とりあえずここまで

>>377

GT-R乗った事ないからわからんけど後部座席はあるから3人乗れなくはないですよね?

乙ー!!!
やべぇ、神戸大ピンチ!? 早く何とかしてくれ右京さーん!!

乙! 相棒、リング。 細かいところまで・・・作者いいぞッ!
超能力による生物兵器か・・・ 関わったところでろくでもない目にしかあわないのに。

ウイルス状とはいえ呪いの力を使うんだから呪殺兵器って呼んだほうが格好いいのになーとか思ってしまう
ところで、リングウイルスって言うぐらいだから顕微鏡とかで観測できるんだろうか?
……顕微鏡の画面にミクロな貞子がわらわらうごうごしてるの想像したら凄いシュールだった

右京「……」

カイト「杉下さん、どうかしたんですか?」

右京「いえ、今さっき神戸くんが呼んだ気がするのですが気の所為でしょう…」

カイト「しっかりしてくださいよ、早く行きますよ!」

右京とカイトは先ほどまで施錠されていた研究施設の中心部に入り込んでいた。


グニャッ


カイト「あれ?何か踏んだぞ…何だろ?…って人だ!?」

右京「この人、他の研究員と違いひとりだけ白衣を着ずに背広姿ですね。
この方…身分証を見ましたが間違いありません、防衛省の『山岸邦充』長官に
間違いありませんね。」

カイト「身体が冷たい…死んでから相当時間が経ってますよ!」

右京「僕の見立てでは長官も死んでから24時間以上経過していますね。
恐らく昨日神戸くんがアポを取った直後にここで『呪いのビデオ』の実験が行われ…」

カイト「長官とそして…研究員は死んでしまった…ここで何が起きたんだ?」

右京「カイトくん!この室内の中心を見てください!アレ…見覚えありませんか?」

カイト「中心って…まさか…アレは!?」

右京とカイトが研究施設の中心で見つけたのは『井戸』であった。
この『井戸』は特徴があり淵の部分が一ヶ所欠けていて、この室内には似つかわしくないモノだった。

カイト「この『井戸』…間違いないですよ!以前『早津』さんの絵を見ましたよ!」

右京「間違いないでしょうね、この『井戸』こそ45年前に『山村貞子』が
閉じ込められた『井戸』ですよ!」

その時二人の背後に気配を感じた、振り返って見るとそこには一人の男が立っていた。
ようやく生存者を一人探し出す事が出来て喜ぶカイトだが右京だけは苦い顔をして
その男を睨んでいた。

―「…」

カイト「大丈夫でしたか?我々は警察です!あなた方を助けに来ましたよ、もう安全です!」

―「…」

カイトの申し出に対して男は何ひとつ発言しようとしなかった、それどころか男の顔色は
妙に悪く…まるで死人のようであった。

カイト「あの本当に大丈夫ですか?」

右京「カイトくん!その男からすぐに離れなさい!」

カイト「けどこの人生存者ですよ!放っておく訳にはいかないじゃないですか?」

右京「その男の名前は『小菅彬』!かつて僕が逮捕した男ですよ!」

カイト「この男が『小菅彬』!?じゃあこの事態を引き起こしたのはアンタなのか!」

小菅「…」

カイトは『小菅彬』にこの事態について襟首を掴み問い詰めたが彼は何も答えなかった。
しかし襟首を掴んだ瞬間カイトはある事に気が付いた。

カイト「す…杉下さん…この男…冷たい…いや、もう死んでますよ!?」

右京「やはり…貸してみてください。
なるほど、彼も先ほどの長官と同じく死んでから24時間以上経過していますよ!」

カイト「けどそれじゃ…何でこいつは俺たちのうしろに立っていたんだ?
さっきまではいなかったはずなのに…」

右京「カイトくん!すぐに小菅から離れてください!
『小菅彬』の眼、鼻、口、耳、から血が噴き出しています!?」

小菅「…」


ガシッ


その瞬間だった、小菅の身体は死んでいるにも関わらず突然動き出し右京とカイトを掴み始めた。
そのまま二人を持ち上げると『小菅彬』は『井戸』の方まで近づいていった。

カイト「ゲホッ!ゴホッ!テメェ…離しやがれ…俺たちをどうする気だ!?」

右京「恐らく…グホッ…僕の考えが正しければ…『小菅』は…いえ、『小菅』を操っている
『貞子』は僕らを…『井戸』の中へ入れる気です!」


ブンッ


そう、右京の言う通り『小菅彬』は右京とカイトを放り投げてしまった。

カイト「うわぁぁぁぁぁぁ!?」

右京「くっ!」

―――

―――――

―――――――

―「おいアンタ!しっかりしろ!」

カイト「う…うぅ…ん、あれ?俺は確か『井戸』の中へ落っこちたはずじゃ?
それに杉下さんは何処に行ったんだ?
…この『街』、おかしいな、なんというか古くさい感じがする…」

カイトが目覚めた場所、そこは『井戸』の中ではなかった。
その場所は人気が無く、まるで昭和の街並みを思わせるような場所であった。
そして介抱してくれた男はカイトには面識のない男だった。

―「意識は戻ったようだな。」

カイト「あの…ありがとうございます、それにしてもこの場所は一体何処なんだ?」

その時だった、カイトの前に立ったまま顔を伏せている男女を数人見つけた。

カイト「よかった、他にも人がいる!あのすいません、ここって何処なんですか?
あの…聞いてますよね?」

―「やめろ!そいつらに話しかけるな!」

カイトは恐る恐るその人間に声を掛けたがその集団の一人の顔を見て思わずギョッとした。

カイト「あ…あぁ…アンタは…!?
『小宮』さんですよね!『吉野賢三』のマンションで俺の目の前で亡くなった『小宮』さん!
何であなたがここにいるんですか!?」

その時、今まで伏せていた人間が一斉に顔を見せた、カイトは彼らの顔に見覚えがあった。

カイト「この人たちって…
間違いない!資料で見たけど『呪いのビデオ』で殺された…
『岩田秀一』、『能美武彦』、『大石智子』、『辻遥子』、他にも大勢いるな…」

岩田「ア…ア…」

能美「タスケテ…」

大石「ココカラダシテ…」

辻「シニタクナカッタ…」

彼らは一斉にカイトに近付いてきた、まるで生者であるカイトを妬むかのように…

カイト「ちょ…何なんだアンタら!?」

―「おい逃げるぞ!彼らはもう正気じゃない!」

二人は全速力で逃げた、ようやく追っ手を撒いたカイトは男にこの街について聞いてみた。

カイト「ここは一体何処なんですか!あなたは何を知っているんですか?」

―「ここは…『山村貞子』の深層世界だ。」

カイト「し…深層世界!?」

―「その証拠に見てみろ!この『街』の光景を!これはどう見ても昭和の街並み…
つまり『貞子』が『井戸』に落ちる前に見た『街』を映したからなんだよ!
当然だよな、外の世界じゃ…もう45年か、そんな昔に『井戸』に閉じ込められた人間が
平成の世界の光景なんか想像できるわけがない…」

カイト「そんな…それじゃあさっきの人たちは…?」

―「彼らは『山村貞子』に殺された『亡者』たちだ。
『呪いのビデオ』を見てしまった事により、今も成仏できずこの世界に閉じ込められている…」

カイト「そんな…つまりここは『貞子』が作った地獄…」

―「なるほど地獄か、うまい事を言うな。だが本物の地獄だってここよりはマシだろう…
ここはその地獄以下だ。」

カイト「ところであなたは何者なんですか?」

―「俺は…待て、アレは…」

再びカイトたちの前に再び『亡者』の集団が現れた。
しかし先頭にいる女はカイトたちではなく他の何かを探しているようにも見えた。



―「ヨウイチ…ドコ…オカアサン…アナタヲタスケテ…アゲナキャ…」


カイト「また『亡者』の群れだ…しかも一番前にいる女の人何か呟いている…」

―「『浅川』…」

カイト「え?」

―「あの女は…『浅川玲子』だ!」

カイト「『浅川玲子』って『呪いのビデオ』を見つけた女性の事だ!
けど彼女は『呪い』を解いたはず!何でここにいるんですか!?」

―「彼女が死んだのは聞かされたはずだろ!ビデオの『呪い』は終わったが
『貞子』の『呪い』からは逃れられなかったんだ…」

カイト「そんな…『呪いのビデオ』をダビングするだけじゃダメなんですか!?」

―「それは結局『死の呪い』を引き延ばしているだけにしか過ぎない!
根本的な解決をしなければダメなんだ!」

カイト「それじゃどうすれば!」

―「『貞子』の『怨念』を除去するしかない、だがそれには…」

カイト「けど『浅川玲子』と『高山竜司』も『貞子』の死体を発見して供養したのに
それでもダメだったんですよ!
他にどんな方法があるんですか!?」

―「『貞子』の『呪い』を『貞子』自身に…もうダメだ!これ以上お前はこの世界にいれば
亡者になってしまう!俺の手を掴め!
お前を元の世界に送り帰す!」

カイト「ちょ…待ってください!その前にあなたは誰なんですか?
どうして俺を助けてくれるんですか!」

―「それはキミが俺と『浅川』の息子の『陽一』に祖父を殺したという悲しい真実を
伝えないでくれたからだよ…さぁ行くんだ!」

カイト「あなたはまさか…『高山竜司』!…うわぁぁぁぁぁぁ!?」

その男『高山竜司』の手を掴んだカイトは次の瞬間光に包まれ再び意識を失った。

―――――

―――


イ……ト……く……


カ……イ………ト………ん


右京「カイトくん!しっかりしてください!!」

カイト「ハッ!?杉下さん…ここは何だ?水の中…まさかここは!?」

右京「えぇ…僕たちは『小菅彬』によってこの『井戸』の中に落とされてしまったのですよ。
僕もさっきまで意識を失っていましたがようやく取り戻せました。」

カイト「そうか…俺たち気絶してたんですね、『小菅』もここまでは追ってこないし
とりあえず一安心ですかね?」

右京「いいえ…一安心している暇はありませんよ。
僕らはあと残り10分以内にこの状況を打開できなければ『山村貞子』の『呪い』により
殺されてしまいます…」

カイト「残り10分?まさか!?」

カイトは慌てて自分の時計を見る、すると時刻は23時50分を指していた。
そう、二人が『井戸』の中で気絶してから既に3時間以上経過してしまったのだ。

カイト「なんてこった!とにかくこの『井戸』から出ましょう!」

右京「しかし『井戸』ですが…自力で這い上がるにはかなり困難ですよ…」

右京とカイトは天井を見上げると確かによじ登るのが困難な壁であった。

しかし天井を見上げた時、その光景が何故か見覚えがあるように思えた。

カイト「この丸い天井…俺どっかで見たような…」

右京「『呪いのビデオ』の映像にある空が映るシーンですよ、あの光景が丸く
映されていたのは『山村貞子』がこの天井を30年以上もずっと見上げていたからでしょうね…」

カイト「30年間ずっとこんな暗く…狭い場所に孤独に閉じ込められて…
この壁の傷…『貞子』が壁をよじ登ろうとして出来た傷ですよ。
しかも所々にいっぱい付いてて…なんとか脱出しようとしたんでしょうね…
けど結局うまくいかなくて…今なら俺『貞子』の心情がなんとなく理解出来ますよ…」

右京「確かにこんな場所に居ればこの世の人間すべてを恨みたくなるでしょうが…
カイトくん…『井戸』の奥…見てもらえますか!」

カイト「奥?…何だあれは?」

右京「アレは棺ですよ!」

そう、井戸の奥には死者を弔う棺があった、何故棺がここに?
そんな疑問よりも、先にある不安が頭を過った。

カイト「これ…誰が入ってるんですかね…」

右京「恐らく…いえ、間違いなく『山村貞子』ですよ!」

カイト「山村貞子の?だって『山村貞子』は海へと埋葬されたんじゃ!」

右京「恐らく防衛省によって密かに回収されたのでしょう。
『山村貞子』の思念を更に強化するために遺体があれば尚の事都合がいいですからね!」


ガコンッ


不気味な音がした、二人の目の前に現れた棺が開き始め…



ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ



カイト「杉下さん…あの棺桶…開きますよ…」

右京「あれは…髪の毛ですかね?」

右京の言う通り棺の中から大量の髪の毛が出てきた、その量は明らかに通常の人間の
髪の量ではなかった。

その髪は右京とカイトの四肢に纏わりつき次第に彼らを拘束していった。

カイト「クソッ!離しやがれ!」

右京「まさか僕らの動きを抑えるとは…」

カイト「やべぇ…杉下さん!時計を見てください!もう残り2分を切りましたよ!?」

右京「『呪い』の時刻までもう時間がありませんか…」

カイト「あれだけ探した『山村貞子』は目の前にいるってのに…
まだ肝心の『呪い』を解く方法がわかってないんだぞ…」


『貞子』の髪で拘束した右京とカイトを自分の棺に近付けさせようとする。
二人を殺す気なのは最早明らかであった。

カイト「チクショウ!『呪い』の時刻までまだ少し時間があるだろ!
フライングなんかすんじゃねえ!?」


シュルシュル  シュルシュル


ガッ


カイト「グェェッ!」

右京「カイトくん!?」

『貞子』の髪の毛はカイトの首に巻き掴みカイトを窒息死させるほどの力で
締め上げようとしていた。

右京「『貞子』さん!僕らを殺すにはまだ少々時間があります。
その前に僕の話を聞いてもらえますか!」


ピタッ


右京の言葉を聞いた瞬間カイトの首に巻きついていた髪の力が弱まりカイトの命は
なんとか助かった。

カイト「ハァハァ…助かった…けど杉下さん、話って一体…?」

右京「僕たちは『山村貞子』さんについて色々と調べて回ってきました。
どなたも『貞子』さんについては同じ見解でした。
45年前の『貞子』さんはとても美しかったと…『劇団飛翔』に入団し輝かしい将来を
手に入れるはずだった。
しかし…それは出来なかった、いつも彼女の前にはまるで厄病神の如く邪魔をする存在がいた。
それが…あなたですね!もうひとりの『山村貞子』さん!!」

カイト「もう一人の?どういう事ですか!?」

右京「つまりはこういう事ですよ、『山村貞子』なる女性は二人いた!
ひとりは母親である『志津子』さんに似て美しい姿をした女性、しかしもうひとりは…
ドス黒く、邪悪な意志を持った…そうあなたの事ですよ!棺桶にいる
もうひとりの『貞子』さん!!」

カイト「『貞子』が二人…そういえば内村部長や大島で出会った『貞子』の同級生の人も
そんな事を言ってたな…」

右京「そう、一方は善良な存在でありもう一方は邪悪な存在…その邪悪な存在が
いつも彼女の幸せを邪魔していたのですよ!それは何故だと思いますか?」

カイト「何故って…まさか嫉妬!?」

右京「そうです、善良な方の『貞子』さんは誰もが認める美しさを兼ね備えた女性なのに
一方のあなたはその禍々しいまでの力の所為で誰からも好かれなかった…
恐らくあなたの母である『志津子』さんでさえもあなたを愛してなかった…
だから生まれた頃より身近にいたあなたはそれが許せなかった。
その事が引き金となってしまい関わった人を呪い殺していった…そうではないのですか!」



う゛う゛…ぅぅぅ…あ゛…あ゛…あぁぁぁ…



棺桶からこの世のモノとは思えない奇妙なうめき声が聞こえてきた、右京の推理を聞いた
『貞子』が怒り狂っているのだ、『貞子』は右京を棺桶へと近づけ右京とカイトを呪い殺そうとした。

カイト「杉下さん!時刻は…残り10秒!?どうする…どうすれば助かるんだ…」



「『貞子』の『呪い』を『貞子』自身に…」



その瞬間カイトの脳裏に『貞子』の深層世界で会った『高山竜司』の言葉が思い出された。

カイト「『貞子』の『呪い』を『貞子』自身に…でもどうすればいいんだ?」

右京「なるほど、そういう事ですか!わかりましたよ、呪いを解く方法が!」

そして残り時間5秒前になった、二人は棺桶にある『貞子』の死体と対面する。
その身体は死臭を漂わせており、吐き気を催すほど強烈な臭いだった。

カイト「これが『山村貞子』!」

右京「カイトくん!目を閉じてください!僕がいいと言うまで絶対に開けないでください!」

カイト「わ…わかりました!杉下さん信じてますよ!!」

二人の目の前に『貞子』が顔を近づけ始める、『貞子』の不気味な感触が二人の肌の触感に
敏感なほど感じ取れる程であった。

残り時間5秒前











ついに死亡時刻になった、普段は髪で覆い隠している顔が見えて『貞子』の眼が開く。
『貞子』が能力を使い二人を殺そうとした瞬間であった…

右京「この時を待っていました!これを見なさい!!」


キラッ


貞子「!?」

右京は自分の手鏡を『貞子』に掲げてその眼力からくる力を逆に『貞子』に送り返したのだ。

カイト「ハァハァ…時刻は9月3日の…0時1分!杉下さん…俺たち生きてます!!」

右京「先ほどのキミの言葉で確信が持てました。

僕はずっと気になっていました、精神病院に入院していた『倉橋雅美』や『岡崎』は
『TVから貞子が出てきて殺しに来る。』と言ってましたね。
何故そんな事をするのか、それは『貞子』は念じて人を殺す事が出来る。
しかしそれは念写と同様に相手を直接見なければならない。
だからTVやガラス等の鏡面を使い直接殺しに来なければいけなかった。

しかしそれが逆にこちらにもチャンスとなった。
先ほどこの施設内で『川尻』医師の研究内容を読ませて頂きましたが、
15年前彼は水を使って『貞子』の怨念を水に溶かし出す実験をしていたそうですよ。
何故実験に水を使ったのか、それは水がすべてを映しだしそして反映させる
作用を持っていたから…

『山村貞子』さん、あなたが殺してきた人間たちは決して無駄死にではなかった。
最期はあなた自身が自分の手で苦しむ事になったのですよ!」

貞子「う゛う゛…ギャァァァァァ!?」


跳ね返った自分の『呪い』に苦しむ『貞子』、だが『貞子』は苦しみながらも
今もなお右京を拘束している髪で右京を壁に叩きつけた。


ドガッ


右京「ぐふっ!」

カイト「この…よくも!杉下さん!しっかりしてください!杉下さん!」

右京は先ほどの『貞子』の一撃で気を失いその身体は『貞子』の下へと引きずられる様に
連れて行かれた。

カイト「やめろ!『貞子』!その人を連れて行かないでくれ!
杉下さんにはまだこれからも解決してもらわなきゃいけない事件がたくさんあるんだよ!」

なんとか『貞子』の髪から脱出しようともがくカイトだがこの髪を振りほどくには
人間の力では無理だった。
そして右京の身体が『貞子』の下へと寄り添い、二人は『井戸』の底へと深く潜って行く。

カイト「やめろー!俺の相棒を連れて行かないでくれ!!」

そんな力強く叫ぶカイトに対し救いの手が差し伸べられた。


―「待て!」


特殊班の格好をした男たちがいきなり現れて『貞子』の身体を拘束して右京の身体を取り戻した。

カイト「な…何だ?ひょっとして神戸さんが応援を呼んできてくれたのか!?」

―「危ないところでしたね、杉下は無事ですよ。」

そんなカイトが疑問に思う中またひとり男が現れた、しかしこの男は先ほどの特殊班とは
違い格式ある背広姿でまるで官僚のような雰囲気を醸し出していた。

カイト「あのあなた方は…もしかして大河内さんが呼んだ本庁の特殊班の方ですか!」

―「大河内さん?懐かしい名前ですね。
それよりも甲斐さん、杉下を背負って今すぐこの『井戸』から脱出してください。
脱出するためのロープを用意しました、これによじ登ればすぐに上に辿り着けますよ。」

カイト「あ…ありがとうございます、けどあなたたちはどうするんですか?」

―「我々はここであなた方が登りきるまで『山村貞子』を抑えています。
さぁ、時間がありませんよ、急いでください。」

カイト「ハ…ハイ!そうだ、せめてお名前だけでも教えてください!」

―「我々は…『緊急対策特命係』ですよ。」

カイト「え…特命!?」

―「さぁ、早く行ってください!」

カイト「わかりました!」

―「甲斐さん、杉下の事…頼みましたよ。」

こうして『緊急対策特命係』を名乗る男たちの助けによりカイトは気絶した右京を背負い、
ロープをよじ登って行った。
そしてロープを伝りあと少しというところで辿り着く、そんな時だった…

貞子「うぐぁぁぁぁ!!」

貞子がロープを驚く速さでよじ登りあっという間にカイトの前に立ちはだかり、
カイトの妨害をした。

カイト「『貞子』!やめろ、俺たちを行かしてくれ!」

貞子「ドウジテ…アナタタチダケガ…タスカルノ…?」

カイト「そ…それは…」

ゴジラvsビオランテのスーパーXのファイヤーミラーだなwwwwwwwwwwwwww

右京「それは我々が今を生きてる人間だからですよ!」

カイト「杉下さん!目が覚めたんですね!」

右京「カイトくん!ロープを離してください、それから急いで壁によじ登るんです!」

カイト「わかりました!うおおおお!」

右京の指示通りロープを離すカイト、そんな貞子はロープを伝り『井戸』の天井を出ようとするが

その瞬間…



ブチッ



ロープが切れてしまい『貞子』は落っこちてしまう、だが…


ガシッ


『貞子』は最後の力を振り絞り右京の足を掴み辛うじて落ちずにすんだ。
そんな『貞子』は右京に対してこう言った。

貞子「イキタイ…イキタイ…ワタシモソッチヘイキタイ…」

右京「既に亡者であるあなたに…この世界で生きる資格はありませんよ…」

貞子「ソ…ソンナ…」



ドバーンッ!



貞子は力尽き、右京の足から手を離してしまいその身体は再び『井戸』へと戻っていった。

右京「まるで蜘蛛の糸ですね、御釈迦様が慈悲で罪人に差し伸べた蜘蛛の糸を、
罪人の無慈悲な心の所為で切れてしまう。
結局『山村貞子』は自分から救いの手を振り払ってしまったのですよ。」

カイト「なんとも救われない話ですね…」

右京「それよりもキミ…大丈夫ですか?手が震えてますよ?」

カイト「だ…大丈夫ですって!俺若いし…杉下さん担いだくらいで根を上げたりしませんから…」

そう強がってはみたものの長時間冷たい水の底に居た事や右京を背負って
ロープをよじ登った事でカイトの体力は最早限界寸前までなっていた。

右京「いざとなったら僕を降ろしてキミだけでも助かりなさい!」

カイト「いいから俺を信じてください!必ず二人一緒に助かりますから!」

あと少し…ほんの少し登れば上に出られる、それなのに力が出ない…
そんなカイトの手が汗で滑り落ち…もうダメだ…カイトはなんとか右京だけでも助かれば
と思ったその時だった。


ガッ  ガッ


ふたつの手がカイトと右京を『井戸』から救い上げた。その手は…

亀山「大丈夫ですか右京さん!」

神戸「カイトくんも平気かい?」

右京「亀山くん!」

カイト「それに神戸さんも!」

亀山「待っててください!今引っ張り上げますからね!」

神戸「行きますよ!せーの!」

亀山と神戸の助けにより『井戸』から脱出できた二人、その場には亀山と神戸だけではなく
捜査一課の伊丹、三浦、芹沢、それに組対5課の角田課長や大木、小松、鑑識の米沢、
更には大河内まで来ていた。

カイト「伊丹さん、芹沢さん、三浦さん、それに角田課長や米沢さんまで!」

右京「皆さん、どうしてこちらへ?」

大河内「それはですね…」

亀山「俺がみんなを説得したんですよ!」

(回想)


大河内が右京たちと別れて2時間後、大河内はなんとか公安を動かそうと尽力したが
掛け合ってもらえずにいた、そんな最中であった。

亀山「大河内さん!右京さん何処行ったか知りませんか?」

大河内「亀山さん!あなた何で…」

亀山は昨日、右京が自分の下へ訪ねてきた事、またやはり心配になり警視庁にやって来たが
特命係に行っても不在だったので角田課長に尋ねたところ右京が朝から大河内と、
一緒に行動してた事を知りこうして訪ねてきた事を説明した。
また大河内も亀山や彼の後を追って入ってきた伊丹たちや角田に現状を説明し、
何か打開策は無いか相談してみた。

角田「防衛省とは…まったくあいつらとんでもねえところを相手にしてんな。」

伊丹「だがデカい事件だ、特命なんぞにこんな手柄横取りされてたまるか!」

三浦「何言ってやがる!防衛省の施設なんていくら警視庁の刑事でも簡単に入れるか!」

芹沢「そうですよ、事件が起きているわけでもないんだから…」

亀山「事件…?それだ!大河内さん、それにみんな!よく聞いてください!
俺がその施設に入ります!入ったらすぐに俺を逮捕してください!
国の施設に無断侵入すれば警察が介入しても大義名分が付くでしょ!」

大河内「多少無茶ではあるが…亀山さん、あなたはそれでいいのですか?」

亀山「何言ってんですか!右京さんたちが危ない目に合ってるのに
保身なんか心配してる場合じゃないですよ!さあ早く行きましょう!」


―――――

―――


亀山「…という訳でしてね。」

神戸「僕も亀山さんに助けてもらったんですよ。」

右京「助けてもらった?そういえばキミ…妙にボロボロですね。」

神戸「えぇ、近隣の所轄に行く途中で『山村貞子』らしき女性に襲われましてね。
そしたら…」

(回想)


神戸「ハァ…短い人生だったなぁ…」

貞子「…」


ファンファン  ファンファン


貞子「?」

神戸「あれ?何でサイレンの音が?それに『貞子』のうしろの火の玉…
これよく見たら警察車輌の赤色回転灯じゃないか!?」

亀山「コラー!『山村貞子』!その人から離れろ!」

貞子「!」

神戸「『貞子』が逃げていった…」

亀山「大丈夫でしたか?」

神戸「えぇ、けどあなたは?」

芹沢「あれ?神戸警部補じゃないですか!」

三浦「こんなとこで何してるんですか?」

大河内「神戸!生きてたか!」

神戸「大河内さん…それに三浦さんと芹沢さんまで…どうしてここに?」

亀山「あれ?みんなこの人の事知ってんの?」

伊丹「あぁ、お前が特命辞めた後に配属された神戸尊警部補だ。」

角田「けど今は移動して警察庁にいるんだけどな。」

神戸「伊丹さんに角田課長まで…それじゃあなたが僕の前任者の亀山さん!?」

亀山「あなたがおれの後任者の…」

角田「新旧特命係の顔合わせって訳か、感動の場面だな!」

米沢「どの辺に感動があるのか聞きたいですな。」

神戸「米沢さんまで…ってそんな悠長な事言ってる場合じゃないんですよ!
あの研究施設で大変な事が起きてるんです!!」

―――――

―――


神戸「それから僕はみなさんを連れて施設に向かったんですよ。」

亀山「まあ死体が出たとなればもう令状は要りませんからね。
俺が無断侵入する必要も亡くなったんですけど…なんなんですかこの死体の山は?」

伊丹「杉下警部とカイト以外死体の山だぞ、生きてるヤツは一人もいやしねえ…」

米沢「さっそく調べようかと思うんですが…」

角田「よし、俺たちも死体の調査を手伝うぞ!
大木、小松、米沢の手伝いしてやれ!」

大木、小松「「了解っす!」」

カイト「待ってください!ここはいるだけで危険なんです!」

右京「カイトくんの言う通りです!急いであの『井戸』を封印して全員退避して…」

角田「何コレ?建物が揺れてるぞ!?」




ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ




伊丹「何だこの地鳴りは?」

カイト「まさかこの音って…」

右京「建物が崩れます!全員外へ出てください!」

こうして『井戸』のあった研究施設は脆くも崩れ去り、また『貞子』に関する調査資料も
建物の崩壊と一緒に消えてしまい、これで『山村貞子』のルーツを辿る事は、
永遠に不可能になってしまった。

神戸よく入ってこれたな

神戸「まさかこんなに脆く崩壊するなんて…」

芹沢「欠陥…だったんですかね?」

カイト「これも『貞子』の影響なのか?」

右京「大河内さん!この施設は危険です!今後誰も近づけないようにしてもらえますか?」

大河内「わかりました、手配しましょう。」

右京は大河内に依頼してこの施設を立ち入り禁止にしてもらった。
いつまた『貞子』が甦り、人々に『呪い』が降りかかるかわからないのだから…

カイト「これで終わったんですね…」

右京「そうでしょうかね…」

不安に思いながらも時刻は…


9月3日、AM5:00


…になっていた、眩しい朝日が瓦礫で埋もれた研究施設を明るく映し出していた。

とりあえずここまで

かなり駆け足な展開になってしまいました

予定ではたぶん次回で最終回になります

乙ー。緊急対策特命係は……杉下呼び捨てって……

熱いね

格式のある背広姿の官僚……まさか官房長か?

ここまでいなくなった人達が出てくるなら、お遍路の旅に出た初代花の里の女将も出てこないかな

期待!

小野田が緊急対策特命係を名乗るって、なんか感慨深いね

官房長ー!(熱狂)

乙!ついに最終回か。もっと読みたいと思ったSSはこれが初めてだよ。
このSS読んでからリング0バースデイを見直すと悪貞子絡みのシーンが一番怖気が走る(家庭訪問、崖の上で手だけ出る部分)
あとリングのフレーズの一つでもある『地獄は実在する』まで回収されてて本当にすごい

確か父親が分裂させたんじゃなかったけ?

綺麗で能力が薄い、もしくは治癒力にのみたけた貞子

人を怨み世界を怨み醜くなり果てた貞子

両方が1つの身体にあったのを、父親が分裂させたって話だったような

貞子を取り押さえられるのは確かに死んだやつでないと厳しいかもな
貞子の地獄に残された人々はどうなってしまったのだろうか

~特命係~


9月3日、AM9:00


カイト「「あ゛あぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」

『山村貞子』の一件もひと段落して警視庁に戻ってきた特命係だがカイトは急に
驚いた声を上げた。

右京「そんな大声を上げてどうしたのですか?」

カイト「この写真…『井戸』の中で俺たちを助けてくれた人たちにそっくりなんですよ!」

そう、カイトは右京のデスクに飾られているある写真を見て驚いていたのだ。

亀山「写真って…あれ?この写真は小野田官房長のとこにあった写真じゃないですか?
何で杉下さんのところに?」

神戸「あぁ、そうか。亀山さんは知らないんですよね。
実は小野田さん…4年前に亡くなったんですよ。」



亀山、カイト「「亡くなった!?」」



右京「前代未聞の警視庁籠城事件…その直後に警視庁の幹部職員に逆恨みの形で刺されましてね。
あの人らしい最期といえばそうなりますが…」

神戸「僕たちの目の前で刺されましたからね、やり切れませんよ…」

亀山「小野田さん…右京さんになら殺されてもいいって言ってたのに…」

カイト「け…けどこの写真の他の人たちも俺…見覚えがあるんですよ!
彼らは…」

亀山「それこそあり得ないよ…彼らも15年前に亡くなっているんだ。」

神戸「僕も聞いた話なんだが15年前に大使館で人質籠城事件が発生して、
警視庁は慎重な対応を負われたんだ。
その時結成されたのが『緊急対策特命係』、現在の特命係にあたる部署なんだ。」

亀山「だがその事件で隊員3名が死亡したって話だ。」

右京「いいえ、4名です。亀山くんが辞めてすぐの頃でしたか。
萩原くんがガンで亡くなりました…ですのでかつての生き残りはもう…
僕と…石嶺くんだけですよ。」

亀山「そうでしたか…萩原さん…ガンで…」

カイト「なんてこった…俺たちを助けてくれたのがかつての特命係の人たちだったなんて…」

亀山「いや…死んだ彼らが右京さんとキミを助けに来てくれた。
たとえ死んでも特命係の絆ってのはそう簡単に断ち切れるものじゃないって事さ!」

カイト「そう…なんですかね…」

神戸「亀山さん、ちょっと言い方が臭いですね。」

亀山「え?そうですかね…」

右京「まったくそれなら僕にも姿を見せてくれてもいいものを…
死んでもなお素直じゃありませんね…小野田さん…」

角田「よ、暇か!…って新旧相棒勢揃いじゃねーか!どしたの?」

亀山「あぁ…俺まだサルウィンに帰るのに日数があるから…」

神戸「僕も…まだこの事件でスッキリしてない部分がありましてね。」

カイト「スッキリしてない部分って?」

右京「そういえば課長、頼んでおいた件は調べてくれましたか?」

角田「あぁ、調べたぞ!実は『伊豆パシフィックランド』があった場所なんだが…
元は『伊熊平八郎』の家があったそうなんだな。
だが『伊熊』は結核の療養のためにその邸宅を売り払い、その後業者があの辺りを買い取って
『伊豆パシフィックランド』を建設したって話だ。」

カイト「じゃあ元々『伊熊平八郎』はあの場所に住んでたって訳ですか。
けど…何で娘の『貞子』が『井戸』に閉じ込められたのに家を売却したんだ?」

右京「なるほど、そういう事でしたか。これで繋がりました。
みなさん、すぐに『南箱根療養所』に行きましょう。」

カイト「『南箱根療養所』?けどどうして…って行っちゃうし!」

神戸「まああの人の独断専行はいつもの事だし…」

亀山「課長!コーヒーちゃんと淹れておきましたから飲んでおいてください。
サルウィンで採れた豆使ってますんで!」

角田「本当かい?ズズーッ、うん!今日のコーヒーは一味違う!!」

大木、小松「「嘘つけ…」」

『南箱根療養所』


9月3日、AM11:00


さっそく『南箱根療養所』に向かった右京たちであったが『伊熊平八郎』は結核の
症状が悪化し今日が峠であると告げられた。

看護師「患者さんはもう喋れる状態ではないのですが…」

右京「それでも緊急の用事ですので、通させて頂きますよ。」

看護師「ちょっと待ってください!」

神戸「申し訳ありません、あの人こうと決めたら梃子でも動かないものでして…」

カイト「大丈夫、すぐに終わらせますんで。」

看護師「まったく!どうなっても知りませんよ!」

こうして看護師は病室から出て行き特命係の面々は『伊熊平八郎』と再度対面した。

伊熊「アナタタチハ…サダコハドウシマシタカ?」

右京「『山村貞子』は再び『井戸』の底へ戻りました。復活する心配はないでしょう。」

伊熊「ソウデスカ、サダコ…スマナイ…」

右京「『伊熊』さん、あなたが存命の内に聞いておかなければいけない事があります。
45年前、『山村貞子』を『井戸』に閉じ込めたのはあなたですね!」

カイト「そんな…あり得ないですよ!」

亀山「そうですよ!実の娘じゃないですか!?」

右京「実の娘だからですよ、これ以上娘の所為で人が死ぬのは耐えられない。
そう思ったのではありませんか?」

『伊熊平八郎』は少し沈黙した後、涙を流し右京の質問に答えた。

伊熊「ソウデス、ワタシガサダコヲイドニトジコメタンダ…」

神戸「何故…そんな事を…」

そして『伊熊』は語り始めた。

57年前、『山村貞子』の能力は母の『志津子』以上の力があった。

これをどうにかするには『貞子』をふたつに切り離さなければいけない。

そう考えた『伊熊』はあらゆる方法を駆使し『貞子』をふたつに切り離す事に成功する。

一方は母親に似た美しい少女、だがもう一方はドス黒く禍々しい存在…

『伊熊』はそのもうひとりの『貞子』を伊豆の家にクスリ漬けにして監禁状態にしていた。

そうでもしなければ彼女は間違いなく人を殺そうとするからだ。

しかし、事態は最悪の結果を生む…

結局分離したとはいえ善良の『貞子』の幸せを妬んだ悪意の『貞子』が尽くその幸せを

踏み潰し、それに怒りを感じた『劇団飛翔』の団員たちと『宮地彰子』が

悪意の『貞子』を殺しに乗り込んできたのだ。

『貞子』は元のひとつに戻り『劇団飛翔』の団員たちと『宮地彰子』を返り討ちにした。

もうこれ以上『貞子』を抑えきれないと思った『伊熊』は『貞子』を襲い、

『井戸』に閉じ込めてしまうという悲しい話であった。

右京「なるほど、やはりそういう事でしたか。
最初にあなたにお会いした時『貞子すまなかった。』と仰ったのでもしやと思いましてね。
それに『井戸』があった場所は元はあなたの邸宅があったと聞いています。
そんなあなたならば『貞子』を『井戸』に閉じ込めるのも容易いでしょうね。」

カイト「じゃあ以前悦子が聞いた女子学生の『井戸』での噂話は…」

右京「恐らくそれは『中年の男』つまり当時の『伊熊平八郎』が娘の『貞子』を
殺害しようとして『井戸に』閉じ込めたんでしょうね。
その女子学生が階段を上がれなかったのはもうひとりの悪意の『貞子』がいたからでしょう。
『貞子』の悪意を直感で感じてしまい階段を上がれなかったんでしょうね。」

亀山「そんな…アンタ実の娘だろ!何でそんな事をしたんだ!?」

神戸「亀山さん抑えて!重病患者ですよ!」

伊熊「サダコハ…モハヤワタシガテニオエルソンザイデハナカッタ…ワタシモ…サダコヲイドニトジコメタアト…
シノウトシタガ…」

右京「恐くなり死ねなかった、そうではありませんか?」

伊熊「アァ…ハハトムスメヲフコウニシタノニ…ワタシダケイキノコルトハ…」

亀山「なんてこった…これじゃ『山村貞子』も浮かばれねえよ…」

右京「もうひとつ聞きたい事があります、恐らくあなたは『劇団飛翔』の団員たちと
『宮地彰子』の死体を何処かに隠したはず、そうではありませんか?
それだけの死者が出たにも関わらず彼らの死体は発見できず現在も未だに行方不明。
そして『山村貞子』は30年も『井戸』の底にいた。
自然に考えれば隠せるのはあなたしかいないんですよ。」

伊熊「カレラノシタイハ…ワタシノイエノウミノヨクミエルバショニウメタ…」

カイト「けど何で隠す必要があったんですか?あなたも死ぬ気だったはずなのに…」

伊熊「モシカレラノシタイガハッケンサレレバ…シインニカカワラズサダコガウタガワレルコトニナル…
セメテモノ…オヤゴコロダッタンダ…スマナカッタ…サダコ…」


ガクッ


カイト「『伊熊』さん!『伊熊』さん!?」

神戸「もう息はありません、ご臨終ですね。」

亀山「最後に親らしい事をしてやろうと…殺された連中を隠した訳ですか…
親ならもっと他にやるべき事があったろうが!」

右京「今更彼を責めても仕方ありません、それよりも静岡県警に連絡してください。
旧伊熊邸付近を捜索して『劇団飛翔』と『宮地彰子』の死体を見つけましょう。」

~旧伊熊邸付近~


9月3日、PM14:00


その後すぐに静岡県警との捜査により旧伊熊邸付近を捜索したところ、
人里離れた海岸付近に男女の死体が大量に埋められていたのを発見。
その死体のすべてがは死亡経過が45年前のモノだと確認された。

右京「これで死体は全部ですね、『劇団飛翔』の団員たちと『宮地彰子』さんたちとみて
間違いないでしょう。」

神戸「一応確認取りますけどそうでしょうね。」

亀山「『伊熊平八郎』は最後に人間として…いや父親としての務めを果たして死んだんですね。」

カイト「そうですね、娘の罪をこうやって告白してくれたわけだし…」

右京「果たして彼は本当に『山村貞子』の父親だったのでしょうかね?」

カイト「どういう事ですか?」

右京「そもそもあのような異能の力を持った『山村貞子』の父親が何の力も持たない
『伊熊平八郎』だというのが僕には不自然に思えてなりません。
『貞子』の父親は別にいると考えるべきでしょうね。」

神戸「お言葉ですがそんな事…本人たちにしかわからない事では…」

右京「恐らくですが『山村貞子』は薄々気付いていたはずですよ。
その証拠に彼女はずっと『山村』姓を名乗っていました。
彼女は母親の死亡後に『伊熊平八郎』に引き取られているはず、それなのに『伊熊』姓を
名乗らず『山村』姓を名乗っていた事を考えれば本当の父親が、
『伊熊平八郎』ではない事をわかっていたのではありませんかね…」

カイト「それじゃあ『貞子』の本当の父親は…」

右京「『しょーもんばかりしているとぼうこんがくるぞ。』」

カイト「それって…『呪いのビデオ』のメッセージですよね、それがどうしたんですか?」

右京「意味は『水遊びばかりしていると、お化けがくるぞ。』ですが…
僕は最初この言葉に何の意味も無いのかと思っていました、けれどもしこれが意味のある
言葉だとしたら…『貞子』の本当の父親は恐らく…海の魔物かもしれませんね…」

右京とカイト、それに亀山と神戸は荒れ狂う海を眺め…不気味な事件は幕を閉じようとした。

やっぱり右京さん、気付いていたか・・・ まあ、これまで誰が誰の子供か、誰が本当の父親、母親か見抜いてきたからな。

だが…

警官「あの本庁の方々!死体がもう一体発見されたんですが…」

神戸「他にもまだ死体が?場所はどこですか?」

警官「ここから少し離れた場所です、その死体も死亡経過が45年くらい経っているらしいですが…」

カイト「何で一体だけ離れた場所に埋められてるんだ?」

亀山「たまたま離れて埋めた…わけじゃないよな?」



ヴィー ヴィー ヴィー


全員が疑問に思う中右京の携帯が鳴り始めた、その連絡してきた相手は…

右京「ハイもしもし、杉下ですが。はぃ?」

カイト「電話…誰からでしたか?」

右京「内村部長からです、至急帰ってこいとの連絡でした。」

~警視庁~


内村刑事部長の部屋


9月3日、PM16:00


内村「馬鹿者ォォォォォォォォ!!」

中園「貴様ら特命係には謹慎処分を命じていたはずだぞ!それなのに勝手に捜査なんぞしおって!」

内村「おまけに防衛省の施設に勝手に潜入し大量の死体を発見するとは…
というかだ、何故亀山と神戸までここにいる!?特に亀山!お前は警察を辞めた部外者だぞ!」

亀山「まぁ…成り行きというヤツでして、なんか現職時代は騒音みたいな内村部長の
お説教も今となっては懐かしささえ感じますねぇ…」

神戸「なんとなくわかりますよそれ、僕もちょっと懐かしいみたいな感じが…」

カイト「そんなモンですかね?」

中園「誰が喋っていいと言った!?」

内村「それで…あの施設で何が…いや…やはりいい、これ以上面倒な事に関わりたくはない…」

中園「まったく…今回の命令違反は明らかに重大問題だと言いたいが…
警察庁の甲斐次長がお咎め無しと言ってきてな…」

内村「防衛省の秘密を暴いた成果だと言ってきてな!
フンッ!甲斐次長に感謝するんだな!!」

カイト「あのクソ親父…」

右京「ここは素直に甘えておきましょう、ところで内村部長。
明日休暇ですよね、実は付き合ってほしいところがあるのですが…」

内村「なんだと?」

~大島~


9月4日、AM10:00


右京たち特命係と内村部長は再び大島へと訪れていた。

内村「何故私が特命係の連中と一緒に大島なんぞにこなければならんのだ?」

亀山「まぁまぁ部長、たまの休日をこういう自然豊かな場所で満喫するのも悪くないですよ♪」

神戸「そうですよ、そのストレスの胃炎も少しは治るんじゃないんですか?」

内村「そのストレスの原因は貴様らなんだが…
というか何故貴様らまだいるんだ!?さっさと仕事に戻れ!」

亀山「俺は…まだサルウィンに戻る予定日まで日があるんで…」

神戸「僕も長谷川元副総監とはなるべく顔を合わせたくないんで…」

カイト「神戸さんのサボる理由やべえ…」

そんな右京たちの前にやはり大島にいる駐在の陣川がやって来た。

陣川「杉下さ~ん、カイトくん!お待ちしていました、それに亀山さんと神戸くんも
久しぶりです!」

亀山「陣川さん!何で交番勤務の格好してんですか?」

神戸「まさかこっちに移動されちゃったんですか!?」

右京「そういえばまだ言ってませんでしたね、陣川くんは今こちらで勤務なさっているそうです。」

亀山「あぁ…なんとなくわかる気が…」

神戸「また何かやらかしちゃったんですね。」

内村「フンッ!お前たちもそうならないように注意するんだな。」

右京「さて、カイトくん。僕はちょっと用事があるのでここで一旦別行動を取ります。
みなさんを…そうですね、先日こちらに来た時に夕食をご馳走になった奥さんの
旅館に案内していただけますか?」

カイト「あぁ、あそこですか?わかりました、けど俺その場所知らないんですけど…」

陣川「なら僕にお任せください杉下さん!全員を案内しますので!」

右京「頼みましたよ、それでは失礼します。」

それから右京はみんなと別れて別行動をする事になった。
残ったカイトたちは陣川の案内で先日ご馳走になった女性が経営する旅館にやって来ていた。

亀山「まったく右京さんたら自分だけどっか行っちゃって…」

神戸「あの人の独断専行は今に始まった事じゃありませんから。」

内村「そんな事より何故私まで行かねばならんのだ?」

陣川「まあまあ、あそこの料理スゴい美味しいんですから!」

カイト「そういえばあの奥さんの旅館って名前…まだ聞いてないんですけど何ていうんですか?」

陣川「あぁ、『旅館遠山』っていうんだよ。」

~旅館遠山~


9月4日、AM10:30


女性「あら、陣川さん。こんなにお客様を連れてきてありがとうございます♪」

主人「陣川さん、それにお客さんもこんなに大勢で!」

陣川「いやぁ、ご主人や奥さんには日頃からお世話になってますからね!」

カイト「奥さん、それにご主人、お世話になります。」

女性「まぁ!この前の若い刑事さんまで!そちらの方々もお連れさんですか?」

亀山「どうも~♪」

神戸「お邪魔しますね♪」

内村「…なんで私までこんなところに…」

女性「さぁ、みなさん入ってください!」

カイト「それじゃお邪魔しま…あれ?」

亀山「あ…?」

神戸「あ…ぁ…」

陣川「どうしたんですかみなさん?」

女性「あの…私の顔見て何で不思議そうな顔してるんですか?」

カイト「俺…奥さんの事を前にもどこかで見た気が…」

亀山「あぁ…俺もどっかで見たんだよな。」

神戸「実は僕もなんですけど…不思議ですね、みんなしてそんな事言うなんて…」

女性「イヤですよ!若い男たちがこんなおばちゃん相手に口説くだなんて♡」

内村「お前らいい加減そこを退け、私が入れんだろう!」

内村はカイトたちが玄関口で立ち止まっているところを強引に押しのけて入ってきた。
その時内村はまるで幽霊を見たような顔をした。


内村「あ゛…あぁ…」


カイト「あの部長…どうかしたんですか?」

亀山「まるで幽霊でも見たような顔をしてますよ。」

内村「ゆ…幽霊…いやまさか…そんな…」

右京「やはりそうでしたか。」

カイト「杉下さん!戻って来たんですね!」

亀山「さっきのはどういう事なんですか?」

右京「実は…『劇団飛翔』のメンバーの生き残りを調べましてね。
当時生き残りは二人居たそうですよ。
音響スタッフの『遠山博』さん、それに…衣装係の『立原悦子』さん、その二名だそうです。」

亀山「『遠山』?そういえばこの旅館も確か…『遠山』って名前じゃ…?」

陣川「そういえばご主人の名前って『遠山博』って名前じゃ?」

遠山「…えぇ…私は確かに『遠山博』です…」

カイト「それじゃあ…あなたは45年前の事件に関わっていたんですね!」

女性「あなた…!」

右京「そして奥さん、あなたの名前は現在は『遠山悦子』ですが
旧姓は『立原悦子』だそうですね。」

悦子(遠山)「…」

カイト「奥さんまで…なんてこった!じゃああなたたちは当時『山村貞子』と一緒に
劇団にいたわけですか!?」

内村「『遠山』?彼女が『立原』?どういう事だ!?訳がわからんぞ?」

カイト「え?だって…部長は二人の事を覚えてたから驚いているんじゃ…」

内村「私が驚いているのは…」

右京「すみません部長、暫くその事を言うのは待ってもらえますか。」

内村「…」

右京は何かを言いたげな内村を黙らせ推理を語り続ける。

亀山「右京さん!これは一体どういう事なんですか!?」

右京「昨日、我々が伊豆で見つけた『劇団飛翔』と『宮地彰子』の死体の数々を発見しましたが…
しかしそんな中…一体だけ離れた場所に埋められ確認の取れていない死体がありました。
何故でしょうか?そこで僕は考えたのです、こんな事を行う理由はただひとつ!
『誰か』がその死体の人物と入れ替わったのではないかと!」

亀山「入れ替わったって何でそんな事をする必要があるんですか!」

神戸「入れ替わる理由があるとするならそれは入れ替わる側が何か犯罪を犯したからと、
考えるのが普通ですが…」

右京「そう、その通りですよ!
ところで奥さん、最初にあった日ですが…あなた僕に自分は『山村貞子』の同級生だと
仰いましたよね。」

悦子(遠山)「ハ…ハイ、そうですけど…」

右京「ですがそれだと不自然ではありませんかね、あなたと『山村貞子』は同郷の
人間という事になる。何故あなたは『劇団飛翔』での事を我々に言わなかったのですか?」

悦子(遠山)「そ…それは、あんな惨劇が起きた訳だし…話しづらかったから…」

亀山「まぁ…団員の殆どが行方不明になったとなれば話しづらいのは分かりますが…」

右京「ですがおかしいのはあなたが『山村貞子』の同級生という点ですよ。
実は僕とカイトくんは先日ある場所で『山村貞子』の小学生時代を知ったのですが…」

カイト「あぁ、あの研究施設に『貞子』の小学生時代の資料ですよね。」

右京「そこで知った事ですが、当時『山村貞子』の同級生は全員海で溺れて
死亡したとの事です。
さておかしいですね、何故亡くなったはずの『山村貞子』の同級生がここにいるのでしょうか?
それに先ほど確認しましたがあなた方夫婦がこちらに来たのは20年前だと聞いています。
20年前にこの島に来たあなたが『山村貞子』と同級生という事自体が何か矛盾してませんかね?」

カイト「それじゃあこの人はまさか…」

神戸「そうか…だから僕たちはこの人に見覚えがあるのか!」

亀山「俺なんか二度も会ったしな!」











右京「そう、あなたは45年前に亡くなった『立原悦子』と入れ替わった『山村貞子』ですね!」
















悦子(遠山)「あ…あぁ…」

内村「やはり彼女が…」

遠山「ま…待ってください!確かに私たちは45年前に東京の『劇団飛翔』にいました!
だからといってそんな…入れ替わるなんて…証拠はあるんですか!?」

右京「証拠はあります、こちらの内村部長です!」

カイト「内村部長は45年前に学生アルバイトで何度か『劇団飛翔』に出入ってたそうですよ。」

右京「部長、彼女が『山村貞子』に間違いありませんね。」

内村「あぁ、間違いない。彼女の特徴的だったあの長い黒髪は短くなってるがあの顔は
忘れたくても忘れられんよ!」

亀山「奥さん!本当の事を話してください!」

神戸「もう45年も前の事件です、とっくに時効ですよ。」

暫く沈黙が続いた、それから悦子(遠山)はその重い口を開き語り始めた。


貞子「ハイ、私が『山村貞子』です。」


右京「えぇ、あなたの本当の名前は『山村貞子』ですね。」

カイト「やっぱり奥さんが…」

亀山「けど何で彼女は生きてるんですか?」

神戸「そうですよ、杉下さんのお話によれば彼女は45年前に『井戸』に閉じ込められたはずじゃ!?」

右京「その答えを知っているのはご主人である『遠山』さん、あなたですね。」

遠山「わかりました、すべてをお話しします。
私と『貞子』は彼女を殺そうとする『劇団飛翔』の連中から逃げていたんです。」

貞子「そんな時、私はもうひとりの自分と再びひとつになり…『劇団飛翔』の人たち
を手に掛けてしまいました…」

遠山「私も最初…『貞子』に殺されたと思ったのですが…気が付いたら無事で…
何が起きたのか確かめにあの『伊熊』邸に戻ったら…父親の『伊熊』さんが
『貞子』を『井戸』に突き落として…」

貞子「『井戸』に閉じ込められた私は蓋を閉められてもうダメかと思いました…
けどそんな時主人が助けてくれて…
でもそう簡単には行きませんでした、もうひとりの私が現れて『井戸』から抜け出そう
としたんです!
私はこれ以上もうひとりの私に罪を重ねてほしくないために力いっぱい抵抗した…
そしたら…」

遠山「貞子は再び…二人になったんです…それから私たちはもうひとりの『貞子』を
『井戸』に閉じ込めて、すぐにその場を立ち去ろうとしたんですが…」

貞子「父が『劇団飛翔』の人たちの死体を集めて埋めていたんです…」

遠山「私はこの時思いました、もしこのまま『貞子』が生き延びてもまた、
『宮地彰子』のような連中が『貞子』に纏わりつくんじゃないかと…
そこで考えたんです!『貞子』を社会的に死んだ事にして誰かと入れ替えればいいのではと…
その時死んだ連中の中に『立原悦子』という『貞子』と同世代の女性がいたので
『立原悦子』と『貞子』を入れ替わらせたんです!」

右京「なるほど、しかしわかりませんね。
あなた方は入れ替わったにも関わらず、何故この『山村貞子』に縁があるこの島で
今も住んでいるのですか?」

カイト「そうですよ、『山村貞子』を捨てたのに何で…」

遠山「それは…」

貞子「私たちはその後20年以上各地を転々としました、しかしあの日の事が頭から焼き付いて
離れないんです!私が島を離れなければあんな惨劇は起こらなかったはずなのに…」

遠山「それで私と『貞子』はこの島に戻ってきたんです、正体がバレるのを覚悟で…」

貞子「ですが…不幸中の幸いな事に私の同級生は事故で死んだため誰もいなくて…
この島で唯一の叔父も普段は滅多に家から出なかったので誰も私が『山村貞子』だと
思わなかったでしょうね…」

右京「なるほど、これが事件の真相ですか。」

内村「もう私にはもう付いていけん…悪いが失礼する!」

亀山「あ、部長帰っちゃいましたよ…」

右京「無理もありませんね、真相を知った僕たちでさえも戸惑っているのですから…」

神戸「つまりこちらにいらっしゃる『山村貞子』さんは善良な方の『貞子』さんな訳ですよね。
法的に解釈すれば45年前の殺害時二人は同一体であったため、罪に問えなくもありませんが…」

右京「しかし45年前ですからね、既に時効が成立しています。
この事件を裁く事はもう我々には出来ません…」

貞子「あの…刑事さん、もうひとりの私は…どうなったんでしょうか?」

右京「今も『井戸』の中にいて、未だに人々を呪い続けているのでしょうね。
彼女の怨念は未来永劫絶えないのかもしれません…」

貞子「そんな…」

右京「『貞子』さん、我々はあなたの罪を問う気はありません、恐らくあの事件を
引き起こしたのはもうひとりのあなたですからね、ですがひとつお願いしたい事が…」

貞子「え?」

なんかこんがらがってきたぞ……
だれかまとめてくれ

~山村家~


9月4日、AM11:30


右京たちは『貞子』を連れて山村家へ訪れていた。

和江「あなたたち…また…」

陣川「奥さん落ち着いて!今日はお話を聞きに来たわけじゃないので!」

貞子「ここに来たのはもう50年ぶりですね…」

右京「やはりここには近づいてませんでしたか。」

貞子「ハイ、ここは悲しい思い出しかありませんから…
けど何で私をこの場所に連れて来たんですか?」

右京「それはあなたに成仏させてほしい方がいるからですよ。」

貞子「成仏って?」

カイト「あなたのお母さんですよ。」

貞子「母が?」

右京「15年前からこの家で頻繁に『志津子』さんの霊が出没するそうですよ。
恐らくこの世になんらかの未練が残っているんでしょうねぇ。
もしかしたら娘のあなたの事を心配しているのではないですか?」

貞子「けど私の力は45年前に『井戸』でもうひとりの私と別れた時に無くなってしまって…」

亀山「力なんて関係ありませんよ!あなたがお母さんを成仏させたいっていう願いが
あればそれで十分なはずです!」

神戸「僕もオカルトには詳しくないですけど…親子に超能力なんて関係ないでしょう。」

カイト「いざとなったら俺たちが付いてますから安心してください!」

右京「さぁ行きましょうか。」

貞子「みなさん…わかりました!行きましょう!」

そして全員は『志津子』の居る部屋へとやって来た、この中で一番霊感のある亀山は
その部屋に何か例がいる事をすぐに察知出来た。

亀山「右京さん…この部屋…」

右京「どうやらこの部屋にまだいるみたいですね。」

貞子「お母さん、私です!貞子ですよ!」


志津子「あ゛…あぁぁ…」


現れた『志津子』は不気味な声を上げて『貞子』の下へと近づいてきた。

志津子「あ゛…あぁ…『貞子』…」

亀山「あの女の人の顔が安らいでいく、まるで満足したかのような表情だ…」

そう、亀山の言う通り志津子はまるで今までの憑き物が取れたかのような表情を浮かべて、
大人になった娘の『貞子』を優しく抱いていた。
そして『志津子』は満足した顔でその場から消えていった。

貞子「お母さんさようなら…」

後日


~成田空港~


再びサルウィンへと旅立った亀山と美和子を見送った右京とカイトはその帰り道で
『呪いのビデオ』の話をしていた。
(ちなみに神戸はこれ以上のサボると仕事をクビにされそうなので来れなかった。)

右京「しかし不幸中の幸いでしたね、『山村貞子』が呪いのビデオを念写したのが
15年前で…」

カイト「それってどういう事ですか?」

右京「今ならダビングなんかしなくても伝達させる手段があるじゃないですか。」

カイト「そんな手段…あぁそうか!動画サイトですね!」

右京「そうです、もしも『山村貞子』がネットを経由して『呪いのビデオ』ならぬ
『呪いの動画』を見せていたら人類はあっという間に滅亡していたかもしれませんよ。」

カイト「まったく恐ろしいヤツでしたね、『山村貞子』…
ところでもうひとりの『山村貞子』いや『遠山貞子』さんはどうなるんですか?」

右京「そうですね、45年前の罪はともかく、他人に成りすましていましたからね…
情状酌量の余地もありなんとか罰金刑で収まるようですよ。」

カイト「『遠山貞子』の方は現在じゃ子供どころか孫までいて慎ましくも幸せな
人生を歩めるっていうのに…」

右京「一方人を恨む事しか出来なかった『山村貞子』は今も『井戸』の底の中…
これほどまで人生がくっきりと別れてしまうモノなのでしょうかね…」

カイト「そういえばひとつ気になったんですけど…防衛省の研究施設で
『岡崎』らしき男を発見出来なかったんですけどこれってどういう事なんですかね?」

右京「それは恐らく…」

右京は青空を見上げ…何か思うところがあった。

~???~


ここは政府のある施設、片山雛子はある人物を待っていた。
そこにひとりの中年の女性が目隠しでその場に連れて来られていた。
その女性は…

雛子「ようこそ、『嘉神郁子』さん!手荒な真似をして申し訳ありません。
けどこの計画は秘密裏に進めたいものでして…」

『嘉神郁子』、かつてはバイオテクノロジー研究所の主席研究員であったが

娘の茜の身体を母体として使い、クローン人間を製造しようとした過去がある。

しかし茜は子供を流産してしまい結局この世にクローン人間が生まれる事はなかった。

そんな彼女が何故呼ばれたかというと…

ちなみにこれは神戸が特命係に所属していた時に最後に関わった事件でもある。

郁子「何故私を呼んだんですか?」

雛子「あなたのクローン研究でこの世に甦らせたい人間がいるんですよ。」

郁子「甦らせたい人間って…クローン人間は必ずしも同一の個体になるとは…」

雛子「その人間は57年前に超能力を使いひとりの記者を殺害、それから45年前に
『劇団飛翔』の団員と『宮地彰子』」を殺害、
更に15年前に死んでいるにも関わらず『呪いのビデオ』というモノを作り出し
多くの不特定多数の人間を殺害、
たとえ同一の個体ではなくても能力は受け継がれるそうだと思いませんか?」

郁子「あなた…何を言って…」

雛子「防衛省は良い研究資料を残してくれました。『ProjectRING』、私が引き継がせてもらいます!」

雛子「言っておきますが…あなたに拒否権はありません。
逆らえば刑務所にいるあなたの娘さんは永遠に出所出来なくなるかもしれませんからね。」


ガラガラ  ガラガラ


そんな雛子の後ろから黒服の男が車椅子に乗った男を連れてやって来た。
彼の名は『岡崎』、あの事件の時…彼だけは片山雛子の手により前もって脱出してたのだ。
これから行う実験に利用するために…

雛子「それでは、これがクローンとして甦らせたい人物の生体細胞です。」

郁子「こ…これは…死体?」

雛子「えぇ、見つけるのに苦労しましたよ。
あの研究所は瓦礫で埋もれて『井戸』から掘り起こして回収したんですからね。」

その死体には『S・Y』というネームプレートが貼ってあり郁子はこの死体が誰なのかを
尋ねた。

郁子「この死体は誰なのですか?」


雛子「この死体の名は『山村貞子』、我々は彼女を再び甦らせ彼女の能力を国益に利用するんですよ。
これより私の指揮の下、『ProjectRING』を再始動します!」


こうして悪魔の実験は人々の知らないところで今も続けられている…

途中止まってしまいましたがこれにて本当に終わりです。

やっぱり片山雛子はクロでしたというオチになりました。

乙ー。なーんか続きを匂わせる終わりね。雛子はどう足掻いても生き残りそうだけども

まだ普通の貞子が出てないんじゃ?


なんか土曜朝アニメで打ち切りを喰らった作品を思い出した……

ちょっと補足説明

>>522
こちらで悦子(遠山)と表記しましたがこれはカイトの彼女の名前が同じく悦子なので
それと区別するためにこうした表記にしました。

>>536

つまり良い貞子と悪い貞子がいてそれが離れ離れでいたけど

人を殺すために合体、けど人殺した後にまた分離して良い貞子が遠山と一緒に悪い貞子を井戸に閉じ込める

結果悪い貞子ブチ切れて30年後に呪いのビデオをばら撒く→そして現在に至る

という事になります。

乙!いやはや面白かった……
バースデイを見直すと確かに遠山は絶叫は上げたけど死んだ描写はなかったもんね。
こういうifストーリーがあってもいいな。それくらい映画のラストは悲惨だったから。
そして片山はけっきょく貞子を制御出来ずに殺される未来がふっと浮かんだ。
また何か書いて下さい。楽しかったです!

終わった←終わってない
はホラーとかパニック物で様式美といっていいオチだけど
題材がリングだけに別な意味合いを含んでる様にみえる

楽しかった乙

つまり、今度の貞子は、幼女バージョンでの登 場になるのか(ぇ

作者、いい意味でやってくれたなッ!? もうひとり良い貞子には、救いがあったか。それだけでも嬉しい!
ここの雛ちゃん、めちゃくちゃ黒いな。 原作じゃまだ生きてるけど、ここじゃ死にそうだな。
人間達に悪意がある限り、黒貞子は何度でもよみがえる・・・ 今度こそ3Dみたいな事が起こるか・・・
でも右京さん達、相棒なら何とかしてくれるかも。

今までネタバレしないために返信を控えてましたがいくつかレスしますね。

>>295
貞子は一応良家の子ですから礼儀は習ってるかと

>>297
悪霊が何してんだよと…

>>305
本編には書けませんでしたが清めの塩の効果という事で納得して頂ければ…

>>307
貞子っていつも裸足じゃ…

>>313
大島に行った事無いので適当に2時間と書いたんですけど
フェリーだとそんなに時間かかっちゃうんですか…知らんかった…

>>356
本当に死んでまいました、本編での活躍無しで退場させてしまった…

>>392-393
ホラーモノで主人公でもない人が単独行動取るって死亡フラグだなと思って…

>>402
相棒の方はともかくリングは映画観た程度の知識なんでそんなに詳しくないです。

>>403
呪殺兵器はちょっと…防衛省にライトノベルの読者がいたらそんな名前にしてたかもしれないけど…

>>444
右京さん頭脳は化け物クラスでも普通の人間だから…
鏡ならなんとか大丈夫かなと


相棒12が始まるねぇ

ふっと思ったが、内村部長、ポルナレフ状態だな。
今まで死んだと信じて疑わなかった人間が実は生きていて目の前にいる。めちゃくちゃショッキングだwwwwwwwwwwwwww
まあ、貞子であって貞子じゃないヤツが悪いわけだし。

>>471-472
緊急対策特命係って書いてわかる人いないだろうなと思ってましたが
みなさん知ってて驚きました!
そうです、かつての特命係の人たちです。

>>477
官房長…亡くなりましたからね、シーズン12の本編で出るとしたら
回想か幽霊で出るんじゃ…

>>478
出したかったんですが…無理でした。
また相棒SS書く機会があったら出してあげたいなと…

>>480
元々特命係作ったのは官房長ですからあの世で特命係再結成させて
悪人捕まえてたりするんじゃないんでしょうか?

>>481
地獄といってもあくまで貞子の深層世界ですのであそこが本当の地獄ではありません

>>465
返事が前後してしまいましたが我慢して入りました。

>>484-486
その辺の解釈はこのSSじゃわからないと思うのでリング0の映画を観て頂ければと

>>487-488
実はまだ貞子の世界に閉じ込められてます、悪い方の貞子が成仏しない限り
彼らも成仏できません

>>505-507
右京さんだからって理由で納得するの早すぎる…

>>548
そうですね、雛ちゃんは何があろうと生き残ります

>>549
普通の貞子なんかいません
この世には良い貞子と悪い貞子しかいませんから

>>551
何てアニメですか?

おつ
これそのまま映画にできそうだな
右京VS貞子

乙です。

面白かったです。
まさか、リングと相棒がコラボするとは思いませんでした。
作者の次回作を楽しみしてます。

htmlの依頼しようかと思ったら入れないんですけどどうしたらいいんだろうか?

>>553
相棒もドラマじゃ報われない話多いですからね
こんなスレでくらいいい話で終わらせようかと…

>>554
そういえば映画版リングと2も続きそうな感じで終わりましたね
何気にリスペクトしてしまいました。

>>555
皆が大好き幼女になります

>>557
雛ちゃんっていつもこの位黒いと思ったんですが…違った?
3D貞子は雑魚貞子が石原さとみにやられ過ぎでした。

>>560
相棒シーズン12
10月16日(水)夜9時スタートです
9時放送だから今回は初回2時間じゃないのかな?

入れない?
とりあえずurl
■ HTML化依頼スレッド Part11 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1377822903/l20)

>>574
入れました、お手数掛けてすいません

(切りつける音)ああ・・・!痛ぇ・・・!(切りつける音)ああ・・・!
(切りつける音)うぅっ・・・!うぅ・・・!(切りつける音)ああ 痛ぇ・・・!
うあああ・・・!(切りつける音)

(うめき声)

(うめき声)

よし!よし・・・よし・・・よし!
ああ・・・!

(転落する音)

>>561

(後日談)

部長「 あ…ありのまま 今 起こった事を話すぞ!
私は山村貞子が45年前に井戸に閉じ込められ死んだと聞いていた…
と思ったら実は生きてて旦那と一緒に大島で旅館を経営していた!?
な…何を言ってるのか…わからんと思うが私自身何を言ってるのか言ってるのかわからんかった。
頭がどうにかなりそうだった…
催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなモンじゃあ断じてない!
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぞ…」

中園「ハァ…」(ついにボケが始まったか…)

>>566-568
東映のVSシリーズは共演ものですからね、戦隊ものとかねぇ。
なんで『&』じゃダメなんだろ?

>>571-572
たまにですがまどかのクロスSSをチョコチョコ書いています

>>579
ボーダーラインはやめて!?

大変乙でした!


>>459
亀山「コラー!『山村貞子』!」

貞子「!」 ピャッ!(逃走)

↑かわええwwww

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