俺「とある科学の超電磁砲、か」 (60)
●七月十六日 昼
ここ『学園都市』――200万人以上が住まう超能力者の園では、学生犯罪が日常茶飯事的に起こっている
俺「今日はいい天気だな……」
こうしてただ街を歩いているだけでも遭遇するほどに。
ド ガ ァ ン ! !――爆発音、か
おおかた銀行強盗が防犯シャッターを破るために能力を使ったのだろう
俺「炎球をそのままぶつけたような爆発……発火系能力のレベル3だな」
爆発を見ていた人々には恐怖から半パニックになっている人もいたが、
俺の頭脳はこの状況下でもいたって冷静だった
学園都市の能力者は能力の強度に応じて0~5のレベルに分けられるってのは説明したかな?
とくに超能力者――レベル5はひとりひとりが軍隊にも匹敵するほどの能力をもち、
学園都市に7人しかいないらしいが……俺には関係ないね
強盗犯たち「ひゃっほおおおおおおお」ドタドタ
俺「出てきたか、だが――」
風紀委員「ジャッジメントですの!」ドン!
俺「残念だったな」ニヤリ
風紀委員(ジャッジメント)と警備員(アンチスキル)――学園都市の治安維持機関だ。前者は学生、後者は教員のみで構成されている。
武装した警備員と比べ私服でのパトロール活動などが大半の風紀委員では凶悪犯数人を制圧するほどの武力はまずないはずだが――
俺(この風紀委員、ひとりで立ち向かうとはよほど自分の『能力』に自信があるようだな)
そう、学生には『能力』があるのだ
高レベルの能力者にとって低レベルの相手など数に数えない
俺(この勝負は実質 風紀委員vs主犯格の発火能力者 というわけか)
俺「まったく、あきれるね」
案の定、風紀委員は強盗犯のひとり(殴りかかったので0~1の能力者だろう)を華麗にいなし行動不能にした
俺「風紀委員も能力は使っていない。風紀委員の訓練ってのはただの遊びじゃあないんだな」ニヤ
主犯格「ッ!……やるじゃねえか。だがおれだってな」ボウッ!
主犯格の手のひらに炎球が出現した
俺(ビンゴ!)ニヤリ
しかし風紀委員はまったく動じず、逆に主犯格を挑発する……
俺(あんまり賢いやり方とは言えないな……)
主犯格「てめえ!」轟ッ!
冷静さを失った主犯格が炎球を持った手で殴りかかる!、
が すんでのところで風紀委員は跡形もなく消え去った
主犯格「どこだっ!?」クソォ
俺(上だ)ゴンッ!
風紀委員のキックが主犯格の頭にヒットした
俺「空間移動能力者(テレポーター)……自分を丸ごと瞬間移動できるなら大能力(レベル4)は下らないだろう、なかなかレアだな」ホゥ
よく見ると風紀委員はあの常盤台中学の制服を身に纏っていた
学園都市における運動会『大覇星祭』――運動会、とは言っても学園都市の全学生が学校単位で競いあうという
『外』ではまったく考えられない規模のものだ
その覇権を争う5校通称『五本指』の一角にして花のお嬢様女子校、それが常盤台中学
俺「あの学校はたしか強能力者(レベル3)以上でないと入学できないんだったな…… やれやれ、そもそも私立学校なんてものは――」
ざわざわ
俺が教育論を展開しようとした瞬間、近くでざわめきが起こった。
強盗犯のひとりが車を奪い逃げ出したらしい
俺「あのテレポーターから逃げられるのかね……? まあ、万が一のため俺も―― ん?」
風紀委員は追わなかった。刹那。別方向からただ一枚のコインが一直線に飛んでいって、
ドゴォン!! 逃走車を吹っ飛ばした
え? コインが当たったくらいじゃ車はビクともしないって?
そりゃそうだ、
しかし――
俺「音速の3倍で動くコイン だったなら必然だろう?」ハァ
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ニニニニニニニ./ }ニ{ ノニヽ ノ
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強盗犯は取り押さえられた。
何人かの風紀委員が怪我人の確認をしている
初春「怪我してるひとはいませんか?」
俺「ああ、怪我人ならいないと思うぜ。
それより、10km西方にあるマンションの703号室にいきな
強盗グループのアジトはそこだろう。長距離テレパスを使う能力者がいる
おそらく強盗犯たちの本当のリーダーはあいつだ 」
初春「あ、あなたは!?」
俺「名乗るほどのもんじゃねえや」
白井「すぐ向かいますわ!」シュン
俺「お、さすがレベル4のテレポーターだな。素早いぜ」ニヤリ
御坂「ふぅん。感知系の能力者ってとこ? 協力感謝するわ」
俺「いや、これは特技みたいなものだな。いまは無能力者(レベル0)だ」
御坂(いまは? あの状況下で冷静にアジトを特定するとは、ただものではないわね)
佐天「それってすごいです! あたしと同じレベル0なのに」
俺「そうか? ははは」
●七月二十日 朝
ここ学園都市で頻繁に学生犯罪が起こるのはやはり学園都市の特色――能力強度による段階分けが大きな要因になっていると推測される
そもそも超能力に憧れて学園都市への入学を決めた学生も多い。
能力が少ししか、あるいは全くないという烙印を押されることが学生に与えるインフェオリティー・コンプレックスは――
俺「ん? あれは木山春生じゃないか」カタカタッターン
俺は文書作成を中止した。これ自体はただ思考を書き留めておくためのもので
どこに提出するわけでもないので急ぐ必要はないのだ
俺「やあ、木山さん。いつかの学会以来だな」
木山「ああ、君か。久しいな。宇宙活動時における超能力の安全運用の研究は捗っているのかい?」
俺「あれは95%完成したんで他の者に任せた。いまは学園都市における学生心理全般の研究を――」
木山「現役学生の君が?」フフ
俺「笑うなよ(笑)」
俺「木山さんの専攻は『AIM拡散力場』だったか」
AIM拡散力場――能力者が無意識に周囲に漏らしている微弱な力のことだ。
人間の五感では感じ取れないものだが、これを応用してなにかできないかというのが
現在の大脳生理学のテーマの1つとなっている
木山「なかなか成果が上がらなくてね……次の学会には間に合いそうもない」
俺「どこもそんなもんさ。……だが、俺だったあテキトーにデッチあげるだろうな
たとえば――『学生間で噂広がる幻想御手(レベルアッパー)の真偽とその副作用、
そしてその先にあるものとは?』とかね」ニヤ
木山「……『幻想御手(レベルアッパー)』とは?」
俺「ネット上で広まっている噂だよ。それを使えば能力強度が簡単に上がるというシロモノらしい」ニヤニヤ
木山「……副作用があるのか」
俺「噂が広がり始めたころから、学生が突然原因不明の昏睡状態に陥る事案が次々と発生しているんだな、これが」
木山「週刊誌が喜びそうなネタだ」フフ
俺「だな。」ニヤリ
木山「……それで『幻想御手』はなにを生む? 超能力者の軍隊か?」
俺「 『 巨大怪獣 』 そして、運が悪けりゃ――」
木山「 フフフ、ナンセンスだが実に面白い
……悪いが私も忙しいんでね。これから病院に行かねば」
俺「……学園都市には御坂美琴がいる」
木山「彼女も私と同じだよ。 むしろ私は君のほうが恐ろしいね」
俺「俺は傍観者さ……」ハァ
木山「それなら私の研究はきっと成功する」スタスタ
俺「だが、俺は気が利く傍観者だ」ニヤリ
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