魔法少女しるば☆マギカ (11)

このSSは過去ににじふぁんに上げていた
同名小説の再編成です。
・オリジナル主人公メイン、割と強い
・魔女に対して独自解釈
・鬱展開、残酷表現あり
・基本ギャグや明るめの話ばかり書いてて鬱の試みがうまくいったためしがない
・魔女語は基本翻訳頼み
・別作品とのリンクあり
・あと百合
以上の問題点が含まれます。
以上のことをふまえた上で問題がなければどうぞおつき合いください。

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主人公スペック

綾乃しるば
パンダのパーカーを纏う自称魔女の魔法少女、着やせしてるがスタイルは良い方。
変身すると白い長髪を白地に桜模様のリボンでポニーテールにした白黒ドレスの魔法少女になる。
武器は蜂の使い魔Reche。
単体での強さは大凡キリカ並。
すれていて素直になれず、しかしなれ合った人間にはなれなれしい性格。
同じ町の魔法少女である御森あおいを嫁と言ってはばからない、若干百合。

アヤノ モルガナ
大学生くらいの自称魔女、魔法は使える。
黒い長髪に黒地に桜模様のマフラー、黒いコートを羽織っている。
コートの上からでも解るナイスバディ。
楽天家とも策謀家ともとれる性格。
黒幕系ヒロイン。
バイセクシャルの変態。

これは、魔女が己のアイデンティティをかけて誰かを呪う物語。
これは、魔女になった少女が呪いの対価に狩られる物語。
不公平かもしれない、不条理かもしれない。
この物語はいくつもの物語のあくまで途上にあるもので
魔女の最後は決してハッピーエンドにはなり得ないからだ。
それでも確かに幸せはそこにあった。
そこに晒される、綾乃しるばという少女がいた。
それを否定し破壊するために動く、アヤノという魔女がいた。
ただ、魔法少女たちは彼女らの事情に巻き込まれただけなのだ。

Side Siruba

夜中のビル群を通り過ぎる人影があった。
横ではなく、縦に。
……………ぐちゃ
あっけない音を立てて、それは生命なき肉塊へと姿を変えた。
目の前で起きた惨事に、少し目を細める。
自身に血が付いていないかを確認する、よりにもよって目の前に堕ちて来たからだ。
…よし、綺麗な白黒が自慢のパンダ模様は死守できている。

しるば「たく、食い散らかすのはよくないわねぇ…汚れたらどうしてくれるのかしらね」

これの血もしくは破片がもし服についていたら、あとで見つかった時警察に言い訳が出来なくなる
この近くに住んでいる以上それだけはどうしても避けたいところだった、それに犯人は私ではないのに、肝心の犯人は一般人には知覚不可能なものだ。
世話になってる和尚にあまり迷惑はかけたくない。

それの首だった場所には、昆虫のような小さい紋様が刻み込まれていた。
魔女の口付け、この世ならざる呪いから生まれた存在…『魔女』が気に入った人間の首に刻み込む呪い。
これを付けられた人間が絶望に魂を支配され、逃れられないように自ら命を絶ってしまう。
そしてその魂を、魔女は糧にするのだ。
その跡と、結界の規模を見計らって私は指輪を目の前にかざした。

しるば「そろそろ、狩り入れ時…ね?」

指輪にはめ込まれたソウルジェムが光り、パーカーを含む通常の衣類が消失する。
そして白と黒の生地に彩られたドレスを身にまとって長い白髪をリボンとソウルジェムの髪飾りで留める。

しるば「……Reche!!」

手を翻して今日の相棒を召喚する。
何もない空間に落ちた陰から、ちょうど人の胴体くらいはあるだろう巨大な白黒の鉢が姿を現す。
私の魔法少女としての固有魔法、使い魔の召喚と使役だ。
そのうち一匹を背中に取付かせ、またもう一匹も右腕も掴ませる…これで準備はほぼ完了だ。

しるば「それじゃあ、行きますかねっ」

ガン!! と、拳の方向に尻を向けたRecheの針を女性が落ちてきた先の空間に突き立てた。
紋様とともに結界への入り口が浮き上がる、壁を打ち貫いた確かな感触に腕を振りながら私はその中に足を踏み入れた。

しるば「おぉ、うじゃうじゃ居るね。やっぱりこういう奴は家畜化しやすいわよねぇ」

クッキーで敷き詰められた空間を掘り進んだかのような広い洞窟。
それがここの主が持つ結界の姿だった。

Ebba『Es kam!!Es kam!!』

Ebba『Diese Person, durch die die Hexe kam, tötet uns!!』

その結界を埋め尽くすのは白蟻の群、白い蟻のボディに人間の腕をくっつけたような形。
それらは一斉にこっちを向いてがちがちと鋏角を鳴らした。

しるば「手厚い歓迎どうもありがとう、しかしかまっている暇はないのよねぇ?」

背負った蜂の使い魔が羽ばたいて、私の身を持ち上げた。
ちょうど広い洞窟で助かった、円形に彫り広げられた結界通路の中央を飛んでいく私に蟻の使い魔母をがちがち鳴らすだけ。

Ebba『Wir sind kein Viehbestand!!』

当然だ、蟻の使い魔は平面にしか這い出せない。
蟻は基本的に地面化壁を這うことしかできない二次元的な行動範囲しか持たない生き物なのだ。
しかし…

Edda『Ich muss kämpfen!!』

しるば「おっと、器用な奴がいるものね」

天井に這い上がった蟻の使い魔が雄たけびをあげながら急降下してくるが、適当にそれを腕に張り付けた蜂の針で薙ぎ払う。
そいつの行動を見て覚えたのか、それまで地面でうごめいていたアリたちが次々と壁をよじ登って天井から降り注いでくる。

しるば「ったく面倒くさいわね…!!」

蟻の雨が到達する前に、空間から蜂の使い魔を大量に召喚して隊列を組む。
棘は一列にささくれた螺旋を描き、ドリルでできた傘のようなものが出来上がる。

Edda『aaaaaaaaaa!!』

しるば「いいねこれ…さぁ、抵抗は無駄だ。早く立ちなさい…貴女自身、それを望んでるんでしょう…ね?」

蜂たちに感謝しながら、安全に結界をどんどん奥深くへと潜っていく。
やがて結界全体が流動して勝手に宝石のような飴玉で装飾された豪華絢爛な扉が寄ってくる。
魔女の居場所へと通じる扉だ。

Edda『Es wurde wieder wie es. Es wurde wieder wie es. 』

失意に沈んでいく白蟻たち、私は彼女らに敬意を表さない。
所詮家畜だ、くれてやる言葉もない。

しるば「ようやく来たわね、哀れな可愛い私の家畜」

その奥に鎮座するのは、女性だった。
それは女王だった。
醜く肥大化した卵のうの様な下半身を持つ異形、頭部もまた肥大化しておりその『祖』が人としての思考を捨てたことを暗に表している。
哀れなのは目をつけられたこと、哀れなのは捕まったこと。
それが果たして『祖』だったのかはわからない、ひたすら増殖を繰り返す魔女の性質から言っておそらくそれは使い魔から成長したものだったのだろう。

Inanna『Wie viele Zeiten wiederholen Sie? 』

しるば「聞くだけで鬱陶しい声…ね」

もぞもぞとした声で聞き取れない魔女の言葉に眉をひそめる。
そして飛び上がると蜂の使い魔を一斉に並べて魔女へ叩き付けるように解き放った。

Edda『Töten Sie nicht bitte!!』

しかし、蜂たちの針は肉の壁に阻まれて届くことはなかった。
蜂たちを放ったその瞬間、結界中の白蟻たちが親元を守るかのように集まって壁を形成して魔女を守ったのだ。

Edda『Schützen wir alles zusammen einer Mutter!!』

しるば「……そろそろこの魔女も潮時か…」

私はそのまま、腕に纏った蜂に魔力を供給して棘を肥大化させる。
そして勢いをつけて壁へと向かい飛び込む。

Inanna『Töten Sie mein Kind nicht bitte!!』

しるば「何を言ってるのかはわからないけど……」

魔力のシールドを帯びて巨大な砲弾となった私はそのまま壁を粉砕し、棘で魔女の豊満な胸を打ち貫いた。

しるば「私のために、死んでもらうわね」

Inanna『Geo…o……ggge……eeeeeee』

魔女は震えるかぎ爪を腕のように私に伸ばすが、その『腕』は私に届くことなく崩れ去っていった。
結界が揺らぎ、消える。
出てきたのはビルの屋上。
ビルの下から此処でもわかるくらいの大きな悲鳴があがる。
恐らくは、さっき落ちてきた『肉』を誰かが見つけたのだろう。
蜂に頼んでその場から飛んで去ろうとする…と、その前に。

しるば「あったあった……」

グリーフシード…魔女の残した卵を拾う。
救いようのない、食物連鎖の世界。
狩るか、狩られるか。
この世界に究極的にはその関係しかないのなら魔女が何を言っていたとしても些末な事じゃあないだろうか?
魔女の末路、自分の末路、それを知っておきながら醜く生きていく。
誘いの言葉と結果は、確かに奇跡と呼べるものだろう。
しかし、それがもたらすのは結局現実。

しるば「まったく、この世界に奇跡なんて無いもんだ」

今日はここまで。
当作品は魔女の視点を重視しています。

Edda
白蟻の魔女の手下。
その性質は献身、迷い込んだ人間が結界に溶けてその一部となるまでかいがいしく世話をする。
人間が余ると自分たちで食べて外に捨ててしまう。
その性質は魔女に対しても例外ではなく、結界に溶けない魔女自身もブクブクと膨れて行ってしまう。

Inanna
白蟻の魔女、その性質は増殖。
子供を産むことの喜びににすべてを忘れた女性のなれの果て。
子供が増えて、巣の範囲が大きくなっていくことこそが至上の喜び。
しかし子供にかいがいしく献身され続けた結果動けないからだとなってしまった。

Reche
綾乃しるばの手下。
その性質は力、その性質の通り綾乃しるばの力となるためだけに生まれてきた。
汎用性が高く背負って飛ぶことや腕にしがみつかせてパイルバンカーのような武器にすることもできる。
しるばのいう事には絶対服従の忠誠を誓っているため、魔女になる個体は未だいない。

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