楓「……あ」
P「……」
楓「……」
P「……」
楓「……くちゅん?」
P「いや、今更取り繕われても」
楓「むぅ……」
P「えっ、そこで怒ります?」
楓「乙女の秘め事は見て見ぬフリをするものですよ」
P「だったらせめて見逃せる範囲でお願いしますよ……」
楓「ぬぅ……」
P「それもだめです」
楓「けち」
P「もうちょっと、アイドルという自覚をですね」
楓「あーあーあー聞こえないでーす」
P「あっ、コラ!子どもみたいなことしない!」
楓「どうせ私はアイドルっぽくない子どもですよーだ」
P「拗ねないでくださいよ……」
楓「拗ねてないですもーん」
P「まったく……だったらせめてあんなおっさんみたいなくしゃみはやめてくださいよ」
楓「あ、ひどいです。そこまで言います?」
P「だって凄まじい威力でしたから……」
楓「いいですいいです。どうせ私はおっさんですよ……」
P「今度はそっちで拗ねますか……」
楓「おっさんは今日も一人寂しく飲むんです……」
P「……今日くらい、誰かと一緒に飲めばいいじゃないですか」
楓「あら、プロデューサーも今日が何の日かはご存知だったんですね」
P「まぁ、さすがに。こんな日に一人で飲むこともないでしょうに」
楓「残念ながら、今日は誰も付き合ってくれなくて」
P「そうなんですか?」
楓「そういうプロデューサーこそ、今夜は恋人と過ごさないんですか?」
P「えぇ、もちろんその予定ですよ」
楓「!?」
P「……今夜も、残業の予定ですから」
楓「……」
P「……」
楓「仕事が恋人、とか言ってもかっこよくないですよ?」
P「ほっといてください」
楓「……でも、ホッとはしました」
楓「でもPさんこそ、こんな日にまでお仕事しなくても……」
P「まぁ、これも大切なアイドルたちのためですから」
楓「せっかくのクリスマス、ですよ?」
P「賑やかな街中より、静かなほうが落ち着きますし」
楓「特別な日にしたくないんですか?」
P「ぼくは、裏方ですから」
楓「……」
P「……」
楓「……そういうどこまでも真面目なところ、私は素敵だと思いますけど」
P「それは光栄ですね」
楓「で、本音は?」
P「恋人同士で賑わう街中に独り身で歩いてたら嫉妬と悲しみでどうにかなりそうなので仕事して忘れたいです」
楓「ほら、やっぱり」
P「そりゃそうでしょうよ、街中みーんな浮かれちゃって。あーうらやましなぁちくしょう」
楓「ほ、ほら」
P「ぼくだって何が悲しくてこんな日に遅くまで仕事しなくちゃならんのかって思いますよ」
楓「で、ですよね」
P「好きで仕事してるわけじゃないんですよ!いえこの仕事は好きですけどそういうことではなく!」
楓「……おぉぅ」
P「休日出勤だっていつものことです!でもこの日に仕事してるといつもより悲しくなるんですよ!」
楓「……これは」
P「でもその現実を見たら余計悲しくなるので、仕事に没頭するしかないんです!わかりますか!?」
楓「…………ワカリマス」
P「…………失礼、取り乱しました」
楓「……いえ、お気になさらず」
P「あぁぁぁぁぁ」
楓「鬱憤、溜まってたんですねぇ」
P「……最近仕事尽くめだったもので」
楓「それならなおさら、仕事してちゃだめですよ」
P「わかってはいるんです、わかってはいるんですけど……」
楓「こんな日ですし、パーっといきましょう」
P「……そうしようかなぁ」
楓「ちょうどここに、寂しい独り身がもうひとりいるわけですし」
P「……ん?」
楓「ご一緒に一杯、いかがですか?」
P「……いや、いくらなんでもそれは」
楓「えー、二人でのみに行くのなんていつものことじゃないですか」
P「今日という日にアイドルと男がふたりで、ってのはさすがにまずいでしょう」
楓「それについては大丈夫じゃないですか?」
P「どうしてです?」
楓「周りからは同僚二人が飲んでるようにしか見えませんよ」
P「どうして言い切れるんですか」
楓「……私、どうやらおっさんみたいですから」
P「……もしかしてさっきの、怒ってます?」
楓「いえ、別に」
P「でも、やっぱりまずいですよ」
楓「むぅ、まだ言いますか」
P「そりゃ、大切なアイドルのイメージを壊すわけにはいきませんから」
楓「仕方ありません。出来ればこの手は使いたくなかったんですが」
P「……何するつもりですか?」
楓「今日断られたら、私は一人寂しく飲むことになりますよ」
P「飲みはするんですね」
楓「寂しくて寂しくて、身を震わせてしまうんです」
P「店で飲むなら暖房効いてると思いますけど」
楓「心の問題です」
P「……はぁ」
楓「そして、冷たい風の吹く帰り道、風邪を引いてしまうんです」
P「体調の問題になってるじゃないですか」
楓「多くの人が行き交う中、ついに私は堪えきれなくなって……」
P「……泣かないでくださいよ?」
楓「ぶぇっくしょい!って」
P「…………えぇ…………」
楓「きっと周りの皆さんも、そういう反応になるでしょう」
P「やっぱりさっきの怒ってますよね?」
楓「アイドル高垣楓のイメージはがた落ちです」
P「自爆技過ぎませんか?」
楓「それでもいいんですか?!」
P「……わかりました、わかりましたよ。僕の負けです」
楓「♪」
P「確かに、ガス抜きは大事ですしね。さっきみたいな醜態をさらすわけにはいきませんから」
楓「あれは……正直、ちょっと引きました」
P「ひどくないですか?」
楓「あそこまで闇が深いとは思ってなかったもので」
P「……抑圧しすぎは良くないですね」
楓「まぁまぁ、今日はパーっと忘れましょう!そうと決まれば早く早く」
P「わかりましたよ、支度しますからちょっと待っててください」
楓「はーい♪」
すみません、今気づきましたが、ここR板なんですね……
スレ立てバグで飛ばされたみたいです。
これは健全SSになります、えっち要素はありません。申し訳ありません
街中
楓「でも、本当に人でいっぱいですね。見たところ、カップルばかりみたいですし」
P「……やっぱり、一人だったら耐えきれなかったかもしれません」
楓「……今は、どうですか?」
P「……まぁ、悪い気はしないですね」
楓「あら、そうですか?」
P「そりゃ、こんな美人と一緒に歩いてるんですから」
楓「!」
P「ちょっとは胸張らないと、逆に怪しまれますしね」
楓「……な、中身はおっさんかもしれませんよ?」
P「照れ隠しならもう少しかわいくお願いします」
楓「……むぅ」
お店
P「だいたい!いつもいつも大変なんですよぼくは!」
楓「そうだそうだー!」
P「『君の職場はかわいい子ばっかりでいいねー』って!!そりゃそうでしょ!!アイドルなんだから!!」
楓「そうだそうだー!」
P「『選り取り見取りでうらやましいなー』って!!ダメに決まってるでしょ!!アイドルなんだから!!」
楓「言ってやれ言ってやれー!」
P「そりゃぼくだって結構ドキドキしてますよ!!あの綺麗な人とお近づきになれたらなーとか考えますよ!!」
楓「そうだそう……えっ?」
P「でもダメなんですよ!!アイドルですから!!」
楓「か、考えてるんですか……?」
P「そりゃそうで……!!いえ、何でもないです」
楓「今もドキドキしてたり……?」
P「……ノーコメントです」
楓「けち」
P「はぁ~……すみません、愚痴ばっかりで」
楓「いえ、誘ったのは私の方ですから、気にしないでください」
P「……今日はかっこ悪いところ見せてばっかりですね」
楓「……確かに、ちょっと意外でした。普段はそんな素振り見せませんでしたから」
P「面目ないです」
楓「でも、私も今日はお恥ずかしいところをお見せしましたし」
P「……あれはびっくりしました、本当に外では勘弁してくださいね」
楓「それに、私だけが知ってるプロデューサーの姿、っていうの、悪くないです」
P「……ほら、そういうところですよ」
楓「?」
P「すぐそういう、揺さぶるようなこと言って。耐えるこっちの身にもなってくださいよ」
楓「……え、えっと、ドキドキして、ます?」
P「……めっちゃしてますよ」
楓「じゃ、じゃあ、さっき言ってた綺麗な人っていうのは」
P「……」
楓「……」
P「…………」
楓「…………」
P「……………………楓さん」
楓「は、はいっ!」
P「…………すみません、お手洗い、行ってきていいですか?」
楓「…………はい?」
P「……………………飲みすぎました」
楓「……………………やばいですか?」
P「……………………やばいです」
楓「はっ、はやく!行ってきてください!がんばって!ここじゃだめですよ!」
P「すみません……!」
楓「あ、場所、わかりますか!?」
P「なんとか~…………」
楓「いってらっしゃ~い…………」
楓「…………」
楓「…………」
楓「…………はぁ」
P「あー、あぶなかった…………」
楓「間に合ってよかったですね」
P「いやほんとに……すみません、今日はだめみたいですね」
楓「結構なペースで飲んでましたからね、仕方ないですよ。今日はお開きにしましょうか」
P「……そうしてもらえると、助かります」
楓「タクシー呼んでもらいますから、ちょっと待っててくださいね」
P「ありがとうございます……」
P「…………」
P「…………」
P「…………あぶなかった、本当に」
楓「ちゃんと帰れますか?一人で大丈夫ですか?」
P「タクシーだから家の前まで行けますよ。大丈夫です」
楓「無理、しないでくださいね」
P「ありがとうございます。……今日はすみませんでした」
楓「……気にしないでください。お水、ちゃんと飲んでくださいね?」
P「わかってます」
楓「また、お酒付き合ってくださいね」
P「……今度は、ぼくから誘うようにしますよ。埋め合わせします」
楓「楽しみにしてます……では明日、また事務所で」
P「はい、おやすみなさい」
楓「おやすみなさい」
翌日
ちひろ「……プロデューサーさん、大丈夫ですか?顔色、真っ青ですよ?」
P「……昨日、ちょっと飲みすぎまして……あー、頭がガンガンする」
ちひろ「昨日……あぁ、楓さんですか?」
P「そうですけど……あれ?なんで知ってるんですか?」
ちひろ「やっぱり」
P「……ひっかけました?」
ちひろ「まぁ、そうなんだろうなーとは思ってましたけど」
P「そうなんですか?」
ちひろ「えぇ。昨日、楓さんいろんな方から誘われてましたけど『先約があるから』って全部断ってたんですよ?」
P「…………マジですか?」
ちひろ「マジです」
ちひろ「私だけじゃなくて、たぶんみんな気づいてますけどね」
P「……あちゃぁ……」
ちひろ「その様子だと、特に何もなかったようですけど」
P「…………まぁ、かっこ悪いところばかり見せてしまいましたので」
ちひろ「みたいですねぇ」
P「あぁ、頭が痛い……」
ちひろ「でもね、プロデューサーさん」
P「なんですか……?」
ちひろ「かっこ悪いところは見せても、泣かせるようなことはだめですからね」
P「……耳も痛いです」
ちひろ「わかりましたか?」
P「……はい」
楓「おはようございまーす」
ちひろ「おはようございまーす。ほら、Pさん。切り替えてくださいね」
P「……わかってますよ」
ちひろ「じゃあ私は、ちょっと社長に呼ばれてますので」
P「いってらっしゃい」
P「おはようございます、楓さん」
楓「おはようございます。体調、大丈夫ですか?」
P「おかげさまで」
楓「溜め込みすぎは良くない、ってわかりました?」
P「嫌ってほどに」
楓「これからはちょくちょく、ガス抜きしないとだめですからね?」
P「善処します」
楓「わかればよろしい」
P「……あー、その、楓さん」
楓「はい?」
P「次回、近いうちに声かけますから」
楓「あっ……」
P「……今度は、かっこ悪いところ見せないようにしますから」
楓「……はい、楽しみしてますね」
P「……なんか、ハードル上がった気がするなぁ」
楓「そんなことありませんよ♪」
楓「プロデューサーさん」
P「……何ですか?」
楓「……待ってますからね」
以上になります。ありがとうございました。
次回以降はスレ立ての際に気をつけるようにします。
HTML化依頼出してきます。
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