僧侶の報告書 (43)



『勇者部隊潜入作戦報告書』

・作戦No472-5513
・××××.××.××~××××.××.××
・メンバー◾️◾️◾️.◾️◾️◾️.◾️◾️◾️計3名

作戦目標:ゲート解放
作戦方法:●●と●●の接触


結果:-----






経緯:所見を踏まえて“貴方”へ捧げます。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1547869677



レポート1 ー勇者ー



波の穏やかな海を進む船には、勇者、女魔法使い、戦士。


そして私、女僧侶の4人のみ。
スピード重視の中型の船だ、4人でもそんなに広く感じない。

皆、緊張して表情が硬い。しきりに勇者が明るく振る舞い、場を和まそうとするが…
やはりぎこちない。

それはそうだろう。これから始まる血まぐさな戦いを思えば、場が和むなんてことはない。
でも私も、勇者にならって愛想笑いを振りまく。彼の心遣いはその人柄の良さを表している。


彼の素晴らしいリーダーシップは、長く一緒に旅をした私は知っている。



魔王城に近づく船は穏やかそのもの。
この作戦には王都軍も陽動役として参加している。
王都軍を魔王城正面から侵攻させ、魔王軍を陽動。
手薄になった裏手の海から勇者パーティが侵入、魔王討伐。

これが最終決戦の作戦。

今頃魔王城前はとてつもない戦いになっているだろう。



でも、この時私は知っていた。









この陽動作戦が失敗に終わるのを。




船体に大きな衝撃が走ると、海から大量の魔物が現れた。
勇者の眼つきが鋭くなり、全員が流れるように戦闘体制へ移行する。


さすがに数え切れないほど一緒に戦った仲間だ、突発的なトラブルや奇襲にも慣れたもの。

私は一瞬驚きと戸惑いを装い、勇者の指示に従い魔物と戦う。

霧に紛れて魔王軍の船も多数現れる。
「待ち伏せされてる……」
あまりの敵の多さに、さすがに勇者も気がついた。

陽動を行った上での裏からの奇襲作戦。
敵に暴露てれば、袋叩きされるのはこちらの方だ。

「なんで作戦が暴露てる?!」
群がる魔物を焼き払いながら、女魔法使いが叫ぶ。
戦士はいつも通りの無表情だが、勇者には少し焦りと困惑の表情が見て取れる。

陽動作戦に参加した仲間が心配なのだろう。
魔王軍の正面から戦う陽動作戦。ただでさえ壊滅的な被害が予想されるのに、敵に暴露ているとなれば大被害は免れない。



勇者は甲板の敵を一掃すると船首から周りを見渡し、目を瞑り短く詠唱する。




ピリッと周囲の魔翌力が歪む。



光の魔法だ。

勇者の身体が直視出来ないほど光りだすと、無数の光源体が放たれる。

私は眩しさに目を背けていたが、気がつくと船の周りの敵は一掃されていた。
作戦序盤から火力全開。最終決戦だ、出し惜しみする必要はない。

「みんなっ!! いくぞっ!!」
勇者の雄叫びに皆気合いが入る。



××××.××.×× 09:50
魔王城裏手。

勇者パーティは魔王城へ進入。



「結界がなくなっている」
女魔法使いがぽつりと呟く。
「彼が上手くやってくれたんだ」
と勇者は微笑む。
別部隊が結界を解く手筈になっていた。問題なく城へ入ることが出来る。


「敵がいないですわっ」
私は間の抜けた明るい声を出すと、勇者は呆れたように微笑む。
「全くいない訳では無いと思う、ザコはいないだろうけど油断しないで」
「ひぃ……そ、そうですわね」




そんなことわかっている……が、天然美少女が私の表の顔だ。

勇者パーティへ潜り込む為に今日のこの日まで完璧に演じてきた。
無駄に怯え、綺麗事を並べ、愛想を振りまく。今では何も意識せず天然美少女を演じることができる。



このトボけた美少女を演じるのはこの日で最後だ。勇者パーティに潜入し1年半。
“貴方に与えられた任務”はこの最終決戦にて完了する。

長かった。
本当に永かった…

長過ぎた。




「あれは……?」
勇者の目線の先には、陽動作戦に参加した兵士が襲われていた。

助けましょうっ!と私が言い終わる前に勇者は動き出していた。
あっという間に光の魔法で敵を消滅させる。

人助けする時は後先考えない。
そうでなければ務まらないのだろうか、勇者というのは。


「君たち、怪我はないですか?」
「……!」

助けてやった二人の兵士は目を丸くしている。
まったくなんで、こんな城の内部にいるのか。陽動作戦は魔王城前に敵を引き付けるのが任務のはず。

「勇者様……」

「今回復しますわ」
怪我してる様子ではなかったが、私は僧侶として振舞った。兵士達はどう見てもレベルが低い。
おそらく魔王城内部の敵では瞬殺されるだろう。
勇者は当然のように、彼らを安全な所へ逃がそうと言った。


まあ、そうなる気がした。
勇者は人助けしてなんぼだ。

「ちょっと待てよ!」
兵士の一人が急に怒り出す。
勇者の為の陽動作戦で仲間が沢山死んだ。今更助けるってなんなんだっ!と。


こいつは志願して参加したわけじゃないのか。
捨て駒兵士達も事情があるのかもしれないが、実に面倒だ。
こいつらを置き去りにしたい。

「この作戦で、あんた達の為に何人の兵士が死んだと思ってんだ! 今更助けたいだと? ふざけんなよっ」
怒る兵士は身分をわきまえず怒鳴り散らす。
勝手言いやがって、こっちは今まで何回命賭けたと思ってんだ。
いわれのない罵倒を受けても勇者は笑顔で受け流す。

「貴方の言うことはもっともです。ちょっと話を聞いてください」

僕が説得すると小声でいうと、勇者は怒った兵士を連れて隣の部屋へ入っていった。
“勇者”というのは実に非効率的だと思う。
面倒ごとに首を突っ込み、分け隔てなく人助けをし、自己犠牲をする。
いったい何の得があってそんなことをするのだろう?

本当に理解に苦しむ。

求められなくても人を助け、悪を許さず、善を貫く。
理解できないからこそ凄いと思う。
私にはできない。




ただ……ひたむきな姿に好感を覚える。
彼はずっとこの調子だ。



彼らを騙し続け

一緒に戦った日々が

長かった旅が




勇者への情を生んでしまった。
任務が完了したとき、彼らは死ぬだろう。





これは裏切り以外の何ものでもない。

レポート8 ー滅びー


勇者は妙に納得した表情で見つめてくる。

なんで?
勇者は知っていたの?

私の裏の顔を…

「キミはアイツの道具じゃない」

「…」

「その涙が何よりの証拠だ」

「……」

「知っていることを教えてくれ。キミの任務、ゲートとはなんだ?アイツの目的…話してくれ」

「…殺してください」

剣士は舌打ちすると、剣を抜き私に向ける。
「勇者よ、俺様がコイツを拷問してやる」

「まて剣士。彼女は仲間だ」

「寝ぼけてんのかっ?!この状況で何で信じられんだ?」

「だめだ。彼女に危害を加えることは許さない」

「コイツは敵だろうがっ!」

「敵じゃないっ!」


勇者と剣士の言い合いが続く。
やめて。

勇者、あなたは間違ってる。
紛れもなく私は敵なのだ。

私は話さない。たとえ拷問されても、殺されても。

「よし、じゃあ逆だな。おい裏切りもんよ、話さねぇっていうなら」





「俺様が勇者を殺す」

「な?!」
ドゴっと鈍い音。剣士は勇者にボディブローをかまし、うずくまる彼の手に剣を突き立てる。

「ぐああああっ」

「おめー勇者のことが好きだろ?俺様は殺れる男だ。知ってんだろ?目的のためには犠牲を厭わねぇ」

「---ッ」

「話せよ」

「私は…話せません。たとえ拷問されても。だから、殺してください」

「ハッ…それじゃ何も解決しねぇんだよっ」

剣士は勇者を蹴飛ばす。

勇者は抵抗しない。
なんで??!

「…」

「ぐぅ……僧侶、頼む話してくれ。仲間だろ?」

演技じゃない。本当にダメージを受けている。
勇者は自分で回復魔法が使える。でも使わない。
剣士が勇者を殺すなんてバカげてる。ありえない。
私に話させようと茶番を演じてるのだ。



「さぁ話せよっ」

剣士の眼には狂気が映る…。この男は殺る。
これまでの旅でもそうだった。
仲間や…民の犠牲を厭わない男。


「…」

「5」

剣士は楽しそうにカウントを始める。

「私を殺してください」

「だめだ、勇者を殺す。4ッ!」

剣士は勇者の顎を蹴り上げる。

「ぐはぁっ」

なんで避けないの?!
勇者だって黙って殺される訳がない。

勇者はペッと口から血を吐きながら言う。
「僧侶、たのむ」

「3」

無抵抗の勇者はジッと私を見つめる。


この瞳を私は知っている。
アイコンタクト。

その瞳が語るのは




信頼。



まさか、勇者はこのまま無抵抗に剣士に殺されるのを待っているというの?


なんで?

勇者は真っ直ぐ目を離さない。



信頼の眼差し。

そうか。
私が勇者を助けるために話すと信じている眼だ。


「2。ほら、勇者が死ぬぞ?」

「…僧侶」

剣士の剣が勇者の首元に近づく。
胸が締め付けられるのを感じ、そんな私を勇//.///.////////////////
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///
////////////////////////
////////言葉より瞳は////////した//////

私は



私は…











私は



勇者に死んでほしくない。


「1ッ!」

「ま、まって!」











神よ……お許しください。


「もう一度…」


「……聖剣と魔剣が交われば、再びゲートは閉じるはずです」


その言葉を聞いた勇者は安堵の表情を浮かべ、大きく息をつく。
任務や、ゲートについて説明すると勇者は「///りが/////////とポツリと私にだけ聞こえる声で言った。
勇者は回復魔法をかけてもらうと立ち上が////////////
////////



///////
////////////////か勇者」

「ああ……」

勇者と剣士はゲートへと消えてい////////////


////////
////


残された私はその場に///
////は//た////
////////////…貴/
/0///////////

滅び////…•
////////

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騎士団長「……」

騎士A「団長、読み終わりました?」

騎士団長「ええ。最後は破れていて解読できないわ」

騎士A「しょうがないですよ」

騎士S「世界が崩壊した今、それが残ってただけでも幸運だ」

騎士A「この世界がアンデットだらけになったのは、この僧侶のせい?」

騎士団長「……ちがう」

騎士達「……この報告書の神…僧侶の言う“貴方”って誰のことでしょう?」

騎士団長「アイツだ。この滅びた王都に報告書があるのが何よりの証拠」

騎士E「……ヴァルキリー団長。行きましょう、ここも安全ではない」

騎士団長「勇者はきっと生きている…」




騎士団長「アイツは私が倒す」


[僧侶の報告書 END]


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魔界側の話


ありがとうございました。


30年前の「少年勇者」=現代の中央王都「国王」=僧侶の信奉する「貴方」=騎士団長が倒すべき「アイツ」かな?

騎士団長はおそらく「ついてけねぇ」の女騎士、騎士ASは「死にたくねぇ」の兵士AS
剣士(西勇者?)が聖剣拾ってゲート追っかけ魔王(先代?)を討つのが「やることねぇ」の冒頭
「やることねぇ」の聖剣士は王都勇者かな?そう考えるとだいたい話がつながると思うけど

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