――おしゃれなカフェ。つまりは、いつものカフェ――
北条加蓮「いつもの定食なのに、なんだかすごく美味しい……」
高森藍子「ほら、頑張った後のご飯だからじゃないですか?」
加蓮「そうなのかな?」
藍子「ふふ、きっとそうですよっ。加蓮ちゃん、すっごく頑張ったんですから。……あむっ」
加蓮「あむあむ……ふうっ。白ご飯が美味しく感じるのは大人の証、とかお父さんが言ってたなぁ」
藍子「今の加蓮ちゃんは、大人の加蓮ちゃんですね♪」
加蓮「子供にプレゼントを配るサンタが子供だったら変だもんねっ」
藍子「……確かにっ」
加蓮「…………ところでなんでいつものカフェなのよ」
藍子「ええっ、いまさら!?」
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レンアイカフェテラスシリーズ第100話です。
<過去作一覧>
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「膝の上で」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「最初にカフェで会った時のこと」
~中略~
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「違うことを試してみるカフェで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「12月中ごろのカフェで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「寒い冬のカフェで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「灰を被っていた女の子のお話」
前回のあらすじ:12月25日の朝、加蓮と藍子は病院で子供達にプレゼントを配ってあげました。お昼からは、一緒にクリスマス探しです!
「「ごちそうさまでした。」」
加蓮「分かった」
藍子「ふぇ?」
加蓮「藍子は私を他のカフェに連れて行きたくないんだ」
藍子「……へ?」
加蓮「私が最近ちょっとカフェのこと詳しくなって、カフェマスター藍子ちゃんとしての立場が危ういから、私に教えたくないんだ」
藍子「え、えっ? ……ええっ!?」
加蓮「あ、違う?」
藍子「違いますよ!?」
加蓮「そっか。じゃあ店員さんとグルになって、加蓮ちゃんをここに何度も来させようっていう陰謀――」
藍子「それも違いますからね!?」
藍子「加蓮ちゃん、体だけじゃなくて、こう、大きなLIVEが終わった後って感じで疲れているみたいだったから。いつもの場所の方が落ち着くかなぁ、って……」
藍子「疲れている時に初めての場所に行ったら、余計疲れちゃうかな? って、思ったんです」
藍子「だから、陰謀とか……そういうつもりじゃないですっ」
加蓮「……くくく」
藍子「……あ」
加蓮「知ってるー♪」
藍子「…………」ブスー
加蓮「ほっぺた膨らませても可愛いだけだよー? ……目はちょっと怖いけど」
加蓮「いつも色々考えてくれるよね。ありがと。だけど最後のは余計な気遣いだよ?」
藍子「最後の?」
加蓮「疲れている時に初めての、ってヤツ。疲れてる時だからこそ、そういうのでテンション上げたくならない?」
加蓮「いつも食べてないお菓子を選んだり、髪型を変えてリフレッシュしてみたり」
藍子「あ~」
加蓮「ちょっと違う場所にも行ってみたかったな?」
藍子「……ま、まだまだこれからですから。本番は、この後ですっ」
加蓮「ふふっ」
藍子「加蓮ちゃんは、試せる髪型がいっぱいあるから、リフレッシュもできそうですねっ」
加蓮「うらやましい?」
藍子「実は、ちょっぴり?」
加蓮「そっかそっか♪」
加蓮「加蓮ちゃんのヘアメイク術~お出かけの気分転換から暗い気分のリフレッシュまで~……」
加蓮「……やめた。なんかキャッチコピーがおばさんくさい」
藍子「そうですか……? 私は行ってみたいなって思いましたよ」
加蓮「それは身内贔屓ってヤツだよ。それか、藍子がおばさんくさいか」
藍子「そうなんでしょうか……って、だから、私と加蓮ちゃんは同い年ですっ」
加蓮「知ってるー。さて、このままだといつもみたいにのんびりしちゃうから……」
藍子「もう行きますか?」
加蓮「行こっか。外は寒そうだし、途中で暖かい飲み物でも買って――」
藍子「そう言うと思って、既に店員さんに注文済みです♪」
加蓮「おっ?」
藍子「レジまで行きましょ?」
加蓮「店員さん。めりくりー」
藍子「めりくり~♪」
加蓮「藍子。今のもっかい」
藍子「えっと……めりくり?」
加蓮「違う違う。もっとこう、ふんわりって感じ」
藍子「め、めりくりっ」
加蓮「違うってば。ゆるふわはどこに置いてきたのよ! 藍子からゆるふわを取ったら何が残るの!?」
藍子「そこまで言わなくてもっ。それに……今日は、ゆるふわは最初から封印してきました!」
加蓮「え?」
藍子「ほら、午前も午後も、いろいろ歩いたり、やることがいっぱいあるって分かっていましたから……」
藍子「だから今日は、ゆるふわは封印ですっ」
加蓮「……確かにいつもよりてきぱきしてるけど、封印してるようには見えないなぁ。店員さんはどう思う?」
藍子「……? あ、あの、店員さん……? どうして、目を合わせてくれないんですか……?」
加蓮「ところで、藍子が飲み物がどうって言ってたけど――」
加蓮「キッチンの方に行っちゃった。……あ、戻ってきた」
加蓮「なるほどー。紙コップ入りのだね。この前も渡してくれたヤツ」
藍子「加蓮ちゃんの疲れがとれるよう、うんと甘いココアを淹れてもらいましたっ」
加蓮「お持ち帰り、新しく始めるの? ……ふうん。とりあえずやってみる感じなんだ」
藍子「思いついたことを、とりあえずやってみるのって、いいですよね。もしかしたら、みなさん喜んで注文されるかも?」
加蓮「冬は絶対重宝するよね。夏もかな? じゃ、ありがとね店員さん。ほら藍子、行こ――」
藍子「ああっ、待って。お金、お金……」
――外――
藍子「いいですか、加蓮ちゃん」テクテク
藍子「ただ歩くだけをお散歩とは言えないんです。色々な場所に行くために、準備をして、下調べもして」テクテク
藍子「それで初めて、お散歩をしたって言えるんですっ」
加蓮「うんうん」
藍子「今日も、ばっちり計画を立ててきちゃいましたからね。行きたいところがあったら、どんどん言ってくださいっ」
藍子「おすすめのお店のリストなんかも作ったんですよ。お母さんと相談して完成させたのが、これです!」ジャーン
加蓮「相変わらず用意ばっちりー。何、藍子ってそういうタイプだっけ。あの看護師さんにでも影響された?」
藍子「ひょっとしたら……そうかも?」
加蓮「そっか」テクテク
藍子「……え、あ、あれっ? 加蓮ちゃん、どうしてちょっぴり早歩きに……ま、待ってっ」パタパタ
加蓮「別にー」
加蓮「じゃあさ、ちょっと「歩いてみたい!」って思い立った時はどうするの? そういう時も、ばっちり準備するの?」
藍子「そういう時は――」
藍子「なりゆきですね。それもまた、お散歩ですっ」
加蓮「うん。よかった。藍子は藍子だった」(隣に並んで歩調を遅くする)
藍子「???」
藍子「看護師さん、撮った写真のうち何枚かを、私にも送ってくれるそうです」
加蓮「藍子の分も?」
藍子「はい。現像して、事務所の方に写真を送ってもらえるみたいなので……。その時は加蓮ちゃん、一緒に見ましょうね♪」
加蓮「……そ、それ事務所で見るのやめない?」
藍子「えっ?」
加蓮「いやほら……やってる時はなんとも思わなかったけどさ、後から考え直してみたら……ちょおっと私のキャラじゃなかったかなー、なんて」
藍子「あはは……。加蓮ちゃん、すごくお姉ちゃんっぽかったですもんね」
藍子「でも、送られてくるのは動画ではなくて写真ですよ。あの時の加蓮ちゃんがぜんぶ知られちゃうことは、ないと思いますっ」
加蓮「……写真をダシに何もかも喋りまくる誰かさんがいるからなー」テクテク
藍子「また早歩きにっ。そんな、ぜんぶを喋ったりしませんよ~」パタパタ
藍子「あ、猫さんっ」
加蓮「猫だ。首輪……は、ついてないね」
藍子「野良猫さんでしょうか。でも、見ない顔の猫さん……。新しい方かな?」
加蓮「アンタこの辺の野良猫事情を全部把握してんの? ……あっ、私の足元に来た」
加蓮「こらー? 私は何も持ってないよー? 鼻をこすりつけても何も出ないってばっ」
藍子「ふふっ。加蓮ちゃんから、美味しそうな匂いがしてるのかも?」
加蓮「してないってば……」
藍子「じ~」
加蓮「こらっ。靴を舐めようとすんなっ」
藍子「じぃ~」
加蓮「……何?」
藍子「加蓮ちゃんって、おいしいのかな~って……」
加蓮「……………………」テクテクテクテク
藍子「冗談、冗談ですからっ」パタパタ
――大通り――
藍子「クリスマスを、さがすぞ~っ」
加蓮「…………」
藍子「……そ、そこは、お~っ、って言ってください」
加蓮「いや……。急に言われても。そういうのは事前に言ってくれないと」
藍子「ごほん。では、加蓮ちゃん。さがすぞ~って言ったら、お~っ、って言ってくださいね」
藍子「クリスマスを、さがすぞ~っ」
加蓮「…………」
藍子「加蓮ちゃんっ!!!」
加蓮「わあっ。そこまでマジギレされるとは思わなかった」
藍子「……」プクー
加蓮「もう。ごめんごめん。ごめんってば」
藍子「……」プクー
加蓮「っと、信号だね。んー……じゃあ、とりあえずそこのコンビニから行ってみよっか」
藍子「……。……コンビニ?」
加蓮「基本中の基本。コンビニには、クリスマス限定スイーツがあるでしょ?」
藍子「あ~……。確かに、それは盲点でした」
加蓮「でしょ?」
藍子「……ふふっ」
加蓮「む。もうちょっと悔しがりなさいよ」
藍子「だって、……なんだか嬉しくって♪ 加蓮ちゃんが、私の気づかなかったことに気づいてくれたことが、なんだか嬉しくて。えへへっ」
加蓮「……あはは。すーぐ機嫌が変わる」
藍子「加蓮ちゃん。私、外で待っていてもいいですか?」
加蓮「外で?」
藍子「はい。一緒に選ぶのも楽しいですけれど、加蓮ちゃんが何を選んでくるかなって、予想しながら待つ時間もとっても楽しいから……」
加蓮「えー、微妙にプレッシャー。じゃあ行ってくるね? あ、ココア持ってて」ハイ
藍子「行ってらっしゃいっ」ウケトル
――コンビニ――
<らっしゃせー
加蓮「さて……」
加蓮「……そういえば変装とかしてないけど大丈夫かな。しかも私は話題になっちゃってるかもしれないし」
加蓮「なんて。さすがに自意識過剰かなっ」
加蓮「最悪服でも買うか、サングラスとか伊達メガネとか即興で買って変装すれば――」<ブルッブルッ
加蓮「……」ガサゴソ
加蓮「……"眼鏡魔神さんからメッセージが届いています"」
加蓮「未読無視」
加蓮「やっぱスイーツっていっぱいあるよね……。予想して待つ、かぁ」
加蓮「藍子、何を予想してくるかな? うーん」
加蓮「……ゴホン」
加蓮「食べながら歩くのなら、片手で食べられるものがいいですよねっ。例えば……シュークリームとか!」
加蓮「あっ、でも、ここに甘いココアがあるから……甘さひかえめなものもいいかも?」
加蓮「ビターチョコって気になっていたんですっ。普段、あまり食べないから――」
加蓮「……」
加蓮「……」
加蓮「…………隣の人にすごい目で見られた」
加蓮「シュークリームでいっか。クリスマスバージョンらしいし」
加蓮「列の後ろに並んでっと。……さっきの人、私が独り言を喋ってたからすごい目で見てきたのかな。それとも私が藍子っぽく喋ってたから?」
加蓮「……あ、列が進んだね」
加蓮「ん?」
加蓮「クリスマス……。スイーツって言って入ってきちゃったけど、……こういうのもありかな?」
――大通り(コンビニの外)――
加蓮「ただいま、藍子」
藍子「おかえりなさいっ」
藍子「この匂い……? やった♪ 予想、当たりましたっ」
加蓮「え?」
藍子「それ、コンビニのレジのところに売っている焼き鳥ですよね?」
加蓮「……予想してた?」
藍子「はい。きっと加蓮ちゃんのことだから――」
藍子「どのスイーツにするかいっぱい悩んで、とりあえずシュークリームにして」
藍子「だけどレジに行ったら、焼き鳥が売っているから――」
藍子「七面鳥を連想して、それに変更っ」
藍子「そんな感じで選ぶかなって思っていました。……どうですか? 当たってますか?」
加蓮「…………両方とも私が食べてやるっ」ベリベリ
藍子「わ~っ! か、片方ください! くださ~い!」
加蓮「クリスマスっぽいもの……。見つかるようで、見つからないね」
藍子「意外と見つかりませんよね。でも、だからこそ……」
加蓮「見つかった時に嬉しい、だよね?」
藍子「そういうことです!」
加蓮「クリスマスー、クリスマスー」
藍子「あっ、加蓮ちゃん。見て、見て」クイクイ
藍子「デパートの垂れ幕のところ。クリスマスリースがつけてあります!」
加蓮「ホントだ。上なんて見てなかったから気付かなかった……」
藍子「じ~……」
加蓮「……見上げたまま立ち止まっちゃってる。まったく……」
加蓮「あ、ほら。通る人の邪魔になるから。端に寄って、それから好きなだけ見上げてなさい?」
藍子「ありがとう、加蓮お姉ちゃん♪」
加蓮「……」ペシ
藍子「痛いっ」
加蓮「デパートはいいの?」
藍子「もうちょっと、外を歩いていたいなぁって」
加蓮「そっか。……焼き鳥美味しー」
藍子「たまには、こういうものもいいかもしれませんね」
加蓮「みんなにも教えてあげたいね。コンビニの焼き鳥は美味しいよ! って」
藍子「それで、みんなが買うようになって……」
加蓮「事務所に持ってきて――」
加蓮「……」
藍子「……」
加蓮「……消臭剤でも買っていこっか」
藍子「あはは……」
――路地――
加蓮「大通りからちょっと離れて、行ったことのない路地に入って。こーいうところに、見つけたことのない何かがあるんだよねー」
藍子「~~~♪ ~~……あっ!」
加蓮「早速カフェ発見ー。メニューは……どれどれ、」
藍子「入りましょうっ加蓮ちゃん!」ビュン!
加蓮「……う、うん。いいけど」
――にぎやかなカフェ――
<ザワザワ
<ワイワイ
<ガヤガヤ
藍子「パンケーキをおふたつ、お願いしますっ」
加蓮「お願いします。困った時のパンケーキ」
藍子「あはは……。別に、困ったわけでは。メニューの写真が、すごく美味しそうだったのと……」
藍子「初めて来たカフェでは、まずコーヒーとパンケーキを……ですよね?」
加蓮「それ私が言ってたことー」
藍子「はい。カフェのプロ・加蓮ちゃんによる、カフェの……ええと、指導? ですっ」
加蓮「私がプロなら藍子は何になるのよ。神様か何か?」
藍子「もし私が神様だったら……加蓮ちゃんには、いっぱい優しくしてあげますね……」
加蓮「……振った私も悪かったけど急にマジトーンになるのやめよ? あと言い方も」
加蓮「クリスマスの……こういう場所? カフェって、もっと甘ったるいイメージだったなぁ」
藍子「甘ったるい」
加蓮「カップルがラブラブしてたり?」
藍子「な、なるほど。らぶらぶですか」
加蓮「でも全然そんなことないよね。みんな、まるでパーティーみたいにワイワイしてる」
藍子「ですね。せっかくのクリスマスです。お昼の間はみんなで楽しく過ごしましょうっ」
藍子「その……ら、らぶらぶなのは……」
加蓮「ラブラブなのは」
藍子「夜に、とか――」
藍子「なっ、なんでもないですなんでもないです!」
加蓮「……わぉ」
加蓮「今からでもモバP(以下「P」)さんに、藍子が夜に会いたがってたと」
藍子「だめ~~~~~っ!」
加蓮「冗談冗談……あっ」
<ザワザワ?
<ザワザワ!
<あれって、ひょっとして藍子ちゃん……?
<じゃあ向かいに座ってるのって……!
加蓮「やっば」
藍子「あ、あはは……。えっと……変装、は、今すぐはできないからっ、えっと、……そうだっ」
藍子「き、きょうは、たのしいひですね。ほうじょうさん」
加蓮「…………どっちにしても名字呼んだら意味無いと思うけど?」
藍子「そうでした!」
――大通り――
加蓮「パンケーキを大急ぎで食べて逃げてきました、っと」
藍子「なんとか、話しかけられることはありませんでしたね……」
加蓮「もう。藍子がやらしいこと言うから」
藍子「や、やらしっ……かれっ、加蓮ちゃんがその、変なことしようとするから!」
加蓮「……やらしいの後に変なことしようとするって言われるとなんかもう……」
藍子「?」プクー
加蓮「なんでもー。ほらさ。何事もなかったんだし、次にカフェを見つけた時には静かにしよ?」
藍子「はぁい……」
藍子「やっぱり、変装が必要なのかな?」
加蓮「かもね。ここでさっき届いたメッセージを開いてみましょう」ポチポチ
藍子「メッセージ?」
加蓮「眼鏡魔神さんから。なんかね、心の中で"サングラスとか伊達メガネとか……"って思ったら、メッセージ飛んできた」
藍子「えぇ……」
加蓮「ふんふん。オススメのメガネショップだって。お、ここ結構近い。行ってみる?」
藍子「行ってみましょうっ」
加蓮「その前に返信しとこ。"リストはありがと。でもデート中! 邪魔すんなっ"……よしっ」
藍子「……そ、それだとなんだか誤解されちゃうんじゃ?」
加蓮「大丈夫大丈夫♪」
――メガネショップ――
<いらっしゃいませ~!
加蓮「……出迎えてくれた店員さんが鼻眼鏡をつけてるのって、クリスマスポイントに入る?」
藍子「い、一応、クリスマスなの……かな?」
藍子「加蓮ちゃん。この辺はどうでしょうか? 加蓮ちゃんのクールなイメージに――」
藍子「加蓮ちゃん?」
加蓮「や。ごめん。ひょっとしてあの眼鏡魔神が隠れて見張ってたり……とか考えちゃって。つい」
藍子「あはは……」
藍子「……!」キュピーン
藍子「もう、加蓮ちゃん」ペシ
加蓮「いたっ。……え、何?」
藍子「加蓮ちゃんは今日のことをデートって言うのに、別の人のことばっかり考えるんですねっ」
藍子「そういうの、ええと、……よ、よくないと思いますっ」
加蓮「…………」
藍子「ぷく~」
加蓮「……可愛いだけだよ?」
藍子「ぷく~!」
――大通り――
<ありがとうございました~!
加蓮「これでよしっ」
藍子「最初に選んだ、クールな眼鏡にしたんですね」
加蓮「まあね。ファッションとかじゃなくてただの変装用だし」
加蓮「……って、藍子。お揃いの選んだの?」
藍子「えへへ……。これをつけていたら、加蓮ちゃんの気分になれるかな……なんてっ」
加蓮「じゃーちょっとやってみて。はい、普段の加蓮ちゃんのモノマネ」
藍子「え、えっ? ええと……」
藍子「そ、そんなんじゃないんです――ないんだからっ。そういうつもりじゃない、からっ!」
加蓮「何そのツンデレキャラ!? それ私じゃないんだけど!? 奈緒の役目だよそれ!」
藍子「? 最近の加蓮ちゃんを真似してみたつもりですけれど……」
加蓮「うぐ……! 微妙に否定できない……!」
藍子「あっ……!」
加蓮「?」
藍子「今、すれ違った子、クリスマスプレゼントを持ってたっ」
加蓮「子? あ、ホントだ。クリスマスのラッピングだね」
藍子「クリスマス、また見つけちゃいました♪ 鼻眼鏡と、プレゼント!」
加蓮「よく見つけれたね」
藍子「今日、子どもたちといっぱい触れ合ったから、つい目で追ってしまう癖がついちゃってっ。それで、気がつけたのかも……?」
加蓮「サンタさんの目線?」
藍子「サンタさんの目線っ♪」
加蓮「じゃあ私は、サンタの目をしてた藍子を見つけたってことで。わーい、私もクリスマス見つけたー♪」
藍子「それはずるですっ」
>>30 申し訳ございません。5行目の加蓮のセリフを修正させてください。
誤:加蓮「まあね。ファッションとかじゃなくてただの変装用だし」
正:加蓮「まあね。ファッションとかじゃなくて、度の入ってないただの変装用のだし」
――落ち着いた感じのカフェ――
加蓮「……」ソワソワ
藍子「加蓮ちゃん、やっぱりそわそわしてる……」
加蓮「う、うっさい。……表看板がすごいポップだったのに、中が大人っぽすぎて慣れてないだけっ」
加蓮「あとほら、最近いつものカフェでも他にお客さんいないことが多かったから……なんか落ち着かないの」
藍子「あ~……。パンフレットによると、ここは夜バーになるカフェだそうですよ」
加蓮「パンフレット?」
藍子「はい、加蓮ちゃん。どうぞ。入り口のところに置いてありましたっ」
加蓮「さんきゅ……って、いいの? もしかしたら、いつかまたコラムを書いたりするのに使うかもしれないよ?」
藍子「じゃんっ。ちゃんと2部取っているので、大丈夫です♪」
加蓮「おぉー。……おかしい。藍子が賢い子に見える」
藍子「おかしいってどういうことですかっ」
加蓮「これもクールっぽいメガネのお陰かな?」
藍子「お店を教えてくれた春菜ちゃんには、今度お礼を言わないといけませんね」
加蓮「あっれー? デート中に名前を出したら駄目なんじゃなかったのー?」
藍子「あっ……。そ、それは、加蓮ちゃんがあまりにも何回もデートって言っていたからで……」
加蓮「くくくっ。じゃお礼ってことで、メガネをかけた藍子ちゃんの写真でも送っちゃおっか」
加蓮「ついでに私のメガネ自撮りも撮っておくっとこ。……撮って送るならもう少し考えて選んだ方がよかったかな?」パシャ
加蓮「それに、よく考えたらこっちの方が楽しいよね」
藍子「こっちの方?」
加蓮「みんなのいる事務所から離れて、みんなの話を色々しちゃったりする感じの」
加蓮「藍子が話してくれる未央とか茜の話って、実は結構好きなんだよね」
藍子「私も。加蓮ちゃんの教えてくれるお話、好きですよ」
加蓮「高森藍子ちゃんがユニット仲間に嫉妬心を向けた事件」
藍子「それはもう言わないで~~~~っ!」
加蓮「ふふっ。……ほら、駄目でしょ。藍子。ここはいつものカフェとは違うんだから」
加蓮「あっち。店員さんがこっち見てるよ。こっち――」
藍子「……そうでしたね。気をつけなきゃっ……」
加蓮「……あの店員さんちょっとこっちのこと見過ぎじゃない? これもしかして私達のことバレて――」
藍子「ありがとう、加蓮お姉ちゃんっ♪」
加蓮「それさっきもやったでしょうが!」ペシーン!
藍子「痛いっ。か、加蓮ちゃん。大声出しちゃ駄目ですっ」
加蓮「っと」
加蓮「加蓮お姉ちゃんは1日1回までなんだよ?」
藍子「そうだったんですか? ふふ。さっきから加蓮ちゃん、すごく頼もしいお姉ちゃんって顔に何度もなるから……ついっ」
加蓮「まだサンタモード抜けきってないのかも」
藍子「そうだ。どうせなら、もう1回サンタさんになってみてもいいかもしれませんっ」
加蓮「何をさらっと……だから。病院でどうこうっていうのはその……絶対NGじゃないけど、ちょっと考えさせてよ」
加蓮「いやそれ以前に今日急にやりたいって言ってもできる場所がないでしょ?」
藍子「違いますよ、加蓮ちゃん。病院ではなく、私たちの事務所ですっ」
加蓮「事務所?」
藍子「はい。事務所でなら、サプライズでプレゼントを持っていっても大丈夫ですよね?」
藍子「今日、誰が事務所にいるか確認して、喜びそうなプレゼントを選んで、ってやれば――」
加蓮「あー……。ストップ。張り切ってるところごめんね? ちょっとそれはパスで」
藍子「残念。でも、ちょっぴり急ぎ過ぎちゃいましたね」
加蓮「藍子の、ううん、藍子達のエネルギーは参考にしたいけどさ。こういう時には色々考えなきゃいけないの」
加蓮「例えば、同じことを大人組の誰かがしてるかもしれないでしょ?」
藍子「確かに……。そういえば、早苗さんや瑞樹さんが何か計画を立てていたような気が」
加蓮「ね。そこに私達がサプライズで入っていっても邪魔にしかならないの」
加蓮「こーいうことをやりたいなら、事前に打ち合わせて。あっちがサンタをやるので、こっちはケーキを作ってあげる……とか、そういう感じでやらなきゃ」
藍子「おお~……」
加蓮「わかった?」
藍子「はいっ」
加蓮「それに、今日は藍子と一緒に街をぶらぶらするって決めてるんだから」
藍子「……そうでしたね♪」
加蓮「事務所になんて行ってみなさいよ。すーぐ藍子を返せって言われるんだから」
加蓮「で未央が「あかねちん、いけぇーっ!」とか言って、茜が突撃かましてくるしっ」
藍子「くすっ……。未央ちゃんが、そんなことをしていたんですか?」
加蓮「いや勝手な想像」
藍子「でも、未央ちゃんならやってしまいそうかもっ」
加蓮「藍子も弾にさせられないように気をつけなさいよ?」
藍子「は~いっ」
加蓮「……いや、逆に未央に藍子を弾にさせて私に突っ込ませたらいいんじゃ……? そしたらそのまま藍子を奪いされるし……」ブツブツ
藍子「加蓮ちゃん? ……あの、なんだか不穏な言葉が聞こえたんですけれど」
加蓮「気のせい気のせい。藍子を弾にした対未央ラリーバトルとか考えたりしてないから」
藍子「私、何をさせられるんですか……!?」
加蓮「こういうカフェではクリスマスとかやらないのかな? それっぽいのはないよね。……慣れたら、逆にこういうところも落ち着けて好きだけど」
藍子「ここではしていないみたいですね。他のカフェでなら、色々な工夫がされていますよ」
藍子「サンタクロースのお人形を窓際に置いたり、クリスマスツリーを入り口のところに置いたり、トナカイのクッションを設置したり――」
藍子「それくらいでしょうか。それこそ、今日の病院の壁みたいにリースをいくつも使って……ってことは、あまりないかな?」
加蓮「あれは建物っていうよりイベント会場って感じだったもんね」
藍子「それもそうですね。カフェでそういうイベントをやるというお話は……聞いたことはありますけれど、行ったことは、残念ながらありませんっ」
加蓮「さっきの例えって、藍子が実際に行ったことあるカフェのこと?」
藍子「はい。そうですよ~」
加蓮「さすがカフェマスター。その中で一番のオススメとかって」
藍子「そうですね……。加蓮ちゃんなら――可愛いお人形がいっぱい置いてある、あのカフェかな? サンタクロースのお人形も、その時に見たんですよ」
加蓮「……待ちなさい。なんで私なら人形ってことになるの」
藍子「えっ? だって、加蓮ちゃん、なんだか新しいことや、新しい場所に行きたがってるのかな? って感じだから……」
加蓮「…………」
藍子「今、おすすめのカフェを聞いたのって、そういうことですよね?」
藍子「クリスマスツリーのカフェは、いつものカフェと雰囲気が似ていて……トナカイのクッションのカフェは、席が加蓮ちゃんの家の雰囲気にちょっと似ていましたっ」
藍子「だから、それよりは可愛い人形のいっぱい置いてあるカフェを――」
藍子「……あ、あれ? 加蓮ちゃん? なんだか顔がどんどん険しく……!?」
加蓮「……」ブスー
藍子「ああっ。膨れちゃってる……」
加蓮「……まぁ、今さらか」
藍子「いまさら……?」
加蓮「ね、そろそろ出ない? 体力は十分だし……今は、色々歩きたい気分だもんっ」
藍子「はいっ。あ、それならお人形のカフェにも行ってみますか? 確か、ここからなら駅まで歩いて、電車で3駅のハズです」
加蓮「微妙に遠いね……。今回はパスっ」
藍子「残念。またいつか行きましょうね」
――外――
加蓮「ん? メッセージが届いてる」ポチポチ
加蓮「うわー珍しい。愛梨からだ」
藍子「愛梨さんから?」
加蓮「えーっと……。"事務所で、春菜ちゃんが暴走しています。歌鈴ちゃんが一生懸命になって、止めています"。……は?」
藍子「"それより、ちょっと暑くなりましたね~。脱いでもいいですか?"。って、愛梨さん、駄目ですっ」
加蓮「そもそもこれ送ってきて何がしたいのよ……」
藍子「う~ん……。加蓮ちゃん、春菜ちゃんに何かしたんですか?」
加蓮「……さっきのお礼(メガネ自撮り)?」
藍子「……それですね」
加蓮「今度愛梨に謝っとこ。歌鈴にも……」
加蓮「いや歌鈴はやっぱりいいや」
藍子「なんでですかっ」
加蓮「病院の大人共に謝りたくないのと似た理由」
藍子「それはどちらに対してもあまりにも失礼ですっ。ちゃんと謝りなさいっ。……こら~っ」
――路地――
加蓮「サンタクロース、サンタクロース、ヒゲ生えるー♪」
藍子「じんぐるべ~る、じんぐるべ~る♪ すず――あれ? ジングルベルじゃないっ」
加蓮「となりのおじさんヒゲ生えるー」
藍子「どういう歌詞なんですか、それ……」
加蓮「とりあえずヒゲが生えたらクリスマスっぽいかなって」
藍子「もしそうなら、私のお父さんは毎日がクリスマスになってしまいますよ?」
加蓮「良かったじゃん。毎日クリスマスプレゼントを貰えるよ?」
藍子「えぇ……」
加蓮「あ、ヒゲだ」
藍子「ひげ? ……あっ。サンタの服を来た子が、お母さんと手をつないで歩いてる。かわいい……♪」
加蓮「可愛いね。ほら。ヒゲ」
藍子「まっしろいひげですねっ」
加蓮「もうプレゼントはもらった後なのかな?」
藍子「きっとそうですよ。今から家に帰って、もらったプレゼントでいっぱい遊ぶんです。あっ、ひょっとして、友だちも呼ぶのかも?」
加蓮「ふふっ、そっか」
藍子「……あっ」
加蓮「?」
藍子「えっと――」
加蓮「なに? ……。そうだね。昔の私が通ってこなかった道だね、これは」
加蓮「でもさ。だからって、他の子にも通るなって言ったりはしないよ?」
加蓮「神様に嫌われることを知ってるからこそ、1人でも多くの子供達に、神様から嫌われてほしくない」
加蓮「もしそれでも、意地悪をされてるなら……私が助けるって決めたんだ」
加蓮「今日のことだって、そう」
加蓮「……ううん。あの病院は、もうすっかりいい場所になってたから。ひょっとして余計なお世話だったのかも? なんてっ」
藍子「加蓮ちゃん……。そんなことありませんよ。幸せは、いくつ積み重なってもいいものですから♪」
加蓮「だね。……もー、なんかセンチメンタルな気持ちにさせられちゃった。ちょっとサンタ服の子供を見ただけなのにさ」
加蓮「これは藍子のせいだよ! 藍子が腫れ物を触るみたいな目でこっち見るから!」
藍子「ふふ、ごめんなさいっ」
加蓮「何笑ってるのー。反省してるのかー。こらー」グイグイ
藍子「いたいいたいっ」
加蓮「ところでさ、サンタ服……っていうか、サンタって子供にプレゼント持ってくるじゃん」
藍子「持ってきますね」
加蓮「その服を子供が着るのってどうなんだろ……。や、子供用サイズのとか確かにあるけどさ……」
藍子「ひょっとしたら……子どもが子どもに、プレゼントをあげてるのかも?」
加蓮「子供のサンタ? そんなのいる訳な――」
加蓮「……そーいえば事務所にいたね。子供なのにサンタのお仕事したことある子」
藍子「それに、加蓮ちゃんもじゃないですか。加蓮ちゃんだって、まだ子どもですよ?」
加蓮「確かに!」
加蓮「今度は飼い犬だ」
藍子「! 加蓮ちゃん、みてみてっ」クイクイ
藍子「首輪のところ。クリスマスの柄になってます!」
加蓮「え? あ、ホントだ! クリスマス柄の首輪?」
加蓮「って、わ、ちょ、こらっ。私に飛びかかろうとしないでっ。ちょ、このっ」ピョンピョン
藍子「加蓮ちゃん、今日は動物に懐かれる日ですね♪ ――あ、飼い主さん。こんにちは。この子、可愛いですねっ」
加蓮「くっ、犬のくせにっ、女子高生の脚を舐めようとするなんてっ。させるかっ」ピョンピョン
藍子「いえいえ、加蓮ちゃんなら大丈夫ですっ。……冬になったら元気いっぱいになるんですか? 春になると急にねぼすけさんに……なるほど~」
加蓮「大丈夫じゃないしぼけっと話してないでっ、助けろぉ!」ピョンピョン
加蓮「こんなところに小学校があるんだ……。あれ? そもそもこの辺ぜんぜん見覚えないかも。もしかして結構遠くまで歩いた?」
藍子「そうですね。普段のお散歩でも、ここまでは来ないかな……?」
加蓮「それだけ夢中になっちゃってたのかも。なんか不思議ー」
藍子「夢中になっていると、ついつい、いろいろなことを忘れてしまいますよね」
加蓮「そのストッパーとして私がいるのに。不覚っ……!」
藍子「あはは……。……! 加蓮ちゃん、みてみてっ」クイクイ
藍子「今、あちらの建物から出てきた先生、サンタ帽をかぶってました!」
加蓮「サンタ帽!? ここ学校でしょ。そんな訳――ってホントにかぶってるし!」
藍子「あっ、加蓮ちゃん。ひょっとして、これがあるからかもしれませんよ」
加蓮「なになに? クリスマス会――へー、学校でもやるんだ。こういうこと」
藍子「……、」
加蓮「……ちょ、何。知らないんだからしょうがないでしょ。こーいうの全部参加したことないし――」
藍子「なるほど……。病院が難しいなら、学校もありですねっ」
加蓮「って、ん? ……藍子? 藍子ちゃーん? 顎に手を当てて何企んでるのかなー? ちょっとその電話をかけようとしてるスマフォをしまおっかー?」
――大通り――
加蓮「赤いドレスかぁ……」
藍子「ドレス?」
加蓮「さっきのショーケースの左下にあってさ。綺麗って思ったんだけど……」
加蓮「もし、赤いドレスを着て、色だけで「あ! サンタさんだ!」とかって言われたら、こう……イメージがアレじゃない?」
藍子「くすっ♪ 赤いから、サンタさん?」
加蓮「そーそー」
藍子「それなら……茶色いドレスは、トナカイさんっ」
加蓮「首元にはネックレス、指先にはガチガチにネイル。高級なハイヒールを履いて、大人っぽいシックドレスをチョイス」
加蓮「大人っぽいパーティーの場にいざ! って意気込みで家を出たら、たまたま通りかかった数人の子供とすれ違い――」
藍子「ごほん。……あっ。トナカイさんだ!」
加蓮「あははははっ! 私だったら絶対すぐ家に引き返す!」
藍子「代わりに、サンタさんを探しにいきましょうっ」
加蓮「ポテトの匂い……?」チラ
藍子「? お腹がすいちゃいましたか?」
加蓮「ううん。……藍子。今から超重要なことを藍子にお願いしたいの」
藍子「超重要なこと……!? ……分かりました。さあ、言ってみてくださいっ」
加蓮「私が――」
藍子「加蓮ちゃんが……!」
加蓮「私がいっつも行ってるジャンクフード店でやったら面白そうなクリスマス企画。一緒に考えて!」
加蓮「良いの思いついたら提案するから!」
藍子「……………………ポテトの代わりにケーキでも出せばいいんじゃないでしょうか」スタスタ
加蓮「ハァ!? ポテトの代わりって言った!? ポテトの代わりって言った!?!? いくら藍子でもそれは許せないんだけど!!!!??」
<ブルブルッ
加蓮「ん? ……あぁ。また愛梨からメッセージ」
藍子「春菜ちゃんが、暴走? しちゃっているってお話でしたよね。落ち着いたのかな……?」
加蓮「えーと。"今度は、加蓮ちゃんと藍子ちゃんがデートしているって知った歌鈴ちゃんが、暴走を始めてしまいました。あと、今日ってなんだか暑くないですか?"」
加蓮「…………外に出て日向ぼっこでもすれば涼しくなれると思うよ」ポチポチ
藍子「あ、あはははは……」
加蓮「愛梨はこれを私に送って一体何をしたいの……?」
藍子「加蓮ちゃん。こっちの道を通ってみませんか?」
加蓮「こっち?」
藍子「はい。さっき信号待ちの時に調べてみたんですけれど、こっちに雑貨屋さんがあるみたいなんです。ちょっぴり気になるな……って」
加蓮「はいはい。しょうがないわね――」テクテク
加蓮「って」
藍子「……わ、わぁ」
加蓮「真っ昼間からラブラブしてる人がいるね……う、うわ。キスしちゃってる……」
藍子「……こ、これもクリスマスだからでしょうか」
加蓮「ああいう人はクリスマスじゃなくてもやってそうだから、ノーカン?」
藍子「な、なるほど?」
加蓮「引き返そっか……」
藍子「雑貨屋さん~……」
藍子「また赤信号が――あれ? 加蓮ちゃん?」キョロキョロ
<とんとん
藍子「ひゃっ」
加蓮「わっ。……動揺しすぎー。私までびっくりするよ」
藍子「ごめんなさいっ。加蓮ちゃん、どこに行っていたんですか?」
加蓮「すぐそこの自販機だよ。はい藍子。コーヒーあげる」
加蓮「がっかりしてたみたいだし。これでも飲んで元気出しときなさい」
藍子「……ありがとう。加蓮ちゃん、かんぱ~い♪」
加蓮「かんぱーい」
加蓮「……甘っ! 微糖ってこんなに甘かったっけ?」
藍子「ふうっ……。私は、これくらいの方が……。加蓮ちゃん、よくカフェで濃いめのコーヒーを頂いているから」
加蓮「慣れちゃったのかな」ゴクゴク
藍子「自動販売機の缶にも、クリスマスって感じがあるといいですよね」
加蓮「クリスマスって感じ」
藍子「例えば、クリスマス限定のラベルをつけてみるとかっ」
加蓮「ふんふん」
藍子「あっ、でも、自動販売機だとちょっぴり難しいかな……?」
藍子「前に自動販売機の入れ替えの方とお話したことがあって、そういう工夫は難しいって聞いちゃいました」
加蓮「……自販の入れ替えの人と喋る機会ってあるの?」
藍子「確か、待ち合わせをしていた時だったかな? Pさんが車の渋滞に巻き込まれてしまって、到着するのが少し遅くなってしまったんです」
藍子「待っている間にベンチに腰掛けた時、ちょうど、自動販売機の入れ替えの方が作業をされていたので、少しだけお話を、」
加蓮「Pさんとの待ち合わせ。あっ、もしかして先々週の? なんか撮影がだいぶ早く終わったみたいだけど何してたのー? デート? 一緒にどこかに行ったり?」
藍子「いっ、今はPさんのお話ではなくて、自動販売機のお話でっ。で、デートなんてしていません! ちょっと帰り道をご一緒しただけで――」
加蓮「っと。まーた愛梨からだ。藍子、空き缶捨ててきてもらっていい?」
藍子「は~い。その間に、返信してあげてくださいっ」テクテク
加蓮「サンキュ。えーと……"暴走事件は、無事に解決しました! 藍子ちゃんとのデートを、い~っぱい、楽しんできてくださいね!"」
加蓮「"それと、春菜ちゃんと歌鈴ちゃんが、今度のお休みに加蓮ちゃんを誘おうって相談していました♪"」
加蓮「“今度いつか、みんなで集まって遊びましょうね~♪”」
加蓮「……楽しんでほしいのなら邪魔すんなっ、と」
藍子「ただいま、加蓮ちゃん」
加蓮「お帰りー」
藍子「愛梨さんはなんて?」
加蓮「……、」チラ
加蓮「別に。暴走事件は解決したよってだけの報告」
藍子「よかった。……でもどうして愛梨さんは加蓮ちゃんに連絡したのでしょう?」
加蓮「さぁね。話し相手でもほしかったんじゃない?」
□ ■ □ ■ □
藍子「――お昼ごろは、どこを歩いても家族連れの方が多かったのに……もう、ほとんど見なくなってしまいましたね」
加蓮「だいぶ暗くなっちゃったもんね。……そっか、もう5時なんだ」
藍子「名残惜しいですけれど、そろそろ帰らなきゃ。お母さんにも心配されちゃいます」
加蓮「うちもー。冬は早く帰らないと、ホントお母さんがうるさくてさー」
加蓮「……、」
藍子「……、」
加蓮「ねえ」
藍子「あのっ」
加蓮「ん……」
藍子「あっ」
加蓮「……、」
藍子「……、」
加蓮「……じゃあ、藍子。譲ってあげる。今日のことを誘ってくれたの、藍子の方だから」
藍子「では……。加蓮ちゃん」
藍子「暗くなってなってしまったから、もうお散歩はおしまいですけれど……」
藍子「もう少しだけ……一緒に、いませんか?」
藍子「その……」
藍子「クリスマスだから、っていうことではなくて……」
藍子「ただ、なんとなく……もうちょっとだけ、一緒にいたいな、って」
加蓮「……私は、逆かな?」
藍子「逆……?」
加蓮「うん。今日は12月25日だもん。クリスマスを言い訳にしてもいいんじゃない?」
藍子「では――」
加蓮「せっかくクリスマスだから、今日はもうちょっと……もっと一緒にいたいな、藍子」
藍子「……はいっ」
加蓮「うち来る? 藍子の家に行ってもいいけど」
藍子「どっちでもいいですよ。でも、その前に――」
加蓮「うん。……なるほど?」
――おしゃれなカフェ。つまりは、いつものカフェ――
<からんころーん
加蓮「店員さん、ただいまー!」
藍子「ふぇ!? あっ、た、ただいまっ!」
……。
…………。
加蓮「――あっ、店員さん。わっ、ケーキ美味しそー♪ なんかイチゴがキラキラして見える!」
藍子「」プシュー
加蓮「カフェだもんね。そういうとこはこだわるよね。……そういえば結構もう遅いけど、店員さんってずっとここ――ごめん、なんでもない」
藍子「」プシュー
加蓮「もうちょっとだけのんびりさせてね。……ふふっ。うるさくはしないからー」
藍子「」プシュー
加蓮「さて。……で、藍子はいつまで煙を吐いてるの?」
藍子「……ただいまって言っちゃった……つられて言っちゃった……。あううぅ……はずかしい……!」
加蓮「くくくっ」
藍子「もう……。加蓮ちゃんっ!」
加蓮「あっ、お母さんからメッセージ。はいはい、迷惑かけませんよっと」
藍子「加蓮ちゃん――」
加蓮「は? 年末のセールに付き合え? それが外泊の条件……あーもう。しょうがないなぁ」ポチポチ
藍子「……、…………」スッ
加蓮「送信っと。藍子ー。お母さんから泊まりの許可もらったよー、って」
藍子「あ~――」
加蓮「? ……って、こら! 何私の分のイチゴ食べようとしてんのよ!!」ガシ
藍子「わっ」
加蓮「藍子ぉ!」
藍子「……む~」
加蓮「……、」
藍子「……、」
加蓮「……」
藍子「……」
加蓮「……でも、おかえりって言った時、なんか暖かい気持ちになれなかった?」
藍子「……加蓮ちゃんも? 実は、私も!」
藍子「で、でも恥ずかしいって気持ちの方が遥かに大きかったんですから。店員さん、びっくりして私の顔を見てて……。う~~~っ……」
加蓮「その後嬉しそうにしてたじゃん。キッチンの方に水取りに行った時なんて軽くスキップしてたよ、あの人」
藍子「……そうなんですか?」
加蓮「また他のお客さんがいない時でいいから言ってあげてみたら? もしかしたら、ショートケーキのイチゴが1個増えるかもっ」
藍子「それなら――い、言いません。絶対に言いません。加蓮ちゃんが言ってくださいっ」
加蓮「ちぇ」
加蓮「ケーキ食べよーっと」アムッ
藍子「私も。もぐもぐ……」
加蓮「んっ……。うん、ふんわりしてて美味しい……!」
藍子「もぐもぐもぐ……ごくん。なんだか、すっごくふわって感じ!」
加蓮「スポンジがいい感じなのかな?」
藍子「生クリームも、ほんわかしてますっ」
加蓮「クリスマスって言ったら、やっぱりケーキだもんね。お仕事とかでもたくさん食べちゃったけど……今日のケーキは、特別な感じ」
藍子「今日のこのケーキは、これからどんなにたくさんのケーキを食べても……忘れられない味になりそう」
加蓮「あははっ。じゃあ、そのケーキを食べる藍子の顔も覚えとかなきゃ」
藍子「うっ……。そ、そんなに見られると、食べにくくなってしまいますから」
加蓮「やだ。見るー」
藍子「うううっ」
加蓮「ふふっ。……ねー、藍子」
加蓮「今日までずっと……今日までの時間、全部。ありがとね――」ボソ
藍子「……?」モグモグ
加蓮「なんでもないっ。ケーキケーキ。うんっ。美味しー!」
藍子「……私のほうこそ。ありがとう」ボソ
藍子「うんっ。美味しいですね、ケーキ!」
「ね。今だけ隣に座っていい? ……えいっ」
「わ……。急にどうしたんですか?」
「クリスマスだしー?」
「クリスマスなら、しかたありませんねっ。……で、でも、ちょっぴり落ち着かない~っ」
「ほらほら。ケーキ食べよ?」
「加蓮ちゃんっ。あ~んっ♪」
「……慣れるの早くない? ……あーん」
「あっ。今度は、加蓮ちゃんが落ち着いていないって顔!」
「嬉しそうに言うなっ。もーっ。ほら、今度は私が――」
【おしまい】
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