【艦これ】テレワーク海戦 (61)

キャラ崩壊注意



望月「うちもテレワークしようよー」グダー

提督「バカ言うな! なんで前線の軍人がテレワークできるんだよ!」

提督「俺たちは戦場こそ人生なんだ、文句言うな!」

初雪「でも、それで死んだら、意味がないし……」グダー

提督「そもそも戦場で死ぬ確率の方が高いだろ!」

北上「いやいや、まだそれは分からないじゃんかー」グダー

提督「とにかく! テレワークなんて言語道断! 絶対やりませんからね!」

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廊下――



初雪「うぅ……交渉失敗……」トボトボ

北上「まあ、どうせこうなるとは思ってたけどさ……」トボトボ

望月「なんだよー、あたしたち別に変なこと言ってないじゃんかー」モッチモッチ

初雪「大本営は良いなー……」

北上「鎮守府に電報流すだけの簡単なお仕事だもんね」

望月「ずっとテレワークしてるんじゃん、ずるいよー」

吹雪「あ、こんなところにいた!」タッタッタ

金剛「出撃の時間ヨー!」

北上「二人とも元気だねー」

金剛「空元気も元気のうちデース!」

大井「提督ってば! 北上さんがあのウィルスに感染したら、どう責任取ってくれるのかしら!?」プンスカ

初雪「病気が怖いので、早退したいんですけど……」

吹雪「とりあえず出撃しちゃお? ね?」アタフタ



――――――――
――――

出撃後――
鎮守府――



望月「あいたたた……こっぴどくやられちゃったなー……」ボロボロ

初雪「もうやだ……つらい……」ボロッ

北上「戦闘以上に、いつあのウィルスにかかるか分からない恐怖で、実力を発揮できないんだよねー」プスプス

初雪「これは許されない……」

望月「なんとかしないと、いつ沈むか分からないや」

北上「でも、どうするつもり?」

北上「提督の言う通り、戦場でドンパチするあたしたちがテレワークする方法なんて、さすがにないでしょ?」

初雪「それは、早計すぎる……」キリッ

望月「無理を押し通して道理をひっこませる、それが駆逐艦魂ってもんだよ……」キリッ

北上「ほほー、雷巡では思いつかなかった取って置きのテがあるってわけね?」

初雪「うん」

初雪「まずは――」



――――――――
――――

後日――
海上――



吹雪「敵艦隊発見! レ級です!」

レ級「アヒャヒャヒャヒャ!」ケラケラ

イ級ズ「イキュー!」

大井「くっ……なんてプレッシャーなの……!?」

金剛「ここで挫けてはノー! ワタシたちの一斉掃射をお見舞いデース!」

吹雪「総員! 掃射準備! 一撃で仕留めます!」

レ級「さあ来いカンムスウウ! レキューは実は百回撃たれないと死なないぞオオ!」

吹雪「言われるまでもありません!」

吹雪「掃射! 撃てっ!!」

吹雪「やーっ!」ドォン!

大井「いけっ!」ドォン!

金剛「ファイヤー!」ドオォン!!

初雪?『今日は本気出す……!』ビシッ!

望月?『はいはい、撃ちますよーっと!』ビシッ!

北上?『酸素魚雷アターック!』ビシッ!



レ級「うんちょっと待って」

レ級「ん?」

レ級「んんん?」

レ級「んんんんん~?!」

レ級「あれ、おかしいな」

レ級「なんか三人ほどおかしいのがいるんだけど……?」

吹雪「え? なんのことですか?」

金剛「ワタシたちはいつだって全力ネー!」

大井「すべては深海棲艦を倒すため! ですよね北上さん?」

北上?『そだねー』

レ級「オマエだよ!!!!!!!!」

レ級「ちょっとそこの後半三人」

望月?『え、あたしたち?』キョトン

レ級「いいから、とりあえずそこに並んで」

初雪?『何なの、交戦中に……』

レ級「いいから」

レ級「いいから、早く並んで」

北上?『面倒な深海棲艦だねえ』

レ級「……うん、並んだな」

レ級「確認するけどさ……」

レ級「まず、オマエは?」

初雪?『初雪、です』

レ級「いや違うだろ」

レ級「艦娘の初雪じゃないだろ」

初雪?『初雪なんですけど……』

レ級「ディスプレイが頭の連装砲ちゃんじゃねーか!!」

レ級「いや知ってるよ?! ディスプレイに映ってるやつは知ってるよ?!」

レ級「映ってるオマエはハツユキだろ?! それは知ってるよ?!」

初雪?『えへへ……///』

レ級「何テレてんだよ!?」

レ級「ハツユキ成分がディスプレイの中にしかないんだけど!?」

初雪?『なら、私は初雪ということで――』

レ級「認めねえよ!?!?!?!?」

望月?『なら、あたしは望月ってことでいいよね?』

レ級「よくねーよ!! オマエも同じだかんな!?」

レ級「というか、今の流れでどうしてその主張が通ると思った!?」

北上?『まあまあ、ここは、あたしだけは北上ってことで――』

レ級「よくねーっつってんだろ!!!!!!!!」

吹雪「待ってください!!」

レ級「な、なんだよ、そんな大声出して……」ビクッ

吹雪「確かに体は連装砲ちゃんだからそう見えるけれど、違うんです!!」

レ級「え……」

レ級「まさか、事故かなにかで体を失ってしまって、精神だけこの艤装にこめて戦っているとか――」

吹雪「連装砲が乗っているのが『連装砲ちゃん』なので、初雪ちゃんのライブ映像を映してるディスプレイが乗っているこの子は『初雪ちゃん』っていうんです」

初雪ちゃん『初雪ちゃんです……』ピース

望月ちゃん『望月ちゃんでーす』ピース

北上ちゃん『北上ちゃんだよー』ピース



レ級「そういう問題!?!?!?!?」

レ級「バカじゃねーの!? いやバカだろ!?」

レ級「ディスプレイ乗せたせいで、肝心の砲が乗ってねーじゃん!!」

レ級「その小さなおててで敬礼しか出来なかったよな!?」

レ級「そいつら艦隊にいる意味あるの!? いや無い(反語)!!」

大井「何言ってるんですか!!」

大井「これは艦娘の先進的なテレワークなのよ!!」

レ級「テレワーク!? 前線の軍人がテレワーク!?」

大井「人の集まる場所にいたら、北上さんがあのウィルスに感染するかもしれないじゃない!」

大井「でもこれなら、北上さんは自宅にいるから、絶対に感染することがないわ!」

吹雪「でも、北上さんはサボっているわけではありません! こうしてカメラを通して戦場を確認していますから!」

吹雪「つまり、これが艦娘として正しいテレワークの姿なんです!」

レ級「いやいやいやいや」

レ級「おかしい」

レ級「オマエら絶対おかしい」

レ級「百歩譲って、ここにいるとするぞ? 嫌だけどここにいるとするぞ?」

レ級「でも艤装がないだろ!」

レ級「敵と一切戦えないカンムスに、何の価値があるんだよ!?」

金剛「フッフッフ……ドン☆ウォーリー!」

金剛「ワタシたちは、その疑問の答えを持っていマース!」

レ級「なんだって!?」

金剛「交戦できない艦娘の存在価値、それは――」










金剛「全部の攻撃がMissだったと割り切れば良い話デース!!」



レ級「な、なんだってー!?」








レ級「な、なんてことだ……!」ガクッ...!

レ級「確かに、レキューたちにも身に覚えがある……!」

レ級「悩みに悩んで、せっかく編み出した編成なのに、まるで良いところを見せられないコたちもいるのは、よくあること……!」

レ級「だからこそ、何度も何度も戦場に出して、うまくいくまで挑戦してきた……!」

吹雪「私たちの戦争ではよくあることですね」

吹雪「それを私たちは潔く割り切っただけです」

吹雪(司令官には内緒なんですけどね!!!!!!!!)

吹雪「初雪ちゃんも、望月ちゃんも、北上さんも、艦隊に参加し、出撃しています」

吹雪「でも今日は不運なことに、弾一発も深海棲艦に撃ち込むことはできませんでした」

初雪ちゃん『あちゃー……』タハー

望月ちゃん『全然当たんないなー……』タハー

北上ちゃん『ま、そういう日もあるよねー……』タハー

レ級「……わかったよ」

レ級「オマエたちは全員、マジメに戦いに来ている……そうなんだな?」

吹雪「はい! 全力です!」

金剛「今日こそアナタを倒して、テートクに勝利を届けるネー!」

大井「頑張りましょうね、北上さん!」

北上ちゃん『まー頑張ろうねー』

初雪ちゃん『ここは本気を出す時……!』

望月ちゃん『あたしの実力、見せつけてやんよー!』

レ級「……うん、マジメってことにしといてやるよ……」

吹雪「それで、私たちの一斉掃射はどうでしたか!?」

金剛「さっきの一撃はパワフルだったはずヨー!」

大井「私の愛の力を思い知りなさい!」

レ級「あ、さっきの砲撃のこと?」

レ級「痛かったけど、二割くらいしか削れてない感じかな」

吹雪「あっちゃー」

金剛「トホホー」

大井「いっけねー」

レ級「くらえ!! 当たったらコテンパンにやられるけれど必ず装甲が一残るパンチ!!」



ドッカーン!!



吹雪「ぐえー!」

金剛「やられター!」

大井「覚えてなさーい!」



――――――――
――――

鎮守府――



提督「あれ? 負けたの?」

提督「おかしいな……お前らほどのベテランが、D敗北になるなんて」

提督「最低でもCだと思ったんだが……」

金剛「そんな日もあるヨー……」ボロッ

提督「そうかな……そうかも……」

提督「今度こそは頑張るぞ!」

「『おおー』」ノ



――――――――
――――

深海鎮守府――



レ級「はー疲れた……」グデー

戦艦棲姫「なによ、帰ってくるなり急に」

レ級「いやなんか、カンムスたちが変なことやりだしてさー」

湾港棲姫「変なこと……?」

レ級「なんか、テレワークするんだってさ」

ヲ級「……?」ハテナ

レ級「つまり――」



……………………
…………

説明後――



戦艦「あー、はい、なるほどねー」ウンウン

戦艦「バカじゃないの?」

レ級「だよなー?」

戦艦「そんな戦闘、ちゃんと断りなさいよ」

レ級「でも、その場の空気に流されちゃって、結局そのまま戦うことになっちゃってさー」ゴロゴロ

ヲ級「それで、結果はどうだったの?」

レ級「レキューの勝ちー」

戦艦「でしょうね」ハァ

湾港「でも……カンムスたちの気持ち、分かるかも……」

戦艦「ちょっと、敵の思想に染まること無いじゃない」

湾港「確かにカンムスは敵だけど、みんながあのウィルスに怯えているのは同じだから……」

ヲ級「確かに……艦載機のみんなも、出撃したくないって言ってる……」ハッ

戦艦「そんなこと言ったって、戦場で戦うのが私たちの本分よ?」

戦艦「たかがウィルス一つに怯えている場合じゃないわ」

湾港「それは……そう、だけど……」

湾港「でも、イ級たちとか、普段そんなにダメージ与えられてないし……」

湾港「全部Missだったと考えても、あまり問題ないかもって思うと……」

レ級「……」

ヲ級「……」

戦艦「……」

戦艦「……ハッ!」

戦艦「いやいや! ダメ! そういうことじゃないから!」

レ級「……」ショボーン

ヲ級「……」ショボーン

湾港「……」ショボーン

戦艦「悲しい顔をしてもダメ!」

戦艦(……でも、イ級たちの砲撃が有効に働くシーンは確かに少ないし……)

戦艦(少しだけ……本当に少しだけなら、あるいは……)

戦艦(――って、何本気で考えてるのよ私は!?)

戦艦(ダメダメ! 却下! 却下なんだから!)



――――――――
――――

後日――
海上――



吹雪「敵艦隊発見! レ級です!」

レ級「アヒャヒャヒャヒャ!」ケラケラ

イ級ズ「イキュー!」

大井「くっ……なんてプレッシャーなの……!?」

金剛「ここで挫けてはノー! ワタシたちの一斉掃射をお見舞いデース!」

吹雪「総員! 掃射準備! 一撃で仕留めます!」

レ級「さあ来いカンムスウウ! レキューは実は百回撃たれないと死なないぞオオ!」

吹雪「言われるまでもありません!」

金剛「オー! ブッキー! 見てくだサ-イ!」

レ級「クックック……」ニヤニヤ

イ級さん『イキューッ!』

イ級さん『イキューッ!』

イ級さん『イキューッ!』

イ級さん『イキューッ!』

イ級さん『イキューッ!』



「『ああ! テレワークしてる!』」

レ級「どうだ! テレワークはカンムスの専売特許じゃないぞ!」

レ級「オマエたちの連装砲ちゃんはいないけど、浮き輪さんたちならたくさんいるからな!」

レ級「お腹の穴にモニターを入れて、イキューさんの完成だ!」

イ級さん『イキュー!』ノ

吹雪「わあ可愛い!」

望月ちゃん『あちゃー、これはまいったなー』

初雪ちゃん『こっちの攻撃は三人分がMiss……』

北上ちゃん『とはいえ、向こうは五人分がMiss……』

大井「つまり、勝負は五分五分ってことね!」

金剛「ブッキー! これはチャンスデース!」

吹雪「はい! はじめから全力でいきます!」

レ級「アヒャヒャヒャ! いいねえ! 血が滾るねえ!」

レ級「このレキューを楽しませてくれよオ!?」

イ級ズ『『イキュー!!』』

吹雪「覚悟おおおおおお!!」

レ級「アーッヒャッヒャッヒャ!!」



――――――――
――――

鎮守府――



提督「いやー、今日は惜しかったな」

提督「報告によると、お互いダメージが少なかったみたいだが……理由は分かるか?」

金剛「ソーリー、よく分からないネー」

提督「まあ、お前たちの技量が上がっている証拠だろう」

提督「とはいえ、向こうのチームワークも向上しているようだ」

提督「今度こそは勝つぞ!」

「『おおー』」ノ



――――――――
――――

深海鎮守府――



戦艦「はあ!? 部下全員をテレワークさせた!?」

戦艦「バッカじゃないの!?」

レ級「だってさー、あいつらそんなに活躍できてないしー」ゴロゴロ

レ級「だったらレキューだけで十分だもーん」ノビー

戦艦「何が楽しくて、こっちの戦力を下げる必要があるのよ!!」

湾港「ただいm――え、何があったの……?」ビクッ

ヲ級「レ級が、部下をテレワークさせたって……」

湾港「え……それ本当?」

レ級「レキュー、嘘つかなーい!」

戦艦「あなたからも怒ってよ! そんなことするなって!」

湾港「……それで、どうだったの……?」

戦艦「湾港?」ギロリ

湾港「いやっ、そのっ……情報共有を、と……」アワワ

ヲ級「それで、どうだった……?」

レ級「戦艦棲姫の言う通り、ダメージは減った」

戦艦「ほら!」

レ級「でも、あいつらからのダメージも減ってるからなー」

レ級「どっこいどっこいのお互いサマって感じー」

ヲ級「……なるほど、お互いの被害が減った……と」

湾港「うん……被害が減るのなら、悪くない……かも……」

戦艦「ちょっと! ヲ級!? 湾港!?」

ヲ級「戦力を減らしても、こちらに大きな被害が発生しない――」

ヲ級「レ級の情報は、ぜひ全員に共有するべき……」

戦艦「でも、それは向こうの戦力が減っているから成り立つものであって――!」

ヲ級「その条件が成り立つ今だからこそ有効……」

戦艦「それは……そうかもだけど……」

ヲ級「あのウィルスが蔓延る間に限り、仲間をテレワークさせても問題ない……」

ヲ級「他の同志たちにも知らせるべき……」

湾港「わ、私も……賛成、です……」ノ

レ級「レキューも賛成ー」/

戦艦「コラ! 足を挙げないの! はしたない!」

ヲ級「とにかく、これは大事な情報……」

ヲ級「すぐに知らせてくる……」

戦艦「ハア……分かったわ、行ってきて」

ヲ級「そうする……」ヲキュッヲキュッ

湾港「あ、晩御飯……」

レ級「ん? オマエもテレワークさせるの?」

戦艦「さあ? やりたい人がやれば良いんじゃない?」

レ級「ワンコーは? 部下にテレワークさせる?」

湾港「私は……やってみよう、かな……」

湾港「お外は、あのウィルスで危ないみたいだから……あまり危険な目にあわせたくなくて……」

戦艦「まったく……部下に気遣い、自分は頑張るなんて、なんて上司の鑑だこと」ハァ

戦艦(あの時の私は、彼女たちの行動をバカにしていた)

戦艦(兵士が戦場に出ずに、何が戦争か……そういう想いが強かったから)

戦艦(私のその気持ちは、今も変わってはいない)

戦艦(でも、世界はそうではなかったことを私は、この後思い知らされるのだった……)



――――――――
――――

後日――
海上――



吹雪ちゃん『敵艦隊発見! 旗艦のオンパレードです!』

大井ちゃん『くっ……なんてプレッシャーなの……!?』

金剛ちゃん『ここで挫けてはノー! ワタシたちの結束力を見せる時デース!』

望月ちゃん『あーもー、めんどくさいなー』

北上ちゃん『ここがまさに正念場だねー』

初雪ちゃん『今こそ、本気を出す時……!』

レ級さん『アヒャヒャヒャヒャ! レキューたちに敵うと思ってるのかアア!?』

湾港さん『来るなって……言ってるのに……!』

ヲ級さん『そちらが来るなら、こちらも受けて立つ……!』

イ級さんズ『イキュー!!』

『『うおおおおおおおおお~~~!!』』

『『イキュウウウウウウウウ~~~!!』』









戦艦「……」

戦艦(テレワークの影響は、すぐに目に見えて表れた)

戦艦(最初に戦場から姿を消したのは、駆逐艦たちだ)

戦艦(戦況を変える力が比較的小さい彼女たちは、戦場に残る必然性が低かったから)

戦艦(戦場から駆逐艦がどんどんいなくなったことで、今度は軽巡や潜水艦たちがテレワークし始めた)

戦艦(その風潮が空母、戦艦へと伝搬し、とうとう鬼級や姫級までがテレワークすることに……)

戦艦(今や世界中の海には、カンムスたちも私たちも存在しなくなった)

戦艦(すべての戦力が非戦闘員となったことで、戦場はどうなったのか――)

戦艦(その答えが、これだ)









『『うおおおおおおおおお~~~!!』』

『『イキュウウウウウウウウ~~~!!』』









戦艦(そう……)

戦艦(何一つ武装がないため、叫ぶことしかできなくなったのだ……!)

戦艦(開幕航空、先制対潜、開幕雷撃、砲撃、雷撃――)

戦艦(そのどれもが、叫び声だけで終わる)

戦艦(何かが撃たれたり、何かが発射されたり、何かが発艦されたりすることは一切なかった)

戦艦(どちらも何も飛ばさないのだから、こちらが損傷を受けることはないし、あちらが損傷を受けることもない)

戦艦(誰も損傷しないということで、両陣営の上層部が納得してしまったのだとか……)

戦艦(ここに、誰も傷付かない戦争が誕生した)

吹雪ちゃん『当たってー!』

レ級さん『アヒャヒャヒャヒャーッ!』

大井ちゃん『ちっ! ちょこまかと逃げ回って!』

望月ちゃん『くうっ……弾が当たらないっ……!』

ヲ級さん『逃がさないっ……!』

初雪ちゃん『対空、早く……!』

湾港さん『仲間を……落とすわけには、いかない……!』

金剛ちゃん『正々堂々、勝負デース!』

イ級さんズ『イキュー!!』









戦艦「……」

戦艦(私は、どうすればいいのかしら)

戦艦(全員に戦闘力が無くなった以上、この世界で私より強いカンムスは誰一人いない)

戦艦(つまり、ここで空気を読まずにやつらを沈めれば、この戦闘に勝利することができる)

戦艦(S勝利まったなし、MVP間違いなし、経験値独り占め)

戦艦(たとえ棚ぼたであろうとも、報酬は報酬に間違いない)

戦艦(私が……勝利を……)

戦艦「……」

戦艦「いえ、やめましょう」

戦艦(勝つといっても、相手はテレワーク用の遠隔艤装)

戦艦(勝利しても意味がないわ)

戦艦(それどころか、空気を読まずに勝利した私を目の敵にして、カンムス全員出張ってくるかもしれない)

戦艦(たとえトチ狂っているとしても、誰も戦わないこの戦争こそが、私たちの戦場なのだから……)

吹雪ちゃん『くっ……今日も引き分けです……!』

望月ちゃん『あちゃー、時間切れかー』

初雪ちゃん『深海棲艦、やるじゃん……』

ヲ級さん『カンムスたちもな……』

レ級さん『ヒャヒャヒャ! また出直して来な!』

大井ちゃん『キーッ! 深海棲艦になめられるなんて!』

北上ちゃん『まあまあ、今日はもう引きあげよ?』

金剛ちゃん『今度こそは、ワタシたちが勝ちマース!』

戦艦「……ええ、そうね」

イ級さんズ『イキュー!!』

戦艦(負け惜しみを言いながらカンムスたちは帰っていった)

戦艦(夕日をバックに、海面に落ちる六つの遠隔艤装の影)

戦艦(その背中を見送る私たちの影は、どれも丸かった――)



――――――――
――――

後日――
海上――



吹雪ちゃん『敵艦隊発見! 旗艦のオンパレードです!』

大井ちゃん『くっ……なんてプレッシャーなの……!?』

金剛ちゃん『ここで挫けてはノー! ワタシたちの結束力を見せる時デース!』

望月ちゃん『あーもー、めんどくさいなー』

北上ちゃん『ここがまさに正念場だねー』

初雪ちゃん『今こそ、本気を出す時……!』

レ級さん『アヒャヒャヒャヒャ! レキューたちに敵うと思ってるのかアア!?』

湾港さん『来るなって……言ってるのに……!』

ヲ級さん『そちらが来るなら、こちらも受けて立つ……!』

戦艦さん『総員! やつらを叩き落せ!』

イ級さんズ『イキュー!!』

『『うおおおおおおおおお~~~!!』』

『『イキュウウウウウウウウ~~~!!』』









私たちの戦争は、これからだ――!!









おわり

以上です、ありがとうございました。

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