壊れた「姉」と目を閉じた「弟」 (2)
俺と深夏(みなつ)が「姉弟」になってから、10年が経った。
10年。本当に……長い10年だった。
そして10年の月日を経ても、深夏は変わらず俺の姉のままだった。
「真雪」
俺の名前は真雪(まゆき)ではない。
「なに、姉さん」
それでも俺は返事をする。
10年間、変わる事は無かった。
今更変わるとも思えない。
だから、俺はこれからもずっと真雪として生きていく。
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真雪が俺たちの目の前で車に轢かれた。
その事実は、深夏の心を傷つけ、深夏は現実から目を逸らすようになった。
真雪と友達で、深夏ともよく遊ぶ程度の関係だった俺の事を、真雪と呼ぶようになった。
「ままとぱぱ、へんだね。まゆきはここにいるのに」
俺は怖かった。目の前に友達が血まみれで転がっていて、周りが大騒ぎしていて、おじさんとおばさんが運転手に怒鳴り散らしている横で、深夏は俺を真雪と呼ぶ。
幼いながらも俺には分かった。
深夏は壊れてしまったのだと。
俺は怖くて怖くて逃げ出したかったけど、真雪がいなくなって深夏までいなくなったらおじさんとおばさんが可哀想だなって、幼かった俺はそんな風に思ってしまって。
「うん、そうだね。ぼく、ここにいるのにね」
俺も、現実から目を逸らした。
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