【ミリマスR-18】満月の夜、狼と化した横山奈緒に襲われる話 (15)

期間限定ガチャ「満月の夜にはご用心♡ 横山奈緒」を引けないのでムシャクシャして書きました。

【概要】
・横山奈緒が出てきます
・噛みつき描写がほんの僅かあります(派手な出血はしません)

以下行きます。12000字ちょっと。

 一軒の古びた家屋。築後そう経たない真新しいビルの屋上に、それは立っている。簡易的に組み立てられたハロウィンイベントの宣材用撮影スタジオは、コンクリートのフロアの上にあって、月明かりの下で異様な雰囲気を放っていた。ドアの内側には、森林を模した部屋が一室あり、その先の扉をくぐると、ロッジをイメージした家具類が並ぶ。室内の一角にある暖炉からは、炎の灯りに近い、ぼんやりとした橙色の光がゆらめいている。穴の空いた屋根からは、満月が雲の合間より時折顔を覗かせていた。

『正体を現した狼が赤ずきんに襲い掛かる』……。伝承の中で幾年も積み重ねられてきた光景を題材にしたハロウィンプロジェクト企画のワンシーンだった。童話の『赤ずきん』は子どもでもよく知っている話であり、被写体は可愛らしさあふれるアイドルだ。メルヘンチックな雰囲気で終始和やかに進行すると思っていた現場だったが、被写体二人のあまりに堂に入った演技に小屋の中は一種の異世界と化してしまい、その場の誰もが、得体の知れない緊張感に包まれていた。テーブルに手をついて見ているだけだった俺もその空気に呑みこまれ、声をあげてしまいそうになるぐらいに。

 現場を仕切る監督が写真と映像にOKを出し、日程の終了が告げられた。一同の拍手が小屋の中へ響いたが、その拍手は、無事にスケジュールが終わったことよりも、この妖しい世界から現世に戻れることを保証された安堵が勝っていたのではなかっただろうか。少なくとも、俺はその証拠に、掌の汗をハンカチで拭いながら、肩から不安感が抜けていくのを感じていた。

「お疲れ様。いやあ二人とも、迫真の演技だったねぇ。ちょっと怖いぐらいだったけど、いい絵が撮れたよ、ありがとう」
「おおきに! ノリノリでやらせてもらいましたわ~! 楽しかったです!」

 監督が二人の役者を称賛する。耳としっぽをあしらった、人間に化けるオオカミの衣装に身を包んだ奈緒の陰で、赤ずきん役のひなたがベッドから体を起こした。バスケットからリンゴが転げ落ちた。「奈緒ちゃん、なまらおっかなかったべさ」と言いながら頭巾を取り去って見えたその顔は、まだ瞳を潤ませていた。

 ドアを開けてスタッフが続々と現実世界へ帰っていく中、小屋の中に残っているのは劇場の三人だけだった。穴の開いた屋根から吹き込む風はうっすらと冷たい。先月まではまだ暑さに苦しんでいたはずなのに、十月になった途端、夜の空気には若干の肌寒さすら覚える。

「ひなた、今日はもう上がっていいからな。奈緒もオオカミお疲れ様」
「したっけ、また明日なぁ。奈緒ちゃんも行こ」
「あっ、ひなた、先行っててええよ。プロデューサーさんに相談せなあかんことがあってな、ちょっと長引きそうやねんか」
「そっかあ、じゃあ、先に上がらせてもらうなあ。お疲れ様でした」

 ちらり、とこちらを見た奈緒の瞳が、薄暗い部屋の中でギラリと光った。ぞくり、と肌が粟立つのを感じて、単なる光の反射だと俺は自らに言い聞かせた。耳と尻尾のシルエットが、深まる影の中へ消えていく。満月が、雲の中へ姿を隠し始めていた。

 ハリボテの木々を抜け、仮設スタジオの出口へひなたが姿を消したのを確認してから、奈緒は後ろ手に小屋の鍵をかけた。物音のしない空間に、カチリという無機質な音がこだました。そして、反響した金属音をかき消すかのように、小窓のカーテンも閉ざされる。

「で、相談ってなんだ、奈緒。別にこんな薄暗い場所でなくても劇場の中で――うわっ!」

 前方からの衝撃に視界が回転した。さっきまで二人がいたベッドに体重を受け止めてもらい、一瞬閉じた目を開くと、きらめく牙が映った。

「へへ……捕まえたでぇ……」
「おい、奈緒……奈緒?」

 雲に覆われていた月が姿を現したのが、天井の穴から見えた。普段の夜空に浮かぶものよりもずいぶんと大きな、不気味ともいえる赤みを帯びた満月。魔翌力を発しているかのようなその月光を遮りながら、奈緒が俺を見下ろしている。肩で息をして、湯気が立ち上りそうなほどに、汗ばんだ頬を上気させている。涎が垂れかけているのか、唇の端が暖炉の明かりを反射して、ぬらりと光った。紫色の瞳が赤みがかった輝きを帯びている。

「私、事前に色々調べて、さっきの撮影、めいっぱいオオカミになりきったんです」
「あ、ああ……こっちが怖くなるぐらい、迫力あったぞ」
「今日はお月さんがでっかくてキレイやなぁ……って思ってたら……フゥ……撮影本番中、めっちゃ気分が盛り上がってきて、興奮……しすぎて……」

 底抜けに明るい声のトーンは、激情を抑えつけるかのように下がっている。途切れ途切れの言葉が一音節ずつ耳の奥へ忍び込んでくる。

「ハァ、ハァ……私もう、我慢でけへん……」

 餓えた獣が、獲物を前にする舌なめずり――とろみのついた唾液を纏ったピンクの舌が、艶々したリップの輪郭をねっとりとなぞった。理性の薄れた瞳は妖しく爛々と輝き、目に刺さる月光が追い打ちをかけてきた。目をつぶった瞬間、横たわる俺の腰を挟み込む、スカートの下の引き締まった太腿の圧迫感に気づいた。

「……したい……プロデューサーさんと、ここでしたい……」
「よ、よせ、こんな所で。ここ屋上だけど、誰か来ないという保証は――」
「今すぐやないと、あかんのですっ!」

 仰向けになった体を起こそうとしたら、両手首を掴まれてベッドに押し付けられた。マウントを取って歯を見せた奈緒の、犬歯がやけに目立っている。

「はぁ……はぁ……大人しゅうしといて下さいよ。こんな時間に屋上来る人なんてまずおらへん。大声出さんとけば大丈夫ですって」
「嘘だろ……う……動けない……!?」

 年下の女の子を振りほどくのなんて造作もないこと、と考えていた俺の予想は裏切られた。一体なぜ? 俺の力が入らないのか、奈緒の力が強すぎるのか、腕を持ち上げることができなかった。この小さな異世界には、謎の力場でも発生しているのか? それとも、目の前のオオカミが、何らかの魔術でも使った? ありえない。ここは現実世界、現代の東京だ、そんなファンタジーめいたことが起こるわけが――

「うっ……!?」

 首の根元と肩の境目に温かい息がかかったと思ったら、硬いものが刺さった。噛みつかれた。この尖ったものは奈緒の犬歯か。俺の首筋に顔をうずめている。皮膚を突き破られる感覚こそ無いものの、ガリガリと歯が、いや牙が俺の体の表面を品定めしていく。動揺から湧いてきた汗がこめかみを伝っていくのを感じると、ぬらぬらしたものが追いかけるように、それを舐めとった。ぞくぞくするくすぐったさに思わず身をよじる。

「ええ顔しはりますね、プロデューサーさん。あ~……めっちゃそそる……ホンマ美味しそうやわぁ……♡」
「な……奈緒」
「奈緒やない。今の私はオオカミさんやで」
「……オオカミさん、俺を……食うつもりなのか?」

 捕食なんて馬鹿げている、と考える自分も確かにいたが、馬乗りになって月明かりの陰になりながら、ギラついた目で俺を見下ろすこのオオカミが、今にも喉笛を食いちぎってきそうに――この部屋に充満する異様な空気に酔いかけていた俺にはそう思えた。牙の刺さった感覚が、皮膚にまだ残っている。肉食獣に捕らわれ、今にも食われる瞬間の哀れな獲物は、こんな心境でいるのだろうか。

「なんぼ腹ペコでも、ホンマに食うわけ無いやないですか……下のお口でちょっと頂くだけですよ。最近、ご無沙汰やったし……あっ……! あかん、擦れただけで気持ちええ……頭おかしなってまう……」
  
 奈緒が下腹部を擦りつけてきた。首筋にかかった溜息には熱と湿気がこもっている。布地越しに互いの腰が擦れる度、首のチョーカーとブラウスにあしらわれた薔薇から垂れ下がった三日月のアクセサリーが揺れ、月明かりを反射して薄闇にきらめいた。

 獲物の輪郭を確かめるかのように、オオカミの舌があちこちを這い回る。温かくぬめぬめした器官が素肌に触れると意識がそこへ集中してしまい、ゾクゾクとした寒気にも似た何かが背中を駆ける。耳にかじりつかれ、顎の下をなぞられ、口の中まで蹂躙されているのに、抑えつけられたままの両腕は相変わらず動かせない。屈辱、恥辱と、目の前の体を抱きしめられない切なさが胸中に流れ込んでくる。ただでさえはねのけられないのに、体のあちこちに加えられる、舌と歯による攻撃が精神をかき乱して、筋肉に力をこめることもままならなかった。

「ふっ……ふぅ……なんや、ボーっとしてきよる……」

 オオカミは器用にも口だけでシャツのボタンを外していく。布地を食い破ろうとしないのは、まだ残る理性なのだろうか。鎖骨の辺りまで剥きだしになった肌に、さらさらしたマシュマロのような頬が押し付けられる。頬ずりから直接伝わってくる体温ははっきりとした熱を持っていた。奈緒を顔を上げると、淫らに潤むその瞳で、熱を視線に乗せて注ぎ込んでくる。触られてもいないのに、腰に疼きを感じ始めていた。

「ん……はふっ……はふ……」

 いつしか奈緒は言葉少なになり、微かに囁かれた「好きです」という一言を最後に、ヒトの言語を発しなくなってしまった。あの底抜けに明るい声が紡ぎ出す言葉がこの小屋の中の空気をにぎやかに高めることはなく、情欲と興奮にまみれた吐息ばかりが色香と共に空間を満たし始めていた。所有権の主張のつもりなのか、部分的に引きずりだされた俺の素肌はあちこちがオオカミの唾液まみれだ。そんなケモノの思惑通りになってしまったのか、抵抗しようという意思が徐々に制圧されていく。
 体表面への刺激は、皮肉なぐらいに俺のオスを呼び覚ましていた。ズボンの中が窮屈で仕方がない。肌を重ねる関係の相手が二人きりで目の前にいるのでは遅かれ早かれこうなっていただろうが、興奮の昂りよりも、恥ずかしさが強かった。捕食者はその感情を読み取っていたのか、恥じ入る俺を見ては満足げに目を細めてニヤついていた。

 拘束が解かれた。だが、自由に動かせるようになったはずの両腕には重い痺れが残っていて、思うようには動かせない。その間にもオオカミの手が、獲物の性器を拘束から解放しようとファスナーを下ろし、隙間へ突っ込まれてくる。空気の中へさらけ出されたそれにはもうめいっぱい血液が流れ込んでおり、まぐわいの準備ができていると自ら分泌した粘液で主張している。硬くなっていることを手で数往復擦って確かめてから、オオカミは口の中へ獲物を招き入れた。

 れろ、じゅる、ちゅる……ずずずっ……

 ねっとりとぬめった穴の中で、分泌していたカウパー氏腺液は一滴残らず吸い出された。後から湧き出てくる分も、湧いた先から唾液ごとすすられ、若い娘の姿をした獣に飲み下されていく。柄をしっかりと握りしめられながら、先端の粘膜を、唇の内側の粘膜で隙間無く責められる。傘の裏側を舌先でなぞられて腰が浮いた。裏筋いn吸い付かれて思わず喉から声が漏れると、薄暗い部屋の中で鈍く光る瞳が、俺を睨みつけた。「獲物は黙っていろ」ということか……?
 濃い射精を促すかのように、サラサラした生地の手袋を纏った掌が睾丸を捏ねる。サイドテールの髪を揺らしながら、情熱的というよりも野性的な、勢いに任せたフェラチオが続いた。発情した動物の呼吸になって、奈緒は亀頭の表面で舌を暴れさせている。いつもする時のような丁寧な愛撫ではない貪るようなそれが叩きつけてくるものは、肉体的な刺激よりからくる気持ちよさよりも、精神を著しく昂らせる興奮だった。
 匂い立つ色香にあてられ疼いていた白いマグマが、地表を目指して上ってくる。絶頂の兆候を悟ったオオカミが口角を上げた。早くよこせ、とでも言わんばかりに、性器を咥えこんで吸い付いてくる。流れを止める堰が崩されるのはあっという間だった。

「あ、奈緒……ん、っ……!!」
「!! お、おぉ……んぐ……」

 腰を抱え込まれて逃げることもできず、噴きあがった絶頂は捕食者に残らず差し出すことになった。直接流れ込むザーメンが、喉を鳴らしてごくごくと飲み下されていく。尿道を駆けあがる吐精の悦楽を隠しきることはできず、息に混じって声が出てしまったが、オオカミがそれを咎めることは無かった。

 吐き出した精液を一滴残らず頂かれてなお硬いままのペニスを、奈緒はうっとりと見下ろしている。膝立ちになって、ベルトでぴっちり締められたベストに浮き上がるウエストラインが目を引き付ける。奈緒がスカートの裾に手を突っ込み、脚からショーツを抜き去った。ライトグリーンのそれは股との間に粘り気のある糸を長く引いていて、クロッチの大半が変色してしまうほどにメスの愛液を吸い込んでいて、ベッドの隅に置かれた時に、べしゃっと聞こえてきそうなぐらいだった。接合器官が剥き出しになったことを見せつけて挑発するように、スカートの裾がめくられた。茂みの奥に泉が湧いているのが、数十センチの距離でも分かる。クレバスの内側の粘膜が充血して、陰裂を持ち上げていた。

「ハッ、ハッ、ハッ……」

 結合の期待に首筋まで紅く上気させ、発情したケモノと化した奈緒が、だらしなく舌を覗かせながらまたがってくる。
 下ろされたスカートの裾の向こう側で、熱を持った泥と接触した。その泥が、オス全体を包み込みながら、ずぶずぶと沈みこんでくる。

「きゃう……っ……! あおぉーーんっっ……!」

 根元まですんなりと飲み込まれた。ずいぶん長い間濡らし続けていたのだろうか、俺を咥えこんだ内部はしっとりどころか、とろとろになっている。中に溜まっていた分が押し出されて、幹を伝ってくる。オスを受け入れたメスの胎内が、形を覚えるかのように、ぎゅう、ぎゅう、ぎゅうと収縮する。大きな満月の光を背に浴びながら、恍惚とした目になって、捕食者が獲物の唇を奪ってきた。絡んでくる舌の熱心さは、睦み合って興奮の高まった奈緒そのままだ。唾液につい数分前の射精の残り香が混じっていたが、そんなことには構わず、奈緒に応えた。

「ハッ……ハッ……う゛……あうっ、あうっ、あううぅ!」

 奈緒が腰を揺すり始めた。絞ったら水滴が垂れてきそうなほどに湿った息遣いの中に、恥じらいを含んだ可愛らしい喘ぎ声ではなく、叫ぶのを抑えるような呻き声が混じる。喉の奥から絞り出されてくるような奈緒の声は、本当に野生に帰ってしまったかのように動物じみていた。滑りが良くて痛みを感じることは無いが、内部の圧力がすさまじい。奥へ誘い込もうとするヒダの蠕動が強すぎて、腰ごと持っていかれてしまいそうだ。じゅくじゅくに濡れた内壁が絡みついて、敏感な粘膜に吸い付いてくる。二人分の体重を受け止めるベッドがギシギシときしんでいた。

「っん!! ……フーッ! がうっ……!」

 快楽に突き動かされるように、スカートで覆われた局部を下からノックして奥にぶつけると、腰を叩かれた。性衝動にまみれた瞳がキッと険しくなり、獲物となり果てた俺を貫く。タイトな深緑のベストとその奥の上品なブラウスを持ち上げる起伏が、ブローチごとゆさゆさ揺れていて、その扇情的な騎乗位の光景に手を伸ばしていたのだが、その手もはたかれてしまった。

 ――分かった、降参だ。征服された者の立場を弁えるよ。

 両手首をつかまれ、一度解放された両手は再び拘束されてしまった。折り重なってきた奈緒の体重がかかる。立場が逆だったら、まるでレイプだ。先程の謎めいた怪力が作用しているかどうかは分からなかったが、男の一番の弱点を、刺激の強すぎるヒダで握り締められていて、今は抵抗するもしないもなかった。それよりも、始まってしまった性行為をこのまま続けたいという思いが思考を上書きして塗りつぶしていく。

 人体が生殖行為のもたらす断続的な快楽に耐えられるようにできているはずもなく、溜まってきた本能が発射へのカウントダウンを始めていた。獲物として捕らえたオスとの性交を貪るメスオオカミの、動物的なピストン運動に、ヒトとしての理性が溶けだしていた。自らオスとして動くことを許されずにいる内に俺までケモノになってしまったのか、このまま膣の中へ倫理観念ごと放ってしまいたくてたまらなくなっていた。腰の奥で子種がグツグツと煮えている。温かい肉の中でペニスがこれ以上ないほどに硬く突っ張った。

「……~~っ!!」
「ふおっ、はふぅ……!! んきゃ……あうぅーーーー!!」

 交尾の完遂。臨界点を迎えたオスが弾けた。性器に蓄えられていたものが快楽信号を副産物としながら排出されて、メスの中に注ぎ込まれていく。緊張が弛緩に変わってゆく瞬間のカタルシスが全身に叩きつけられてくる。こちらとほぼ同時に奈緒も絶頂を迎えていたのか、がくがくと腰を震わせている。膣内が何度も複雑にうねり、射精を後押しするかのように搾り取ろうとしてきた。そのせいで、一度の拍動が次の拍動を呼び、もう十分だ、と思っても中々射精がおさまらなかった。

「……わうっ……はふ、はふっ……」
「わっ……!」

 長い射精が終わった。ペットの犬が愛情表現で飼い主にそうするみたいに、奈緒が顔を近づけてきて、ぺろぺろと頬や口元を舐めてきた。間近で覗き込んだアメジストの瞳は、まだ興奮冷めやらず。奥の方にハートマークでも浮き上がっているのではないかと錯覚するぐらいだった。ナカの混合物を攪拌したいのか、まだ繋がったままの腰を、奈緒は円を描くように回している。スカートのヒダの隙間から、ぬちゅ、ぬちゅ、というねっとりした卑猥な水音が漏れ聞こえてきた。俺も呼吸が整わず、ハッハッと短く呼吸しながら唇を貪る奈緒と、空気の中で息を溶け合わせていた。

 再び両手が解放され、ぬかるんだ膣内からオスの性器が抜き取られた。それが浴びていた二人分の粘液を舐めとると、奈緒はトロけた視線を投げかけながら、スカートをめくりあげた。背を向けて腰を高く持ち上げ、つるんとした尻がこちらに差し出される。胎内への入り口を中心に一目で分かるほどそこはベトベトで、透明な愛液の上に俺が吐き出した白濁がこってりとトッピングされている。

「あうっ、あうっ」
「こっちから入れろ、ってことか……?」
「くぅーん……」

 盛ったメスオオカミが頷いた。早くしてくれとでも言うのか、丸い臀部を左右にフリフリしている。アタッチメントの尻尾もヒップにシンクロして揺れていて、実際に尻尾をパタパタ振っているように見える。結合部になっていた、これからまたそうなる予定の膣口を奈緒が指で開いた。サーモンピンクのメス肉がひくひくと震える度、中から湧き出てくるものと勘違いを起こすぐらい、どぷどぷと精液の残滓が零れ出てくる。そんなものを目の当たりにして大人しくしていられるほど、俺は枯れてもいなければ、理性的でもいられなかった。張り詰めたペニスへ更に血液が集中するのを感じながら、すぐさま二度目の交尾を始めるべく、剥き出しの己を奈緒に突き立てた。

「きゃひっ……!! ハッ、ハッ……あおっ……あおおぉんっ!!」

 固形物と液体の中間のようなゼリー状のカクテルが、奈緒の中にはまだたくさん残っていた。腰を打ち付けて引き出す度に、カリ首に引っかかったそれが掻き出されてあふれ、男性器を受け入れて大きく広がった膣口の隙間からボタボタと垂れた。ヒトのペニスの仕様通りの働きだ。
 今ここで展開されているのは、恋人同士が想いを交わし合う愛の時間ではなく、ケダモノになってしまった者達の本能、その下品なぶつかり合いだった。皮膚の弾ける音。オオカミの鳴き声。粘液同士の合間に入った空気が潰される音。オオカミの鳴き声と奈緒の吐息。自分の呼吸。オオカミの鳴き声。こんな場所で出してはいけない音で、狭い一室の空気が満たされ、天井の穴から夜空へ上っていく。

「ふ、ふっ……ふうっ……あうう、ううっ……!!」

 掻き出せる精液は一通り掻き出せたのか、肉茎が段差の存在を明確に感知し始めた。ずっと潤ったままの内部はそのままに、奥まで突き入れても入り口近くまで引き抜いても敏感な部分が引っかかれて、一往復ごとに頭が痺れる。このまま、もう一度奈緒の膣内に出したい。ヒトをヒトたらしめているものを削ぎ落しながら、単純明快な往復運動を繰り返す。打ち出して空になった精液袋に予備が充填されていき、導火線が少しずつ短くなっていく。
 後ろから突きながら、先程は手を触れさせてもらえなかった胸元にも手を伸ばした。衣服の生地の上からでも分かるぐらい、乳首が硬くなっているのが指先に伝わって来た。体の内側へ押し込みながら、それをぐりぐりと捻った。

「っぁ……っぐ! あおお、お゛ぉぉーーっっっ!!」

 下半身ばかりに刺激が集中していたからなのか、突如襲い来た乳首への刺激が暴発を呼んで、奈緒は達してしまったらしかった。強く握りしめられたシーツには皺が密に寄っている。ナカが痛いぐらいにきつくなり、やがて締め付けが緩くなると、どろっとした濃厚な蜜が分泌されてくるのを感じとることができた。こちらもだいぶ込み上げてきていたから、束の間のインターバル代わりに、布地越しでも柔らかい、掌に感じる重みを愉しみながら、落ち着くのを待った。

「オオカミさん、そろそろいいかい」
「……わうっ。……あう……! あ゛ふ……はお……おぉん……!」

 野生のオオカミというよりは人に慣れた犬のようになりつつあった奈緒の奥へ、再び腰を押し込む。厚みのある愛液が湧き出ていて、膣内は再びドロドロ状態に戻っていた。かといって締め付けが緩むこともなく、ぐちゅぐちゅと音を立てながら往復すれば強く肉茎が扱かれる。カリ首がヒダに引っかかって、その場で弾けてしまいそうだった。
 ぶちまけたい欲求は一度クールダウンさせたはずなのに、あっという間に元のラインを大幅に追い越してしまっていた。もう、腰を止めても射精は止められない。奥から手前への大きなピストンから、いっそう狭い最奥をこじ開けるための、細かく刻むピストンへ。発情して盛りきったメスへ種付けする準備の暇もなく、濃いザーメンがあふれ始めていた。

「あ……出る……っ!」
「へっ……へっ……! あぅ……、あ゛お゛うっっ!! きゃうぅぅぅん!!!」

 できるだけ奥へ、できるだけ多く、できるだけダイレクトに。破裂するその瞬間まで突き込み続け、鈴口の先端から熱が飛び出していくと同時に、腰のコントロール権が失われた。それ以上動くこともできず、若い胎内に子種が浴びせられていく。この短時間で三度目の射精なのにも関わらず、大きな波が過ぎた後も、俺の牡はビクビク震え、精液を小刻みに吐き出し続けていた。

「ん……はっ……はふ……」

 二度の膣内射精を経た後も、体内から出てきて互いの体液まみれになったそれを、やっぱりすぐに奈緒は舐めとってくれた。
 よくツボを心得た熱心なフェラチオにまた硬さを取り戻しかけるが、疲労感がいよいよ重たかった。

「奈緒、もういいよ、ありがとう」

 サラサラ触り心地のいい髪に指を通して頭を撫でると、奈緒は心地良さそうにしていた。が、体を起こすと俺の手首をつかんで押し倒し、またがってきた。

「ふーっ、ふーっ……!」
「奈緒……?」

 舌なめずりをしてニヤついた笑みを浮かべる奈緒が、またオオカミに戻る。
 俺は……悟ってしまった。主導権がこっちに移ったのではない。自らの欲求を満たすため、一時的に明け渡したに過ぎなかったのだ。

「よせ、もう十分だろう……くそっ、ち、力が入らない……うぁ……」

 夜空に輝く満月が、ひどく眩しかった。

 * * * * * * * * * *

 ホンマすんません、と、私服に着替えた奈緒が四回目の謝罪を口にした。

「そんなに重ねて謝ること無いだろ、もう分かったよ」
「や、だって……他の人も撮影に使うトコなのに、シーツ汚してもうたんとか、他にも色々」
「マットレスまでは染みていなかったから大丈夫だ。もう洗濯したし、明日の朝一には乾いてるだろ。衣装が汚れてないのは幸いだったよ」

 あまりにも濡らしてしまってそのままでは履けず、せめてもの足掻き、と手洗いして応急処置を施したショーツを、奈緒はドライヤーで乾かし続けていた。腰から下を覆うバスタオルの下で手がモゾモゾと動いている。自分が仕事をするデスクのすぐ隣で熱風を吐き出す音がごうごう鳴っているのは、なんだか間が抜けていた。

「途中から夢心地になってしもて、記憶もあやふやなんですけど……勢いあまってつい、首の所に歯型つけたんは覚えてて、その、手首も……跡、残ってますやんね」

 奈緒に噛まれた箇所をスマホのインカメラで覗いてみると、確かに、犬歯の刺さった跡が一か所、Yシャツの襟から見えてしまっている。拘束されている間ずっと握りしめられていた両手首には、まだ赤い筋がくっきりと浮かび上がったままだ。ちらりと視線を向けると、その手首を奈緒がじっと見つめ、頬をほんのりと染めていた。

「左手は腕時計で隠せるから平気だろう。首は……まぁ、湿布でも貼っておくか。右手が問題だが……それは後で考えたいな」

 全身が情事の倦怠感に包まれている。業務報告を作成する指に力が入らなかった。

「……それにしても、担当アイドルに襲われるとはな」
「あ、逆の方が良かったですか? ええですよ、何やったらまだ体ぽかぽかやし、下に何も履いてへんから、今ここで襲ってくれはっても……♡」

 口元を緩めて笑みを浮かべ、赤らんだ顔のままの奈緒が、誘う表情になった。いつもの陽気さからは想像もつかない、艶を帯びた視線から、思わず目を逸らす。

「ね、はよ……♡」
「無茶言うな。こっちが死んでしまう。それに、ゴムの手持ちだって無いんだ」
「……処方してもらった薬は忘れず飲んでるから平気ですよ。さっきだって一度もつけへんかったやないですか」
「できるだけの安全策は取らせてくれって」

 あのオオカミは、自分がくたびれて満足するまで、俺を解放してくれなかった。忙しさにかまけて溜まってはいたが、その貯蓄も全て吐き出してしまってもうスッカラカンだ。

「なぁ奈緒。あの馬鹿力は一体何だったんだ」
「えっ、プロデューサーさんが何の抵抗もせえへんかったんと違います? 『あ、口ではイヤやー言いながらもホントはしたいんや』って思ってましたけど」
「いや、思い切り腕に力を込めていたんだが、全く振りほどけなかったんだ。どうなってるんだ。『事前にオオカミのことを調べてなりきってみた』で説明がつくことじゃないぞ……」
「……オオカミ男? いや、私女の子やから、オオカミ女? あるやないですか。満月の夜、人間がオオカミに変身してまうって……」
「今日は確かに満月だが……それは……そんなはず……ないだろう」
「せやろかー……今日、日が沈んでからなーんか、いつもと違う気分なんですよ、ずっと」

 満月が人を狂わせる――都市伝説であるらしいが、潮の満ち引きが月の満ち欠けに影響を受けるように、そういった現象は遥か昔から物語として伝承され……現在だって、科学的根拠が無いとされているのにそういう話を信じる者は多い。オカルトじみた話には懐疑的な俺も、否定に対する確信を持つことはできなかった。

「……まぁ、それを今考えても仕方がない。奈緒、そろそろ乾いてるんじゃないか? もう夜も遅いし、家まで送るよ」
「あっ、ありがとうございますー! で、ウチまで送るって、今日はプロデューサーさんのおウチにお泊りしてってええってことですか?」
「そんなアホな。奈緒の家に決まってるだろ。明日もレッスンあるんだからちゃんと寝なさい。ただでさえ寝坊しがちなんだから」
「あいた~。『送り狼』やろかーって思ったんやけどな~!」

 単調なBGMになっていたドライヤーの音が止んだ。視界の右端でバスタオルがモゾモゾ動き、静まり返った夜の事務室で、衣擦れの音が生々しく鼓膜をくすぐってくる。クタクタになった体の疲労で誤魔化されていなければ、心をザワつかせてそわそわしている所だ。程なくして奈緒が椅子を立ち上がるのが見えた所で、俺もラップトップを畳んだ。

「プロデューサーさん、知ってはります?」

 駐車場に停めた車の助手席でシートベルトを締めるなり、奈緒が早速口火を切った。

「動物って一匹のオスが複数のメスとつがいになるのが多いんですけど、オオカミは一匹のオスとメスが夫婦になったら一生そのまま生きてくらしいんです」
「へえ、そうなのか。繁殖するには非効率だけど、誠実なんだなぁ。人間には浮気者もたくさんいるっていうのに」
「せやから……」

 シフトレバーに乗せた左手に、華奢な右手が重なった。

「プロデューサーさんも、オオカミでおって下さいね」
「……それって」
「ただの憧れとかやなくて、私、本気です。本気で好きなんです……! 私のことも、今よりもっと、好きになって欲しいねん……」

 いつもよりトーンを下げた声が、体を通して染みこんでくる。

「ええですか? その、ここ……」

 まぶたを縁取る長い睫毛が閉じられた。口づけを乞う表情に誘われるまま、唇を重ねる。
 互いの顔が離れると、奈緒は取り出したフェイスタオルで鼻から下を隠してしまった。

「な、なんやろ、あ~、あっついなぁ! こういうフンイキ、やっぱ慣れへんわ。あはは、あははは……!」
「……そんなあからさまに照れられると、こっちが余計恥ずかしくなるぜ。ほら、車出すぞ」

 アクセルを踏む右脚へ、わざと力を込めた。

 * * * * * * * * * *


 翌朝、控室で、今にも泣きだしそうな顔のひなたが駆け寄ってきた。

「ああ、プロデューサー、助けてくれよぉ~」
「ん? どうしたひなた、何があった」
「昨日、屋上の小屋にオオカミの幽霊がいて……多分、今もいるよぉ」
「……な、なな、何だって?」
「昨日の夜、屋上にタオル忘れてたのに気づいて取りに戻ったんだけども、小屋の中から苦しそうな呻き声みたいなんが聞こえてきて、あたし、おっかなくなってその場から逃げちまったんだあ。奈緒ちゃん、きっとオオカミに憑りつかれてたから、昨日あんなおっかなかったんだべさ……」
「あ……ああ、そう、そうなのか。昨日は不気味なぐらい、でっかい満月だったからな。そういう……錯覚、を起こすのも、無理、ないかも?」
「……プロデューサーも、ふるえてないかい? オオカミ、おっかないもんなあ」
「い、いや、俺は大丈夫だ。早く取りに行こう。今なら明るいから、ほら、ついて来な」
「あぁ~待って、置いてかないでぇ~!」


 月の眩しい夜、屋上の小屋へ近寄る者は、亡霊に言葉巧みに誘われ、魂を囚われたままオオカミに取って食われてしまう――。
 そんな尾ひれのついた噂話がハロウィンのシーズンに生まれ、劇場の隅々へまことしやかに行き渡った。
 ある者は恐れおののき、ある者は呆れかえり、ある者は好奇心を抱き、そしてある者は、知らぬ振りを決め込むのだった。

 終わり

以上になります。目に留めてここまで読んでくださって誠にありがとうございます。
何かしらの反応頂けると今後の励みになります。

あの表情に見合った獣のようなエッチいいねぇ
乙です

横山奈緒(17) Da/Pr
http://i.imgur.com/Qvxnj6D.png
http://i.imgur.com/CznDNjL.png

>>2
木下ひなた(14) Vo/An
http://i.imgur.com/wzpc2ZD.png
http://i.imgur.com/Tz2MdL1.png

投下した後に見直したら二か所も誤字を見つけてしまいました。校正した時に見落としてた……。
すいません、興醒めになっちゃうかもしれませんが見なかったことにしてください。

またいい感じの話を思いついたら書きに来ます。

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