【アイマス】蒼い鳥の約束 (12)
アイマス、千早の一人称視点SSです。
処女作、完結まで書き溜めてあります。よろしくお願いします。
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青い鳥が羽ばたいて消えた。
幸せの青い鳥が、飛んでいった。
幸せは、消えてしまったのだろうか?
私は、そうは思わない。
幸せの青い鳥は、最初から近くにいた。
振り返れば仲間がいて、共に歩んでくれる。
くじけそうなときには、励ましてくれる。
成長できたときには、喜びあえる。
共に、成功を分かち合える。
これが幸せでなくて何だというのだろう。
そのことに気づけたから、私にはもう、青い鳥は必要ない。
幸せは、近くにあるうちは気づかない。
後から思えば、あの日までは本当に幸せだった。
当たり前の日常が、当たり前に続いていた。
あの日から、私自身も、私の周りも、何かが壊れていった。
私は、閉じた世界を作り上げた。鳥籠のように閉じた世界。
幸せだった日々を忘れないため、
そして自分の不甲斐なさを忘れないため。
私はあの子の幻影を追い求め、あの子の為だけに歌い続けた。
家族も、友達も、感情も、邪魔だと思って捨ててしまった。
そんなある日、私は彼に出会った。
彼は、私にとって最高の仲間たちに引き合わせてくれた。
私は、拒み続けた。過去に囚われ続けた。
それでも彼は、彼女たちは、私を信じ続けてくれた。
私を支え続けてくれた。…私を、仲間だと思い続けてくれた。
私に、歌うことの喜びを思い出させてくれた。
捨てたはずの友達と感情は、今では私の宝物になった。
家族ともいつかやり直せると、希望を持てるようになった。
それから、私の歌は変わった。
「今」を、限り無く幸せだと思えたから。
心に刺さる歌から、心を温めるような歌へ。
この変化には、様々な反響があった。
「今の優しい歌のほうが好き」という声。
「昔の鋭い歌のほうが好き」という声。
そのことに思い悩みもした。でも、
「今の歌い方のほうが好きだよ」
リボンのよく似合う、私の親友はそう言ってくれた。
「私には難しいことはよくわからないけど、
昔は千早ちゃん、歌ってるとき辛そうだったから。
今は心から楽しそうに歌ってる。
だから私は、今の千早ちゃんの歌が好き」なんて、にっこり笑って。
もう一人、私をここまで連れてきてくれた人も、
「俺は歌うための技術には詳しくないんだけどな」と頭を掻きながら、
私の知らなかった私の歌を教えてくれた。
曰く、昔の歌い方には「覚悟」を感じた。
曰く、今の歌い方には「希望」を感じる。
「どっちがいいかなんて俺には決められないけど、
俺は今の千早の歌のほうが好きだな」と、にやりと笑って見せた。
そう。どちらが正しいなんて無い。
昔の私の歌は、昔の私が命を削り生み出した、
私という存在の結晶。歌に執着し続けた私の、存在そのもの。
その時の私に出来る限りを尽くしたと、胸を張れる。
今の私の歌は、「希望」の結晶。
みんなが私に希望をくれたように、私も多くの人に希望を届けたいと思ったから。
自分自身と閉じた世界のために歌うのでは無く、
多くの人と広い世界のために歌う歌。
これが、今の私の歌だ。
「泣くことならたやすいけれど…」
この歌の捉え方も、ずいぶん変わった。
昔の私は、この歌に自分の孤独感を重ねていた。
でも、この歌はそれだけじゃないことを、今の私は知っている。
青い鳥は、幸せを運ぶ鳥。
過去は忘れず、しかし囚われず、自由の翼で希望に満ちた未来へ羽ばたく、
それが今の私の「蒼い鳥」だ。どこまでも飛んでゆけ。
誰かのもとへ、希望を運んでほしい。
「歩こう、戻れぬ道 歌おう、仲間と今…」
みんなと交わした「約束」。私には仲間がいる。
昔の私では、きっとこの歌はうまく歌えなかった。
この歌は、今の私のための歌だから。
夢を見て、前を向いて生きていく、未来への希望の歌。
アイドルとして、果てない道を歩いていく、如月千早の歌。
きっともう、あの頃の私には戻らない。
帰り道は、忘れてしまった。
終わりです。ありがとうございました。
おつー
一行書くごとに空白の行を入れて行間を空けると読みやすくなるよー
>>11
あー…完全に失念していました…
お恥ずかしい…
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