【デレマス】工藤忍と林檎と初めてのファン (18)
綾瀬穂乃香とBBAPシリーズ(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=9677765)の番外編です
※地の文混じり、工藤忍の視点で進みます
※プロデューサーはBBAです
※解釈違い、口調のミス
等々ございますがご容赦いただければ幸いです
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志望動機はバッチリ覚えてる
趣味も特技も話せる、好きなアイドルについてだって……
とにかく大丈夫、今日のオーディションの為に昨日までいっぱい準備してきたんだから
「工藤忍さん、中にお入りください」
「はいっ!!」
ついにアタシの番だ!
面接の部屋には学生みたいな背の低いお兄さんと50~60代くらいの痩身の女性、いかつくてかなり背の高い男性が座っていた
「よろしくお願いしますっ!」
「工藤忍さんか、そうさね……まずは何かモノマネをしておくれ」
「うえっ?モ、モノマネ??」
「できないかい?」
「い、いえ!やりますっ!」
アタシは咄嗟に昔よく流れていたCMのモノマネをした
「ヒルコです。エコキュート始めて聞きましたが、俺より人気の給湯機らしいです。俺の人気も沸かして欲しいとです。ヒルコです、ヒルコです、ヒルコです…」
……
…
やり始めたあとに気づいた
これローカルCMだから伝わらないやつだ
面接の初っ端から予想外のこともあってか、その後の内容はほとんど覚えていなかった
ただあまり良い結果ではないことは何となく感じていた
「お疲れ様、この後はダンスの審査は1時間後だからそれまでは休んでおくといいさね」
「はい、ありがとうございました」
ようやく解放されて緊張が緩んで油断したのか、それともオーディションの事で頭がいっぱい過ぎたのか、一瞬つまづきそうになったけど無事に休憩室にたどり着いた
「次のダンス審査でさっきの分を取り返さないと!」
ピシャッ
アタシは自分の頬を叩き気合を入れなおす
「よし、次のアタシの番まで動きを確認しておこう」
鞄からスマホを取り出してアイドルのダンス動画を再生し、動きを真似して、また動画を見て……
………
……
…
「工藤忍さん、工藤忍さーん?」
「あっ、はい!」
集中し過ぎてたのかアタシを呼ぶ声に気づくのが遅れてしまった
「いま行きます!」
口元の汗を拭って急いで身支度をし、審査会場に移動した
その足取りは緊張の分を差し引いても重く感じられた
「ちょっと練習し過ぎたかな?」
「よろしくお願いします」
審査員はさっきと同じ3人だった
「それじゃあいくさね。私の拍子に合わせて課題の振り付けを踊るようにね。1、2、3、4っ」
1、2、3、4…1、2、3
ステップを踏み間違えた拍子に足が縺れてしまい、動きが止まる
審査員の手拍子も止まっていた
「その様子だと今回は無理そうさね、またごj」
「アタシ、まだできます!もう一度やらせてください!」
嫌だ、こんな失敗で諦めるなんて………
絶対にアイドルに……
夢を掴むんだ…
審査員の顔はボヤけていき、視界には審査員達が倒れていく
アレ、みんなどうしたんだろう……
気がつくとそこは見知らぬ天井……ではなくさっきまで居た休憩室だった
「目が覚めたかい?」
「あれ、なんで審査員さんがここに?えっと確かアタシここでダンスの練習しててそれで審査が始まって途中で足が縺れて……!」
「思い出したかい?まったく、休憩しておけと言ってたのにね……ってまあオーディション会場で堂々と仮眠を取るってのは難しいか」
「くっ…これまで頑張ってきたけど本番でこんな失敗をするなんて……お金も食欲もないからってご飯抜いてたのがマズかったかなぁ」
「娘盛りの女の子がなんちゅう生活してるさね」
「アタシ両親とケンカして、それで家を飛び出してきちゃったの。それで一人暮らしになってちょっと無理してて」
「なんで、そんな無理をしてまでオーディションを受けに来たんだい?」
審査員はまっすぐアタシを見据えて問いかけてきた
「そんなの、アイドルになりたいからに決まってます!!」
「小さい頃からアイドルに憧れてきました。その為にずっと練習してきたし、ラジオを聴いて頑張って標準語も覚えたし、雑誌でファッションも勉強しました」
「アイドルになりたいって言っても、家族の誰もがそんなのは無理だ、諦めろって……だけど、それでもアタシはアイドルになりたかったんです」
「それがアタシの夢だから」
それまで真剣な表情をしていた審査員の女性が表情を和らげてアタシに告げた
「そうかいそれがお前さんの想いか……うん、よく伝わってきたよ。それじゃあ、これからの活躍を期待してるからね」
そう言って彼女は部屋を後にした
「はぁ、今回はダメだったかぁ…。気を取り直して、また別の事務所のオーディションを受けよう!」
数日後
「次はどこの事務所を受けようかな、オーディションが近いところだと……」
ピンポーン
郵便が届いた
それはアタシ宛の大きな封筒だった
「これは……この間受けたプロダクションからか。途中で失敗したのにわざわざ送ってくれるんだね」
内容は分かっているけどいざ見たら落ち込みそうなのでアタシはそれをゴミ箱に捨てた
prrrrrrrrrr
スマホに電話がかかってきた…けど知らない番号だし無視しよう
prrrrrrrrrr prrrrrrrrrr prrrrrrrrrr
「……また同じ番号か、一応出てみるか……はい、もしもし」
『もしもし、工藤忍かい?私は……』
その電話はこの間受けたプロダクションの審査員、もといプロデューサーからのものであった
『お前さんに封筒を送っておいたよ。そろそろ届く頃だと思うんだがね。その中にこれからの日程とか集合場所とか入場証とか色々入ってるから、くれぐれも捨てないようにね。お前さんそそっかしそうだからね。あと手紙も入れておいたから読んでおくれ。それじゃあね』
矢継ぎ早に言うだけ言って切ってしまった
ゴミ箱の中から封筒を救出し、中身を取り出すと合格のふた文字が目に入った
「嘘、なんで…?」
中身を取り出していくと、合格の通知やこれからのスケジュール、事務所への入場許可証などとともに手紙が一葉同封されていた
「確かこれを読んでおけって」
工藤忍へ
ふつうに合格通知だけ送るとお前さん何で合格なのか問い詰めに押しかけそうだから手紙を同封するよ
まず、何で合格にしたかだけど
それは私がお前さんの夢を信じてみたくなったからだよ
確かにオーディション中は酷いもんだったよ
鏡ちゃんと見てきたのかい?って聞きたくなるくらい窶れてたしクマも酷かった
面接中もうわの空みたいだったしね
だけどね、お前さんが休憩室で自分の夢を話してくれた時の表情や眼差しからどれだけ真剣にアイドルになりたくて努力してきたか、よくよく伝わってきた
だからそんな忍がステージに立っている姿を見たくなったんだ
それじゃあ、また事務所で会えるのを楽しみにしているよ
アイドル工藤忍 のファン第1号より
「初めて…誰かに夢を信じてもらえた……それにアイドル工藤忍かぁ…ふふっ」
「よしっ!」
16年間、ずっと憧れてきた舞台へ
今日ようやく一歩を踏み出すことができた
アイドルと言ってもまだ名前ばかりだし、これからも今まで以上に辛いことや厳しいことはあると思う
だけど、アタシはアタシの憧れたアイドルになるために、アタシの夢を叶えるために全力を尽くしていきたい
アタシの夢を初めて信じてくれたファン第1号の為にも、ね
fin
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