カズマ「花粉症?」めぐみん「はい」 (13)
それは、ウィズの胸をどうにか不幸の事故に見せかけて触ったりできないか? などと考えていたらすっかりお昼前になった日の事であった。
「カズマがこの時間まで起きてるなんて珍しいわね?」
のどが渇き台所で水を飲んでいた俺を物珍しそうにアクアが見てくる。
「ちょっと考え事があって眠れなかったんだ」
「ふーん」
そうだ。アクアがウィズをからかい、ウィズが死にかけている所でウィズを助けるふりをして胸を揉もう。
と俺が考えをまとめていると、めぐみんが自室からやってきて嬉しそうに微笑む。
「カズマ。おはようございます。今日は早いんですね」
「いや、今から寝る所」
「こ、この男は……」
おっと、さっきは天使みたいに微笑んでいたのに、蔑んで見てくるとか酷すぎだろ。
ったく、俺は遊んでいたわけではない。
俺達は魔王軍幹部を倒したカズマ一行なのだ。だから、いつ魔王軍から暗殺されてもおかしくない。
そのために身を張って警備をしていたというのに……。
「ったく、俺はだな----」
俺が警備の必要性を訴えようとめぐみん達の方を向くと、俺の言い訳タイムを邪魔するかのように警報が鳴り響いた。
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『花粉症警報! 花粉症警報! ただいまこの街に花粉症が近づいています! 街の住人の皆様は直ちに家の中に避難してください!」
「うっせえええ! 花粉症ごときで警報なんて鳴らすな! ったく明日ギルドに文句を言いに行こう」
俺の反応を見ためぐみんが驚いたように。
「花粉症ごとき!? 花粉症なんですよカズマ! これは非常に危険です!」
「いや花粉症だろ? あのくしゃみが出たりする」
「そうです! その花粉症です!」
まさか、めぐみんは花粉症か?
ああ、俺が花粉症『ごとき』と言ったことに怒ってるのか?
確かに花粉症は酷い人は結構きついと聞くし。これは軽率だったな。
「もしかして、花粉症『ごとき』って言ったのに怒ってるのか? いや、その悪かったよ。俺は花粉症にかかった事がないからさ」
「そ、そうだったんですか。なるほど今までかかった事ないという事は、花粉症対策は完璧のようですね」
「ああ、俺くらいになると花粉症が避けていくぐらいさ」
「な、なんと! あの凶悪な花粉症が避けていく!? さすがカズマです!」
なぜかキラキラした目で見てくるめぐみんにガッツポーズを取る俺。
尊敬されるっていい気分だな~。
……。
…………。
……………………。
凶悪な花粉症?
半分以上寝ていた頭をたたき起こしてめぐみんに聞く。
「な、なぁ、花粉症って、くしゃみとかのあれなんだよな?」
「はい。さっきも言いましたが、くしゃみとかのあれですよ?」
めぐみんが不思議そうに聞いてくる。
いや、不思議なのは俺なんだが。
「その涙が出たりするあれだよな?」
「涙? うーん、涙は……ああそういえば涙目になる人もいるらしいですね。」
うーん、どうも会話が微妙にかみ合ってない気がする。
などと、俺が試行しアクアの方を見てみると、アクアがニマニマしてこっちを見ている。
こいつ……気付いてるな。
「おい、アクア。どういうことだ?」
「えー、なにがー?」
「花粉症の事だよ」
「そうねー。今日のおやつのヨーグルトを私にくれるってんなら、考えないこともないわよー」
「わかった。食べていいから教えてくれ」
どうせ俺はおやつの時間寝てるし。
アクアが嬉しそうに目をキラキラさせたと思えば、急にドヤ顔になり。
「まったく仕方ないわねー。カズマは本当にこの国の事を知らないあんぽんたんなんだから。いいわ。教えてあげる。この国の花粉症はね」
アクアが殺人事件を解決する名探偵のように指を立て。
「くしゃみをすると服が弾け飛ぶの。しかも強力。外に出れば、ほぼ100%花粉症になるわ」
俺は外に飛び出した。
ひゃっほーーーーーーう! なんて最高の異世界なんだ! ここに来てよかったぜーーーー!
「ちなみに男だけね」
くしゃみと共に俺の服は粉々に弾け飛んだ。
終わり
■おまけ
「なんなんだよこの世界は! クソッ! どこまで俺をバカにすればいいんだ!!」
パンツまで粉々にされ涙目になった俺は家の中に避難した。
発症率100%は伊達じゃない。外にいるとくしゃみが酷い。酷すぎる。
「すみませんでした。カズマの国の花粉症と違うという事に早く気づくべきでした」
「気にすんな。すべてはこの国の花粉症が悪い」
さて、花粉症をどうやったらこの世から消し去れるか、考える必要があるな----って、あれ? めぐみんが顔を赤くして、そっぱを向いている?
「おいおい、どうしたんだよ。俺の裸なんて見た事あるだろ? 今更恥ずかしがることなんてないだろ?」
「ち、違います。恥ずかしくなんか……。いや、その……前以上にカズマの事を意識しているようで、なぜか直視できず……。って、私何を言って!?」
めぐみんの顔がますます赤くなる。
や、やばい。なんかすごく可愛く見えてきた。
「おーい。どうした? 外ですごい音が聞こえたんだが」
ダクネスの声だ。
仕方ないな。今度はダクネスの顔を真っ赤にさせて楽しむことにしよう。
いや、これは全然変なことじゃない。
俺はただ生まれた時のままの姿でいるだけなんだ。
言わば正装。何もおかしくない。
そうだ。おかしいのは勝手に赤くなるこいつらだ!
「カズマ! ダクネスが来ます! ほら早く着替えてください!」
「なにを慌ててるんだよ。俺は花粉症の被害者だ。何も悪くない。そうだ、悪いのは花粉だ」
めぐみんが今度は怒りで顔を赤くし、そして、今度は恥ずかしそうに叫ぶ。
「あーもう!! 私のカズマの裸が他の女性に見られるのが嫌なんです!!」
とダクネスに裸を見せる以上に嬉しい反応が返ってきた。
本当の本当に終わり
これにて終わりになります。
読んでくれてありがとうございました!
また機会があればよろしくお願いします!
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