兎弟「いきなり何物騒なこと言ってるの姉さん…」
兎娘「だって犬と猫がいなくなれば繰り上がりでウサギが動物界の王者になるじゃん。ハッキリ言って邪魔なんだよね。あの畜生共」
兎娘「犬なんてちょっと賢いだけじゃん。それもほんのちょっとだけ、なのに我が物顔でペット界の王者気取りやがってよぉ」
兎娘「まだ大型犬は独特な個性があっていいけどさ、小型犬なんて人間の品種改良によって産み出された悲しいモンスターだよね。飼ってるやつを見ると滑稽に思うよ」
兎娘「しかも犬飼ってるやつって大体どこかおかしいよね。散歩中の糞は放置するし、人間より犬の方が偉いみたいに思ってるやつもいるし、マナーが最低だよ」
兎弟「それは酷い偏見だと思う…」
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兎娘「猫もおかしいよね。ただでさえ犬には多少は賢いって長所があるけど、猫なんてただの馬鹿だからね。虫に毛が生えたくらいの知能しかないんじゃないの?」
兎娘「爪研ぎで壁を無茶苦茶にするわ、発情期になるとギャーギャーやかましいわ、あちこちでゲロは吐くわで最悪だよ。品性の欠片もない下品な生物だよね。ただ可愛いってだけで人間に生かされている哀れな生物、大人しく自然淘汰で絶滅してくれないかな」
兎娘「あと猫飼ってるやつも大概人間的に問題ありそうに見えるよね。根暗っていうか、陰気っていうか。なんか犯罪とかしそうなやばい雰囲気がありそう」
兎弟「それも酷い偏見だと思う…」
兎娘「それに比べてウサギは素晴らしい動物だよねぇ!まず第一にめちゃくちゃ可愛いし!可愛さで言ったら右に出るものはいないよ!」
兎娘「まるでルビーのような美しさと麗しさを持つ緋色の目!シルクのようなしなやかさで最高級の肌触りの毛皮!」
兎娘「そして何といっても最大の特徴はあの長い耳!もうほんっとうに可愛いよねあれ!小柄の体にはアンバランスで優雅と気品さを感じられるよ!」
兎娘「結局のところ、犬と猫には身体的特徴なんてないからね!あんなのシルエットにしたらどっちがどっちかなんて分からないよ!無個性で量産型のどこにでもあるような体型、きっと神様も5秒くらいで考えたデザインなんだろうね」
兎娘「それに、ウサギを飼ってる人ってどこか儚くて優しいイメージがあるよね。何ていうか育ちがよさそう。ウサギを飼ってる人に悪い人はいないよ」
兎弟「かなり独断と偏見が入ってる主張だね…」
兎娘「ほんと…なんでこんなに素晴らしい動物がいるのに犬だの猫だのにうつつ、をぬかしているんだろうね人間は。こいつらもさっさと第三次世界大戦で死ねばいいのに」
兎娘「弟くんもそう思わない?ウサギの魅力に気付かない人間に生きている価値はないよ。地球の支配者をウサギに譲って裸で生活すればいいって」
兎娘「というか、ウサギを食べたり皮剥いだりすること自体が考えられないよね。犬や猫にはしないくせに」
兎娘「ウサギの毛皮のコート着てるやつとか全員死ねばいいのに」
兎弟「…言いにくいんだけどさ、姉さんが冬に買ったマフラーあるでしょ?」
兎娘「え?うん、あるけど。それがどうかした?」
兎弟「あれ、ウサギのリアルファーだよ…気付いてないみたいだけど」
兎娘「!?!?!????!?!?!?!?!?!??!?!!!!??」
兎娘「ちょっ…な、なんでそれ早く言ってくれないの!?私は同族の皮を身に着けてたわけッ!?」
兎娘「と、とんだサイコパス野郎じゃん!!!!!どこのレザーフェイスだよ!!!!気持ち悪ッ!!!!!おええええええええええええええ!!!!!!!」
兎娘「ううっ…クソ…これも全部犬と猫が悪いんだ…絶滅すればいいのに...」
兎弟「何もそこまで言わなくても…急にどうしたの姉さん。そんな過激な発言ばっかりして」
兎娘「それに姉さんは犬娘さんや猫娘さんとは仲が良いじゃない。友達を悪く言うのはよくないと思うよ」
兎娘「…フフ、友達か。友達ねぇ…」
兎娘「ねぇ、我が弟よ…今日は何月何日だ?」
兎弟「え?三月三日だけど…」
兎娘「そう、今日は三月三日だね」
兎娘「じゃあもひとつ質問、三月三日は何の日だ?」
兎弟「何の日だって…そりゃあもちろんひな祭りだけど」
兎娘「違うよクソッッッッッッ!!!!!!!今日は三月三日!!!!!みが二つで耳の日!!!!!ウサギの日なんだよ!!!!!!!!!」
兎娘「つまり私の誕生日だッッッッッ!!!!!弟なら姉の誕生日くらい覚えとけやあああああああああああああ!!!!!!!!!」
兎弟「あっ…そ、そういえばそうだったね」
兎娘「肉親にまで忘れられるって酷くない!?影薄いどころの話じゃないでしょ!!!!私の周りだけ集団記憶喪失にでもなってるの!?」
兎娘「確かにひな祭りと被ってるけどさぁ!!!!知名度なさすぎでしょ!!!!!なんでみんな誰もウサギの日を覚えてないの!?犬の日とか猫の日は覚えてるくせによぉ!!!!!!!!」
兎弟「…ウサギだけ鳴き声がないからじゃない?ほら、犬や猫は「ワンワン」「ニャーニャー」で覚えやすいけど耳の日ってかなり強引だし…」
兎娘「ああん!?悪かったなぁ!!!!!ウサギには声帯がないから鳴けなくて!!!!!」
兎娘「言っとくけど鳴けないのは理由があるんだからな!?ほら、ウサギって常に捕食者に狙われているか弱い動物のわけじゃん?だから声をあげるっていうのは天敵に自分の居場所を知らせる危険な行為なわけなんだよね」
兎娘「だから鳴けないように退化したっていう説があるんだよね。いやーほんと立派な動物だよねぇ…ウサギって、生きる為に必死に努力してるんだなぁ...」シクシク
兎娘「それなのに!!!!!!なんで人間はこのウサギにちょっとは慈悲を与えようとしないの!?糞ヒューマンが!さっさと絶滅しろや!!!!!!」
兎弟「…自分も半分ヒューマン混じってるよね」
兎娘「言っとくけど今年だけじゃないからな!!!!!お前去年も忘れてただろ!!!!!!」
兎娘「一昨年も!!!!三年前なんてせっかくパーティーを開いたのに誰も来ない星飛雄馬状態になってた!!!!!!!」
兎娘「三年連続だぞ!!!!三年連続で三月三日の誕生日を忘れられているんだ!!!!!ふざけんな!!不遇ってどころの話じゃないだろ!もはやいじめの域だよぉ!!!!!」
兎娘「何かいつも私の扱い悪いよね!?ウサギって普通幸運キャラじゃないの!?どうしてこうなった!!!!私の幸せ返してよ!!!!!!」
兎弟「だ、誰に言ってるの?それ…」
兎娘「もう今度という今度はドタマに来たよ!!!!!!!絶対に許さない!!!!私の…ウサギの名を傷付けたやつらに復讐してやる!!!!!!」
兎娘「リベンジだよ!!!!!!誰が真の動物の王者か証明してやる!!!!!!」
兎弟「…なんでそんな結論になるか分からないんだけど」
兎弟「普通にみんなを呼んで誕生日パーティーをやり直せばいいんじゃないの?別に忘れられててもまた教えてあげればいいと思うんだけど」
兎娘「ハアアアアッ!?友達の誕生日を忘れてるやつらなんかもう友達じゃねえよ!!!!!敵だわ!」
兎娘「いい加減にやつらとは決着をつけないといけないと思ってたからねぇ!!!!もう馴れ合いは終わりだ!!!!容赦しねぇ!」
兎弟(…そんな性格だから誕生日を忘れられるんじゃないかな)
………………………………………………………………
………………………………………………
犬娘「ふんふんふ~ん♪」
犬娘「はー今日はひな祭り!ご主人様の為に私がとっておきのちらし寿司を作ってあげるよ!」
犬娘「まったくご主人様も素直じゃないんだから♪もうひな祭りなんてやらなくていいとか言ってたけど、本当は楽しみにしてるんだろうなぁ!」
「待てぃ!!!!!!」
犬娘「ん?誰?」クルッ
兎娘「オラ糞ワン公ゥ!!!!貴様に天誅を下しに来たぞシャラップッッッッ!!!!!」
犬娘「なんだウサギちゃんか。何か用?私これから買い出しで急いでるんだけど」
兎娘「」イラッ
兎娘「フフフ…わ、私も鬼ではない。修羅と化す前に貴様に最後の赦しをやろう」
兎娘「今日が何の日か…知っているかね?」
犬娘「え?今日って三月三日でしょ?そんなのひな祭り以外にないじゃん」
兎娘「ギルティイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!有罪だこの野郎ううううううううう!!!!!判決を言い渡すううううううううう!!!!!!」
兎娘「ここで死ねエエエエエエエエエエエええええ!!!!!!!!」ダッ
犬娘「えっ!?ちょ、うわっ!?ウサギちゃん!?」
……………………………………………………
……………………………………………
犬娘「もう、急にとびかかってきて危ないんだから」パンパン
兎娘「」
犬娘「喧嘩ならまた後で付き合ってあげるよ。今は急いでるからじゃあね」ダッ
兎娘「……ぐあっ」ゴロッ
兎娘「ク、クソがぁ…な、なぜ勝てない…な、何が足りないんだァ…」フラッ
兎弟「」ヒョコッ
兎弟「…筋力じゃないかな。ウサギって草食動物だし」
兎娘「ちくしょぅぅぅ…強くなりてェ……あいつに勝ちてェ…」
兎弟「…なら筋トレでもすれば?うさぎ跳びでもしてたら少しはマシになると思うけど」
兎娘「めんどいからやだぁ…疲れるのって嫌いぃぃ…」
兎弟「えぇ…」
兎娘「うん、条件が悪かったわ。さすがのウサギでも、真正面から犬とやり合うのは無理だね」
兎娘「やー反省、反省。この失敗は次に生かさないと」
兎弟「次って…まだやるの?」
兎娘「たりめーだろ。次は猫の野郎を叩きのめすんだよ。そのために貴重な誕生日の時間を使ってるんだから」
兎娘「私は学習したよ。次はやり方を変えて…」
兎娘「不意打ち作戦でやってるぞおおおおおおおおおお!!!!!!」
兎弟「うわぁ」
猫娘「あーバイトだりぃニャ。行きたくないニャ」スタスタ
兎娘(クカカカッ…ノコノコ現れやがったなマヌケめ。今日がお前の命日だ)
兎娘(今、やつは完全に油断している。そこを後ろからズドン…私のスピードなら何が起きたかも分からずにくたばる…)
兎娘(恨むなら自分の記憶力のなさを恨むんだな…これも全てウサギを馬鹿にした罰だ)
兎娘(…今だッ!!!!!死ねィ猫!!!!!!)ダッ
猫娘「…ニャ」ピクッ
ボゴォ!!!!!!!!
兎娘「へぶちっ!?」ドゴォ
ビューーーーーーーン
ドンガラガッシャーン!!!!!!!!!
猫娘「あれ?後ろから襲ってくるやつが来たから返り討ちにしてやったと思ったら、ウサギじゃねえかニャ。お前何やってるニャ」
兎娘「な……んで……ウ、ウサギのスピードに反応出来るなんて……ど、動物界では一番速いはずなのに…...」ピクピクッ
猫娘「は?お前何言ってるニャ」
猫娘「確かに、ウサギの脚は速いニャ。でもそれはあくまで逃走用、戦闘の為にあるわけではないニャ」
猫娘「ネコ科の研ぎ澄まされた狩人のような反射神経に比べたら、お前のスピードなんてたかが知れてるニャ」
兎娘「ひ……ひど……い……そこまではっきり言わな、くても……」
猫娘「じゃ、私はバイトがあるから行くニャ。お前も馬鹿なことやってないで働けニャ」
兎娘「ちょ……っと待って」
兎娘「きょ、今日が何の日か……覚えてる?」
猫娘「ん?今日って三月三日だったけニャ?あっ…」
猫娘「そうニャ!今日はひな祭りで晩ご飯に寿司が出るんだったニャ!あー楽しみだニャ!」ダッ
兎娘「ひ...…でぇ……ぶ………」ガクッ
兎娘「よく考えたらあれだったわ。私これまであの二人に喧嘩で勝ったことなかったわ」
兎弟「えぇ…」
兎娘「まあ仕方ないよね。だって犬と猫は野蛮な肉食獣だもん。そもそも野生のアイドル枠のウサギとは土俵が違ってたわ」
兎娘「今回だけ見逃してやるとするか。ウサギは懐が草原のように広いからね」
兎娘「ってことで次はウサギが虐げられる原因になったやつらを始末する。元はと言えばそいつらに原因があるわけだしね」
兎弟「まだやるの…もういいと思うんだけど」
兎娘「やるって言ったらやるの。ウサギは陸にも海にも敵がいるからね」
兎弟「海…?」
兎娘「まず中古ショップでとある映画のDVDを買います」
兎娘「それを釣り竿にくくりつけます」
兎娘「そしてこの釣り竿を使って釣りをします」ポイッ
兎娘「あとは獲物が釣れるのを待つだけだね」
兎弟「な、何が釣れるの?こんな仕掛けで…」
兎娘「そりゃ映画を使って海で釣れるやつと言ったら一つしかないでしょ。糞映画をまき散らして海を汚染し続ける産業廃棄物」
兎娘「そしてウサギにあんな酷いことをした正真正銘の怪物…」
ピンピン
兎娘「来たッ!ソラァッ!!!!」グイッ
ザッパーン
鮫娘「しゃーくっ!?」ザパァ
兎娘「サメだよっ!!!!」
兎弟「えぇ…」
鮫娘「しゃ、しゃーく…しゃーく…」ピチピチ
兎娘「ふん、まさかこんな単純な手で釣れるなんてね。さすが体重と脳の重量比率が一番小さい動物だよ。猫より馬鹿だね」
兎弟「ね、ねぇ…なんでサメなの?サメとウサギって何か因縁があったっけ?」
兎娘「あ?知らないの?因幡の白兎の話」
兎娘「私はコイツに毛皮をひん剥かれたんだよ。許せねぇ…徳川綱吉の時代なら死罪になってもおかしくない重罪だよ」
兎弟「…生類憐みの令って確か、鵜と鷺の鳥の名前が入っているウサギは普通に食べられたって話を聞いたことあるんだけど」
鮫娘「しゃ、しゃーく…な、何ですか?もしかしてあたし釣られちゃったんですか?」
鮫娘「うっ…しかもこのサメ映画…前に買ったやつと同じじゃないですか。新作かと思ったのに…帰りますか」スッ
兎娘「待てぃ!そこのサメ肌野郎!!!」
鮫娘「しゃーく?あたしに何か用ですか?」
兎娘「テメェ本人に怨みはないが…サメは許しちゃおかねぇ!!!!!お命頂戴致す!!!!!」
鮫娘(な、何だこの人…)
鮫娘「あ、あの…どちら様ですか?あたし達会ったことありましたっけ」
兎娘「いや、ない。でも覚えてないとは言わさんぞ。因幡の白兎で貴様らサメがウサギにした悪逆非道の行いを…報いは受けてもらうぞ」
鮫娘「え、因幡の白兎って…ウサギが嘘をついてサメを集めて、最後にそのことを言っちゃって毛皮を取られるってやつですよね」
鮫娘「自業自得なんじゃ…それにあれはサメじゃなくてワニって話を聞いたことあるんですけど」
兎娘「問答無用じゃあああああああ!!!!!!死ねえええええええええええ!!!!!!」ダッ
鮫娘「しゃ、しゃーくぅっ!?」ビクッ
…………………………………………………………
……………………………………………
鮫娘「あ、あの…じゃあ、あたしはこれで」
鮫娘「しゃーく!さよならっ!」ザパッ
兎娘「」ボロボロ
兎娘「な、なんで…陸地でサメ相手に負けるの…いくらなんでもクソザコ過ぎない…?」
兎弟「いやだってサメも肉食だし…ウサギじゃ逆立ちしたって勝てないよ」
兎娘「おま…ちょ…いや…じゃあ誰だったら勝てるんだよ……もうやだぁ...」
兎弟「姉さん…もう家に帰ろうよ。今年はもうダメだけどさ、来年はちゃんとみんなを呼んで、誕生日をやり直せばいいじゃない」
兎娘「嫌じゃあ…復讐してやるんだぁ…ウサギの名誉を回復するんだぁ…」
兎娘「そんなこと言っても…他に復讐する相手なんていないでしょ。もうやめようよ。争いは何も生まないよ」
兎娘「うぅっ…ウサギ…争い…復讐…はっ!?」ピクッ
兎娘「い、いた…!あと一匹!こいつだけには絶対に屈辱を晴らさないといけない相手が…!」
兎娘「私が…ウサギが馬鹿みたいなキャラになった原因が!」
兎弟「えっ?」
ザッパーン
亀娘「はー今日もいい天気だなぁ~…この時期のひなたぼっこは最高だよねぇ」
亀娘「暑すぎず寒すぎず、まさに絶好の昼寝日和だよ。春を感じるねぇ」
亀娘「…まあこんな気分が味わえるのも春休みに入るまでだけど。休みになったらガキ共が甲羅で遊ぶからなぁ、勘弁してほしいよほんとに」
「見つけたぁ!!!!!!亀がいたぞおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
亀娘「うげ…ガキに見つかったか。甲羅に避難しとこ」スッ
兎娘「ふははははは!!!!ついに見つけたぞ我が因縁の相手よ!貴様とだけは雌雄を決しないとなぁ!!!!!」
兎娘「オラ!顔出せ!!!!あの時の勝負をやり直すぞ!!!!」ボコボコ
甲羅(な、なんだこいつ。なんか意味分からんことほざいてるけど頭おかしいのかな?変なやつに目つけられちゃったなぁ)
甲羅(まあこの甲羅を破ることは出来ないだろうし、このままひと眠りするか。どうせすぐ飽きるでしょ)
兎娘「そうか、怖いんだな。私に負けるのが」
兎娘「そりゃそうだ。今の私は慢心を捨てた言わば究極のウサギ、カメ程度が勝てるわけがない」
兎娘「だがこのまま不戦勝というのは私の気が済まないんだよ!!!!強硬手段を取らせてもらうぞ!」
甲羅(…Zzz)
ボォォ
甲羅(…ん、なんだろ。何か…熱いような)
甲羅(くんくん…あれ、これって...)
亀娘「燃やされてるじゃん!!!!!!!」ガパッ
兎娘「ふっ、やっと目覚めたか。我が宿命の相手よ」
亀娘「ふぅーっ…ふぅーっ…うわぁ…ちょっと焦げてるじゃん。タワシでこすったら落ちるかなこれ…」
兎娘「聞けや!!!!!!!」
亀娘「ん…?もしかして君が燃やしたの?」
亀娘「あのさぁ…放火はまずいでしょ。殺人より罪が重いんだよ?火付けって」
兎娘「うるせぇ!んなこと知るか!居留守使う方が悪いんだよ!!!!」
兎娘「そんなことより!私と勝負しろ!カメ公!!競走でな!」
亀娘「競走って…突然なに?初対面の人に向かって」
兎娘「会ったか会ってないかなんて問題じゃないんだよ!私、ウサギとお前、カメは遺伝子レベルからのライバル、因縁の相手なんだ!!!!」
亀娘「は?」
兎娘「元はと言えば全部お前が悪いんだよ!!!!ウサギがカメに負けたせいでウサギがマヌケってイメージが付いたんだ!もしウサギが勝っていたら…きっと今頃ウサギは動物界の頂点で犬や猫より人気が高かったんだ!」
兎娘「それに十二支でもきっと一着だったし、ウサギが食べられることもなかった!!!!全部カメのせいだ!」
亀娘「は?」
兎娘「だから!今ここで全てを清算する!!!!お前に勝って私が王になる!!!!」
亀娘「え、待って。何が何だか理解出来ないんだけど」
兎娘「とにかく!私と競争で勝負しろって言ってんの!これに勝てば私は…ウサギは救われるんだよぅ!!!!」
亀娘「よく分からないけど…競走すればいいの?私と、あなたが」
兎娘「そうだ!一対一で正々堂々とな!!!!」
亀娘「まあ別にいいけど…勝ったら何か貰えるの?正直だるいんだけど」
兎娘「ちょっと待って、ひーふぅーみぃ…」スッ
兎娘「ほら!この財布の中に三万入ってる!!!!これが賭け金だ!!!!」
兎娘「お前に負けたらこの三万をやる!さあ勝負だ!」
亀娘「たったの三万ぽっちねぇ。まあいいか。甲羅の治療代くらいにはなるし」
亀娘「じゃあやろっか。かけっこ勝負、でも一つだけ条件があるんだけど」
兎娘「ああん!?なんだよ条件って!」
亀娘「かけっこの場所は私が指定していい?大丈夫、陸でやるから安心していいよ」
兎娘「…」
兎娘(場所の指定…何か怪しいけど、勝負方法を指定したのは私だし、イカサマは出来ないはず)
兎娘(それに鈍足のカメがウサギに勝てる方法なんて存在するわけがない…せめてもの悪あがきと見た)
兎娘「よし、いいだろう!それくらいのハンデはやる!!!!!」
亀娘「じゃあ場所移そっか」
亀娘「はい、ここでやろうよ」
兎娘「ここは…坂道?」
亀娘「そう、ちょうどここの坂は100メートルあるから競争には持ってこいでしょ」
兎娘「ククク…100メートル走というわけか」
兎娘「参考までに教えてやろう。私の100メートル走のベストタイムは4秒57、あのボルトの半分以下のタイムだ」
兎娘「その私に勝負を挑むなんて…勝ったな、これは 」
亀娘「ふーん、そう。じゃあ合図はあそこの信号が青になったら、ってことでいい?」
チカチカッ
兎娘(やっと…やっとだ。私はカメに勝てる。元々のタイムにこの坂、恐らく私は3秒で駆け抜けることが出来る)
兎娘(私に足りないのは自信だったんだ…どこかで犬や猫には勝てないと思っていた。でも今日からは違う。私は…ウサギとしての誇りを取り戻す)
兎娘(そうだ…未来に向かって…羽ばたくんだあああああああああああああ!!!!!!!!)
ピカッ
兎娘(来たぁ!!!!!最速ロケットスタート!!!!!!!)ビュンッ
兎娘(完璧な初速!!!!!もう既に20メートル地点経過ァ!!!!!この勝負はもらったあああああああああああああああ!!!!!!!!!)
兎娘(フハハハハハハハハハ!!!!!あと二秒も経たないうちにゴールだ!亀は今頃まだ10メートル付近ぐらいか?どれどれ、ちょっと様子を見て…)クルッ
甲羅『』ズサササササササー
兎娘「!?」
兎娘(なっ…こ、こいつ走ってない!滑ってる!坂を甲羅で滑走してる!!!!)
兎娘(ちょっ!?んなのありかよ!!しかも結構速いし!!!!すぐそこまで来てるし!!!!!)
兎娘(だからコイツ、坂道でやろうって言ったんだ!!!!せっこ!やることせっこ!!!!)
兎娘(…ククク、カカカッ!でも残念だったな!もう残りは一秒を切ったッ!スタートに追いつけなかった時点で、私の勝ちは決まっていたんだよぉ!!!!無駄な努力ご苦労さんッッッ!!!!!!)
甲羅『』グイッ
甲羅『』ダンッ
兎娘「!?」
兎娘(こ、こいつ!?さ、最後の最後で地面を蹴って加速を!?空中を飛んでッ…!?)
兎娘(ま、まずい!あの速度にプラスの衝撃!例えるならロケットブースト!!!!!!単純計算で速度は今までの二倍!!!!!!)
兎娘「クソがあああああああああああああああああ!!!!!!!!負けねええええええええええええええええ!!!!!!!!!」ダダダッ
甲羅『』ビューン
ゴンッ!!!!!!!
甲羅『』ヒョコッ
亀娘「ふう、終わった。で、これどっちが勝ったのかな?」
亀娘「…ん?」クルッ
兎娘「」
亀娘「あっ…全速力で走ってたからブレーキをかける暇がなかったんだね…可哀想に、壁に激突してるや」
亀娘「私は甲羅で衝撃を全部吸収したからいいけど…生身であの速度でぶつかったらひとたまりもない威力になるか」
亀娘「おーい、生きてるー?起きてー」
兎娘「」
亀娘「うーん、完全に伸びてるな。どうしようかこれ」
亀娘「…最後まで立ってた私の勝ち、ってことでいいかな?」
亀娘「じゃ、財布は貰っていくね。ばいばーい」スタスタ
兎娘「」
「ねぇ―――さん―――きて」
「姉さ―――起き―――」
「姉さん!起きて!」
兎娘「はっ!?」ガバッ
兎娘「ここは…?私は確か…カメと勝負を…」
兎弟「何言ってるの姉さん。今日は姉さんの誕生日じゃない!」
兎娘「え?誕生日って…」
犬娘「おめでとう!ウサギちゃん!!!!」
猫娘「ニャ、おめでとうニャ」
兎娘「え、でも私の誕生日は忘れられて…」
兎弟「何ワケのわからないこと言ってるの?さ、早くケーキの日を消して」
兎娘「う、うん…分かった。フーッ」
「「「ハッピーバースデー!!!!おめでとう!ウサギ!!!!」
兎娘「う…あ…あ、ありがとう!みんな!私…幸せだよ!」
兎娘「今日以上に幸福な日はなかったよ!!!!みんな!ありがとうさぎ!!!!!」
…………………………………………………………
………………………………………………….
兎娘「…」パチッ
兎娘「…」チラッ
兎娘「…」
兎娘「夢落ちかああああああああああああああああいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
おわり
終わりですありがとうさぎ
何かウサギって昔話だとマヌケポジですよね
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