彡(X)(X)「痛!」(22)


(´・ω・`)「どうしたのお兄ちゃん。悲鳴なんかあげて」

彡(゚)(゚)「なんかが足の裏に刺さったんや!」

(´・ω・`)「どれどれ、あらら、画鋲ふんじゃったんだね」

彡(゚)(゚)「ざっけんな!なんで画鋲が落ちとるんや!」

(´・ω・`)「今朝お兄ちゃんが壁に貼ってたポスターを張り替えてたし、その時に落としたんじゃない?」

彡(゚)(゚)「なんやと!ほんじゃワイが悪いっちゅーんか!?」

(´・ω・`)「そうじゃない?」

彡(゚)(゚)「むぐぐぐ、あーくそ、歩くだけで痛いわ……」

(´・ω・`)「とりあえず傷口を洗ってばんそうこうを貼っておこうよ」

彡(゚)(゚)「……すまんな原ちゃん。ちょっとマシになったやで」

(´・ω・`)「いえいえ」

彡(゚)(゚)「マシにはなったけどまだヒリヒリして歩きづらいわ」

(´・ω・`)「足の裏だからね」

彡(゚)(゚)「そもそもなんで痛みって苦しいんや……?」

(´・ω・`)「いきなりどうしたの?痛いものは痛いに決まってるじゃない」

彡(゚)(゚)「それがおかしいんや!こんなちっちゃな怪我やのに、くっそ痛いのはおかしいやんか!」

(´・ω・`)「そ、そんなこと言われても……」

彡(゚)(゚)「画鋲の針なんて太さは1mm、長さは1cmくらいしかないんや」

彡(゚)(゚)「それがちょっと足に刺さったからって歩くのも苦労するくらい痛むっておかしいやろ」

(´・ω・`)「足は体重がかかるところだし」

彡(゚)(゚)「だとしてもや。別に筋肉が引き裂かれたとか骨が折れたとかそんな重大な怪我やないやろ」

彡(゚)(゚)「足を動かすのにまったく支障がないちっちゃな怪我がこんなに痛むってどういうことや!?」

彡(゚)(゚)「神様は人間を作る時に設計ミスったんちゃうんか?」

(´・ω・`)「たかが足に画鋲が刺さっただけでそんな哲学的な話にもっていかれても」

彡(゚)(゚)「納得がいかへん。痛みなんて感覚いらんやろ」

(´・ω・`)「うーん、でも痛みがなかったら自分が怪我をしたことに気が付けないんじゃない?」

(´・ω・`)「無痛症っていう痛みを感じない病気があるそうだけど、その病気の患者さんは自分が大怪我をしても気付かなくて」

(´・ω・`)「大事故を起こしてしまうらしいよ」

彡(゚)(゚)「そういう話はワイも聞いたことあるな……」

彡(゚)(゚)「確かに痛みの感覚は別にいらないとは言わん。でも、こんなちっちゃい怪我で歩くのがすごくつらくなったり」

彡(゚)(゚)「痛みのせいで動けなくなるとか、痛みのせいでショック死するとか」

彡(゚)(゚)「これは意味ないやろ。いったい何のためにそんなに痛みを感じるようになったんや」

(´・ω・`)「うーん、痛みがないと困るけど」

(´・ω・`)「痛みのせいでショック死したりするくらい強い痛みは確かに不条理だね」

彡(゚)(゚)「痛みは痛みじゃなくて、例えばテレビゲームのキャラクターみたいにや」

彡(゚)(゚)「怪我したら神経が脳に『こんだけのダメージを受けました』っていうデータを送るって形にすればいいんや」

(´・ω・`)「どういうこと?」

彡(゚)(゚)「痛みのメカニズムは、体がダメージを受けたら痛覚神経が脳に痛みの情報を送り」

彡(゚)(゚)「その情報を受け取った脳が苦しみを感じる、という形なわけや」

(´・ω・`)「そうだね」

彡(゚)(゚)「痛みの感覚自体を消すのは確かに問題がある」

彡(゚)(゚)「でもや。何も痛みの情報を受け取った時に苦しみを感じる必要性はない」

彡(゚)(゚)「それこそ『足の裏に10ポイントのダメージを受けました』って意識に表示するようにすれば」

(´・ω・`)「苦しむこともなく、かといって怪我に気付かないということもない、ということだね」

彡(゚)(゚)「せや。なんで人間はそういう風に進化せえへんかったんやろか」

彡(゚)(゚)「野生でもちょっとした怪我の痛みで動けなくなったら生き延びる可能性が減る」

彡(゚)(゚)「進化論的に考えれば現状の痛みの仕組みは不合理やないか?」

(´・ω・`)「なるほどね。痛みが無ければ怪我や体の不調に気が付けない」

(´・ω・`)「でも痛みで苦しみ過ぎると痛み自体のせいで死んでしまうことがある」

(´・ω・`)「痛みをデータとして受け止めて、苦しみを感じないようにすれば」

(´・ω・`)「怪我をしても冷静に行動できるし、痛みのあまり死んでしまうこともない」

彡(゚)(゚)「せや。常人と無痛症の良いとこどりや」

(´・ω・`)「痛みと苦しみの分離か。そうだ、閃いた!」

彡(゚)(゚)「お、どうしたんや?」

(´・ω・`)「これこれ」

彡(゚)(゚)「なんやそれ」

(´・ω・`)「以前とある軍事国家からの依頼でね。痛みや恐怖を感じない兵隊を作る機械を作ってみたんだ」

彡(゚)(゚)「ほへー。すごいもん作ってたんやな」

(´・ω・`)「これを首筋に付けると、痛みを伝える神経をブロックすることで痛みを感じなくしてくれるんだけど」

(´・ω・`)「さっき話してたような問題点があってね」

(´・ω・`)「痛みがないから自分の怪我や体調不良に気が付けなくなってみんな全滅しちゃったんだ」

(´・ω・`)「それで結局プロジェクトは頓挫しちゃたんだよ」

彡(゚)(゚)「なるほどなー」

(´・ω・`)「でも今お兄ちゃんと話をしてて閃いたんだ。これをちょっと改造して」

(´・ω・`)「痛みを消すんじゃなくて痛みのデータを意識に表示させるようにしてみたんだ」

彡(゚)(゚)「ほう、そりゃすごいやん!」

(´・ω・`)「ちょっと試してみてくれないかな?」

彡(゚)(゚)「ええで。首筋に付ければええんか?」

(´・ω・`)「そうそう」

彡(゚)(゚)「ぽちっとな……、お、痛みが消えたで!いや、痛みがきえたんやない。苦痛が消えたんや」『右足の裏に小ダメージあり』

彡(゚)(゚)「ちゃんと足の裏にちょっとした怪我があるってことは分かる」『右足の裏に小ダメージあり』

(´・ω・`)「よかった。ちゃんと機能してるんだね」

彡(゚)(゚)「原ちゃん、これはすごいで」『右足の裏に小ダメージあり』

(´・ω・`)「よし、じゃあこれを改めて軍事国家に売り込んでくるよ。一か月くらい帰らないからね」

彡(゚)(゚)「おう、いってらっしゃい」『右足の裏に小ダメージあり』

彡(゚)(゚)「よっしゃ、痛みが気にならなくなったし、バッティングセンターにでも行ってくるかな」『右足の裏に小ダメージあり』

               ・
               ・
               ・
彡(゚)(゚)「……ふう、打った打った」『右足の裏に小ダメージあり』『右肩に小ダメージあり』『左ひじに小ダメージあり』

彡(゚)(゚)「やっぱバッティングセンターは楽しいな……、あれ、なんや、いつの間にか痛みの表示がめっちゃ増えとるやないか」
    『右足の裏に中ダメージあり』『右肩に小ダメージあり』『左ひじに小ダメージあり』

彡(゚)(゚)「あ、そうか。バッティングすれば関節が痛むわな。まあ大したことないやろ」
    『右足の裏に中ダメージあり』『右肩に小ダメージあり』『左ひじに小ダメージあり』

彡(゚)(゚)「ん?足の裏のダメージが増えとるな。うわ、ばんそうこうがズレて血がめっちゃでとる!なんでや!?」
    『右足の裏に中ダメージあり』『右肩に小ダメージあり』『左ひじに小ダメージあり』

彡(゚)(゚)「あ、そうか。怪我を気にせず体重を思いっきりかけてバッティングしたからか」
    『右足の裏に中ダメージあり』『右肩に小ダメージあり』『左ひじに小ダメージあり』

彡(゚)(゚)「気をつけんとあかんな」
    『右足の裏に中ダメージあり』『右肩に小ダメージあり』『左ひじに小ダメージあり』

彡(゚)(゚)「でもちゃんと表示されるから大丈夫やな。ワイは怪我に気が付いとる」
    『右足の裏に中ダメージあり』『右肩に小ダメージあり』『左ひじに小ダメージあり』

彡(゚)(゚)「無痛症とは違うんや。安心してビールでも飲みにいこ」
    『右足の裏に中ダメージあり』『右肩に小ダメージあり』『左ひじに小ダメージあり』

               ・
               ・
               ・
彡(゚)(゚)「ふわー、よく寝た。昨日は飲んだなぁ……」
    『右足の裏に中ダメージあり』『上腕二頭筋に小ダメージあり』『上腕三頭筋に小ダメージあり』『右肘関節に小ダメージあり』
    『脊椎に小ダメージあり』『右膝に中ダメージあり』『左膝に小ダメージあり』『胃壁に小ダメージあり』『大腸に小ダメージあり』

彡(゚)(゚)「ファッ!?ダメージ表示がめっちゃ増えとるやんけ!どういうことや!?」
    『右足の裏に中ダメージあり』『上腕二頭筋に小ダメージあり』『上腕三頭筋に小ダメージあり』『右肘関節に小ダメージあり』
    『脊椎に小ダメージあり』『右膝に中ダメージあり』『左膝に小ダメージあり』『胃壁に小ダメージあり』『大腸に小ダメージあり』
    『背中の皮膚に小ダメージあり』

彡(゚)(゚)「別に怪我してるようすもないし。意味が分からへん。病院にいったほうがええんやろか」
    『右足の裏に中ダメージあり』『上腕二頭筋に小ダメージあり』『上腕三頭筋に小ダメージあり』『右肘関節に小ダメージあり』
    『脊椎に小ダメージあり』『右膝に中ダメージあり』『左膝に小ダメージあり』『胃壁に小ダメージあり』『大腸に小ダメージあり』
    『背中の皮膚に小ダメージあり』

彡(゚)(゚)「……まあでもどれも大したことないっぽいし、別に苦しくもないし、後でええやろ」
    『右足の裏に中ダメージあり』『上腕二頭筋に小ダメージあり』『上腕三頭筋に小ダメージあり』『右肘関節に小ダメージあり』
    『脊椎に小ダメージあり』『右膝に中ダメージあり』『左膝に小ダメージあり』『胃壁に小ダメージあり』『大腸に小ダメージあり』
    『背中の皮膚に小ダメージあり』

               ・
               ・
               ・
(´・ω・`)「ただいまー」

彡(゚)(゚)「お、おう……、原ちゃん……、お、お帰り……」
    『右足の裏に極大ダメージあり』『上腕二頭筋に中ダメージあり』『上腕三頭筋に大ダメージあり』『右肘関節に中ダメージあり』
    『脊椎に中ダメージあり』『右膝に大ダメージあり』『左膝に中ダメージあり』『胃壁に小ダメージあり』『大腸に中ダメージあり』
    『背中の皮膚に中ダメージあり』『肛門括約筋に中ダメージあり』『右足首に中ダメージあり』『左足首に中ダメージあり』
    『右足小指に大ダメージあり』『右手首に中ダメージあり』『左手首に大ダメージあり』『……

(´・ω・`)「いやー、あの装置、軍事国家にいっぱい売れたよ。痛覚があるのに痛みを恐れない究極の兵士を量産するって……」

(´・ω・`)「あ、あれ、なんだか顔色が悪いよ、お兄ちゃん。機械が上手く働いてないの?」

彡(゚)(゚)「いや、それがなんだか体の調子が悪いんや……」
    『右足の裏に極大ダメージあり』『上腕二頭筋に中ダメージあり』『上腕三頭筋に大ダメージあり』『右肘関節に中ダメージあり』
    『脊椎に中ダメージあり』『右膝に大ダメージあり』『左膝に中ダメージあり』『胃壁に小ダメージあり』『大腸に中ダメージあり』
    『背中の皮膚に中ダメージあり』『肛門括約筋に中ダメージあり』『右足首に中ダメージあり』『左足首に中ダメージあり』
    『右足小指に大ダメージあり』『右手首に中ダメージあり』『左手首に大ダメージあり』『……

(´・ω・`)「え?痛みはないの?表示は?」

彡(゚)(゚)「いや、それが……、ちゃんと表示されとるんやが、どんどん増えていってな。全部読み切れん……」
    『右足の裏に極大ダメージあり』『上腕二頭筋に中ダメージあり』『上腕三頭筋に大ダメージあり』『右肘関節に中ダメージあり』
    『脊椎に中ダメージあり』『右膝に大ダメージあり』『左膝に中ダメージあり』『胃壁に小ダメージあり』『大腸に中ダメージあり』
    『背中の皮膚に中ダメージあり』『肛門括約筋に中ダメージあり』『右足首に中ダメージあり』『左足首に中ダメージあり』
    『右足小指に大ダメージあり』『右手首に中ダメージあり』『左手首に大ダメージあり』『……

(´・ω・`)「そ、そんな、何か思い当たることは?」

彡(゚)(゚)「分からん、普通にいつも通り生活してただけやのに、どんどんダメージが増えとる……」
    『右足の裏に極大ダメージあり』『上腕二頭筋に中ダメージあり』『上腕三頭筋に大ダメージあり』『右肘関節に中ダメージあり』
    『脊椎に中ダメージあり』『右膝に大ダメージあり』『左膝に中ダメージあり』『胃壁に小ダメージあり』『大腸に中ダメージあり』
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    『右足小指に大ダメージあり』『右手首に中ダメージあり』『左手首に大ダメージあり』『……

彡(-)(-)「体が、動かん……」

(´・ω・`)「お、お兄ちゃーん!!!!」
               ・
               ・
               ・

('A`)「どうも、ドクターのドクオです」

(´・ω・`)「先生!あの、お兄ちゃんはいったい……」

('A`)「やきうさんは全身の関節や筋肉がボロボロで、あと、足の裏に重傷がありました」

(´・ω・`)「えー!?」

('A`)「どうも自分の体にかかる負荷を完全に無視して生活していたようですね。まるで無痛症患者のようだ」

(´・ω・`)「うーん、装置に異常はなかったし、ちゃんと痛みのデータは意識に表示されてたはずなんだけど」

('A`)「痛みのデータ?装置?」

(´・ω・`)「あ、実はですね、かくかくしかじかという訳でして」

('A`)「なるほど、痛みを苦しみではなく情報として表示する装置を付けていたと」

(´・ω・`)「はい。なので体のダメージに気が付かないことはないはずなんですけど」

('A`)「そういうことでしたか。原因は分かりました」

(´・ω・`)「いったい何が原因だったんですか?」

('A`)「あのですね、人間は普通に生きてるだけでも全身にダメージを受けてるんです」

(´・ω・`)「ええ!?どういう意味ですか!?普通に生きてて苦しくなるなんてありえないですよ!」

('A`)「そうでもないんです。人間はただ立ってるだけでも足腰の関節が自分の体重で少しずつ損傷していきます」

('A`)「寝ていても布団と人体の接触面は体重がかかって少しずつ押し潰されていっているのです」

(´・ω・`)「ええ、でもそんな痛み感じたこともないですよ」

('A`)「はい。普通の人間はその際に生じるごくわずかな不快感を感じて姿勢を修正したり」

('A`)「寝返りをしたりしてダメージを分散させます」

('A`)「そのためにその損傷は重大なことになる前に治ってしまうので、怪我や病気にはならないのです」

(´・ω・`)「そ、そうだったんですか」

('A`)「無痛症の人も痛みは感じなくても、体の動きが悪くなるというストレスの経験を積むので」

('A`)「それを避けるために姿勢の修正などは無意識に覚えます」

('A`)「しかし、やきうさんはその装置のせいでそういうストレスすらもただのデジタル情報に変換されてしまったため」

('A`)「姿勢の修正を止めてしまったのでしょう」

(´・ω・`)「で、でも、ちゃんと痛みは情報として表示されていたわけですよ!」

('A`)「原住民さん、痛みを苦しみとして感じるのはちゃんと理由があるんです」

('A`)「人間、強い苦しみやストレスがあるからこそ、それに恐怖を感じてその原因を避けようと本気で行動できるんです」

('A`)「ただのデジタルな表示では恐怖を感じません。頭では放置すると良くないと分かっていても」

('A`)「危機感を覚えずにめんどくさくなって、まあいいだろう、と放置してしまうわけです」

(´・ω・`)「あ、あああ……」

('A`)「例えばテスト勉強をしないと悪い成績を取ってしまう、と頭では分かっていても中々勉強できない、なんてことありますよね」

('A`)「やきうさんは体のダメージに対してそういう精神状態になっていたわけです」

('A`)「それに体には無数の関節や筋肉があって、それらすべての情報が送られると、その情報を読むのがめんどくさくなってくると思います」

('A`)「無数の痛みの情報を感覚ではなく頭で処理するのは無理があるでしょう」

('A`)「どう姿勢を変更すればそれらの苦痛が減少するのか、無数の表示を見ながら微妙に体を動かすなんて大変ですよ」

(´・ω・`)「た、確かに……。でも姿勢の問題だけであんな状態になるんですか?」

('A`)「ええ。例えば寝たきり老人なんかは寝返りを打つこともできないために」

('A`)「放置されると床ずれなどで重大な症状がでます」

('A`)「それに、やきうさんは結構活発に動かれていたようですね」

(´・ω・`)「そうですね、お兄ちゃんは野球好きですから、バッティングセンターに通ってたり」

(´・ω・`)「プロ野球の試合を球場に見に行ったり、草野球をしにいったりしてたと思います」

('A`)「激しい運動は肉体にさらに負担を与えます」

('A`)「痛みを体感として感じているなら無意識に体の負担がない姿勢を取ろうとするものですが」

('A`)「それがないためにさらに体に無茶な負担をかけたのでしょう」

('A`)「遊びに夢中になっているのならいちいち文字表示なんて見ないでしょうし」

('A`)「そのダメージが積もり積もってああなったのでしょうね」

(´・ω・`)「そっか、痛みを苦しみではなく情報として認識する装置。いいアイデアだと思ったんだけどな」

('A`)「確かに痛みにはデメリットもあります。時には一見不合理に思えることもあります」

('A`)「病院には病状だけでなく痛みそのものに苦しむ患者さんも大勢いますしね」

('A`)「そういう患者さんたちから不要な痛みを取り除くペインクリニックは現代では重要な医療分野の1つです」

(´・ω・`)「なんで痛みにはそんな問題点があるんでしょうか。もっとちょうどよく調節されてればいいのに」

('A`)「恐らくですが、進化の過程で痛みを強く感じる個体ほど生き延びやすかったからでしょう」

(´・ω・`)「そうなんですか?」

('A`)「ちょっとした怪我でも過剰に痛み、時にはその痛みだけで動けなくなるような痛覚のメカニズムは」

('A`)「人間にちょっとした怪我に対しても激しい危機感を覚えさせることで安全を追究する思考を強めて」

('A`)「厳しい野生を生き延びさせる原動力になったのではないかと思います」

(´・ω・`)「なるほど、小さな怪我でも強く痛むからこそどんな怪我でも避けようとする意識が産まれるってことか」

(´・ω・`)「そう言われてみると進化論的にも合理的なんですね」

('A`)「はい。そもそも野生では大怪我をすればほぼ確実に死にます」

('A`)「なので激痛によるストレスやショック死のデメリットよりも」

('A`)「過剰な痛みを通じて怪我自体を避ける行動パターンを形成するほうがメリットが大きいと考えられます」

(´・ω・`)「つまり痛覚とは小さな怪我を通じて怪我全般に強烈な危機感を覚えさせるメカニズムであり」

(´・ω・`)「大怪我の痛みでショック死してしまうとかのデメリットはその副産物という訳ですね」

('A`)「はい。小さな怪我でも強い痛みを感じるというシステムが構築された結果、大怪我に対して思わぬ過剰反応を起こしてしまうようになった」

('A`)「そういうことなのではないでしょうか」

(´・ω・`)「そうそう都合よく世の中はできてないってことか、例えそれが僕たち自身の肉体のことでも」

彡(-)(-)「……」

(´・ω・`)「人間の体のメカニズムにはちゃんと意味がある」

(´・ω・`)「素人考えで適当な改造はするもんじゃないな。じゃあお兄ちゃん、装置を外すね」

('A`)「あ……」

彡(X)(X)「……ほんげぇぇぇぇぇーーーーーー!!!!!?????」

(´・ω・`)「おにーちゃーん!!!」

┏━━━━━━┓

┃   /  \   ┃
┃ /      \ ┃
┃ (゚)(゚)ミ     ┃
┃  ノ   ミ    ┃
┃ つ   (    ┃
┃  )   (     ┃
┗━━━━━━┛


(´・ω・`)「身近な人を失った苦しみは僕の心を切なく切り裂いていく」

(´・ω・`)「できることならこの苦しみを心から取り除きたい」

(´・ω・`)「でも、それは間違いだってお兄ちゃんは身をもって教えてくれた」

(´・ω・`)「だからぼくはこれからも、お兄ちゃんを失った痛みを心に抱えて生きていく……」

以上で終わりです

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