サターニャ「ガヴリール、怪談で勝負よ!」 (44)



ガヴ「なんだよ突然」

サターニャ「だから怪談で勝負するの。より相手に恐怖を与えたほうの勝ちよ」

ガヴ「はあ。私からでいいならやるけど」

サターニャ「フッ、決まりね」

ガヴ「じゃあ行くか」ガタッ

サターニャ「えっ? どこに行くのよ」

ガヴ「どこって教室じゃ出来ないだろ」

サターニャ(まぁ確かに周りに人がいたらうるさくて怖さが薄れるわね)

サターニャ「いいわ。場所を変えましょう」ガタッ



階段


ガヴ「せい」ドーン!

サターニャ「うぎゃあああああっ!?」




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サターニャ「はぁ、はぁ……なんてことすんのよガヴリール!」

ガヴ「死ぬほど恐怖しただろ」

サターニャ「手すりなかったら下手すりゃ死んでたわよ!」

ガヴ「でも階段で恐怖なんてこれしかないくね?」

サターニャ「階段じゃなくて怪談! 怖い話! なんでそんなベタな間違いすんのよ!」

ガヴ「悪かったよ。まぁ知ってたけど」スタスタ

サターニャ「アンタわざとね!?」




ガヴ「ま、仕方ないから相手してやるよ」

サターニャ「やっとその気になったわね」

ガヴ「まだ私は思いついてないからサターニャからよろしく」

サターニャ「分かったわ」

サターニャ「準備はいいかしら? 心して聞き」

ガヴ「うわーこわーい。あー超怖かったもう帰っていい?」

サターニャ「アンタやっぱやる気ないでしょ!?」

ガヴ「チッ。冗談だよ」

サターニャ「まったく…じゃあ話すわよ」

サターニャ「それは魔界での出来事、およそ10年前のことだったわ」




サターニャ「あるところに、知る悪魔ぞ知る洋菓子店があったわ」

サターニャ「当時幼かった私はまだ自分だけでお菓子を作ったことはなかったけど、ある日両親がどうしても私を置いて出かけなくてはならなくなった」

ガヴ「お前の店の話かよ」

サターニャ「ええそうよ。で、弟のお守りをしながら天才である私は閃いたの」

サターニャ「パパもママもいないなら私がお菓子を作ればいいじゃない、と」

ガヴ「は?」

サターニャ「つまり、自力で商品を売って稼ぐことで私の高いスキルを示してやろうと思ったわけ」

ガヴ「ああそう…」

ガヴ(その性格は昔からなんだな)




サターニャ「それで私はママの見よう見まねでケーキを作ったの」

サターニャ「ちゃんとショーケースに飾って、それを見て入口越しに立ち止まる人もいたわ」


サターニャ「ところが」


サターニャ「いつもそこそこ盛況なお昼になっても、仕事帰りで混雑する夕方になっても、私のケーキはひとつも売れなかった」

サターニャ「それどころか、お店の中に誰ひとりとして入ってこなかった……!!」

ガヴ「はあ」

サターニャ「どう?」

ガヴ「えっなにが」

サターニャ「だから怖いでしょ?」

ガヴ「なんでだよ。単にサターニャのケーキがまずそうだったんだろ」

サターニャ「違うわ、見た目は完璧だった。味も後でママにみてもらっておいしいって言ってたし」

サターニャ「店内は見てくるから気づいてはいるはずなのにまるで中に入ろうとしない…」

サターニャ「これはそう、『何か』の力が客をお店から遠ざけるよう作用してたに違いないのよ!」




サターニャ「常連を含めて毎日何十人と来ていた客がぱったりと足を運ばなくなった。これが偶然だなんて到底思えない」

ガヴ「ちなみに母親はなんて?」

サターニャ「妖怪のせいって言ってたわ」

ガヴ「じゃあ妖怪のせいなんじゃね。終わりでいい?」

サターニャ「ちょっと待ちなさいよ! 怖いでしょ!? ノンフィクションよ!?」

ガヴ「お前の思い込み話だろ。怖さの欠片もないっての」

サターニャ「そ、そんな…」ガーン

ラフィ「なにやら楽しそうですね~」

ガヴ「ラフィ」

ラフィ「何を話しているんですか?」

ガヴ「怪談だとさ。夏でもないのに」




ラフィ「怪談って、怖い話ですよね? サターニャさんが?」

サターニャ「そうよ! それは魔界での出来事で……」

ガヴ(また話すのか)



サターニャ「……つまり、何かの力によって悪魔祓いが行われていたに違いないわ!」

ラフィ「あはは、面白いですね~」

サターニャ「面白かないわよ!! ある時思い出して、よく考えるとめちゃくちゃ怖かったんだから!」

ガヴ「だから妖怪のせいなんだろ」

サターニャ「でもそれっきりなのよ。そんなのがいるなら何度も似たようなことが起こるもんでしょ」

ガヴ「じゃあやっぱたまたまじゃね」

サターニャ「ええー、それじゃ納得が…」

ラフィ「というか、単純に休業日だからじゃないんですか?」

サターニャ「へ?」

ラフィ「ですから、サターニャさんのご両親がお店を閉めて出かけたからじゃないですか?」




ラフィ「ふつう、お店なら開いてるか閉まっているかの掛け札なり看板なりを出しますよね」

ラフィ「例えば入口のところに『CLOSED』と書いてあれば、中が気になったとしてもお客さんは入ってこようとしません」

サターニャ「あ」

ラフィ「サターニャさんのお話もそういう風に考えると辻褄が合うと思いますけど」

ガヴ「それだな」

サターニャ「そ、そんなはずないわ! あれは絶対……」

サターニャ「……」

ガヴ「諦めろ。すべてお前の勘違いだ」ポン

サターニャ「う、ううーーーっ!!」

ラフィ(うふふ、がっかり恥ずかしサターニャさん美味しいです)




サターニャ「はぁ……なんか、一気にやる気が削がれたわ」

ガヴ「そうか。じゃあ私の不戦勝だな」

サターニャ「なんでそうなるのよっ!?」

ガヴ「サターニャは怪談でもなんでもない話をした、イコールお手つきみたいなもんだろ。よって私の勝ちだ」

サターニャ「っ、そんな屁理屈は認めないわ! せめてガヴリールも何か話しなさいよ!」

ガヴ「えぇ、めんどくさ……」

サターニャ「ちなみに、話せないならそれこそアンタが不戦敗よ」

ガヴ「じゃあもうそれでいいよ」

サターニャ「へっ? ほ、ほんとに? 私の勝ちでいいの?」

ガヴ「あー、まぁ……」

ガヴ(待てよ? どうでもいい勝負とはいえ正式に負けを認めるのはなんか癪だ。けど持ちネタなんかないし)

サターニャ「フッ、フフフ……やったわ、ついに悪魔である私が天使のガヴリールを」

ラフィ「待ってくださいサターニャさん」

ガヴ「!」

サターニャ「ラフィエル!?」





ラフィ「これが天使と悪魔の戦いだというならば、黙って見過ごすわけにはいきません」

サターニャ「なんですって?」

ラフィ「ガヴちゃん、ここは私に任せてもらっても?」

ガヴ「ああ、頼む。っていうかここ以外も全部頼む」

サターニャ「何のマネかしらラフィエル」

ラフィ「それはもちろん、私がガヴちゃんの代わりにサターニャさんをもてあそサターニャさんと戦うということです!」

サターニャ「今アンタなんかすごいこと言いかけなかった!?」

ラフィ「ともかく、先ほどのサターニャさんのものより怖い話ができればいいんですよね?」

サターニャ「……そうなるわね。ま、できればの話だけど」

ラフィ「わかりました」

ガヴ(そもそもサターニャの話1ミリも怖くなかったけど、まぁいいか)




ラフィ「こほん。お二人とも、トイレの花子さんはご存知ですか?」

サターニャ「なによそれ?」

ガヴ「あーあれだっけ、誰もいないはずの学校のトイレに誰か入ってるっていう」

ラフィ「正解ですガヴちゃんっ」

サターニャ「はぁ? バカね、誰もいないのになんで入ってるのよ」

ガヴ「だから怪談なんだろ……バカはお前だ」

サターニャ「あっ……し、知ってるわよ! ジョークに決まってるでしょ!」

ガヴ「で、その花子さんがどうかしたの?」

ラフィ「はい。これは最近ネットで見つけたものなんですけど」

ラフィ「花子さんは本来、学校にある特定のトイレで、特定の回数ノックをしたりしないと現れないみたいなんです」

サターニャ「なにそれ、ややこしいわね」

ラフィ「そうなんですよ」




ラフィ「それでですね、なかなか条件が揃わなくなってしまった花子さんが場所を移動し始めたとの情報がありまして」

ガヴ「移動ってお前、いいのかそれ」

サターニャ「条件が揃わないってどういうこと?」

ラフィ「サターニャさんは、トイレに入るときにノックをしますか?」

サターニャ「……? するに決まってるじゃない」

ラフィ「ガヴちゃんは?」

ガヴ「するわけないだろめんどくさい」

サターニャ「なっ!?」

ガヴ「入ってるかどうかなんて鍵見ればわかるし、鍵かけてなかったらかけてないそいつが悪い」

ラフィ「そういうことです」

サターニャ(ガヴリール……なんてやつなの。A級悪魔行為に匹敵するわ!)

ラフィ「そういう子が増えたことで、花子さんは学校での活躍の場がますます失われてしまいました」

ガヴ(だからって勝手に移動するなよ)

ラフィ「そんな彼女が目をつけたのは……なんと、個人の家のトイレだったのです!」

ガヴ「……は?」





ラフィ「某掲示板では、誰もいないはずの自宅のトイレをノックしたら返事があったという書き込みが近頃増えてきているんです」

ガヴ「なんでだよ。自分ちのトイレとか余計ノックしないくね?」

ラフィ「サターニャさんはどうですか?」

サターニャ「……するわね」

ガヴ「お前えらいな」

ラフィ「書き込んだ方々はドアを開けなかったから無事ではあるものの、生きた心地がしないそうですよ」

ガヴ「はあ」

サターニャ「それ……開けるとどうなるわけ?」

ラフィ「開けてしまうと、中にいる花子さんに引きずりこまれて、それから……」

サターニャ「………」ゴクリ

ラフィ「………」


ラフィ「私のお話は以上です♪」

サターニャ「ちょおーーっ!?」




サターニャ「なんでそこで切るのよ! 気になるじゃない!」

ラフィ「私の口からはとても……」

サターニャ「なに!? 一体なにが起きるの!?」

ラフィ「ふふふ。 怖かったですか?」

サターニャ「はっ!」

サターニャ「こ、ここ怖くなんかないわ、ちっともね!」

ガヴ(なんでこんなのでビビってんだこの悪魔)

サターニャ「くっ……こうなると、今のところ引き分けといったところかしら」

ガヴ「自分に甘いなおい」

ヴィーネ「あら、ラフィもいる。みんなでなに話してたの?」

ラフィ「ヴィーネさん。今までどちらに?」

ヴィーネ「うん? トイレ行ってただけだけど」

サターニャ「なっ!? だ、大丈夫だったの!?」

ヴィーネ「へっ? な、なにが?」





ヴィーネ「………へぇ、そんなこと話してたのね」

サターニャ「そうよ。だからヴィネット、アンタも気をつけなさい。特に家ではね」

ガヴ「お前怖がりすぎだろ」

サターニャ「こ、ここ怖がってなんかないって言ってんでしょ!」

ラフィ「ところでサターニャさん、この勝負は私たちの勝ちでいいんでしょうか?」

サターニャ「はあっ!? いいわけないじゃない! 次はこっちの番よ!」

ガヴ「続くのかこれ…」

サターニャ「ヴィネット、なんかないの? 大悪魔級にとびきり怖い話!」

ヴィーネ「私!? そんな急に振られても……っていうか休み時間終わっちゃうわよ」

ラフィ「では、みなさんで放課後に怪談パーティしませんか?」

ガヴ「え」

ヴィーネ「…冬なのに怪談パーティ?」

サターニャ「ふふん、いいじゃない。望むところよ」

ガヴ「私パスでいい?」

ラフィ「まぁまぁガヴちゃんそう言わずに~」

サターニャ「そうよガヴリール、逃げるなんて許さないんだから!」

ガヴ(まじかよ……かったる)




放課後 サターニャ宅



サターニャ「で、なんでウチなのよ…」

ガヴ「言い出しっぺの法則じゃね」

サターニャ「言い出したのはラフィエルじゃない」

ラフィ「みなさんで集まるにはうちは遠いですし」

ガヴ「それにサターニャんちっていつもキレイだしね」

サターニャ「そ、そうかしら?」

ガヴ「ヴィーネんちと違っていくら汚しても自分で片付けなくていいところがいい」

サターニャ「はっ倒すわよアンタ!」

サターニャ「……あれ? そういえばヴィネットは?」

ガヴ「先生に用があるらしい。すぐ来ると思うけど」

サターニャ「ふーん」

サターニャ「まぁいいわ、先に紅茶でも準備しておくから、適当にくつろいでなさい」

ガヴ「よろしくー」ペラ

サターニャ(すでにコタツで漫画読み始めてる……)

ラフィ「それじゃあ私は予約したケーキ取ってきます」

サターニャ「ケーキ? わざわざ予約なんてしてたの?」

ラフィ「なんて言ったってパーティですから! すぐ近くのお店なので、10分くらいで戻ってきますね」ガチャ

サターニャ「ずいぶん気合い入ってるわね」

ガヴ「あー、なんか眠くなってきたから、揃ったら起こしてくれ」ゴロン

サターニャ「ちょっ、ガヴリール! アンタね…」

ガヴ(やべ、さすがに図々しすぎか)

サターニャ「風邪引いちゃうじゃない。寝るならベッドで寝なさいよ」

ガヴ「お前ほんとに悪魔かよ」




ガヴ「すぐだろうしここでいいよ。それよりサターニャ、喉乾いた」

サターニャ「まだお湯沸いてないわよ」

ガヴ「冷たいのでもいいからなんかない?」

サターニャ「……ウーロン茶ならあるけど」

ガヴ「じゃあそれで」

サターニャ「くっ、なんで私が天使にこき使われなきゃいけないのよ…」スッ

ガヴ「なんでお前そんな素直に言うこと聞くんだよ」

サターニャ「お客人じゃしょうがないじゃない! 首洗って待ってなさい!」

ガヴ(もうここに住もうかな)



サターニャ「はいこれ」コト

ガヴ「お、サンキュ」

ガヴ「………」

サターニャ「……?」

ガヴ「せい」

サターニャ「ぶっ!?」ゴクン

サターニャ「ぷはっ、はっ……なにすんのよ急に!」

ガヴ「なんともないのか?」

サターニャ「……なにがよ?」

ガヴ「いや、なんか仕掛けてんじゃないかと」

サターニャ「はぁ? そんなことするわけ……ってああ! その手があったじゃないっ!!」

ガヴ(やはりバカだな)グビ




ガヴ「ぷはー、生き返るー」

サターニャ「くっ、私としたことがせっかくのチャンスを……」

ガヴ「まぁ返り討ちにされなくてよかったじゃん」

サターニャ「……それもそうね」

ガヴ「ちょいトイレ借りるわ。どこだっけ?」

サターニャ「そこ出て、廊下の端の右手よ」

ガヴ「へーい」ガチャ

サターニャ(しくじったわ。 次こそはちゃんと仕掛けてやるんだから)


サターニャ「………」


サターニャ「あ、お湯沸いたわね」

サターニャ(そうだ! これから淹れる紅茶に細工をすればいいじゃない)

サターニャ(たしか魔界通販で買った、犬のマネがしたくてしょうがなくなる粉薬が……)ゴソ

ガヴ「ふいーすっきり」ガチャ

サターニャ「あびゃあああっ!!」




ガヴ「……どうしたお前」

サターニャ「へっ!? べ、別になんでもないけど!?」

ガヴ「どうせなんかよからぬこと考えてたんだろうけど、やめといたほうがいいぞ」

サターニャ「な、なんのことかわかんないわね~」

ガヴ「本当か?」

サターニャ「あったり前じゃないあははははー! あっそうだ私もトイレ行かなきゃ!」ガチャ

ガヴ「怪しいな」


サターニャ(ふー、危うくバレるとこだったわ。もう少し慎重に行動しなきゃ)

サターニャ(よく考えたらさっきの今で紅茶は怪しまれるわよね。なにか別の手口ないかしら)コンコン

「はぁい」

サターニャ「あれ? ごめん、入ってたのね」

サターニャ(飲み物じゃなくて食べ物に入れるとか? うまく分配して私は安全なやつを……)ガチャ

ガヴ「ん?」




サターニャ(うん、いけるわ! これでガヴリールたちをギャフンと)

ガヴ「なんだお前」

サターニャ「な、なによ!? 別になにも考えちゃいないわよ!?」

ガヴ「いや知らないけど……やけに早かったなと」

サターニャ「へ? ああ、誰か入ってたのよ」

ガヴ「……は?」

サターニャ「ん?」

ガヴ「なに言ってんだ? そんなわけないだろ。いまは私たちしかいないんだぞ」

サターニャ「え? あ、そうね」

サターニャ「あれ? でもたしかにノックしたら返事が……」

ガヴ「寝ぼけてたんじゃね?」

サターニャ「そんなはずは……いや、もう一回行ってみるわ」ガチャ




サターニャ「………」

サターニャ(たしかに、トイレの鍵はかかってないわね)

サターニャ(じゃあさっきのは幻聴? でも声ははっきり聴こえてきたような)

サターニャ(疲れてるのかしら。それとも……)

サターニャ「………」

サターニャ(まさか、ね?)

サターニャ「………」コンコン

サターニャ「………」

サターニャ「………」

サターニャ(なーんだ、やっぱり誰も入ってな)


「はぁい」


サターニャ「!!?」





ガチャ!


ガヴ「ん、サターニャ。どうだっ」

サターニャ「ガヴリールーーーっ!!!」ガバッ

ガヴ「ぶっ!? ちょっ、なんだよ!?」

サターニャ「で、でたででたたたでたででででた出たのよっ!!!」

ガヴ「はぁ!? な、なに? 大便?」

サターニャ「違うわよっ!! 出たのよ! トイレに! 例の……!!」

ガヴ「例のって……」

ガヴ「………」

サターニャ「………」

ガヴ「え? ……花子さん?」

サターニャ「………」コクコク!

ガヴ「またまた、勘違いだろどうせ」

サターニャ「勘違わないわよ! だって2回も同じ声聞いたのよ!?」

ガヴ「はぁ」




ガヴ「いやでも、ついさっき私が使った時はなんともなかったんだぞ? なんで急に」

サターニャ「それは……」

サターニャ「っ、そうだ、ノックよ! アンタその時ノックした!?」

ガヴ「してないけど……え、そういう問題?」

サターニャ「知らないわよ! でもラフィエルの話じゃ花子さんが現れるには条件があるってことだったじゃない!」

ガヴ「まぁ……」

サターニャ「まさか、本当に……」

ガヴ「………」



ピンポーン


サターニャ「ひいっ!!?」




サターニャ「って、なによヴィネットじゃない……開いてるから入っていいわよ」


ヴィーネ「ごめん、遅くなっちゃった」ガチャ

サターニャ「う、ううん。いいわ、そこに座って」

ヴィーネ「あ、うん」

ヴィーネ「………」

サターニャ「………」

ヴィーネ「ど、どうかしたのサターニャ?」

サターニャ「へっ!? いやっ、別に!?」

ヴィーネ「……なんか近くない?」

サターニャ「えーーそうかしら!? これくらい普通よ普通!」

ヴィーネ「……ちょっとガヴ、サターニャなんかあったの?」ヒソ

ガヴ「いや、それが……」




ヴィーネ「は、花子さんが本当にいる?」

ガヴ「って言うんだよ、サターニャは」

ヴィーネ「またまた、聞き間違いでしょどうせ」

サターニャ「聞き間違えてなんかないわよ!! たしかに! この耳で! 2回も! 聞いたんだからっ!」

ガヴ「耳が作り物って説は」

サターニャ「あるわけないでしょ!?」

ヴィーネ「また通販でヘンなもの買ったとかじゃないの?」

サターニャ「ヴィネットまで! 今月はまだ3個くらいしか買ってないわよ失礼ね!」

ガヴ「買ってんじゃねーか」

サターニャ「ぐっ……でも、ほんとにそういうのじゃないわ。ホラーや幻聴の類のものは買った覚えないし、使った記憶もないし」

ガヴ「でも、お前頭がアレだからなぁ」

サターニャ「どういう意味よっ!?」




サターニャ「とにかく、トイレになにかあるのはたしかなのよ…」

ガヴ「そこまで言うなら確かめに行くか?」

サターニャ「ほ、本気なのガヴリール!? あれは紛れもなくホンモノよ!?」

ガヴ「問題ない。行くのはヴィーネだ」

ヴィーネ「ちょっ、なんでそうなる!?」

ガヴ「だって万が一にもほんとだったらやだし…」

ヴィーネ「私だってイヤよ!」

ガヴ「大丈夫大丈夫、どうせなんもないって」

ヴィーネ「ならおまえが行け!」

サターニャ「こうなったらいっそのこと、全員で行こうじゃない」

ガヴ「いや、もう放置してたほうが幸せじゃね?」

サターニャ「私が幸せじゃないでしょうが! なに今さら怖気づいてんのよ!」

ガヴ「ばっ、お前こそなに急に強気になってんだよ! 気になるなら自分で行けよ!」

ヴィーネ「あーもー喧嘩しない! サターニャの言う通りみんなで行けばいいでしょ!」




ガヴ「で、先頭に立ってくれるヴィーネさんまじパネェ」

ヴィーネ「あんたらが勝手に隠れたのよ…」

サターニャ「ちょっとガヴリール! 押さないでよ!」

ガヴ「押してねーよ、ってかサターニャが一番後ろだろどうやって押すんだよ」

サターニャ「あれ? それもそうね」

ヴィーネ「怖いこと言わないでくれる!?」

サターニャ「ごめん、今のは勘違いだったわ…」

ガヴ「どうせトイレのもそんな感じなんじゃねやっぱ」

サターニャ「だから違うってば!」

ヴィーネ「……ここね?」

ガヴ「……ああ」

サターニャ「………」

ヴィーネ「………」

ヴィーネ「ちょっといいかしら?」

ガヴ「ん?」




ヴィーネ「さっきの話だと、最初にガヴが入った時にはなんともなくて」

ヴィーネ「次に入ろうとしたサターニャが、誰もいないはずのトイレをノックして返事があったのよね?」

サターニャ「そうなるわね。それも2回も」

ヴィーネ「別に直接花子さんの姿を見たわけじゃないのよね?」

サターニャ「まぁ……」

ヴィーネ「その後すぐに私が来てからは、トイレは誰も確認していないわね」

ガヴ「そうだけど」

ヴィーネ「ふーん…」ガララ

サターニャ「ヴィネット? そっちはお風呂場よ」

ヴィーネ「………」

ヴィーネ「じゃあ、これはどう思う?」

ガヴ「どれ?」

ヴィーネ「だからこれよ。玄関にあるローファー」

ガヴ「どうって普通に私たちのだろ? それが………あれ?」

ヴィーネ「なんで私たち3人しかいないはずの家の玄関に、4足も置かれているのかしら?」

サターニャ「………!!」




サターニャ「わかったーーーーーっ!!!」

ガヴ「うわっ、うるさっ!」

サターニャ「ふ、ふふふ。なるほど、そういうことだったのね」

ヴィーネ「………」

サターニャ「………」チラッ チラッ

ガヴ「………」

ガヴ「一応聞いてやる。なにがだ?」

サターニャ「フッ、よくぞ聞いてくれたわね。この名探偵サタニキア様が話してあげるわ、事の真相を!」クイッ

ガヴ(うぜぇ……)

ヴィーネ(メガネはどこから出したのかしら)




サターニャ「結論から言うわね。今このトイレの中に花子さんはいないわ!」

ガヴ「はあ」

サターニャ「中にいるのはトイレの花子さんという虚像を作り上げた張本人よ。まったく、私としたことがうっかり騙されかけてしまったわ」

ヴィーネ(かけるじゃなくて完全に騙されてたじゃない…)


サターニャ「トリックはこうね」


サターニャ「『予約したケーキを取りに行く』とウソを言って部屋を抜け出し、まずはここ、トイレの向かいにある脱衣所で待機!」

サターニャ「そして隙間から観察し、ガヴリールが先に使ったのを確認してからトイレに籠る!」

サターニャ「当然、次に使うとすれば私。犯人はそこに狙いを定めたの」

ガヴ(これ一応合わせてやったほうがいいのかな)

サターニャ「なぜかって? フッ、決まってるじゃない。私が必ずノックすることを学校で話して知っていたからよ!」

ガヴ(あ、必要なかった)





サターニャ「さて、ここまで言えばアンタたちも気づいたかしら?」

ガヴ「ああ、うん、まあ…」

サターニャ「そう。犯人は自らの怪談話を自らの手で実行したにすぎないのよ」

サターニャ「犯行は完璧だったわ。たった一点、この玄関のローファーのことさえ見落としていなければ、ね」

ヴィーネ「それ、私が最初に気づいたんだけど…」

サターニャ「3人しかいないはずなのになぜか4つもローファーがある。それはなぜ?」

サターニャ「カンタンなことよ。これこそまさしく、もう一人家の中にいるという動かぬ証拠!」


サターニャ「すなわち……」スタスタ



サターニャ「アンタのやったことは、全部まるごとまるっとスリットお見通しなのよ、ラフィエルっ!!」バーン!!





ガヴ「………」

ヴィーネ「………」

サターニャ「………」


サターニャ「……あれ?」


ガヴ「……誰も」

ヴィーネ「いないわね…」

サターニャ「そ、そんなハズは……」




ガチャ


ラフィ「ふー、思ったより時間かかっちゃいました~」

サターニャ「へ」




ラフィ「あら? みなさん玄関でなにされてるんですか?」

ガヴ「ラフィ、それ…」

ラフィ「はい。ガヴちゃんお待ちかねのケーキですよ」

ガヴ「………」

ラフィ「……?」

ヴィーネ「えっと、靴は…?」

ラフィ「靴? ……ああ! これですか」

ラフィ「すみませんサターニャさん、可愛い健康サンダルだったので勝手にお借りしちゃいました」

サターニャ「あ、うん……」


サターニャ「………」


サターニャ「え?」

ガヴ「え?」

ヴィーネ「え?」

ラフィ「えっ?」




おわり



以上です。
読んでくれた方ありがとござます。


このあとガヴとヴィーネはそそくさと帰りました。
サターニャはラフィに泣きついて一晩泊まってもらいました。めでたしめでたし。


実際1がやりたかっただけでろくなトリックじゃないんだけどタネ明かしいるかな

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