~ ゲートの向こう側 ~
――僕達は、僕達の力で神を斬り、そして未来を斬り開く――!
アルヴィース(……これで、終わりだね)
アルヴィース(シュルク、君はよく頑張った。よくぞここまで辿り着き、未来を掴み取ってくれた)
アルヴィース(これで世界は生まれ変わる。君の望む、神の無い――今を生きる者達の手で作られる、新たな世界が)
アルヴィース(新しく生まれる世界は、無限の広がりを持っている。そこには君達だけじゃない、様々な生命が芽吹くだろう)
アルヴィース(僕には見える。その世界で、全ての生命が共に手を取り合い、未来に向けて歩んでいく姿が――)
アルヴィース(――…………)
アルヴィース(……名残惜しいけど、僕の役目はこれで終わりだ。世界が生まれ変わった後に、僕が成すべき事は何もない)
アルヴィース(でも、見ているよ。僕の未来視《ビジョン》へと歩む君達の姿を、いつまでも、いつまでも――)
――ザッ
アルヴィース(――……? これは、足音? この世界再誕の場に存在できるなんて、一体――)クルッ
メツ「……あん?」
アルヴィース「おや?」
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メツ「……誰だお前。ここで何してやがる」
アルヴィース「……それは僕のセリフなんだけどね。何者なのかな、君は」
メツ「……お前が俺を連れてきたんじゃねぇのか? チッ、どういう事だってんだ。こりゃあ」ガシガシ
アルヴィース「連れてきた? そうはどういう――、っ」
アルヴィース(彼の胸元、あれは……トリニティプロセッサーの形? では、もしや……)
アルヴィース「…………」
メツ「……何だ、突然黙り込みやがって。やっぱりお前が俺を――」
アルヴィース「いや……そうだね。一つ聞きたい事が出来たんだ、君に」
メツ「……チッ、面倒クセェな。何だよ」
アルヴィース「君は――ロゴスか、プネウマ。どっちだい?」
メツ「ッ!? テメェ、どうしてその名を……!」
アルヴィース「ウーシア……と言って、分かるかな」
メツ「……トリニティプロセッサーの最後か、オヤジが言ってたな。つー事は、テメェ」
アルヴィース「兄弟――って事になるね、君と僕は。まぁ、予想が正しければの話だけど」
メツ「――チッ! ああくそ、じゃあゲートの向こう側って事かよ、ここは……!」
アルヴィース「扉……やはり、まだ稼働していたのか……」
メツ「今頃はどっかに行っちまっただろうがな! クソが!」
アルヴィース「……さて、それじゃあ生き別れの兄弟の再会シーン――を、楽しむ感じじゃなさそうだね」
メツ「ったりめぇだろうが! 訳が分からねぇんだよ、こっちは!」
メツ「何で俺はここに居る!? どうしてテメェが生きてる!? 一体何が起きてるってんだ! チッ、どっから目を向けりゃ良い……!」
アルヴィース「…………」
アルヴィース「……ふむ。じゃあコンピューターはコンピューターらしく、一から冷静に処理していこうか」
メツ「ああ?」
アルヴィース「ここに至るまでの過程。つまりは身の上話をしようって事さ、互いにね――」
…………
……
…
アルヴィース「……なるほどね。君達の世界では、ザンザ――いや、クラウスはまだ生きていたのか」
メツ「ああ……身体の半分ぶっ飛んじまって、みっともねぇ有様だったがな」
メツ「――いや、テメェんとこのオヤジ程じゃあねぇか。何だそのなっさけねぇ最期は、ヨシツネでももっとマシだったろうよ」
アルヴィース「おそらく、本体から分断された上、扉を潜った事で存在が変質してしまった影響なんだろうけど――少し、君の世界が羨ましいね」
メツ「そうかい、そりゃ趣味が悪ぃな」
アルヴィース「おや、君はザンザの方が好みかい? すまない、彼はもう――」
メツ「どっちも碌でもねぇって話だ、阿呆」
アルヴィース「……これがガラテアだったら、何かは変わっていたのかな」
メツ「あ?」
アルヴィース「独り言」
アルヴィース「まぁ、それはさておき――君の事」
メツ「……今の話で何か分かったのか」
アルヴィース「いいや、全く」
メツ「おい」
アルヴィース「扉が消失する際に君の残滓が巻き込まれた、プロセッサー間でバックアップのやり取りが出来た……理屈は様々、捏ねられる」
アルヴィース「けれど――現状を考えれば、正しい答えなんて出る筈がない。そうは思わないかい?」
メツ「……ゲートなんて意味分からんものが絡んでる上、片や世界が生まれ変わってるってんだからな。何が起きたって不思議じゃねぇってか」
アルヴィース「そういう事。コンピューターとしては失格の答えもいいところだけどね」
メツ「ハッ、ちげぇねぇ」
メツ「……ここは、お前の記憶の世界って事でいいのか」
アルヴィース「記憶……というより、精神世界さ。僕の見ている世界の生まれ変わりは、現実に今、起きている――」
メツ「そうかい。そりゃあ……いいな。いい景色だ」
アルヴィース「気に入ってくれたかい?」
メツ「ああ――眩しすぎるぜ。俺なんかにはよ……」
アルヴィース「…………」
アルヴィース「……ロゴス。君は、これから?」
メツ「さぁな、俺にも分からんさ」
メツ「結構満足してたんだぜ。満足して死んだってのに、こうなって……ったく、腹立たしいったらありゃしねぇ」
アルヴィース「運がいいのか悪いのか、判断に困るね」
メツ「くだらねぇ味噌がついちまったよ、本当にな……」
アルヴィース「……そうだね。僕としては、君に三つくらいは道を示す事は可能だと思う」
メツ「道……? おもしれぇ、言ってみろ」
アルヴィース「まず一つ目。この世界で、僕と一緒にずっと生命を見守って――」
メツ「却下だ。次」
アルヴィース「全部言ってないのに、酷いなぁ。兄弟の好として善意の提案なんだけど」
メツ「ねっとりしててサタの数千倍気ッ色わりぃんだよ、テメェの言い方」
アルヴィース「言うねぇ、君……」
アルヴィース「ま、ともかく――二番目。これから生まれる世界に混じり、一つの生命として生きる事」
メツ「……どういう意味だ?」
アルヴィース「そのまま。君の存在を新しい世界に送って、そこで暮らして貰うのさ」
メツ「そんな事が出来んのか」
アルヴィース「僕は神じゃないけど、それに近い力はまだある。幸い、君の肉体は一般的なホムス――人間とほぼ同じ構造だ、新しい世界にもきっと馴染むだろう」
メツ「……ハッ、ぬけぬけと。俺が向こうで何してきたか聞いたろうが、それでも――」
アルヴィース「やるつもり、もう無いくせに」
メツ「…………」ゲシッ
アルヴィース「おっと」ヒラリ
メツ「……で、三つめは」
アルヴィース「これは簡単さ。今ここに居る君を、元居た場所に送り返す――それだけ」
メツ「送り返すだぁ……? おいおい忘れたのか、俺はもう――」
アルヴィース「死んでる、って? でも君はここに居て、僕と喋っているだろう?」
メツ「そりゃあ、そうだが……それにゲートも無くなったんだ。世界間の繋がりは切れちまった筈だぜ」
アルヴィース「うん、その通り。けれど君も言っただろう、今は何が起きても不思議じゃない」
メツ「……繋がってるってのか、まだ」
アルヴィース「……さっき、君が僕の精神世界に来たように、僕もある場所にアクセスを試みた。すると――驚いた事に、繋がってしまったんだ」
アルヴィース「それがどこか、分かるかい?」
メツ「……ヒカリの所、か……」
アルヴィース「ヒカリ……プネウマの今の名前だったね」
アルヴィース「ともかくそういう事さ。今ならまだ、プロセッサー同士の繋がりを辿り、君を送り返す事ができる――かもしれない」
メツ「ハッキリしねぇ物言いだな……」
アルヴィース「まぁ、世界の生まれ変わりのついでに出来たような、細く薄い繋がりだからね」
アルヴィース「何時途切れてもおかしくない上、成功するかしないかも運次第」
メツ「失敗したらどうなる」
アルヴィース「分からない。途中で切り離される訳だから、世界と世界の狭間で彷徨うことになるのか、それともザンザのような存在になってしまうのか……」
メツ「フン……そもそもの話、ヒカリの精神に俺をねじ込むってぇ事だろ。前に似た事はしたが、良い気はしねぇよ」
アルヴィース「ま、だろうね」
メツ「……チッ、どれもこれも碌な道じゃねぇなぁ、おい」
アルヴィース「そう言わないでよ。これでも精一杯の選択肢なんだ」
メツ「分かってるよ。だが……」
アルヴィース「……一応、第四の道として、君を消す事も出来る。でも――せっかく会えた兄弟だ、あまり気乗りはしないよね」
メツ「そりゃお優しいこって、嬉しくって泣いちまいそうだ」
アルヴィース「…………」
メツ「……ああくそ、ったく……」
メツ(チッ、ようやく終われたと思ったら何てザマだ。面倒クセェ)
メツ(これも好き勝手してきた罰ってか? 何を選んだって、こいつは――……)
メツ(……………………いや)
メツ(あぁ…………そうか。そうだな、こりゃあ……)
メツ「…………、…………」
アルヴィース「――答え、出たのかい?」
メツ「ああ。決めたぜ、ウーシア。俺の行先」
アルヴィース「……そう。なら聞かせて欲しい。君は――どの道を歩みたい?」
メツ「……考えてみりゃ、予想はついたんだ。あの後、起きるだろう事はな」
アルヴィース「…………」
メツ「さっき、くだらねぇ味噌が付いたと言ったが、違った。最後の最後で――最高の出逢いだったぜ、兄弟」
アルヴィース「ロゴス……」
メツ「――俺が、選ぶ道。俺の成すべき事、それは――」
…………
……
…
~ 第一低軌道ステーション ~
アイオーン【――――――】
プネウマ「…………」ピッピッピッ
プネウマ「……よし、これで大丈夫」ピッ
プネウマ「皆はもう逃げられたかな……そうだ、脱出艇をすぐに発射できるようにしておかないと……」ピピピ
プネウマ(……もうすぐ、私はこの世界から消える。アルストを守るために、世界樹と共に)
プネウマ(だけど、後悔は無い。だって、この力で大好きな人達を守れるのだから)
プネウマ(そう――大好きな。とても、大好きな……)ブゥン
――――――
レックス『―――! ―――!』タタタタ
――――――
プネウマ(…………)
プネウマ「……レックス、あなたに出逢えて良かった」
プネウマ「永い私の時の中で、ほんの僅かな間だったけれど――どの時よりも暖かくて、そして輝いていた」
プネウマ「暗かった私の歩く道を、照らしてくれた――」
プネウマ「ありがとう、レックス――私に、光をくれて……」
――なぁ、生まれてみて――どうだった?
プネウマ「……知りたい? それはね――」
「――――――」
「――そうかい。なら、こんな所に居るんじゃねぇよ」ドンッ
プネウマ「え――」
メツ「…………」
プネウマ「……!? あ――」
シュゥン……
メツ「フン、送り代はサービスだ」
メツ(……ゲートが消えて、オヤジも消えたってんなら、当然この場所を維持してた力場も消える……)
メツ(そうなった時、お優しいアイツがどんな行動に出るか――予想通り、碌な事しねぇ)
メツ「アルストなんてほっといて、愛しの小僧としけ込みゃ良いってのに……本当に、面倒クセェ」
アイオーン【――――――】
メツ「……よぉ、悪かったな。最後の相手を華のねぇ奴に変えちまって」
メツ「だが、お前もその方が良いだろう? 死なせたくねぇだろ、アイツを」
アイオーン【――――――】
メツ「……よし。なら、キッチリ消してくれよ。頼んだぜ」ポン
メツ(アイオーン。この棺桶に誰かが乗らなきゃならねぇってんなら、その役割はお前じゃねぇ)
メツ(ああそうさ。生まれてみて、そうだったのなら、きっと)
メツ(――生きろよ、相棒――)
カッ!
…………
……
…
~ 新たな世界 ~
アルヴィース「……世界の再誕が、終わる」
アルヴィース「いや――僕達にとっては、これが始まり。シュルク――君達の歩む、光ある世界の……」
アルヴィース「…………」
アルヴィース「……でも、同時に。プネウマとの繋がりも完全に途切れてしまう……」
アルヴィース(……ロゴス。もしかしたら、これは本来あってはならない出逢いだったのかもしれない)
アルヴィース(けれど――逢えて良かった。僕も、そう思っているよ)
アルヴィース(出来る事ならもう一度……とは思うけど、無理なんだろうね。それは)
アルヴィース(…………)
アルヴィース「でも――そうだね。叶う事なら、一度だけ」
アルヴィース「今度はプネウマも加えて、兄妹全員で語り合ってみたい。そう、思うよ――」
完
* * * *
キズナトーク『アルヴィースの好奇心』
アルヴィース『……そうか、戻るんだね』
メツ『ああ、ちぃとばかしやり残した事を思い出した』
アルヴィース『それは、聞いても?』
メツ『ハッ! まぁ、敢えて言うなら――ちょっとした、お礼参りだ』ニヤァ
アルヴィース(……そう言えば、最後にロゴスはそんな事を言っていたけれど……さて、具体的に何をしたのやら)
アルヴィース(…………)
アルヴィース(少し、覗いてみようかな)ビビビ
~ アルスト ~
レックス「あ、あの……ホムラ? ちょっと近いというか、その……」
ホムラ「そんな事ありませんよー? だって私はレックスの――きゃっ」グイッ
ヒカリ「ほら、レックスが嫌がってるでしょ。ねー?」ピトッ
レックス「いやあの、ヒカリも近い……」
ホムラ「ほらヒカリちゃん、言われてますよ?」ピトッ
ヒカリ「む、こんな美少女にくっつかれてるんだから、そんな事ないわよね? っていうかあなた、どさくさに紛れてそんなベッタリ――」
キャイキャイ
ニア「…………」(忍耐力↑↑↑)
ジーク「――あー、まどろっこしいわ! もう二人も三人も変わらんやろ、お前も行ってきィ猫娘ェ!!」ブン
ニア「えッ!? ちょ、にゃああああああああ……!?」ガバーッ
サイカ「いやぁ、大騒ぎやなぁ」
ハナ「ハナ、知ってますも。シュラバ、って奴ですも」
ビャッコ「しかし、お二人とも無事に帰って来られて何よりです」
トラ「トラもぉ、ホッとしてはひはひも~……」グテー
カグツチ「ええ、本当に。これが奇跡ってものなのかしら」
メレフ「ああ、おそらくそうなのだろう。だが……」
カグツチ「……メレフ様?」
メレフ「いや何。ホムラとヒカリ……一人であったものを、わざわざ二人にして返してくるとは……」
レックス「――! ――!?」
ホムラ「――! ――!」
ヒカリ「――――ッ!?」
ニア「~~!? ~~!?」
メレフ「……まぁ、何と言うべきか。この奇跡を起こした者の底意地は、それほど良くはなかったのだろうな――」
~~~~
アルヴィース「…………」
アルヴィース「……………………なるほどなぁ」
おしまい
※ このSSはフィクションです。実際のゼノブレイド、ゼノブレイド2、及びメツブレイドには一切の関係がありません。
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