ミリオンライブ!の投票企画TBのシナリオを妄想したものです。
配役は
新入生: 春日未来
先輩: 高山紗代子
キング: ロコ
右腕クイーン: 望月杏奈
同級生: 所恵美
で書いています。(話の都合で6人目が少しだけ出演しています)
次からはじまります
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1514634346
~春のある日。ビーチバレーの名門校の校門に一人の少女が立っている~
未来「校門を抜けるとそこは一面の砂浜でした!」
未来「すっごーい! 本当にビーチしかない! さすがビーチバレーの超名門76高! 緊張してきた……大丈夫かな、この水着似合ってるかな」
恵美「おんやぁ~、こんなに新鮮な反応をしてるってことは高校からの外部組かな?」
未来「あ、はい! 初めまして、今日入学する新入生の春日未来です! もしかして先パイですか?」
恵美「いんや、アタシも同学年だよ? ま、内部進学だけど。アタシ所恵美、よろしくね未来!」
未来「よろしく恵美ちゃん! うわぁ、高校生ともなると同学年の子でも大人びてるなあ、水着もなんだかセクシーだし」
恵美「ちょっとぉ、じっと見られると恥ずいって~」
未来「ふふ……ねえ恵美ちゃん、76高は日本で一番ビーチバレーが強いんだよね?」
恵美「え、そだよ。なんせここではすべてがビーチバレー中心で回ってるからね。プロ志望の人間もたくさん集まってるし」
恵美「まあ……人口が多い分アタシみたいにたいして上手くない人間も混ざってるんだけどさ。アタシは選手のデータ収集のほうが得意なんだ」
恵美「未来もプロ志望じゃないの? ここに入るくらいだし」
未来「うーん、私は……わかんない! 中学ではテニス部と陸上部とソフト部と生物部だったから」
恵美「4つ掛け持ちしてたってこと? やるぅ~」
未来「だからプロとか実感がわかないけど、目標はあるんだ。76高で一番の選手になるの! それでそれを友達に連絡する!」
未来「お、こんなところに丁度ボールが落ちてる。よーっし、じゃあ76高のてっぺん目指しての第一サーブ! 打っちゃいますか! いくぞー! せーの」
紗代子「ちょっとそこのあなた!」
未来「うわっとと……。どうしよう、私かな」
紗代子「そうよ、今まさにサーブを打とうとしていたあなた! 見ない顔だけどどういうつもり、そのボールは」
未来「え?」
紗代子「汚れたまま手入れもしていないし、ガムまで付いて!」
未来「えと……あー、本当ですね、裏にガムが付いてました」
紗代子「気づかないくらい普段からそんな状態で使っているっていうの? 呆れてものも言えないわ」
恵美「あちゃー、面倒な人に見つかっちゃったかもよ。未来、耳貸して」
未来「恵美ちゃん」
恵美「この人は3年の高山紗代子先輩。第5ビーチバレー部の部長やってる人。校内でも実力は指折りなんだけど、指導もマナーも厳しくて有名なんだ」
恵美「熱血指導に耐えられなくて次々と部員たちが辞めていっちゃってさ。今では第5の部員は部長一人だけってウワサ」
恵美「最近はその熱血のやり場がなくてさらに荒れてるって聞くから、勘違いって説明してもなかなか放してくれないかもよ」
未来「えー⁉」
紗代子「2人とも、なにをこそこそ話しているの! ボールの乱れは心の乱れ、やっぱりボールの扱いが悪い子は心まで濁っていくのね」
未来「高山先パイ、違うんです私たち」
紗代子「言い訳までするつもり? 私そういうの許せない! いいわ、ここでまとめて私が指導しなおしてあげる!」
~校門からあるいてすぐの場所にあるコートにて~
紗代子「いい!? 私がサーブを打ち込むからあなたたちはレシーブ、トス、アタックでこちらに返すのよ」
紗代子「10球中1球でも返せたら合格よ。第5ビーチバレー部に入れてあげるわ!」
紗代子「そして! もし1球も返せなかったら第5ビーチバレー部に入れて性根から叩き直してあげる!」
恵美「えーん、どっちにしても入部させる気じゃん~……。高山先輩、正気なのか正気じゃないのかぜんっぜん分からないいいいい」
未来「私ももうわけがわからないよー!」
未来「……でも、この試練も通れないようじゃ76高のトップなんて目指せないよね」
未来「受けて立ちます、高山先パイ!」
紗代子「その意気やよし! いくよ! ”サマートリップゴールデンフィッシュ”!!」
未来「っ! サーブされたボールが炎をまとって真っ赤な金魚のように……! しかも軌道が……途中で跳ねる⁉」
未来「そんな……一歩も動けなかった」
恵美「出たァー! #高山熱血ビーチバレー紗代子先輩の”サマートリップゴールデンフィッシュ”!!」
恵美「瑠璃色金魚がなんぼのもんじゃいミリオンの初代金魚アイドルは私じゃ私じゃ! と言わんばかりの気合を感じるよー!」
紗代子「どう? これが私の一つ目の必殺サーブよ。そしてこれがふたつ目! ”マイフェイバリットアニマルハリコ”!!」
未来「こ、これは……! ボールがトゲ付き鉄球のようなスピードと威力に⁉ 軌道は読めるけど……止められない!」
恵美「たっはー! これが高山先輩の”マイフェイバリットアニマルハリコ”! 自分のペットの名前を叫んでいるだけと見せて威力は強烈ゥー! そのギャップがたまらない!」
未来「恵美ちゃん、大丈夫?」
恵美「あ、うんごめん」
紗代子「その程度なの? あまりがっかりさせないで頂戴」
紗代子「緊張感を上げるためにルールを変えましょう。次の1球で最後よ。これで決めなさい!」
紗代子「”サマートリップゴールデンフィッシュ”!!」
恵美「来た! どうするの⁉」
未来「そんなの。拾うしかない!」
未来「手はあるよ。高山先パイの球は金魚のように跳ねる弾道を描く。つまり金魚すくいの要領で動けばレシーブできる!」
恵美「なるほど!」
未来「右か左か……跳ねた方向に合わせてみせる!」
未来「お母さんが天ぷらを揚げるときを思い出して……大丈夫、天ぷらを揚げるのもレシーブを上げるのも大した違いはないはず」
未来「曲がった! 右……今だ!」
未来「”天ぷらレシーバー”!!」
恵美「レシーブが揚がった、じゃない上がった!」
恵美「と、トス……! 変な方向に……ごめん来ると思ってなかったから!」
未来「任せて! テニス部で鍛えたダッシュで追いついて……アタック!」
紗代子「“バーニングファイアーブロック”!!」
未来・恵美「「ええー⁉」」
紗代子「決まったわね」
未来「なんでブロックするんですか!」
紗代子「ブロックしないなんて言ってないわよ」
紗代子「現実のバレーでブロックがないとでも思うの?」
未来「そうですけど~」
恵美「高山先輩、変な理屈つけてるけどぜったい負けたくないだけだよー……」
紗代子「言い訳は聞きたくないわ。さあ、2人とも第5ビーチバレー部に入部するのよ!」
未来・恵美「「はーい……」」
いったんここまでです。
部活の数字を増やしたのは「たくさんビーチバレー部があるんですよー」と説明する目的でしか正直考えてなかったんですが
みんな数字を強調した話し方をしちゃってるんでそうですよね……
なんとか出せるように頑張ります
~数分後~
紗代子「え、やだ。ボールは私の勘違いだったの!? ごめんなさい……うぅ、恥ずかしい……」
~突如コートの外から歓声が上がる。未来たち3人には事態が呑み込めない~
未来「この騒ぎはなに⁉」
女生徒「キングよ! キングロコさまがいらしたわ!」
未来「え、キングって」
恵美「76高で一番強い選手だよ!」
未来「……!」
ロコ「おや、遠くから今までに感じたことのないストロングなビーチバレーオーラをキャッチしたはずだったんですが」
杏奈「知らない2人はおそらく新入生……こっちのはずはない、よね……」
ロコ「オーラの持ち主はサヨコだったんでしょうか。だとしたら納得ですね」
未来「このモフモフ髪の小さくてかわいい女の子が……」
紗代子「第1ビーチバレー部の部長であり、76高最強と言われているロコちゃん、通称キングロコよ」
ロコ「言われているのではありません、本当にストロンゲストなんです」
ロコ「ロコは76高においてオールヴィクトリー、つまり無敗を続けていますので」
杏奈「2人で組めば……もっと最強……だよ」
恵美「となりの大人しそうに見えるのが望月杏奈先輩。キングの右腕として活躍する姿からクイーンとも呼ばれてる人だよ」
未来「かわいい……えっ、かわ……かわいい……」
ロコ「ではロコはこれでグッバイです。サヨコ、部長ミーティングでまた会いましょう」
未来「待ってください!」
未来「あの……ロコ先パイは76高で一番強い選手なんですよね」
ロコ「ザッツライト、その通りです」
未来「じゃあ、私と試合をしてください! お願いします!」
紗代子「未来ちゃん!?」
ロコ「おやおや、今日入学でロコにチャレンジとは素晴らしいカレッジですね」
杏奈「ロコ、こんな申し込み……受ける必要ない……よ」
ロコ「キング’sルールその1! キングはすべてのチャレンジャーをアクセプト」
ロコ「ロコはあらゆるゲームの申し込みをアクセプトします。そして勝ちます。今回もそうです」
女生徒「き、キングロコが新入生と試合をするわよ!」
女生徒「え、嘘!?」
杏奈「ロコ」
ロコ「ウォーターを差さないでください。キングはロコですよ」
杏奈「ロコ!」
ロコ「アンナ……分かっています。ではこうしましょう」
ロコ「1ポイントだけやってディサイドします」
ロコ「ロコ達ペアと1回ラリーをして、スタンディングアライブしていられたら(※注1)そちらがウィナーです。どうですか?」
(※注1…… 「無事に立っていられたら」という意味)
紗代子「未来ちゃん受けちゃだめ。あなたの敵う相手じゃないわ」
未来「心配しないでください。たった1回ですよ? これに勝って、ぜったいに私を認めてもらいます!」
未来「恵美ちゃん」
未来「ごめん、知り合ったばっかりだけどペアをお願いできないかな」
恵美「え、ダメってことはないけど……。アタシなんかで大丈夫?」
未来「もちろん! 私は恵美ちゃんがいいんだ」
恵美「なら……いいよ」
ロコ「グッド。先攻か後攻かチョイスしなさい」
未来「当然先攻です!」
ロコ「なら……カモン! ロコ&アンナの準備はオールウェイズできています!」
未来「ふぅ……はぁ……」
未来(勝つんだ……これに勝って……)
未来「いきます! ”全力スパーク”!!」
紗代子「サーブされたボールが空気との摩擦でスパークを起こしている!? これが1年生の打つ球なの?」
紗代子「でも……」
ロコ「ふっ、イージー」
恵美「……ッ! 普通にレシーブした!?」
紗代子「なんて柔らかなタッチ。すべてのエネルギーを完全に受け流している」
杏奈「ナイスレシーブ! それじゃあ杏奈も、最高のトスいっくよー! ”Happy Darling"! 応援ください!」
観客「「「「「「「応援するよ!!!!!!!」」」」」」」
恵美「あれがキングのスパイクを何万倍にもするっていうクイーンのトス! 1ミリの狂いもなくキングの最高到達点へ! あと観客がうるさい!」
ロコ「オーライです! フレッシュマン、覚えておきなさい。これがキングのスパイク、キングスパイクです!」
恵美「高い! あの身長でネットの春k、いや遥か上まで飛んでいる!」
ロコ「”トラッシュ・トゥ・ザ・トラッシュボックス”!!」
未来「来た! 物凄い派手なブレと音……ネットを挟んでも強さが伝わってくる」
恵美「でも止めなきゃ! だよね未来!」
恵美「背中はアタシが支えておくから、思いっきり受け止めな!」
未来「うん! ぜったいに止めてみせ、えっ」
未来(このスパイク……止められな……なん、で……!?)
ロコ「そのスパイクは到達するべきプレイス、つまり砂浜にたどり着くまでそのパワーを落とすことはありません」
未来「そんな……2人で受けてる、の、に……ああっ!」
紗代子「吹き飛ばされた!? 恵美ちゃん、未来ちゃん!」
恵美「っ痛~……。でも大丈夫です。未来は?」
紗代子「それが気を失って返事をしないの。吹き飛んだ衝撃で頭を打ったのかも。保険室に運びましょう!」
恵美「は、はい!」
ロコ「サヨコ」
紗代子「なによ!」
ロコ「メッセージをお願いします。そのフレッシュマン……ミライに」
ロコ「再試合をしよう、と。ディフィートして気を失ってはいますが、キングスパイクをこちらのコートに返されたのは久しぶりでした……」
杏奈「ロコ!?」
ロコ「期日はワンウィークアフター。今度は1ポイントではありません。勝ちたければ死ぬ気でトレーニングしなさいと。そう言ってください」
紗代子「……わかったわ。恵美ちゃん、いきましょう」
~紗代子、恵美が未来をそっと移動させていく~
いったんここまでです。
~1時間後。保健室にて。ベッドの上に未来が寝ており、その様子を紗代子と恵美が見守っている。~
未来「ん……んん…………はぅあっ!? れっれしいいいぶ!?」
恵美「未来、寝てないと」
未来「でも……」
恵美「寝てな。話はするからそのまま聞いてて」
未来「うん……。ねえ、勝負はどうなったの」
恵美「負けちゃったねー。もう完敗ってやつ。で、未来は1時間くらいそのまま気絶してた」
紗代子「でもね、キングの方から再試合の申し出があったの。1週間後にきちんとした試合を、ってことで」
紗代子「ただ今回のことがあるでしょう? 受けるかは未来ちゃん次第よ」
未来「今回のことって……? 受けるに決まってるじゃないですか!」
恵美「はあ~……未来、あんたってほんとに……」
恵美「なんだろ、アタシもうまく言えないけど、もう昔からの知り合いみたいになっちゃってるわ……」
未来「?」
恵美「いちおう思いっきり吹っ飛ばされてこてんぱんにやられた後なんだけどね、って言いたいの」
未来「やられちゃったらもう一度挑むよ。今度は特訓もたくさんして」
未来「私はどうしても76高で一番になりたいの」
恵美「どうしてもって……まだ入学1日目だよ? 正直なにをそんなにあせってるのかわからないよ」
紗代子「さっき恵美ちゃんに聞いたんだけど、未来ちゃん。中学ではビーチバレー部じゃなかったんでしょう?」
紗代子「そんな子が急に76高に入ってトップを目指すって……なにがあったの」
未来「……」
恵美「話しづらいなら無理しないで」
未来「あ、そうじゃないの!」
未来「ちょっと……友達がいまなにをしてるかな、って。考えてて」
恵美「友達?」
未来「うん。実は、76高に入ってトップを目指すっていうのはもともと私の友達の目標だったんだ」
未来「その友達のことをね、考えてたの」
未来「話します。私と、ビーチバレーがとっても好きなその友達のことを」
~未来の回想。中学3年生の時の記憶。放課後の教室で未来と親友の静香が言い争っている~
未来「76高の受験をやめるってどういうこと⁉」
静香「そのままの意味よ。76高は受けずに、きちんとした進学校に行くの」
未来「他の学校でビーチバレーをやりたくなったっていうこと?」
静香「違うわ、もうビーチバレーをやめるのよ」
未来「そんな! あんなに好きだったのになんで!」
静香「元々ビーチバレーをやるのは受験が始まるまでっていうのが両親との約束だったのよ」
静香「それまでに私が日本で一番になれれば76高受験も考えていいって話だったけど」
静香「私は結局……なれなかった。これはもう、仕方のないことなのよ」
未来「静香ちゃんはそれでいいの⁉」
静香「……ええ、私も納得してるわ」
未来「嘘」
静香「え?」
未来「静香ちゃんいま嘘ついてる! 『私絶対にビーチバレーを諦めたくない!』って、そう思ってる!」
静香「そんなこと……ない」
未来「ある! 静香ちゃんがビーチバレーを誰より好きなのは私が知ってる! 静香ちゃん自身の心も!」
未来「だからそんな泣きそうな顔してるんだよ!」
静香「……っ!」
未来「お父さんとお母さんにもう一度話をしにいこうよ。『ビーチバレーでトップを目指したいんです』って」
静香「それは駄目よ! そんなこと認めてもらえるわけがない」
静香「未来こそ好き勝手に言いすぎよ! ビーチバレーでトップを目指すのがどれだけ大変かも知らないのに!」
未来「知らないよ! でも!」
静香「もうやめて! 私はもうビーチバレーを諦めるの……そう、決めたのよ」
静香「これから先、大きくなってなにがあるかわからない……ビーチバレーの道へ進んだことを後悔するかもしれないし、ほかのことを好きになるかもしれないじゃない……」
静香「私にももうなにが正しいかなんてわからない……わからないのよ。そんな中でようやく諦めて、決めたと思ったのに……」
静香「なのになんで、いまさら迷わせるようなことを言うのよ……」
未来「……ごめん、静香ちゃん」
静香「あのお父さんを説得するなんて、無理よ……」
未来「わかった。まず私が日本で一番になる!」
静香「どういうこと?」
未来「さきに私が日本一の選手になって、静香ちゃんのお父さんを説得するの」
未来「『静香ちゃんはトップになれます! 日本一の私が保証します!』って」
未来「日本で一番のビーチバレー選手に説得されたらお父さんだって意見が変わるかもしれないよ!」
静香「できるわけないでしょ!」
未来「できる! やるから!」
静香「ビーチバレーを馬鹿にしてるの⁉」
未来「してない! でもやるの!」
未来「それに! いま見えたの! いつか静香ちゃんと私でペアを組んで世界一に挑戦する舞台に立つシーンが!」
未来「そうなったら素敵だなって! 本気で本気で本気でそう思えるのっ!」
静香「未来……」
未来「いまから先生に76高の願書もらいにいってくるから!」
静香「ちょっと、未来ー!」
~職員室へ全力疾走していく未来~
いったんここまでです
次の更新ができたらその後は速いかもしれません
他の部分はだいたい書けていますので
……速くできたらいいな
~76高の保健室。未来は恵美と紗代子に自分が76高に入ることになったきっかけを話し終えた~
紗代子「なるほど……そうだったの」
恵美「親友の代わりに……」
未来「うん……私は早く日本で一番になって、静香ちゃんを連れ戻したいの」
未来「でも、いま思った。それだけじゃないなって」
未来「キングのスパイクを受けながら、ビーチバレーってすごいなって感じた」
未来「私が想像してたビーチバレーとはぜんぜん違ったの。普通とは違って、なんていうか……ドキドキした!」
未来「ここにはすごい人がたくさんいるんだよね? 紗代子先パイだけじゃなくて」
未来「だったら私、もっともっとビーチバレーのことを知りたい。この76高で!」
未来「そのうえで、キングにも勝ってみせます」
未来「紗代子先パイ、こんどは私のほうからお願いします。私を第5ビーチバレー部に入れてくれませんか」
未来「紗代子先パイと恵美ちゃんといっしょに76高でやっていきたいんです!」
紗代子「未来ちゃん……うん! 頑張ってキングに勝ちましょう!」
~翌日~
恵美「……とはいっても、あのキング相手にどうやって戦えばいいんだろ」
未来「わかんない!」
紗代子「そういうときはね……」
未来・恵美「「そういうときは?」」
紗代子「おんなは度胸! やれることはなんだってやってみるのよ!」
紗代子「まずはビーチを100周! 対策は走りながら考えましょう!」
~ホイッスルをくわえながらビーチを走る紗代子。それについていく恵美と未来~
紗代子「さあ、第5ビーチバレー部伝統のランニング中の掛け声いくよー!」
未来・恵美「「おー!」」
紗代子「ぜったいキングに勝つぞー!」
未来・恵美「「勝つぞー!」」
紗代子「働くって素敵ー!」
未来・恵美「「素敵ー!」」
紗代子「きっと流した汗は美しいー!」
未来・恵美「「美しいー!」」
紗代子「たくさんの夢があれば、くろうなんてなんのそのー!」
未来・恵美「「なんのそのー!」」
紗代子「いも!」
未来「いも!」
恵美「いも……?」
~翌日~
未来「はあ……ひい……走りながら考えたんですけど……」
未来「キングスパイクが、はあ……強すぎるなら……鎧を、着るっていうのは、はあ……どうでしょう!」
未来「防御、りょくを……上げれば……耐えられる、はあ……はずです!」
紗代子「いいわね! 鎧を水着として捉える新発想!」
紗代子「やりましょう!」
未来「はあ……やった……!」
恵美「それ……重すぎて動けないか、中で未来の蒸し焼きができるだけじゃないですか?」
未来・紗代子「「え……!?」」
~翌日~
未来「はあ……そう、いえば……キングの、はあ……過去の試合、って……どうだったんでしょう……」
未来「キング、をぉ……追い詰めたことがある人がいれば、ふう……その人が……参考、に、なるんじゃ……?」
紗代子「そうね……。常勝のキングでも、過去に追い詰められた試合はたしかにあった。記憶にあるのはやっぱりほかの部の部長たちかしら」
恵美「アタシもそれが印象強いですね」
未来「……その人たちを、はあ……分析すれば……ヒントが、あるかも……。どん、な……人たちなんですか」
紗代子「順番に話していきましょうか」
紗代子「第2の部長はパワータイプね。格闘技経験者だって言ってたと思うんだけど」
恵美「1発の重さが尋常じゃないですよね」
未来「じゃあ、まずは筋トレですね……」
紗代子「筋トレ! いいわね、私も筋トレ大好き!」
恵美「第3の部長は……トリッキーっていうんですかね、あれは?」
紗代子「ええ、多分」
恵美「ブレイクダンスの達人らしくて、独特のリズムがあるんだよね。本人は『アメリカ仕込みのビートさ!』てよく言ってる」
未来「じゃあ、ダンスの練習も追加で……」
恵美「第4は……野生? コートの上で獣みたいに跳ね回ってる。すごい瞬発力だよ」
紗代子「よく『都会のハトはどんくさいなー』て言いながら追い回しているんだけど、あれが特訓なのかも……?」
未来「じゃあ、ハトも捕まえましょう……」
紗代子「第6の部長は胸が大きい」
恵美「胸が大きいですね」
未来「胸が!? ど、どうすれば……バストアップ体操……?」
~翌日~
紗代子「ボールは友達! ボールは親友!」
紗代子「ビーチバレープレイヤーだったらボールと会話くらいできて当たり前!」
紗代子「実際上位のプレイヤーたちはバレーボールと認識したものすべてと意思疎通して操れるというデータもあるわ!」
紗代子「ということで今日はボールと会話ができるようになるまでひたすらボールタッチの練習よ!」
未来「はい!」
ボール「ちっちゃくてもがんばりますぞー!」
未来「はわっ!? ささささ紗代子先パイ、私さっそくボールの声が聞こえました! CV:嘉山未紗みたいな声です!」
紗代子「やったわね未来ちゃん……!」
恵美「えぇー……?」
~翌日~
紗代子「サーブほど練習量がものを言う分野はないわ! 徹底的に磨きましょう!」
未来「はい!」
恵美「えっ、なんか普通」
紗代子「? どうしたの?」
恵美「なんでもないです!」
紗代子「さあ、それじゃあ始めましょう!」
~翌日~
未来「はあ……はあ……紗代子先パイの特訓、キツすぎ~っ。恵美ちゃんはなんで普通についていけてるの……?」
恵美「一応76高の中等部で3年間鍛えられたからね。体力とか基礎的なのは一通り」
未来「すごいね!」
恵美「いやあアタシは全然だよ。典型的な試合では使えないタイプでさ。コートに立つと緊張して頭真っ白になっちゃって……」
恵美「いつもなんだよね。体がガチガチに固まって、肝心なところで足が出ない感じ? 結局ビーチバレーってその一歩を踏み出せるかが大事なわけじゃない?」
恵美「もう自分でも選手よりマネージャーなんかのほうが向いてんだろなー、って思い始めてたんだけどさ、アハハ……って未来?」
未来「ぎゅうううううううう」
恵美「え、え? どしたのどしたの。突然抱き着いてきて、っていうか今アタシ汗かいてるし」
未来「ぎゅうううううううう」
未来「おまじない。試合中に動けるようになるおまじないをかけてるの」
恵美「え……。……もう、仕方ないなあ」
恵美「じゃあアタシも。未来がキングとの試合に勝てるようになるおまじない。ぎゅうう」
未来「えへへ~」
恵美「へへ……」
紗代子「練習をさぼってるやつはい”ね”え”か~!」
未来・恵美「す、すいませんでした~~!!」
紗代子(もう。2人ともまだ中学生気分が抜けきらないんだから)
紗代子(ふふ、3人で練習するの楽しいな……)
紗代子(私がこれまで感じたことがなかったくらい充実した1週間だった……)
紗代子(ずっとこんな風に続けていけたらいいな……)
紗代子(……でも、これでいいのかしら)
紗代子(そう……私たちは3人。未来ちゃんと恵美ちゃんはペア。だけど私は……?)
紗代子(2人のうちどちらかとたまに組むのかしら? ううん、たとえそうしても同じ大会には出られなくなっちゃう。そんなことはできない)
紗代子(だとしたら、同じチームで? それとも第5以外の誰かと……? ……でも、私なんかと組んでくれる人なんて……)
紗代子(……いなかった)
紗代子(やめやめ。考えてもしょうがないじゃない紗代子。いまは2人をロコちゃんとの試合に勝たせることだけ考えましょう)
~試合前日。第1ビーチバレー部の部室にて。部屋にはロコと杏奈の2人。なぜか右腕を抑えて苦しんでいるロコとそれを不安そうに見つめる杏奈~
ロコ「くっ、ラ、ライトアームが……っ」
杏奈「ロコ……」
杏奈「もう……もうやめよう? ロコの使う技はどれも強力だけど、強力すぎてロコ自身の体を破壊していってるんだよ……」
杏奈「これ以上続けたらロコの腕が壊れちゃう」
ロコ「それはできません」
ロコ「アンナにもしっかりとはエクスプレインしたことがありませんでしたね。ロコがなぜキングという道を選んだのか」
ロコ「アンナは現在のビーチバレーの世界をどう思いますか」
ロコ「プロリーグも活動していて、一見ノープロブレムに見えます」
ロコ「しかし一方でかつてのように誰もが知っているプレイヤーやスーパープレイはなくなっているのではないでしょうか?」
ロコ「多くの人は話題にしても昔のプレイヤーや昔のゲームのことばかり……」
ロコ「ロコはいまのそんなビーチバレー界を変えたい。チェンジです!!!! そのためにはよりスター性の高いプレイヤー、エンターテインメント性の高いプレイが必要なんです」
ロコ「つまり、キングです」
ロコ「キングこそ、ビーチバレーに今求められている存在なんです!」
杏奈「普通のビーチバレーじゃ駄目なの⁉」
ロコ「ロコはキングという自分を使ってビーチバレーを変えていきたいんです!」
杏奈「だからって! ロコの体が壊れてもいいなんて、そんなの駄目だよ!」
ロコ「キングであることはロコのアイデンティティです。負けたらなにも残りません。ロコは誰でもなくなってしまうんです」
杏奈「そんなことない! アートが好きでいつも一生懸命で、クセっ毛で学校に友達がいなくてプロデューサーさんに作ったオブジェを捨てられてて……杏奈の親友! そんなのロコしかいない!」
ロコ「……ロコにはキング以外の道はノーセレクトです」
杏奈「……っ! ロコなんてもう知らない! もう一人でビーチバレーでもなんでもやってて!」
ロコ「アンナ⁉ ……行ってしまいました」
ロコ「キング’sルールその2、キングは孤独をノーフィアー……。バット、これは……」
ロコ「パートナーもいなくなってしまいましたし……ミライたちとの試合は……」
ロコ「……」
ロコ「……いえ、まだ手はあります」
~部室を後にするキングロコ~
~同日。第5ビーチバレー部の部室にて。未来が1人でボールを磨いており、恵美と紗代子の姿はない~
未来「ボール磨きは楽しいな~♪ いつもピカピカ明るいな~♪」
杏奈「お邪魔……します……」
未来「えっかわわわちょちょちょ望月先パイかわいいですけどどうしたんですか急に第5のかわいい部室なんかに!???」
未来「もっもしかしてかわいいですけど紗代子先パイになにかかわいい用事があって!?」
杏奈「落ち着いて……」
未来「はっはははい!」
未来「ひぃー……ふぅぅー……」
未来「すいませんでした……一度に大量のかわいさを浴びすぎて動転してしまって。どうされましたか」
杏奈「今日……ここに来たのは未来に……話があった……から」
未来「も、望月先パイが私の名前を呼んでいる!?」
杏奈「え、……うん」
未来「はわぁ~~~~~~…………」
杏奈「話をさせて……」
未来「はいすいません!」
杏奈「えと……じゃあ本題なんだけど」
杏奈「明日の試合……杏奈は……未来たちに協力……しよう、と思って……ます」
未来「え?」
未来「どういうことですか? 協力っていうと、望月先パイはキングのパートナーだから……わざと負けよう、と?」
杏奈「ううん。ロコとはパートナーを解消……してきたんだ」
未来「解消!?」
杏奈「……ずっとではない……と思うけど……多分」
杏奈「杏奈は……ロコを負けさせたいんだよ……」
杏奈「実は……ロコの体は……いま、ボロボロなの……」
杏奈「原因は……無理な大技の連発で……負担がかかりすぎてて……体がとっくに限界を超えてるの……」
杏奈「ロコにそれをやめさせ……たいんだけど……ロコはやめる気はなくて……」
杏奈「きっとね……無敗のキングって……いうのに……自分を縛っていて……もうロコ自身でも止められないんだと思う」
杏奈「だから……一度ロコをぼっこぼこにするんだよ……です」
未来「おー……なるほど?」
杏奈「ごめんね……難しいよね……?」
杏奈「つまり杏奈を……明日の試合だけでいいので……仲間にしてください……ってこと」
未来「それならわかりました!」
杏奈「うん。ありがと……です。明日の試合に勝つためだったら……なんでもするよ……」
未来「なんでも」
杏奈「……」
未来「……ふーん……」
杏奈「……」
未来「…………」
杏奈「……」
未来「…………ちょっと水着」
恵美「未来ー! 大変大変! いま掲示板で発表があって……ってあー! クイーン! なんでここに!」
杏奈「……話が……あって……」
未来「あ、危なかった……じゃなくて。恵美ちゃん、発表ってなんの?」
恵美「そう! それ!」
恵美「キングのパートナーが変更になったって! しかも新しいパートナーが! 紗代子先輩だって!」
未来「ん? キングのパートナーは望月先パイで……でも望月先パイはここにいて紗代子先パイはここにはいなくて……つまり……えええええええ~~~!!??」
杏奈「ロコ……」
~試合当日。濃紺の空と太陽。ラクダ色の砂浜にはコートがあり、熱狂した観客たちに囲まれて未来、恵美、杏奈とロコ、紗代子が対峙している~
観客「今日の試合! 勝つのは――どっちだ~⁉」
観客「キング!!! キング!!! キング!!!」
未来「うわあ……すごい歓声」
観客「最高のプレイを魅せるのは――誰だ~⁉」
観客「キング!!! キング!!! キング!!!」
観客「みちことみらい、似たような名前だが!! 勝つのは――どっちだ~⁉」
観客「みちこ!!! みちこ!!! みちこ!!!」
ロコ「ロコです!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
観客「ウォオオオオオオ!!!」
ロコ「まったく、しょうがないオーディエンス達ですね。しかし彼女たちがいるからこそ戦い甲斐があるというもの。そうでしょう?」
紗代子「ええ」
未来「紗代子先パイ……」
恵美「水着まで黒のセーラー水着に変えてる。本当にキングのパートナーになったんですね……なんで」
紗代子「私たちは敵同士。まだそんな迷いがあるようではすでに勝敗は決まったわね」
未来「いえ……! 紗代子先パイにも言った通りです。私はキングに勝ちます!」
紗代子「ならいいわ。お互いにベストを尽くしましょう」
ロコ「ふふん、ではゲームスタートです。今回は先攻をもらいますよ」
ロコ「先にディスペアーを与えておいてあげましょう……」
ロコ「これから放つ”IMPRESSION→LOCOMOTION!”はその名の通り、あまりのインプレッションで一度にロコ点、つまり65点をゲットする技です」
ロコ「これが何を意味するかわかりますか?」
杏奈「返せなければ1球で試合が終了する……!」
ロコ「グッドアンダスタンド。さすが元パートナーです」
杏奈「もうやめてロコ! 強すぎる技の連続でもうロコの体は限界なんだよ!」
ロコ「キング’sルールその3、リスクはあえて冒してこそエンターテインメント! ワイルドよりデンジャラスな一撃をくらいなさい、”IMPRESSION→LOCOMOTION!”!」
未来「来た! 二人とも、打ち合わせ通りに!」
恵美「OK!」
杏奈「インプレッションでボールを65個に分裂させる必殺技……ならそれを上回る人数で対処すればいい!」
杏奈「リトルアンナたち! ビビッとよろしく!」
恵美「すごい! 杏奈先輩の両手にはまった杏奈パペットの両手にさらに杏奈パペットをはめて、連結していく……最終的な数は2の6乗で64体!」
杏奈「そしてすべてのリトルアンナでレシーブ! ビビッとパーフェクト! イェイ!」
未来「残った1個のボールは私が!」
恵美「それをアタシがトス! あ、杏奈先輩……!」
杏奈「杏奈のとっておきスパイク! 見せちゃうよー! ”VIVID イマジネーション”!! キャッチミー!」
観客「「「「「「「キャッチミー!!!!!!!」」」」」」」
恵美「打ったボールがデジタル変換されてバーチャル世界へ移行した!? もはや人類には止めようがないスパイクじゃない。敵じゃなくてよかった……」
紗代子「いいえ止められるわ。”vivid color”!!」
恵美「”VIVID”を”vivid”で相殺!? 紗代子先輩の力でボールが鮮やかな現実世界に引き戻されて……上げられた! 嘘でしょ!?」
ロコ「驚くのはまだアーリーですよ? 決めなさいサヨコ! トス!」
紗代子「スパイクを放った杏奈ちゃんは防御には回れない……もらったわ。”デストルスラッシュ”!!」
未来「私が拾って――」
杏奈「未来、触っちゃダメ!」
未来「え……?」
未来「……ッ! ……ひ、拾わなくてよかった。杏奈先パイの一言がなかったら触れてしまっていた……」
未来「信じられない……。スパイクで砂浜が一刀両断に……」
恵美「だけどその切り裂く軌道が裏目に出たんだね……ボール半個分アウトだ……ナイス未来」
未来「うん……」
恵美「これが紗代子先輩のフルパワーなの? 怖~……」
未来「やっぱりすごい選手だったんだ……」
恵美「うん。良いパートナーさえいればキングとも互角じゃないかってずっと言われてたんだ。弱いわけがないよ」
未来「……」
杏奈「紗代子さん、なんでロコのパートナーになっちゃったの」
紗代子「……こんなこと、言ったってしょうがない」
未来「しょうがなくないです!」
恵美「そうです。紗代子先輩が考えてることだったらなんだって聞きたい! アタシたち、3人しかいない第5のメンバーじゃないですか!」
紗代子「……」
紗代子「元々キングと立場上の対立はなかったわ、組めない理由はない。それにね……思ったの。キングと組むのがベストな選択だって」
紗代子「勝ちたいから組む、パートナーがいないから組む。もちろんそれもあるの。ただ、それだけじゃない……ううん、それ以外の理由のほうが大きいのかもしれない」
紗代子「一番はきっと……ずっと一緒にいた、私の周囲の人たち。想像はついてるだろうけど私って一年生のときから周りの子たちと競技への取り組み方でぶつかることが多かったの」
紗代子「よくケンカになったのが練習量のこと。そりゃあ、努力はいくらしても報われるとは限らない。それは私も知ってる」
紗代子「でもね、最初から頑張ることができない、練習に誘っても来てくれない人たちもいて。いえむしろそんな人ばかりだわ……。なんなの? あなたたちビーチバレーが好きで部に入ったんでしょ!?」
紗代子「なのに誰に聞いても『紗代子の熱血にはついていけないよ』って……みんなそう!」
紗代子「じゃあ私はどうすればいいの⁉ 私のこの情熱は! 力は! どこに向ければいいのよ!」
紗代子「そんな風にずっと思ってた……。そして昨日、キングにペアの話を持ちかけられた」
紗代子「その時に気づいてしまったの。私のビーチバレーへの情熱をもっとも理解してくれるのはキングなんだって。それだけよ」
杏奈「紗代子さん……」
未来「ンン~~~~!!!!!!」
未来「紗代子先パイっっっ!!!!」
紗代子「ひゃいっ!?」
未来「わかります! 人が自分の言ってることをわかってくれないのって、とってもと~っても寂しいですよね!」
紗代子「……あなたに解るはずがない」
未来「わかりますよ! 私も修学旅行の前の日に『楽しみすぎて寝られないよ~!』て言ったらお母さんに『はいはい早く寝てね』て言われちゃって、なんでわかってくれないのー!てなりました!」
未来「それにそれに! 小さいころ私が転んでヒザをすりむいたときにも『痛いよ~!』て泣いてたのに『大丈夫、痛くないよ』てお母さんに言われて……」
恵美「えっと、未来……? アタシが割り込むのも変かもだけどそのー、話がさすがにずれてない?」
紗代子「そうよ、私とは全然違う話じゃない」
未来「違うけど、同じなんです! 誰かと一緒に練習できなかったら悲しいし修学旅行は楽しみだし、ヒザをすりむいたら痛いんです」
未来「それで私は自分が大きくなって娘が生まれたとして、もしその子がヒザをすりむいて泣いてたらやっぱり『大丈夫、痛くないよ』て声をかけてあげるんです」
紗代子「……」
未来「あれ? やっぱり違う話だったかな? 同じ話だと思ったんですけど、だんだん自分でもわからなくなってきちゃいました……えへへ」
恵美「あの……」
恵美「紗代子先輩はアタシたちじゃ駄目なんですか。そりゃ……アタシは紗代子先輩が3年間どんな思いでいたか何もわかっていませんでしたし、紗代子先輩のプレイについていくこともできないです」
恵美「でも……未来も、アタシも、紗代子先輩と一緒にやっていきたいんです!」
恵美「これだけは信じてください、お願いします」
恵美「……まあ、たまーに先輩の指導が厳しすぎる気はするんですけど」
紗代子「……」
紗代子「ふぅー………」
紗代子「あー……もう! 私ってばなにやってるんだろう」
未来「先パイ?」
紗代子「ううん、なんでもない」
紗代子「それより、さっき未来ちゃんのしていた話だけどね。同じ話だと思うわ、私も」
紗代子「未来ちゃん!」
未来「は、はい!」
紗代子「私、未来ちゃんと会えてよかった。ありがとう」
未来「えっと……どういたしまして?」
ロコ「カンバセーションは終わりましたか? そろそろ試合をリスタートしますよ」
紗代子「ごめんロコちゃん……私、やっぱり第5ビーチバレー部が好きみたい。だから」
ロコ「なんですって」
未来「紗代子先パイがこちらのコートに!」
恵美「杏奈先輩にくわえて紗代子先輩まで仲間になったら百人力だよ!」
杏奈「ロコ……これでもう決着……だよ……」
ロコ「……」
ロコ「フフフ……決着? 笑わせないでください。4人対1人になったからフィニッシュだというのですか?」
ロコ「たしかに1人ではレシーブからトスやスパイクにつなげることすらインポッシブル。勝つ方法などありません。普通ならそうでしょう。ですが! ロコはキング!」
ロコ「キング’sルールその4! アトモスフィアなどドントリード、ジャストビーマイセルフ」
ロコ「教えてあげましょう。あなたたちの相手など、レシーブさえできればイナフだと!」
恵美「ぜ、絶対に強がりだよ! この状況から勝てたりするわけがない」
紗代子「ううん、違う。あの表情は、絶対に自分が勝つと信じている表情。はったりなんかじゃない」
恵美「マジで…!? でもたしかに、すごい圧を感じる」
杏奈「ロコは死ぬ気でレシーブを打つ気……杏奈にはわかるよ。とてつもない大技が来る」
未来「じゃあこちらも戦いましょう、命を懸けて!」
紗代子「未来ちゃん、まさか」
未来「封印していた魔法の力を使います」
恵美「あれは使っちゃいけないって練習の時に言ってたじゃない! 危なすぎて使えても一度だけだって」
未来「その一度がいまです! マジカルパワー開放!」
未来「行きます! ”マジカルシャボンサーブ”!!」
恵美「未来の全魔力がボールに込められたサーブ! その威力は超電磁砲を超えて超熱線の域にまで到達する! さらに……」
紗代子「シャボンのように消える弾道を持つ……!」
杏奈「ほ、本当に消えた! どこに落ちるのかギリギリまでわからないってこと? これなら行けるかも!」
ロコ(ビーカームですロコ……いつものプラクティスを思い出して)
恵美「キングが目を閉じてしまった⁉ ボールが見えないからやけになったの?」
ロコ(大丈夫……ずっと繰り返してきたムーブです……。何ミリオン回、何ビリオン回も……。ボールなんて見えなくてもロコボディが反応してくれるはず……)
ロコ「……っっ!! アイキャンレシーブ!」
恵美「現れたボールがキングの両手の真正面にぃ⁉」
ロコ「くらいなさい! ”Sunshine Rhythm”!!」
恵美「返された? でも真上に打ち上げてる! コントロールが効かなかったんだ!」
紗代子「違う! これは……」
ロコ「”Sunshine Rhythm”はサンシャインのパワーを借りる技。ボールは一度成層圏を超えたあと、サンシャインのパワーを吸収して地上へフォールダウンします」
紗代子「見て! 空に太陽がもう一つ現れた!」
恵美「極小の太陽並みのエネルギーを持ったってこと⁉ まずいよ!」
未来「そんなの止められる人なんて……」
杏奈「杏奈が止める」
杏奈「一度も試したことのない技だけど、やってみる!」
杏奈「月にいるウサギさんたち……力を貸して。”Vivid Rabbit”!!」
恵美「え、何をして……空に月が現れた! 昼なのに!」
未来「しかもあの月、動いてる!」
ロコ「これがアンナの本気だというのですか……」
杏奈「月も……広い意味ではバレーボール……だから……。このボールで……ロコの太陽を……止めて見せる……よ」
杏奈「アタ……ック!」
ロコ「止められるはずがありません! ブレイクスルーしなさい”Sunshine Rhythm”!」
未来「月が動き始めた2つ目の太陽に向かっていく!」
紗代子「そして今、激突……した!」
恵美「やったの⁉」
紗代子「いえ、これは……! 月と2つ目の太陽、両方とも粉々に……!」
杏奈「そん……な……」
ロコ「ふう……少しだけコールドスウェットをかきましたが」
恵美「杏奈先輩、もうあの技は……?」
杏奈「月がないから使えない……よ……」
恵美「じゃあ……もう一度あの”Sunshine Rhythm”を使われたら……」
紗代子「ええ……その時点で止める方法のない私たちはゲームセットよ……」
ロコ「アンダスタンドしたようですね。さあ、双方のボールがロストしたので先ほどのポイントをやり直しです。最期のサーブを打ちなさい」
恵美「未来も杏奈さんも力を使い果たしてしまってる……どうすれば」
紗代子「私がサーブするわ!」
恵美「紗代子先輩!」
紗代子「大丈夫、任せて。恵美ちゃんも私の必殺サーブの力は知っているでしょう?」
紗代子(集中して、紗代子……あなたならできる。弱い自分はコートの外に置いてきたでしょう)
紗代子「”サマートリップゴールデンフィッシュ”!! ハッ!!」
恵美「すごい! これまで見てきた中で最大級の炎! 鮮やかなフレアが幻の金魚伊勢ハナフサのように!」
ロコ(サヨコの”サマートリップゴールデンフィッシュ”は途中で跳ねて軌道が変わる変化球。さっきと同じ……読むんです、ボディ全体で)
ロコ(ライトか、レフトか、レフトか、ライトか……レフトです!)
恵美「キングが左に動いた! 紗代子先輩の打球は……右へ! 逆だ、よっしゃあ!」
ロコ「まだですぅうううううう!!」
恵美「まさか! その体勢から切り返すの⁉」
ロコ「フッ……アイキャンレシーブ!!」
ロコ「これでジ・エンド・オブ・ザ・ドリームです! ”Sunshine Rhythm”!!」
紗代子「またレシーブが空の向こうへ! くっ、これで……もう手が出せない」
未来「まだです! まだやれます!」
恵美「未来! もう休んでないとダメだって!」
未来「まだ手はあります! 私の最後の魔力で!」
未来(静香ちゃん、恵美ちゃん、紗代子先パイ、杏奈先パイ……これまで会ったすべての人たち。お願い、私に最後の力を貸して……)
未来「これなら飛べる……ジャンプアップ!!」
紗代子「未来ちゃんが空へ⁉ ……そうか、”Sunshine Rhythm”はまず太陽の力を吸収する必要がある。ならその前に叩けば……」
杏奈「”Sunshine Rhythm”を……破れる!」
紗代子「未来ちゃん、あとはあなたに託すわ……お願い」
~76高ビーチの超上空。空と宇宙との間~
未来(っ……ロコ先パイのレシーブ、すごいスピードだ。間は詰めたけどなかなかボールに追いつけない! なんとか宇宙空間にたどり着く前に止めなきゃ)
未来(見えた! あれだ! もうすぐ追いつける。よし、さすがにスピードが落ちてきてるんだ……本当に? 違う! もう太陽のパワーを吸収し始めているんだ!)
未来(ま、間に合わなかった……)
未来(ううん、まだ。まだあきらめない!)
未来「あきらめない! どんなボールだって止めてみせる!」
未来「さぁ来ぉい!」
未来(こっちへ来た!)
未来「!!!!!!!?」
未来「うぁあああああああああああ!!」
未来(強い! 触れただけで両腕が粉々になりそう……!)
未来「ああああああああああああ!!」
未来(止める! 止めるんだ!)
未来「ぐ、ぐうううううう止まれえええええええええ!!」
未来「あっ⁉」
未来(取りこぼした⁉)
未来(ああ……)
未来(もう……どうしようもない。終わったんだ、これで……私のビーチバレーの初試合が)
恵美「まだあきらめるのは早いって!!」
未来「!? 恵美ちゃん! どうしてここに」
恵美「決まってるでしょ!」
恵美「受け取って! アタシの最高のトス!」
未来「うん!」
恵美「未来! アタシ動けたよ! 大事な一歩、踏み出せた!」
未来(ありがとう恵美ちゃん……恵美ちゃんにはなんども勇気をもらっちゃってるね)
未来(私、絶対に決めるよ。この大事な一撃を)
未来(静香ちゃんにも届けるんだ。……見てて。私、打つよ。いつだって不確かな未来に向かって、ただまっすぐに打つよ)
未来(明日にはまた悩んで、怒って、笑って。そんな未来にたどり着くように。全力で)
未来「”ミライウルトラスーパーギャラクティカマジカルハイパースパイク”ゥウウウウウウウウウウ!!」
未来「この思い、君に届けええええええええええええええええ!!」
~地上。全員が空を見上げている~
紗代子「空が、光った……」
ロコ「ザッツトゥーバッド、ミライは夜空のスターの仲間になりました。”Sunshine Rhythm”を止められるはずがありません」
杏奈「待って、あの光」
ロコ「マイガー! ありえません!」
杏奈「流れ星みたいに見えるけど……」
紗代子「未来ちゃんのスパイクだわ!」
ロコ「……来る!」
ロコ「……ふんっ!!」
杏奈「流星がロコの待ち受けてた両手に!」
紗代子「爆風がこちらにまでくる!」
ロコ「んんんんぃいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
紗代子「受け止めた? でも拮抗してる!」
ロコ(ロコはキング! ロコは負けない!)
ロコ「アイ……キャンンンンンンンンンンンンンンンンン」
紗代子「まだ粘れるの!?」
ロコ「ンンンンンンンnotレシイイイイイイイイイイイイイイイイブ!!」
紗代子「ロコちゃんが吹っ飛ばされて未来ちゃんのスパイクが砂浜に……決まった!」
紗代子「これでゲームセットね!」
杏奈「うん……」
紗代子「あ、見てあれ!」
紗代子「未来ちゃん! 宇宙から帰ってこれたのね!」
未来「はい」
紗代子「見てたよ! すごかった、未来ちゃんの”ミライウルトラスーパーギャラクティカマジカルハイパースパイク”!」
未来「いや、あれは……みんなが打たせてくれたんです。紗代子先パイも杏奈先パイも恵美ちゃんも、みんなの力があったから」
未来「……ハッ。恵美ちゃんは?」
紗代子「それが……まだ」
未来「そんな……まさか」
紗代子「考えたくはないけど、宇宙の塵に……え、嘘! あそこ!」
未来「隕石が砂浜に……ちがう! 恵美ちゃんだ!」
恵美「アイタタタ……。にゃはは、髪型で上手くクッションになってくれたみたい。アホ毛が付いたキャラデザじゃなかったら危なかったよー」
未来「恵美ちゃんんんんん」
恵美「こらこら、未来はまた抱き着いてきて……。甘えん坊さんかー?」
未来「だって”え”えええええええ」
紗代子「恵美ちゃん、私からも。帰って来てくれて本当に嬉しいわ。これで第5ビーチバレー部のメンバー、元通りね!」
未来「ごれがらも3人でがんばっでいぎまじょうねええええ!!」
恵美「泣くなってー! もう」
~近くの砂浜。空を仰ぐロコに杏奈が話しかける~
杏奈「ロコ……負けちゃったね」
ロコ「はい。これでもう無敗のキングではなくなってしまいました」
杏奈「うん……」
ロコ「これからは、ロコはロコです。ただのロコです。……バット」
ロコ「ただのロコが勝ち上がっていく。これも最高にインタレスティングでアメイジングなエンターテインメントって思いませんか?」
ロコ「アンナにそんなロコのビサイドにいるライトアームになってほしいなって思うんですけど……どう、ですか?」
杏奈「ロコ……!」
ロコ「どうもロコはアンナと一緒にプレイしたほうが調子がベターみたいです」
ロコ「無茶なプレイはどこまで減らせるかわかりませんが……ドゥーベストします。だから」
杏奈「うん! 杏奈もいい外科医さん知ってるから紹介する……ね」
ロコ「ですけど……。キング’sルールだけは曲げたくありません……わがままですね」
杏奈「うん……知ってる」
ロコ「……」
ロコ「……ミライたち、楽しそうですね」
杏奈「そう……だね」
ロコ「まあ、ウィナーですしね……いや、ううん、なんでもありません」
ロコ「んー!! ……よし! ビーチバレー、しますよー!」
~時間は流れて翌週。休日に自室で机に向かっている静香。ノートを広げているが集中しているようには見えない。~
静香「~~……」
静香「窓の外……いい天気だな……」
静香「……」
♪♪~~(静香のスマホが鳴る)
静香「あら。未来から?」
静香「……ビデオ通話? なにかしら」
未来<静香ちゃーーーーーーーーん!!!!!!>
静香「~ッ⁉」
静香「耳が壊れるかと思った……。ちょっと未来、あなたいきなり」
未来<私76高で1番の人に勝ったの!>
静香「!」
未来<76高にはキングがいて、キングと1球勝負したら負けちゃって……あ、キングっていうのはロコ先パイのことなんだけど。ロコ先パイは負けたことがないからキングなんだよ! それでねそれでね>
静香「ちょ、ちょっと落ち着いて。話が全然わからないわ。それにさっきから後ろで声がたくさん聞こえててよく聞き取れないの」
ロコ<ウェイトですミライ! あれでディフィートなんてロコは認めません! だいたいミライはあれで>
未来<えー! でも勝ったじゃないですか!>
ロコ<ぜったいにロコのほうがストロンガーです! リベンジマッチを要求します!>
未来<いいですよ! やりましょう!>
紗代子<2人とも燃えてるわね! 未来ちゃん、今度こそロコちゃんにきちんと勝てるように練習しましょう! あと……その時は私も新しいパートナーといっしょに混ぜてもらうわよ!>
杏奈<杏奈は……今度はロコといっしょに……やろうかな……>
未来<かわいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!>
恵美<あーあ、また未来の病気が出たよ……>
恵美<あー、えーと……静香ちゃん……だよね? アタシ所恵美。今は未来とペアでいちおう……ううん、バッチリいいコンビネーションでビーチバレーやってるんだ!>
恵美<静香ちゃんの話は未来から聞いてます。大変だよね……。アタシなんかが気軽に口を挟める問題じゃないけどさ。未来はあなたといっしょにプレイできるのを楽しみにしてる。これは本当だよ?>
未来<静香ちゃーーーーん!!>
未来<私76高に来てよかった!>
未来<あとあと……なんだっけ! いろいろ言おうと思ってたはずなんだけど忘れちゃった!>
未来<うーん……あ、そうだ!>
未来<ビーチバレーっておもしろいね!>
静香「はあ……、未来ったら……高校生になっても騒がしいのね」
静香「知ってるわよ、もう」
【了】
以上です。ありがとうございました。
なんとか書ききれましたー!
3rd幕張生放送良かったです!
ビーチバレーってすごい
乙です
http://i.imgur.com/QNYLMdS.jpg
>>2
新入生役 春日未来(14) Vo/Pr
http://i.imgur.com/91Qpv1T.jpg
http://i.imgur.com/zTV8P8X.jpg
同級生役 所恵美(16) Vi/Fa
http://i.imgur.com/d55U2s5.png
http://i.imgur.com/NEznaoN.jpg
>>4
先輩役 高山紗代子(17) Vo/Pr
http://i.imgur.com/tNzdWpn.jpg
http://i.imgur.com/JZpO6z6.jpg
>>17
キング役 ロコ(15) Vi/Fa
http://i.imgur.com/e1VMRzi.jpg
http://i.imgur.com/4LYSjwP.jpg
右腕クイーン役 望月杏奈(14) Vo/An
http://i.imgur.com/4XbRwIe.jpg
http://i.imgur.com/57Oeh3n.jpg
>>33
最上静香(14) Vo/Fa
http://i.imgur.com/RfKzcHF.jpg
http://i.imgur.com/CfNZjkM.jpg
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