奇想脳路 (31)


一組の男女が旅をする。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1506938296


絶えず吹く風、巻き上げられた砂は頬を打ち、ゴーグルをこつこつと鳴らす。

目指すは古都キシュエナ

古都キシュエナはラヤタハ山脈を越えた先にあるとされる。

これまで幾人もの人々が目指し、幾人もの人々が命を落とした。

辿り着いた者がいるのかどうか、それを知る者はいない。


ただ、辿り着けなかった者がいるのは事実のようだ。

砂塵で視界は酷く悪いが、そこら中に遺体が転がっているのが分かる。

衣服はズタズタに引き裂かれている。

おそらくは数年か十数年の間、この砂嵐に晒され続けたのだろう。

「風が強くなってきてる。このままだと、私たちまでこうなるわ」

「堪えろ。もうじきラヤタハ山脈だ」

女は顔を顰めながら頷いた。どうやら口に砂が入ったようだ。

この風では、口元を覆う布もあまり役には立たない。

一言二言話すだけで口や鼻に砂が入ってくる。


男は女の手を引き、先へ進む。

途中で何度か柔らかいものを踏んだが、それが何なのかを確認する気にはなれなかった。

視線を落とさぬように意識して、前を見続けて歩く。

女はそれを踏むたびに顔を青くしていたが、前を行く男に倣って、決して視線を落とそうとはしなかった。

「見ろ」

男が指差した先に、うっすらと白い木々が見えた。

「あれが……」

「ああ、もうすぐだ。行くぞ」

男は女を励ますように肩を軽く叩くと、ぐいと手を引いて歩き出した。


「まだ埃っぽいけど、やっと普通に呼吸が出来るわ」

「大丈夫か」

「ええ、気分は最悪だけど、さっきよりはマシよ」

二人は山脈の麓に辿り着くと、散在する瓦礫の山の隙間に身を隠した。

風化は進んでいるが、今に壊れるということはないだろう。

「ねえ、あの白い木が何なのか知ってる?」


「……いや、知らない」

本当は知っていたが、得意気に語ろうとする女の顔を見ると、知っているとは言えなかった。

「あれはね、空から落ちてきたの。ずっとずっと前よ。その頃は空が青かったんだって」

「誰に聞いたんだ?」

「近所のお爺ちゃん。皆は鬱陶しいって言ってたけど、私は好きだったわ。色々な話を聞かせてくれるから」

男に身を寄せ、ゴーグルを外して膝を抱えると、女は続けた。

「それから、古都の人は外を歩いてるって言ってた。ゴーグルも何も付けずによ? 信じられる?」


(夢物語だ)

目をきらきらと輝かせながら語り続ける女を見て、男は気の毒な気持ちになった。

男は、その話が人減らしのための作り話であることを知っているからだ。

古都キシュエナの幻想に取り憑かれた者は、皆、このような顔をする。

地下を出るということが自殺行為であることを知りながら、夢見る人は外へ出る。

「ねえ、聞いてる?」

「ああ、聞いてる。俺も、古都は素晴らしい場所だと聞いたよ」

「一体、どんな所なのかしら。早く行ってみたいわ」

(辿り着けるわけがない。今回も同じだ)

その夢を終わらせるのが、男の仕事だ。

男の名前↓1

男の名前はメフトとします
安価なしの方がよいですね


現在、地下の人口は増加傾向にあり、人減らしが急務となった。

特別な役職にない老人は処理され、若者には夢を見せる。

メフトはある理由から、この女のようにキシュエナを目指す若者を案内する役職にある。

夢見る若者は多いが、その一歩を踏み出す者はごく僅かだ。

そこで必要になるのが協力者だ。

素知らぬ風を装って近づき、話を聞き、その気にさせる。

本来なら警戒を避けるために女性が担当するはずなのだが、担当するはずだった女性が拒否したため、メフトに任された。

あ、安価出すならとるよ

スレタイに安価ってなかったから気づかなかった


(馬鹿な女だ)

この職は、犯罪を犯した者にのみ与えられる。恩赦という名の下に。

それ故に、放棄した者は問答無用で処理される。

それを分かっていながら拒否したのは、良心の呵責か、積み重なった罪悪感か。

(……何が恩赦だ)

罪を洗い流すために罪を重ねる。自らが犯した犯罪より、もっと重い罪を犯す。

生きたければ、殺されたくなければ、赦しが出るまで続けなければならない。

だが、赦しなど決して出ないだろうことを、メフトは分かっている。

犯罪者。

死んでもいい命だからこそ、外を案内するなどという危険極まりない仕事を与えられたのだから。

>>11スレタイに入れるべきでした、申し訳ないです……
早速ですが、女性の名前をお願いします。
↓1

フェリア

>>14ありがとうございます。
男性の名前は【メフト】
女性は名前は【フェリア】とします。

名前決めるだけ?それとも安価は他にも取ってくの?


「メフト、どうしたの?」

「ん? あぁ、済まないな。少し、地下のことを思い出してた」

内容はどうであれ、嘘ではない。

「……そう。でも、そうだよね。分かるよ」

フェリアは、メフトが地下に思いを馳せていると勘違いしているようだ。

そっと手をとると、両手で包み込む。それは、自分の寂しさを紛らわすようにも見えた。

(お前に何が分かる)

心内で毒を吐きながら、メフトも空いた手を重ねた。

「……ありがとう」

「お礼を言うのは俺の方だよ。一緒に頑張ろう」

ぎゅっと手を握り、軽く微笑んでみせる。こうすることで、同じ立場であることを強調する。

意に沿わなくとも、この哀れな自殺者の望むような行動をしなければならない。

>>16 もう少し先になるとはおもいますが、探索する時などに取ろうかと思っています。


油断させてから殺害するのも手だが、しくじれば終わりだ。

武装と言うにはお粗末だが、フェリアは刃物を持っている。

メフトも同様だが、女だからと言って軽く見ると怪我では済まないだろう。

(……あの砂塵に耐え、ここまで付いてきた女だ。慎重に行こう)

この先でどんなことがあろうと、共倒れだけは避けなければならない。


「あっ、風が止んだわ」

フェリアは顔を出し、周囲を見渡した。その声色は、未だ希望に満ちている。

「メフト、どうする?」

ぱっと身を戻すフェリア、その表情を見るに、今すぐにでも進みたいようだ。

(一時的に止んだだけだ。もう少し様子を見た方が良いと思うが……)

↓1


「この先を考えるとそうするしかない。今のままではラヤタハを越えるのは難しい」

「それは、分かるよ。でも……」

「フェリア、気持ちは分かる。でも、キシュエナに着く前に倒れたら元も子もないんだ」

「……分かったわ」

納得はしないが理解はしたと言った顔だ。

一度も罪を犯したことのない人間にとって、死体から遺品を盗ることに抵抗があるのは当然だ。

「俺が行ってくる。フェリアはここで待っていてくれ」

その心理を察してか、メフトは一人、瓦礫の山から身を出した。背後からフェリアの声は無い。

(この程度で項垂れるのか。まあいい、俺もその方がやりやすい)

↓1とだけかかれてもなんとか着込めばいいやらってなるよ

>>23安価は初めてなので指摘は有難いです。
選択肢を出してみます。


(さて、ここからはいつも通りだな)

黙したままのフェリアを残し、白い木の根元へと向かう。

そこには、劣化した白い木々の破片が散在していた。

白い木々の破片は、手持ちの破片よりもの頑強で、ナイフに括り付ければ刃を傷付けずに済む。

長い枝に括り付ければ、槍としても使えるだろう。

(もう少し、探してみるか)

手持ちの破片×
手持ちの刃物○


「あの、メフト……」

「……フェリア、無理して来なくても良かったのに」

「いえ、私も手伝う。あなたをキシュエナに誘ったのは私なんだから」

彼女は責任を感じているようだ。

メフトを真っ直ぐに見つめ、きつく拳を握っている。剥ぎ取りには強い抵抗があるようだ。

「分かった。じゃあ、フェリアはこの辺りの破片を集めてくれないか」

「破片? 何に使うの?」

「触ると分かるけど凄く硬いんだよ。刃物が壊れた時、替えに使えるんじゃないかと思って」

「本当に硬い。こんなに薄いのに……一体、何で出来ているのかしら……」


「これは、何かしら?」

フェリアは、持っていた破片に文字が書かれていることに気が付いた。

地下で使われているものと同じ文字のようだが、この破片だけでは何と書いてあるかは分からない。

「ねえ、メフト、白い木々の破片に文字が刻まれているわ」

(ここに来るのは五度目だ。そんなことは知ってる)

「私、ちょっと調べてみたい……手伝ってくれないかしら?」

1 「後にしよう。俺は物資を探してくる」

2 「実は俺も気になってたんだ。ちょっと調べてみよう」

↓1

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom