【人物設定】
御曹司
良家のお坊ちゃん。
人当たりの良い笑顔と容赦ない断捨離の手腕で業績を上げライバルを次々に蹴落とし、幹部登用されている。
出会い系が好き。人妻などの素人を、お金を使った豪華な雰囲気で落とすのが得意(決して金では買わない)
人間の屑。
ヒモ
厳しい親から遊びを禁止されて育った反動で、大学デビュー後に大人の遊びにハマり、就職に失敗。
そのまま、当時の彼女の家で主夫をやった後、自分探しの旅に出る。
自分を甘やかしてくれる年上が好き。尻が大きければなおよし。
人間の屑。
根暗
一流の大学を卒業し一流の企業に勤め一流の給金をもらうエリート中のエリート。
しかし、女性経験が無いために自分は負け組だと思っている。
負け組だ負け組だと自分を卑下する割には、改善しようとする気は全くない。
人間の屑。
ナンパ
営業成績全国1位の猛者。
1日百人に声を掛ければ契約は取れるがモットー。
下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるの精神で何股もしている。
人間の屑。
マジメ
堅実に勉強し堅実に大学に入り堅実な会社に就職した。
マザコン気味で、風俗やギャンブルなど、母親が嫌がる危ない遊びには一切手を出さない。
巨乳の彼女がいるが、強烈に自己中な性格なので付き合ったことを後悔している。
実は人間の屑。
【人間関係】
5人とも同じ大学の同じサークルのメンツ。
職場はそれぞれ全く別。
【年齢順】
マジメ>御曹司=根暗>ヒモ>ナンパ
【本筋】
魔王「我の後継ぎを異世界から召喚しようと思う」
側近「はあ?」
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側近「後継ぎ、ですか?」
魔王「そうだ、我の後継ぎだ」
側近「異世界から、ですか?」
魔王「そうだ、この世界と概念を異とする世界からだ」
側近「召喚、ですか?」
魔王「そうだ、召喚だ。……て、我が言ったことを繰り返すだけかお前は」
側近「だってですね……」
魔王「だって、なんだ。言ってみろ」
側近「おっしゃる意味がわかりません」
魔王「そうか? 我の後継ぎを異世界から連れてくる。簡単じゃないか」
側近「いや、言葉の意味じゃなくて」
魔王「ん?」
側近「まず、あなたは後継ぎが必要な歳ではないと思いますが?」
魔王「生前から墓を建てる阿呆もいるくらいだ。後継ぎくらい考えてもよかろう」
側近「では、異世界から呼び寄せる意味は?」
魔王「500年経ってなお、我を超える魔物が現れないからだ」
側近「つまり、この世界の魔物は弱いから、よその世界には強いものもいるだろうと」
魔王「そういうことだ」
側近「最後に、召喚する方法は?」
魔王「この文献にあった。文字が少なく、図が多用され解読は困難であったが、なんとか会得した」
側近(子供用の絵本じゃないですか)
魔王「なんだ、何か言いたげだな」
側近「いいえ、別に」
魔王「よし、ならば早速召喚を行うぞ」
側近「絶対失敗すると思いますけど」
魔王「心配はいらん。我に任せておけ」
側近(大丈夫かな)
魔王「ではいくぞ」
パルプンテ!
―――――――
―――
―
~~某年某日 東京都内某居酒屋にて~~
御曹司「では、久々の旧交を温める機会ということで、かんぱい」
マジメ「かんぱい!」
ヒモ「かんぱーい」
根暗「かんぱい…」
ナンパ「かwんwぱwいw」
御曹司「いやー久しぶりだね、みんなが全員そろうのは。何年ぶりになるかな?」
マジメ「俺が大学卒業した時以来だから、5年ぶりだね」
根暗「みんな……、仕事が忙しいから……、なかなか集まれない……」
ヒモ「俺なんか、去年まで日本最北の地でバイトしてたからな。飛行機の距離だとなかなか帰れねえよ」
ナンパ「こっちでw貢がせてた女からwww結婚迫られて逃げた奴がwww何か言ってるwww」
ヒモ「うっせ黙れ。悪魔が住む土地には誰だって近づきたくねえだろ」
ナンパ「帰れないじゃなくてwww帰りたくないの間違いwww」
御曹司「そういうナンパ君も、最近どうなんだい?」
ナンパ「ついにwww2000人切り達成www」
ヒモ「節操ないよなあ、お前」
ナンパ「女なんてw営業と同じwww街で1日100人に声かければww1人か2人はセイコウ余裕www」
御曹司「それと同じ方法で営業して、社内の営業成績全国1位で表彰されたんだろう? 大したものだよ」
ナンパ「いやいやww御曹司さんには敵わないwww人妻や婚活女子との女遊びとかwww俺には無理ッスwww」
御曹司「人妻は良いよ、手切れが楽だし。一晩の付き合いにはもってこいだね」
御曹司「婚活してる子は引っかけるのは楽だけど、切るのがめんどくさいのがアレかな」
ヒモ「相変わらず、浮世離れしてやがる」
ナンパ「さすがは良家の後継ぎwww座右の銘は”女は金で捨てろ”www」
御曹司「ちょっと待って、皆がみな、お金で解決してるわけじゃないよ。携帯解約すれば、自然消滅だって簡単なんだからさ」
ヒモ「うわ、最新スマホ3台常に持ち歩いてるやつが何か言ってるし」
ナンパ「仕事用wwwプライベート用www女用www」
根暗「……みんな、勝ち組で羨ましい……。ぼくなんか…誰とも付き合ったことがない……、負け組……」
ヒモ「お前なあ、一流企業の出世頭でそんだけ給料貰ってて、負け組とか言ったら世間から怒られるぞ」
根暗「でも…、童貞……」
ナンパ「人生女だけじゃないッスよwww今度合コン行きましょww根暗さんならすぐ彼女出来ますってwww」
御曹司「お、合コンやるならぼくも誘って。とりあえず綺麗な子がいいな」
ナンパ「御曹司さんはwww女の子が気に入らないとwその場で帰るからwwwダメッスwww」
ダンッ
マジメ「ったく。いつまでたっても変わらないな、お前ら」
マジメ「社会人になっても、女遊びの話だけじゃ恥ずかしいぞ?」ヒック
マジメ「もっと、政治経済とか仕事の話とか、大人な会話できるようになろうぜ」ヒック
マジメ「いつまでもそんな子供まんまじゃ、世間様に顔向けできないだろ」ウーィ
ヒモ「またか」
根暗「始まった……」
ナンパ「空気読めてないwww」
御曹司「まあまあみんな。マジメもそんな僻まないで、楽しく会話しようよ」
マジメ「僻んでなんかいないさ。ただ俺は、お前らがいつまでもそんな話じゃ恥ずかしいって言ってんだッよ」
根暗「……だいぶ酔ってる」
ヒモ「まだ1杯目なんだけどな」
ナンパ「ストレス溜めすぎwww」
御曹司「彼も大変だからなあ」
マジメ「ちっくしょー! ゴメンって言ったのにいつまでも愚痴愚痴うっせーんだよあのクソアマー!」
ヒモ「この前できたっていう、わがままで自己中なヒステリー彼女か。あいつ、女運ワリーよな」
根暗「でも、巨乳……」
ヒモ「おっぱい星人だからな」
マジメ「上司は上司でノルマノルマって説教ばかり……、パワハラで訴えてやるぞ!」
ナンパ「クソ上司とかwwwそいつより売上あげてww黙らせばいいだけwww」
御曹司「そんなこと簡単にできるのは君ぐらいだと思うよ?」
ナンパ「御曹司さんみたいにww気に入らない上司を鬱病にしてww辞めさせるよりは楽ッスwww」
マジメ「飲みに行こうとしても、すぐ母さんから『まだ帰ってこないの?』って電話くるし……。俺はマザコンじゃねー!」
ヒモ「あいつ、まだ実家住みかよ」
御曹司「一人息子で、昔から大事にされているからね」
ヒモ「親が嫌なら、家出りゃいいのに。このマザコンが」
マジメ「お前らはお前らで俺の言うことちっともきかねーしよー! サークルの主将だったんだから、ちっとは敬え!」
ナンパ「いやいやwww尊敬はしてるッスよwww」
根暗「嫌いだったら……、飲みに誘わない……」
マジメ「うるせー! お前ら、俺のことをバカにするなああああああ」
ピカァアアア!!!
ウオ! マブシッ
―
―――
―――――――
~~魔王城~~
フシュゥゥゥウウウゥゥゥ
マジメ「ああああぁぁぁあ……?」
ヒモ「……どこだ? ここ」
側近「…………」
魔王「……何だ? こ奴らは」
御曹司「…………」
根暗「…………」
ナンパ「wwwwww」
魔王「魔物……、では、ないな。普通の人間に見えるが……」
側近「だから失敗するって言ったんですよ。やっぱり止めさせておけばよかった」
魔王「まだ失敗したとは言えまい。こ奴らの中から、我をも凌ぐ強力な魔王が生まれる――」
側近「わけないじゃないですか! どうみたって非力なただの人間ですよ? 魔力の波動も感じないし」
魔王「うむ……」
御曹司「あの……」
魔王「なんだ」
御曹司「状況が分からないのですが、とりあえず初めまして」
御曹司「わたくし、御曹司と申しまして、あそこにいる友人たちは、左からヒモ、根暗、ナンパ、マジメと言います」
ドモ
ウィッスw
御曹司「わたくしの勤め先は、○○という会社です。あ、こちら名刺になります」
側近「あ、これはこれはご丁寧にどうも」
側近「私は側近と申しまして、魔王様の身の回りのお世話をさせて頂いております」
側近「こちらは魔王様で、この世界の支配を目指しています」
魔王「ん」
御曹司「それはそれは、ご立派なお仕事ですね。本日は、お会い出来まして光栄でございます」
魔王「はは、苦しゅうないぞ。近こうよれ」
御曹司「それで、お聞きしたいのですが…。ここは、いったいどこなのでしょうか?」
側近「ああ、そう言えば何も説明していませんでしたね」
魔王「側近よ、教えてやるがよい」
側近「はい。ええと、ここは魔王様が治める土地です」
側近「特に名前は無いですが…、とりあえず、魔界とします」
御曹司「魔界、ですか…」
側近「はい。このあたりにも人間は住んでいますが、ひとまず魔王様の統治下におかれています」
御曹司「さきほど、この世界の支配を目指している、とおっしゃいましたが、それは?」
魔王「その問いには我が直々に答えてやろう」
魔王「この魔界は地下世界である」
魔王「といっても、見て分かるように太陽はあるし、空もある」
魔王「どうやら、この魔界の上に別の世界が広がっているようでな」
魔王「我は、その上の世界の支配を目指しているというわけだ」
魔王「といっても、今は特に何も手出しはしておらん。この魔界の平定のため、すべきことが山ほど残っているからな」
御曹司「なるほど……」
御曹司「…………」
御曹司「ちょっと、友人と相談する時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
魔王「許可しよう」
御曹司「と、いうわけなんだけど、どうする?」
ヒモ「どうするもなにも……。魔王? 魔界? 意味が分からねーよ」
根暗「ゲームの…世界に、来たみたい……」
ナンパ「やべえwwwラノベのイントロみてえwww俺の物語が はwじwまwっwたw」
御曹司「とりあえず、今後をどうするか決めたいんだけど、何か意見あるかな」
根暗「まずは……帰れるか、どうか……確認する……」
御曹司「そうだね。じゃあ、もし帰れなかったら?」
ヒモ「飲み食い出来て、寝れるところがあればどうでもいい」
ナンパ「女の人がwwいっぱい居る場所wwwどこッスかねwww」
根暗「一人で……、静かに、暮らしたい……」
御曹司「ブレないね君達は。もっと狼狽えたりするかと思ってたけど、いつも通りで安心したよ」
ヒモ「いやまあ、慌ててもしゃーないし」
ナンパ「いつでもwwどこでもww笑顔がモットーwwwですからwww」
根暗「笑顔っていうか……、あほヅラ?」
ナンパ「うはwwwこれは手厳しいwww」
ヒモ「ところで、さっきからずいぶん静かだけど、マジメはこの後どうすんだ?」
マジメ「」
ヒモ「あー、完全に逝っちまってらぁ」
御曹司「まあ、彼の常識では、この展開について来れないだろうからね」
根暗「……おとなしく、気絶してもらってた方が…、静かで、良い……」
御曹司「それじゃあ、もしあっちに帰れたらそのまま現地解散で、ダメだったら、こっちで衣食住を賄えるところを紹介してもらう感じでいいかな?」
オッケー×3
魔王「……ずいぶんと肝の座った人間どもだな……」
側近「まるで、これから行く居酒屋の相談でもしてるような気軽さですね」
魔王「うむ……」
魔王「……思わず同意したが、居酒屋とは、いったい何だ?」
側近「今度、連れてってあげます」
魔王「うむ、そうか」
御曹司「というわけで、ぼく達を元の世界に帰して下さい」
魔王「無理だ」
御曹司「では、ぼく達が生活できる国や街へ連れて行って下さい」
側近「切り替え早いですね」
御曹司「ダラダラしてても、状況が変わる訳ではないので」
側近「しかし、生活できる国や街といっても……。どうしましょうか」
魔王「というか、お前はこ奴らに何もせず、このまま解き放つつもりなのか?」
側近「は?」
魔王「いや、魔なる者が人間に何も危害を加えぬというのは、この世の条理にそぐわぬではないか」
側近「……、魔王様が、なんか魔王らしいこと言ってる……」ボソッ
魔王「おい、側近?」
側近「はいはい、いえ、何でもないですよ?」
側近「とはいえ、この人達はこちらの都合で呼び出してしまったのですし、何かする理由も特にないのですよね」
魔王「まあ、そうだが……」
側近「そうだ、それじゃあ、上の世界に行ってもらって、あっちの様子を報告してもらう偵察係として働いてもらうのはどうでしょう」
魔王「ああ、それはいいかもしれぬな」
魔王「よし、それではお前たち、とりあえず我の前に並べ」
御曹司「はい、分かりました」
ヒモ「ったく、めんどくせーなー」
ナンパ「一列に並ぶとかwww会社の朝礼みたいッスねwww」
根暗「……」
マジメ「」
ヒモ「てか、マジメのやつ、まだ気絶してんのか」
御曹司「根暗君、悪いけど彼をこっちに引っ張ってきてもらえるかい?」
根暗「……」コクッ
マジメ「」ズルズル
御曹司「というわけで、全員揃いました」
魔王「うむ。ではこれより、お前たちを上の世界の街に飛ばす。その前に、おい側近、例の物を配れ」
側近「はーい、かしこまりましたー」
魔王「今、側近から渡された腕輪は、お前たちの動向をこの魔界に伝えるための道具である」
魔王「それを身に着けていれば、お前たちが見た景色や、聞こえる音、話した会話が、この城にある水晶に記録される」
魔王「つまり、お前たちは日々の生活を普通に送るだけで、自然とそれが諜報活動となり、我らの役に立つのだ」
御曹司「特別何かをする必要が無いというのは、ぼくらにも負担が無くて嬉しいですね」
側近「そう言ってもらえると、作り手名利につきます」
魔王「ただし、制約はある。その腕輪は、一度つけると、我が死なぬ限り二度と外すことはできない」
魔王「身体に害はないが、お前らがとった行動は、全てこちらに伝わってくる」
魔王「それこそ、排泄、自慰、性交、ありとあらゆる痴態が、我らに伝わるのだ」
魔王「精神的な辱めを常に意識しなければならぬ覚悟を、持たなくてはならない」
御曹司「まあ、その程度のことでしたら、特に気にしませんよ」
ヒモ「俺らの人生、別に今さら恥ずかしがるようなこともないしな」
ナンパ「野外露出プレイみたいなものでしょwwwうはwwwおkwww」
根暗「知り合いなんか…誰もいないし……、誰に知られたところで、困らない……」
御曹司「そんなわけなので、どうぞ、やっちゃってください」
魔王「……ううん。なんというか、肝が据わっておるのう……」
側近「なんだか私も、実はすごい人たちなんじゃないかと思えてきました」
魔王「まあいい。それではいくぞ」
側近「あ、そこで寝ている人への説明はどうします? 恐らく皆さん、別々の場所に飛ばされてしまうのですが」
マジメ「」
御曹司「ああ、いいですよ。彼の場合、中途半端に現状を知るより、全く何も知らずにいたほうが素直に助けを周りに求められますから」
側近「そうですか」
魔王「では、目をつむり、体の力を抜け。少々気分が悪くなるやもしれんが、怪我や痛みは生じぬから安心するがよい」
魔王「ゆくぞ」
バシルーラ!
ビューーーーーーーーン
―――――――
―――
―
~~~
御曹司「ここは……」
??「あのう、お怪我はございませんか?」
~~~
ヒモ「いってぇ、ケツ打っちまった」
??「ああ? 誰だお前、どこから落ちてきやがった」
~~~
根暗「…………」
??「グルルルルルル」
~~~
ナンパ「うひょー! 女がいっぱいだーーー!!!」
??「おめさ、どこの村の人間だべか?」
~~~
マジメ「」
??「突然現れた、この人はいったい……?」
~~~
ここでいったんセーブします。
ふっかつのじゅもんは、
『あしたのあさおきたらさいかい』です。
『あさごはんおいしかったですさいかい』
じゅもんが ちがいます
~数週間後~
魔王「おい側近」
側近「はいはい、なんでございましょ?」
魔王「我が召喚したあの人間たちは、今どうなっている?」
側近「ああ、皆さん、それぞれうまくやってるみたいですよ」
魔王「では、上の世界からの情報はきちんと腕輪を通して水晶に伝わっているのだな」
側近「ええ、私が作った機構ですから。誤作動なんておこしません」
魔王「どれ、政務の息抜きがてら、奴らの現況でも聞くとしようか」
側近「ちょっと待ってくださいね。えーっと、まとめた資料がこのへんに……、あった」
側近「では、御曹司さんからお話ししますね」
魔王「うむ」
~数週間後~
魔王「おい側近」
側近「はいはい、なんでございましょ?」
魔王「我が召喚したあの人間たちは、今どうなっている?」
側近「ああ、皆さん、それぞれうまくやってるみたいですよ」
魔王「では、上の世界からの情報はきちんと腕輪を通して水晶に伝わっているのだな」
側近「ええ、私が作った機構ですから。誤作動なんておこしません」
魔王「どれ、政務の息抜きがてら、奴らの現況でも聞くとしようか」
側近「ちょっと待ってくださいね。えーっと、まとめた資料がこのへんに……、あった」
側近「では、御曹司さんからお話ししますね」
魔王「うむ」
側近「まず、御曹司さんですが、某国の城内に飛ばされたようですね」
側近「ある種の呪いにより記憶を失わされ、どことも知れぬ土地に魔法で飛ばされたと言って、保護を受けているようです」
魔王「なるほど、記憶をなくしたという話はうまい手だな。出自を明かす必要が無くなり、ボロを出す心配がなくなる」
魔王「さらに、魔法という真実を加えることで言葉の信憑性が良くなり、突然人が降ってくるという不可解な現象にも対応できる」
魔王「なかなかのやり手のようだ」
側近「そうですね、やり手なのは間違いないようです」
側近「もともと育ちも良かったのでしょう。立ち居振る舞いや所作、作法などが上品なことから、どこかの国の貴族だと思われています」
側近「人当たりも良く、多くの人間と円満な関係を築くよう気を配っているので、評判もすこぶる良好です」
魔王「ふうむ。ますます感心するな」
側近「さらに、呪いをかけられたのも嫉妬に狂う悪い魔女の逆恨みによるものと好意的に解釈され、一部の女性たちから、悲劇の主人公として慕われています」
側近「また、最初に彼を助けた人間が、その国の王女であったことも幸いしたのでしょう、王女との親密な交際が続けられており、将来は王女との婚約も噂されています」
魔王「ほほう。我が方の間者が一国の王となるか。それはおもしろい」
側近「私としては、この短期間でこれだけ有用な関係を数多く作った手腕に驚きますね」
側近「彼は上の世界に送らず、2人目の側近として魔王様の側におかれた方が良かったかと思います」
魔王「お前にそこまで言わせるとはな。恐れ入った」
側近「さて、次はヒモさんですね」
側近「彼は、御曹司さんと同じ国の城下町に飛ばされています」
側近「場末の飲み屋を経営する女性に保護され、なんやかんやあって、現在は同棲しながら彼女の店を手伝っています」
魔王「これはまた、親愛関係を作るのが早いな。御曹司のように、その働きにも期待できそうか?」
側近「それが、そうとも言えないですね」
側近「店の女の子やお客さんにちょっかいを出しては店主に叱られ、仕事もサボり気味」
側近「店にいるよりも家で寝ているだけの日の方が多く、情報収集の役には余りたっていません」
魔王「そうか。まあ、全ての人間が役に立つとはいかぬか」
側近「ただ、家事全般に精通していて、同棲している女性の生活は格段に向上しています」
側近「また、芸術音楽といった教養も高く、そういった方面の情報は期待できます」
側近「こういった自分にない部分に女性店主は惹かれているらしく、ほとんど彼を養うような形で、面倒を見続けていますね」
魔王「文化芸術方面に秀でているのなら結構だ。そういった情報も、いずれは役に立つだろう」
側近「続いて根暗さんですが、彼は、切り立った岩山に囲まれた盆地に飛ばされてしまいました」
側近「人が住む土地ではなく、外界から隔絶している為、人間社会の情報収集はまったく期待できません」
魔王「ううむ。彼には悪いことをしてしまったな」
魔王「人と話せぬ環境というものは、さぞ抑鬱されるものであろう」
側近「ところが、これがまた彼の好みに合致したらしく、この上なく心安らかな暮らしをしています」
魔王「なに?」
側近「どうやらその土地には竜の一族が居を構えており、外界の物珍しい生物がやって来たと手厚く保護を受けています」
側近「また、彼ら竜は人語を解すため、問題なく根暗さんとの意思疎通を図れています」
側近「人間と違い、静寂と穏やかさを貴ぶ彼ら竜族との暮らしに、彼は安寧を感じているようです」
魔王「なんとまあ……」
魔王「とにかく、上の世界に人間以外の意思ある生態があると分かったのは収穫だな」
側近「4人目、ナンパさんですが、彼は……」
魔王「どうした、報告を言い淀むとはただ事ではないな」
魔王「彼の身になにか不都合でも生じたか?」
側近「いえ、彼自身は無事です。無事どころか、元気すぎるというか……」
魔王「なんだ、言ってみろ。言わねば我とて分からぬ」
側近「そのですね、口にするのもはばかれるような生活を送っていまして」
側近「一言でいうと、女狂いです」
魔王「……、なんだって?」
側近「えー、ナンパさんなのですが、未開の部族が住む辺境の村に飛ばされたようで、そこの村娘に保護を受けています」
側近「で、その村ですが、疫病なのか狩りに失敗したのかは不明ですが、子どもと老人を除き男性がほとんどいません」
側近「そのため、村中の女性から求愛されており、何と言いますか、馬車馬の如く……、いえ」
側近「種馬の如く、熱心に働いています」
魔王「……、言葉もないな」
側近「彼に関しては、水晶の記録係から苦情が出ていまして、いわく――」
記録係『朝も昼も夜も嬌声が絶え間なく、最初は役に立ったのですが、もう苦痛でしかありません』
側近「とのことです」
魔王「何の役に立ったのかは、あえて聞かないでおこう」
側近「記録係から、異動の要望が出ていますが、どうしましょうか」
魔王「……、淫魔の部隊に要請しろ。業務の引き継ぎと調整は、お前に任せる」
側近「承知しました」
側近「最後にマジメさんです」
側近「彼は、何の変哲もない街で善良な市民の方に保護され人助けを主とした仕事をしながら平穏に暮らしています」
側近「以上」
魔王「なんだその報告は。もっと詳しく話せ」
側近「だって、彼の生活退屈なんですもん」
魔王「なんですもん、ではない。いったいなんだというのだ」
側近「いえですね、いたって普通の彼は、いたって普通に助けられ、いたって普通に暮らしているわけです」
側近「特に生活に変化もなく、特筆すべき非日常的な事も無く、特段変わった人物も近くにいなく」
側近「ある意味、もっとも人間的な生活をしていると言えますね」
魔王「なるほど。まあ、それでも何か役に立つ情報に触れる機会もあるやもしれん」
魔王「引き続き、監視と記録を怠らぬように」
側近「かしこまりました」
魔王「そういえば、例の居酒屋に行くとかいう話は、いったいどうなったのだ?」
側近「……ああ、えーっと……」
魔王「まさか、忘れていたのではあるまいな」
側近「まさかそんな。今、店を選定しているところです。なにしろ、魔王様が行かれるお店ですから、品位や格式、また、警護の段取りなど、調査しなくてはならないことが多くてですね――」アーダコーダ
~~~
御曹司「この間の観劇は素晴らしかったですね。舞台俳優の心情が手に取るように伝わって――」
王女「まあ、うふふ」
~~~
ヒモ「メシができたぞ。食え」
女店主「家に帰ればあったかい飯がある。ふふ、うれしいもんだね」
~~~
根暗「…………」
竜「…………」
~~~
ナンパ「ひゃっほーーーーう!」
村娘s「「「「あぁぁああーーーーーーん(ハート)」」」」
~~~
マジメ「おばあちゃん、草刈終わりましたよ」
おばあちゃん「ありがとうねえ。はいこれ、今日のお駄賃よ」チャリン
マジメ(お駄賃……、ホントに少ないな……)
おばあちゃん「おや? 今、何か言ったかい?」
マジメ「いえ、何でもありません……」
~~~
~さらに数ヶ月後~
側近「魔王様」
魔王「なんだ側近。どうした?」
側近「いえ、政務に精を出されるのも良いのですが、少しはお休みになられては?」
魔王「北方の領土で治安が乱れているからな。その制圧計画で忙しいのだ」
側近「では、上の世界に行ってもらった、例のみなさんの報告がてら、しばらく手を休まれては」
魔王「ああ、そういえば奴らのことを忘れておったな。いいだろう、聞かせてくれ」
側近「では、お茶を用意してきますね」
魔王「うむ」
魔王「さて、では期待のあの男から聞こうか。御曹司のその後はどうだ?」
側近「はい、御曹司さんですが、順調に王女との交際を発展させています」
側近「御曹司、王女、その父である王の三人での会食もたびたび催されており、王族への取り立てを内々に認める会話もあります」
側近「王女との結婚も秒読みと思われますね」
魔王「結構だ。いよいよこちらの手の者が敵方王家の者になる日が来るか。楽しみである」
側近「しかし、懸念点もあります」
魔王「ん?」
側近「王女との順調な交際に比例するように、城内にいる貴族の娘や侍女など、他の女たちとも親密になりつつあります」
側近「なかには、あからさまに御曹司へ恋をしていると思われる女もおり、御曹司もそれを止めることなく、むしろ煽るような言動をとっていますね」
魔王「うーむ、英雄色を好むというが、御曹司も例にもれず、権力の中枢に近づくにつれ、女を囲うことにも興味が出てきたのだろうか」
側近「それならまだ可愛らしいですが、彼の場合、どうも女扱いに相当手慣れているように思えます」
側近「ボロを出すことなく、修羅場を作ることも無く、しかし確実に、親密な関係の女性の数を増やす手腕は、素人のそれではありません」
側近「ある意味、人心掌握術としては目を見張るものがありますが、将来的に何らかの禍根が発生しないか、心配ではあります」
魔王「まあ、仮に王になれば妾の何人を囲うも当然ではある。なにより、あ奴自身に問題が発生したとしても、こちらに累が及ぶものでもない」
魔王「とりあえず、経過を観察せよ」
側近「はっ」
側近「では続いて、ヒモさんの報告です」
側近「彼は、いえ、彼も御曹司さんと同様、複数の女性に対する接近が目立っています」
側近「相変わらず飲み屋の店主のもとで同棲しておりますが、店主が不在の間、部屋に別の女性を連れ込み、情事に耽ることもしばしばです」
側近「女性と知り合ってから手を出すまでの期間が短く、性的な関係をより多く同時に結んでいる点で、御曹司さんより悪質と言わざるをえません」
魔王「ふうむ。側近がこうも静かに怒りをにじませることも珍しいな」
魔王「やはり、同じ雌型の魔物として、女を手玉に取るこ奴のような行動には嫌悪を覚えるか?」
側近「いえ、そんなことは……」
魔王「まあいい。しかし、同じようにナンパとかいう輩も複数の女性と性行為を行っているはずだが、以前の報告時、奴には特に何も言っていなかったな。なぜだ」
側近「まあ、彼の場合は周りに望まれてのことでもありますし、複数と関係を持っていることを周囲も認識し、それが自然と受け入れています」
側近「翻ってヒモさんの場合、彼は、複数の女性関係にあることを匂わせながら、それを利用して女性同士の対立関係を煽り、自らへの心酔度を異様に高めようとしています」
側近「まさに、女性の心を弄ぶという点で、彼ほど軽蔑できる男もいないでしょう」
魔王「なるほど、こやつに関しては、何か役に立つ情報が得られるというわけではなさそうだな」
魔王「唯一の収穫といえば、側近にも女らしい侮蔑の感情があると分かったことか」
側近「うっ……」
魔王「はっは! まあ恥じることでもあるまい。お前にも魔物らしい負の感情があると分かっただけでも、我は愉悦である」
側近「恐れ入ります……」
魔王「よし、次の者の報告を聞かせろ」
側近「続いては根暗さんです」
側近「彼は、とりたてて以前からの変化はありません。相変わらず、竜族の地で安住しています」
魔王「竜族の生態についてはどうだ」
側近「なかなか興味深いですね。どうやら、私たち魔物と何らかの繋がりがある様子がうかがえます」
側近「方法は分かりませんが、この魔界の何らかの力を用いて生存しているようです」
魔王「ほう、魔界の力を使って生きているのか」
魔王「確かに、山脈に囲まれた狭く資源の乏しい土地でどのように生息しているのか、気にはなっていたが」
側近「これは推測ですが、この魔界と、彼らを送り込んだ上の世界は、元は一つの世界だったのかもしれません」
側近「そして、世界が二つに分かれたとき、彼らは上の世界に取り残され、しかし、この魔界との繋がりを有していたため」
側近「この魔界の力を使った生存が可能だったと考えられます」
魔王「これは良い情報だ。となれば、上の世界に魔物を送っても、魔物たちは飢えることなく生きていくことが出来るのだな」
魔王「うむ。これで上の世界に魔物を送る算段が付いた。朗報である」
側近「さて、次はナンパさんですが」
魔王「奴か……。相変わらずの女狂いなのであろう?」
側近「それは、その通りなのですが、いささか趣が変わってきました」
魔王「ほう?」
側近「未開の部族の村であることは以前お伝えした通りですが、どうやら、彼はその村の村長に収まり、周辺の村との交易を始めています」
魔王「ふむ、続けろ」
側近「排他性の強い村だったらしく、周辺に複数の集落があるにもかかわらず、これまでは何の交流も無かったようです」
側近「そのため、村の男がいなくなる危機に際しても、他の集落に助けを求めるという考えはなく、当然、不足物資の援助を求めるといったこともなく」
側近「さすがにこのままでは村の存続にかかわると判断したナンパさんが、他の部族との交易を開始するといった経緯です」
魔王「奴にそんな商才があったとはな。いささか驚きではある」
側近「私自身も、ただの女たらしかと思いきや、人を動かし、物流を整える仕事ぶりに驚愕しました」
魔王「人は見かけによらぬものだな」
側近「さて、最後にマジメさんです」
魔王「お前が何の特徴もないと言った奴か」
側近「そうです。が、」
魔王「む?」
側近「こちらもどうやら、風向きが変わり始めました」
側近「詳細はまだ解析中ですが、次回、喜ばしい報告ができるかもしれません」
魔王「なるほど、もったいぶるな。ふむ、ならばここで、ありのままを全て聞いてしまうのは無粋であろう」
魔王「よし、ならば次の報告を楽しみに待つとしようか。我は、そろそろ政務に戻る。お前も仕事に戻れ」
側近「魔王様も、あまり無理をしないでください」
魔王「わかっておる。そろそろ我に反抗する輩に一暴れして、鬱憤を晴らしてくるつもりだ。心配するでない」
側近「心配はしていませんが、あまり無茶なことをして、私たちの仕事を増やさないでください。そっちの方が心配です」
魔王「はっは! 側近らしいな。わかった、せいぜい派手なことはせぬよう、気を引き締めよう」
側近「頼みますよ、ほんとに」
側近「そういえば、次はどこの居酒屋に行くか、ご希望は決まりましたか? そろそろ、予定を調整したいのですが」
魔王「そうだな、ここしばらくは肉や魚といった定番の居酒屋が多かった。次は、野菜を中心とした変わり種がいいな」
側近「では、こちらで候補をいくつか選定し、後ほど魔王様へお伝えいたします」
魔王「いや、今回は我が居酒屋を選んでみよう。数多の居酒屋を調べる中で、新たな出会いがあるやもしれぬ」
側近「ただでさえ忙しいのに、そのように無理をなさっても大丈夫ですか?」
魔王「なに、側近と飲みに行く楽しさを考えれば、その一手間も苦労ではない。任せておけ」
側近「ふふ。では、心待ちにしております」
~~~
御曹司「今日は、一杯のブランデーを朝まで飲み明かすには良い月夜です。いかがですか? 是非、ぼくと一緒に」
高貴な娘「そんな、私なんかと……。でも、それじゃあ、すこしだけ……」
~~~
ヒモ「あー、明日? ダメダメ、その日は夜に人と会う約束があんだよ」
お水っぽい女「ちょっと、あたし以外の女と遊んじゃイヤよ。ねぇ、明日はあたしとずっと一緒にいましょ?」
~~~
根暗「…………いい、天気、だね」
竜「…………グルゥ」
~~~
ナンパ「では、穀物の代価は次の冬までに支払うということで、こちらに署名を――」
隣村の村長「いやあ、ナンパ村長の手腕には目を見張りますなあ」
~~~
マジメ「ちょっちょっと! 俺が一体何をしたっていうんだよ」
町人たち「うるせえ! お前みたいな奴はこの町から出ていけ!!」
マジメ「一体何なんだよ! 俺は何も――」
~~~
~それから更に数年後~
御曹司「では、久々の顔合わせということで、かんぱい」
ヒモ「かんぱーい」
根暗「かんぱい…」
ナンパ「かwんwぱwいw」
御曹司「いやー久しぶりだね、みんなが全員そろうのは。何年ぶりになるかな?」
根暗「魔王さんに飛ばされて…、それぞれ落ち着いてから……4年ぐらい……?」
ナンパ「みんな忙しすぎwwwようやく居場所突き止めてww会う算段つけるのも一苦労www」
ヒモ「俺も、世話になってる酒屋の女店主に言われるまま、いつの間にか居酒屋のオーナーになっちまったからなあ」
ヒモ「まあ、今日は俺のおごりだ。好きなだけ飲み食いしてってくれ」
アザッスwww
御曹司「あのヒモ稼業やってた怠け者のキミが、まさか経営者になるとはね。まともに働く気になってくれて、ぼくは嬉しいよ」
根暗「まさに……、奇跡……」
ヒモ「心のこもってない激励、どうもありがとうございますー」
ナンパ「お店の女の子にはwww手を出していないんスかwww?」
ヒモ「バッカお前、うちはそういう店じゃないんだぞ?」
ヒモ「出してるに決まってるじゃねーか」
ナンパ「wwwwwwwwww」
御曹司「そういうナンパ君も、最近どうなんだい?」
ナンパ「ついにwww人口1万人突破www」
ヒモ「あの女たらしのお前が、今や街の顔役だってんだからなあ。世の中どうかしてるわ」
ナンパ「いやいやwww周りの村を合併してwww、ちょっと遠い街や村とはww物々交換してるだけwww」
御曹司「そういえば聞いた話だと、君の街の小さな子どもの半分くらいは、君の血が入ってるとか。本当なのかい?」
ナンパ「そッスwwwそれもあってww将来的に血を薄くするためにも村を合併してww男と子どもの補充が必要でしたwww」
御曹司「なるほどねえ、勉強になるなあ」
ヒモ「いったい何の勉強だよ。近親相姦の研究でもするってか?」
ナンパ「さすがは一国の王様www発想が違うwww」
御曹司「いやあ、王家ってさあ、一族の血っていうのを実際大事にするからね。やっぱり多いんだよ、そういう話しが」
御曹司「先王なんか、姪や孫まで側室にしてるから、そりゃあ、たまにはぼくみたいな余所者を迎えないとダメなわけだよ」
ヒモ「うわ、歴代の王様の中で、一番愛妾の数が多いやつがなんかボヤいてるし」
ナンパ「公務用www個人用www共用www」
ヒモ「ちょっとまて、共用ってなんだよ、誰との共用だ?」
御曹司「さあ、なんだろうね?」
ナンパ「そういえばw根暗さんはww彼女できましたwww?」
根暗「………………うん」
ヒモ「まじか!」
ナンパ「うっひょー!! まじで天地がひっくり返るッス!」
御曹司「今年一番のビックニュースだなあ。何はともあれ、おめでとう」
ナンパ「根暗さんの居場所つかむのがww一番苦労したからwwwそのかいもwwありましたwww」
ヒモ「じゃあもう、一発やったのか?」
根暗「もう…、童貞……、じゃない……」
ナンパ「これで根暗さんもww負け組脱出ッスねwww」
御曹司「いったい、どんな女の子なんだい?」
根暗「大きくて……、包容力のある……」
ナンパ「どこがww大きいかwww気wにwなwるw」
ヒモ「ところでさあ――」
ヒモ「マジメのやつ、どこいった?」
御曹司「…………」
根暗「…………」
ヒモ「…………」
ナンパ「………w」
ヒモ「ブハッ!」
御曹司「だめだ、フフッ、ちょっと、まっ、フフッ、て、フフフッ」
ナンパ「wwwwwwwwwwwwwww」
根暗「……、さすがに……、笑える……」ククッ
御曹司「いきなり真面目なキメ顔作って、何を言い出すかと思えば、そんなどうでもいいこと――」フフッフッ
ヒモ「あ゛ーー、あれだな、俺たちにシリアスで真面目な雰囲気は醸せないな」
ナンパ「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
御曹司「ナンパ君、大丈夫かい? 軽く呼吸困難みたいになってるよ」
ナンパ「しwwwぬwww」ヒッヒッフー
根暗「でも…、どうして、そんな……、唐突に?」
ヒモ「いやあ、俺らの集まりには、いつもマジメがいたじゃん? だから、ちょっと違和感あってさ」
御曹司「そういえば、マジメはどこでどうしてるんだろうね。ナンパ君、何か聞いてる?」
ナンパ「それがww行方www不明www」
ヒモ「へー」 ヘー ヘー
ナンパ「なんかw住んでた街でw住民に嫌われてww追い出されたらしいwww」
根暗「相変わらず……、空気読めてない……」
ナンパ「でwww行方www知らずwww」
御曹司「まあ、彼らしいと言えば彼らしいね」
ヒモ「行方不明と聞いて誰も心配しないこの感じ」
ヒモ「正直、好きです」
御曹司「いやいや、一応敬意は払ってるよ? あれでも一応、ぼくたちサークルの主将だったんだから」
ヒモ「つっても、御曹司が一度潰したサークルのお情け主将だろ? 敬意も何も、そもそも偉いのかどうかすら分かんねえわ」
御曹司「まあねえ」
根暗「あれは…、きっと、彼なりの……罪滅ぼし……」
ナンパ「その辺の話wよく知らないんスよねwww」
ヒモ「ああそうか、ナンパは、潰した後のサークルに入ってきたから知らないのか」
御曹司「一番の最年少だものね」
ヒモ「あれはなあ……。まあ、簡単に言えば、マジメが主将になったせいでウェーイ系の奴らの統制がきかなくなって」
ヒモ「腹立てた御曹司が一度サークルを潰して、そういうウザい奴らを強制解散させたんだよ」
御曹司「別に法に触れようが何しようが構わないけど、品がないのだけはダメだね」
ヒモ「んで、解散させた後に、やっぱりあの緩い雰囲気が好きだったっていう物好きな連中が再結集して」
ヒモ「サークルを立ち上げ直して、マジメが再び主将になりましたとさ。めでたしめでたし」
御曹司「自由で、無責任で、かつ知的なサークルって、他になかなか無かったからね」
根暗「マジメさん…、自分のせいで…サークルが潰れたって、悔やんでた……」
ヒモ「サークル潰したのは御曹司なんだから、気に病む必要ないのにな」
御曹司「でも、あの真面目さが彼の唯一の良いところだし、だから君たちだって、なんだかんだ彼のことを慕っていたでしょう?」
ヒモ「まあな」
ナンパ「今のww話ww聞くとwww俺wwこのサークルにはww場違いwww」
ヒモ「いや、お前は別にいいんだよ」
御曹司「ナンパ君はオッケーだったね」
ナンパ「なwwぜww」
ヒモ「合コン開いてくれるから」
御曹司「そうそう」
ナンパ「wwwwww」
根暗「ぼくは…行かなかったけど……、フィールドワークが…うちの、主な活動……」
ヒモ「フィールドワークという名の、女遊びな」
御曹司「いやいや、異性間コミュニケーションっていう、れっきとした研究だよ」
ヒモ「いかに効率的にセックスして、いかに自分を悪者にせず相手を捨てるかっていうな」
御曹司「後々のことを考えると、自分が悪者にならないってのは大事だよ」
ナンパ「あとww彼女とのセックス1回あたりの単価とww風俗1回あたりの値段wwどっちが経済的かwよく議論したwww」
ヒモ「セックスに持ち込むまでの初期コストと、解約までのトータルコスト、あと飽きるまでの平均期間、回数。コスト意識の方がやっぱ大事だって」
御曹司「安かろう悪かろうで病気持ちを彼女にするリスクを考えたら、多少お金がかかっても、高品質で出自がしっかりした綺麗な子の方がぼくは安心だな」
ナンパ「御曹司さんwwwブランドものw好きッスよねwww」
御曹司「粗悪品相手にしたって時間の無駄だから。人生の時間は有限なんだし、美味しいものを食べるための労力や散財は惜しんじゃダメだよ」
ヒモ「そこだけは俺と意見が合わなかったよなー。女なんて数やったもん勝ちなんだから、とりあえず寝て、ウザくなったら別れて次行けばいいじゃん」
ナンパ「結果www手当たり次第ヤりすぎてwww地元に居場所がなくなるという末路www」
ヒモ「あれにはウンザリしたわ。生活圏に近いところで手は出しちゃダメだって、身に染みたな」
ナンパ「あれ?wwさっきwwお店の子にww手を出してるってwww」
ヒモ「後悔はしてる。反省はしてない」
御曹司「君、いつか本当に刺されるよ?」
ヒモ「そん時はそん時だ。むしろ、刺すほど思いつめさせた責任とって、結婚しなくちゃと思うね」
御曹司「つまり、刺されるまでは結婚しないと」
ヒモ「そりゃもちろん」
根暗「女の子たちに…教えてあげたら……、みんな、包丁持って…集まりそう……」
ヒモ「やめろよ? 絶対に言うなよ?」
御曹司「安心して、後でぼくがおふれ出しておくから」
ヒモ「いやー、勘弁してください。まじでお願いします」
ナンパ「wwwwww」
根暗「それにしても……、最低な……会話……」
ナンパ「アラサーなのにwwwヤッてることはww学生の時と同じwww」
御曹司「いいんじゃない。30過ぎてこんなバカみたいなこと話せる仲間は、なかなかいないよ」
ヒモ「ちょっとまて、俺はまだ30になってない。この場で30なのは、御曹司と根暗の二人だけだ」
御曹司「同じようなものさ。君だって、今年で30だろう?」
ナンパ「あきらめましょwww先輩www」
ヒモ「いーや、俺はまだ20代だ。30オヤジの戯言を聞く耳は無いね」
ナンパ「老害ならぬwww若害www」
御曹司「しかし、懐かしいなあ。この雰囲気、本当に昔を思い出すよ」
根暗「まさに……、自由で…、無責任で…、知的な…、サークル」
ヒモ御曹司ナンパ「「「それな」」」
ワハハハハ
魔王「ここは、なかなか繁盛しているようだな」
側近「そうですね。だいぶ賑やかですね」
魔王「酒もうまいし、小料理もうまい。当たりだな、この店は」
側近「この魚卵の塩漬けを乾燥させたもの、絶品ですよ。穀物を発酵させて作ったこの透明なお酒も、おいしいですね」
魔王「上の世界の居酒屋、なかなかにあなどれぬ。この世界を手にするのが、ますます楽しみになった」
側近「頑張りましょう、魔王様。魔界の平定も、もう間もなくですよ」
魔王「任せておけ。ふははははは!!」
―――――――
―――
―
もう、この世界には、いられない……。
俺を、必要としない世界には、もう……。
いや、必要ないのは、この世界の方だ。
ここでいったんセーブします。
ふっかつのじゅもんは、
『おひるをたべてひるねのあとさいかい』です。
『やばいねぼうしたさいかい』
じゅもんが ちがいます
→ぼうけんをする
おきのどくですが
ぼうけん の しょは
きえて しまいました
~3年後~
ヒモ「…………」
根暗「…………」
ナンパ「…………」
<オオサマノ オナーリー
御曹司「…………」
ブッ
御曹司「ちょっと、誰だいオナラしたの」
ヒモ「あ、すまん。俺」
ナンパ「wwwwwだめwwwwもうムリwwwww」
根暗「あーあ……、せっかく、笑うの…我慢してたのに……」
ヒモ「で? わざわざ俺たちを城にまで呼び寄せて、何の話だ?」
ソコノオマエ ナントブレイナ クチノキキカタヲ!>
御曹司「ああ、いいからいいから、気にしないで」
ムゥ>
御曹司「それで君たちを呼んだ件なんだけど、どうやら魔王が、この世界の侵略を始めたらしい」
ヒモ「ほう」
根暗「あの、魔王さんが……」
御曹司「ここ数ヶ月で、今までこの世界にはいなかった凶暴な生き物が各地で激増しているのは知っているよね」
御曹司「ぼくたちがこの世界に来た経緯を考えると、おそらく魔界の生物だと考えられるんだ」
ヒモ「あー、あれな。あいつら厄介なんだよなー。輸送隊が襲われるから、輸入物の入荷が遅れて困るんだよ」
ナンパ「うちのww交易隊もwww被害甚大wwwww」
ヒモ「で? それと俺らが呼ばれた理由に、何の関係があるんだ?」
御曹司「単刀直入に言うよ」
御曹司「ぼくらで、魔王を討伐しよう」
ヒモ「ハア?」
根暗「……、意味、不明……」
ナンパ「wwwww」
ヒモ「単刀直入なのはいいけどよ、もう少し説明してくれや」
御曹司「オッケー。じゃあまず聞くけど、君たち、あの魔王からもらった腕輪、最近外れたのは気づいているよね」
ヒモ「ああ、そりゃな」
ナンパ「ウンコしてたらwwパカッて外れてwwトイレにポチャンwww」
御曹司「根暗君。たぶん君も覚えていると思うけど、あの腕輪、外すための条件って、なんだった?」
根暗「……、魔王さんが、……死んだとき」
御曹司「そう。つまり、あの腕輪が外れたっていうことは、ぼくらが会ったあの魔王は、死んでしまったっていうことだ」
ナンパ「ご愁傷www様ですwww」
ヒモ「おう。……んで? それが、俺たちが魔王退治に行くのと、何の関係があるんだ? てか、魔王は死んだんだろ?」
御曹司「考えたんだ。いったい誰が、あの魔王を殺したんだろうって」
ヒモ「まあ、魔界にいる人間か魔物か、いずれにしろ、俺たちとは関係なくね?」
御曹司「それがどうやら、マジメが魔王を殺して、新たな魔王になったらしいんだ」
ヒモ「おおマジか…、そりゃあ意外……」
ヒモ「でもねえな」
根暗「……実は、彼が……、ぼくらの中で、一番陰湿だった……」
ナンパ「いわゆるww真面目系wクズwww」
ヒモ「あいつがダメなのは、仲間内を、相手のいないトコで腐すとこだよなあ」
根暗「ナンパ君のこと…、節操がない、女たらしだって……、ぼくにグチってた……」
ナンパ「御曹司さんがww女をとっかえひっかえするの最低だってw俺に言われてもwww」
御曹司「ぼくにはよくヒモのことを、女性を不幸せにする天性のダメンズだって言ってたね」
ヒモ「んで俺は、根暗がボソボソ話すの聞き取りづらくて嫌になるってサンザ聞かされたわ」
御曹司「きれいに1周したね」
ヒモ「まあそんな調子で、割とどこ行っても嫌われてたよな」
根暗「……初対面の、人当たりは……、いいんだけど、ね…」
ナンパ「合コンではww割と強かったww」
ヒモ「文句言うくせに、なんだかんだ良く来てたよな、合コン」
御曹司「まあ、そこで外れ引くのが、彼の役目だったけどね」
ヒモ「見た目やスタイルはいいけど、性悪の女に引っかかるの多すぎ」
御曹司「彼はほら、おっぱいと若い子が好きだから」
ナンパ「男の欲望にwww正直すぎるwww」
ヒモ「俺らはどこか一点が飛びぬけてクズいけど、マジメは全部が程々にクズいから最悪だったな」
根暗「でも……、そのおかげで……、ぼくらと波長が合った……」
ナンパ「クズ界のww頂点としてwww一目置けたッスwww」
御曹司「それに一応最年長だし、一定の敬う気持ちはあったね」
ヒモ「言っても俺の2個上、御曹司や根暗の1個上だから、普段はあまり意識しないけどな」
根暗「誰も……、彼に、敬語…使わない……」
ナンパ「いやいやwwww、俺はw使ってるッスよwww」
ヒモ「お前、俺には敬語使わねえだろ、1個下のくせに」
ナンパ「ヒモはww別にwいいかなってwwww」
御曹司「まあまあ。とにかくさ、そんなわけで、魔王退治にでも行こうよ」
ヒモ「行こうよって、そんな気軽に言うようなことか?」
ナンパ「ちょっとそこまでwwwピクニック気分www」
根暗「実際……、あまり深刻には、思えない……」
ヒモ「相手が、あのマジメだからな」
御曹司「あと一応、精霊からお告げもあってね。ぼく、勇者だから」
根暗「唐突な…、新情報……」
ヒモ「そういう重要そうなことは、後出しで言うのやめようぜ」
御曹司「それが、腕輪が外れてしばらくした後の夜に、とつぜん夢に出てきてね」
御曹司「この世界に害を為す魔王が現れたから、勇者として旅立ち、魔王を倒してくださいって」
ヒモ「それでお願いされて、素直に従っちゃうの?」
御曹司「さすがにさ、その精霊から、魔王は過去にあなた達の仲間でしたって聞かされたら、まあ、ね」
ヒモ「ああ、それで、マジメが魔王になったって分かったわけだ」
御曹司「そうそう。精霊いわく、前の魔王は魔界の統治に忙しくて、こっちの世界に手を出す暇がなかったから放っておいたけど」
御曹司「さすがに魔物をよそ様に派遣し始めたとなると、放置できないからよろしくって」
ヒモ「精霊ってヤツもノリが軽いなおい」
御曹司「今のはぼくが説明を要約したから。本当はもっと厳かに長ったらしい説明だったよ」
根暗「校長先生の……、挨拶みたい……」
御曹司「そんな感じ。正直、聞きづらくて眠かったな」
ナンパ「夢のwww中なのにwww」
御曹司「まあそんなわけで、魔王退治に行くからよろしく」
根暗「かるぅ~い……」
ナンパ「wwwwwww」
ヒモ「おお、根暗がそういうツッコミするの珍しいな」
根暗「たまには、ぼくも……、おちゃらけてみたい……」
ナンパ「彼女さんできてwwww変わりましたねwww」
根暗「んふ……」
御曹司「それじゃあ旅立つ前に、君たちの戦闘上の職業を決めないとだね」
根暗「戦闘上の……、職業……?」
御曹司「一応、魔王討伐は国家事業として扱うから、経営者とか村長とか、戦闘と関係のない職業の人を討伐に出すと、手続き上の不備になるんだよ」
ヒモ「ふーん」
ナンパ「お役所仕事ッスねwww」
御曹司「ちなみに、ヒモは遊び人ね」
ナンパ「wwwwww」
ヒモ「ちょっとまて、なんで俺が遊び人なんだよ」
御曹司「君、私生活が遊び人だから」
ヒモ「いやいや、今働いてるし」
御曹司「それは冗談として聞き流すとして、君は泣かせた女の人が多すぎるっていうのが一番大きな理由だね」
ヒモ「働いてるのを冗談にされたのも聞き捨てならねえけど、泣かせた女が多いから遊び人ってのも意味がわからねえな」
御曹司「だって、もしそんな人達が思い余って君を刺しに来たら、君が戦士とか武闘家だと反撃しちゃうでしょ?」
ヒモ「ねーよ。今まで女に手を挙げたことは一度もねーぜ」
根暗「でも……、結婚を、迫られたら……」
御曹司「口封じに、闇に消しちゃうかもね」
ナンパ「刺されたらwww結婚wwwしなくちゃだしwww」
ヒモ「いや、刺される前に逃げ切ればノーカンだろ」
ヒモ「ていうかあの後大変だったんだからな。どっかのアホがほんとにおふれ出しやがるから、しばらくホームレス生活で逃げ隠れしてたんだぞ」
ナンパ「自業ww自得www」
根暗「口は……災いの元……」
御曹司「あまりに哀れだったから、とりあえず怪文書ってことにしておさめたけどね」
御曹司「まあというわけで、相手の安全のためにも君は遊び人で、武器の装備は禁止ね」
ヒモ「納得できねー。だいたい、遊び人なんて戦闘になんも関係ねーし、それこそ“手続き上の不備”になんじゃねーの?」
御曹司「大丈夫だよ、遊び人はオトリになるから戦闘職って、ぼくが通しておいたから」
根暗「強権……、発動……」
ヒモ「でたよ、王様特権」
御曹司「それに味方が役に立たないことより、身内の醜聞の方が、ぼくにとっては大ダメージだからね」
ナンパ「御曹司さんw王様ッスからねwww」
御曹司「そういうこと。だから、ぼくの権限で、君は遊び人にさせてもらうよ」
ヒモ「ちっ。しょーがねーなー」
御曹司「あと、これが選べる職業の一覧ね。ナンパ君、根暗君にも一枚渡してくれる?」
ナンパ「はいはいwww」
根暗「ありがとう……」
御曹司「で、君たちは何の職業にする?」
ナンパ「へえwww商人なんてwww職業あるんスねwww」
御曹司「魔王を倒す旅をするとき、戦闘能力だけじゃなく、道中の宿泊や食事なんかの金策をするスキルも必要でしょう?」
御曹司「国家事業だから予算つけていくらかもって出かけるけど、無限にお金を引き出せるわけじゃないからね」
ヒモ「まー、この国はべらぼうに金持ちかっていうと、そうでもないからな」
御曹司「そんなわけで、戦闘支援職として、商人もありなんだよ」
ナンパ「なるほどwwwじゃあ俺はwww商人ッスねwww」
御曹司「そうだね、適役だね」
根暗「ぼくは……、魔法使い、かな……」
ナンパ「もうww童貞じゃwwないのにwww」
ヒモ「ていうか、根暗は魔法とか使えるのか?」
根暗「……メラ」ボッ
ヒモ「おお! 火が出たぞ火が」
ナンパ「ライターみたいにwww小さいけどwww」
根暗「彼女に……、教えて、もらった……」
ナンパ「タバコ吸うときに便利ッスねwww誰もwwタバコ吸わないけどwww」
御曹司「とりあえず、根暗君は魔法使いでいいのかな。ぼくとしては、賢者でもいいと思うけど」
ヒモ「あれだろ、ナニする暇もないほど、彼女とイチャついてるってことだろ」
御曹司「ああ、なるほどね」
ナンパ「むしろww賢者ならwwヒモの方がwwお似合いwww」
ヒモ「年中シコって毎日が賢者タイムでーすってか? やかましいわ」
御曹司「それいいね。賢者は、遊び人の上位職ってことにしようか」
ヒモ「おいおい、遊び人から賢者とか、おもしろいじゃねーか」
根暗「遊びを極めた果てに……、俗世と欲望の虚しさを…悟ったら……、賢者になる……」
ヒモ「それじゃあ、まだ俺は賢者になれねーな。俗世と欲望が楽しすぎるから」
御曹司「悟りか。うん、何かに使えそうだね、覚えておくよ」
御曹司「さて、それじゃあ、旅立つ前に決めることは、これで以上かな」
ヒモ「まー、相手はあのマジメだし、サクッと行ってサクッと片付けようぜ」
ナンパ「またww趣味の悪い女の子の魔物をww側近にでもしてるんスかねwww」
根暗「そもそも……、部下がいるのかどうかすら……、あやしい……」
御曹司「じゃーそういうわけだから、しばらくの間、お城のことはよろしくね」
ショウチシマシタ>
御曹司「内政はとりあえず現状維持、外交は、適当な理由つけて、ぼくが帰るまで引き伸ばしておいて」
ココロエテオリマス>
御曹司「路銀は適当に、財政の人にもらって行くから。じゃあ、あと頼んだね」
ハイ、イッテラッシャイマセ>
ヒモ「道すがら、カジノや風俗があれば寄って行こうぜ」
ナンパ「きれいなネーチャンwwwいっぱいおっぱいwww」
根暗「……彼女の実家へのお土産、どこかで買いたいな……」
御曹司「いい娘がいたら、お城に連れて帰る手段を考えないと。入城許可証と名刺を何枚か持って――」
ワイワイガヤガヤ
ダイジョウブカナ…>
~5日後~
御曹司「はい、というわけで、魔王城に到着です」
ヒモ「はえーよ」
ナンパ「愉快なww道中www説明一切なしwww」
御曹司「いやだってさ、男4人の最低な旅路を話したところで、ちっともおもしろくないでしょ」
ヒモ「まあ、やることって言ったら、飲む打つ買うしかなかったからな」
ナンパ「カジノの不正暴いてwww慰謝料美味しかったですwww」
御曹司「それにしても、根暗君の彼女がドラゴンだとは、驚きだったね」
ヒモ「おかげで魔物に襲われもせず、移動も楽だったな」
根暗「彼女……、竜ちゃんにとって……、魔界は里帰りみたいなものだから……、乗せてくれた……」
御曹司「そうそう、前魔王さんが上の世界下の世界とか言っていたから、どうやって移動すればいいのか思案してたけど」
ヒモ「結局、根暗の彼女がひとっ飛びで連れてってくれてな。あっさり魔界に着いちまった」
根暗「後で、彼女にお礼……、言っておいてね……」
ヒモ「おう、その辺の礼儀は欠かさねーぜ」
ナンパ「いい肉ww調達してww行きますよwww」
御曹司「それじゃあ、早速魔王のところに向かおうか」
ヒモ「魔王っていうか、マジメな」
根暗「元気に……、してるかな……」
ナンパ「むしろww俺らといるよりwww元気だったりしてwww」
ヒモ「あー、ありえるありえる」
御曹司「なんて言ってる間に魔王の部屋の前まで来たから、扉をあけてご対面と行くよ」
ヒモ「たのもー」
ギギイイイィィィ
マジメ「ふわははははは! よくぞ来たな異界の勇者たちよ!」
マジメ「遠路はるばる足を運んだ結末としては気の毒だが、お前たちの旅は今日で終わりだ!」
マジメ「さあ、我の手にかかり、無残にその命、散らすがいい!!」
マジメ「ふわはははははははは!!!!!」
御曹司「…………」
ヒモ「…………」
根暗「…………」
ナンパ「…………」
マジメ「は!?」
御曹司「いやー……、痛いね」
ヒモ「いい大人が、ガキみたいに一人芝居か。笑えねーぜ」
根暗「黒マントに…、黒い鎧……、全然、似合ってない……」
ナンパ「草も生えないッス」
マジメ「ちょ、なんで君たちがここに!? ていうか、勇者は?!」
御曹司「あ、それぼく」
マジメ「ええ!!?」
御曹司「なんか、聖なる力がぼくにあるとかで、どこかの精霊さんが、ぼくに勇者の力を授けてくれたんだよね」
ヒモ「実態は、聖人君主どころか、鬼人暴君もいいとこだけどな」
ナンパ「www」
御曹司「うるさいなあ。まあ、そんなわけで君を倒しに来たから、おとなしく倒されてね」
マジメ「いやいやいやちょっとまって!」
ヒモ「なんだよガタガタと、往生際が悪りー」
根暗「とりあえず……、竜ちゃんに…齧ってもらう……?」
ナンパ「いッスねwwwバックリ行きましょwww」
マジメ「それ絶対痛いやつでしょ!? やめよ? 頼むから、ちょっと俺の話を聞いて?」
御曹司「しょうがないなあ。ぼくらもあまり暇じゃないから、手短に頼むよ」
マジメ「俺も、魔王なんか引き受けるつもりじゃなかったんだけど実は――」
~~回想~~
側近「魔王様! 見てください、すごい瘴気ですよ!」
魔王「うむ、やはり我が召喚したものたちの中から、次代の魔王が生まれたな」
マジメ「ブツブツブツブツ」シュウゥゥゥ
側近「どうやら、街の人間たちに嫌われ、迫害されたことで、憎悪の感情が膨れ上がり、魔王様と同じ力を得たようです」
魔王「以前、お前が言っていた喜ばしい報告とはこのことだったか」
側近「その通りです。しかし、ここまで強い瘴気を出すことができるとは……、人間の負の感情というものは恐ろしいですね」
魔王「これほど強い邪気を纏っているならば……。今こそ、あの計画を実行に移す機会かもしれぬ」
側近「あの計画?」
魔王「魔王の世代交代だ」
側近「世代交代って……、えっ! 魔王様、引退する気ですか!?」
魔王「魔界の平定も成し遂げた。あとは、上の世界への進出を果たし、征服するだけとなったが……」
側近「長年の夢がついに叶うじゃないですか。それがなぜ、引退など?」
魔王「今や我にとって、世界征服は心踊る崇高な使命ではなくなったのだ」
側近「そんな……。では、魔王様が一番に成し遂げたいものとは」
魔王「側近と、これからも居酒屋をまわり続けることだな」
側近「……え?」
魔王「側近と居酒屋での語らいを重ねるうち、我は、最も大切に想う者と、日々の営みをただ繰り返す安寧さに心を奪われてしまった」
魔王「もし世界征服などしてしまっては、そんな安らぎの日々からは遠のいてしまう」
魔王「だから我は、いつか、もし機会があれば、魔王を辞し市井の民となり、小さな幸せを感じながら余生を過ごすことを考えていた」
側近「魔王様……」
魔王「そしてできれば、その隣には」
側近「!」
魔王「側近、お前がいてほしい。我と一緒に、来てくれぬか」
側近「……、はいっ!」
マジメ「ブツブツ ラブコメハヨソデヤレ ブツブツ」シュウウゥゥゥゥゥウウゥゥウゥ
~~回想ここまで~~
マジメ「と、いうわけで……」
ヒモ「え、じゃあ、あの魔王死んでねーの?」
マジメ「うん。俺に魔王の力を移した後、側近さんと一緒に手を繋いで城を出て行ったよ」
根暗「じゃあ……、あの…、外れた腕輪は……?」
御曹司「魔王さんが死んだら外れるっていうあの腕輪。あれが外れたから、ぼくらは魔王さんが死んだと思ったんだけど」
マジメ「腕輪? ああ、あの腕輪なら、側近さんがなんかしていったね」
~~再回想~~
側近「それじゃあ、あの偵察用の腕輪はもう用済みでしょうし、解除しておきますね」
魔王「なにっ、あれは我が死なぬと外れぬのではなかったのか?」
側近「まあ、建前ではそう言ってますし、実際、魔王様が死ぬと外れるようにはなってますけど」
側近「こちらが任意で操作できない装備など愚の骨頂ですから、もちろん、私の一存で付け外しできるようにしていますよ」
魔王「そ、そうだったのか……」
~~再回想ここまで~~
マジメ「だって。何のためにつけてたのか、俺はよく知らないけど」
ヒモ「なんだそりゃ」
御曹司「あまり威厳のない人だとは思ってたけど、早速尻に敷かれそうだね」
ナンパ「つーかwww恋人と逃避行とかwww」
御曹司「意外とロマンチストな人だったんだなあ」
根暗「元から……、あまり魔王らしくはなかった……」
マジメ「そもそも、俺が魔王になったのだって、あの二人のイチャイチャを眼の前で見せつけられてイラってきたせいでもあるし」
御曹司「まあ、気持ちはわかるけれど」
ヒモ「だからって、魔物を俺らが住んでるところに派遣して、荒らすのはどうなんだよ」
マジメ「いやーそれが、魔王をやってみたら思いのほか楽しくて、よしじゃあ上の世界も征服しちゃおうかなーってさ」
根暗「で……、魔物をたくさん送って……攻め込んで見たと……」
マジメ「あまりに上手くいくから、ちょっと調子に乗っちゃってね。魔物も言うことをよく聞いてくれるし、面白くって」
ナンパ「事業がww上手くいっているときはww全力で攻めるのがw基本っスからねwww」
マジメ「そうそう、わかってくれる?」
ナンパ「wwwww」
マジメ「はははは」ニコニコ
ナンパ「○ね」パンチ
マジメ「んごふっ」
御曹司「だめだよナンパ君、勝手に魔王を攻撃しちゃあ」
ナンパ「あwwwすいませんッスwww」
マジメ「そうだそうだ! 暴力反対!」
御曹司「勇者がとどめ刺さないと魔王は倒せないんだから、ぼく以外が攻撃しても労力の無駄だよ」
ナンパ「そッスねwww」
マジメ「ええ!? 俺をかばったんじゃないの?」
ヒモ「今のお前に、かばってもらえるだけの価値はねーよ」
マジメ「はあ!?」
根暗「むしろ……、攻撃する価値すら……ない……」
マジメ「ちょっと!? 君たち勇者一行でしょ? 俺、魔王だよ? 俺を倒すのが使命なんじゃないの?」
ヒモ「いやいや、俺らにも、倒すべき敵を選ぶ権利ぐらいはあるだろ」
マジメ「はい?」
マジメ「なんだよ権利って、権利も何も、魔王と勇者一行なら、何は無くとも戦うのが常識だろ!?」
ヒモ「…………」
マジメ「それに俺は魔王だぞ!? 魔王って言ったらこの魔界で一番偉いんだから、もっとも価値があるってことだ! 攻撃する価値がないとか、意味が分からないよ!」
根暗「…………」
マジメ「だいたい、俺たちは友達だろ!? 友達だから戦えないっていうなら分かるけど、だったら、さっきいきなり殴られたのはなんなんだよ! おかしいだろ!」
ナンパ「…………」
マジメ「おい、何か言えよ!!」
ヒモ「じゃあ、言わせてもらうけど」
マジメ「う、うん」
ヒモ「このクズが」
マジメ「え」
根暗「2度と、顔も見たくない……」
マジメ「ちょ」
ナンパ「◯ねバーカ」
マジメ「まっ」
御曹司「…………」
御曹司「ぼくたちは、マジメのことだから、何か深い理由があってぼくらが今いる世界を攻めてると思ってたんだ」
ヒモ(一度も思ったことないけどな)
御曹司「なのに、話を聞けば、ただの面白半分で、ぼくたちのことを傷つけようと、傷ついても構わないと、魔物を送り込んでいたんだね」
根暗(ちっとも…、傷ついてないけれど……)
御曹司「実際、ヒモやナンパ君は、魔物のせいで商売に支障が出て、経済的な損失を受けているんだよ」
ナンパ(その代わりwww値段吊り上げてwww逆に大儲けッスwww)
マジメ「え、じゃあ……」
御曹司「本気でぼくたちの世界を征服するつもりだったならぼくらも本気で相手をしたけど」
御曹司「今の君は、ただ調子に乗って遊んでいるだけの裸の王様だ」
御曹司「そんなくだらない最低のお遊びに、ぼくたちが付き合う義理はないね」
マジメ「そんな……、でも、俺は……!」
御曹司「もう、何も言わなくていいよ。本当は、口も聞きたくないから」
御曹司「さようなら。絶交だ」
マジメ「あ……、あ……」
マジメ「あぁ…………」シュワー
ヒモ「おお、なんか黒い鎧やらなんやらが消えてったぞ」
御曹司「ぼくらに見捨てられたせいで更に魔王化するかと思ったら、魔王化する気も無くなるほど、ガックリ来ちゃったみたいだね」
根暗「そんなに……、友達がいなくなるの……、嫌なのかな……」
御曹司「周りの目を人一倍気にする人だったから、無価値だって言われたのが一番堪えたんじゃない?」
ヒモ「けっ、意気地なしが」
ナンパ「でもwww浄化できてwww結果オーライwww」
御曹司「あ、そっか。これが勇者の聖なる力なのか」
ヒモ「魔王を罵倒してなじるのが聖なる力かよ。勇者終わってんな」
御曹司「暴力で解決するより、よっぽど人道的で友愛的な手段だと思うけど」
根暗「人道……?」
ナンパ「友愛www」
マジメ「みんな、ごめん。俺をゆるしてください」
ヒモ「おーおー、魔王化が解けたと思ったら、随分としおらしくなっちゃってまあ」
根暗「想定……通り……」
御曹司「都合が悪くなると、とりあえず謝るクセあるよね」
ナンパ「マジメさんの土下座www天下一品ッスwww」
マジメ「心を入れ替えて、誠心誠意人のために働きますので、どうかご容赦を」
ヒモ「こいつ、いつもこんな調子で謝ってんのか」
御曹司「まあ、街の人に嫌われて追い出されるのも無理はないかな」
根暗「心が……こもってない……」
ナンパ「おざなりの謝罪はwww相手を怒らせるだけッスよwww」
マジメ「はい、本当にすいませんでした」フカブカトドゲザ
ヒモ「で、とりあえず魔王征伐もこれで終わりか?」
御曹司「そうだね、とりあえず帰るとしようか」
マジメ「え、俺たち、元の世界に戻れるの?」
ヒモ「は? 何言ってんのお前」
マジメ「え?」
根暗「彼は……、魔王さんの説明……、気絶してて、聞いてない……」
ヒモ「ああ、そうか」
ナンパ「マジメさんwww俺たちw元の世界にはww戻れないッスよwww」
マジメ「え、うそ……」
ナンパ「残念ながらwwwほんとッスwww」
マジメ「」
根暗「また……、気絶してる……」
御曹司「このメンタルでよく魔王になれたなあ。魔王化してる時の方が、心が強くなるのかなあ」
ヒモ「はあ。これでまた、居酒屋オーナーの日々に戻るのか」
ナンパ「俺もwww子作りと商売の日々にwww逆戻りwww」
御曹司「ああ、いやだな。魔物が出始めてから大人しくなったけど、隣国の王様が何かと厄介なんだよねえ」
ヒモ「なに、戦争?」
御曹司「そこまでは行かないけどさ、出自不明の王様がでかい顔するなって。ほら、最近うちの国、景気が良くなってきたからやっかんでるのさ」
ナンパ「うちもww新参の若者がw仕切るなってwwよく嫌味言われるwww」
ヒモ「俺もなあ。俺自身が嫌われるってことはねえけど、女同士がすげーギスギスして本業にさし障るんだよ」
ナンパ「おおむねwwwヒモのせいwww」
ヒモ「俺のせいか? 俺のせいか」
御曹司「どこも似たような感じだね。なんで、この世界の人たちって、こう仲が悪いんだろう」
ヒモ「さあ? どいつもこいつも自分のことばかり優先して、相手の気持ちなんか考えねーからじゃね?」
御曹司「あー」
ナンパ「ヒモはwww相手のことww考えてんのwww?」
ヒモ「当たり前だろ。いつもと違う化粧や香水してるってことはコッチの気を引こうとしてんだなとか、いつもと違う服を着てきたら、それをきっかけに話しかけて欲しいんだなとか」
ヒモ「将来の子育てや貯金の話をし出したら結婚したいんだなとか、今度ここに行きたいってデートコースに式場近くのスポット勧めてきたら結婚したいんだなとか」
ヒモ「相手のこと考えてなけりゃ結婚回避なんかできねえよ!」
ナンパ「切実www」
御曹司「いっそのこと、重婚可って法律つくろうかな」
根暗「無駄だと思う……、彼に、結婚する気がないから……」
御曹司「あ、そっか」
御曹司「それにしても、隣国の王様どうにかならないかなあ。いっそのこと、併合して自国に組み入れちゃおうかな」
御曹司「隣国の参謀さんとは仲良くしてるから、彼女にスキャンダル流してもらって王族を追放できれば、無血開城も不可能じゃないし」
根暗「平和的に……、物騒な……、お話……」
ヒモ「ナンパは、自分に嫌味言ってくる奴にはどうしてんだよ」
ナンパ「自分の村の住人だったらww一対一でお話をよく聞いてww”ご理解”してもらうwww」
ヒモ「ご理解ね」
ナンパ「他の村の村長だったらww輸入も輸出も締め付けてwww日干しwww」
ヒモ「他の村同士で交易しあったら、締め付けても効果ないんじゃね?」
ナンパ「俺がいなかったらwそもそも商売が成り立たないwww他の村同士wwすげー仲わりーwww」
ヒモ「ふーん。なんか村同士で嫌い合う事情でもあんの」
ナンパ「別にwwないwwwただww自分以外の村はwww嫌いなだけwww」
ヒモ「田舎の排他性ってやつか。悲しいなあ」
御曹司「なんで君が悲しがってるのさ」
ヒモ「俺は博愛主義者だからな。世の中の女は、みんな平等に俺のセフレだ」
ナンパ「わwけwわwかwめw」
根暗「……、なんか…すっかり……、おいてけぼり……」
根暗「みんな……色んな人との付き合いに…、大変そう……」
根暗「竜族の土地に…戻るから…、ぼくには、関係ないけど……」
竜「クルルル」
根暗「ん……?」
竜「…………」
根暗「……えっ?」
マジメ「――はっ! なんだ、もう朝か?」
マジメ「ミノタウロス(♀18歳)はどこだ? 寝起きのおっばいがないと一日の元気が出ないと、あれほど言っておいたのに」
マジメ「……あ、そうだ。俺、倒されたんだっけ」
ヒモ「お、起きたか、おっぱい星人」
ナンパ「毎朝wwwお楽しみですねwww」
マジメ「ん? なんのこと? 俺、何か言った?」
ヒモ「トボけんなよ、しっかり聞こえてたぞ」
ナンパ「このwwwむっつりさんwww」
マジメ「まあまあ、それはいいからさ、この後はどうするんだい?」
ヒモ「そうやって、聞かれたくない話題になるとすぐに話をはぐらかすの辞めようぜ」
御曹司「実際、大人気ないよね」
マジメ「それは後で聞くから、とりあえずこの後の予定を教えてよ」
ヒモ「はあ……」
御曹司「まあいいや。それでさ、この後のことで考えていたことがあるんだけど」
マジメ「さすが御曹司。頼りになるね!」
御曹司「……うん。とにかくさ、この世界の人たちはあまり仲良くないってことが、大体の問題の原因なわけじゃない」
マジメ「そうなんだよね。俺も、なんかよく分からないんだけど、そのせいで街を追い出されちゃったし、それで魔王にもなっちゃったし」
御曹司「……うん(苦笑)。でも、マジメが魔王になって上の世界に攻め込み初めてからは、前よりはマシになったと思わない?」
ヒモ「たしかに、うちにくる輸送隊、前は部隊の連中同士一緒に飯も食わねえって聞いてたのに」
ヒモ「魔物に襲われるようになってからは、お互いによく話しかけあったりして連携取るようになってたなあ」
ナンパ「うちの交易隊もw他の村に荷物運んでお茶の一つも出なかったのにwww」
ナンパ「魔物のせいで物資が届きづらくなってからwwおもてなしwしてもらえるようになったwww」
御曹司「やっぱり、身近に危機が迫ってないと、お互いに協力し合うって発想にはならないみたいだね」
マジメ「なるほどね。それでこの後、俺はどこに行けばいい? とりあえず、誰かの家にお世話になる感じ?」
御曹司「で、考えたんだけどさ。もし、ある程度の枠の中で、この危機的状況が維持できるとしたら、どう?」
ヒモ「あー、確かに、その方がいいのかもな」
ナンパ「ケンカばっかしてるよりwwwましッスねwww」
ヒモ「具体的には、どうするつもりだ?」
御曹司「それが思いつかなくってね。何か、都合のいい解決法があるといいんだけど」
マジメ「うん、あるといいね。それより早く帰ろう。今日はもう疲れたよ」
キラキラキラキラ
ヒモ「お、なんだなんだ?」
精霊「…………」シャラーン
御曹司「ああなんだ、ぼくの夢に出て来てお告げをくれた精霊か」
マジメ「え? 精霊?」
精霊「……、私は、この地を創造し、守護する者であります」
精霊「そなたらの尽力により、乱れ始めたこの世界の秩序が、再び安定を取り戻しました」
精霊「その功績をたたえ、ここに、感謝の意を表します」
ヒモ「なんか表彰状授与っぽいのが始まったぞ」
ナンパ「ウケるwww」
精霊「そなたらは、この地にたどり着くまでに多くの苦難を乗り越え、この世界に仇なそうとする悪を打ち倒しました」
ナンパ「苦難www」
根暗「あったっけ……?」
精霊「その尊き働きに報い、そなたらの願いをひとつ叶えましょう」
御曹司「へえ。それって、どんな願いでもいいんですか?」
精霊「もちろんです。聞けば、そなたらは異世界より召されし者達とか。私の力を持ってすれば、元の世界に戻すこともできましょう」
マジメ「え! やった、帰れるんだ!」
根暗「あの……、願いをひとつというのは…、一人ひとつずつと…いうこと……?」
精霊「その通り、と言いたいところですが、一度乱れた世界の理りを正すため力を使わざるを得ず、今は、そなたら皆でひとつの願いが限界です」
ヒモ「じゃあ、富と権力という願いをした場合はどうなるんだ?」
精霊「そうですね、富は均等に分け与えられますが、権力となると、そなたら皆でひとつの国を治めるようになるでしょう」
マジメ「つまり、個人的な願いより、みんなが共通に希望することを願った方がいいんですね!」
精霊「はい。この世界を救ったそなたらに、この程度の報いでは心苦しい限りですが…」
マジメ「なら、願い事はあれしかないね」
御曹司「うん、そうだね」
ヒモ「ご都合主義ってすげーなあ」
精霊「願いを限定するようで誠に申し訳ありません。せめて、そなたらの安寧をいつまでも願いましょう」
ヒモ「じゃあ王様、俺らを代表して精霊様に願いを伝えてくださいよ」
根暗「うん……」
ナンパ「お願いするッスwww」
御曹司「いいんだね。ぼくの願いは、アレしかないけど」
マジメ「もちろんさ。俺たちの願いはひとつしかないんだから、御曹司に任せるよ」
御曹司「じゃあ、言うよ」
ヒモ「……」コクッ
ナンパ「……」コクッ
根暗「……」コクッ
マジメ「www」コクッ
精霊「さあ、そなたらの願いを言いなさい」
御曹司「ぼくの願い、ぼくたちの願いは――」
魔王と人間の対立が永遠に続くことです。
精霊「」
ヒモ「……」ウンウン
根暗「……」ウンウン
ナンパ「www」ウンウン
マジメ「……」ポカーン
精霊「あ、あの…、そなたはいったい何を?」
御曹司「国を1つ治めてみて分かったけど、この世界の人間は他人を嫌いすぎているんだよね」
御曹司「やれ、あっちの国王が気に入らない、こっちの国民は薄汚い、そんな話ばっかりで辟易したよ」
ヒモ「俺の女共も、あの娘には負けたくないとかで次々に貢いできたからなあ。さすがに引いたわ」
ナンパ「街と街の物流をスムーズにしただけで救世主扱いww交易すらまともにできないとかwwドンだけ仲悪いんスかwww」
御曹司「マジメが上の世界を攻めて実害が出始めてからの方が、人々の間の不仲が緩和したからね」
御曹司「もし、また魔王がいなくなって、人間がお互いに嫌いあっているのがエスカレートしていったらどうなるだろう?」
御曹司「最終的には国を挙げての大戦争で、きっと人間は滅びちゃうんじゃないかな」
精霊「しかし…、そなたらの願いを叶えれば、この世界に平和は二度と訪れぬということに……」
御曹司「人間同士が烈しく争い、やがて滅びてしまう未来」
御曹司「魔王と人間が小競り合いを繰り返し、心は休まらないけど永遠に続く未来」
御曹司「果たして、人間にとってはどちらが幸せだろうね」
精霊「それは……」
根暗「ぼくの大事な竜ちゃん…、魔王がいないと弱って死んじゃうんだって…」サッキ キイタ…
御曹司「ああ、そういう事情もあるんだね。というわけで、この世界に魔王は必要なんだ」
御曹司「だからぼくは、魔王が復活し、人間と争い続けることを願うよ」
マジメ「ち、ちょっと待て! お前ら、元の世界には戻りたくないのかよ!?」
根暗「うわ……」
ナンパ「wwwww」
ヒモ「お前、もうちょっと空気読めって」
マジメ「え? いやちょ……、え??」
御曹司「逆に聞くけど、君は元の世界に戻りたいのかい?」
マジメ「そりゃあ、まあ……」
ヒモ「あのわがままで自己中なヒステリー女が、いつもお前を不機嫌にさせるあの世界に?」
ナンパ「上司のパワハラがひどくてwwwいつも胃薬飲んでたあの世界にwww?」
根暗「ママの監視が厳しくて……、自由に遊びにも行けないあの世界に……?」
御曹司「君は、本当に戻りたいのかい?」
マジメ「う……、う……」
マジメ「うおおおあああああ゙あ゙あ゙あ゙あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
根暗「あ……、また魔王化しそう……」
ヒモ「あいつの場合、言うこときかない俺らよりも、素直に言うこと聞く魔物に囲まれて暮らした方が幸せかもな」
ナンパ「言えてるwww」
マジメ「人間なんて大っ嫌いだーーー!!!」
御曹司「というわけで、新魔王は彼でお願いします」ニコッ
精霊「そなたは…、そなたらは……」
御曹司「さて、これから忙しくなるね。次の魔王退治は、ぼくら以外の人間を勇者に仕立て上げて行かせよう」
ナンパ「いいッスねww伝説のオーブとか伝説の剣とかでっち上げてww適当に各地に置いておくッスwww」
ナンパ「商人仲間に噂流してwwそれとなく勇者の耳に入るように仕組んどきますんでwww」
御曹司「伝説のアイテムか。上手くそそのかせば、街の1つでも作ってくれるかもしれないね」
ナンパ「それいいッスねwwいつか使わせてもらいますwww」
ヒモ「俺は居酒屋の女達を使って、パーティの仲間を紹介する組織を作ってみるかな」
ヒモ「人材派遣みたいな仕事もさせて、勇者以外にもイロイロと斡旋すればそれなりに儲かるだろ」
御曹司「あ、ぼくのところにも何人か連れてきてよ。とりあえず綺麗な子がいいな」
ヒモ「はいはい。契約金はたんまりもらいますよ」
根暗「ぼくは…誰もいないところで…、竜ちゃんと静かに暮らすよ……」
根暗「それで、ぼくたちの子供を……、作るんだ……」
ヒモ「え、なに、お前あのドラゴン孕ませる気?」
ナンパ「うはwww異種間交配とかまじパねえwww真の勇者が こwこwにwいwたwww」
御曹司「いやあ、あの聖獣をテゴメにするのか。鬼畜だねえ」
ヒモ「お前が言うか」
ナンパ「御曹司さんはww何するんスかwww」
御曹司「ぼくはそうだな。とりあえずは勇者作りかなあ」
御曹司「適齢の女性何人かに子供を産んでもらって、どこか適当な地方で育てさせて」
御曹司「育った子供は城に連れてきてまた産ませて。何代か続ければ、優良な勇者が出来ると思うんだよね」
ヒモ「お前、自分の娘や孫にまで種付けする気かよ」
御曹司「そりゃそうでしょ。勇者の適性があったぼくの遺伝子を残すことが最も確実なんだし」
御曹司「ああ、もちろん男の子だったら城に来る必要は無いね。育った所で家庭を作ればいいと思うよ」
ナンパ「さすがの俺でも、それは引くッス」
御曹司「えーそうかなあ」
根暗「それで……、勇者ができたら……どうする……?」
御曹司「うん、適当な武器と小銭を渡してサクッと旅立ってもらうよ」
ナンパ「意外とwケチッスねww」
御曹司「あまり頼られても困るしね。冷たく突き放すくらいがいいんじゃないかな」
ヒモ「相変わらずえげつねえなあ。たまの里帰りくらい、許してやれよ」
御曹司「いやだよ。跡継ぎの王子はきちんと別に作るつもりだし、身分の違いはしっかり区別しないと」
根暗「じゃあ…もし戻ってきたら…、出迎えはなんて言う……?」
御曹司「そうだなあ」
おお!しんでしまうとはふがいない!
御曹司「かなあ」
ヒモ「死ぬまで帰ってくんなってことか」
根暗「やっぱり……、御曹司が、一番鬼畜だ……」
ナンパ「wwwwww」
マジメ「ふは、ふはははははははははhげほっごほっ」
そして でんせつのはじまりが はじまった!
~~エンドロール~~
勇者 御曹司
遊び人 ヒモ
魔法使い 根暗
商人 ナンパ
魔王 マジメ
元魔王 魔王
元側近 側近
読者 You
作者 Me
END
最後に一言だけ。
怒らないでください。
では。ノシ
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