にこ「サイドテールの不思議な子」 (19)
私はゲーセンが好きだ。音ゲーとか、ダンスゲーとか、そこそこやりこんでた。ゲーム自体というよりもゲーセンの雰囲気が好きだ。
もうそれなりに前の話になるが、スクールアイドル部を立ち上げたが部長である私との温度差に一人去り、また一人と次々去っていった。
そんな理由もあって、今や部活は形式上のものでしかない。気にかけてくれる友人はいれど、放課後は基本一人。
だからこそゲーセンを気に入っていた。
(私みたいな人はたくさんいるのね…)って受け入れられている気がするから。
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その日は半日授業だったから午後からいつも通り、半ばスキップするようにゲーセンに向かう。
今日は何をしようかと迷いつつ私は音ゲーの台へ足を運ぶ。全国のプレイヤーとスコアを競う人気ゲームなんだけど、得意なわけではないから俗にいう「ガチ勢」に当たると負けてしまうが今日は珍しく勝ちが続く。
すると私の隣に女の子が座った。
あまり女性がやる雰囲気のゲームじゃないだけに少し驚きつつも特に気にせずゲームを続ける。
自分のプレイがひと段落すると、ふと隣の画面を見やってしまう。顔はよく見えないけどこういう同じレベルで趣味に熱中できる子が身近にいればもう少し頑張れたのかな、とため息。
まず、途中まででも読んでくださってありがとうございました。あれが処女作であったことを差し引いてもあなたのお目汚しをしてしまったことかと存じます。
わざわざ面識もない他人のためなんかに駄作を見直す気にはなかなかなれないことは承知しておりますが、一体何が話を微妙にしていたのかをせめて教えてくださると恐縮です。
もちろん無視してくださってもかまいません。よろしくお願い致します。
サイドテール「あ、あれ?…ここなんだっけ。」
にこ(うっわ…周りに聞こえる独り言とかちょっと痛い子かも…?)
すると、先日私をボコボコにしたであろうガチ勢と当たっていたようで、もちろんボコボコに負けいた。
「まず曲覚えなさいよ…」くらいに見ていたら。顔を真っ赤にして涙目でゲーセンから出ていった。
私はまたまた何故か、その子を無心に追いかけていた。
にこ「いた…。」
店から少し離れた寂れた公園。
にこ「何ゲームで負けたくらいで泣いてんのよ。」
サイドテール「見てたんですか…。恥ずかしいよね。つい必死になっちゃって。」
ふてくされるかと思っていたらはにかみながら話してくれた。
ゲーセンにいた段階でこの子との間にある壁ってのが何枚かなくなってるんだと思う。
にこ「あんた、穂乃果って呼べばいい?」
穂乃果「そうですけど。なんで私の名前知って…」
にこ「オンラインゲームで本名使うのやめなさいよ…」
穂乃果「はぁ…。」
にこ「なによ。ため息なんか。」
穂乃果「実は今日いろいろあって友達にスクールアイドル始めようって誘ってみたんですけど…断られちゃって。」
にこ「好きなの?スクールアイドル。」
穂乃果「うーん…まあその話はいいよ。」
突然とても暗い顔になった。
穂乃果「あ、そろそろ帰らないと!ごめんね、またゲーセンで会えるといいね!じゃ!」
スクールアイドル始めようとしている人にスクールアイドルの話をすると暗くなった。私はすごく気になった。
数日後。また同じ音ゲーに向かうと穂乃果がいた。
にこ(半日授業の日に二度続けて…。すごい偶然ね。)
穂乃果「やった~!勝った勝った!」
にこ「相変わらず騒がしい奴ね。」
穂乃果「あ、あの時の人!ジュースでも飲もっか!」
敬語キャラはどこいった。つくづく変な奴だ。
にこ「この前は悪かったわね。」
穂乃果「え?何が?」
にこ「スクールアイドルのこと言ったらさ…。」
穂乃果「あ~、あのことはちょっとね…。」
にこ「スクールアイドル好きじゃないの?」
穂乃果「やってみないとわからないけど…でもとにかくやりたいんだ!」
にこ「ふーん…」
にこ「っていうか私の学校今日とこの前は半日授業だったんだけどさ…、ひょっとして同じ学校?」
穂乃果「え?じゃあ音ノ木!?」
にこ「こんな偶然あるのね。てかアンタの顔クラスで見たことないし、1年か2年でしょうが」
穂乃果「そうだよ?にこちゃんは1年生でしょ?」
にこ「3年だけど」
穂乃果「うっそだ~。」
にこ「3年だっつの」
穂乃果「すいませんでした。」
にこ「まあわかればいいわ。」
にこ「で?なんで廃校寸前のあんな学校で今更スクールアイドルなの?」
穂乃果「だって廃校イヤじゃないですか。」
にこ「は?」
穂乃果「穂乃果、そろそろゲームに戻るね~。」
にこ「あっ!ちょ、アンタ!」
私にはまったく理解できない。廃校がイヤだからスクールアイドル?
ナメんな。と思いつつも、惹かれているのかもしれない。
私には理解できない何かを持つ、穂乃果に。
次の日の放課後。穂乃果がレベル高い女子5人と共に部室の前に立っていた。そろそろ来る頃だとうすうす気づいていた。
にこ「来たわね、穂乃果。」
穂乃果「あっにこちゃん。とうとう学校で会えたね!」
穂乃果「でも今からスクールアイドル研究部の部長さんに用があってさ…。遊びにいけないんだ…。」
にこ「そっ。なら今からゆっくり話せるみたいだし関係ないわね。」
まあ私が部長だし。
そのことを伝えて驚かれて、必死にわけを説明されて、説得されたりもしたけど「廃校がイヤだからやる」なんて動機で始めたってコイツも早々に去っていくことでしょ。
そんなの時間の無駄。
あれだけ強く断った次の日。
何故かあいつら全員が、今度は部室内にいる。
やれお茶をどうぞだの、スクールアイドルを教えろだの、しまいには私の宝物に勝手に触るときたもんだ。どういうつもりかしら?
にこ「アンタら、昨日あれだけしっかり断ったのにこんなことで押し切れるつもり?」
穂乃果「押し切ろうだなんて考えてませんよ。ただ相談してるだけです。次の、音ノ木坂スクールアイドル研究部7人で歌う曲を」
にこ「…」
穂乃果「にこちゃんがまだスクールアイドルを本気で好きなのは部室を見ればわかるよ。だけど私達だって本気だもん!」
穂乃果「だから私達が本当に本気かどうか、証明するチャンスくらいくれたっていいじゃんか!」
こいつは不思議だ。こいつの話を聞いてると少しくらい、もう一度やってみてもいいんじゃないか?そう思えてくる。
だから、
にこ「もっと気合いいれてやんなさいよ!にっこにっこにーあと30回!」
端折ったところも多いけど、こうしてこの後に同級生の絵里と希が加入して。スクールアイドル・μ'sが誕生した。
そしてある休日のこと。
練習休みのゲーセンで何故か練習着の穂乃果を見つける。
自主練でもしていたのかと思い、少しウキウキしながら話しかける。
にこ「穂乃果、汗かいたあとに外で遊んでると風邪ひくわよ~。」
穂乃果「うん…。」
いやにテンションが低く、出会ったときから変な奴だとは思っていたけど、
負けても何も言わないし眉ひとつ動かさない。
今日はますます変だ。
その横顔が様々な感情を含んでいるようで、少し大人らしく見えた。
にこ「終わったらジュースでも飲みにいかない?」
穂乃果「うん…。」
にこ「今日は自主練でもしてたの?」
穂乃果「うん…まあね。」
にこ「それは感心ね。」
穂乃果「うん…。」
にこ「…」
穂乃果「…」
なんだか今日は会話が弾まない。とりあえず当たり障りのなさそうな話題を出しておく。
にこ「アンタってさ…卒業したらやっぱ実家を継ぐの?」
穂乃果「…そうだね。」
にこ「へぇ~。ってことは和菓子職人ね。アンタには勿体無いくらいかっこいいじゃない。」
にこ「私はやっぱりアイドルよねぇ~。やっぱり宇宙No. 1の私がならなきゃ他の誰がなるって話よ。」
穂乃果は泣いていた。
穂乃果「辛いなぁ…にこちゃんといると。」
穂乃果「にこちゃんはアイドル好き?」
にこ「あ、当たり前じゃないの。」
穂乃果「あははは、そうなんだ…。」
穂乃果は泣き止まない。
穂乃果「ごめん、もうゲーセンにも学校にも来れないかも。」
そういって、彼女は既に暗くなっている街に飛び出した。
私は混乱して、何がなんだかわからなくなった。
何か悪いことを言ってしまったのか?
無我夢中で穂乃果を追いかけた。
にこ「待ちなさいよ!
何があったのよ!?
なんでそんなに暗いのよ!?
オープンキャンパスも上手くいって!これからもっと頑張ろうって時じゃない!」
そう叫ぶと穂乃果は立ち止まり、黙って俯く。
私はなんて声をかければいいのかまったくわからない。
瞬間、私はこんなことを口にした。
「アイドルショップでも行かない?」
とにかくどうにか状況を変えなければと、私なりに精一杯考えて口走った一言。
穂乃果「じゃあ行こっか!」
にこ「え?あ、じゃ、じゃあむこうのお店に…。」
穂乃果の反応は思ったよりも良くて、意外だった。
しばらくの間、完全に暗くなった道を黙って歩く。
さっきまで泣いていたクセに、わけがわからない。よくわからない展開に少し足が震える。
私から口を開いても、穂乃果は自分のことを何も語らない。
ラブライブのこととか、好きなスクールアイドルのこととかを話す。
その度に可愛くにこにことしているが何故泣いていたのか触れられなかった。
アイドルショップに着くと途端に元気になって、
「この子雑誌で見たー!」とか「あ、これすごい可愛く写ってるよ!」とか。
まさかアイドルショップで私が連れ回されるとは。
リラックスしているならイケるか…?と考えた私は聞いてみた。
にこ「楽しそうね。」
穂乃果「やっぱりここに来るとテンション上がるねっ!」
にこ「で、なんで今日いきなり泣いたのよ?」
穂乃果「いや…それはね…。」
にこ「気を悪くさせるのは承知の上だけど聞かせてもらうわよ。」
にこ「ゲーセンも、学校に来れないってことはスクールアイドルもやめるわけ?」
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