乱数値のぶっこわれたバカゲー。
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第3作【モバマス時代劇】一ノ瀬志希「及川藩御家騒動」
第4作【モバマス時代劇】桐生つかさ「杉のれん」
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読み切り
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貧しい流浪の武士、三村かな子はわびしい気分だった。
なけなしの金で注文した蕎麦は、飯茶碗ほどの量。
しかも味が薄い。さらに蕎麦の質も悪い。
それに対して、正面の兵士の蕎麦。
大盛りである。くわえ海老が二本乗っている。
かな子の錯覚か、ほのかに輝いているように見える。
よだれを垂らして見つめていると、
相手がじろりと睨んできた。
かな子はふっと目をそらした。
相手は、飛ぶ鳥落とす北軍の兵士である。
大和は南北に別れていた。
だが合戦は北軍が有利で、主要な都市はすべて抑えられていた。
南軍はその数を減らし、現在は敗走状態である。
かな子はどちらにも属していなかった。
討ち死にするのが怖い。
だがなによりも、飯を食えなくなるのがもっと怖い。
北軍の兵士は蕎麦を食い終えると、金も払わず出て行った。
こういう振る舞いは少なからず住民の反感を買っていた。
さらに北軍は各地から兵糧をかき集め、
いくつもの地主や百姓を没落させたという。
恨みは多いが、誰も口には出せぬ。皆命が惜しい。
かな子はさっと、兵士のどんぶりを自分の方に寄せた。
天かすがまだ残っている。そばの切れ端も。
それらは海老のうまみがしみて、たいそう美味かった。
だが、かな子はすぐに虚無感に襲われた。
ひどくわびしい気分である。
さらに、半端に食べたせいで、空腹感がより増した。
だが金がない。どうしよう。
かな子は、ちらりと自分の刀を見た。
その日の夜更け、かな子は鰻屋に強盗に入った。
季節は秋口。
鰻にあぶらがのって、たいそう美味い時期である。
どうせやるなら大物、そういう心算であった。
さすがに斬るのは忍びなかったので、脅すに留め、
首尾よく、まるまると太った鰻を手に入れた。
しかし捌き方もわからず、泥抜きもしなかったので、
出来上がった串焼きはひどい味だった。
なんたる、くたびれもうけ。
その数日後、かな子は仰天した。
鰻屋家族が牢に入れられていた。
聞くところによれば、北軍大将に献上する鰻を逃してしまったという。
かな子は、しばらく食欲が失せるほどの罪悪感に襲われた。
自分の責任である。
食い意地を張ったばかりに、一つの家族を獄門に送ることになろうとは。
しかも、鰻屋は“奪われた”とは言っていないらしい。
鰻屋は被害者どころか、かな子の命の恩人である。
飯が食えなくなるのは、怖かった。
しかしここで立ち止まれば、武士ではない。
かな子は牢に忍び込んだ。
そこで、鰻屋家族を解放することに成功した。
しかし場所は北軍のお膝元。
かな子1人ならまだしも、
鰻屋家族を連れては逃げられない。
考えあぐねていると、他の牢人達が、
かな子の方を小犬のような目で見た。
上役に煙たがられた武士。
北軍に借金を踏み倒された挙句、
獄にまで入れられた商人。
南軍の指揮官。
みな哀れであった。
毒を喰らわば皿までよ、とかな子は全員を解き放った。
そして、彼女らと共に脱出することにした。
関所を力ずくで突破し、かな子達は山に逃れた。
ちょうど北軍の兵舎が見下ろせる位置であった。
ひとしごと終えた、とかな子はどっかり腰を下ろした。
北軍の兵士に顔は見られていない。
街で口笛を吹いていようが、
せせっこましく蕎麦を食っていようが、かな子の自由である。
やれやれ、とかな子が周りを見渡すと、
人数が足りないことに気づいた。
上役に嫌われたという、暑苦しい女がいなかった。
どこへいったのか、とかな子が思っていると、
北軍の火薬庫が突如爆発し、辺りを煌々と照らした。
かな子が呆然と立ち尽くしていると、南軍の指揮官が肩に手を置いた。
この事はあらかじめ仕組まれたことであったらしい。
北軍の大将は、賊軍が現れたという情報を耳にした。
人数は2000人程度。
北軍が駐留していた町を占拠し、一勢力を築いているという。
しかし北軍の大将は、慌てなかった。
こちらの軍勢は18万。兵、とくに鉄砲隊が精強である。
鈍と鍬で武装した賊軍に、なんとかできるものか。
高笑いしながら、将軍は酒をすすった。
三村かな子は震えあがった。
自分の人相書きが、賊軍の指導者として
全国に出回っているらしい。
一刻もはやく逃げ出せねば。
そう思って立ち上がるかな子の袖を引くのは、
茶碗いっぱいの飯である。
賊軍とはいえ大将格、出される食事は立派である。
それを食っていると、明日でもいいかという気になる。
この集団を抜け出せば、かな子は再び流浪の貧乏暮らし。
せいぜい今のうちに腹一杯食って、
覚悟が決まったら逃げ出そう。
そうやって、明日、また明日と時間が過ぎていった。
北軍の大将は眉を顰めた。
賊軍が、敗走していた南軍と勢力を糾合して、
2万人にほどに増えたそうである。
こうなると、いかにこちらが数で
優っているとはいえ看過できぬ。
北軍の大将は、自身の軍勢を三村軍に差し向けた。
負けることはなかろう。
北軍の大将は、顔をしかめながら酒を啜った。
三村かな子は、逃げる機会を完全に逸していた。
飯を食って、たまに昼寝して、
また飯を食っているうちに、
周囲は、かな子を三村軍の大将として祀り上げていた。
「三村さまー!!!」
「三村さまー☆」
「三村ちゃまー!」
かな子は、自分を慕う者達に四六時中取り囲まれている。
そして、仮に逃げられたところで待っているのは、
北軍からの執拗な追跡である。
かな子は大将飯を食いながら、さめざめと涙を流した。
それを見た側近達は、
「大将にもっと旨い飯を食わせねば」と奮起した。
かな子の指揮能力は低い。むしろ、無能と言って差し支えない。
だが、飯をたいそう美味そうに食うので、
それが周りの庇護欲求を誘うのであった。
周囲の視線は、さながら母鳥である。
北軍の大将は衝撃を受けた。
三村軍の勢力が、14万ほどに膨れ上がったそうである。
聞くところによれば、かつて捕らえた
南軍の城ヶ崎美嘉が
民衆に演説を行って兵をかき集めているという。
特に、北軍に虐げられていた百姓達などが、喜び勇んで
三村軍に参加している。
だが、まだこちらが数では優っているし、
訓練も実戦も積んでいる。
運が三村軍に味方せぬ限り、負けることはない。
北軍の大将は、震える手で酒を煽った。
三村かな子は、座敷でくつろいでいた。
だが、内心はやけっぱちであった。
もうこうなれば、運命を天にゆだねるしかあるまい。
兵隊の管理も訓練も、
側近がやってくれているので、
かな子に仕事はない。
せいぜい北軍に敗れるまで、
たらふく旨い飯を食うのみである。
ゆったり泰然と構えるかな子。
周囲の側近達は、「大将としての風格が出てきた」と、
感慨を深めていた。
北軍の大将は高笑いしてた。
勝利ではなく、絶望の笑いであった。
三村軍の兵力は、現在50万。
破った北軍の指揮官を助命し、
登用することで勢力を拡大しているらしい。
さらに櫻井桃華なる商人が、洋国から最新式の鉄砲と船を
無償で借り受けたという。
見返りは、幕府樹立後の交易権の確立。
つまり三村軍は勝利を確信していることになるのだが、
北軍の大将はすでに立てる腹もない。
そういう状況である。
その後、三村軍は北軍を正面から叩き潰し、
あれよあれよという間に京に上った。
そして朝廷を包囲し、
三村かな子は征夷大将軍の官位を授与された。
これが三村幕府のはじまりであった。
三村かな子は有能な側近に恵まれ、よい治世を行った。
病気も怪我もなく長生きしたが、
晩年餅をのどに詰まらせて、
惜しまれつつ亡くなった。
人々はかな子のことを、「食い意地将軍」と呼んで、
後の世まで語り継いだそうな。
おしまい。
お前のせいで雑談荒れてんだよいい加減にしろ
>>30
うん。
デレマス時代劇はみんな読み切り。
実験作でもある。
これは日本昔ばなしチックにしたかった。
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