ヴィーネ「ガヴに婚姻届を書かせる」 (33)
ーー学校ーー
ガヴ「おいーっす、ヴィーネ」
ヴィーネ「ちょっとガヴ、また遅刻?せっかく朝も起こしに行ったのに……」
ガヴ「いやー、ごめんごめん。ちょっと時間に余裕あったから、ついゲーム始めちゃってさ」
ヴィーネ「まったく……いつか先生に呼び出されても知らないわよ?」
ガヴ「んー、まぁ大丈夫っしょ。授業には間に合ってるし」
ヴィーネ「だからってねぇ……」
サターニャ「んなーっはっはっは!ガヴリール!随分とのんびりとした登校じゃない!」
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ヴィーネ「あら、サターニャ」
ガヴ「うわっ、出た」
サターニャ「『出た』ってなによ!人を何だと思ってるのよ!」
ガヴ「朝からうるさいな……」
サターニャ「ふん!悪魔たるもの、常に100%の実力を発揮するものよ!ヴィネット、そうよね?」
ヴィーネ「え?うーん……まぁ、元気が良いのは良いことかもね」
ラフィエル「みなさん、おはようございまーす」ニョキッ
ヴィーネ「ラフィ!?」
ガヴ「どっから湧いて出てきたんだお前」
ラフィエル「サターニャさんのあるところ、ラフィエルありですから。ね、サターニャさん?」
サターニャ「な、何言ってんのよ!また何か企んでるの!?」
ラフィエル「私がサターニャさんにそんなことするはずないじゃないですかー」
ガヴ「いや、いつもやってるだろ」
ラフィエル「そうでしたっけ?記憶にありませんねー」
サターニャ「ぐぬぬぬ……」
ヴィーネ「はぁ……ホント、相変わらずね。あら?」
サターニャ「ヴィネット、どうしたの?」
ヴィーネ「サターニャ、ちょっといい?」スッ
サターニャ「え?」
ラフィエル「?」
ヴィーネ「ほら、ネクタイ曲がっちゃってる。直すからそのまま大人しくしてて」
サターニャ「え、ええ」
ラフィエル「…………」ジーッ
ヴィーネ「うん、これでいいわね」
サターニャ「……あ、ありがと」プイッ
ヴィーネ「どういたしまして」
ラフィエル「……………………」ニコニコ
ヴィーネ「サターニャも身なりには気を付けなきゃダメよ」
ガヴ「別によくね?サターニャだし」
サターニャ「うるさいわね!」
ラフィエル「……あ、急にめまいがー」
サターニャ「え?」
ラフィエル「わー、くらくらしますー」ヨロッ
サターニャ「ちょっ!なんでこっちに倒れかかってくるのよ!」
ラフィエル「あー、ごめんなさいサターニャさんー、めまいがー」
サターニャ「重い!ちょっと、離れなさいよー!」
ギャーギャー ワーワー ヒラッ
ヴィーネ「あれ?ラフィ、なんか落としたわよ?」
ラフィエル「え?……あっ!」
ヴィーネ「天界に提出する書類?」ガサガサ
ラフィエル「そ、そうなんですよー」
サターニャ「? どっかで見たことあるような」
ヴィーネ「へー。って、これ……」
ラフィエル「…………っ!」パシッ
ヴィーネ「きゃっ!」
ラフィエル「あ、す、すいませんヴィーネさん!」
ヴィーネ「ううん、こっちこそごめんね。勝手に見たりして……」
キーンコーン
ガヴ「あ、予鈴。ちぇっ、もう少しでクリアだったのに」ゴソゴソ
ラフィエル「そ、それじゃ、私は自分のクラスに帰りますねー」ソソクサ
ヴィーネ「あっ、ラフィ!ちょっと」
ガヴ「ヴィーネ、授業始まるよ?席付かないと」
ヴィーネ「う、うん……」
ガヴ「ヴィーネには私の代わりにノートを取るっていう重大な役目があるんだからさ」
ヴィーネ「自分で取りなさいよ」
ガヴ「えぇー、めんどい」
サターニャ「ノートなんて適当でいいのよ、適当で!」
ガヴ「……サターニャ、後ろ」
サターニャ「へっ?」
グラサン「…………」
~~~~
ーー放課後・喫茶店ーー
ヴィーネ「わざわざ呼び出してごめんね、ラフィ」
ラフィ「いえいえ、おかまいなくー」
ヴィーネ「その……朝の紙のことなんだけど」
ラフィ「やはり、ご覧になってましたか」
ヴィーネ「ええ……記入済みの、ラフィとサターニャの婚姻届」
ラフィ「はい。……悪魔として、その様なことは許せないということですか?」
ヴィーネ「……違うわ」
ラフィ「それでは、一体……」
ヴィーネ「あれ、どうやって書かせたの!?」
ラフィ「え、ええー?」
~~~~
ーー二日前・サターニャ家ーー
サターニャ『うぅー……』
ラフィエル『サターニャさん、お困りですか?』
サターニャ『まったく、なんでこのサタニキア様がこんなめんどくさいもの書かなくちゃならないのよ……』
ラフィエル『なるほど、魔界に提出する書類ですか』
サターニャ『そうよ。フリガナはカタカナで書かないとダメだとか、生まれ年の書き分けとか、めんどくさくて……って、ここ私の家よね!? いつの間に入ってきたのよ!』
ラフィエル『ああ、おかまいなくー』
サターニャ『私が構うのよ!なんであんたがいるのよ!』
ラフィエル『天使ですから』
サターニャ『答えになってないわよ』
ラフィエル『それよりサターニャさん。書類の書き方でしたら、ちょうど私が使わない書類を持っていますので、これで練習してみてはいかがですか?』
サターニャ『練習ぅ?……そうね、やってみようかしら』
ラフィエル『はい。では、こちらを』スッ
サターニャ『えーっと、字が細かいわね。あんたの名前も書いてある』
ラフィエル『ええ。二人で書き込むことで効力を発揮する書類ですから』
サターニャ『ふーん、そういうのもあるの』
ラフィエル『ではまずここに名前と、ここに住所をお願いしますね』
サターニャ『名前と、住所ね』カキカキ
ラフィエル『この下の欄には、本籍をお願いします。サターニャさんの本籍は、ご実家の住所になってるはずですね』
サターニャ『ややこしいわね』カキカキ
ラフィエル『この欄に、お父様とお母様の名前を書いてください。『続き柄』というところには『長女』とお願いします』
サターニャ『ふーん』カキカキ
ラフィエル『で、ここにチェックを入れたあとこの欄にとりあえず今日の日付を。最後にここにもう一度サターニャさんの名前を書いて、電話番号を書けば終わりです』
サターニャ『はいはい』カキカキ
ラフィエル『はい、これであとはお父様とお母様に署名してもらえばこの書類は完成です』
サターニャ『へー、やってみれば案外簡単なもんね』
ラフィエル『あっ、サターニャさん!』
サターニャ『なによ、どうしたの?』
ラフィエル『これ、婚姻届でしたー。サターニャさん、私と結婚したかったんですか?』
サターニャ『は、は、はぁぁ!? だって、あんたが渡してきたんじゃない!』
ラフィエル『間違えちゃいました。てへっ』
サターニャ『ちょっと、よこしなさいよ!』バッ
ラフィエル『えー、なんでですかー?』サッ
サターニャ『あんたにそんなもの持たせておいたら、何に使われるかわからないじゃない!』バッ
ラフィエル『そんなことするわけないじゃないですかー』サッ
サターニャ『ちょっと!』ガバッ
ラフィエル『ああっ!そんな……結婚早々DVだなんて、ひどいですー』サッ
サターニャ『だ、だだ、誰が結婚なんてするのよ!』
ラフィエル『そうは言っても、ここに二人の名前が書いてありますよ?あ、な、た』
サターニャ『や、やめなさいったら!』
~~~~
ラフィエル「というわけでして。別に本当に提出するつもりで用意したものでは……って、あれ?ヴィーネさん?」
ヴィーネ「ガヴって案外用心深いから、他の書類に紛れて書かせるのは難しいかもしれないわね。となると上に別の紙を張り付けるとか……いや、いっそ催眠術……そんなことできるわけない、か。じゃあ別の手として……」ブツブツ
ラフィエル「あ、あの?ヴィーネさん?」
ヴィーネ「ああ、ごめんねラフィ。ちょっと考え事してたわ」
ラフィエル「そ、そうですか……」
ヴィーネ「ありがとうラフィ!婚姻届を書かせさえすれば、あとは提出するだけでガヴと結婚できるってことね!」ガタッ
ラフィエル「は、はい。そうですねー」
ヴィーネ「早速ガヴの家に行かなきゃ!じゃあねラフィ!」タタッ
ラフィエル「え?ヴィ、ヴィーネさん?……行ってしまいました。私の分のお会計まで済ませて」
~~~~
ーーガヴ家ーー
ガヴ「はー、こいつほんとつっかえ……なんでそのタイミングで回復しちゃうかな……」カタカタ
ヴィーネ「ガヴー?入るわよー?」
ガヴ「うーい」カタカタ
ヴィーネ「まったくもう、やっぱりゲームしてたのね」
ガヴ「えー、別にいいじゃん」
ヴィーネ「ダメよ。今日は宿題のプリントが出てるじゃない。ゲームはそれが終わってから」
ガヴ「……ヴィーネ、写させて?」
ヴィーネ「いいわよ」
ガヴ「はぁ!? マジで!?」
ヴィーネ「ええ。それじゃ、早速取りかかりなさい。はいこれ、私のプリント。それとこれがガヴのプリントね。私のプリントに書いてあることを、そのままガヴのプリントに書き写せばいいから」ニコニコ
ガヴ「やった!ありがとヴィーネ!……ん?」
ヴィーネ「ほらほら、早く」ニコニコ
ガヴ「いや、あのー、ヴィーネさん?」
ヴィーネ「どうしたの?早く終わらせて、ご飯にしましょ?」ニコニコ
ガヴ「いや、これ。このプリント。宿題じゃないんだけど」
ヴィーネ「ええー?そんなわけないじゃないー」
ガヴ「ってかこれ、『婚姻届』って思いっきり書いてあるし」
ヴィーネ「あ、あら。間違えたわ」
ガヴ「まったく、ヴィーネはそそっかしいな。ほら、早く宿題のプリント見せてよ」
ヴィーネ「それはダメ。自分でやりなさい。終わるまでゲームは没収よ」
ガヴ「えー……」
ヴィーネ(失敗したわね……でも、まだ他にも手は)
ガヴ「あー、終わったー。疲れた……」
ヴィーネ「ガヴ、お疲れ様」
ガヴ「さーって、続き続きと」
ヴィーネ「私は晩ごはんの準備するわね。キッチン借りるわよ?」
ガヴ「あー。勝手に使っていいよ」
ヴィーネ「ガヴ、何か食べたいものある?」
ガヴ「んー、なんでもいい」
ヴィーネ「ガヴったら。それが一番困るんだから」
ガヴ「ヴィーネの手料理ならなんでもいい」
ヴィーネ「もー、調子いいことばっか言って」テレテレ
ガヴ「じゃ、出来たら呼んでね」
ヴィーネ「あ、ちょっと待って。少し手伝ってもらえるかしら」
ガヴ「うぇー。マジかよ……」
ヴィーネ「ガヴも食べるんだから。ほら、こっち来て」
ガヴ「ちぇー」
ヴィーネ「はいこれ、卵。割ってこっちの器に入れて」
ガヴ「ん」
ヴィーネ「はいこれ、レタス。適当な大きさにちぎって」
ガヴ「うい」
ヴィーネ「はいこれ、婚姻届。必要事項を記入して私にちょうだい」
ガヴ「ちょっと待て」
ヴィーネ「えっ?」
ガヴ「なんで当たり前のように婚姻届渡してきてんの?」
ヴィーネ「流れで書いてもらえるかと思って……」
ガヴ「いや、書くわけないじゃん」
ヴィーネ「やっぱり?」
ガヴ「うん」
ヴィーネ「そう……」
ガヴ「そりゃそうだよ」
ヴィーネ「そっか……」
ガヴ「当たり前だろ」
ヴィーネ「…………」
ガヴ「…………」
ヴィーネ「ガヴ、婚姻届」
ガヴ「書かない」
ヴィーネ(この作戦もダメとなると……)
ヴィーネ「ガヴ、占いゲームをしましょう!」
ガヴ「占い?なんで?」
ヴィーネ「人間界の勉強と思って、ほらほら」
ガヴ「……まー、いいけど」
ヴィーネ「じゃあ、占いに必要なデータをここに書き込んでね」
ガヴ「……うん、だからこれ、婚姻届だよね」
ヴィーネ「まさか!占い用の用紙に決まってるじゃない!ここに名前を書き込んだ二人の相性を占ってくれる優れものよ!」
ガヴ「出来れば夫婦になる前に知りたいかな」
ヴィーネ「もー、ガヴったら。いい加減書いてくれてもいいじゃない」
ガヴ「いや、意味わかんないんだけど……ってかヴィーネもさ、こんな風にバカ正直に渡すんじゃなくてさ、もっと別の書類に偽装して渡すとか、なんとかして私の意識がないうちに書かせるとか、私の筆跡を真似て書いちゃうとか、いろいろと方法はあるんじゃないの?」
ヴィーネ「それは……そりゃガヴの筆跡くらい完璧に真似できるけど」
ガヴ「マジかよお前すごいな」
ヴィーネ「でも、それじゃ意味がないじゃない。あくまで婚姻届、ってわかった上でガヴに書いてもらわないと」
ガヴ「なんなのその妙なこだわり……だいたい、なんで私なわけ?ヴィーネならさ、もっといい相手とかこれからいくらでも現れるでしょ。私駄天使だよ?堕落しちゃってるよ?」
ヴィーネ「そんなの、決まってるじゃない」
ガヴ「え?」
ヴィーネ「私はガヴが好き。他に理由がいるの?」
ガヴ「理由って……そりゃ……」
ヴィーネ「ガヴが好き。だからずっと一緒にいたい。だから結婚したい。それじゃダメ?」
ガヴ「ダメって……いや、別にダメじゃ……ないけどさ……」
ヴィーネ「ね、ガヴ。ガヴは私のこと好きじゃないの?」
ガヴ「すっ……好き……だけど……ああもう!ヴィーネ、その紙貸して!」
ヴィーネ「え?ええ」
ガヴ「ーーーっ」カキカキカキカキ
ヴィーネ「ガヴ……!」
ガヴ「はい。これでいいでしょ。あとはヴィーネの好きにしていいよ」ペラッ
ヴィーネ「本当に、いいの?」
ガヴ「……まー、私もヴィーネとずっと一緒にいたいしさ。それでヴィーネが幸せなら別にいいかなって」
ヴィーネ「ありがとう、ガヴ……」
ガヴ「んじゃ、私ゲームに戻るから」
ヴィーネ「うん……わかった」
ガヴ「ん。……あれ?ヴィーネ?なんでこっちに近づいて来るの?」
ヴィーネ「だって今、『好きにしていい』って」
ガヴ「いや、それはあくまであの紙の話であって……」
ヴィーネ「好きにしていいって。ガヴが好きにしていいって言ってくれた……これってつまり、そういうことよね」
ガヴ「え、いや、違うけど」
ヴィーネ「大丈夫。私、全部わかってるから」
ガヴ「え、ちょっ、やめ、ちか」
ヴィーネ「ガヴーーーー!」
ガヴ「く、来るなーーー!」
おわり
ヴィーネちゃんのバブみはすごいなしかし
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