勇者「幼馴染がすごくウザい件」 (98)
・100レスほどで終わればいいなと思ってます
・通常sage進行で行います
・エロやグロ主体ではありませんが、エロはあります
暑い夏の日だった。
バンドギア王国の郊外、ど田舎のミルー村でギラギラと照りつける太陽の下、ミラは前歯でアイスクリームのコーンを噛み砕いた。
巻き紙の部分をまわし、外周をかじっていく。内側のアイスを吸い舐め最後のコーンを口に放り込むと両手を打ち鳴らした。
ミラ「カケル、面白いものを見せてあげる」
整った切れ長の一重の目をチラリと向けて、眉をひそめる俺に含みをもたせてこう言った。どうせろくでもないと訝しみながらも、誘いに乗ることにした。
しばらく無言で歩きながら、やるせない気分のまま、ぼんやりと視線を流れる景色に向ける。
俺の気持ちは、いつも深い霧に包まれているようだった。
なぜ、こいつの家の近くに生まれたのだろう。
なぜ、こいつにいつも振り回されるのだろう。
なぜ、こいつは、こんなにも! 自己中心的なんだ!!
注意しておく。俺は別段、どこか体調がすぐれないわけでもない。ましてや精神を病んでるわけでもない。
一見して見れば絶世の美女とも見間違えるほど、ミラの容姿は整っている。うらやましがる物好きな連中がいるのも俺は知っている。
しかし、俺が我慢できないのは、ミラの傍若無人な振る舞いだ!
誰か! 変われるなら変わってくれ!
ミラには、もっとふさわしい世界があるはずだと俺は思う。
どんなに絶望的な状況も切り抜けられる、さながらの尻に火がつく事態も、けっして自暴自棄になることもなく、自己邁進して我が道を突き進む。
そんな漫画のような世界がミラには合ってるんだ――。
こんな、毎日を惰性に身を任せている俺とは違う。
何度も何度も逃げようとした。
ある時は――。
カケル『今日は用事が……』
ミラ『なんの用事? 終わるまで待ってあげる!』
また、ある時は――。
カケル『(よし、いないな……)』
ミラ『カケルっ!! ……なに驚いてるの?』
カケル「(お前から逃げようとしてたんじゃボケェっ!!)」
このように、ミラから逃げようとともがくほど、否応なく気がつかされたことは、恐ろしい勘で先回りされ、いつのまにか側に立っている。そんな状況だった。
カケル「…………」
ミラ「フンフ~ン♪ ねぇ、私ね、新しい魔法を覚えたの」
カケル「そう……」
ミラ「カケルってあいかわらす無口よね」
余計なお世話だ。俺は、元来、人と喋るのが苦手だ。
だから、ミラに限らず、自分の両親相手でさえ、二言で済ませることが多い。
例えば「ああ」「そう」「うん」など。
……って、頷いてばっかりじゃんか、俺!
呆れ顔のミラが先を歩く後ろ姿を見つめるままに、細い路地の角をまがり進むと開けた草原が目の前に広がっていた。
一本の巨木。
大きく枝葉を広げた木が、幅の狭い道のほぼ半分を塞いでいた。その手前には、木の根元に寄り添うように、小さな石像がひっそりと構えている。
ミラ「ここまで来ればいいかな……じゃあ、カケルはそこで座って見てて」
ちょこん、と座り、はやく終わってくれと見上がる格好の俺に、ミラは得意気に鼻息をフンスと気合いをいれる仕草をだす。
ぼとなくして、ゆっくりと、ミラは瞼を閉じた。
ミラ「マナよ……火の精霊よ………」
恐らく、精神統一に入ったのだろう。
魔法を使うには、内にある体内の気と自然界にいる精霊とのエネルギーを杖というバイパスで繋ぎ練り上げなければならない。
魔法を使える=それができる人というわけ。
俺なんか普通の人間はできる気さえしない。
10000人に1人ができたらいいぐらいの話で希少価値はある。
ミラは魔法の面でかなりの才能があるらしく、王国からミラの為だけに視察団が来たぐらいだった。
信じられるか? 王国からだぞ。近いわけでもないこんなクソ田舎に。
ミラ「……風の音……火の音……」
火の粉がミラのまわりにポツポツと集まりだした。
それは、綺麗だった。
それは、神秘だった。
ミラ「カケル! よーく見ててね!」
不敵な笑みを浮かべるミラに、瞬間、なにか、身震いをしてしまうかのようなゾワっとした悪寒が走る。
異様な気配を感じ取り、俺は金縛りにかかったように足が動かなくなった。
カケル「(ま、まさか、またなのか⁉︎」
額や胸、背中から汗が吹き出す。鳥肌が二の腕を走る。
見る間にぐっしょりと濡れそぼった掌を服にこすりつけながら、俺は喘ぐように後ずさった。
――リンリンリン――。
――リンリンリンリン――。
耳が、というより脳がキーンと痺れるほどの鈴に似た音が近づいてくる。身体にフツフツと鳥肌がたちだした。混乱する思考のさなか、その気配の異常さを正確に捉えていた。
こいつはいつも、そうだ!
持て余し気味の力を披露する時にいつも、やりすぎる!
気配は秒刻みで、確実に迫ってきている。
絶望的な未来を直感してしまうほどのただならぬ雰囲気のする方角へと気づいたときには凝視していた。
――そして、豪炎が、世界を揺るがした。
カケル「うっ……!」
そこからは、スローモーションを見ている感覚だった。
身体は宙に投げ出され、視線は虚空を見つめている。
烈風が俺を襲った。
もがくように反射的に踏ん張ろうと腿に力を入れるが、どうにかなるものではなかった。砂利を巻き込み壁に叩きつけられる格好でようやく勢いは止まる。
カケル「がはっ!」
肺に停滞していた二酸化炭素が、衝撃で吐き出され、数秒の絶息が襲ってきていた。俺は搾り出すように嗚咽の言葉を吐いた。
カケル「お、ぇ、おぇぇ……」
吐き気を催し、よだれが糸をひく。這いつくばった不自然な姿勢のまま痛みに呻いた。なにをしているのか意識することもできず、軽い脳震盪でぼやけた視界の中、俺は信じがたい景色を眺めていた。
ドォンッ!!
と、火山が噴火するような爆発音と共に、視界いっぱいに天を貫かんとばかりの巨大な火柱が、前方の数メートル先に現れていたのだ。
カケル「(こ、これだから、こいつに付き合うのは嫌なんだ……っ!」
口の中を切ったらしく、否応なしに鉄の味が舌に絡む。
ミラを取り巻くように荒れ狂った光景は、辺りの景色を紅蓮の炎で焼き尽くし、周囲を真っ赤に染め上げてゆく。
ミラ「どぉ⁉︎ 凄いでしょ⁉︎」
よろよろと立ち上がり俺は息を呑み圧倒的な光景を唖然として見つめた。
まるで、神々の怒りか、はたまたこの世の終末を彷彿とさせる荒々しさだ。
カケル「……うん」
今すぐに、この場を離れ、まっすぐ行けるとこまで走っていきたい。すぐにでも逃げ出したい衝動に駆られているのに、足が動かない。
おまけに口下手な俺の言葉に気を良くしたミラは満足気に頷いていた。もちろん、お察しの通りの、満面の笑みで。
ただ、呆然と、なす術もなく見つめるしかない俺にミラが軽やかなステップで近づいてくる。
ミラ「また新しい魔法覚えたら見せてあげるね♪」
その声はまるで死神の鎌のような禍々しい鋭さを宿して俺の耳朶を打つ。
カケル「(誰か、誰か俺の幼馴染をなんとかしてくれ)」
これが、俺の毎日だ。
マアヤ「カケルちゃん、カケルちゃん」ゆさゆさ
カケル「……ん」
マアヤ「もう、ようやく起きた。寝坊癖はいい加減なおさなきゃね。ミラちゃんが下で待ってるわよ」
眉根を寄せて困った顔をしていた母さん。
母さんは俺より十数センチほど背は低いが、それでも、年上っぽい落ちついた雰囲気を纏っている。
肩より少し長い髪で、毛先がほんの少し内側に向かって曲線を描いている。目が大きいせいか、少しあどけない顔立ちだ。
カケル「うん……」
違う。俺は寝坊癖があるわけじゃない。
起きるのが億劫なだけだ。その理由は、起きればミラが待っているからに他ならない。
ミラ「カケル、先に朝食いただいてるわよ」
カケル「うん……」
マアヤ「いつもいつもごめんねぇ」
ミラ「いいえ、叔母様の作る料理がとっても美味しくて♪」
マアヤ「まぁ、この子ったら。ミラちゃんみたいな子がカケルのお嫁さんになってもらえないかしら……」
カケル「え……」
勘弁してくれ。そうなったら自[ピーーー]る。
ミラ「まだ私たち十代ですし、気が早いですよ」
マアヤ「まだってことは、その気があるの?」
ミラ「お、おば様……」
おい。なぜミラもそこで顔を赤くする。否定するところだろうが。
マアヤ「ふふっ。カケルも嬉しいわね?」
-学校 授業中-
浅いまどろみと覚醒とを繰り返していた。夢を見ているときも、それが夢であることを、はっきりと意識していた。こういうのを明析夢というらしい。
夢の中はとても暗かった。鉛のように重い身体を引きずり闇の中を逃げている。
――背後からミラの気配が追ってきていた。
ミラ『カケル! ねぇ、カケルってば!』
俺を呼ぶ声が聞こえる。
ミラは歪な笑みを浮かべて近づいてきていた。
先生「こら! なに寝とるんじゃ!」ゴチンッ
カケル「んぁっ?」
目だけでグルリと確認すると、先生が側に立っていた。
先生「まったく! お前はいつもいつもいつも、なんで寝てばかりで……」
カケル「(うっせーな。退屈なんだよ。授業が)」
ひそひそ、とクラスの間で陰口がささやかれはじめる。
先生「よいな、もう寝るなよ」
小言を言うのも諦めたようだ。通り過ぎた後、先生の忌々しげな吐息が肩越しに聞こえてくる。
ひどい猫背のまま、俺は目をこすると大きなあくびをした。
正面の時計にある温度計を見ると表示は、二十六度。少し暑い。
寝間下に着ていたワイシャツの袖口で首元に滲んでいる汗を拭った。
脱水症状や熱中症になってしまうほどではないが、喉が乾いたと、そうぼんやり考えて唾を飲み込み気休め気味に潤す。
「なんであんなやつにミラが……」
「きっとゲスな手段をとってミラを脅迫しているんだ」
思考をスリープ状態から復帰させるとまた陰口が、今度ははっきりと内容まで聞こえてきた。
カケル「はぁ~~~~……」
俺が付きまとわれているんだよ。しかし、落ちこぼれ同然の奴の言うことに耳を傾けるやつがいるだろうか。
答えは、否。
おまけに俺は病気かと疑うほどの口下手ときている。
思っていることの10分の1でも話せればまた別になってくるのだろうが、これでは、なにを言ったところで、他者のイメージを覆すことができないだろう。
――周囲の人達の視線が冷たい。
「……クズね」
女生徒の一人が、冷たく突き放すようにぼそりと呟いた。
カケル「(まぁいつものことか……)」
他人というものは容赦がなかった。
同情の視線を向ける者も中もおらず、ほとんどが顔を歪めている。
カケル「(友達でもいれば違うのかねぇ)」
俺にとって、こうした光景はめずらしいことではない。
心の中で念仏のようにミラと関わりたくないと願うことしかできないのだ。
普通ならノイローゼとかになってしまうかもしれない。
しかし、ミラと違うクラスであるこの授業中だけが、ミラを遠のくことのできる唯一の環境だというのを俺は噛み締め、平穏を感じていた。
- 学校 昼休み -
ほどなくして、昼食の時間になった。待っていたのは、さっそくのミラからのいびりだった。
ミラ「また居眠りしてたの?」
カケル「うん……」
ミラ「もう! なんでそんなに居眠りしちゃうの⁉︎」
カケル「(やかましいわボケカス)……うん」
ミラ「ダラしないんだから!」
はて、と窓ガラスでマジマジと自分の姿を見てみても俺は気がつけなかった。
そんな様子を見てますます険しい顔つきになったミラ俺の襟元を指す。どうやらミラは寝ていた時についたシワが気に入らなかったらしい。
カケル「……」
ミラ「まったく、カケルには私がいてあげないとダメね」
カケル「(いなくていいよ)」
ミラ「あ、そうそう、今週、祝賀祭の日に王都に行くのよ。カケルももちろん来るわよね」
カケル「え……?」
ふざけるな理不尽の塊。その日俺はゴロゴロする予定だったのに。
ミラ「どうしても一度王都に来てくれって言われちゃってさ。馬車で片道3時間ぐらいなんだけど」
ってことは往復6時間やんけ! そんなに付き合ってられるか、ここは丁重にお断りしよう。
カケル「ぼ、ぼく……」
ミラ「カケル? くるわよねぇ?」
その笑みは、断ることを許さないという意思表示が、ありありと滲んでいた。このクソアマ。
ミラ「なんか、勇者の選定もその日にあるらしいわよ。精霊神様が降臨なさるんですって」
なんだその胡散臭い響き。降臨ってなんだよ、なんで王都ヒイキしてんだ神様のくせに。
ミラ「あ、仮病使ってもだめだからね。私、魔法で治せるから」
――精霊でもなんでもいい。神様、助けてください。
- 4日後 王都 -
ミルー村の遥か十里の彼方。
東西南北の中心地にあるバンドギア城が構える王都。その商店街で俺は彷徨っていた。
商人A「さぁーやすいよやすいよ! 今日は精霊神様が降臨なさるお祝いだぁっ!」
街娘「あら? これもいいわね」
ガヤガヤ
カケル「(くっそー、こんな時に限って1人になるなんて……ていうか、迷子じゃん! 俺)」
人の波に押され、着ていたマントを脱ぎ肩にかけ、ズボンのポケットに入ったままの懐中時計を取り出して、鏡面にある数字を見る。
――時刻は午後三時三十八分。
カケル「(はぁ、このままじゃ帰りの馬車に間に合わない。ミラはどこにいるんだろう……)」
細い目で辺りを見ると、いつのまにこんなに近くに来ていたのか、先ほどは米粒大だった女の子が俺のの眼前に立っていた。
知性を感じさせる女性ーー。
まだ幼さの残る顔立ちには、綺麗というよりも可愛らしさを感じるものの、まつ毛が長く、目には意志的な光を感じる。
あと、数年すれば、かなりの美人になるだろう。
女性の視線を追うと彼女は、真剣なまなざしで、俺の顔を見つめていた。
カケル「(なんだ、この子?)」
観察されているのは明らかである。まっすぐと見つめらどうにも居心地がよくなくて頭をポリポリと掻いていると、赤い色の入った眼鏡を指で直しながら女の子は口を開いた。
○○「……私、ベニ」
カケル「うん?」
ベニ「勇者の選定なら、あっち」
ここでなんと言うべきか、俺の心は、揺れていた。咄嗟の事態にうまく頭がまわらない。
あ、そうだ。この子に道を聞けばいいんじゃないか?
カケル「あの……」
ベニ「……?」
ええい、忌々しい口め。道を聞くことすらまともにできんのか。
考えてみたら、言語が通じるのはいいが、どうやって馴染むというのか。いや、馴染む必要なんか、ないんだ。馬車乗り場までの道を聞ければ……」
ベニ「連れていってあげる」
必死に言い出そうと、口を開きかけた状態で手をひかれる。茫然として、開いた口がふさがらないまま、否定することができない……いや、否定しろよ。
カケル「あ、あのっ」
俺のバツが悪そうにしている表情を見て、女の子は申し訳ないと思っていると勘違いしているらしく……
ベニ「気にしなくていい」
と、にこやかに笑みを返していた。
- 大聖堂 勇者選定臨時会場 -
大理石の床に、金色の額縁にはいった絵画を見つめていた。ひとつひとつが緻密に計算されたであろう芸術を前に、感嘆とした息を漏らす。
カケル「(ふわぁ~~~すげぇ……つうか、どんだけ金かけたらこんなもん建つんだよ。教会なんて金の権化だな)」
しかし、なにからなにまでが見事というのも事実だった。お世辞抜きで、見惚れるとはこのことなのだろう。生まれて初めての経験だった。
ベニ「受け付けはあそこ」
なんの? と思わず聞き返そうとしたところで思考が冷静になり現実に引き戻された。
違うよ。俺は受け付けにしにきたんじゃないから。
まずは、誤解を早急に解かなければならないな……。
ジョル「――おや、ベニじゃないか。こんな所に来るとはめずらしい。明日は雪かのう」
ベニ「ジョル、ひさしぶり」
振り返ると、ジョルと呼ばれた老人は、無精髭の浮いた顎を擦って口元で笑った。
髪はほとんど白く、シワの目立つ手の甲には、黒っぽい斑点が無数にある。齢六十ぐらいだろうか。目を細めて微笑で頷いていた。
ジョル「そちらの子は?」
ベニ「勇者の選定に来た子」
ジョル「ふむ……?」
ほどなくして、ジョルの顔色が呆れたものに変わる。
ジョル「少年。夢を見るのはかまわんが、君には才能がないように見えるのぅ」
カケル「(才能ないのは俺だってわかってるよ)」
ベニ「……そう見えるのは、ジョルの目が節穴。私が推薦状を書く」
ジョル「なんじゃと? それほどまでに?」
カケル「…………」
ジョル「ふぅむ、ワシにはどこからどう見ても普通より劣る少年にしか見えんが……」
ベニ「この子は、普通の目で見てはだめ。精霊を通して見てみて」
ジョル「……うぅん? どれどれ」
ジョルは杖を取り出し顎先に当てはじめた。
勝手に盛り上がっているところ悪いが、ただの村人Aなんかほっといてくれ! 俺はここを離れて場所乗り場に行きたいんだよ!
ジョル「――……こ、この子は……」
ベニ「ね?」
ジョル「なんということじゃ。全精霊からの加護とは……ワシの目はたしかに節穴じゃった」
ベニ「わかったならいい。さ、行こう」
ジョル「待て、ワシも付いていこう。王宮魔術師二人の推薦ならば選定をはやめてもらえるじゃろうからな」
深く、深く、肺に空気を取り込み、すこしの間を置いてため息を吐き出す。
王宮魔術師がこんな所にいるわけがない……詐欺師かな。仕方ない、この人達に聞くのは諦めて、選定だけ終えたら馬車乗り場をはやく探そう。
我々は精霊神さまの御許に抱かれ、皆平等なのだ。
さあ、互いに手を取り、楽園への道を歩もう。
小鳥は歌えり 林に森に
見交わす われらの明るき笑顔
吹く風さわやか みなぎる日ざし
心は楽しく しあわせあふれ
響くは われらのよろこびの歌
バンドギア王国〈歓喜の日 一節〉
カケル「(虫唾が走る。嫌いなんだよな。こういう唄)」
大聖堂大広間。
咽せるような埃と塵が陽の光に照らされ、まるで粒子のような輝きで舞っている。
椅子に腰を落ち着かせたまま目線を向けると、教徒である司祭達が唄の合唱を行なっていた。
俺は、教会にはよっぽどの用事がないと近づこうとしない。なにも信徒を否定しているわけじゃない。神様信じてますっていうのが合わないからだ。
カケル「はぁ……」
俺にしてみれば税を尽くした贅沢な空間にしか見えないし、芸術はわかるが広大な物置ぐらいの感覚しかない。
大司祭「これは、これは。ベル様にジョル様ではございませんか」
ジョル「司祭。久しぶりじゃな」
ベル「久しぶり」
大司祭「本当に何年ぶりになりますやら、他の方々もやはり特別な日なのですね」
ジョル「他? なんじゃ、誰かおるのか?」
大司祭「えぇ。大陸中から高名な魔法使い様方が集まっておられます。お二方を含む五大魔術師様方が勢ぞろいしておられますよ」
ジョル「なんじゃと? あのワガママ娘達まで……」
ベル「そっちだと都合がいい。手間がはぶけた」
この人が大司祭というのも、嘘なのだろう。厄介な詐欺師に捕まったもんだ。
大司祭が広間にいるわけがないし、五大魔術師といえば、ミラなんかよりもっと上。雲の上、月とスッポン。この人達がその二人? そんなわけがない。
カケル「……あの」
ジョル「どうした、少年」
カケル「僕、もう18です」
ジョル「お、おぉ? もうそんなに? 童顔なんじゃな」
ベル「意外。私と同い年」
ジョル「まぁ、少年も些細な違いじゃろ」
些細だと言うのならばどうしてそんな無理に作った笑顔を浮かべているジジイ。
文句を言おうと口を開きかけるが、言葉は言葉にならずに舌先で解れてゆく。
忌々しいのはこの口だ、あぁ、忌々しい。
大司祭「こちらは……?」
ジョル「ワシとベルからこの子を推薦したい」
大司祭「は?」
ベル「はやく、選定をしてあげてほしい」
大司祭「お二方からっ⁉︎」
大司祭は、ただ無暗に驚いて、感心して、疑って、躊躇していた。百面相を1人で繰り広げている。
大司祭と向い合ったまま黙って突っ立っていた俺を見て我に返る。演技乙。
大司祭「その、選定には、万を超える人数が参加しております。ご存知でしょう?」
ベル「知ってる」
大司祭「受け付けと順番は公正な手続きを踏まえていただかないと困ります。いくらお二方といえど、不正は……みなさん、何日も待っておられますし」
ジョル「この子が女神様とお会いすれば意味はなくなるんじゃよ」
大司祭「はぁ?」
ベル「……五大魔術師全員からの要請ならどう?」
ジョル「なんなら国王様からでも……」
大司祭「は、はぃぃぃっ⁉︎」
ベルにとんでもないことを言われ、目を白黒させながら俺のことをまた、二度三度見上げしていた。あまりに異常な事態に、異様とも言える光景に、大司祭はただ、ただ呆然と立ち尽くしているように見える。
はっはっはっ、もうなんか迫真すぎて演技に見えなくなってきたぞ、壮大な騙し方だな。
フラン「なんの話?」
話に割って入ってきた声に目をやると、キリリとした立ち姿で腰に手を当てている女の子がいた。黒眼勝ちの眼が強い意志を感じせる、綺麗な女の子と云っても、決して誇張ではないだろう。
カルア「お姉さま、あの、あぅぅ」
側でただずんでいる少女がいたのは意識の外だったが、お姉様と呼んでいることでようやく気がつく。
対象的に、もう一人いた。この少女もまた、人形のような容姿をしていた。品よく金の髪を巻いておりよく整っている顔立ちといえるだろう。
並んで立つ佇まいは、人形を思わせる。
ベル「ちょうどいい。フラン、カルア、この子を見て」
フラン「はぁ?」
ジョル「見てもらった方がはやいからの」
カルア「……普通の、子に、見えます……」
フラン「……っ⁉︎ こ、この子っ⁉︎ まさかっ⁉︎」
カルア「お姉様……?」
フラン「カルア、第三の目で見て」
カルア「んん……はい。……あぁっ⁉︎」
やばい。これはいかんですよ。
なんていうんだっけ、こういうの。次から次に仲間を呼んで逃げられない状況を作るの。ネ○ミ講だっけ。
どうしよう、今すぐに逃げだすべきか。
フラン「私などが精霊を見てしまってことを深くお詫びいたします。失礼いたしました。勇者さま」
カルア「ごめ……っ!」ペコペコッ
大司祭「ゆ、ゆうしゃぁっ⁉︎ ……あっ……」ドサッ
ジョル「おお、情けない。これぐらいで気を失ってしまうとは」
ベル「フラン、この子……この人は大丈夫。私が見てもなにも怒らなかった」
ジョル「ワシも見させてもらったが、何も怒った素ぶりもなかったしのぅ」
ベル「ジョルはたいしたことない子だと言った。大変、失礼」
俺の目と鼻の先にフランがひょっこりと顔をだした。ややこそばゆそうな俺を意に介することもなく、マジマジと見つめてくる。
フラン「勇者さまって本当に人格者なのね。私だったら蘇生して、殺して、蘇生して、うふふ」
フランは自分の呟きに妄想でもしているのだろうか、目は弧を描き笑みをより一層、濃くしていく。
瞬間、弾かれるように椅子から腰をあげ、広間から脱兎の如く走り出した。
カケル「(俺が勇者なわけないだろ⁉︎ 付き合ってられるか!)」
感情を支配したのは恐怖――。
まったく意味がわからない。このように連中からは逃げるに限る。様々な思いが頭の中を駆け巡り、限界を迎えようとしていた。
主には悪いがここまでで一番ウザいのはカケル
クラスに友達いないくせにミラに心の中で悪態つく
しかもだからと言って口に出すわけでもない
授業中寝た挙句、授業がつまらないせいにする
しかもそれも言わない
王都に行きたくないのに断らない
人に道も聞けない
聖歌すら虫唾が走るとか思っちゃう
神様は信じないけど神様に助けは求める
>>14
一応全部設定上そうなってます。狙ってやってないわけではありません。
>>1の説明を補足します。
主人公の設定は書いてある通りで概ね間違いはなく
・思ったことを口にできない。
・内面は別のことを思っている、悪態をつきまくる。
・神様嫌い。
・基本的に人間不振。
でも、勇者。世界を救っちゃいます。
で、口下手なので内面は読んでる人には見えてますが、まわりのキャラクターには内面を喋れないので登場人物たちはカケルがこんな人間だというのをわかりません。
どんどん、勘違いしていきます。良い方向に。
そんな設定の読み物? です。
今日はここまでです。
別のやつと並行して書いてて、こっちは息抜きなので不定期ですけど、暇つぶしに読んでやってください。
カケル「(ここまで来れば、大丈夫かな)」
陽が落ち始め、あたりを茜色に染め上げようとしているころ。
寂れた路地の一角にある廃墟じみた建物へと俺は駆けこんだ。
小屋そのものはシンプルな作りだ。構造は木材で囲まれており、正面にある扉と裏口がひとつずつ。
正方形な空間に木箱が3つほど並べられているだけの非常に手狭なところであった。
しかし、なんだったんだ、あの詐欺集団は。
最後の方は、フランと呼ばれていた女はすごい物騒なこと言いだしてるし。サイコ女こわい。
ミラ「カケルっ⁉︎」
カケル「ん?」
なんということでしょう。
呼ばれた方へ注視すると木箱によりかかるように身体をロープで縛られ、ガタガタと震える幼馴染がいる。
ミラ「助けにきてくれたのね!」
why? 意味がわからない。俺はたまたま詐欺集団から逃げてきただけだというのに。
ミラ「カケル、私のために……」
ぶつぶつと、不穏な言葉を呟かれている。音がない環境というのはそれだけ、小さな音でも広いやすくなり、響いてしまっていた。
ごくり。
カケル「ミラ……」
半ば呆然とした声で名前を呼んでしまっていた。理由を考える前に開いた口がふさがらない、とはこの事か。誰のためだって? 瞬間的にありえないと思った。
室内を包む、重い、重い、沈黙。
そして、頬を染めるミラ。
ミラ「嬉しい……って――」
はっとしてミラは目を見開く。奇妙な間があった。
ミラ「でも、今のカケルじゃ……だめ、逃げて!」
そう叫び声をあげた瞬間。
ぎぃぃぃぃ。
ドアがひとりでに開いた。
ミラ「くっ……!」
なんとかロープをゆるめようと身体をくねらせているのだろう、左右に身体をふっていた。芋虫を噛んだ表情で開いたドアを睨みつけている。
俺からは、扉のふちを掴む黒い手袋しかいまだ視認できない。
手が部屋の中にはいり、さらに黒いブーツがドン、と小屋の木床を踏む。
ゆっくりとした足取りで、その人物はランプを片手に持ち扉を閉める。
全体を黒い色で統一した着衣に身を包んでいた。
カケル「(なんだこいつ)」
フードを深く被っているので表情はうかがいしれないが、ミラの慌てようを見るに縛ったのはこいつで間違いないだろう。
………でかした! ざまーみろっつーんだよ!ミラさん苦しそうで今夜は飯がうまい!
ミラ「お願い! そいつはなにも関係ないの! 逃してあげて!」
スッ
フードを下げて顔を現した容貌に俺は、絶句した。悪鬼としかいいようがなかったからだ。
肌は緑、髪は乱れ、禿げ散らかした頭髪は清潔感のカケラも感じさせない。口からは牙が飛び出し、目は飛びでて俺とミラをぎょろり、とゴミを見るような一瞥した。
カケル「(こいつ……ゴブリンじゃないか!)」
悪意を持った精霊。――通称、ゴブリンである。
精霊は大きく分けて四大元素の、土、水、火、風の四つに分類される。しかし、精霊種はそれだけではない。
ゴブリンのように魔に堕ちた亜種も存在する。
精霊がどうしてそうなるのかは魔王による影響が大きいとされるが不明な部分が多い。
カケル「(なんでこんなところに⁉︎ ここ城壁の内側だぞ⁉︎」
ゴブリン「人間か」
カケル「(喋ったぁ⁉︎)」
おかしい、喋れるような知能があるなんて。こういう雑魚精霊は知能がないと相場が決まってるはずなのに。
ゴブリンは俺を見て舌舐めずりするように、にやりと笑った。
ミラ「やっぱりだめ! カケル逃げて!」
ゴブリン「この場を見られたからには生かしておけない」
ミラ「……っ! そんな……私を助けにきたばっかりに……」
そもそもここにいたって知らなかったからね⁉︎
ミラ「目的の物は渡す。だから、カケルだけは助けて。お願――っ!」
いつの間に振り向かされたのか、俺の顔を覆いつくさんばかりの大きな掌で、顔面を鷲掴みにされているのだろう。指の隙間から差し込む淡い光が、そのことを示していた。
バキッ! バキッ!
後頭部をしこたま打ち付けられ木の床を突き破る音がする。
それと同時に、電流でも流されたかのような衝撃が五体を駆け巡る。
もがくように反射的にゴブリンの腕を掴み、引き剥がそうとするが、さながら万力で掴まれているかのような力強さを感じるだけで、どうにかなるものではなかった。
ゴブリン「こいつ反応、遅い。ゲヘヘ、目的のものは、殺した後でもらう」
カケル「(いてぇっ!)」
ミラ「カケルっ! カケル!」
息も絶え絶えに俺は、もがいていた。気絶できればどんなにいいだろう。だが、霞む意識の中で、痛みが覚醒を促し気を失うことを拒んだ。
心臓の鼓動が早鐘のように鳴り始めた。
やばい、このままだとやばい。
カケル「(ぬおおおぉぉぉっ! もうお家帰りたいよぉおおおっ!)」
声にならぬ声で心の中で雄叫びを上げ、床に沈んだまま、ゴブリンを見上げる格好で睨む。
ゴブリン「お前、弱いが、いい眼をしている」
ゴブリン「その眼、俺が……うぐぅっ!」
扉を突風が吹き飛ばしゴブリンを宙に浮かせている。
――切り裂く断末魔の叫びだった。四つん這いの姿勢のまま命からがら逃れた俺は、ミラと見つめ合う。
ベニ「間に合った」
ローブに身を包んだ少女達と老人が敷地内に侵入して俺達の直線上に現れていた。手には杖を持っている。
ジョル「走っていなくなるから何事かと思ったら、ゴブリンの気配に気がついたんじゃな」
ベニ「さすが勇者」
フラン「あら、ミラじゃない」
ミラ「し、師匠⁉︎」
声がして一気に騒がしくなっている。術者の声に気がついたゴブリンは、腕をやみくもに振り回しながらこちらにもがいていた。
ゴブリン「ぐっ……五大魔術師かっ……!」
フラン「黙りなさい。低俗精霊が。さぁ、誰の命令なのか洗いざらい喋ってもらいましょうか」
ゴブリン「ぐぐっ……!」
フラン「カルア、遠慮はいらない。もっと締めあげて」
カルア「はい、お姉さま。風よ、マナよ……」
ゴブリン「あぎぃ……息がっ……かはっ……っ!」
フラン「さぁ、言う気になったかしら? カルアは風だけど私は火よ。私に脳みそ焼かれて殺されるのがお望み?」
な、なんだこいつらは。
状況と変態どもに囲まれて生きてる心地がしない。叫べたのは心の中だけで、もう「あ」とか「い」とか言葉がひとつ足りともでなかった。
動けるならどうするか? 決まってる! 一刻も早く逃げ出してるね!
ミラ「師匠! そいつの目的は勇者……カケルです!」
全員の目が一斉に俺に向けられる。
フラン「なるほどねぇ。選定の時を狙って暗殺でもしにきた? 魔王ってチキンなのね」
ジョル「ふむ……。であるならば、こいつは帰すわけにはいかんのぅ」
ゴブリン「そ、そんな、こいつが、勇者……っ!」
ベニ「魔王は勇者を恐れてる。それがわかっただけでもいい」
な、なんじゃぁそりゃぁ⁉︎
こんな奴らからは一刻も早く縁を切るとして、なんか……髪に違和感が……あれ、血がでてる。
感じる、もうだめだと。揺らぐ視界の中で暗闇へと俺は意識を手放した。
- 城下町 宿屋 -
シン、と静まりかえった室内に熱いため息が漏れている。頑丈なはずの寝台が軋む音がする。
呼吸が荒く、ミラは小さく身体を震わせながら俺の布団に潜り込んでいた。
ミラ「ん、カケルぅ、あ、はぁ……」
また、この夢だ。
俺はたまにこういった夢を見ることがある。ミラが相手だというのが納得いかないが、所詮夢は夢。
割り切って楽しむことにしている。
甘美な時間。ミラの秘所に手を伸ばした。
ミラ「え、いや! どこ、触って……、まって、あ、あ!」
わさわさとした陰毛を掻き分け、その奥の肉同士の隙間に指を押し込む。ミラのそこはぐっしょりと濡れていた。簡単につるんと奥まで指を滑らせることが出来る。
ミラ「あ! あ、ん、いや、ぬいてぇ!」
ミラの腰がひくんひくんと俺の上で強張るように動く。
ミラ「あ、あ、もう……、あ、あー……」
右手で秘部をまさぐり、左手で耳をくすぐってやる。
恥ずかしいのか真っ赤な顔でミラは瞳をうるませていた。
ミラの発情した匂い、指にまとわりつく感触、反応の良い吸いつくような肌。全てに興奮した。
次第に俺の股間に血液は集まり、下半身を硬くした。
ミラ「カケルぅ、だめ、もうっ……いくぅっ!」
びくん、と足のつま先までを反り返し、ミラはぐったりと俺に覆い被さってきた。
正直、俺自身も限界だった。いくら疎ましいミラが相手とは言え、健康な男子でもある。
ズボンの下で硬くなった男根がはちきれんばかりだ。
俺は自分のズボンに手をやり、それをズルっと下まで下げて男根をミラに晒した。すると、ミラは、優しい、愛おしくてたまらないという表情を浮かべ上下に、ゆっくりと俺の男根をシゴいていく。
ミラにシコシコとしごかれる度に、俺からもまた、熱い息が漏れる。
ミラ「ねぇ、カケルぅ」
もぞもぞと内股を擦り合わせている。俺の興奮した様子を見てどうやら我慢ができなくなったらしい。
ミラが俺の上にまたがり、俺の男根とミラの秘部を擦りはじめた。
いわゆる素股ってやつだ。
ミラ「ん、あっ、ん、ん」
ミラが腰を振るたび、柔らかい、暖かい愛液が俺の男根にポタポタと濡らしてくる。
ミラ「カケルぅ、あっ、んっ、こんなのっ感じすぎちゃうよぉ」
視線が交差する。潤んだ瞳、赤みのかかった顔をお互いに見つめ合い、俺たちはオスとメスになっていた。
俺はたまらず、ミラの腰を掴み、もっとはやく腰を動かせと催促をする。
ミラ「クリ、擦れて、だめ、だめだめだめぇっ! あ、あ、ああぁぁぁあっ」
下半身がびくんとしなったかと思うと、俺は精子をミラに撒き散らした。
ミラ「はぁっはあっ、今日も、気持ちよかっ……た……」
びゅるびゅると出して太ももについた精子を指ですくい、器用にミラは舐めとっている。
ミラ「おやすみ、カケル」
そう、これは、俺の夢なのだ。
カケル「(はぁ、身体がだるい)」
ミラ「師匠! そのパン私のですよ!」
翌朝、城下町の宿屋で目を覚ました。結局、あの後、俺はすぐに気を失ってしまいここで一泊することにしたらしい。
しかし、あの夢から目覚めるといつも身体がダルい。そして、なぜかミラは顔がツヤツヤとしている。
ジョル「まぁまぁ、喧嘩せんでも。パンならまだこんなに」
ベニ「ジョル、ジャムとって」
ジョル「名前をネタにするな!」
ベニ「……別にしてないのに」
そして昨日の詐欺集団御一行もなぜか! 一緒である。
勘弁してくれ。昨日の出来事は昨日のうちにって言うだろ。
眉根を寄せて、口をへの字にしていると隣に座るフランからツンツンと脇腹をつつかれた。
フラン「昨夜は、お楽しみでしたね」
カケル「……え?」
ミラ「師匠っ⁉︎」バンッ
フラン「あら、まさかお気づきでない?」
ミラ「やめてください!」
なんでもいいが、朝からこのテンションは嫌だ。というか家に帰りたい。馬車の時間いつだろう。
ジョル「昨日は選定できんかったのぅ」
ベニ「別にいい。女神様にはカケルならいつでも会うことができる」
ジョル「……? じゃが、降臨祭はまた数十年後じゃぞ」
ベニ「王室にもある。今日はそこに行こう」
ジョル「なるほどの」
我が意を得たり、という神妙な顔をしているベニと頷きあうジョル。
ベニ「カケル、魔法の知識について、どこまである?」
ミラ「あ……。あの、カケルはあまり」
ベニ「そうなの?」
ミラ「はい、勇者ですから。あまり必要ないと思って私も教えなかったんです」
フラン「それそうと、ちょっとベニ。なんで勇者が幼馴染って教えなかったの?」
ミラ「あ、それは、その……」
フラン「遠くに行っちゃいそうでこわかったんでしょ? うん?」
一つの仕立てあげたような継ぎ接ぎ感が漂う笑顔を貼り付けたまま成り行きを見守る。
昨日のわけわかんない話の続きかよ。嫌味のひとつでも言って……言えなかったな俺の口では。
ベニ「フラン、話がそれる。カケル、少し説明する。あなたはすべての魔法を使うことができる。デタラメな存在。それが勇者」
微妙な表情を浮かべ、どうやって逃げ出そうか思案していると、俺にかまわず話を続けてきた。
ジョル「ちなみにワシ達も全ての魔法を使えないわけじゃないがの。適正レベルが違うんじゃよ」
ベニ「私達は自分に最適解な精霊がいる。私は水、ジョルは土、フランは火、カルアは風。五大魔術師はもう1人いるけど、その子はカケルともちがい特殊」
ミラ「わかってると思うけど、私は火よ」
ベニ「そして、私達は自分に合った属性は100%の力を出すことがでかる。しかし、他の属性は使えても100%の力を出すことはできない」
ジョル「それができるのは、魔王と――」
ベニ「勇者。あなたは魔王とただ1人、対等に渡り合える存在」
眉間に指をあてて、深く肩を落とす。
こいつらに必要なのは、薬だな。それも早急に必要だ。もし思ったように喋れても、俺は勇者じゃないただの落ちこぼれと否定しても暖簾に腕押しな気がしてきた。
俺を騙そうとしてたんじゃなかったんだ。きっと宗教にハマりすぎてしまってるんだ。
ミラも信者になったのか。かわいそうに。
ジョル「まぁ、賢者という例外も中にはおるが」
ベニ「あれは仙人みたいなもの。長生きできるだけ。伝説によると勇者はさらに独自に魔法を生み出した」
ジョル「合体魔法、ミナデインか」
ベニ「その威力は大地を割り、雲を裂き、百里先からでも見える光の柱だと本で読んだ」
えっへん、と席から立ち上がって力説するベニを見上げる形で視線を向ける。満足気な表情を浮かべたまま得意げに言い放つベニに哀れんだ眼差しを向けることしかできない。
フラン「カケル様、あなたの精霊は四大元素全てがついています。まぁ、ゴブリンに苦戦していたのは意外でしたが、力が敵わない相手に立ち向かう勇気こそが勇者たる所以ですわ」
視界を横に向けるとこっちはこっちで勝手な勘違いをしている。
俺はといえば、目の前に広がる光景にめまいを感じ、掌で目を覆い隠し天を仰いだ。
ミラ「カケルは、あまり喋らないんですけど、いつも私を助けてくれて。みんなから陰口を言われても気にしなくて……」
フラン「勇者に陰口を?」
ミラ「みんな、知らないから」
フラン「寛大な心なんですね。私もそうなりたいな」
いささか憮然としたものを含みはするものの、フランの視線からは尊敬の念を感じる。
そう心で呆れる俺の心中とは裏腹に、一向に状況は改善しない。むしろ、さらに変な曲解をされている気がする。
まさに進退窮まるとはこのことなのだろうか。
カケル「(そういや、この中で発言していない子がいるような……)」
カルア「……うんしょ、うんしょ……」
一生懸命、パンにペタペタとバターを塗っている姿を見ると考えるのが馬鹿馬鹿しくなってきた。リスのような仕草のカルアをぼんやりと眺めていると、視線に気がついたカルアがパンと俺とを交互に見て――。
カルア「た、食べますか?」
と、聞いてきたので、変に和んでしまった。
- 魔王城 -
枯れ木がばかりの荒れ果てた荒野が見渡す限りの地平線まで広がっていた。
空にはワイバーンが無数に舞い、どんよりとした雷雲の下、ヒビ割れをしている大地は、長い間、雨すらも降っていないと思わせる。
大地に立ち入る者を嘲笑うかのように、奇声と鳴き声がこだまする。
城の主しか使うことの許されない寝台で、アリスは長い睫毛を揺らし目を覚ました。
白銀に輝く髪、そしてその中で輝く真っ赤な瞳。血管まで透き通ってしまうのではないかという雪のように白い肌は、彼女の全てを引き立てる方向へと働いている。
絵の中から抜け出してきたような容姿だ。
美の女神でさえも、魔王たるアリスの前ではひれ伏すだろう。
寝台の上に起き上がると、アリスは全身を映す鏡の前まで歩き、自身の姿と対峙していた。
目を閉じて、想いをめぐらせる。
真夜中の、黙想の時。
始まりはいつだったか、それすらも数千年という長い歴史の中では思い出すことができない。
まぶたを再び持ち上げて、自身の顔を見つめる。
どの角度から見ても十代後半。
生まれてから、もっと正確に言えば意識が覚醒した瞬間からこの姿だった。変わらない見た目で歳をとることはない、有り体に言えば不老不死なのだが、アリスは特権を喜ばしく思っていない。
生とは、なにか。
生とは、死があるからこそ成り立つのではないか。
儚さがあるから、美しいのだ。
――では、自分は、なんと醜い存在なのであろう。
起因するのは、自己を証明する要素の欠落。
アリスの胸には生に対する執着がまるでなく、いつもぽっかりと穴が開いた虚無感の中で生きていた。
いや、生きているというと語弊があるかもしれない。
ただ、魔王として君臨していた。
アリス「我はなんのために生きているのか。この疑問は、もはや我の魂の叫びであり、生きるよりどころでもあり、存在理由ですらある」
呟きには、激情と呼べるものの全てが詰まっていた。
想像してみてほしい、このアリスという魔王は、自身の存在理由が欠落したままに数千年という長い年月を過ごしているのだということを――。
揺れる蝋燭の火炎がナニカの形を淵作る異形に、魔王は目を細める。徐々に収束し、大きな塊を作ってゆく。
「魔王様、お目覚めでございますか」
炎の塊が喋った。その声は低く、しかし艶を持って禍々しい。異形のモノがヒトの形を作り終えると紫の髪を振り乱し、豊満な胸を両手で持ち上げ、口角をつりあげた女性が立っていた。
魔王直属である四天王の1人、淫魔の王、サキュバスである。
アリス「トモエか。なんの用であるか」
トモエ「ゴブリンからの連絡が途絶えました。勇者の発現は阻止できなかったようです」
アリス「勇者がやったのか?」
トモエ「ゴブリンを退けたのは勇者ではなく、取り巻きです。姿は確認いたしました。まだ赤子のような存在ですが、潜在能力は……」
アリス「どうした、続けよ」
トモエ「……失礼ながら、魔王様と比肩するやもしれません。私も、水晶で勇者の精霊を見た時に震えてしまいましたわ」
アリス「それほどか」
トモエ「はい。おそらくは奴こそが、精霊神のジョーカーかと。私が知りうる中で、歴代最強と言っても差し支えありません」
アリス「古参のお前がそこまで言うか。面白い、これまで私に立ち向かう勇者どもは見かけ倒しばかりであった」
トモエ「必ずや魔王様のご期待に添えることができるでしょう」
――ああ。ようやく、ようやくだ。
魔王は、喜びに打ち震えていた。もちろん、自分の目で見るまでは全てを信じるわけではないが、なぜか、確信にも似た予感を感じている。
今代の勇者ならば、私に生きる意味を説いてくれるのではないか、と。
力をふるい、暇つぶしに壊し、人の大切な物を破壊することに快楽を感じ、自分の存在が上であると確信するために泣き叫んで命乞いをしているのを見て悦に浸る。
そのようなつまらぬ遊びに魔王は飽き飽きしていた。欲しいのは、自身と肩を並べる存在。対等にぶつかり合い、生きていると実感させてくれる者を心の底から欲していた。
アリス「く、くっくっくっ、あっはっはっはっ!」
魔王の笑い声が響いた。
頭の中へと直接響くような底冷えのする声にトモエもまた、狂気と恐怖を感じて震える。
トモエ「(威圧感があり、威厳もある。しかし、なぜ魔王様はこんなにも、死にたがっているように見えるの……)」
それぞれの想いを胸に秘め、ボタンのかけ違いは交差する。それが望む望まないに限らず、ひとつの終わりは誰しもにやってくるのだから。
- 城下町 商店街 -
人の波をかきわけ、最初の時のようにはぐれないように注意をはらいながら大通りの屋台が立ち並ぶ通りを抜けると、レンガ作りの家が並ぶ閑静な住宅地区へと入った。
しかし、やはり王都だ。
ミルー村みたいなクソ田舎では、人に遭遇するのも骨が折れるというのにどこに行っても人がいる。
ベニ「この住宅地を抜ければ、王城の門が見えてくる」
ちょっと待てやコラ。ここの先っていうとあの親指ぐらいの大きさにしか見えない城のこと? あそこまで歩かせる気? というか、なんで俺もホイホイついていってるんだか。
いや、これが終わったら帰れるという計算通りの行動の為だよ?
ジョル「転移魔法でも使えば一瞬なんじゃがの。王城は警備が厳しく、限られた者しか無理なんじゃ」
ベニ「五大魔術師は王宮に直属として仕える魔術師でもある。私達だけなら可能だけど、カケルとミラは無理」
どんっ。
と、不意に大き目の帽子を被った人とぶつかった。
しまった。
ジジイの方に意識を傾けているせいで人が多いというのを失念していまっていたらしい。体勢が不利だったのか、足がもつれたのだろう。尻もちをついて倒れていた。
背格好は同じくらいだ。やけに高めの声で謝ってきた。
「す、すまん、急いでてな」
帽子を深めにかぶり、表情を隠すようにしている。よほど慌てているのだろう、謝罪もほどほどにすぐにでも立ち去ろうとする気配がある。
カケル「……?」
なんとなく、興味がわいたので助け起こす際にまじまじと見てみる。
柔らかい輪郭に、長い睫毛、大きな帽子で髪の毛は隠れているが、たぶん金髪。
「ボクの顔になにかついてるか? 失礼だぞ」
居心地が悪そうに、ころころと表情を変えている。しかし、ボク? こいつ、本当に男か?
聞いてみるのもめんどくさいので、言葉を濁そうとしたその時だった。
ジョル「こ、こんな所で一体なにを⁉︎」
ベニ「抜け出した……?」
フラン「あらあらぁ」
カルア「ひ、ひ、ひ……」
「あ、あなた達こそどうしてここに⁉︎」
なぜか、俺のまわりをハエがブンブンと飛んでいると気がついたのは。
俺は世の中にどうしても我慢ならないものが3つある。
ハエとゴキブリとヘビだ。
ハエという生き物は睡眠時、そして食事の時に、けっこうな頻度で現れる。
その時のウザい度ったらない。星5が満点とすると星4はあげれるほどウザい。
ミラ「カケル、あの人って……」
黙れ人間界のウザい代表。俺は今、羽虫界のウザい代表と戦うために準備しとるんじゃ。
ミラの言いたいことは、この目障りなハエを退治してからゆっくり聞いてやろう。
俺はハエ退治に向けて、目を閉じて精神を集中しだした。
こいつ、すばしっこいわけではないが目を離すとなかなか見つけることができなかったりする、手強い相手なのである。
ブゥ~ンという音を頼りに、黒い線をイメージして動きへ向ける意識を高めていく。
周囲の喧騒など耳にはいらない。外界と俺とは、今、完全に隔離された。
この世界には、ハエと俺しか存在しないのだ。
カケル「(奥義を出す時が、来たようだな……)」
そう、我が一撃必殺にして、ただ両手でハエを拍手で挟み潰す。その名も血塗られたブラッディフィンガー(ハエの血)
右から左に動いてるハエの気配を感じる。
く、くくく。余命はあと数秒だ。貴様の死因は、俺を不快にさせた。運が悪かったな……。
カケル「(そこだぁっ!)」
ぱぁんっ!
大きな音が響き、周囲の音と世界が戻ってきた。
ジョル「刺客か⁉︎」
フラン「ナイス勇者さま! ミラ! 投げられた方角はわかった! 向こうの角2つめ!」
ミラ「はい! ……風の音……火の音……」
ベニ「姫様、こっちへ」
なんで、俺の両手の間にナイフが挟まっているんだ。
慌てて手を離すと、カラン、と。石畳みの上で金属音が鳴いた。なにがなにやら分からないままに悩んでいると、地面にある小石が小刻みに揺れているのに気がつく。
カケル「(な、なんだぁ?)」
――地震? ではない。カタカタと小石が宙に浮きだしている。異様な気配を感じ、咄嗟に地面に耳を当て澄ますと、地鳴りのような音がする。これは、なんかやばい感じがする。
悪い予感ばかりどうしていつも当たるのだろう。けっこうな確率で外さない。
ジョル「ワシにまかせておけ! 国賓に刃を向けるとは許せん! 土魔法の威力、しかと見るがいい――!」
とりあえずここまで。
またこっち進めたくなった時にでも。
フラン「ユミル姫様、なぜこのような危ない真似をされたのですか」
ユミル「ボクの勝手でしょ! お見合いなんて……⁉︎」
続きを喋ることは許されなかった。
その代わり、ぱしん、という音がユミルと呼ばれた女の子の頬を叩く音が響いた。
ジョル「まぁ、姫様もまだ若いからの。それぐらいにしてやれ」
フラン「――ふぅ、国賓という立場をわかっていらっしゃらないですね。あなたに何かあれば、私達との国との戦争になるんですよ」
ユミル「その国賓に手をあげるなんてどういうつもりよ……っ!」
フラン「オイタをした子には罰が必要です」
ユミル「子供扱いするつもり⁉︎ あんまり歳変わらないでしょ⁉︎」
ユミルのおさまりきらない怒りを前にしてもフランに怯む様子はない。
それどころか一刀両断とばかりに毅然とした態度で――
フラン「歳は関係ありません。大事なのは品性と教養です」
と、切り捨てるように言った。
また知らない人が出てきた。もううんざりだ。
肩から下げている鞄をその場に下ろして椅子がわりにして腰を落ち着けるとやりとりが終わるのを待った。
ユミル「とにかく、ボクは嫌だ。城には帰らない」
フラン「嫌と言っても連れて帰ります」
ユミル「い・や・だ!」
そっぽを向いて話をする気はないと意思表示している。フランはゆっくりと息を吐いた。だが、引く気はないらしく、きつく睨んでいる。
その後ろでカルアがビクビクと隠れるように様子を伺っている。
……はぁ。これじゃラチがあかないんじゃないのか。
暇なので、改めてここにいる面子を見回してみる。ミラで可愛い子には耐性があるが、なんとも豪勢な顔ぶれだ。
なにしろ、全員美少女と言っても差し支えない。
村一番の美少女なミラをはじめとして、表情に乏しいが知的系のベニ。西洋人形のような容姿をしたフランとカルア。
そしてこのユミルという子も帽子をはずした姿は美少女だった。
今は怒っているから目がつり上がっているいるが、鼻筋はすっと通っており、パーツそのものがどれも整っており美しい。
村の男達が見たらさぞ羨ましがることだろう。
だが、俺はたいして興味はない。自分には関係ないと思っているからだ。
フラン「ユミル姫、いい加減にしてください」
フランから冷たい声が飛んだ。それに対しユミルはふん、と鼻を鳴らす。
あきらかに険悪な雰囲気である。
ミラ「……あの人って、隣国のお姫様だよ」
聞いてもいないことを耳打ちされて情報を得た。
なるほどね、だから姫様と呼ばれているわけか。
ミラ「なんだか、実感わかないね」
たしかに、それはミラの言う通りだった。元々、この国の王様やお姫様でさえ田舎暮らしの俺たちには縁もなければ姿を見たことすらない。
理屈では偉い人というのはわかる。
だが、それが隣国にまでなると「へぇ、そんなんだ」ぐらいの感想しか湧かないんだ。
フラン「お礼ぐらい言ったらどうですか」
渋々といった感じではあったが、礼節は厳しく教育されているのだろう。ユミルは形式上の手続きかのように慣れた仕草で膝をまげると俺に礼をした。
ユミル「助けていただいてありがとうございました。こ度のお礼は――」
カケル「いい」
ユミル「えっ?」
きっぱりといらないと言った俺にたいしてユミルは目を丸くしている。そもそも助けるつもりはなかったんだし、余計な関わりはめんどくさそうだという判断なのに、そんな意外そうな顔をされても困る。
ユミル「で、ですが、王族が礼もしないとなると……」
やはり、めんどくさい。王族なんてことは俺個人にはなんの関係もないし、受けとらなければ困るというのはそちら側の都合だ。
そんなものはお礼ではない。
仕方なく、鞄から一輪の黒百合を取り出し、差し出した。
ユミル「は、花……?」
カケル「どうぞ」
ユミル「あ、ありがとう? でも、なぜ……」
カケル「これでおあいこです」
ユミル「へ?」
カケル「受け取ってくれました。なので、お礼はいただきました」
この花は道中、何の気なしに摘んだ花である。もちろん、価値なんかない。
本の押し花として使おうかと思っただけだ。
多少強引かもしれないが、王族が庶民の価値のない花を受け取ってくれたのだ。それも1つの畏れ多いことなんじゃなかろうか。
ユミル「は、はぁ?」
ジョル「姫様、カケルはの。それでお礼をチャラにしてくれと言うとるんじゃよ。カケルにとって人助けなんて日常茶飯事なんじゃろうて」
勝手なこと言ってんじゃねえジジイ。
ユミル「そんなにも人助けを?」
ミラ「――はい。それは幼馴染である私が側で見てきました。保証します」
ユミル「……そう。では、カケルよ。そなたの心意気を汲んでお互い様ということにしましょう」
いちいち堅苦しいね、姫様ってのは。
庶民に対してある程度体裁をとらなきゃいけないってものも考えようだ。これでは息苦しいと城から逃げ出したとしてもわからないでもない。
俺ならやだね。生まれてからこんな生き方を強要されるのは。
だからなのだろうか、俺は立ち上がり、この時、微笑みを浮かべて――。
カケル「気にしないでくれ」
ユミルのほどよい大きさの手をとり、そう、思ったままを口にすることができた。
ユミル「あ……」
虚をつかれたユミルの頬に赤みがさす。
フラン「あらあら……。男前だけじゃないんですね、勇者さま」
ミラ「そ、その顔はめったに見せないのに……っ!」
外野がなにかうるさいが、俺は今もはやく家に帰ってグータラしたい。これだけである。
飛んでる?
飛んでないと思う
ハエ潰すつもりで柏手を打つ→どっかから飛んできたナイフを偶然キャッチ→それをユミルが狙われたものをカケルが阻止したと周りが勘違い→命を救ってくれた以上お礼はしたいフランとユミル→それに対しカケルは花を受け取ってもらうことでなあなあにしてもらう
こうでいいんだよな?
――十七年前、バンドギア王国に隣接するゴダイク王国にてユミルは生を受けた。
第一子として生まれたまではいい。
しかし、次の世継ぎ、すなわち男子が生まれない状況にゴダイク王はひどく悩み、焦っていた。
王の加齢が進み、女に子種を宿すのが難しくなる前に家臣たちは揃って「側室を」をと進言した。
色欲に溺れる性格ではなかったし、王妃を心から愛していた。だが、国の未来を左右する問題だと認識の末、側室を娶ると王は選んだ。
栄養管理から睡眠時間、挙げ句の果てには祈祷師を頼り徹底した子作りの環境が作られた。
以来、王の寝室には日替わりで女が入れ替わり立ち代わりはいっていく。
このままだと王は種無し、王妃は男子を産めない疫病神だと老臣たちに重圧をかけられる。
誰もが正統な王位継承者である男子の誕生を待ち望んだ。
ゴダイク王「なんと、なんと虚しい行為であろうか」
愛のカケラのない身体を重ねるだけの行為に王は身を粉にして没頭した。
やまない雨はないと、いつか雲は晴れ、道の先に幸せが待っていると信じて。
――それから、幾年もたちユミルが13になった時に王の身体に異変が起こった。
ゴダイク王「ごほっごほっ……こ、これは……」
口を抑えた手が、真っ赤に染まっていたのだ。
直後、胸に痛みを訴え王は病に伏せた。国中が不安に満ち溢れた。
世継ぎもまだいない状態で国王不在になったのだから当然だ。
家臣達は民の不安を埋める為にだした策は王女とユミルを矢面に出すことだった。
家臣「ゴダイクの民たちよ、聞け! 案ずることはない! 我らには王女様とユミル姫様がおられる!」
王女とユミルは民達の前で演説を行わされた。
しかし、老臣達はこれだけでは解決策にはならないとは理解している。
あくまで民を落ち着かせる為の場しのぎの処置である。
――根本的に抱える問題は、直系の男子が生まれないこと。
これが解決しない限り、新しい打開案を用意する必要がある。
もし、王の状態が回復しないのであれば、待つだけでは望みは叶わない。
家臣達が集まる連日の議会は荒れに荒れた。
ユミルを王にと言う意見もでたが、女が国王(女帝)になるなど過去例がないと反対派が多数いた。
数による内部分裂が勃発し、ゴダイク王国の政治が乱れはじめた。
次第に、ユミルを王にするか、友好国であるバンドギア王国の王族と婚姻を結ばせより強固な関係にするかで意見は真っ二つに割れた。
ユミルが17歳になった現在も意見は割れている。
しかし、保険はかけておくべきだと主張する家臣達の建て前で、こうしてお見合いの席にユミルははるばるバンドギア王国を訪れていたのだった。
- バンドギア城 迎賓室 -
キャロル「まったく! お嬢様はなんでいつもいつもそうなんですか!」
ユミル「うるさいなぁ、だってお見合い嫌なんだもん」
キャロル「国際問題に発展するかもしれなかったんですよ⁉︎ ――聞いてますっ⁉︎」
メイド服姿のキャロルはユミルに耳タコができるまで説教をしていた。
このキャロルという女の子は、名家出身で代々王族に仕えている使用人である。
フラン「あなたも苦労するわね」
キャロル「ふ、フラン様。此度のこと、申し訳ありませんでした。あ、あの。それでなんですが、本国には――」
ユミル「なんでフランはこっちにいる間の教育係てだけで偉そうなんだよ。ボクはお姫様なんだぞ」
深々と頭を下げるキャロルに、クスッと、フランは上品な仕草で口元を隠して笑う。
フラン「安心して、私は何も言うつもりはないわ。勇者さまに怒られてしまいそうだし」
勇者、というキーワードにユミルとキャロルが反応する。
フラン「あぁ、ゴタゴタしてたからうやむやになってた? ユミルがさっき会った彼のことよ」
ユミル「――うそぉ⁉︎ 勇者⁉︎」
キャロル「ついに精霊神様のお眼鏡に叶う者が現れたんですか⁉︎」
城に歩くまでの道中、数十分ほどであるが共に歩いたカケルの姿をユミルは必死に思い出そうとする。身長はあったが顔は、童顔なのか、かわいらしい感じがしていた。
彼が勇者だと思っても見なかったユミルは唖然とした表情を浮かべていた。
助けてもらいはしたので、腕利きなのかも、とは思えるが、すべての国にとって最重要人であるおとぎ話の存在に会っていたとは夢にも思わなかったのだ。
フラン「彼は間違いない。今頃は王様と謁見しているはずだと思うわ。あ、そうだ、姫様、彼から花をもらってたでしょ?」
ユミル「あぁ、えぇ」
フラン「キャロルにも見せてあげたら?」
変装用に着ていた上着の内ポケットから黒百合の花をとりだし、キャロルに見せる。
キャロル「これって、なかなか見れない花ですよ、お嬢様」
ユミル「え? そうなの?」
キャロル「はい……えぇと、たしか見つけた者は精霊に愛されていると言われるぐらいには」
ユミル「えぇ? そんなに貴重なものなの?」
戸惑う2人にフランはしたり顔で続ける。
フラン「その花の花言葉はね――恋よ。一目惚れされたの?」
しばしの間をおいて、意味を理解できたのか、ユミルの瞳が大きく揺れたのがキャロルは気がついた。
長年の付き合いだからこそわかるが、ユミルはまだまだ子供でいたいと思っている。しかし、国の情勢についても理解していないほど子供なわけではない。
だからこそ、ユミルの中でお見合いに向き合う気持ちと頭での理解とで、折り合いがつかないということがわかる。
きっとユミルはこう考えているだろう。
もしかしたら私は、恋を知らないまま一生を終わるのではないか、と。
キャロルはユミルが政略結婚の道具として心が凍ってしまうのは、できることならなんとか避けたいと思っていた。
キャロル「これって、きっと運命ですよ、お嬢様!」
ユミル「え、えぇ?」
満更でもなさそうなユミルにキャロルには一抹の希望が見えた気がした。
もし勇者が言い伝えによるほど立派な人ならば、きっとお嬢様のこともなんとかしてくれるかもしれない。
そう、淡い期待が渦巻いて、溢れるのを止められそうになかった。
カケルの知らない場所でも人々の心情は動いている――。
※
黒百合の花言葉は二つあり「恋or愛」と「呪い」です
恋に関してはアイヌ民族から、呪いに関しては戦国武将である佐々木成政の非恋愛物語からきているそうです
日本では贈り物としてNGになっているみたいですが、当SSはファンタジーなので恋という部分だけを抽出しており呪いの由来はないということにしています
訂正どうも、間違いですね
用事があるのでとりあえず今日はここまでです
寝落ちするまで暇つぶしに投稿します
- バンドギア城 広間 -
「こちらでお待ちください」
王宮内の警護を担っている衛士からの案内を受け、目視できる紫に光る結界が張り巡らせていた重厚な扉がゆっくりと開いていく。
一時的に解除しているのだろうか、まるで、水面に雫が落ちたように波紋が広がっていった。
けっこう綺麗な光景だ。
中に広がるは、予想の範囲をでない応接間だった。
長方形のテーブルを中心に、椅子が十数個並んでいる。装飾品などは高級品なのだろうが、よくある金持ちの一室といった感じ。
ベニ「ここは、普段は会議が行われたりする場所。重鎮達が集まって重要な話もするから、防音の意味もあり結界がある」
ふぅん。防音なんて使い方もできんのね。
ベニ「ジョルは今、王様に時間を作ってもらうため、直接話をしにいっている。私達はここで待とう?」
あ、そういや城についた辺りから見かけないと思ったらそういうことか。たしかに王となれば政務に追われて暇ではないのかもしれない。そんな国の為に働いてる人に俺が村人Aだと証明するためにご足労いただくのは良心が痛む。
ミラ「私も、王様に会うのは初めてなので緊張します」
カルア「ちょっと変わってるけど、悪い人じゃないよ……」
なんだろう。この場にいる面子を見て変わっているという表現がでてきたことに対して嫌な予感しかしない。
ベニ「暇なら、もう少し詳しく精霊の説明をする。カケル、聞いて」
カケル「どうぞ」
二つ返事に満足気に頷くベニに続きを促す。どうせ嫌だと言ってもするんだろうがファック。
ベニ「カケルには精霊神様の洗礼の後、魔法の修行をしてもらう」
ミラ「え、でも、カケルには必要ないんじゃ」
ベニ「使えると知るということと、実際に使うのは別。感覚を身体で覚えてもらう。じゃないと、カケルが手加減無しに魔法を撃てば国が滅ぶ」
カルア「そうですね……」
ミラ「そ、そんなに?」
ベニ「ミラも見たはず。だから、カケルが勇者だとわかった」
ミラ「は、はい。ですけど、そこまでとは……」
ベニ「ミラがまだまだ未熟なせい。これまでの勇者もそうだったかわからないけど、カケルの精霊はとんでもない。それはもう、私達が束になっても、敵わない。とにかく、とんでもない。それが、カケル」
おいおい。だからそんなのは君らが勝手に言ってるだけの勘違いだっての。
ベニ「そこで、カケルにはどうしてそうなのか知ってもらう。カルア、抜けがあったら補足して」
カルア「は、はい」
カルアもゴクリ、と喉を鳴らしてうなずいている。
ベニ「カケル、魔法を詠唱するためにはどうしたらいいか知ってるよね?」
あん? そんなもんは一般常識だろ。魔法を放つには、体内の気と精霊の力を杖というバイパスを借りて撃ちだすんだ。
ということは、詠唱するためには、体内の気を練り上げる所から始めなければならないということだ。
ベニ「今までの常識を一度全て捨てて。カケルは気を練り上げる必要はない」
カケル「……え?」
ベニ「私達は『精霊の力を借りる為に気を練り上げる必要がある』……だけど、カケルは既に精霊から愛されている。つまり、気という代償を差し出さなくていい」
ミラ「ちょ、ちょっと待ってください! そ、それって……」
ベニ「――そう。カケルの気は言ってみれば無限。どれだけ莫大な威力の魔法もその気になればすぐにでも放つことができる。気を練り上げるという苦労や、代償による躊躇をせずに。どれだけデタラメな存在かわかった?」
カルア「それだけじゃありません。カケル様の精霊は……」
ベニ「うん。カケルの精霊は格が違う。私達が力を借りる精霊にも属性と品格がある。属性については前に説明した四大元素だけど、カケルのは、私達から見ても、はっきり言ってこわい」
と、言われてもなあ。背後霊がついているとかそういう感覚としか思えないんだが?
俺からすれば、なーんにも現実味なんか沸いてこない。隣国の姫様と同じ、あっそ、の3文字で終わる内容だ。
俺はこれまで魔法を使おうと思ったことがないわけではない。落ちこぼれ認定されるまではそれなりに努力をしていたつもりだったし、それでも使えた試しがないほど才能がないのだから諦めた。
そんな俺の今の将来設計は、村人Bと結婚して幸せな家庭を築くことである。間違ってもお前らのようなやつとつるむことではない。
ベニ「あなたは人が持ちうるリーサルウェポンと言っていい。勇者だから持ちうる力なんだろうけど、勇者で本当によかった」
安堵した表情で、にこり、とベニが俺に微笑んだ。
カルア「わ、私も、優しそうな人でよかったと思います」
ベニ「サポートはできる限りさせてもらう、なんでも言って頼ってほしい」
んぐ、んぐ、んぐ、がつん! と、テーブルにあった水を注いだグラスを煽り、ヒビが入りそうなほど音が響く。ミラが握り拳を作り肩を震わせていた。
ミラ「わ、私も! 師匠までとはいかないけど、ずっと新しい魔法見せてきたでしょ⁉︎」
おい、ちょっと待てコラ。おま、毎回俺に生傷をつけてた実験台のような行為は、まさか。
ミラの視線が一点にとどまっていることに気がつく。
辿ると、先には俺の手があった。――試しに手のひらを上げてみる。すると、ミラの視線もあがった。
手を左右に振ってみる。すると、ミラの視線も左右に揺れる。
なにこいつ、キショイ。
ミラ「か、カケル。私を置いていなくならないよね?」
と、聞く以前に既に俺の両手首は捕まれていた。電光石火の早業である。おい、俺が勇者ならこうはならないんでない?
逃げられないんですけど?
ミラ「カケルが勇者だって、私の魔法でこことか、ここも。この傷はまだ新しい……。あ、この前の魔法でできたやつよね。私もカケルの力になれるよね?」
ひいいいい。なんだよこいつは。
ぽつぽつとミラの口から古傷の列挙がはじまっていた。魔法以前にミラには身体能力でも敵わないので、この状況には耐えるしかない。
ベニとカルアに助けてという視線を送るが2人は一方的とも言えるやりとりを見守っていた。ふざけんな。
――瞬間、手首を引かれ、身体ごとミラに引き寄せられ抱きつかれる。さながらブラックホールに吸い込まれている気分だ。
ミラ「カケル……」
や、やめろ。熱の籠った瞳をむけるな。潤ませるな。
- 謁見の間 -
むっちりと肉づいた身体つきは太すぎず、男なら誰しもが目で追ってしまう有様だった。
生まれたままの姿で、女が左の乳房をゆっくりと揉んでいた。
バンドギア王は言葉もでなかった。
垂れてはおらず、それでいて手では収まりきれない乳房を鷲掴みにし、指に力を込めながら円を描くように揉み上げる。
乳房に指が食い込み、揉むたびに、やわらかそうに歪み、揺れた。上にピン、と立ちあがった乳首をくりくりと刺激すると身体がピクンと震える。
やがて、手つきは激しく、指と指の間ですり潰すように高めている。
女は、バンドギア王に見せつけるように舌舐めずりをして、ぽってりとした肉厚の唇の中で自身の指を咥えた。
バンドギア王「……」
たまらず、王は生唾を飲み込む。
その反応に恍惚とした表情を浮かべた女は笑い、唾液で糸の引く指を、するすると悩ましげな身体を這わせて、開いた足の間に埋めた。
「あっ」と小さな嬌声が響く――。
ピンクに色づいた女の秘部。ぷっくりと盛り上がり、周囲には陰毛が生えておらずつるりとしていて細部までよく見えた。
女の指が、裂け目を左右に開いた。
――あと、もうひと押しでこの男は堕ちる。
目が充血し、荒い息を吐く様子を見て確信を得た女は四つん這いの格好のまま、王の膝下に寄り添った。
「まだ、おあずけですか?」
王の自制心はこの言葉で崩壊した。
唇に貪るように吸いつくと、舌で無理やりこじ開け、どろりとした唾液を流しこみ、無我夢中で女の口内を犯した。
女も王に応えるように肉厚のある唇で王の唇のまわりを包み、ねっとりと舌で舐め回していく。
まるで、それは捕食者の罠にかかったようだった。
野生動物がわけのわからないまま、知識や理性ではなく肉欲にすべてを預けるような感覚。
全身がしびれるような、それでいて指の一本一本まで過敏になり、かすかに吹く風が、自分の腹の上に馬乗りになった女の体温がふしぎなくらいはっきりと王には感じられる。
目を閉じる王にぴたりと女は身体を重ねる。キスを何度も繰り返し、お互いの鼓動と鼓動とが共鳴して高鳴っていく。
王は、自身が着ているシャツのボタンごと左右に引き裂いた。
「ああ、たくましい身体。でも、こんなに興奮して。指で乳首をかりかりってひっかいちゃう。かわいち王様の乳首……」
王を上目遣いで見上げ、口を大きく開けて、伸ばした舌で乳首をべろりと舐め上げた。じゅるると唾液を啜りながら乳首を吸い、前歯でかりかりと引っ掻くように噛みつく。ぴりぴりとしびれるような、いっそ掻きむしりたくなるようなその刺激に、王は少女のようにか細い声を上げた。
「ふふっ、さっきまでの威勢がまるでウソのよう。快楽の前には誰しもが無力……。さぁ、ヒトの王よ、このひと時をもっと楽しみましょう」
じっと女を見つめるバンドギア王に、もはや正気の光はない。欲望にかられ、はやく続きをと泣きそうな顔をしている。
不気味な甲高い笑い声が辺りに、ひびく。
王以外には、杖を振りかざしたまま石化したジョルと、深い眠りについている衛士たち。
そして、バンドギア王にまたがっている、この女、サキュバスの王、トモエだけであった――。
トモエ「王のだらしないおちんぽを見せてごらんなさい」
瞳が妖しく輝く。
うすい生地はすでに内側から持ち上げられ、テントのように盛り上がっていた。トモエはトランクスの上から両手できゅっと陰茎を握る。そうかと思うと、お預けを食らっていた犬が許しをもらったように、パンツの上から王のペニスの先端を咥え込んだ。
トモエ「んふふ」
ぴちゃぴちゃ、水音が湿り気をもって王の耳に響く。
すっかり硬くなって張り出した亀頭を、パンツ越しに咥える。トモエはすぐさま舌をペニスに絡みつかせ、ねっとりとした唾液でパンツを濡らしていった。
王の下着はすぐにトモエの唾液で湿り、濡れ、よりぴったりと亀頭に張りつく。
その上から亀頭の裏側や陰茎の裏筋を舌で舐め上げられると、一枚布を隔てているじれったい感覚に叫び出しそうになる。
トモエ「ああん、びくびく震えて……。はやく咥えてほしい? じゅぽ、じゅぽって。私の口おまんこで包まれたいんでしょう?」
もはや、王は首を縦に降ることしかできなかった。
ずるり、とパンツを下げて露わになった王の熱い陰茎にトモエは顔を歪める。
トモエ「このおちんぽ、くさぁ~い。ひっどい、オスの匂いがする。種づけしたくて、女を犯し、我が物にしたいオスの匂い……」
トモエの唇に亀頭の表面がこすれる。そのまま、陰茎がずるずると暁美の口のなかへ消えていく。トモエは一気に根本までペニスを咥え込むと、喉の奥にこすりつけるように頭を左右に振った。
トモエはまるで棒アイスを舐め上げるように、舌の表面で味を楽しんだ。何度も、何度も、王の硬くなった陰茎に舌を這わせる。
トモエ「んっ…んっ…」
かと思えば、じゅるる、と音を立てて王の陰茎を吸い上げる。
刺激の波に王は目の前がチカチカと白くなるのを感じて一瞬、理性が戻る。
興奮と、後悔と、怒りと、それがぐるぐると終わらない輪廻のようにくるくる、くるくる、回り続けた。一瞬たりとも安定しない。
刹那的に蘇った理性すらも狂気に包まれ、王の思考はついに、切れた。
トモエ「……愚かな人間どもよ。対等だと思っていた? 私達が滅ぼせないと思っていた? その気になればいつでも滅ぼせたの。でも、しなかった。滅ぼせば魔王様の暇つぶしがなくなる。たったそれだけの理由でね」
ただ、それだけのことだと言い終えると、陰茎を手でシゴきながら王を果てさせる。
バンドギア王「あ、あっ」
涎をダラリと垂らし、半ば呆然とした顔でトモエの声が脳髄に染みこんでいく。
サキュバスが持っている特性、『魅惑(チャーム)』はこれ以上ない形で王を捕えた。
もはや、王がトモエに抗う術はない。自殺しろと言われても、肉親を殺せと言われても従ってしまうだろう。催眠という生半可なものではなく、性欲と瞳を武器に相手を意のままに操り人形にしてしまう。
それこそが種族の、トモエの最大の強みである。
トモエ「ふふ、最後までしてほしい? ……図にのるな下等なヒトが」
トモエの表情はこれまでとは一変して厳しいものに変わっていた。肌を離し、王の陰茎を踏みつける。
トモエ「――勇者を呼べ、愚鈍な王。今すぐにだ」
今日はここまでにしときます。
- バンドギア城 広間 -
カケル「――大丈夫だよ」
もちろん嘘である。こう言わないと刺されそうな、というのは比喩ではない。
俺が何度、命の危険を感じたかおわかりいただけるだろうか。いや、これは、経験してみなければわからないだろう。
よく思い返せば、ミラがこのように思い立ったように縋る節を見せたのは初めてではないような気がする。
これまでに少なくない回数で経験があった。
ただ、まさか俺が勇者だと勘違いしていて、その為に自分の実力を披露していたとは考えつかなかった。落ちこぼれの俺に対して天才級のミラが嘲りを言っているとさえ思っていた。
泣きそうな顔をするやつへの対処法はひとつ。俺は取り繕ってミラの頭に、ポン、と手を置く。すると――
ミラ「ありがとう……」
穏やかな笑みを浮かべて、安心した表情のチョロい女がいた。たまらなく、たまらなく嫌ではあったが、そのまま頭を撫でてやる。あくまで保身のためだ。
ベニ「少し、羨ましい」
カルア「ふふ、私たちにも勇者さまみたいな幼馴染がほしかったですね」
ベニ「うん」
助けもせずなに言ってやがる。
俺がこんな爆弾みたいなやつを幼馴染に持った気持ちをわかってるのか?
「宮廷魔術師ベニ様、王様がお会いになられるそうです」
――コンコン、とノックの音から少し遅れてくぐもった声が聞こえてきた。
ようやくか。勇者じゃないと証明してはやく村に帰りたい。しかし、宮廷魔術師だの、五大魔術師だの大層な肩書きばっかりだね。
本当にこんな子達が村人からすれば、雲の上みたいな地位にいるのだろうか。
ベニ「どうしたの?」
じっと訝しむ俺にベニは首を掲げて聞いてきた。まぁ、ちょっと聞いてみるのもいいかもしれない。どうせ今後会う機会もないだろうし、母さんへの土産話にたしかめておくか。
カケル「宮廷魔術師と五大魔術師って……」
ベニ「あぁ、宮廷魔術師は役職の名前。五大魔術師は通り名みたいなもの」
カルア「私たちはそれぞれ仕事がありますから」
控えめにカルアが頷く。
初めて会った時から思っていたが、このオドオドした雰囲気といい、控え目した態度といい。容姿こそ控えめに言っても美少女で魔法に関しても天才なんだろうが、俺と通じるものがある。ミラよりは全然タイプだ。
カルアは俺と相性が合いそうな気がする。
地味目だからという理由では考え方が卑屈かもしれないが、これが落ちこぼれ目線というものだ。
――さて、たいして得にもならない情報を仕入れた所で、王様に会いに行きますか。
- バンドギア城 謁見の間 -
バンドギア王「余がこの国の王であ~る」
無言で跪く俺を前に、憧れをぶち壊す物体が目の前にいた。
バンドギア国では、賢王とされている人物である。
幼少期から比類なき才能を見せ、凍えるような寒さだった不作も善政を敷き乗り越えた。
この国で生きるものならば、少なからず尊敬の念を抱く象徴的存在、ヒエラルキーの頂点がこんな巻き舌で喋るとは。
背が今よりも半分以下の歳の頃、王都には一度来たことがある。その時もこの王が民の前で精霊神の演説をしていたはずだが、語尾はしていなかった。
あらかじめ用意された原稿でも読んでいやがったのかね。
ベニ「王様」
粛々と、こうべを垂れてベニが口火を切った。
ベニ「ジョルが、見当たりませんが」
バンドギア「やつには所用を申しつけたのであ~る」
ベニ「では、そちらの方は?」
視線だけで見た先には、露出度の高い服をきた女性が佇んでいた。
歳は俺よりも少し上ぐらいだろうか。興味津々といった瞳を輝かせ、俺たちを眺めている。
バンドギア王「彼女は来賓であ~る。勇者を拝見したいと言うから立ち会わせているよであ~る」
いちいち気にさわる喋り方すんじゃねぇ!
トモエ「――ご挨拶もせずに失礼いたしました。宮廷魔術師ベニ様。わたくし、ユーク国から使者として来ましたトモエと申します」
バンドギア王「よい、よい。これ、ベニ、失礼であ~る」
ベニ「……はい。失礼、いたしました」
なんだか、変だ。ベニは謝ってはいるものの、その表情はなぜか、警戒しているように見える。不思議に思い、カルアとミラを見ると、二人も同様にトモエと名乗った女性にきつい視線をぶつけていた。
トモエ「うふふ、まだ洗礼を受けていないのでしょう?」
――トモエの怪しく光る瞳が、俺に向けられようとした、その時だった。視線と視線が交差する線上に、ベニが仁王立ちで立っていた。手には杖をかまえている。
俺からはベニのトンガリ帽子しか見えなくなってしまった。
ベニ「今、なにをしようとした」
トモエ「なんのことでしょう?」
ベニ「王様……この人、本当に、ユーク国の?」
ベニの疑惑に王は沈黙をもって応えた。
いや、応えたというよりは、今までとは態度が一変し、糸の切れた操り人形のように、玉座でガックリとうなだれた。
かなりホラーな現象だった。
なにが起こっているのか理解できず、目を白黒とさせていると、隣から凄まじい風、まるで台風を思わせる暴風が吹き荒れ、俺はその場に踏ん張った。
カルア「貴様、王様になにをしやがったコラァ!」
驚いて見れば、カルアがこれまでにない乱暴な口調で喋っていたので思わず二度見してしまった。
ベニ「あ、まずい。カルアのスイッチが入ってる。防壁張るからカケル、私の後ろに」
な、なにそれぇ。あの子も面白人間ってこと?
トモエ「そよ風ね……」
カルア「――上等だ! 後悔しても遅ぇぞ! 精霊よ、吹き荒れろっ!」
風が幾多ものカマイタチになってありえない速度で放たれていた。大理石でできた床を爪で抉る痕な跡をつけ、ベニが展開した魔法陣にも切り傷をつけている。
まともに受ければ、コマ切れ肉の出来上がりではなかろうか。背筋に嫌な汗が流れる。
しかし、そのような状況にも、トモエは、余裕の笑みを浮かべ、右手を構えるだけで打ち消している。
カルア「うぁあぁあああっ!!」
凄まじい雄叫びが大気を振動させる。
眉間にシワをよせ、憤怒の表情を浮かべたカルアのまわりにさらに風が集まる。心底から血が滾っているらしく、ギラギラと輝いていた。
その有り様は、アドレナリンを分泌し、バカにされたと明らかなムカつきを表していた。
――キィィィン――
耳鳴りの音がする。
台風では、ない。カルアを中心に竜巻が発生しようとしていた。
足元の地面には、ボコン! と爆弾でも爆発したかのようにクレーターができあがった。
ミラ「く、凄い」
一連の攻防を見ていたミラがぽつり、と呟く。自分とのレベルの違いを見せつけられて悔しそうだ。安心しろ、俺から見たらお前も充分危険だ。
ベニ「もう少し、さがる。カルア、本気出す気みたい」
ちょっと待って。これまだ本気じゃないの?
なんだか謁見の間がすでにボロボロになりはじめてるんだけど? というかこんな惨状に他の兵はなにやってんの?
俺の胸の中はいきなりはじまった戦闘に不安しかなかった。恐慌状態である。
――疑問も虚しく、グルグルと天に向けて杖を振り回し、カルアがトモエに向けて叫ぶ。
カルア「風と共に塵と消えよ!! グランドクロスッ!!!」
今日はここまで
荒れ狂った暴虐の塊に、気がこれでもかと練り上げられているのは素人目に見てもわかる。
ドォーン、ドォーン。
衝撃波がソニック・ブームを生み音速の壁を貫き破る不特定な音が二回、鳴り響いた。
装飾品や胴回りが数十メートルはあろうかという巨大な柱たちでさえ、圧に耐えられず、ガラガラと音を立てて崩れはじめていた。
目を閉じて、額から汗をたらしはじめたカルアを前にして、それでもなお、トモエの表情からは恐れを読み取ることができない。
ベニ「ミラ、防壁はることはできる?」
ミラ「はい!」
ベニ「最大級の魔法陣を展開して。アレは戦術級の魔法だから私も、防げるかちょっと自信ない」
戦術級と言うベニの言葉に戦慄する。それは、一度発動すればひとつの都市が滅ぶと言われる威力がある。いわゆる、戦争なんかの大規模戦だとしても戦術のひとつとして通用しうる威力を誇る魔法のこと。
それが、今まさに対個人で使用されようとしている。
ベニの魔法陣が風の勢いを弱めているおかげで、なんとか地に足をついて立っていられるが、まだ激しくなると、隅まで吹っ飛ばされるんじゃないかと身構える。
ミラ「王様は⁉︎ 城は大丈夫なんですか⁉︎」
ベニ「城の外壁には、戦術魔法を遮断する耐圧、耐爆、洪水に特化した結界が貼ってある。けど……」
ミラ「――けど?」
ベニ「内部から発動されたらどうなるかはわからないし、王様も無事じゃ済まない」
ば、馬鹿なこと言ってんじゃねぇ! 止めないと!
くらり、と視界が揺れるのを感じ、状況についていけず、ついに俺が防衛本能として気絶することを選んだかと思えば、そうじゃなかった。
俺は今、プリンの上に立っているかのように重量を感じることができなかった。ゆっくり床が溶けてなくなり、不安定な場所にいる感覚。
地震が起きているとわかった。
大地が、城が、これから起きる厄災を前に震えているようだ。黄金色に輝く粒が、雪のようにひらひらと舞い降る。
カケル「(これはミラが魔法の発動する直前と同じ……いや、もっとやばい!)」
ベニがブツブツと詠唱とはじめると同時に、ミラも集中力を高める瞑想にはいった。粉塵を巻き込みまともに目を開けるどころか、顔を正面に向けられないほどの風が吹きすさぶ。轟音を響かせて風の渦ができ、破砕音と共に巨大な十字架ができあがる。
トモエ「十字架なんて趣味悪いわぁ。まだぁ?」
場にそぐわないのんびりとした声が耳にはいる。待ちくたびれたと言わんばかりに、うんざりしているといった感じに聞こえた。
何食わぬ顔で立っているのはありえない。昨日のゴブリンなら巻き起こっている風だけでとっくに絶命しているだろう。
瞬間、視界の全てを覆うほどのまばゆい閃光があたりを真っ白に染め上げた。目をつぶらずにはいられないほどの強烈な光だ。
音。音。音。
風で持ち上げられたような、ふわりとした無重力の感覚も束の間に破壊音の蹂躙が遅れてこだまする。
ベニ「ぐっ」
ミラ「きゃぁっ⁉︎」
二人の叫び声で、ついに極大魔法が放たれたのだと悟った。なにかできることがあれば自分の命を守るためにやりたいが、俺にできることはなにもない。
ベニとミラに無数の切り傷ができたのか、血飛沫が俺の顔にかかる。
ミラ「こんなの無理です!!」
ベニ「倒れられると困る! 受け止めようとしちゃだめ! 私に合わせて!」
ザァァァ――。
ベニが耐えるように苦悶の表情を浮かべたまま杖をふりかざすと水のヴェールがなにもない空間からあらわれ俺とミラと王様を前に半透明の壁ができあがる。
ベニ「我が盟約に従い、水の精霊よ。清らかな水を集い、我らを守り給えっ!!」
――“死”
現実味のわかない単語が頭の中で浮かんでは消えていく。それを悟らせるほどの圧倒的な力。
しかし、そうはならなかった。
物が崩れる破壊音の中、もくもくと煙のように立ちこめた粉塵が次第に晴れてくると、光が一点に集まり、収束していた。俺たち三人は、呆然と立ち尽くす。ぽかん、と口を開けたままその光景に一時停止していた。
トモエ「うふふ」
輝く極大魔法がトモエの右手にボールの形を淵作り集合体になっていた。
カルア「う……うくぐっ……!」
振り下ろした杖を伸ばしている腕はプルプルと震え、デコには血管が浮き上がり破裂しそうなほど膨らんでている。
ベニ「そんな……うそ……」
唖然とした呟きをベニが発する。ミラは蒼白になり、歯をカチカチと鳴らし、恐怖していた。
無造作に開いた手のひらをグッと握ると、バーーン! と、花火のように弾けて飛んだ。トモエの紫の瞳が弧を描く。
トモエ「格が違うのよ。あなた達と私とじゃ」
悪魔的なささやきは、カルアに膝をつかせるには充分だった。格が違う、言ってみれば、子供と大人ぐらいの差があると瞬時に理解した。きっと、トモエにしてみれば、少し、襟首を掴んでやっただけぐらいの感覚なのかもしれない。悔しさからか唇を噛み血がつう、とアゴに垂れる。
次はこちらのターンだと、闇が、あたりを覆う。トモエの底冷えするかのような笑い声とともに、裂けた地面の隙間から影が噴出し、手が這い出した。
トモエ「ダークハンド」
一本の巨大な手。カルアの視線が足元に向かう。握り拳を作ると、俺がまばたきした瞬間にカルアの腹を突き上げていた。
ゴォンッ!
衝撃波が爆ぜ、数メートルはある天井にカルアの身体はめりこんだ。だが、それでも、拳の動きは止まらない。
音が一つ爆ぜ、また一つ爆ぜた。物理的な暴力。それは、無抵抗な相手をいたぶるための振るわれる一方的な力。
何度も、ラッシュを繰り出し無慈悲に、見えなくなったカルアに向けて破壊をしている。
やがて、衣服も身体もボロボロになったカルアが地面に落ちてきて小さくバウンドする。さらに追い討ちをかけてまだ拳の雨は続く。トモエはチラリと俺たちを一瞥した。
トモエ「――邪魔をしたいならどうぞ?」
ビクリ、とベニの肩が震えた。突如として現れた、正体不明の敵。敵なのは明らかなのに、対抗手段がない。
トモエ「私の見たてでは、ベニもこの子と同じぐらいの魔法しか撃てないわよねぇ」
俺は思った。
これは、一体、なんの冗談だろうと。
頬をつねる。
やはり、夢ではない。
このままでは、間違いなく、カルアは死んでしまうだろう。
産毛が逆立つのを感じる。もし、あのトモエという女の敵意が自分に向けられたら、一瞬で俺は死ぬ。そんなのはわかりきってる。誰だって死ぬのはこわい。最後には自分がかわいいものだ。
偽善者であれば、ここで自分の命を投げ捨てでも助けようとするのかもしれない。
だが、俺は現実をよく見てるし、どうせ俺が殺されたら他のやつも殺される。順番が後か先かの違いでしかない。きっとこいつは、誰も生かすつもりなんかない。国そのものを滅ぼそうとしにきたのだと否応なしにわかる。
カケル「(くっそ、童貞のまま死ぬのか……)」
開き直ってみれば、心に安定が訪れた。こんなことなら村人Bちゃんに告白しておくべきだった。どうせ落ちこぼれの俺は振られてたんだろうけど。
カケル「もういいだろ」
俺の発した言葉にピタリと漆黒の手を止める。
さっさとトドメをさしてやれ。そんなにいたぶらなくてもいいじゃないか。そう俺は思っていたのに、ミラが余計な口を挟んでくる。
ミラ「ダメ! 敵わないよ!」
アホか。敵うわけないのは俺が一番よくわかっとるわい。
ベニ「洗礼がまだ、終わってない」
何度目かわからないが、どうしてこうも俺の考えとは真逆にこいつらは捉えるんだ。俺が立ち向かう気まんまんに見えているらしい。自分達に都合の良いフィルターで判断しすぎだろ。
トモエ「さすがは勇者、といった所かしらね」
お前もかい。
トモエ「うっふふ、あなたは最後のデザートよ。魔王さまは勇者の覚醒を望んでおられるけど、私はそれを望んではいない」
ミラ「魔王さまって……やっぱり……こいつ」
トモエ「今さらとは愚かなるヒトよ。私は魔王さまに仕える四天王のひとり、サキュバスの王。トモエだ」
ベニ「な、なんてこと」
魔王とか勇者とかどうでもいい。どうせ俺はここで死ぬんだ。その場にあぐらをかいて座る。
トモエ「私の瞳を見なさい?」
もうさ、付き合いきれないんだよね。勝手に盛り上がって巻きこまれるこっちの身を考えたことある? いいや、ないね。弱者の都合を強者は考えない。だって感覚がわからないから。
考えたとしても上から目線で助けてやってるとかそういうもんだろう。うーん、なんかこれまでの人生の怒りが湧きだしたぞ。
ベニ「うっ……」
ミラ「な、なにこれ……」
自分についてふけっていると、突然、ベニとミラが困ったように内股を擦り合わせて頬を高翌揚させていた。
トモエ「勇者、お前も見るのよ」
言われるがままに、瞳を見る。紫のかすみがかった色をしているが、別になんてことはない。その中に俺がはっきりと映っていた。
トモエ「え? ちょ、ちょっと。ちゃんと見てる?」
カケル「(見てるだろうが!)」
トモエ「そんな、まさか、効いてない?」
狼狽えるトモエを前に、首をかしげる。俺に駆け寄ってくると両頬をむにゅっと挟まれ、今度は覗きこむように見つめ合った。
トモエ「性欲高まってきた……?」
おずおずと、まるで普通の女の子のように聞いてくる。いい匂いがするから刺激的ではあるが、それだけだった。
トモエ「あ、ありえない。こんなのサキュバスの王としてのプライド、いえ、沽券にかかわる問題よ!」
とりあえずここまで
>>100までに終わるのかい?
>>65
どうしようかなーと思ってます
終わらそうと思ったらいつでもできるのでとりあえず書きたいネタやりきるか飽きるまでは続くと思いますよ
カケル「(それにしても、でけえおっぱいだな)」
ちょっと俯いて、豊満な胸を直視してしまう。谷間ができている乳房は手におさまりきらなそうで、抱き心地の良さそうな肉付きもちょうどいい。
トモエ「……なんだ。しっかり効果でてるじゃない」
視線に気がついても恥ずかしそうにも、嫌がる素振りも見せなかった。ただ、俺の肩をぽんぽんと叩いて、なぜか、安堵した表情をしている。
トモエは柔らかく、優しく微笑んで、あぐらをかいている俺にまたがって腰を下ろした。
トモエ「どう? 私の身体」
腕がぬっと伸びてきて首にまわされる。そして、身体をわざとらしく密着させ、顔に押しつけられるふたつのふくらみ。
その柔らかさといったら童貞にはかなりの破壊力だった。
少し、ほんの少し身動きするだけでふにふにとした感触がダイレクトに伝わってくる。
トモエ「おっぱいに挟まれて気持ちいい?」
たしかに気持ちいいし良い匂いがする。だが、若干、息苦しくもあった。逃げようとすると、両手でさらに乳房を押しつけ、ふふんと笑う。
ミラ「カケルになにやって……っ!」
言い終わる前にミラの両の手足がパキパキと石化した。驚愕と、やられたと悔しさを滲ませる。ぬかりなく、ベニも同時に石化させられていた。
トモエ「雑魚はそこで見てなさい。自分でイジりたいでしょうけど、我慢してね?」
俺の首に人差し指を這わせて、鎖骨、胸、腹へと下がっていく――。トモエは視界を落とし、盛り上がった部分をジッと見つめる。
トモエ「うふふ、勇者も男」
荒い息と、悩ましげな声が耳元で囁かれる。大きな、やわらかな乳房が、俺の顔に当たり、変形して歪み、マシュマロのような弾力ではじけている。
カケル「(気に入らねえ)」
俺が童貞だと見抜き完璧にバカにしているんじゃないのか。穿った考えと俺の中で先ほどからくすぶっていた劣等感による怒りがまさに爆発しようとしていた。上目遣いで見ると、トモエはクスリと笑って耳たぶに熱い息がかかる。
トモエ「極上の体験をさせてあげるわ。私にまかせて」
まかせてだって? やっぱり童貞だと気がついてて、筆下ろし宣言しやがったなこいつ。
カケル「(気に入らねえ気に入らねえ気に入らねえ気に入らねえ!)」
禁欲をモットーにしているわけじゃない。このような状況は普通であれば大歓迎だ。しかし、今の現状をかえりみるに、セックスが終わったら待っているのは死だろう。それならば、最後に気持ちいい思いをして死ぬのも悪くない。
しかし、最後の最後がバカにされたセックスなんてのは嫌だ。俺が嫌いなことのひとつ、人から上から目線で見られること、この項目に目の前のメスブタは思いっきり引っかかっていた。
カケル「(なめるなよ……)」
身体能力や魔法ではかなわない。
――だが、今からやることはなにか、それはセックスという動物的行為である。経験のない俺が唯一、努力と知恵で勝てるかもしれない土俵に上がりこんできたことに内心でほくそ笑んだ。
トモエ「いいのよ。我慢なんかしなくて、今は2人で楽しみましょう?」
どうやら、考えているのをまた勘違いしたらしい。トモエはズボンの上から俺の陰茎をしごき、ぼろん、と手で掴んで取り出した。
トモエ「まぁ……いいおちんぽ……」
手のひらで包み、脈うつ感触をたしかめて、ふーっと息を吹きかける。指の一本一本が陰茎に絡みついて、カリ首や裏筋を這い回る。
はっきり言ってかなり気持ちいい。俺も負けてはいられないとトモエの乳首を刺激しだした。
トモエ「あ、んぅ、あん、あぁんっ」
感度が良いらしい。少しつまんだだけで、身体を反り、目がとろんとしてきていた。
トモエ「あ? え? 少しさわられただけで」
敏感なのは好都合だ。経験のない俺にとって、プラスな材料だった。きゅう、と乳首をつまんでひっぱる。瞬間、身体をビクッと震わせる。
トモエ「いや、まって、あんっ、あぁ」
手からはみ出そうなほどのやわらかで重たい胸をぐにぐにと揉む。こんなにしっかりと丸い形を保っているのに、指で押すと、簡単にふにゃふにゃと形を変える。女性の身体の神秘だ。
トモエ「こ、この……」
ここで手を緩めてはいけない。目的は俺がイクことではないからだ。さあ、行こう。敵は弱みを見せている。ならば攻める時だ。
押しだすように両手で胸をぐっと掴むと、露出度の高い服を引っ張り、乳首をださせる。俺はそれにしゃぶりついた。
トモエ「あ! んあ、あ! なんか、おかしい、吸っちゃだめ! いや、あ、そんな強く……、あ、あ、んあ! ああん!」
トモエは乳房に吸い付く俺を必死に引きはがそうとするが、俺はさらに強く吸い付き、抵抗する。
トモエ「あ、あ、あ、あああー!」
乳首を吸っているだけで、それ以外は全く刺激を与えていない。それなのに、トモエの表情は恍惚とし下半身はがくがくと痙攣しだした。
耳の奥にひっかかるような、甘い嬌声をあげ女が鳴いている。この時、はじめて、トモエの表情から余裕が消えていくのを見た。
まるで、なにか得体の知れないものを見ているような、しかし、快楽に抗えないのだろう。強く目を瞑り、必死に耐えているのか。
試しに、少し甘噛みをしてみたり、口の中で乳首を転がしてやる。
トモエ「ひっ⁉︎ う、うそ、きちゃう、まって、まって、まってぇぇ、あぁぁぁ」
激しい波と電撃がトモエの身体に走っているようだった。つま先をピン、とはり、しばしの間を置いて、俺の膝に生温い水の感触がある。
カケル「(こ、こいつ、小便漏らしてね?)」
尿道口から黄色い液体が、じんわりと広がっていっていた。おそらく、イッたのだろう。乳首に刺激を与えられた。たったそれだけのことで。トモエは赤い顔と荒い息の後、睨んで俺を見る。
トモエ「はぁっはあっ、なにかやったな! 勇者!」
とんでもない言いがかりだ。俺は無能中の無能。落ちこぼれ組である。なにかしたくてもできやしないが正解。トモエが離れようと立ち上がろうとする。しかし、足腰に力がはいらなかったのか、その場にへたりと倒れてしまった。
カケル「(ふはは。なんという無様なやつだ)」
バカにしたやつにやり返すのは実に気持ちがいい。これではどちらが悪かわからなくなってくるが、俺は俺のやりたいことをやる。それは最初からなにも変わってない。まわりが勝手に勘違いしてるだけだ。
逃げようとするトモエの両足を掴み、左右に広げ、じっくりと観察してやる。すると、ひくひくと濡れた秘部は小便なのか、それとも愛液なのかわからないが濡れていた。
トモエ「いや、まって、今はまだ……っ!」
下着をずらし、指を膣の中に挿入する。
トモエ「まってって言ったぁ……っ!」
うねうねと絡みついてくる指の感触のせいで説得力がない。きゅうきゅうと締め付けるそこは、触れた個所から溶けていくかのようにどろどろと濡れていく。
トモエ「イッたばっかりなの! これいじょ、んあ、はぁ、刺激しないれぇっ!」
舌足らずな声で懇願するが、そんなもの、興奮させるだけだ。言葉を無視して腰を動かす。それほど勢いはつけていないのに、じゅぷじゅぷと淫らな水音は簡単に響きだす。止めどなく膣から愛液がどろどろと溢れてきていた。さらに指の出し入れを激しくする。
膣は何度も収縮と緩和を繰り返していて、そのままガクガクとトモエの全身が震えだした。
トモエ「し、知らない、こんなの知ら……あっだめだめ、イク、だめえええぇっ!」
ぷしゃ、と今度は潮をふいた。自分の顔を両手で掴み、白目を剥きそうになっている。いや、ここまで感じられると俺、若干ひいてきたわ。簡単すぎるだろ。
ミラ「カケル……」
ベニ「す、すごい」
外野もなにやら高揚させ発情期にはいっているらしい。その顔は明らかにメスになっていた。お前らの相手なんかしたくないわ。
まずは目の前のこいつ。屈服させてこそ俺が生き残る道も見えてくるというもの。
トモエ「ふぅふぅ……な、なんなの、なんなのよぉ……これぇ……」
膣口はクパクパとまだ痙攣していた。もうここまですればいきなり殺される心配もないだろう。身体を持ち上げ、うつ伏せにする。
トモエ「う、うぅん……な、なにする気……」
ぷりんとした丸みのある尻の肉を左右に指で広げると、アナルが見えた。きゅうっとすぼまった形の綺麗だ。そのまま舌を這わせてやる。
トモエ「ん……そっち、私、まだっ……」
尻をパシン、と思いきり叩く。
トモエ「あひぃっ! ご、ごめんなさい」
ジュン、と愛液がまた溢れだした。この反応、もしかしてこいつ、マゾじゃないのか。
思わず手がでてしまったが、もしそうなら勝ったも同然。にやりと笑いかけてやると、トモエの表情が曇った。なにをされるかわからないという不安があるようだ。
トモエ「あっ……」
アナルに指をぐぷっと潜らせる。苦痛でも覚えたかのように、表情を歪めるが、生憎下半身は喜んでいることを主張している。溶けたようにドロドロの秘部は熱く、俺の指の動きに合わせてひくひくと蠢いていた。
トモエ「ん、んっ、あっ、あっ、人間なんかに」
指の動きに合わせてトモエが腰を揺らす。戸惑いと快楽がトモエの思考を破壊していく。アナルに指を出し入れしながら、秘部を舌で舐めあげることにした。
濃いピンク色のひだをチロチロと舐め、愛液をすくうように吸いつく。
トモエ「ま、あ、やあ、あ! あ、ふあ! んあ、ああああ!」
狂ったように叫んだかと思えば、なにかを諦めたかのように、沈んでいく声。こいつ、感じることを受け入れだしたな。
トモエ「も、もう許して、イキたくないぃぃ」
腰をくねらせ、指と舌から逃げようと歯をくいしばる。とどめとばかりにかたくなったクリトリスを噛んだ。
トモエ「そこはぁっ⁉︎ イグぅぅぅっ!」
ひゅーひゅーとか細い息をしている。意識があるのかわからないが、がくがくとカエルのような格好で全身を震わせていた。
トモエの髪を引っ張り口下手な俺ができる、最小限の言葉で囁く。
カケル「お前がほしい」
なにか間違った言い方をした気がするが、俺が生き残るのに必要だ。であるならば、この欲望に身をまかせてもらって本日はお帰りください。そうすれば、俺は勇者でないから狙われる心配もないし。
トモエは驚いた目をしてバッと振り返り俺をまじまじと見た。
トモエ「ふ、ふざけないで、誰が人間なんかの……」
やはり、まだまだ征服させねばならないようだ。俺としも無理やりなんてのはレイプしてるみたいで好きじゃないから穏便に済ませたかったのだが。
トモエ「おちんぽ、まさか、今いれるの? 私を堕とそうとしてるのね……」
あかん眠い、今日はここまで
ベニ「――今、謎が解けた」
ミラ「え……?」
ベニ「あの女は魔に属する者。それは疑いようがない。でも、あの感じ方は異常」
ミラ「たしかに……私も気持ちよかったけど、あそこまでは……」
ベニ「今のは聞かなかったことにする。おそらく、私達の高ぶりから推測するにサキュバスの類。それもかなり高位な存在」
ミラ「あ、はいっ、す、すみません……」
ベニ「カケルはあの女よりも高位な存在。だから、抗えない」
ミラ「えーと? でもそれだったら、私達も同じようになるってことですか?」
ベニ「そうだけど、厳密には違う。カケルの存在を強く感じるには、相手もカケルの実力に近くなければならない」
ミラ「どうして?」
ベニ「強くないと、相手との実力差を実感できないから。近くなれば近くなるほど、カケルとの力の差を肌で感じる。全体像が見えてしまう」
ゴクリ、とミラが唾を飲み込む。
ミラ「それじゃ、一般の、例えば村にいた人たちがカケルに陰口を言ってたのも」
ベニ「魂レベルで凄さの片鱗がわからないから。蟻が空まで突き破る大きさの巨人を見ても、なにか壁があるとぐらいしか認識できない。肩書きがあれば別だろうけど」
ミラ「じゃ、じゃあ、カケルってあいつよりもさらに強いってこと?」
ベニ「あいつが私達に言った、格が違うという言葉がそっくりそのままあの女にかえってきてる。魂が屈服したがってる証」
ミラ「そ、そんなに凄いんですね……」
ベニ「もしかしたら……カケルが無口なのは、そのせいなのかもしれない」
ミラ「え?」
ベニ「カケルの発する言葉は私達にとって気の本流を感じるのと同じなのかも。ほんの些細な一言でさえ、私達みたいな実力者の魂を掴んで惹きつけてしまう。カケルもそれがわかっていて……」
ミラ「そ、そんな。私、これまで、カケルが無口だとか愛想がないとかひどいことばっかり!」
ベニ「ミラはカケルの幼馴染。ずっと一緒にいた。だから、カケルはミラのことを大切に思って」
ミラ「――……私、なにも知らなかった……」
ミラとベニは、カケルを、己を殺し孤独な人生を自ら選び歩んできた男を想い視線を交わした。
「強い」と一言で終わらせればそれまでだが、一端に強さと言っても様々な形がある。腕っ節の強さ、負けん気の強さ、忍耐力の強さ。人知を超えた神にも等しい力を手に入れたらどうなるか。
――人間は、清廉潔白な生き物ではない。
邪な考えを持つし、気分によって浮き沈みする。誰しもが持つ隙を極力抑え生きてきたのは並大抵のことではないはずだ。カケルのように綺麗なままでいられるだろうか、そう考え、目を伏せた。
ミラ「私達は、勇者のために、カケルのために何ができるのでしょうか」
カケルは、この世に遣わされた希望そのもの。
これまでの勇者が成し遂げられなかった魔王打破ですらも達成してしまうに違いない。
しかし、ここまでの実力差が露見してしまうと、足手まといになるだけだ。それはベニも同じ気持ちだった。
ベニ「五大魔術師なんて言われてる自分が恥ずかしい。世界は広いね」
自嘲的な乾いた笑みが、ミラに向けられる。一筋の涙が、ベニの頬を流れていた。
カケル「(外野がぶつくさうるせぇっ!)」
どうも、また勝手なことを言っている雰囲気がする。意識を向けそうになるが、痛いほどはりつめて脈打つ陰茎を掴むと持ち直した。
トモエ「な、なによ、いれないの? こすりつけるだけ……な、んて」
この女の寝そべった後ろ姿――。
口ではまだ強がっているが、足腰に力がはいらないのは明白であり、秘部はくわえこみたそうに波うっている。擦るだけで下手をすれば射精してまいそうな熱さと気持ちよさだった。
わざとではない。童貞にとって、知識はあれどなかなかに挿入しずらい体位であった為に手間どっていた。
しかし、悟られてはまずい。このままでも気持ちいいので秘部の表面だけを陰茎でヌルヌルと腰をふり続けた。
トモエ「あんっ、あんっ、じ、焦らしてるっ、焦らされてるっ」
子犬がきゃんきゃんと鳴くような矯声があたりに響き、トモエは口からヨダレをたらしていた。頭がくらくらする興奮がある。さらさらとした髪が乱れてるたびに女の匂いがたまらない。心臓が痛いほど脈打って、耳元でシンバルをけたたましく、鳴らされているようだ。俺も、この快楽に没頭することを決めた。
トモエ「ほ、ほし、硬い、だめっ言わないんだからぁっ、ぜ、ぜったい、いれてなんてぇえぇっ」
すべすべした尻を撫でまわし、指で尻穴をほじってやる。時折、秘部の穴にも陰茎がはいりそうな感触があった。
トモエ「ま、魔王さ、ま、お助け、んっ、ください、
、サキュバスの、王の、私がぁっ! ぅ……うぅっ……」
鼻水をたらして、トモエは涙をうるうると目にためていた。どうやら、かなりプライドを傷つけているらしい。こいつ、サキュバスの王とか痛いこと言ってるから、もしかして自分が責められ慣れてないんじゃないのか? いつも自分優位で男を弄んでいた?
トモエ「も、もうやぁっ……いやなのぉ……あんっあん、お尻の穴でも感じるぅぅ」
口では嫌がっていても、むにっと手で尻肉を開けば閉じていた秘部が、ぱっくりと開く。
むわぁっと、まるで口のなかのように、そこは赤く濡れていて、光っていた。
おれは指でさらに押し開く。
すると、秘部の下側、膣の入り口まで覗けるようになり、そこは呼吸でもするようにひくひくと蠢いていた。なんとなくやってみたが、これなら入れる場所もわかるし、挿入できそうだ。
トモエ「ご、ごめんなさい、魔王さま、も、我慢できません、クリもかたくされちゃって、尻穴にも、これから犯されるなら、いっそ、もう」
自分に言い訳をはじめていた。それは、納得させるという諦め。トモエのとろけた表情は、快楽がほしいと物語っていた。今まで自分が操っていた快楽に飲まれるのだ。秘部の縦線に陰茎を押しつける。すると、亀頭の先端がなにか、肉の壁をおしのけて埋まっていく感触があった。トモエがわずかに腰を浮かせた。ここに間違いないだろう。
トモエ「らめぇっ、入り口ばかりされて子宮おりてきちゃう、ガマンできないっ……いれて、いれてくださいっ」
バシン、とまた尻をたたく。
トモエ「きゃうっ! ゆ、勇者さまのぶっといおちんぽをわたくしのおまんこにいれてくださいぃぃっ!」
おうとつがある肉の壁をペニスが押し開き、ぬるぬると奥へ入っていった。脱童貞の瞬間である、しかし、俺にとっては生き残る為の命がけセックスという考えが頭の片隅にあるからなのかイマイチ嬉しくない。
根本まですっかり入ってしまうと、トモエは何度も細かく身体をふるわせる。
トモエ「あ、ああぁぁぁ~~、きたぁ、ぶっといやつ、身体がよろこんで、いれられただけなのにぃ、いくにょ、とまらにゃい~」
つくたびに、ぴゅっぴゅっ、と潮をふいている。膣の入り口がぎゅうぎゅうと締まり、膣全体が蠕動するようにペニスを締めつけていた。トモエなかは熱く、ぬめぬめとした液体であふれていて、無数のひだが前後左右からペニスをこする。
トモエ「あふぁ、あんっ、あたまっ、きれる、なにも、かんがえられっ」
トモエは泣くように言って、腰を自らも揺らしていた。ペニスが膣のなかでぐいぐいと動き、やわらかな肉の壁にこすれて刺激にある。熱い肉と肉の交わりだ。俺はトモエの腰を掴み、腰を根元から奥までズルズルと打ち続けた。
腰をぶつけるたび、ぱん、ぱん、と肉を叩く音が響く。
はちきれそうなまっ白な乳房はぶるんぶるんと前後に揺れ動き、おれは手を伸ばしてそれを鷲掴みにして、乳首をきゅっとつまみ上げた。
トモエの膣はきゅんきゅんとよく締まる。
まるで何十本という指でいっぺんに陰茎をしごかれているような快感だった。
トモエ「あっ、あっ、あっ、あっ、すごいなみ、くる、もう、またイク、いくいくいくいくぅ」
全身が魚のようにびくんと跳ね上がり、膣の締めつけはさらに強くなる。
足の指まで緊張させたトモエの身体をしっかり抱きかかえ、俺は腰の動きを止めず、むしろ自分の射精に向けてさらに早めた。
トモエ「えへ、えへへへっ、これ、しゅごい、いったままでつかれるの、しゅごい」
達したばかりの敏感な身体を肉棒が貫く。
ぴりぴりと電気が走るようなクリトリスの包皮をぐいと向き、撫で回す。
大きすぎる快感はトモエの神経回路をちりちりと焼いて、全身を凶暴に暴れさせた。
カケル「うっ」
俺が小さくうめくと、トモエの瞳に、正気の色が戻る。
トモエ「あ、だめっ! 外に! 外にだして! 今、イキすぎて子宮おりてきてるからぁっ! 孕んじゃうからぁっ!」
トモエの足がバタバタと本能的におれから逃げようとする。
俺は腰をしっかり掴んで逃がさないようにしながら、力任せにがしがしと突き上げた。
トモエ「あっあっ、人間に、種つけ、やだぁっ! 魔王さま、わたし、こいつのものに、なっちゃうぅ!」
脈打つ陰茎が膨らみ、射精が間近だと悟っているトモエは唾を飲み込み、カチカチと歯を鳴らし、怯えきっていた。空気をもとめてあえぐ。
トモエ「やだやだやだやだやだやだやだ、たすけてたすけてたすけてたすけてたすけてぇ!」
俺は腰からペニスを駆け上がってくる精液を、そのままトモエの膣の奥深くに放った。
トモエ「いやああああああっああっ――」
射精されているのを感じるのか、トモエはぞくぞくと身体をふるわせ、握り拳をぎゅうと握りつぶした。
精液が勢いよくトモエのなかへ注ぎ込まれていく――どくどく、どくどくと、悪い薬のようにトモエの体内へ注がれ、混ざり合っていく。
トモエ「はぁ、はぁ、あぁ、だされた。サキュバスの王が、人間に、種づけされたぁ」
射精を終え、おれはゆっくり腰を引き抜いた。
ペニスは愛液にまみれてコーティングされたようにきらきらと光り、飛び散った愛液で内股までぐっしょりと濡れていた。
トモエ「勇者、人間の王はお前だったの……ね……」
そこまででトモエは力なく息をはき、がくり、と気絶してしまった。
とりあえずここまで
もうちょっとで全体でいうとこの序章~旅立ちまでっていう感じになります
で、そこで一旦句切ろうかなと思ってます
文字を詰めすぎてあんまりにも話が進んでなくてまだ予定していた登場人物すらでてきてません
カケル「はぁ……」
まるで今までの出来事が嘘のように、トモエは床をベッドにして、裸の状態で膝を抱えて横になっている。
悪夢のような、官能的な出来事がようやく終わったと、俺は疲れ切った表情でその場にへたりと座りこんだ。
血がすーっと引いて、次第に動悸がおさまってきた。張り詰めていた緊張と気力がここにきて切れたのかもしれない。
ゴソゴソと手探りで腰巾着から、あらかじめすり潰しておいた煎じ薬を飲むと、幾分かは疲労感がマシになったが、顔の筋肉はまだつっぱっているのがわかった。自分で思っていたよりもいっぱいいっぱいだったらしい。
ミラ「カケルっ!」
手をひらひらとあげて応える。あ、そういやこっちの2人は両手足が石化したままだったな。
ベニ「そいつ、起こして」
ぎょっ、と目を剥く。なぜに? また襲いかかってきたらもうセックスバトルみたいな誤魔化しは通用しないぞ。
ベニ「大丈夫。サキュバスには魂に刻まれたから、私たちを守る必要はない。足手、まといで、ごめん」
俺のたどたどしい態度からなにかを察したのだろう。歯切れが悪く、足手まといとかわけのわからないことを言っているが、ベニは苦笑して、気恥ずかしそうに俯いていた。
カルア「……う……ぅ……」
俺たちの話声以外に物音がひとつとしてしない広間からクレーターができた底から呻き声が聞こえる。そうだった。すっかり存在を忘れていたがボコボコに殴られたこいつもいたんだった。放置してたらマジに死んじまうだろうな。
このまま死なれちゃ夢にでてこられでもしたら目覚めが悪い。
仕方ない、起こすか。
できれば放置しておきたかったのだが、ベニの言葉を信じよう。髪を乱雑にかき上げ、そうと決まれば早々にトモエの頬をペシペシと叩いた。
トモエ「……ん……」
なるべく、機嫌を損ねないように細心の注意を払った。かなり優しくしたということだ。
何度か叩いたあと、俺の手に反応して、トモエがうっすらと閉じていた瞳を開く。
トモエ「あ……わたし……あのまま……」
内心俺はビクビクだ。レイプまがいの行為をしたことといい、いつ復讐されてもおかしくない。しかし、トモエは床を見つめるだけで何かをしてくるという気配はなかった。ただ、無気力というか、諦めたように笑みを浮かべていた。
俺にとってみれば、これは奇妙な光景だった。
さっきのセックスは屈服させるために行ったことではあるが、実力差は埋まるものではない。ちんぽの力で勝ったはいいものの、腕力とか魔法でこられたらその瞬間に俺は詰む。
それぐらいわからないわけではないだろう。
トモエ「わたしをどうするつもり……?」
はて? どうするもこうするも俺の命を握ってるのは俺じゃないのだが?
トモエ「サキュバスは、種つけされた相手には死ぬまで逆らえない。……あなたも知っているんでしょう?」
初耳だった。これが魂に刻まれるって意味か。
トモエ「魔王さま、愚かな人間に敗北してしまいた。どうぞ、この世に絶望を……」
深い息をはいて、遺言のようなものを呟きはじめていた。ふぅん、いや、待てよ。この女、実力的には申し分ない。
――なんと言っても五大魔術師を圧倒するほどの力だ。だとすれば、俺のボディーガードをお願いしたりできないだろうか?
村に帰った後は、もう悪さをしないと約束させて解放すればいい。俺も若干罪悪感があるし、それでお互いにいいんじゃないかな。
だから、もう一度、肩に手をあてて――。
カケル「(村に帰るために)お前がほしいんだ……」
真摯に呟いた。
トモエ「私を慰めものにでもする気? 人間の相手なんか」
カケル「そうじゃない」
それきり、押し黙ってしまった。トモエは一言も口を発せず、視線を合わせようともしない。しかし、ひどく悩んでいるようにも見える。やっぱり、だめなのかな。
トモエ「人間なんて、屑よ。魔族にしてきた仕打ちをあなたがなかったことにできるつもり⁉︎」
ガシャン!
凄まじい気の流れを感じ、トモエがいる辺りの床が割れた。おお、恐ろしい。ちょっと怒気をはらんだだけで大理石を破壊するなよ。
金切り声をあげて、あきらかに苛立ちを含んでいた。俺はといえば、恐ろしくて身体が硬直していた。小便漏らしてないだけたいしたもんだね。
トモエ「勇者にこんなこと言っても無駄ね。私を慰めものにするつもりもない。そうでしょ? 私を純粋にほしいのね……」
別段驚いた様子はなく、何も言わない俺を呆れ半分という感じで、苦笑で返していた。また、妙な成り行きである。とにかく、ここは機嫌を損ねないのが大事だ。怒ってる人に否定をしちゃいけない。ゆっくりと頷いた。
トモエ「サキュバスをほしいだなんて、瞳の力がなく言ったのはあなたがはじめて」
淡々とトモエは続ける。
トモエ「わかった。あなたを我が王と認める。今後はマイマスターと呼ぶわ」
ベニ「魔王はどうするつもり?」
厳しい声で質問を投げかけるとトモエは眉を釣りあげた。
トモエ「……あら、まだいたの」
ベニ「ここから動けないから、いる。魔王もあなたの王だよね?」
トモエ「魔王さまは私が好きで従っていただけよ。そのカリスマ性にね。魂が屈服して従っていたわけじゃなかった」
ベニ「魔王って、まさか、女?」
トモエ「察しがいい。その通り、だから私の魂はまだ無垢なままだった。でも、それも過去の話、これからはマスターに身も心もささげる。サキュバスはね、性に奔放だけど、それは主人が現れるまでの話なの魂に刻まれれば、一途でもある」
パチン、と指を鳴らすとベニとミラの石化が解けた。
ミラ「あ……」
トモエ「ほら、解いたわよ。雑魚でも我がマスターの糧になりなさい」
ちょっと待て。今なんつったこいつ。茫然として、開いた口がふさがらなかったが、まずはひとつずつ、疑問を整理しなければならない。何から尋ねるべきか、しばらく迷ってから、言った。
カケル「魔王には?」
トモエ「元々、私たちは弱肉強食の世界。弱いものは淘汰され、強いものが生き残る。あぁ、人間のように陰湿ややり方はしないわよ? 勇者に負けて従うのなら、それで納得されるわ。いえ、むしろそれほどならと喜ぶかも」
カケル「どういうことだ?」
トモエ「マスターは間違いなく、歴代最強の勇者だもの。魔王さま、いえ、魔王は、暇つぶしに飽きて、好敵手の登場を心待ちにしているのよ」
うわぁ、なにそれ。
トモエ「でも、私も一度魔王城に帰る必要がある。残ってる仕事があるから」
ちょ、ちょ! いなくなるの⁉︎ それじゃ意味ないじゃん!心の揺れ動きようなど知らずにトモエは、改めて俺を見上げる格好で顎に手を添えた。
トモエ「うふふ、心配そうな顔をしないで。危険なことはなにもないから」
俺は自分の身の安全を心配しとるんじゃい!
トモエ「でも、そうね。私の覚悟を、サキュバスに種つけした意味を知ってもらうためにはこれじゃ足りない。そこを動かないで」
ミラ「な、なにする……っ!」
トモエ「儀式に近づくなっ!」
駆け寄ろうとしたミラにトモエのけたたましい喝が炸裂する。言葉に力をのせたのか、ミラはその場に直立不動のままビーン、と立ち止まった。もちろん俺も。
トモエ「命に息吹を。生命に力を」
すると、トモエから光があふれ、髪が輝きだしていた。
われわれは神の名の下に平等なのだ。
さあ、互いに手をとり、よろこびの園へと進もう。
呟くような声で、静かに言葉を紡ぐ。これは、どこかで聴いたことがある。精霊神をたたえる賛美歌だ。
ベニ「その呪文はっ!」
唐突に慌てはじめたベニが割りこむ隙間もなく、トモエの髪は白銀になり、瞳は紫から澄んだ色をした金色へと変化していた。もはや、これは魔ではない、あきらかに神聖な儀式のような雰囲気がある。
今日はここまで
賛美歌。
神話の時代、大地を生み出した際残されたもっとも硬い金属と太陽の元となったドラゴンの炎をもちいて、大地に生まれた生き物達が精霊神に捧げるため作詞されたと言われる唄である。
昼が人の世界ならば、夜は神の世界。太陽の光を閉ざし静かに横たわる神はこの唄を聞いて、実りを与えたという伝説だ。しかし、そうした表向きの意味以外に、もう一つ、裏の顔がある。
この唄を詠唱することによって生まれる、禁呪文「リバース」である。
魔族が使うことにより、存在が反転する。つまり、魔から神聖な者へと裏返るのだ。呪文を使用するためにはいくつかの制約がかせられる。
ひとつ、魔族が使用すること。
ひとつ、心の底から願うこと。
ひとつ、力の封印を受け入れること。
これらの条件を全て満たした時のみ、効果は発動する。魔族にとって神族は、気性も、性質も、ありとあらゆる意味で正反対の位置にある。お互いに持ち合わせている敵対心よりもそりが合わない者同士なのだ。ゆえに、リバースを使う、それはなりたくない自分になると同時にこれまでの自分を否定することにも繋がる。
死よりも重い選択である。
そんな大それたことを、一時の気の迷いではないと、覚悟と誓いを持ってトモエははじめたのだ。
全ては、カケルの側にいるためだった――。
伝説の存在である勇者は神の代理人でもある。そちらの都合を考慮すれば、神属性である方がいい。
カッと瞳から、口から、耳の穴から、まるでレーザーのような閃光を放つ。
トモエ「ああぁぁっ! 神よ! 魔族たる私は誓う! この者の為に生き、生涯尽くすことを!」
言葉と共に地に拳をつきたてた。
ズズーンという、重い衝撃音とともにトモエの身体に輝く粒子が纏われる。そこには、着ている衣服は露出度の高いものから、極力身を隠したものへと、まるで袴のような白と赤を基調にしたものへ変化していた。
そして、眩いほど輝くさらさらの白銀の髪、金色の瞳。体型に変化はないが、雰囲気がガラリと変わっている。
トモエ「はぁ……さようなら、魔族の私」
そっと、カケルに近づいてトモエは手を重ねる。うすいヴェールのような微笑みでそのまま撫でた。
トモエ「よろしくお願いします。マスター」
桜色の唇がカケルの鼓膜を震わせる。誰もが、声がでなかった。裏返しはここに成ったのだ。これよりさらに数万年後、トモエの意志を継ぐ子孫が、ある島国で巫女と呼ばれることになる。
しかし、それはまた別のお話――。
- 謁見の間 扉前 -
フラン「……ぜぇ……ぜぇ……この、結界、破れない……ぜぇぜぇ……」
大きな円を描いた魔法陣の内側に円と線をつないだ小さな魔法陣が描かれ、その中心にオリハルコンが置かれ、その周囲に12の宝玉と呼ばれるプレートが置かれている。もっとも大きな大円の魔法陣の外に小さな魔法陣がもう一つ。仕掛けておいたのはトモエである。これが、誰も謁見の間に入ってこない理由だった。
兵士「あの、大丈夫ですか?」
恐る恐る声をかける。この場には既に数百人が駆けつけていた。通路に入りきらない数も含めればもっといる。剣士、魔法使い、それぞれが戦闘態勢なのは言うまでもない。その先頭に立っているフランが先ほどからずっと魔法を唱えたりしているのだが、結界はビクともしない。
フラン「こんな強力な結界、どうしたら……」
その時だった。魔法陣の中央に置かれたオリハルコンが小さく震え、地の底から魔翌力を吸い上げるかのような音が響いたのは。
とっさにフランが杖をふりかざし、場の制御に精神を張り巡らせる。
ゴゥと豪炎があがる。
慣れた仕草で気の流れを操り、そのエネルギーを増幅された方向へと導いていく。
フラン「バランスが崩れた! 中でなにか動きがあったんだわ! 総員! 撃てっ!」
号令を合図に次々に結界に各属性の攻撃魔法が打ちこまれる。すると、小さなほころびはやがれ亀裂へと発展し、徐々にではあるがひび割れの範囲を広げていっていた。
兵士「おぉっ、いけるっ!」
剣士達は唾を飲み、いつでも戦えるように鞘から刀身を抜き出す。瞳には闘志がやどり、やる気まんまんである。
フラン「撃ち方やめ!」
火と水の魔法の余波で、あたりに水蒸気の煙がもうもうとたちこめる。しばらくの後、煙が晴れると結界はもはや、維持しているのがやっとの状態であった。
フラン「ここに古より蘇れ精霊よ、太古の炎よ、純粋なる穢れなき炎よ、焼きつくせっ!」
直径10メートルはあろうかという巨大な火球がフランから放たれる。トドメの一撃だった。直撃と同時に、ガラスのようにパリン! と、音を立てて割れる。
そして、フラン達は謁見の間に雪崩れ込んだ。
- 30分後 謁見の間 -
ベニ「――と、いうわけで、四天王の1人はカケルの信徒になった」
フラン「はぁ」
ジョル「いやはや、面目ないのぅ。手も足もでんかったわい」
カルア「は、はいぃ」
時は少し進み、見渡す限りの人の波に、俺は酔いそうだった。部屋の広さに対して、人口密度が濃い。皆、口々に魔王の直属の側近である四天王という言葉に恐れ慄いている。発端であるトモエは、玉座の裏に全身石化されたジョルを解除して王にかけてある催眠を解くと、すぐに飛び立った。空まで飛べるというのだから村に途中で降ろしてほしかったが、それを言う暇はなかった。
ジョル「勇者どのがおらんかったら、この国は滅びておったのぅ」
フラン「にわかには信じられないけど、私達が手も足も出ないレベルなの?」
カルア「間違いまりません。極大魔法でさえ、片手であしらわれました」
フラン「……悪夢ね……」
ベニ「でも、希望もある。それは、カケル」
全員の期待の籠もった注目を集める。はっきりいってセックスで勝ったなんて詳細を知られると思うと恥ずかしい。
バンドギア王「そこまでにしておくのであ~る。勇者が困っておるであろう。この国を、民を救ってくれて礼を言わせてほしいのであ~る」
いえ、ちんこぶっさしただけですからね!
フラン「王様。魔王軍が予想以上の強さだとわかったのなら、勇者さまに真の力を取り戻していただかねば」
バンドギア王「洗礼を行なってやりたいのだが、それは困難なのであ~る」
ジョル「先ほど、あの女が乱入してくる前にワシと王様で検討していたが、ここに今、伝説の剣がないそうじゃ」
ベニ「えっ?」
バンドギア王「剣は、打ち直しが必要だったのであ~る。ゴダイク王国に保管されておるはずであ~る」
王には後悔の念が浮かんでいた。ちょっと待って。ここで洗礼をして俺が人違いだと証明できないとなると――
バンドギア王「勇者と五大魔術師達は、ユミル姫も同行させて、これからゴダイク王国に向けて出発してほしいのであ~る」
――そう、俺が気がついた通りの言葉を言われた。やっぱり、そうなるんじゃねぇか! ばかやろう、もう付き合ってられるか。こんな命が何個あってもたりないようなのから俺は降りる。そう考え、いの一番に振り返り、人混みの波を掻き分け、帰ろうとする。
すると、移動することさえ苦しいだろうに、人の並が、まるでモーゼの十戒のように縦に割れ、俺が通る道を開けてくれた。
カケル「(な、なんだ?)」
異様な雰囲気を感じ取り、警戒心を丸出しにする。
フラン「王様、勇者様は最初からそのつもりだったようです」
ジョル「誰よりもはやく決断し、行動する、まさしく勇者じゃの」
ベニ「……私達も、あの背中においつく、もっともっと強くならなくちゃいけない」
カルア「はい。勇者さまに栄光を、平和のために行きましょう!」
ミラ「私も、頑張ってついていく!」
ギギギ、と錆びた音がなるように振り返ると、満足気な頷きをしている王とバカどもがいた。
カケル「(か、勘弁してくれええぇぇ~~っ!)」
心の中で声にならないさけびは、いつまでもいつまでも止むことはなかった。
これにて、旅立ちまで完ということで、区切りになります。
五大魔術師の残りの1人とか、魔王四天王の残りの3人とか予定していた登場人物が全てでているわけではないので、続きはどうしようかなーと考えてます。
ここで終わりということにしてもいいと思うので、しばらく時間置いてから続けるかどうか決めます。
レスありがとうございます。
続けるか考えたんですが、ここで終わりにしておきます。たぶんあんまり人気もなさそうですし、なによりこれはこれでそういう短編としてキレイに終わってるとも思えるんで。
HTML化依頼だしておくのでこれにて終了ということでお願いします。
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