モバP「前川さん」

前川みく、私がいま担当しているアイドルだ。猫系のキャラで、高い人気を誇っている。

みく「おはようございます」

彼女が私に挨拶をする。客の前では、猫っぽい喋り方をするが、私の前では敬語だ。

私は彼女に今日の仕事の内容を話し、現場へ向かう。その途中、あの話をする。

モバP「前川さん、今日の芸能ニュース見ました？」

みく「…あれですよね、まゆちゃんの…」

モバP「そう、ダメですよね。アイドルなのに…まあ、プロデューサーもプロデューサーですけどね。」

その芸能ニュースのネタを流したのは私だが。

モバP「アイドルが人を好きになっちゃいけないのに…」

そう呟くと、みくが言う。

みく「でもまゆちゃん、こういってましたよ。あのプロデューサーは運命の人だって。」

なんだそれは、馬鹿馬鹿しい。そう思いながら、私はみくに聞く。

モバP「前川さん、私があなたに言ったこと、覚えてますよね？」

みくは答える。

みく「アイドルは商品。魅力のある商品が人気になる…」

モバP「そう、恋愛はその魅力を奪う。何度も言いますけど、商品である以上、恋愛はダメ。私とあなたが敬語で話しているのもそのためです。一応、男と女ですからね。」

私が彼女と初めて会って話をしたとき、彼女には既にアイドルとしてのプロ意識が感じられた。ただ、私がアイドルは商品という話をしたとき、少し動揺していたが。

みく「…」

彼女は黙ってしまった。まあいい、私は私の仕事をするまでだし、もし彼女が恋愛なんかしたら切り捨てればいい。

私はそう考えながら、現場へ向かった。

仕事が終わり、みくを家まで送り届け、事務所に戻る。

事務所のオフィスで、二人が話している。

一方は私の後輩で、困惑しており、もう一方は千川ちひろ、ウチの事務所の事務員で、一方的に話している。私はその二人に声をかける。

モバP「どうしたんですか？」

後輩P「ああ、先輩、実は…」

ちひろ「聞いてくださいよ。加蓮ちゃん、後輩Pさんのことが好きで、告白してきたそうなんです。」

後輩P「いや、アイドルとプロデューサーですし…それにこの間」

ちひろ「関係ないですよ！ほとぼりがさめてから…」

モバP「ちょっと待ってください。千川さん、何を言ってるんですか？」

聞いた話しだと、アイドルの北条加蓮が後輩を好きになり、告白したらしい。だが、アイドルである以上、そんなことは許されない。