ステージで猫たちが踊る
それぞれ特色がある3匹の猫たち
所狭しと駆け回り、綺麗な鳴き声で魅了する
観客たちから声援が上がり、猫たちが答える
この猫たちのお披露目会は盛況のようだ
こういう場所にはいつもあの男がいるのだが……
どうやら、あの男はいないようだ
このまま何事もなければ良いのだが……
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「ふぅ……あ、プロデューサー」
ステージから下がった猫の1匹が男に声をかける
綺麗な猫の顔に比べ、何とも下卑た顔の男だ
「お疲れさま、アーニャ」
この男の辞書に『労う』と言う言葉があったことに驚いた
いや、きっと演技に違いない
言葉巧みに騙し、猫を虐待する、そう断言できる
「キラキラ、してましたか?」
猫耳をふわりと揺らし、猫がほほ笑む
「ああ、とてもキラキラしてた。衣装も似合ってる」
白を基調として、フリルと装飾がほどこされているが上品に纏められている
「にゃんにゃんにゃんの、新しい衣装です」
とんっとジャンプをすると、スカートが舞う
この男の前で、刺激するようなことはしないほうが良いと思うのだが……
男の目が細められ、妖しい光を放つ
「あ、ドリンクが……」
手から滑り落ちたドリンクが床に落ちるまでに
猫の衣装はびしょ濡れになっていた
「ハラショォォォ!」
男が汚い怒声を上げる
それと同時に、猫をがしりと捕まえる
「プロデューサー? 降ろしてくれますか?」
猫が異変を察して、にゃあにゃあと鳴き声をあげる、が遅い
「心配いらないからねぇぇぇ!」
とてつもない剛腕でしめつけられ、猫は身動きがとれない
「ニチェボー……悪くない、かもです」
この猫はロシアのハーフという話を聞いている
このままでは外交問題に発展してしまうのでは……
「いらっしゃいませぇぇぇ!」
ああ、もう逃げられない……
「いらっしゃいました、です」
猫は混乱しているのだろう
ミチオール……流星のような速さでした、と可愛らしい声で鳴く
また今日も残虐な場面を見せられるのか……
何もできない自分に、とても歯がゆいと思った
「アーニャ、俺を信じてくれ」
男のアプローチがいつもと違う
猫よ、だまされてはいけない! この男は……
「ダー♪ 大丈夫、です」
もう私には止めることはできない
せめて……少しでも苦しまないようにと願う
しかしこの男、罪悪感というものがないのだろうか
「ぬぎぬぎしましょうねぇぇぇ!」
うん、罪悪感などないのだろう
アイマスクをして、猫の衣装をはぎ取る
いつもながら恐ろしい技術だ……
猫は当然のごとく抵抗するが、まったく意味を成さない
穢れがない雪のような肌が露出するのに一分もかからなかった
「プロデューサー……大胆、ですね」
猫の悲鳴が上がるが、男は動じない
そして始まる熱湯責め
「んー♪ 気持ち良い、ですね」
雪のように白い肌が、真っ赤にただれていく
「日本では仲が良い人、一緒に入るですね♪」
男に洗脳されてしまったのだろう、猫が呟いた
しかし、今日は妙だ……男の責めが実にゆっくりしている
この猫に恨みでもあるのかと勘ぐってしまう
真っ赤になった肌に薬品を塗り込んでいく
「んっ……優しい手つき、ですね」
力いっぱいこすり、猫も痛そうだ
白い肌に薄い傷がたくさんついていく
「は、あっ! ……くすぐったいです」
やはり今回はいつもと違う気がする
長く苦しめるような、そんな責めが続いている
薬品の後は決まって熱湯責め、当然のごとく猫が悲鳴を上げる
「すっきり、ですね♪」
このような猫の姿を見ても、微塵も動揺しない男
この男には感情が欠如しているのではないだろうか?
私の疑問にこの男は行動で示した、それも最悪の形で
神よ、御祈りを捧げるのでこの猫にどうか安寧を……
熱湯責めを堪能した男が次にとる行動
もうパターン化しているといっても過言ではない
それは、筆舌に尽くしがたい毒責め
寸胴の中に入っているマグマのような色の物体
「喰らうんだよぉぉぉ!」
スプーンを使い、猫の口に無理やり詰め込んでいく
猫はたまったものではないだろう、ふぎゃあと悲鳴を上げる
「ボルシチですね、美味しいです♪」
毒責めの後、ぐったりしている猫を別室へと強引に運ぶ
「きゃあっ! アーニャ、重くないですか?」
次はどんな拷問が待っているのだろう……
自分が責められるわけではないのに、猫を心配してしまう
しかし、今回の猫はこの男に執拗に責められている気がする
それを察したのかどうか、男がにやりと笑う
相変わらず、いやらしい笑みで寒気がする
用意されていたのはマグマのように煮え立つ物体
それを猫に笑顔ですすめる男
惚れ惚れするような外道っぷりだ
猫はそれに逆らえず、ゆっくりと舐める
「ボルシチ、グランマの味がします」
この男の望みは何なのだ! 叶えてやるからどうか猫を……
「隠し味は愛情だよぉぉぉ!」
もうこの男の声は聞きたくない
「ごちそうさまでした」
猫の恨めしそうな声が耳に響く
「おそまつさまでしたぁぁぁ!」
まだまだ猫は解放されない
力一杯放られて、別室に連れていかれる
毎度こんなものを見せられると感覚が麻痺してしまう……
そこは真っ暗の部屋
光も何もない、暗闇
「見てごらんよぉぉぉ!」
男の合図とともに閃光が走る
網膜が焼け付くような光
猫を失明するには十分な光量だろう
「わぁ、ズヴェズダ……たくさんの星、綺麗です♪」
未練たっぷりの猫の声が鼓膜にこびりつく
「綺麗だねぇぇぇ!」
「静かに、ね?」
猫の精一杯の主張
「ウス……」
幸か不幸か、それが届く
この流れから行くと、猫の終わりが近い
ああ、いつまでこれを見届けなければいけないのだろうか……
「ふわぁ……」
猫の苦しそうな声
それを悪鬼羅刹のこの男が聞き逃すはずがない
「えいしゃぁぁぁ!」
鬼気迫る顔で猫を担ぐ
もう、この猫の運命は決まってしまった
恨むなら私ではなく、この男を恨んでくれ
「プリヴェート……ごめんなさい、プロデューサー」
猫の弱弱しい声
それに男が力づくで答える
「きゃあ! ……ふわふわ、ですね」
ごつごつとした床に猫を放り投げる
神よ……この男に天罰を与えてくれまいか
こんな男を野放しにしていては、他の猫も安心できまい
「スパスィーバ……ありがとうプロデューサー、アーニャは貴方が……すぅ」
猫の最後の言葉
それを聞いて男が大きな笑い声を上げる
この男を止める術を誰か……
「アーニャ? 恒常も限定も引けなかったんだよなぁ……」
また意味不明な言葉を残して部屋を去る
残されたのは力尽きた猫
私はいつまで耐えればいいのだろうか……
おしまい
読んでくれた方に感謝を
また読んで頂く機会があればよろしくお願いします
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