絵里「…進路どうしようかしら?」 (15)
絵里「はあ」
希「どしたん?」
絵里「いえね、ちょっと将来の事で」
希「将来の事?」
絵里「そうなの。私は将来どんな職に就いたらいいのかと…」
希「大学に行かないの?」
絵里「行くわよ?でも、何となく大学に行くだけじゃダメでしょ?その先も見越して大学も決めなきゃ」
希「えりちは真面目やね」
絵里「そう言う性格なのよ」
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希「今の所何になりたいとかあるの?」
絵里「う~ん…」
希「とりあえず、漠然としたもんでええよ?」
絵里「漠然と…そうね…お嫁さんかしら?」
希「おっと…これは賢くない解答が来たね」
絵里「だって、希が漠然とした答えで良いって言うから…私だって女の子なのよ?少しは…憧れるわ」
希「いや、可愛いけど。今の凄く可愛いけども。何?えりちは就職しないでいきなり結婚するん?相手もいないのに?」
絵里「それは…わからないじゃない」
希「いたとしても大学と同時に結婚ってのは現実的やないでしょ?」
絵里「…たしかに」
希「それにえりちはお馬鹿な所はあるけどスペックは高いからな~。萎縮して男の子が寄り付いて来なさそう」
絵里「え?私、一生独身?そんなのは嫌よ?」
希「そしたら、うちが貰ってあげるって」
絵里「希…」
希「ん?」
絵里「私達同姓よ?」
希「いや、知っとるよ。何を真面目に返してるん?小粋なジョークやん?」
絵里「それよりも、私にあった職種を考えてよ」
希「えりちに合った…例えば…こう…えりちが憧れる物って他にはないの?」
絵里「そうね。私って結構本を読むのが好きなのよ」
希「たまに読んでるもんね」
絵里「そうなの」
希「何?作家になりたいとか?」
絵里「違うの。私って推理小説が好きなのよ。だから、探偵!」
希「…探偵?」
絵里「うん。名探偵になりたいわ」
希「名探偵になるにはまずある程度の実績がないと無理やけどね」
絵里「ああ、名探偵はゆくゆくはね。とりあえず、探偵なんて良いかしら」
希「あのね、えりち?たぶん、えりちが想像と現実は全然違うと思うよ?推理してどうこうとかやないよ?」
絵里「…そうなの?」
希「うん。浮気とか素行調査が主らしいから…えりちは目立つから向かないと思う」
絵里「そんなぁ」
希「他にはないの?」
絵里「そうね…医者とかは?」
希「随分と簡単に考えてない?」
絵里「そんな事はないわよ。ほら、たまに真姫の話を聞いてるとね医者って凄い尊い仕事なんだなって思うのよね」
希「まあ、人の命を救う職業やからね」
絵里「そうなの。真姫の話だと日本って小児科の医師が少ないらしいのよね。だから私が子供達の輝かしい未来を守れたら素敵じゃない?」
希「うん。そうやね。でも、今からじゃちょっと遅いんじゃない?普通もっと早くから勉強しとると思うよ」
絵里「…そうよね。軽率な発言だったわ」
希「他には?得意な事とかで探すのもええんやない?」
絵里「そうね。私と言ったらロシアよね?通訳とかは的」
希「えりちにロシアを感じたことがあまりない」
絵里「ハラショー」
希「…」
絵里「…」
希「…えりちが似合いそうな職業とかは…秘書とか向いてそうやん」
絵里「キャバクラとかは?」
希「やめて。それはやめて?」
絵里「何で?キャバクラだってプロ意識をもってやってる人はいっぱいいるわ。失礼よ、希」
希「そうやけど。そうなんやけどえりちはやめとこ?」
絵里「まあ、半分冗談で言ったんだけど」
希「半分なんや」
絵里「そもそも、人にあーだこーだ言ってるけど希はどうなの?」
希「あーだこーだって。えりちから相談してきたんやん。それに、ウチは心理学を学ぼうかなと」
絵里「ええ?決まってるの?」
希「この時期に決まってない方が珍しいよ」
絵里「何で心理学なの?」
希「ウチって占いとか好きやろ?」
絵里「そうね」
希「でも、占いって世間的には非科学的やろ?」
絵里「まあね。スピリチュアルって言ってるしね」
希「なのに何でみんな占いを信じるのかな~って思ったんよ。だから、心理学を学ぼうって」
絵里「え?それだけ?」
希「きっかけなんてそんなもんやない?」
絵里「…じゃあ、私は職人さんなんてどうかしら?」
希「職人さん?えりちが?あんまり想像つかないんだけど」
絵里「こないだ穂乃果の家でお饅頭を食べてる時に思ったのよね」
希「何でお饅頭を食べてる時に思ったん?意味が分からへんけど」
絵里「いや…あんこっていったい何なのかしらって」
希「あっ、職人って和菓子職人?」
絵里「ええ」
希「あんこは小豆やん?」
絵里「あっ、そうか」
希「…そうかって。仮に和菓子職人になるとして穂乃果家にお世話になるつもり?」
絵里「いいえ。知り合いの所だと甘えが出るわ。自分の店を出すのよ」
希「いきなり?」
絵里「それは…修行して」
希「えりち…真剣に考えてる?」
絵里「ふざけてるように見える?」
希「ふざけてる方が救いがある」
絵里「じゃあ、弁護士とかどうかしら?」
希「弁護士?」
絵里「そうよ。弁護士よ。自分で言うのもなんだけどそれなりに勉強はできる方だし」
希「確かにえりちは勉強は出来るけど弁護士は口がたつ訳ではないしなぁ」
絵里「そんな事ないでしょ?」
希「しょっちゅう、にこっちに言いくるめられてるやん」
絵里「…それは」
希「まあ、にこっちは意外と地頭が良いからね」
絵里「それだと私が地頭が悪いみたいよ」
希「う~ん。まあ、えりちは天然やから」
絵里「え?何を言ってるの?天然て言うのは海未とか凛とかを言うのよ?」
希「…うん。そうやね」
絵里「そうよ。全く、嫌だわ。うふふ」
希「えりちは生徒会長も何だかんだ言ってちゃんとこなしてたし仕事は出来そうな感じがするんやけどなぁ。何で思い浮かばないんやろ?」
絵里「さあ?」
希「根底がポンコツだからかな?」
絵里「ええ?」
希「そもそも専門的な職につきたいの?」
絵里「そう言うわけではないわよ」
希「事務仕事とかは?」
絵里「それこそ漠然としていて分からないもの」
希「まあ…でも生徒会なんてまさに事務仕事やから向いてるんやない?」
絵里「そうかしら?」
希「まあ、でも」
絵里「何?」
希「そんなに焦って決める事はないやん」
絵里「いや、だからね?方向性を」
希「無理に決めたってきっと上手く行かないよ。やりたい事を大学に探しに行く。それでもええんやない?」
絵里「良いのかしら?そんないい加減で?」
希「いいんよ」
絵里「そっか」
希「ウチは○○大学の心理学部に行くつもりやけど…えりちも…」
絵里「え?」
希「えりちもそこでええんやない?えりちの成績だったら行けると思うよ。やっぱり、ウチはえりちと一緒にキャンパスライフを送りたいなぁ」
絵里「…希」
希「どう?にこっちが居ないのは寂しいけどえりちが居てくれたら…」
絵里「仕方ないわね」
希「えりち」パァァ
絵里「フフッ。最初からそう言えば良かったのに回りくどい性格してるわね」
希「それは…お互い様やん?」
絵里「そうね」
完
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