げんきいっぱい5年3組 大人編2 (オリジナル百合) (43)

げんきいっぱい5年3組 (オリジナル百合)
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げんきいっぱい5年3組 大人編 (オリジナル百合)
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の続きでみやちゃんと上林さんのエロ
これで、ラストにしたい…といつも言っているような気がする



「上林さん、手離して」

「いいじゃない、けち臭いわね」

「ちょっと」

いらいらする。何を言ってもいらいらいらいらさせる。
私の手を握りしめて、隣を歩くこの女。上林ももが。

「あ、星、綺麗」

「そおね」

「思ってないわね」

「そおよ」

小学生の頃、3人の間に無理やり入り込もうとした。
いつも高飛車な態度で、こちらをバカにしたような目をするし、自分が否定されているような気持ちになる。
それこそ昔のこと。覚えてる方が損で、忘れた奴は得をする。
ずるずる引きずって、びびって、何も手に着かなくなったりして。
覚えておきたくないことばかりなのに。

「あんたって、あゆむの手も繋ぎたがったよね……」

「よく覚えてるわねそんなこと。昔はね、お父さんが、よく繋いでくれてたの」

「ふうん……」

左手が汗ばんで気持ち悪い。
互いに走ったせいだ。

「子どもみたい?」

上林さんが私を見る。
甘えるような視線に体が少しこわばった。
そんな目で見ないで。でも、気づかないで。

「手を繋いだりなんて、そんなにしないから……」

「ああ、恥ずかしいの?」

「……」

「恥ずかしいって思う人が恥ずかしいのよ。相変わらず、心が狭い人」

相変わらず、人の心にどかどか土足で入ってくる奴。

「そんなに睨まないでよ。分かった、離すわ」

指と指の隙間を風が撫でた。調子狂う。振りまわされてたまるか。
今さら、好きなんて言われて、心を躍らせて素直になれるようなら、こんなひねくれた人間になってなんかいないのに。

「束縛女」

精一杯の悪態を吐く。

「あー、それは全く否定しないけれど」

いや。
そこは、してよ。
怖いから。

「あなたはすっかり根暗になったわね。地味と言うか、干物というか」

上林さんは、そう言って汗で肌にまとわりついた細長い髪を後ろへ払った。
自分は輝いているとでも言うんだろうか。
確かに、中学からこいつは変わった。
私をいじる時も生き生きしていた。
当時のそれが苦痛だったのか、今思うと、分からない。
喧嘩もしたけど、嫌だったのか、分からない。

「別に、あんたの期待に応えるために生きてないし、何も変わってなんかいないし」

「そうねえ」

彼女の視線が、私の胸に注がれる。こいつ、どこ見て言ってんのよ。
もちろん、上林さんの凶悪な胸囲にケチをつければ、返り打ちに合うことが予想されるので何も言わなかった。

「確かめてみないといけないわね」

にこりと笑う。

「はい?」

何を、とは聞けなかった。

こんな強引な女だとは。知っていたけど、なんでこんなことに。
私は、ベッドの上に組み敷かれて、また、上着を脱がされていた。

「や、やめなさいよッ……だいたい、私達、まだ」

「まだ付き合ってない? それとも、これから予定が?」

「予定なんて……」

「今夜だけになっちゃうかもしれないし、思い出づくりしておかないとね」

思い出づくり?
ふざけてる。はだけた胸を必死で隠しながら、上林さんの伸びてきた腕に軽く噛みついた。
痛くもかゆくないのか、笑みを浮かべる。代わりに私が小さく悲鳴をあげた。
私が噛んだ部分の唾液を舐めるようにして、彼女は舌を動かしていた。
見上げれば、豊満なバストが私の視界の半分を納めている。
自分とこれ程かけ離れていたら、多少はどんな触り心地なのか興味はある。
目の前で揺れる乳にそっと手を伸ばそうとした。

「こういうの、まさか、初めて?」

はっと思い留まり、手を引っ込める。
笑われるのを覚悟で、彼女の問いに、小さく頷いた。

「したことない……です」

「男の人とも?」

「……うん」

あんたはどれ程のもんなのよ、と返そうと思ったけれど恥ずかしくて飲み込んだ。

「呆れた。何に操立ててるのかしら? 神? 尼さんにでもなるの?」

好き勝手に並べたてつつ、私の履いていたスカートを下にずらしていく。
黒のタイツとうっすらと透けた下着が見えた瞬間、私は抵抗した。

「どこまでする気よ!?」

「こういうの興味ない? まあ、なくてもそれはそれでいいんだけどね」

スカートを掴んでいた手を上から握りしめられる。
細い指。

「……べつに」

ない――わけじゃ、ないけど。

「あんたに玩具にされるのは気に食わない……から」

彼女は、少し体を離した。
こちらをじっと見るものだから、耐えきれずに視線を逸らしてしまった。

「そう」

また、笑う。
このサディスティックな女王は、私をどうやったら困らせるか考えているに違いなかった。

「じゃあ、本気であなたにエロいことして、イく所見たいわ」

私の頭の中では、彼女を向こうの壁まで突き飛ばしている予定だった。
なのに、体は全く動こうとしない。
あまりにも耐性のない言葉だったからなのか。

「……なッ……あたま……おか」

なに、あんた、あたま、おかしい。
動悸のせいで、口も体も思うように動かない。

「赤くなった」

子どもみたいに、上林さんは無邪気に喜んでいた。
私の反応が予想通りだと言うように。
何をそんなに嬉しそうにしてるのよ。
瞬間、前触れなく、形の良い唇が目の前に迫った。

「……んッ」

キスされた。
と、理解した頃には舌を入れられていた。
なにこれ。
もしかしたら、お遊びなんじゃないかとさえ思っていて。
未だに、過去の制裁のための罰ゲームだとさえ感じていた。
なのに、キスはあまりにも深かった。
絡ませてきた唾液がぬるぬるしてぞくぞくして――ふざけるな、と言いたかった。
私のツバを求めるように吸ってくる。
やだ。いや。

「ふーッ……ふ」

口で呼吸できない。死んじゃうから。
彼女の荒い呼吸と、私の不甲斐ない鼻息が混ざる。

「下手くそね……」

キスのことだ。
分かってる。
分からないことが多すぎるからだ。

「ぁッ……すゥ……はあッ」

海面から這い出てきたみたいに、情けない顔をしているに違いない。
それなのに、上林さんは容赦なく舌を吸い続ける。
じゅるじゅると、聞いたことのない音が脳に直接叩きつけられた。
この行為はキスなのか。
もはや、謎。

何をしたいの。
何をされてるのか、誰か説明して欲しい。
どうして、顔がこんなに火照っているのか。

「良い顔になったわ」

「や……」

べとべとの口回りを私は腕で拭った。
カッターシャツにも飛び跳ねて、少し湿っぽくなっていた。
頭がくらくらする。
こいつ、キス、いやらしすぎる。
睨み付けても、呼吸が、邪魔をする。

「息荒くなってて、興奮しちゃうかも」

すっと、胸の方に腕が伸びる。

「仰向けになると、何もない。びっくり。あるのは乳首くらいね」

「ひ……ぅ」

胸というよりも、先端を掴まれた。
唾液を絡ませた親指の腹を、こすりつけ、しごかれる。
自分でもあってないようだと感じていた胸のわずかに柔らかい部分を、ソフトに揉まれた。

(……う、なんでそういうこと……できるの……よッ)

同性の乳首を摘み上げ、押しつぶす。
人に触れられて、こんなに敏感な部位だったことを知った。
知りたく無かった。よりにもよって、あんたに教えてもらうなんて。
コントロールの効かない体が、憎い。

「ちょっと、座って」

「え……」

言って、彼女に腰を掴まれて引き寄せられる。

「ひッ…じ、自分で座るからッ」

今、どこを触られてもぞくぞくしてしまう。ありえない。
これ以上、自分の感覚の先を知りたくない。
目の前の美しい悪魔を直視できない。

「こっちも、吸って」

吸う?
どこを。
彼女が指差しているのは、彼女の太ももの間の、いわゆるあのそのこのどのなにの――デリケートゾーンで。
いつの間に彼女は下を脱いでいたのか、白いレース下着はうっすらと湿っていた。
私はすぐに目を瞑って、上林さんの胸を押し戻す。ぽよんとした。
うわ、全然違う。

「なーんて、冗談。お子ちゃまにはまだ早かったわよね?」

「や……めてよ。分からないんだからッ……変なことさせないで」

「気持ちよさそうに、キスされてたくせに」

「そんなこと……」

「嘘おっしゃい」

気持ちいいとか、そんなこと感じる余裕なんてほとんどない。
なのに、どうしてこんなに体が疼くのか。

「……ここ」

内腿の付け根に上林さんの指が当たる。当たっている。
下着の線をなぞっている。今度は何をしようというの。
ああ、でも、それは考えなくても分かってしまう。

「なんで濡れるか知ってるわよね? もう、子どもじゃないものね」

(……いちいち聞かないでよッ)

私は何も言わない。言っても言わなくても、同じ。彼女の行動を止められない。

「キスも愛撫も全部なんのためにあると思う?」

「……わ、からない」

指が下着の中にするりと入る。
割れ目に垂れている粘液を絡ませながら、

「ここを気持ちよくするためにあるの」

「ば……変態ッ」

下着越しに、彼女の手を握る。
下腹部の異物感に、いっそう脈が速くなった。

「男だったら、貫通させてあげるんだけどね」

「こ、怖いこと言わないで」

「……これで、我慢してね」

まるで、私が欲しがっているみたいに言った。
上林さんは、邪魔になったのか、自分のシャツとブラを取り払った。
これまでの行為が、部屋の甘く青臭い雰囲気が、彼女の白い裸体にまとわりついて、私を苦しめる。
同性の体なんて、どれも同じようなものなのに。
こんな風に初めて汗ばんだ体を寄せ合ったから、その肌の重なりに酔っているだけ。

「肩の力抜いて」

「え?」

考える前に、指が挿入された。

「いッ……た」

「きつ」

「変な物入れないで……よッ」

やば、泣きそう。
膣が苦しい。ぎちぎちして、ぞくぞくして。
異物感が増し、生き物が侵入してきたようだ。
ほんと、まいる。
すぐに動かしてきたので、私は腰を浮かせて、彼女の肩にしがみついた。
足の力が抜ける。腰が反った。

「大丈夫大丈夫」

頭を撫でられる。
優しく言わないで。がらじゃないくせに。それ、ほんとに、泣く。
痛みは数秒で無くなって、二本目をすんなり飲み込んでいった。

(……指、二本も入ってる)

「見える?」

私のべたついたおでこに、彼女のおでこがぶつかる。
近いのよ。涙ぐんでいるのがばれるのが嫌で、顔を背けた。

「膝、震えてるの……可愛い」

「そういうの……ッいいから」

「頑張ったわね……ご褒美」

「誰のせいだとッ…‥や」

うごめき出した指が、下腹と背中にしびれと悪寒を走らせる。
だめ、これ。ほんと、むり。
今さら、止めてとも言えず、歯を食いしばる。
やるならもうさっさと終わらせたい。
奥の方にある、でっぱった部分を何度も擦られていく。

「む……りぃ……ッやだぁ」

必死に我慢しようとしてそれでも出てしまった声は、思いの他甲高くて、自分のものではないようだ。
急いで手の平で口元を覆った。

「ん……ッ」

「気持ちい?」

私は首を振ることもできない。
ただ、声を出さないように耐えた。
大丈夫、大丈夫。すぐ終わる。何が来ようと、すぐ終わる。
もはや止められない。自分ではどうしようもできない。

「ぅ……ッぁ」

体が震えて、上林さんの背中に回した指に力が入る。
どうにか爪を立てないようにして。

「ふふッ……泣きそう」

ほんと、ゲス。
人の顔を見て、嬉しそうにして。
指摘されて、我慢していた分が頬に流れた。
まぶたにキスされる。それから、唇の上を舐めた。
割れ目から入ってきた舌は、柔らかくて、

「キス……舌入れるのいい?」

聞かれても困るから。
答えなかったせいなのか、膣の刺激が強くなった。
気持ちがいいのが、悔しい。もっとして欲しいと思ってしまうのが、嫌だ。

「い……んッ」

「痛くないのよね? 言わなくても、分かるから」

欲しい。もっと、欲しい。
認めたくないのに。

「気持ち良かった所、教えなさいよ」

なんで、ここで命令口調なの。
どうせ、逆らえないのに。

「口の中……」

「他には」

「……言わなきゃダメなの」

「ここで止めていいなら」

埋め込んだ指がずるりと入口付近まで引っこ抜かれた。

「なに……ずるぃ」

「私は、あなたが嫌々する顔や我慢してる顔を見るだけで……気分が良いの」

「ば……」

なんで私なの。

「ほらほら」

円運動をしつつも、指を引いていく。
指が、膣内から抜き出される直前になって、私は潔くばらした。

「それ、それが気持ちい……指」

「誰の?」

「そ……れは……上林さんの」

そこまで、言わせるか。
めんどくさい女。
満足そうにして。
私を弄んで。

「あなたの声……聞きたいから、我慢しないで」

耳元でそう言った。
そんなことを言われても、そういうわけにもいかない。
私は必死に口元で手で覆い、彼女は片手で腕を掴んで引き剥がす。
せり上がってきた快感に顔が歪んでいく。

「見……るなッ」

頭の中は最後の瞬間を待ち望み、もはや体裁など気にする余裕もなくなって、

「イく?」

「……ンッ」

その問いにも答えられず、折れるんじゃないかと思うくらい、私は彼女の指を締め付けた。
全身から汗が噴き出て、産毛が逆立った気がした。
しばらく、ポンプのように呼吸だけしかできなかった。
気力が果てて、ベッドの上に倒れるように横になった。
上林さんが見下ろしてくる。
何か言っているけれど、右から左。
疲れた。
数分くらいそうして、落ち着いてから彼女は言った。

「……みやさん」

「うん……なに」

「これで、仲直りね」

「あんた……」

「友だちかしら?」

上林さんが言った。

「これのどこが……友だちなのよ」

彼女は少し遠慮がちに髪に触れてくる。
いらいらは無くなっていた。
手を握りたいと思った。
私の中に、彼女の存在を自覚し始めたのだった。




おわり

エロ苦手な百合好きさんごめん
参考までに、このssの読みたい小話とかありますか?

エロもいいけど、単純に4人で集まって駄弁ってる話とかみたいかな

追い付いた
一気読みしたから色々あるかもww
あゆむとやすはの小学生から中学生までとか初キスとか初体験とか受験とか社会人になってからとか
ターニングポイントの様な所は全部気になるかも

>>20
特に書き溜めてないのですが、
まずそれから書いてみます

と、思ったのですが時系列的に踏んでかないと難しいので、
先に>>21から書いてみます

1、小学生編続き(元の時代に戻らなかったもう一つの世界線のあゆむとお考えください)


夢を見ていた。
夢の中を歩いているみたいだった。
そう思って、ここ何日か過ごした。

「みやちゃんも友だち。離れることもあるけど、いつまでも友だちだよ」

「私は?」

「尊敬できる友だちだった」

「だった?」

やすはが小首を傾げる。
それは、あの写真で見た時と寸分違わぬ愛らしさがあった。

「でも、いつまでも離れたくない。どこにも行かないで欲しいし、誰の所にも行かないで欲しい。そういう自分勝手な想いがどんどん膨らんで……ごめん、坂本がいるのに迷惑なこと言うんだけど」

「……言うだけならタダだよ」

「えへへ、そうだよね」

私は少し背の高いやすはを見据えた。
そして、私は最後の後悔を口にした。

「やすはが好きだよ」

「……」

「どこまで伝えたら伝わるかな……私は、やすはが欲しい」

だいぶ、子供らしくない言葉だった。
平静を装いつつも、朱に染まるやすはの頬を見て、私は微笑むしかなかった。
やっぱりやすはは大人だなあ。
返事は待たずに、彼女を抱きしめた。
せっけんの香りがした。
柔らかい。

「あゆ……む」

「返事、今、聞きたい」

「……私も、あゆむじゃなきゃいや」

「うん」

坂本には悪いけど、心の中でガッツポーズをとる。
しばらく、そうやって互いの熱を感じていた。
願わくば、この夢が覚めないようにと願いながら。
けれど、私自身がここに留まる理由が、もはや見当たらなくて。

「やすは……ッ」

「あゆむ……泣いて?」

「嬉し泣き…えへへ」

「そっか」

やすはの優しい声。

「やすは……今日、寝たくない」

ぎゅっと体を強く抱く。

「一緒に起きてるよ」

たぶん意味は通じてないと思う。
だから、ただ傍にいてくれればいい。
私は彼女の手を握りしめて、ホテルの部屋へ戻った。

部屋の前には、みやちゃんもももちゃんもいなかった。もしかしたら、ちゃんと話し合っているのかもしれない。
ただ、今だけは来ないで欲しい。エントランスホールから、ずっと手を握りしめていたけれど、
部屋に入ってからちょうど見回りのために隣のクラスの先生がやって来てとっさに離してしまった。

「もうすぐ就寝時間ですよ、お風呂は入りましたか?」

すっかり忘れていた。

「この後すぐに入ります」

「分かりました」

先生が出て行って、どちらが先に入るかでじゃんけんをすることになった。
何度かあいこになり、この流れは一緒に入るのではとやや期待してしまった。
しかし、すぐに軽い自己嫌悪に陥り、やすはを先にお風呂へ促したのだった。

ちょっと眠いのでここまで

枕を適度に柔らかくするために、やすはがぱんぱんと叩いているのを見ながら、
つい先ほどから、付き合うことになったことをしみじみと噛みしめていた。
噛みしめれば噛みしめる程、なんだか明日になって目が覚めたら、
なにもかも元に戻ってしまうような気さえした。

「寝れないんでしょ?」

体育座りでやすはを見ていた私に、彼女は言った。

「やすは……」

なら、いっそ今たっぷり甘えておきたい。
すりすりしておきたい。
いや、だめだ。
だめ、だめじゃない。
どっちだ。

「あゆむ、おいで。手握ってあげる」

「わーい」

この子、ホントに私のツボを心得てる。

二人、部屋の壁にもたれ、部屋の電気をほのかに灯した。
本当だったら、もっと胸が高鳴ったりするものだと思う。
大人になってしまったのが悔やまれる。
初恋の淡い感情とは、どんなものだったのだろう。
隣にいれるだけで嬉しいのに、寂しさがある。

「今日は、なんだかんだ楽しかったかも」

私は言った。

「うん。でも、観覧車でキスしてる時は、さすがに見てられなかった」

「あ……あの、ごめん。やすは」

しっかり見られてましたよね。
すいません。本当に、すいません。
握っていた手に、やすはの指が食い込んだ。
痛い痛い。
えっと、キスした方がいいのかな。
うーん、さすがに絵面的には大丈夫だけど、精神的には犯罪クサい。
勘違いかもしれないし、あっちから言われたらしようか。

「私にもしてくれる?」

「あ、うん……え、うええ?!」

積極的だね!?

「もう少し大人になったら」

私は突き出した口を慌てて引っ込めた。
危ない。押し倒すところだった。

大人か。
明日も、明後日も、大人になっても、私達一緒にいれるかな。

「大人って、どれくらい先?」

そう聞くと、答えは早かった。

「中学生になったら」

なるほど。
中学生になったらキス解除なんだね。

「じゃあ、それまで待つよ」

「うん」

離れたくないな。
ずっと、子どもの時から特別な存在だった。
彼女の好きなことをしてみたくて、彼女の視線を追っていた。
気持ちが募っていくほどに、余計なことを言ってしまわないか怖くて。
上手く話せなくなっていった。
部屋が暗くて良かった。私は熱くなっていく瞼を片方の手で抑えた。

「眠くなってきた?」

やすはが聞いた。

「うん……そうだね」

せっかく、二度目のクラス旅行を、君とこんな風に過ごせたのに。
離れたくない。このまま二人で、ゆっくりと進んでいきたい。
同じ道を歩むなら、もう失ったりしないから。
君と歩いていく努力をしていくから、どうか、このまま――。




小学生編続き おわり

2、小学生編日常


私は、クラス旅行の日をまたいでも、やすは達と同じ時を歩み続けていた。
ここで頑張れと、神様が言っているのかもしれない。
それとも、性質の悪い夢が未だ続いているだけなのか。
もしかすると、元の時代には別の自分がいつも通り生活していたりするのだろうか。
となると、元の時代の私からすると、私という存在はかなり羨ましい。
そんな、誰にも言えないような秘密を悶々と考える時もあれば、やすはの可愛さに悶えたりしていた。

「みやちゃん、宿題の答え合わせしない?」

みやちゃんの肩を叩く。

「やすはとすればいいじゃん」

つっけんどんにそう言った。

「さっき、隣のクラスに行った」

「待ってれば」

「それもそうなんだけど」

旅行の日から、みやちゃんはこんな感じ。

「ま、いいけど」

喧嘩してるわけじゃないんだ。

「ありがと」

話し難いだけ。それは分かる。
だから、私もいつも以上にいつも通り接することにした。

二人で席をくっつける。
国語の問題集を開いて、互いに一問目を指さして解答を比べた。
多少わざと間違えた所もあり、みやちゃんが可笑しかったのか笑ってくれた。

「あゆむ、みやさん」

後ろを振り向くと、ももちゃんが満面の笑みで立っていた。
手に封筒を持っている。

「この間の旅行の時の写真ができたのよ。焼き増ししてあげたから」

「ほんと? ありがとう、ももちゃん」

「ありがと」

みやちゃんが顔を背けたまま言った。
ももちゃんはますます唇を引きつらせた。
どす黒いものが見える。

「この写真ね、あなたの泣き顔と、あの後の土下座の」

「いやあ?!」

みやちゃんが机をひっくり返す勢いで立ち上がった。
私は慌てて机を掴む。
どうしたの。

「土下座の」

「言うな!」

みやちゃんが顔を真っ赤にしている。

「土下座?」

「そうよ。この女の誠意ってのを見せてもらったわ。あっはっはっは!」

高笑いしながら、みやちゃんを見下す。

「データは携帯に入ってるから、何枚でも印刷できるわよ」

みやちゃんが携帯に腕を伸ばす。が、ひょいと身を引くももちゃんは写真の入った封筒をみやちゃんに放り投げた。
慌ててみやちゃんがそれをキャッチする。

「私に何かしたら、こればらまくから」

「あんた……ッ」

ももちゃんがそのまま去っていこうとするので、みやちゃんも怒りのまま追いかける。
何やってるんだこの二人は。うん、でも、少し距離が縮まったのかな。
だったらいいんだけどね。

「あの二人、どうしたの」

やすはが戻ってきて言った。

「さあ……でも、小学生って可愛いよね」

私は微笑ましい気分でそう呟いた。
言った後に、やすはがじっとこちらを見ていることに気が付いた。

「あゆむ……やっぱり旅行前から変」

「そ、そうかな」

旅行前ならそれを気づいて欲しくてたまらなかったのに。
今は、ヒヤッとしてしまう。
滅多なことを言えば怪しまれる。

「最近……年上の人と話してるような気持ちになる」

「え、私、成長したのかなあ、あはは」

「なに、隠してるの?」

やすはが鋭い視線を送る。
女のカンを働かせないで欲しい。

じっちゃんがベルマークを集めるよう指示を出し始めたので、いったん会話はそこで途切れた。
ベルマーク集めとかあったあった。
と、懐かしがりながらクラス委員を眺めていた。

「あゆむは?」

「へ」

「ベルマーク」

慌てて机の中を漁る。
ない。

「えっと、いつから言われてたの?」

「旅行前から」

まじか。

「ご、ごめん。忘れてきちゃったみたい」

「おいおい、なにやってのー」

「す、すんません」

名簿にペケを書かれた。

じっちゃんの手伝いをしていたクラス委員は、
先生に言ってやろー、とお約束の台詞を言いながら他の子の所に移動していった。

「ベルマークって、食品の裏とかにあるよ」

じっちゃんが、両手の透明な袋にベルマークをたくさん抱えて言った。

「一人ノルマ10枚って言ってたから、明日中に10枚ね」

指をびしっと刺される。

「りょ、了解です」

家に帰ったらそれなりにあるか。
マヨネーズとか、コンソメスープとかだったっけ。
放課後、みやちゃんとやすはは委員会があったので私はまた先に帰ることになった。
ももちゃんはいない。ももちゃんは、クラブ活動に入ったからだ。
そこでも、やはり何かいざこざがあったみたいだけど。
そこまでは、面倒見切れない。

一人、家路をたどる。
水田に囲まれた貯水槽が夕日を受けて大きな影を水面に映していた。
明日は雨なのか、小さな虫がたくさん飛んでいて、ツバメも低く目の前を横切っていく。
ランドセルを背負い直す。これも、最初の方は肩が凝っていたけれど今はもう慣れた。
下校途中には猫のたまり場である広い空き地があって、やすはと一緒に猫と遊んだっけ。
今は、あまり心惹かれない。
古い記憶に触れる度に、自分への違和感を感じた。
額から汗が流れて、通学用の黄色い帽子を取った。
西に向かって伸びる長い一本道。肌を焦がす斜陽に目を細めた。
甘酸っぱく優しい空間。
いてもいいのかと、聞きたくなってしまう。
誰に、それを聞けばいいかも分からないのに。

家に帰ってから夕食を終えて、私は母にベルマークがないかを尋ねてみた。
一緒に探してもらって、見つかったのは5枚だけ。
案外ないものだ。

「この間、ゴミに捨てちゃったわよ。そういうことは早く言ってよね」

小さい頃、母によくこんな風に叱られたっけ。
どうしようか。

「おばあちゃん家に行ってみたら?」

「おばあちゃんて、しん――」

死んでない。
この時代なら生きてるよね。
今は誰も住んでない空き家を思い出す。
やすはの家の3軒隣。

「ちょっと行ってくる」

「暗いから、懐中電灯持って行きなさいよ」

「はーい」

おばあちゃんの最後は、病院だったっけ。
私の名前を呼んでいたって。
駆けつけた時には、肺炎をこじらせて、意識不明の状態。

玄関に灯った明かりを見て、インターホンを押した。
と、奥の方から影がゆっくりとこちらに向かってくる。
ガラガラと引き戸が開いた。

「あーちゃん、こんばんわ。 一人で来たん? えらいねえ」

「あーちゃんか?」

居間の方からおじいちゃんも顔を出した。
おじいちゃんはおばあちゃんよりも先に亡くなってしまって、
確か、中学生に上がるくらいだったかな。
目頭が熱くなった。
言葉が上手く出なくて、私はベルマークのことを忘れて二人を見つめた。

「どしたん?」

聞かれて、私は慌てて言った。

「ベルマークを学校に持っていくんだけど、あるかな?」

「ベルマークね、そう思ってたくさん集めとったよ」

おばあちゃんは、にっこりと笑った。

「あゆむもお母さんも、おっちょこちょいな所あるからね」

「えへへ……」

立ち上がって、黒い電話の下の引き出しからビニール袋に大量に入ったベルマークを私の手に預けた。

「持っておいき」

「ありがとー」

おばあちゃんのガサガサして骨ばった手に包まれながら、樟脳の匂いや、畳の匂い、煮物の匂い、
とにかくそういうおばあちゃんの家の匂いに鼻がつんとなった。
おじいちゃんは、酔っぱらっていて、私にビール缶を振りながら、

「一杯やらんか?」

とゲソを口に含んで言った。
おばあちゃんにすぐに怒られていたけど。
ごめんね、おじいちゃん。
大人になったら、墓前で一杯酌み交わすよ。

「あーちゃん、上がっていかんか」

と、おじいちゃん。
二人と話したい気持ちもあった。
ただ、おばあちゃんがまた陽が出てる内にと言うので諦めることにした。
二人に手を振られて、おばあちゃん家を後にした。

街灯に渡されたベルマークをかざす。
これで、ノルマはクリアかな。

「あゆむー」

どこからか声がして、振り返る。
誰もいない。

「こっち、上」

声の通り顔を上げた。
やすはだった。二階の部屋の窓から手を振っていた。

「おばあちゃんの所に行ってたの?」

「そうそう、ベルマークもらってた」

「忘れてたの?」

忘れてたというか私の記憶になかったというか。

「うん、明日先生に怒られてくるよ」

やすはとそうやって会話しながら、
この時代の流行とかテレビ番組とかを必死に思い出す。
答えられないと、また、何か怪しまれそうだ。

「ねえ、あゆむ」

「なあに?」

「どこにも行かないよね?」

「何言ってるのさ」

「遠く感じる」

どういうことだろう。

「引っ越しとかもしないし、中学校だって同じだよ? 大丈夫、安心して」

「未来のことなんて分からないのに、どうしてそんな風に言いきれるの?」

的確に痛いところを突いてくる小5やすは。
別に悪気があるわけじゃない。
ただ、不安があるから言葉にしてるだけで。

「あのさ、やすは……ちょっと降りて来てもらってもいい?」

「いいけど」

頷いて窓を閉め、カーテンを引いた。
数分くらいで、玄関から彼女が出て来た。
サンダルをペタペタと鳴らして、可愛い花柄のパジャマを着ていた。
可愛い。
やすはにすぐに駆け寄って、両手を握りしめた。

「あ、あゆ……む?」

「どうしたら、近くに感じれるかなって思ったらね、やっぱりこうやって触れるしかないなって思ったよ」

「なにそれ……照れる」

顔を背けた。
照れた所も好きだなあ。

「ねえ、もし、私が」

未来から来たって言ったら、どうする。
大人の私が今ここにいるんだよ。

「何か変わったとしてもね、やすはが好きだってことはずっと変わらない」

彼女の背中を掻くように抱いた。
キスをしたくてたまらない。
でも、中学生までは待つと言った手前だ。
そう思い、体を起こして、おでこにキスした。
やすはがさっとおでこを隠し、唇を結んだ。

「……そうだよね? やすはもそうでしょ」

「そうだよ」

彼女の腕が私の背中に回された。
こうやって、彼女を翻弄しながら、ずっと嘘をつき続けるんだね。
でも、そのうちに体と心が追いついた頃、私達の本当の時間が流れ始めるんだろう。




日常編おわり

続編もっと書きたかったのですが、これ以上は難しいのでこれで本当に終わりです。
ありがとうございました。

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