あかり「結衣ちゃんが指をしゃぶるのを止めてくれない」 (28)

~2-5教室~


京子「おっはよー諸君!」

結衣「おはよう、京子……って、その手の包帯どうしたの?」

京子「いやあ、昨日家で扉に指はさんじゃってさあ」

綾乃「もうドジね歳納京子はっ」

京子「えへへ」

綾乃「……そ、それで、大丈夫なの?」

京子「うん、ただの打撲だし、しばらくしたら治ると思うよ~」

綾乃「そ、そう……」

結衣「けど、利き腕が使えないんじゃ不便じゃない?」


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京子「うんうん、このままじゃ授業でノートをとることもできませんな」

結衣「普段からあんまり取ってないだろ」

京子「まあ、そうなんだけどね☆」

結衣「まったく……」

京子「いやあ、困ったなあ……今日一日どうしようかなあ……?」

結衣「……」

京子「明日には治ると思うんだけどなあ?うーん」

結衣「……はあ、仕方ないなあ、じゃあ私が……」

京子「と言うわけで!」ビシッ

綾乃「え、な、何よ突然」

京子「今日一日!私のお世話をお願いします綾乃さん!」

綾乃「……え」

綾乃「な、なんで私がそんなことしなくちゃならないのよっ!」

京子「だめ?」

綾乃「だ、駄目じゃないけど……私じゃなくたって……」

京子「えー、私は綾乃がいいんだけどなあ」

綾乃「うっ///」

京子「最近、綾乃って優しいしね?」

綾乃「そ、そ、そ、そんな事ないわよっ///」

京子「いいにおいもするしね?」

綾乃「な、な、なっ///」

京子「あーあ、綾乃がお世話してくれたら嬉しいんだけどなあ」

綾乃「……」

京子「あ、そろそろ授業はじまっちゃう」

綾乃「……」

京子「じゃ、そろそろ席に戻るね~」

綾乃「……きょ、今日」

京子「え?」

綾乃「……今日一日……だけなんだからねっ」

京子「……!」

京子「やった~♪」

綾乃「も、もう!歳納京子はしゃがないでっ///」

京子「はあい♪」

綾乃「ほ、ほら、早く授業の準備するわよ?」

京子「ありがとっ♪」

綾乃「ほら、席も引っ付けて……」ガタゴト

京子「私は筆記用具出しとくね……イタッ」

綾乃「歳納京子?」

京子「あー、手怪我してるの忘れてたあ……」

綾乃「もうっ、本当に歳納京子はドジねえ……」クスッ

京子「えへへ」

西垣「よーし、授業始めるぞ席につけ~」


生徒「「「はーい」」」


京子「よし、じゃあ今日はお願いします綾乃さん」

綾乃「はいはい……あら?船見さん?」

結衣「……え?」

綾乃「もう授業はじまるわよ?席に戻らないと……」

結衣「あ、うんねそうだね……」

京子「どったの結衣?何かボーっとしてない?」

結衣「いや、そんなことないけど……」

京子「そう?」

綾乃「ほら、歳納京子鞄貸して?ノート取るから」

京子「あ、うん」ガサゴソ



結衣「……」

~放課後~

~ごらく部~


あかり「こんにちはあ……あれ?結衣ちゃん一人?」

結衣「……」

あかり「結衣ちゃん?」

結衣「……ん、あかりか、こんにちは」

あかり「う、うん」

結衣「ちなつちゃんは?」

あかり「ちなつちゃんはお家の用事で先に帰るって」

結衣「……そっか」

あかり「……京子ちゃんは?」



ガリッ



結衣「……」

あかり「結衣ちゃん?」

結衣「あ、うん……京子、実は怪我しててさ」

あかり「怪我?京子ちゃん怪我したの?」

結衣「うん、昨日家で扉に指はさんだって」

あかり「うう、痛そう……」

結衣「……そうたいした怪我じゃないみたいだよ」

あかり「そ、そっかあ」

結衣「けど念のために今日は早く帰るってさ」

あかり「……京子ちゃん早く良くなるとよいねえ」

結衣「……うん」

あかり「……」

結衣「……」



あかり(結衣ちゃん、まだあの癖、治ってなかったんだ)

子供の頃、結衣ちゃんには悪い癖があった

何かを凄く我慢する時

自分の人差し指を軽くしゃぶる

そんな癖



「好きなお菓子を食べられなくなった」

「好きな漫画を読めなくなった」


そんな時に、結衣ちゃんは良く指をしゃぶっていた

あかり(おっきくなってからは、全然見なくなったから)

あかり(癖が直ったんだなあって思ってたんだけど……)


結衣「……」カリッ


あかり(結衣ちゃん、なんだか子供みたい)クスッ

あかり(……けど、結衣ちゃん、何を我慢してるのかな)

あかり(うーん……わかんないけど、何か結衣ちゃんが困ってるなら)

あかり(あかり、手を貸してあげたいなあ……)

あかり「ね、結衣ちゃん」

結衣「……あ、ごめん何かボーっとしてた」

あかり「結衣ちゃんって、今何かしたいことある?」

結衣「え?」

あかり「んー、何か、凄く我慢してることとかないかなあ?」

結衣「……いや、別に」

あかり「ほんとう?」

結衣「……うん」

あかり「……あかりね」

結衣「うん……」

あかり「結衣ちゃんのこと、凄いなあって思ってるの」

結衣「……私が?どうして?」

あかり「だって、普段から一杯あかりや京子ちゃんやちなつちゃんの事を気にかけてくれてるよね?」

結衣「……それは普通の事だよ」

あかり「それに一人暮らしで炊事洗濯全部頑張ってるし」

結衣「……それは……まあ……」

あかり「他にも、いっぱいいっぱい、凄いなって思う事があるの」

結衣「……あ、ありがと」

あかり「だからね?」

結衣「……うん」

あかり「結衣ちゃんはもっと我儘言ってもいいんじゃないかなって思うの」

結衣「……わがまま?」

あかり「うんっ」

あかり「結衣ちゃんは凄いけど、他の子の為に色々と我慢しちゃってる部分、あるんじゃないかなあ」

結衣「そう……かな」

あかり「うん、そうだよぉ」

結衣「……」

あかり「だからね?普段頑張ってる分、ちょっとくらいは我儘を表に出してもいいんじゃないかなって」

結衣「……」

あかり「あかりは、そう思うのっ」

結衣「あかり……」

あかり「えへへ、勘違いだったらごめんね?」

結衣「……ううん、何かちょっと気が軽くなった気がする」

あかり「そ、そう?」

結衣「ありがとね、あかり」

あかり「えへへ///」

結衣「そう……だよね、ちょっとくらい我儘言っても……」

あかり「結衣ちゃん?」

結衣「……そう、ちょっとだけ……」

~夕方~

~病院からの帰路~


綾乃「歳納京子、本当に最後まで送らなくて大丈夫?」

京子「うん、平気平気!お医者さんも明日には包帯取れるって言ってくれてたし」

綾乃「けど、まだ家まで少しあるし……何かあると危ないわ」

京子「もう、綾乃は心配性だなあ」クスクスッ

綾乃「わ、私は別に……」

京子「けど、今日は本当にありがとうね、凄く助かった」

綾乃「……せ、生徒会副会長なんだから生徒の為に行動するのは当然のことよっ」

京子「いやあ、綾乃は生徒会副会長じゃなくても私に手を貸してくれてたと思うよ~」

綾乃「そ、それは……」

京子「だって綾乃、優しいし?」

綾乃「もう!からかわないでっ!」

京子「うわあ!綾乃が怒ったあ!」ピューッ

綾乃「あ、歳納京子!走ったら危ないわよ!」

京子「はーい!また明日学校でね~!」

綾乃「……もう、歳納京子ったら」

京子「ふっふっふ~、今日は楽しかったなあ♪」

京子「綾乃の普段見れなかった顔がいろいろ見れたし……」

京子「これは、今度何かお返しを考えねばいけませんな!」



「きょうこ」



京子「……あれ?結衣?」クルッ

京子「……誰もいないや」

京子「んー、今結衣に呼ばれた気がしたんだけど……」

京子「気のせいかなあ」

京子「ま、いいや……早く家に帰って」



ガツンッ



京子「……っ!」

京子(あ……れ、頭が痛い……)

京子(それに、何だろ目の前に壁が……)

京子(どうして私、壁に顔を押し付けてるんだろ……)

京子(……)

京子(ああ、これ、壁じゃなくて……)

京子(地面かな……)

京子(そっか、私倒れて……)

京子(あれ……)

京子(だれか……)

京子(誰かの靴が……)

京子(何か……見覚えが……)

京子(駄目……気が遠くなって……意識が……)



ブツンッ



 

「ねえ見た?昨日のニュース」

「見た見た……何か七森市で通り魔事件があったみたいね」

「何か被害にあったのってうちの学校の生徒らしいよ」

「あー、あの人でしょ?2年の髪の長い」

「命に別条はないらしいけど……怖いよね……」

「何か、身体の一部が持ち去られたらしいよ?」

「ひえぇ……」

「身体の一部って?」

「うん、聞いた話では……」

~ごらく部~


結衣「こんにちは」

あかり「……」

結衣「あれ、あかり今日も一人?」

あかり「……うん、ちなつちゃんショック受けてごらく部に来たくないって」

結衣「そっか、まあ仕方ないかな」

あかり「……」

結衣「私もちょっと今日は荷物を取りに来ただけだから……あったあった、この漫画だ」

あかり「……それ」

結衣「うん、京子の漫画だよ」

あかり「……」

結衣「京子に頼まれたんだ、持ってきてって」

あかり「……結衣ちゃん、京子ちゃんのお見舞いに行ったの?」

結衣「そりゃ当然だろ?昨日も行ったし、今日もこれから行ってくるよ」

あかり「……」

結衣「明日も、明後日も、その次の日も、その次の日も行くつもりだよ」

あかり「……」

結衣「だってね、昨日お見舞いに行ったら京子、泣いてたんだ」

あかり「……」

結衣「大事な物無くなっちゃったって泣いてたんだ」

あかり「……」

結衣「そりゃショックだよね?これまでの生活できなくなっちゃったんだし」

あかり「……」

結衣「だからね、私、京子に言ってあげたの」

あかり「……」

結衣「これからは、私がずっとついててあげるって」

あかり「……」

結衣「綾乃は一日だけだったけどさ?私はずっと大丈夫だから」

あかり「……」

結衣「私はずっと京子に手を貸してあげられるから」

あかり「……」

結衣「京子、凄く不安そうな顔で私を見てた」

あかり「……」

結衣「それで、縋りついてきてこう言うんだ」

あかり「……」

結衣「『本当?本当にずっと手を貸してくれる?』って」

あかり「……」

結衣「ああ、あの眼、あの顔、あれが、あれが見たかったんだ」

あかり「……」

結衣「昨日、綾乃と京子のやり取りを見てて、気づいたんだ」

あかり「……」

結衣「私はずっと、あれを求めてたんだ」

あかり「……」

結衣「思えば子どもの頃の京子はずっとあの目で私を見ててくれた」

あかり「……」

結衣「だからこそ、だからこそ惹かれてたんだ、京子に、ふふふ……」

結衣「それに気づけたのも、あかりのお陰だよ」

あかり「……」

結衣「ありがとうね」ニコ

あかり「……」

結衣「ああ、早く見たい、また見たい」

あかり「……」

結衣「京子のあの顔、見たいなあ……」カリッ

あかり「……」

結衣「けど、今日は検査があるからそれが終わるまで会えないんだって」カリッ

あかり「……」

結衣「京子、この漫画見せてあげたら喜ぶだろうなあ……」カリッ

あかり「……」

結衣「待ち遠しいなあ……」カリカリッ

あかり「……結衣ちゃん」

結衣「なに?」

 




あかり「……指をしゃぶる癖、直したほうがいいと思うよ」








おわり

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