AFTER―F (21)
~プロローグ~
マスコミの人間は青年にマイクを向けて、叫び声をあげている。
「被害者遺族への謝罪は?」
「被害者に対してどう思われますか?」
皆々、言うことは違えと意味合いは、ほとんど同じだった。だから、青年は懇切丁寧に笑顔でこう回答した。
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「そんなこと考えたこともない」と。
マスコミは、口をそろえて言った。「200人以上殺しても何も思わなかったのか?」と、青年は答えた。
「そうですね。殺せたから殺したんです」
マスコミはどよめいて、同時に思った。この青年は人間じゃないと。そんなどよめきの中から一人の男が姿を現して、殺人犯である男の前に立って、丁寧にお辞儀をした。
「どうも、先ほどあなたはこう言いましたね。殺せたから殺したと」
青年はコクリと頷いた。
「では、私を殺せと言ったら殺しますか?」
マスコミが再びどよめき、マスコミの人間はこう思った。彼ならきっと殺すだろうと。しかし、マスコミの思っていた解答と少年の解答は違った。
「殺さない」
「それは何故?」
「殺したところで、何のメリットもないから。だから、殺す必要もない」
青年は至って真面目そうな顔でそう回答した。
「そうですか。ご質問に答えていただき感謝いたします」
それを聞いて男は満足したのか、青年に一礼して悠然と去っていった。
それから、三か月後のことだ。青年は処刑されたと、マスコミは報道した。
―プロローグ 終―
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