幼馴染「ほんと男はわたしがいないとダメなんだから」 (36)

幼馴染「ほら、いつまでも寝てんじゃないわよ」

男「Zzz」

幼馴染「遅刻するわよ?」

男「Zzz」

幼馴染「ほんと男はわたしがいないとダメなんだから」

じりりりり、かちっ

男「ふあー」

幼馴染「え?」

男「今日も学校かー。だりーな」

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幼馴染「ふ、ふんっ! 一人で起きられるようになるなんて、少しは成長したのね」

幼馴染「勘違いしないでよねっ! 別にほめてるわけじゃないんだから!」

男「…………」

幼馴染「無視してんじゃないわよっ!」

ポカッ

男「あいてっ」

男「あれ? 朝ごはんが用意されてる」

幼馴染「わたしが作ったんだからね。感謝して食べなさい」

男「おいしい」

幼馴染「当然よ。あんたの好みはわたしが一番よく知ってるんだから」

男「がつがつがつがつっ」

幼馴染「ああーもう! ご飯つぶこぼしてるじゃない」

男「…………」

幼馴染「ネクタイ曲がってるわよ。直してあげるからじっとしてなさい」

キュッ

男「ぐえっ」

幼馴染「ばかっ! なんで動くのよ!」

幼馴染「あ、あんたが悪いんだからね!」

男「げほっ、げほっ」

幼馴染「……ごめん」

男友「よー男ー。今日もしけたツラしてんなー」

男「うっせーよ」

男友「あんまり思いつめるなよ」

男「わかってるよ」

幼馴染(なんの話してるの?)

がららららっ

先生「席につけー。出席をとるぞー」

先生「今から一限目を始める」

幼馴染「…………」

幼馴染(出欠確認でわたし呼ばれなかった。先生忘れてたのかしら?)

男「…………」ポケー

幼馴染(男ったらマヌケな顔してる。一体なにを考えてるのかしら)

幼馴染(そんな顔してたら当てられるわよ)

先生「次の問題をだれかに解いてもらおう。そうだな、男やってみろ」

男「んがっ!」

幼馴染(ほら言わんこっちゃない)

男「やべっ。どこだろどこだろ」

幼馴染(ああーもう! ほんっと世話が焼けるわね!)

幼馴染「ここよここ」トントン

男「ん? この問題か」

男「答えは……2番?」

先生「正解だ。くわしく解説すると……」

男「ふぃー助かったー」

幼馴染(まったく。感謝してよねっ)

男友「男ー。食堂行こうぜー」

男「おう」

幼馴染「ばかっ! あんたにはわたしの作ったお弁当があるでしょ」

ヒョイッ

男「なんだこの弁当箱?」

男友「おーい! はやく行こうぜー」

男「ああ、すぐ行く」

コト

幼馴染「コラー! どこ行くのよー! わたしのお弁当もっていきなさーい!」

幼馴染(男ったら。反抗期なのかしら)

先生「今日の授業は以上。解散」

ザワザワ

男友「じゃあなー」

男「おう」

幼馴染「男帰るわよ」

男「…………」

幼馴染「帰りはスーパーに寄るわよ。卵の特売なの。もちろん付き合ってくれるわよね」

男「…………」

幼馴染「へー、得意のだんまりってわけ。今日はずいぶんと多いわね」

グイッ

男「うおっとっと」

幼馴染「いいから付いてきなさいっ! これはお願いじゃなくて命令よ!」

幼馴染「あ、その前にお手洗いに行ってくるから。そこで待ってなさい」

男「…………」

幼馴染「いい? 待ってなさいよ! 先に帰ったら許さないんだからね!」

男「…………」

幼馴染「聞いてるの? まぁいいわ」スタスタ

・・・・

幼馴染「いない」

シーン

幼馴染「なんでいないのよー!」

幼馴染「ほんっと信じらんない! 待ってろっていったのになんで先に帰るのよー!」

幼馴染「うぅう~! ゆるさないゆるさない! ぜったいにゆるさない~!」

幼馴染(結局卵売り切れちゃったし。店員に無視されてまともに買い物もできないし)

幼馴染「はぁ……」

幼馴染(今日は最悪の一日だったわ)

幼馴染(それもこれも全部男のせいよ! あいつのせいあいつのせい!)

ドンッ

老人「…………」

幼馴染「あ、ごめんなさい。わたし、ぼーっとしてて」

老人「小娘、わしが見えるのか?」

幼馴染「え?」

老人「見えるのかと聞いておる」

幼馴染「見えますけど」

老人「左様か……」

幼馴染(なんなのこのおじいさん。ちょっと不気味かも)

幼馴染「あの、さっきから見えるとか見えないとかなんなんですか?」

老人「お主、もしや気づいておらぬのか?」

老人「自分が死んでおることに」

幼馴染「……え?」

幼馴染「なに言ってるのよ。意味わかんない。意味がわかんないわよ!」

幼馴染「なんの根拠があってそんなことが言えるのよ!」

老人「死者には死者の姿が見える。ただそれだけのこと」

幼馴染「いいかげんにしてっ!」

幼馴染(このおじいさん、頭がおかしい人なんだわ)

老人「そして、生きている者には死者の姿は見えない」

幼馴染「……え?」ビクッ

老人「身に覚えはないかね?」

幼馴染(みんながわたしのことを無視してたのって、わたしの姿が見えないから?)

老人「どうしたのかね?」

幼馴染「いや……いやあっ!!」ダッ

ポツポツ

幼馴染(信じない! 信じない! わたしはそんなの信じない!)

幼馴染(生きているんだ! 生きてるんだからっ!!)

ザーザー

幼馴染「きゃっ!」

バシャアッ

幼馴染「…………」

幼馴染(転んだのにかすり傷一つついてない)

幼馴染(雨に濡れたのに冷たくない)

ザーザー

幼馴染「…………」

幼馴染(わたしほんとに……?)

男「ふあー、そろそろ寝るか―」

幼馴染「…………」

幼馴染(お腹もすかないし眠気も感じない)

幼馴染(それはわたしが死んでるからなの?)

幼馴染(でも……)

ギュッ

男「んあ?」

幼馴染(こうやって男の手に触ることができる)

幼馴染(これってわたしがまだ生きている証拠だよね?)

幼馴染「ねえ、男」

男「…………」

幼馴染「ちょっと。返事しなさいよ。ねえったら」

男「…………」

幼馴染「わかった。あんた、わたしを驚かそうとしてるんでしょ?」

幼馴染「やられたわ。もう十分びっくりしたわよ。だから……」

男「…………」

幼馴染「なんとか言いなさいよ、ばかぁ」

幼馴染「あんたがなにか答えてくれたら、わたしも生きてるって信じられるのに」

幼馴染「なんで……なにも言ってくれないのよぉ!」

男「…………」

幼馴染「わたしを安心させてよ。なんで不安にさせるのよぉ」

幼馴染「これじゃ本当にわたしが死んでるみたいじゃない!」

幼馴染「ばかぁ……男のばかぁ!」ポロポロ

今日はここまで
書き溜めたらまた来ます

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