比企谷小町は寂しい (41)
俺ガイルss
小町主役です
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「グスッ…お兄ちゃん…小町寂しかったんだよ…」
「泣くな小町!小町には俺がずっと一緒にいてやるからな!」
「本当…?」
「約束する。二度と小町に寂しい思いは絶対にさせない!」
「うん、ありがとお兄ちゃん!」
これは遠い過去の思い出…
幼い頃、私こと比企谷小町は家出した。
家族が誰もいない家が嫌いだった。
だから家出した。
でもたった一人の兄だけはちがった。
お兄ちゃんは小町とずっと一緒にいてくれる。
そう信じていたのに…
<<それから数十年後>>
とある会社にて―――
「比企谷さん。お疲れさまです!」
「これから合コンなんですけど比企谷さんも今夜どうですか?」
小町「アハハ、ゴメンね。今日は遠慮しとくよ…」
あれから数十年の時が過ぎた。
現在、小町はとある会社にてOLとして働いている。
仕事は至って順調、同僚との仲も悪くはない。
けれど…
「聞いた?総務課の新人が入ったばかりなのにもう結婚だって!しかも出来ちゃった婚!」
「そういえば営業二課の子もこの前寿退職したって!」
「若い子はみんな結婚していってるよね。」
小町「…」
就業後に女性社員の間で行われる他愛もない噂話だ。
小町はお兄ちゃん譲りのステルス小町を発動させながらこの会話を聞き流している。
ちなみにうちの会社に属している女性社員は大体20代で結婚を終えている。
小町と同期だった子たちはほとんどが幸せな結婚生活を送っているらしい。
でも…小町はちがう…
何故なら小町は…
比企谷家―――
小町「ただいま。」
「 「………」 」
小町「そっか…誰もいないんだ…」
現在、この家には小町以外の人間はいない。
小町LOVEだったお兄ちゃんは大学入学直後に家を出たっきり一度も帰ってきていない。
それに両親も…
カマクラ「ニャァ」
小町「よしよし、カーくんおいで。
でも無理しちゃダメだよ。もうかーくんはお爺ちゃんなんだから…」
カマクラ「ニャァァ」
小町「そっか、お腹空いたんだ。待ってて、一緒にご飯食べようね。」
唯一匹、帰宅した小町を出迎えてくれたのは我が家の愛猫カマクラことカーくんだ。
小町が子供だった頃から飼っている可愛い猫ちゃん。
けど今ではヨボヨボのお爺ちゃんになってしまった。
小町「いっただきま~す!」
カマクラ「ニャァ」
小町「ほら、カーくんのご飯は温かくてやわらかい小町お手製だよ。」
カマクラ「ニャァ」
小町「うん、無理しなくていいから少しでもいいからちゃんと食べて。」
カーくんのご飯を用意して二人で仲良くご飯を食べるのが小町の日課だ。
正直、一人だけだったら耐えられなかったはず…
それでもカーくんがいるだけでなんとかもちこたえている。
さて、晩ご飯を終えて食器を片付けていた最中…
あの人たちが帰ってきた。
比企谷父「帰ったぞ。」
比企谷母「あら、小町いたのね。」
小町「お帰りなさい…ご飯はどうしたの…?」
比企谷父「外で食ってきたよ。家で食うのも面倒だったからな。」
小町「そう…なんだ…」
お父さんとお母さんが帰ってきた。
ちなみにこの人たちは既に定年退職を迎えて今は悠々自適な年金生活を送っている。
今までの社畜人生から開放された反動からか毎日遊びまわっているらしい。
比企谷父「それにしてもお前…別にこんな早く帰ってこなくてもいいんだぞ。」
比企谷母「そうよ、誰かいい人とデートでもしてくればいいじゃないの。」
小町「いい人なんて…いないよ…」
比企谷父「フン…40歳にもなって独身なんて親として情けないぞ!」
比企谷母「こんなことならもっと厳しく育てるべきだったわね!」
毎日だ…
この人たちは毎日小町にこんな嫌味を言ってくる。
はいはい、そうですよ。
私こと比企谷小町は独身だよ。
比企谷小町(40歳)はいつの間にかアラフォー独身女になってしまいましたよ…
何故小町がこの歳まで独身なのか…?
それに何で嫌味を言われながらこんな人たちと生活を送らなきゃいけないのか…?
全ての発端は22年前まで遡る…
<<22年前>>
八幡「小町。たまには連絡すっからな。」
小町「お兄ちゃん…本当に行っちゃうんだね…」
カマクラ「ナァ…」
今から23年前の三月。
大学に合格したお兄ちゃんは一人暮らしをするために家を出ることになった。
当時、このことは小町にとって意外な出来事だった。
何故ならギリギリまで親の脛をかじって生きようとしていた、
あのお兄ちゃんが独り立ちしようだなんてこの時の小町には信じられなかったからだ。
だから小町はお兄ちゃんが出て行く間際にそのことを聞いてみた。
八幡「ここは俺の居場所じゃないからだよ。」
小町「何言ってんの…?ここはお兄ちゃんの家だよ。十分お兄ちゃんの居場所じゃん!」
八幡「いや…ここは…
なぁ小町。悪いことは言わないからお前もさっさとこんな家から出た方がいいぞ。」
小町「出た方が…ってそんな何言ってんの?」
八幡「………じゃあな小町。カマクラ。」
そんなことを言い残してお兄ちゃんはこの家を出ていった。
当時、残された小町はカーくんを抱きながらお兄ちゃんの言葉の意味を考えていた。
でもその意味は今でもわからない。
比企谷父「そうか、あのバカ息子は出て行ったか。これで小町を存分に愛でられるな!」
比企谷母「そうね。八幡とちがって小町は可愛いもの!あなたはこの家にずっといてね!」
小町「えへへ~!お父さんお母さん今の発言は小町ポイント高いよ!」
お兄ちゃんが家から出て行ったことで、
両親は小町のことをこれまで以上に愛でるようになった。
お兄ちゃんがいなくなったのは寂しいけれどそれでも小町は両親に愛されている。
だから高校、大学、それに社会人になってからも好き放題やってきた。
でも恋人だけは認めてもらえなかったけどね…
まあそれだけを除いたらまさに幸せいっぱいの日々を過ごしていた。
けれど…そんな幸せな時間が永遠に続くことはなかった。
小町が28歳になりアラサーと呼ばれる年齢層に近づいた頃、
我が家に一通の手紙が送られてきた。
差出人は『比企谷八幡』
なんと10年以上音信不通だったお兄ちゃんからの手紙だった。
家族一同でその手紙の内容を読んだ。
そこには小町たちが驚くべきことが記されていた。
お兄ちゃんは大学在学中、既に学生結婚していたこと。
結婚した奥さんと会社を設立して社会的に成功を収めたこと。
それに子供を作り家族を営んでいることについてだった。
さらにもうひとつ、手紙にはあるものが同封されていた。
それは一枚の写真。
そこに撮されていたのは小町のお兄ちゃんとそれに奥さん。
そして、小学生くらいの男女の兄妹たちの姿があった。
小町「そっか、お兄ちゃん結婚していたんだ。」
比企谷父「あいつ…親にも内緒で結婚しておまけに孫を作っていたなんて…」
比企谷母「それにしても可愛い孫ね。会ってみたいものだわ。」
お兄ちゃんたち一家の写真を見て両親たちは思うところがあったらしい。
そしてこの日から小町を取り巻く環境が一変した。
比企谷父「小町、お前いつまでこの家にいる気なんだ?」
比企谷母「そうよ、独身の娘が未だに実家暮らしなんて恥ずかしいわ!」
え…?何言ってんの?
今まで二人とも小町はこの家でずっと暮らしていいって言ってたじゃない…?
比企谷父「まったく…
八幡は子供が出来たというのに何で小町は…好きな男くらいいないのか!?」
比企谷母「本当よね。一体どうしてかしら…?」
そんなの…お父さんたちが認めてくれないからだよ…!
小町だってその気になれば恋人くらい簡単に作れるし…
ていうか今頃になって何言ってんの…!?
比企谷父「まあいい。八幡が成功したならお前はもう用済みだ。」
比企谷母「今後は私たちの老後を支えてもらおうかしら。
今まで育ててあげたんだからそのくらいのことはやってもらうわよ!」
用済みって何それ…
それが実の子供に言う言葉なの…?
ていうか老後を支えるってどういうこと…?
あなたたちにとって小町って一体何だったの…?
あの日から両親の態度が一変した。
あの人たちの庇護対象が小町からお兄ちゃんの子供たちに変わってしまったからだ。
それだけではなくいきなり小町のことを蔑ろにしてきた。
それはまるで今まで愛用してきた玩具に飽きた子供が新しい玩具に興味を示したみたいに。
つまりこういうことだ。
あの人たちにとって小町とは家族ではなく愛玩動物にしか過ぎなかったのだと…
新しい対象が出来た時、小町は飽きられて捨てられてしまった。
そういうことだ…
お兄ちゃんはこの家にいる頃、自分の両親をクズだと言っていた。
当時の小町は大袈裟過ぎると思っていたが今ならそれがよくわかる。
この人たちは本当にクズだった…
それから小町は何度かお見合いや婚活を始めた。
でも年齢が悪かった。
自慢じゃないが小町だって高校、大学、それに20代前半まではモテていた方だ。
けれどそれも若さがあるからこその話だ。
アラサーになれば男の方からはまったく寄り付かなくなってしまった。
昔、お兄ちゃんの恩師だった平塚先生が結婚が出来なくて嘆いていた姿を面白がっていたが…
最早それも他人事ではない。
いや、小町はあの時の平塚先生よりも手遅れな状態だ。
何度かお見合いや婚活にも参加してみた。でもろくな人がいない。
でもこれって今にして思えば高望みだったのかもしれないね。
小町だってその人たちと同類なんだから…
結局、誰とも上手くいくことも出来ずに年齢だけが重なり気がつけば40歳になっていた。
今や小町を相手にしてくれるまともな男性はこの子しかいない。
カマクラ「ニャァ」
小町「カーくん、もう小町にはカーくんしかいないよ。」
カマクラ「ニャァ」
小町「そうだね、カーくんが人間だったら小町と結婚してくれたかもね。」
カマクラ「ナァァ」
小町「うん…うん…カーくんがいてくれるから小町はやっていけるんだよ。」
正直、何度もこの家を出ようと思った。
けどダメだった。
その理由はこの愛猫であるカーくんだ。
もう老猫で最近では体力が弱まっている。今のカーくんを置いてこの家から出たくない。
それに…あんな親でも一応家族だ。
小町は一人きりなんて耐えられない…
一人で生きていくことなんて出来やしない。
それは自分でも嫌というほど自覚している。
もう嫌だ…
お兄ちゃん帰ってきてよ…
小町に寂しい思いをさせないって言ってたじゃない…
お願い…お願いだよ…
小町は…何度も…何度も…お兄ちゃんが帰ってくることを願った。
でもこれまでにこの願いが叶えられたことはなかった。
ここまで
小町ちゃん40歳(独身処女)のssを始めていきます
このSSまとめへのコメント
小町(-_-)
悲しいな。実際に起こりうる人生かもしれないから、より一層虚しく感じるわ。話は変わるけど猫ってこんなに長生き出来るの?詳しくないから純粋に疑問なんだが?
犬猫ともに20歳(特に血統書付きなら)生きると獣医師会とか愛護団体から表彰されるらしい
つまりそれ以上はそのくらいレア
八幡は作中のヒロインと結婚してる設定なのか?
やーめーてーヽ(´Д`;)ノ ←小町推し
カマクラ 生キスギィ!
カーくんが唯一の救い…
八幡は誰と結婚したんだろ
>>結婚した奥さんと会社を設立して~
普通に考えたらゆきのんだろうけど…
雪ノ下と結婚したなら八幡は雪ノ下父の後を継ぐと思うが
※9
雪ノ下父の後を継ぐのは陽乃か陽乃夫じゃないの?
※10
なるほど
ザ・わ~るど
ゆきのんだったら小町が気づくでしょ。ここはモブだと予想
原作どうなるんだろうな。まともな結果にならないんだろうな。クセがある主要キャラが多いから……