百合
神奈×悠
『キス、とかそれ以上がしたい?』
『したい』
――「キス以上」って、いつしていいの?
今思うと、私はなんちゅーとんでもないことを言ってしまったのか。
それ以上って、それ以上って、それ以上ってなによ。
そして、こいつはなんで躊躇もなく即答したのか。
「神奈、また変な顔してる」
「へ?」
「そこの問題、そんなに難しい?」
悠は抱きしめていたクッションを脇に置いて、
机の反対側から身を乗り出した。
「あ、ううん……ちょっと、別のこと考えてたの……」
「なに?」
「あんたには関係な……いこともないし、むしろあり得るようなそんな感じよ」
「どういうこと」
「や、ごめん、今のは自分でも意味不明だったわ……」
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悠は首を小さく傾げた。
「神奈はいいな。たくさん、面白い顔をするから」
「だから、それ褒めてないことに気付いてる?」
「そうなの? 私は、見ていて楽しい気分になるよ」
悠は微笑んだ。
良い顔で笑いおって。
「で、何を考えていたの?」
「引っ張らなくてもいいわよ!」
「気になる」
彼女は四つん這いでこちらに移動して、
私の脇に手を差し入れた。
「え、ちょ」
そして思い切りくすぐられた。
「ッ……ゆッ……ひひひッ!?」
人に聞かせられない雄たけびが部屋に轟いた。
「権力には……屈しないわ……決して」
数分後、互いに力尽き、肩で息をしながらベッドに横たわっていた。
「もおー……テスト勉強……はあッ……なんないじゃない、ばかーッ……はあ」
「途中から、抵抗する神奈が可愛くて……止められなかった」
「はあッ!?」
飛び起きて、毛を逆立てた猫みたいに悠を威嚇する。
「どうどう」
両手で牽制された。
「シャラップ! あんたは万年発情期のどっかの生徒会長か!」
「?」
「不思議そうな顔をするな! あんたのことだよ!」
「落ち着いて、神奈」
笑いながら、私の袖を掴む。
落ち着いてるわ!
と言い返そうと思ったが、
ここでまた喧嘩みたいになるのも嫌だったので、
私は一度深呼吸した。
「……ふー」
「……ねえ、キスしたい」
ぎょっとした。
「また、随分と突然ね!?」
「ムラってした」
「どこで?!」
「唇見てたら」
私は急いで、両手で口元を覆った。
先ほど思い出していたことが、また頭を過った。
そんな不埒な私をよそに、彼女は私の腕を引っ張った。
かろうじて、肘をベッドにつけて、悠に体重を全て預けることは避けれた。
ぷるぷるしながら、軽くキスをした。
「……ッ」
互いに見つめ合う。
あー! 慣れない!
いつまで経っても慣れやしないわ!
「もう、お互いの家に行ったよ?」
「そうね?」
何か言い始めた。
彼女は、いつも唐突だ。
「手も握ったし、旅行にも行ったし、お風呂も一緒に入ったし」
この流れは、まさか。
「胸も見ちゃった」
「そ、そりゃお風呂に行けば誰だって見るわよッ」
「神奈、こっち見て」
頬が熱くなるのが分かった。
ベッドシーツを濡らしてしまうくらいに、
手は汗ばんでいた。
不埒はこいつの方だ。
必死に肘で悠の体から離れようとしたが、
彼女の腕が背中に回されていた。
黒いシャツから覗く、悠のうなじが眩しい。
こんなことを考えてしまっている自分に、自己嫌悪。
私は欲望には屈しない。
とか、そんな決意表明を心の中でしていたら、
いつの間にか、悠の指が私の耳に触れていた。
「ッぁ……」
びくりとして、力が抜ける。
すとんと悠の胸の上に体を預ける形になってしまった。
「ご、ごめ……」
恥ずかしい。
悠の顔が近すぎるし、
変な声出たし、
てか、耳が弱いって、
こいつ分かっててやったわね。
許すまじ。
「ゆ、悠、あんたッ……んむぅ……ッぁ」
今日二度目の不意打ち。
このたらしが!
唇を離すと、吐息が鼻をくすぐった。
熱くてしょうがない。
どこもかしこも。
特に、顔。
特に、耳。
「もう、キス以上してもいい?」
「!?」
予想してはいたけれど、
衝撃が大きすぎて固まってしまった。
この台詞を聞くのは二度目だって言うのに。
いや、よく考えよう。
ううん、よく考えなくても、二度って言うのは大した回数じゃない。
うん。
そうだわ。
早すぎだわ。
早計だわ。
「ちょい、待ち。ま、まだよ」
「あと、何をすればいいの?」
「何? 何って……」
んなもん考えてないわよ。
「それとも、やっぱり私とはできない?」
「へ?」
あ、ガチな顔し始めた。
「……私、神奈が無理なら」
諦める、とでも言いたげだ。
しかし、悠にそんなことが言えるわけがないことは知っている。
「あき……ら……」
唇が震え出した。
え、泣く?
泣いちゃうの?
待て待て。
「あ、あんた、これくらいで」
「やっぱり、ダメ。神奈は誰にも渡せない。だから、諦めない」
とか何とか開き直って、今度は頬っぺたにキスされた。
「神奈、神奈の胸も、お尻も、太ももも……全部私のにしていい?」
あろうことか、その台詞を、
指で体に触れながら告げてきた。
その度、変に敏感に反応してしまった。
恥ずかしい。
「やッ……このスケベ」
「神奈が、してもいいって言った」
言ったっけ?
言ったか?
いや、直接的表現は避けたよ、私は。
「ね、胸、触っていい?」
「ひいい!?」
言葉にされ、私は悲鳴を上げた。
どうしてこうも心臓が体から脱出する勢いで暴れるのか。
誰か教えて。
「神奈、人気者だから……早く、私のものだって証拠が欲しい」
「証拠なんて……」
いらないじゃない。
「いる」
真面目な顔で、
彼女は言った。
なによ。
まだ、不安なわけ。
こんなに一緒にいるのに。
なんだか、それって、悲しいことね。
縋るような悠は、
あの交流会の前日から、
誓いのキスをしたあの日から、
何か変わったというわけではなく、
ただ、一歩前に踏み出したと言うだけで、
誰かと比較して、自分を保ち、
誰かの一番でありたいという、
そんなしがらみから放たれてはいないんだろう。
どうすりゃいいのかって。
わかってる。
私が素直になればいいだけの話。
単純な話。
いや、しかし、なんで胸を触るのが証拠になるのか。
その条件を小一時間問いかけて、証明してやりたいわ、バカやろう。
あー、時間よ止まれ。
この部屋だけでええから。
「神奈?」
「……それだけ?」
「え?」
「とりあえず、それしたら、あんたは安心する?」
「うん」
満面の笑み。
変態め!
「悠、あの……脱いだ方がいいの?」
「脱ぐの? なんで?」
「え、だって」
「寒いでしょ?」
「そりゃ、まあ」
「だから、いいよ」
え、でも、私、めっちゃ着込んでるけど。
シャツの下に、二枚着てるし、
カーディガン着て、ブレザー着てるし、
え、いいの。
ほんとに。
悠が、私をベッドに押し倒した。
先ほどと逆の立ち位置。
人を見下ろすと、加虐心が増すって本当かな。
悠はどうなのかしら。
「神奈、神奈」
「なによ……」
「呼んでみただけ」
「?!」
なにいちゃつかせるのよ。
私らは、どこぞのバカップルか。
この光景、ちゃらんぽらんズには見せられないわね。
でも、嬉しいのよ。
分かってる。
言わないけど。
こうやって、私にだけ甘えてくれる彼女がいいなって、思ってる。
「悠」
「ん?」
「……」
呼んでみただけって、案外恥ずかしい台詞ね。
私はもにょもにょしながら、言った。
「ふふ」
鼻で笑われた。
悔しい。
二人の時は、たまに余裕を醸し出してくるから腹立つ。
テストで私が二位になった時くらい腹立つ。
私よりちょっと背の高い所とか、
口下手なくせに、たまに強引な所とか、
私が、こいつのこと好きなんだってこととか、腹立つ。
なのに、何でもしてあげたくなる。
あ、何でもはやっぱりナシ。
調子に乗ったら何されるか分かったもんじゃないし。
て、これじゃあ本当に誘い受けじゃない。
あー、これ、なに。
悠のせい。
うん、こいつが悪い。
悠がまた笑っていた。
どうせ、私の顔が可笑しいとか言うんだろう。
あ、やっぱり。
ほーらね。
彼女は私に胸に耳を乗せた。
「早いね」
「そりゃ」
そうだろう。
赤ん坊みたいに、
悠はすり寄った。
しだいに態勢を変えて、
とうとう、頬から首筋、
んで、胸に手を這わせて、
ブレザーの下に右手を突っ込んだ。
その間も、ずっと私の顔を見ていて、
あ、こいつ私の恥ずかしがる所を楽しんでいやがるのだと、
気が付くのに時間はかからなかった。
とは言っても、すでに動き出した右手を止めることなど、
私には到底無理だった。
こんなに何重にもプロテクターをしているのに、
悠の手が触れた部分がカーディガン越しでも分かってしまう。
たまったもんじゃない。
好き勝手に、彼女は、揉んでいた。
部屋には二人だけ。
ここは、悠の部屋。
家族はみんな外出中。
まさに、ここは蜘蛛の巣。
私は、さしずめミノムシか何かか。
「ッ……ぁ、ゆう」
声が出て、自然名前を呼んでしまう。
「……ん?」
全て受け止めてくれるような眼差し。
むかつくわね。
「柔らかいよ、神奈」
わー!
人の胸の感想を、
どうしてこうも平然と言ってのけるか、こやつは。
「あんたのとッ……そう変わらないと思うけど」
「違うよ。神奈の方が、えろいよ」
「ば、ば、ば」
ばかやろうと、罵倒してやろうと思ったのに、
悠がシャツのボタンを外し始めたので、
私はサボテンみたいになった。
「さ、さっき脱がなくていいいいいって」
噛んだ。
「うん。全部脱ぐ必要ないから。それに、私が脱がせたかった」
もう、どうにでも。
でも、ちょっと怖いのよ。
分かってる?
乙女心ってやつ。
好きな人に、自信を持って全部をさらけ出せるわけじゃ、ないんだから。
「……や」
「や?」
「優しくして………よね?」
「……うん」
耳たぶを軽く噛まれた。
で、そんなことをされたら、
自分の体がどうなるか、
なんとなく予想はできていた。
シャツのボタンを外し、下に来ていた薄手のキャミソールとブラを、
いともたやすくかいくぐり、悠の指が胸の真ん中に直に触れた。
声はに出さずに、中国人みたいな台詞を胸中で吐いた。
アイヤー。
「固くなってる」
と、言われて、
もう死にたくなった。
歯を食いしばって、
羞恥に耐える。
「ね、神奈」
分かってる。
あんた、絶対楽しんでるでしょ!
「今、必死?」
私は声もなく、ただ頷いた。
悠の手のひらが、私の小振りな胸を揉みしだく。
なに、この拷問。
女の子に揉まれるって、
こんなに恥ずかしいものだったのね。
なんだか、しっとりしてきたし。
興奮してるの、悠?
「神奈」
突起を転がしてくる。
「ッひ」
もう、おうちに帰りたい。
唇をぺろりと舐められた。
今度は、自分の親指を舐めて、
それを私の唇に押し当て、
その指でまた胸をいじり始めた。
ぬるっとして、感じないように意識していたのに、
「ッ……ゆう、やめ」
なにそれ。
なんてエロゲ。
そんな非人道的な仕打ちが、10分くらい続いた。
「もう、満足したッ……はあッ……ッ?」
最後の方は、やたら上手く触ってきよってからに。
びっくりだよ。
神奈さんは、もう、限界だよ。
「うん」
「そ」
はあ、疲れた。
私は自分の姿態を見下ろした。
なんて、ハレンチな格好かしら。
胸がやたらじんじんするし。
「神奈、次はね……」
あ、その続きは言わせないわよ!
私は、彼女の唇に自分のを重ねたのだった。
悠と会ってから、暫く経って、
彼女の譲れないものはなんだろうと、
ふと、疑問に思ったことがある。
今、あんたは見つけたのかしら。
ねえ、悠。
おわり
本番までいけんかった
百合だしいいよね
お粗末様です
すごく良かった、ありがとう
着衣エロいいよね
次はぜひとも本番までお願いします
珍しい
というかそたりのSSとか見たことないわ
そして何故今更?
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