アールグレイ「母校に来るのは久しぶりねぇ」【ガルパン】 (37)



『ダージリン……私がですか』

『ええ、今日からアナタは、ダージリンよ。聖グロリアーナの戦車道は、いつも優雅に……アナタは必ず、私を超える隊長になるわ』



『後のことは頼むわね。ダージリン』

『待ってください!アールグレイ様!』

『こんな言葉を知っている?うしろをふり向く必要はない。あなたの前には、いくらでも道があるのだから』

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注意
・模型誌のガルパンの企画で、島田フミカネ氏がデザインした非公式キャラ『アールグレイ』が出てきます。
・アニメには出ていないオリジナルキャラクター、史実装備が出てきます
・それでもよければお付き合い下さい

聖グロリアーナ女学院
正門前

アールグレイ「久しぶりの母校。何も変わっていないわね」


アールグレイ「ダージリンは元気にしているかしら」


ルクリリ「あっ……!アールグレイ様!?」

アールグレイ「あらルクリリ。ごきげんよう」

ルクリリ「ごきげんよう……じゃなくて、どうされたんですか?!」

アールグレイ「どうされたも何も、母校に挨拶に来るのがそんなに不思議かしら?」

ルクリリ「い、いえ、とんでもない」

アールグレイ「ダージリンはどこに?」

ルクリリ「はい!ご案内いたします」

ダージリン「アールグレイ様がいらっしゃった!?」

アッサム「はい。先ほどルクリリが正門前でお会いしたようで、応接室にお通しいたしました」

ダージリン「なんてこと。急いで支度しますわ」

オレンジペコ「アールグレイ様というと、ダージリン様の前の隊長の」

ダージリン「ええ。オレンジペコも一度会っておくと良いわ」

アールグレイ「お久しぶりね。ダージリン」

ダージリン「お元気そうで何よりですわ、アールグレイ様」

アールグレイ「で、こっちが」

オレンジペコ「はじめまして。オレンジペコともうします」

アールグレイ「そう、あなたが。噂は聞いているわよ。ダージリンのお気に入りだって」

オレンジペコ「そ、そんな」

アールグレイ「この子、ちょっと変わってるでしょ?」

ダージリン「アールグレイ様に言われたくありませんわ」

アールグレイ「あら、言ってくれるじゃない。それはそうと、大分ご活躍だそうね。エキシビションと、この前の大学選抜との試合は見させてもらったわ」

ダージリン「恐れいります」



アールグレイ「あの大洗女子、興味深い学校ね?」

ダージリン「あの学校は、中々面白い戦いをしてくれますのよ」

アールグレイ「ふぅん。あなたがそういうことを言うのは珍しいわね」

ダージリン「実際に戦ってみると分かります」

アールグレイ「そう……そうだ、久々にあなた達の戦いぶりを肌で感じてみたいものね」

ダージリン「はい?」

アールグレイ「経験というものは、人が知識において進めば進むほど、それの必要を感じさせるものである」

ダージリン「デカルトですわ。でも、今更アールグレイ様が、私達と戦っても」

アールグレイ「何かを学ぶためには、自分で体験する以上にいい方法はないというでしょう?ダージリン」

ダージリン「なるほど……分かりました。準備をさせましょう。アッサム、ルクリリ、至急車長クラスを集めて」

オレンジペコ「かしこまりました」

聖グロリアーナ戦車道練習場


アールグレイ「私の戦車は?」

ダージリン「はい、すでに」

アールグレイ「……懐かしいわね。クロムウェル」

ダージリン「黒森峰戦では使わせていただきました」

アールグレイ「そう。クルセイダー部隊をもっと早くにこれに置き換えられたら、もう少し楽に戦わせてあげられたのかも知れないわね」

ダージリン「アレも良い戦車ですわ」

アールグレイ「聖グロリアーナの伝統、チャーチル、マチルダ、クルセイダー。でも、外に出てみると、やはりそれでは……とは思うのだけれどね」

ダージリン「やはり、今回も通りませんでしたか」

アールグレイ「マチルダ会のお歴々の思い入れには感服するわね。我が校の戦車道の伝統はもちろん守らなければならない。しかし、戦車を変えても、それは変わらないはず。伝統とは形を継承することを言わず、その魂を、その精神を継承することを言うのだから」

ダージリン「伝統の継承だけでは勝てない。日々創造していく姿勢が大切、ということですわね」

アールグレイ「ただ、戦車道は戦車の性能差でゴリ押しするような下品なものであってはならないの……で、チーム分けは良いの?これで」

ダージリン「私のチャーチル、ルクリリのマチルダⅡ以下4両、合計5両」

アールグレイ「私がクロムウェル、それにローズヒップチームのクルセイダー3両、それにマチルダⅡ2両。いいの?私のほうが優勢よ?」

ダージリン「慢心は人間最大の敵だとも言いますから」

アールグレイ「そうね。私も感が鈍ってないかが不安だわ」

ローズヒップ「アールグレイ様と戦列を組むなんて思っても見なかったですわ!」

アールグレイ「頼むわね、ローズヒップ」

ローズヒップ「このローズヒップにお任せください!!」

ダージリン「アールグレイ様の戦術は、もちろんアレでしょう」

ルクリリ「……ブランデー入りの紅茶、ですか」

アッサム「まさか身を持ってアレを体験することになるとは思いませんでした」

オレンジペコ「確か、クロムウェルを主体として機動力で敵陣を突破、各個撃破に持ち込むというあれですね」

ダージリン「ええ。おそらくそれには不適なマチルダ2両を囮とし、こちらの側面および背面をついてくるでしょうね」

ルクリリ「こちらはどうでますか?」

ダージリン「装甲、火力はこちらに分があるわ。敵の機動力に惑わされず、強襲を受け流しつつ応戦」

アッサム「しかし、アールグレイ様ほどの方が、手の内を知られた状態で、こちらに挑んでくるでしょうか?」

アールグレイ「ダージリンはこちらの手の内を完璧に読みきっているはずよ。だからそれを逆用するのが、私達が勝利する為のポイントね」

ローズヒップ「機動突破で各個撃破にしないんですの?」

アールグレイ「ブランデー入りの紅茶はもう飲み飽きたっていう顔が目に浮かぶわ。でも基本方針は変えるつもりは無い」

ローズヒップ「機動力なら負けませんわ!!」

アールグレイ「慌てない慌てない……紅茶を入れる時のように、準備を怠ってはいけないのよ……バニラ、例のアレの準備は出来てるの?」

バニラ「はい!装備完了ですわ!」

クランベリー「しかし、うまくいくでしょうか?」

アールグレイ「どうかしら?勝負は時の運ともいうものね」


アールグレイ「さて……私が見ていた頃のダージリン、いえ、聖グロリアーナとどう変わったのか、見させていただきましょうか」

『それではこれより、模擬演習戦闘を開始します。ルールはフラッグ戦。ダージリンチームはチャーチル、アールグレイチームはクロムウェルがフラッグ車。それでは、試合開始!』


ダージリンチーム
隊長車チャーチル

ダージリン「全車両前進……お茶をもらえるかしら?」

オレンジペコ「はい……余裕ですね」

ダージリン「紅茶が飲めないほどの状況ではないでしょう?」

オレンジペコ「……はい」

アッサム「アールグレイ様が、あのじゃじゃ馬娘をどう使ってくるかですね」

ダージリン「アールグレイ様は巡航戦車組の出だから、上手く使ってくるはずよ」

オレンジペコ「厄介ですね。ただ突っ込んでくるだけなら対処の仕様もありますが」

ダージリン「1頭の羊が率いる獅子の群れよりも、1頭の獅子が率いる羊の群れが恐ろしいとも言うわね」

オレンジペコ「お言葉ですが、相手は獅子と猟犬の群れみたいなものです」

ダージリン「それもそうね……オレンジペコの言うとおり、もう猟犬が来たようね」

アッサム「クルセイダー1、いえ2。やはり早いですね。もうここまで来ていましたか」

ダージリン「各車周辺警戒怠らないで。相手はどこから突っ込んでくるのか分からないわよ」

オレンジペコ「撃たないんですか?」

ダージリン「この距離では撃っても当たらないわ。無駄弾になるだけ」

アールグレイチーム
隊長車クロムウェル

バニラ『チャーチル1、マチルダ4。現在演習場を北へ侵攻中』

アールグレイ「偵察隊は威嚇射撃しつつ後退……乗ってくるかしら?」

ローズヒップ『アールグレイ様まだですのぉ!?もう待ちくたびれてしまいましたわ!!!』

アールグレイ「後で好きなだけ突っ込ませてあげるから、お待ちなさい」


アールグレイ「ふふっ、ダージリンも苦労するわね。中々個性的な子達がそろっていて」

シナモン『こちらシナモン。配置につきました』

グレナダ『グレナダ、配置完了』

アールグレイ「さて……先手はこちらから取らせてもらいましょうか。ローズヒップ、バニラ、クランベリー、行くわよ」

『『『はいっ!!』』』

ダージリンチーム
隊長車チャーチル

オレンジペコ「……来ました!右側面からクロムウェル1、クルセイダー1」

アッサム「右方向からも2両、こちらもクルセイダーです。一旦下がったと思ったのですが」

ドンッ!ドドンッ!
ゴンッ!ガーンッ!

ダージリン「あちらは近づかないかぎり砲撃は無意味。クロムウェルの砲撃にだけ注意すれば良いわ」

オレンジペコ「でも、マチルダが居ないのが気になりますね」ガコンッ

アッサム「足の遅いマチルダは、アールグレイ様の戦術だと足枷になりかねないわ」カチッ

ドォンッ!
ガコンッ

ダージリン「……」

ドドンッ!
ゴンッ!ガーンッ!

ルクリリ『クロムウェルとクルセイダー、離脱するようです』

オレンジペコ「見事な一撃翌離脱ですね。こちらの被害は」

ルクリリ『特にありません。追撃しますか?』

ダージリン「追いつけるものでもないわ。放っておきなさい」

オレンジペコ「森の中に入りますか?あちらの機動力を削ぐならこちらの方が」

ダージリン「……それは向こうも予測済みでしょう。このまま丘を盾にしつつ前進。次の突撃が来たら、有効圏内まで惹きつけて敵部隊を片付けるわよ。全車、横」

ドンッドンッ!
ズダァンッ!

『3号車履帯破損!動けません!』
『4号車、撃破されました!』

ダージリン「……2時方向、マチルダを確認、全車砲撃」

オレンジペコ「伏兵ですか」ガコンッ

アッサム「しかし、この距離でマチルダを抜ける筈がありません」カチッ

ドォンッ!

ルクリリ『くそっ、マチルダ3号車もやられました!』

『ダージリンチーム、マチルダ3号車、マチルダ4号車戦闘不能!』

ダージリン「……アレね」

アールグレイチーム
隊長車クロムウェル

シナモン『マチルダ1両撃破ですわ!』

グレナダ『マチルダ1両撃破!』

ローズヒップ『おほほほほほほ!まさかダージリン様から2両も先取なんて流石ですわ!!』

アールグレイ「恋愛と戦争では手段をえらばない。というものね。どうかしら、リトルジョンアダプターのお味は」

ローズヒップ『このまま押し切るんですの?』

アールグレイ「同じ手が何度も通じるほどの相手じゃないわ。シナモン、グレナダは一旦後退」

シナモン『はっ!』

グレナダ『了解しました』

アールグレイ「ローズヒップ、敵側面から強襲。マチルダの後退を援護」

ローズヒップ『わっかりましたわ!バニラ、クランベリー、行きますわよ!!』

アールグレイ「クロムウェル前進、マチルダ部隊と合流するわよ」

ダージリンチーム
隊長車チャーチル

ドンッドンッ!
ガンッ!コーンッ!

アッサム「敵にしてみるとなんとも厄介ですね、クルセイダーは」

オレンジペコ「全くです」ガコンッ

ダージリン「マチルダは下がるようね。おそらくあの威力、リトルジョンアダプター付きね。どこから持ちだしたのかしら」

アッサム「整備部が次の試合用に準備していた筈ですが。アールグレイ様がそちらを持ちだしたのでしょう」カチッ

ズドォンッ!
ガコンッ

ルクリリ『ダージリン様、私が追撃を』

ダージリン「単独行動は、各個撃破のリスクが高いわね。マチルダ1号車、2号車は動ける?」

『2号車、問題ありません』

ルクリリ『はっ、1号車問題ありません』

オレンジペコ「ここからどう攻めますか?」

ダージリン「敵はクルセイダー3、クロムウェル1、そしてリトルジョンアダプター付きマチルダが2」

アッサム「大してこちらはチャーチルにマチルダが2両。彼我車両数において2倍。戦力的には3倍近いかと」

ダージリン「ふふっ。流石にアールグレイ様相手だと、こちらも手玉に取られるわね」

オレンジペコ「でも、このまま引き下がるつもりはないんですよね」

ダージリン「当然でしょ。開けた場所は不利ね。全車、市街地へ突入」


アールグレイチーム
隊長車クロムウェル

バニラ『ダージリン様達は、このまま市街地ブロックへ突入するようです」

アールグレイ「平地では分が悪いと踏んだのかしら?まあ良いでしょう。市街地戦でこそこちらの機動力で、あちらを各個撃破に持ち込む好機。近距離戦ならこちらの6ポンド砲でも敵の装甲を抜けるはず。行くわよローズヒップ」

ローズヒップ『了解ですわ!』

アールグレイ「……さて、どこから出てくるか」


アールグレイ「どのみちチャーチルとマチルダの機動力なら、市街地戦でも変わりはないと踏んだかしら?」

バニラ『アールグレイ様、前方にチャーチルです』

ローズヒップ『見つけましたわダージリン様!』

アールグレイ「単独?まさかね」

ローズヒップ『いっきますわ』

アールグレイ「待ちなさいローズヒップ。まだ向こうの動きが分からないわ」

ローズヒップ『うー。アールグレイ様、少し慎重すぎますわ~!』

アールグレイ「こういう時には臆病なくらいがちょうど良いのよ……でも、ローズヒップの言にも一理あり、か」

「アールグレイ様、チャーチル、路地左折します」

アールグレイ「細い路地に逃げ込むなら、前後を押さえて叩く。マチルダは敵マチルダの掃討を。クルセイダーはそのまま追撃。私が回りこむ」

ローズヒップ「了解しましたわ!!」

ダージリンチーム
隊長車チャーチル

ダージリン「ちゃんとついてきているわね」

オレンジペコ「はい。でも、良いんですか?回り込まれでもしたら」

ダージリン「忘れたの?オレンジペコ。サンドイッチは――」

オレンジペコ「挟まれたほうがいい味出すんですよね?」

ダージリン「ふふっ。まさかそんな状況に毎度追い込まれるとは思わなかったけれど」

アッサム「まもなくXポイント通過します」

ダージリン「ルクリリ。用意は良いわね?」

ルクリリ『はっ!』

アールグレイチーム
クルセイダー1号車

ローズヒップ「さあ逃しませんわよダージリン様!必殺必中距離で砲撃して差し上げますわ!バニラ、クランベリー、砲撃開」

バニラ『あっ!前方マチルダ飛び出してきました!』

ローズヒップ「まっ、マジですの?!急停車!!!!!反転!」

「ダメです!間に合いません!」

ガッシャーン!

クランベリー『3号車敵車両と激突、走行不能!』

バニラ『履帯をやられました!』

ローズヒップ「急速後退!」

「ダメです、後方からマチルダ!挟まれました!」

ローズヒップ「うげっ」

ダージリンチーム
マチルダ1号車

ルクリリ「逃がすか!2号車攻撃準備良いわね?!」

『はい!』

「装填完了!」ガコンッ

ルクリリ「一撃で仕留めろ、撃て!」

アールグレイチーム
隊長車クロムウェル

ドンッ!ドンッ!

ローズヒップ『ダージリン様がこんな手を使うとは思っても見ませんでしたわ……!』

『アールグレイチーム、クルセイダー1号、2号、3号車戦闘不能』

アールグレイ「あっはっはっはっ!まさかクルセイダー3両を、2両のマチルダで仕留めるなんて。やるじゃないダージリン」

「アールグレイ様、そろそろ交差点です」

アールグレイ様「チャーチルと正面切っての撃ち合いになるとはね」

ダージリンチーム
隊長車チャーチル

オレンジペコ「クルセイダー部隊、全車撃破!」

ダージリン「さて、来るかしら」

アッサム「前方交差点、クロムウェルです」

ダージリン「このまま突破。砲撃翌用意」

オレンジペコ「突っ込むんですか?」ガコンッ

ダージリン「ええ。ここで仕留められればよし、でなければ次の手よ」

アールグレイチーム
隊長車クロムウェル

「チャーチル突っ込んできます!」

アールグレイ「砲撃翌来るわよ!急制動、しかるのち攻撃!」

ズドォンッ!
ガギィンッ!

アールグレイ「かすり傷ね」

「装填完了!」ガコンッ

アールグレイ「撃てっ!」

カチッ
ドンッ!ガァンッ!

「弾かれました!」

アールグレイ「硬いわねぇ、チャーチル」

「次弾装填!」

アールグレイ「おやめなさい。全速、敵砲撃の回避しつつ路地右折、チャーチルから離れるわよ」

ズドンッ!
ヒュンッ!


アールグレイ「これで車両数は同数。火力もほぼ同格」


アールグレイ「さあ、私もこれでうかうかしていられないわね」

ダージリンチーム
隊長車チャーチル

オレンジペコ「マチルダ、ボロボロですね」

アッサム「整備部が見たら卒倒するかもしれません」

ダージリン「腕がなるというものでしょう。ルクリリ、異常はない?」

ルクリリ『はい。戦闘可能です』

アッサム「残るは隊長車とリトルジョンアダプター付きのマチルダ2両です」

ダージリン「クロムウェルの主砲は、こちらの側面と上面、後方からなら脅威になるわ。マチルダの待ち伏せも厄介ね」

アッサム「しかし、こちらの砲は相手のどの面も抜けます」

オレンジペコ「チャーチルをもう一度囮にしますか?」

ダージリン「そうね。釣りの時は、餌を勿体ぶると大物は釣れないとも言うし」

アッサム「釣れればいいですが、餌だけとられるのはゴメンですね」

アールグレイチーム
隊長車クロムウェル

グレナダ『アールグレイ様、この後は』

シナモン『火力で押し切るのですか?』

アールグレイ「芸がないわねぇ」


アールグレイ「とはいえ、フラッグ車しか巡航戦車が居ないとなれば、あまり突出もできないか」

「アールグレイ様!チャーチル、マチルダ発見!」

ズドォンッ!
ヒュンッ!

「こちらも撃ち返しますか?」

アールグレイ「また路地へ追い込んで挟み撃ちにする気か、それとも」

「チャーチル交差点を左折!」

アールグレイ「グレナダ、1本先の路地を左折、チャーチルの頭を押さえなさい。シナモンは私に続きなさい」

ダージリンチーム
隊長車チャーチル

ルクリリ『しかしダージリン様、これでいいのですか?』

ダージリン「ええ。マチルダ2号車もルクリリに続きなさい」

オレンジペコ「上手くいくでしょうか?」

アッサム「アールグレイ様が乗ってくれば良いのですが」

ダージリン「確実に仕留めようとするなら、ご自分で打って出るはず。そういう人よ」

アールグレイチーム
隊長車クロムウェル

シナモン『マチルダは左折して離脱。追撃して撃破しますか?』

アールグレイ「左折したのは放っておきなさい。フラッグ車だけを狙って」

シナモン『はっ!』

グレナダ『配置につきました』

アールグレイ「チャーチルが有効射程に入り次第、履帯を狙いなさい。足を止めるのよ」

グレナダ『足を止めれば、装甲が厚くとも、ですか』

アールグレイ「ええ、至近距離からエンジンを狙えば、十分撃破出来る」

グレナダ『了解です』

アールグレイ「……なぜ、ワザワザマチルダを離れさせたのかしら」

グレナダ『間もなく有効射程、一撃で決めますわ』

シナモン『チャーチル、右折します!』

アールグレイ「そちらは袋小路よ……追撃するわ。シナモンも続きなさい」


アールグレイ「さあ、どうするのダージリン。まさか道を間違えたなんて言わないわよね」

「チャーチル、停止しています」

アールグレイ「……」

アールグレイ「さあ、ダージリン。ここまでかしら?前後左右、どちらにも逃げ場なし。まさに袋の鼠ね」

ダージリン「窮鼠猫を噛む、といいますわ」

アールグレイ「ふふっ。でもどうかしら?ここで終わりにするか、続けるか」

ダージリン「アールグレイ様にそれを決定する権利がおありで?」

アールグレイ「あら、言ってくれるわね」

ダージリン「……アッサム、砲撃!」

アールグレイ「?!」

ドォンッ!ズガァンッ!

アールグレイ「逃げ口でも作る気?……いや、違う!壁の向こうに……マチルダ?!全車後退!」

ダージリンチーム
マチルダ1号車

ルクリリ「クロムウェルの履帯と砲塔リングを狙え!撃て!」

ドォンッ!
ガァンッ!

ルクリリ「次!後方のアダプター付きマチルダ!2号車攻撃!」
『了解!』

ドォンッ!
ガァンッ!

アールグレイチーム
隊長車クロムウェル

「履帯損傷!」

「砲塔故障!」

「チャーチルの砲塔、こちらに旋回しています!」

シナモン『こちらも履帯と砲身をやられました!』

グレナダ『シナモンとアールグレイ様の車両がいて撃てませんわ……!』

アールグレイ「……これで、終わりかしら?」

ダージリン『チャーチルは次の砲撃で、確実にクロムウェルの戦闘能力を奪えます。このまま戦闘を継続しますか?』

アールグレイ「……こちらの戦闘継続能力は完全に失われました。私の負けよ、ダージリン」

ダージリン『……お疲れ様でした、アールグレイ様』

アールグレイ「回収車を呼んで。私たちは先に戻りましょう」

クラブハウス〈紅茶の園〉
大浴場

アールグレイ「ダージリンが、あんな戦い方をしてくるなんて思わなかったわ」

ダージリン「正攻法では、こちらが機動力で翻弄されてしまいますから」

アールグレイ「ダージリンらしからぬ戦い方だったわね。体当たりで動きを封じたり、壁の向こうに伏せさせた味方の射線を、壁を吹き飛ばして通させたり」

ダージリン「褒め言葉と受け取っておきますわ」

アールグレイ「……あなたにダージリンの名を渡したその日。もしかしたら、これが重荷になるのではないかと不安だった」

ダージリン「……私は、期待に応えられたでしょうか?」

アールグレイ「ええ、思った以上にやってくれたわ。惜しむらくは、あなたが在学中に、グロリアーナの全国大会優勝が見られなかったこと、かしら」

ダージリン「……それはきっと、私の後に続く子達が、成し遂げてくれるはずです」

アールグレイ「そうね。このグロリアーナが続く限り、優勝への挑戦、そして、伝統ある戦車道は続くでしょう……そうだ、ダージリン、あなたのお気に入りの子、なんて言ったかしら」

ダージリン「オレンジペコですか?」

アールグレイ「美味しいお紅茶淹れるそうじゃない。私も頂きたいものね」

ダージリン「ええ、もちろんですわ」

談話室

オレンジペコ「どうぞ」

アールグレイ「……美味しい。これぞグロリアーナの紅茶道、といったところかしら?」

オレンジペコ「恐れいります」

アールグレイ「今日は楽しかったわ。懐かしい顔も見れたし、楽しい試合をさせてもらって、美味しいお紅茶をいただける……オレンジペコ、あなたに一言、こんな言葉を送っておきましょう」

オレンジペコ「はい?」

アールグレイ「私は私の足を導いてくれるただ一つのランプを知っている。それは経験というランプである」


アールグレイ「あなたは今、ダージリンを直ぐ側で見ている。アッサムやルクリリ、ローズヒップ達のことも。そのどれもが、きっと今からのあなたの戦車道、いえ、人生の役に立つ経験になるはず」

オレンジペコ「はい」

アールグレイ「ね、ダージリン?」

ダージリン「そうですわね」

アールグレイ「さて……また美味しい紅茶をいただきに来るわ。ごきげんよう」


マジでアールグレイ様お美しいので、公式化されたらいいなぁ……ダー様主役のOVAお願いします……

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