魔女さんとの日々 (61)

※不定期更新
※やまなしおちなし


暇つぶしに見てもらえれば幸いです

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[魔女家・研究室]

ん?なんだい?

ああ…もうそんな時間か、今行くよ

いや急ぎの研究ではないのだが、つい夢中になってしまったな。悪い癖だ

以前は、そう、君が来る前はよく何日も飲まず食わずで研究していたものだよ。こうして食事を作ってもらえるのは思った以上にありがたいものだね

これかい?これは魔法を継続的に発動し続ける術式の研究しているんだ

これが完成すればいちいち備品に魔法をかけなおす手間が無くなるんだが、どうもうまくいかなくて…

そもそもかけなおすための魔翌力をどうするかという問題があってね?術式を作るときに魔翌力を大量に備蓄させてそれを使うか、術式の周辺の魔翌力保持者から継続的に魔翌力を吸い取りそれを使うという二つの方式を考えたんだがどちらも一長一短で

え?あ、ああそうだね、夕食だった、うん

そう、こんな調子で気がついたら数日たっていることがよくあったんだよ

別に倒れたりはしないけどね。心配してくれるのはありがたいが魔女と人間を一緒にされては困るよ

…私を普通の女の子扱いするなと何度も言っているだろう

そりゃあ見た目は人間の若い女だが中身は齢数百年の魔物だよ?普通はもっと怖がったり嫌悪したりとかさ

わかった、わかったからそういう恥ずかしい台詞を真顔で言うんじゃないよ

はぁ、まったく君というやつは…ほら、夕食なんだろう?はやく行くぞ

saga入れないと
魔翌力→魔翌翌翌力
になりますよ

[居間・食卓]

うん、なかなかだ。相変わらず具材の大きさはまちまちだがね

そうか、あれからもう一ヶ月か

君が魔方陣から出てきたときにはどうしようかと思ったが、馴染むものだね

あの転移魔法かい?もうあれ以来研究してないよ

どこをどうしたら異世界につながったのか皆目見当がつかなくてね。これ以上実験するのも危険だし

しかし君が異世界から来たとわかったときの反応は未だに納得がいかないんだが。夢が叶ったからってあそこまで狂喜乱舞するものかい?

……その「あにめ」とやらはわからないが魔女っ子というのは私のことなんだろうね

しかも元の世界に戻りたくないとは。まぁ戻りたいといわれても手段がないから正直ありがたかったけど

そんなにそっちの世界はつまらないのかい?話を聞く限りでは豊かで不自由ない生活だったんだろう。それこそこの世界の貴族のようだよ?

そうかい?まぁ魔女の家に住み込みで家政夫をしたがるような君だからね。そっちの世界での異端であるが故に、この世界には来るべくして来たのかも

はじめは冗談で提案したんだけどな…

うん、そうだよ?言いだしっぺは私だけど、まさかあんなに食いついてくるとは思わなかったさ。魔女だって教えた後だからなおさらね

でも今考えてみれば異世界から来た君が魔女についてよく知ってるわけないんだし、行く当てもないとくれば当然か

え?それだけじゃないなら他にどんな理由があるのさ

……欲望に忠実というか、なんというか。見た目と中身は違うとあの時説明したよね?それでもなおそんな、かわいいからという理由で決めたのかい?

「ぎゃっぷもえ」?なんだいそれは。ああすまない、もういいよ長くなりそうだから

以前そんな感じで小一時間話し続けてただろう。結局ほとんど理解できなかったがそんなに「もえ」と言うのは君にとって大事なのかい?

いやいや、もういいから。そんな二時間も講義されても理解できそうにないよ、はぁ

…そんなに悲しそうな顔をするなよ

>>3 本当だ。指摘感謝です


そういえば魔法に興味津々だったけど結局今はどうだい?たいしてすごいものでもないだろう?

うーん、そんなにすごいかな?制限は多いし、誰にでもできるものでは無いし、下手をすれば簡単に死ぬこともある

私からすればキカイとやらのほうがよっぽどすごいよ。動力が雷とは未だに信じられないけれど、機能としてはどれもすばらしいものだ

その上誰が使っても安全性が保証されているなんて魔法具なんて目じゃないよ

開発に骨は折れたが「れいぞうこ」は今や必需品だね、雷ではなく魔翌力駆動だが

ふふ、凄いだろう?そこいらの魔物や魔術師からは二歩以上進んだ技術があると自負しているからね。…そんなに褒めても何もでないよ?

まったく、それが狙いか。ダメだ、新しい魔道具はしばらく作らないからね

ダメだったらダメだ、あれ一つ作るのにどれだけ労力と時間をかけてると思ってるんだい?

そりゃあ君が魔法がからっきしなのはわかってるがね、今ある分で自衛能力は十分だろう

私は忙しいんだよ。しばらくはその「盾の腕輪」で我慢してくれ

ごちそうさま、おいしかったよ

何もしなくても食器が下げられ、洗い物までしてくれる。ん?いや、最近はこれが普通になってきたな、とね

当然だろう?君が来る前はずっと私一人だったんだから家事だって自分でやっていたさ

……それは、まぁ、一人暮らしだったし、客なんて来ないしね。必要最低限きれいならあとは放置でも問題ないだろう

そんなに汚かったかな?そういえばあのころは食事以外はほぼ研究しかしてなかったら洗物とかほったらかしだったか

部屋が汚かったって?そんなことは無いよ、自室も研究室も一応掃除して……それ以外?ああ、うん、それ以外は、ね?

自室もぜんぜんなってなかった?そ、そうか。うぅ…

君は以前も家政婦をしていたのかな?料理の腕はともかく、洗濯や掃除は初めからそつなくこなしていたよね

いや、そんなことはない。一人暮らしなら家事のスキルが勝手に身につくなんてことはありえない

そりゃ確かに私も少しはできるけれど……洗濯にしてもいつの間にかローブの染みが取れてたりするからさ。あれ君だろう?

「すぅつ」の染み抜き?ふぅん、とにかく以前からたまにやっていたということか

顔に似合わず家政婦向きなんだな君は。雇って正解だったよ


そういえば洗濯で思い出したんだけど、いまさらだが私の服でいかがわしいことをしていないだろうね?

おい、今なぜ目をそらした?私の目を見てもう一度その台詞を言ってみろ、ん?

……ふふふ。冗談だよ、怒ってなんかいないさ

なんでって、そりゃあ君も健全な男ならそういうこともあるあるだろうよ

そもそも洗濯を任せたのは私なんだからそれくらい予期していて当然だろう。最終的に綺麗になるのであれば文句は無い

というか、本当に私なんかに欲情するんだね。そこに驚きを感じるよ

確かにこの容姿にはそれなりの自信を持っているけれど、魔女とわかった上で私をそういう目で見る人間は君が初めてだ

魔女の残虐性についてはちゃんと教えたはずなんだけどな。異世界人にはイメージしづらいのかな?

そうだね、確かに私は自分の所有物を大事にするタイプだ。君とて例外じゃない

でも…それは私に利益をもたらす場合に限っての話さ

あの本の挿絵で見た少女ような酷い末路を辿りたくなければ、私の機嫌を損ねないことだ

うん、わかってくれて嬉しいよ。君のような有能な家政婦は薬の素材にするには少々惜しいからね


じゃあ私は研究に戻るよ……あぁ食後のお茶はいらない

今研究がいいところだからね、今日はもう研究室には入ってこないでくれ

それじゃ、おやすみ

[別の日]
[魔女家・居間]


ふぁ……あふ、おはよう。今何時くらいかな?

そっか…もうちょっと寝てても良かったな

そんなことないよ、私が寝たのは外がちょっと明るくなり始めた頃だから。まだ日が傾いてないなら早起きさ

規則正しい生活が必要なのは人間の君の方だろう、魔物には通用しない理屈だよそれは

いいから君は君の仕事をしたまえよ。私は外で水浴びしてくるから朝食…じゃないか、昼食の準備よろしくね

今日は卵料理の気分だな、期待してるよ?

[食卓]

ふぅ、やはり何日も研究室に篭ったあとは外での水浴びに限るね

はい洗い物、あと研修室にローブやら雑巾やらもあるからそっちもよろしくね

さて昼食は……ふむ、まぁ及第点かな。そろそろレパートリーが増えてくれると嬉しいんだがね

流石にこっちの食材にも慣れてきたろう?家政婦たるもの料理も得意になってもらわないと

以前教えた料理本は読んだかい?あれにちゃんと手順が書いてあるから…え?

いやその本であってるよ?冒頭の獲物を解体して肉を取る方法は必要ないだろうけどそのあとの料理レシピは君にも使えそうじゃないか

あぁ…そういうことか、始めの解体図を見て別の本だと勘違いしたわけだ

確かに人間の料理本には無い項目だったね、それ魔物の料理人が作った本だったのを失念していたよ

そうさ、人間と違って魔物の料理人はまず自力で食材を調達するところから始めるんだ

自分の目で良質な食材を見極めるんだってさ……ま、そんなことしてるのは相当高名な魔物専属の料理人だけだけどね

でもこだわりの分美味しさも格別らしい。一度は食べてみたいな

で、そんな有名な料理人が執筆したのがその本というわけだ

冒頭はともかく簡単で美味しい料理が作れると人気の本らしいよ?是非とも君に習得してもらいたいね

私?私は料理より研究だから。そりゃ美味しいものは好きだけど、創作意欲には勝てないのさ

というわけで代わりによろしく頼むよ、家政婦君♪

[居間]

はふぅ……

ん?見ての通り食後のお茶を楽しみつつくつろいでいるのさ

このソファーは座るんじゃなくてこうして寝転がる為に買ったからね。大きさが私にぴったりなんだ

そういえばこれにしみつていた埃っぽさが随分薄くなってるのは君のおかげかな?

そっか、しっかりと仕事をこなしているようで安心したよ

君を信用してないわけでは無いけど、どの程度まで仕事をしているのかは確認してないからね

まぁ目に見える部分がしっかり出来てればいいんだけど

そういえば薪の備蓄は順調かい?そろそろ薪置き場をいっぱいにしてもらわないと冬に間に合わないよ?

はぁ…大の男ならもう少し頑張りなよ。私に寒い思いをさせたらどうなるか……わかるよね?

君ね、何でもかんでも魔法を使えばなんとかなると思ったら大間違いだよ

そもそも魔法を使うってことは私が疲れるってことだ、使わずに済むならそれに越したことはない

私が楽をするために君が苦労する。主従関係のあるべき姿だと思わないかい?

分かればよろしい、引き続き頑張ってくれたまえ

だがまぁ…従者の努力を労ってやるのも主人の務めだね

しっかり仕事をこなせばご褒美をあげるのもやぶさかではないよ?

え?あ、おいちょっと!……行っちゃった

ご褒美という単語だけであそこまで張り切れるものなのか…?やっぱり彼のことはよくわからないな

[別の日]
[魔女家・台所]

やあ、今いいかな?

ちょっと実験に付き合ってほしくてね。何、難しいものじゃ無いから安心してくれ

危険性?危険は無いはずだ、理論上はね。その確認の実験だから…おい逃げるな、というかどこに逃げる気だ?

ここは魔物のはびこる魔界の森の奥地、人間には未踏の地というやつだ。ここから人里へ行くには私の転移魔法しかない、そうだったね?

そうそう、あきらめて大人しくついておいで。大丈夫、君には死ぬような危険のある実験なんてさせないよ

万一なにか不具合があったとしてもせいぜい体の一部が魔物化したりとか、ちょっと異様に体が膨張したりとかそんなものだからさ

そのくらいならすぐに治して……いない。はぁ、この家の中でかくれんぼでもしたいのかね彼は

[食料庫]

さあ観念したまえ、といってももう動けないだろうが

何だこれは、という目をしているね?これは私が考案した束縛魔法さ

単純に魔力で拘束ではなく、実体のある縄を生成して物理的に相手を縛る

縄の材質や縛る際の拘束方法は使用者のイメージで自由に変更が可能なんだ、すごいだろう?まぁその分消費魔力も多いんだけど

これにより相手の魔力で相殺されて拘束を解かれる心配も無く、何より術者が対象から離れても拘束力が落ない

あとバリエーションも豊富だ。たとえば今の君のように両手足に加え口枷・首輪のオプション付きとか、ね

さて、それでは実験場所に向かおうじゃないか。このまま私に引きずられるのと、拘束を解かれて自分で私についてくるのと、どっちがいい?

拘束のままだね、わかった。痛いほうがいいだなんて君も物好きだねぇ

ん?なんだい?口枷のせいでよくわからないんだが……ふふふ、冗談だよ。そんな泣きそうな顔をしないでおくれ、今解除するから

これで懲りたかい?…しおらしくなったね。大丈夫だって、私を信じなよ。本当に最終試験みたいなものだからさ

さあ行こう、こういうのは案ずるより産むが易しだ。どうせやるんだから覚悟を決めなよ

[外・魔女家の庭]

さて、今日試してもらうのはこの魔法薬だ

うん?そりゃあ何が起きるかわからないんだ、室内より外の方が被害も少ないし対処もしやすいからね

だからそんな情けない顔をするなって…あくまで念のためだよ

何かあってからでは遅いんだ、発明に対しあらゆる想定とその対処法を考えるのは研究者の責務だからね。万全を期すに越したことはない

それに魔法薬の効果を試すのにも外の方が都合がいいんだ。効果は飲んでからのお楽しみだよ♪

では飲んでくれ。あ、味とかも聞くからちゃんと味わって飲んでおくれよ?何味かは私にもわかってないのでね

ん~まぁまずいんじゃないかな?良薬口に苦しって言うし

ほらほら、ぐいっと。…どうかな?

ふんふん、要するに恐ろしく苦い水か。まぁ材料から考えたら十分及第点かな…材料?言ってもいいのかい?

うん、それが懸命だ。真実を知ることが必ずしも幸福とは限らないよ

体調に変化は?…うん、予想通りだな。ちょっと腕をつねるよ?どうだい?…よしよし、これも規定どおり

軽い興奮作用に感覚の鈍化、あとは本命の効果が出ていれば……


じゃ、そこの岩を持ち上げてみてくれ

無理じゃない。今の君ならこの身の丈くらいの大岩ならいけるはずだ、やってみたまえ

よーし、できたじゃないか!どうかな?体はきついかい?…もう少し重いのでもいけそうだね。なるほど…あ、もう降ろしていいよ

ちょっとまってね、結果をメモするから…うん?おー、いい跳躍力だね。自身の身長の二倍くらいかな?

あはは、はしゃぐのはいいけどあまり無理はしないほうがいいよ?あとで反動がきつくなるから

そうだよ?この薬は反動が来るのを前提に開発したからね。…あのね、ノーリスクで薬を飲むだけでこんな強化ができるとでも?

そんな都合のいい話があるわけ無いだろう。前にも言ったけど君は魔法に対して夢を見すぎだ

体が痛んできたかい?効果が切れてきたね、予定より早いな…ああ心配はいらないよ、筋肉痛がひどくなった程度の反動のはずだから

おーおー、痛そうだね。どんな風に痛い?程度は?どこが特に痛む?…よし、予想通り

とりあえずこの強化薬はおおむね完成かな、もうちょっと調整はしたほうがよさそうだけど

君ね、言っておくけど反動がきつくなってるのは勝手にはしゃいで飛び跳ねていた自分のせいだからね?

本来なら反動は腕だけの予定だったのに…まぁデータが多く取れたから私はいいんだけど


はいはいわかったわかった。じっとしてな、『回復魔法』…ほら、もう大丈夫だ

気分はどうだい?痛むところは?動かない部位はないね?よし、反動も初級回復魔法で何とかなるレベルか

ね?危ないことは無かったろう?

反動のことを言わなかったのはいう必要がなかったからだよ。それを言ってまた逃げられても面倒だし

私かい?私じゃダメなんだよ、魔法の素養の無い者でもこの薬だけで実戦レベルまで強化できるのかという実験なんだから

魔法の扱える者ならこんな薬使わなくても強化魔法や補助魔法で事足りるしね。完全に君のような人用なんだよ、この薬は

ともかくこの実験は成功だ、協力に感謝するよ。次回の実験もよろしく頼むね…え?そう、次だよ

今まで頼まなかったのは開発してなかったからだよ。君が来てから人間用のアイテムを開発し始めたんだ、使い捨ての魔道具とか魔法薬とか

これまでは本当に人間に対して有効なのかを確認できなかったから作ってなかったんだよね

試験や実験をしようにも魔女の作ったものを好き好んで試してみようなんて物好きはいなかったし、無理やりやらせても感想とかのデータが取れないし

でも君が来たからね。ちゃんとした試験が可能になり、売り子にして町で販売もできるようになった。だから開発を進めているのさ、理解してもらえたかな?

君にとっても悪い話じゃないよ?完成したアイテムは君にも使わせてあげるし、お金が稼げればここの暮らしも楽になる

材料費が潤沢にあれば便利な魔道具も作れるんだ。君が言ってた「こたつ」とやらも考えてあげられるかもね?

俄然やる気を出したね、そんなに便利なのかい?その「こたつ」というのは…魔力を持たない魔道具?それは魔道具じゃないだろうに

使えばわかると言われてもね。それ作るの私なんだから構造の説明はちゃんと頼むよ?

[別の日]
[魔女家・研究室]

げほっ、けほ……くそ、久々にやってしまったな

うわっ!?…あぁ君か。驚かせないでくれよ、研究室の扉は静かに開けろと教えたろう

まぁ確かに今回は君の方が驚いたか。見ての通り大爆発だ、この惨状を見るのもいつぶりかな

私は大丈夫だよ、この程度の爆発で怪我をするほどやわではないさ

ちょっと家が吹っ飛びそうな爆発があったくらいでうろたえていては私の家政婦は務まらないぞ?

言ったろ?備えあれば憂いなし。こういう時のためにこの部屋には一面に防壁を展開する魔法陣が張ってあるんだ

だから家には影響はない、けど爆発の度に部屋の中の備品が全滅するのはやっぱりため息が出るね…

あ~クリスタル製のフラスコセットが…これ高かったのになぁ

なんだいさっきから……服?あぁ……ほんとだ、いい具合に扇情的になってるね

それにしては君全然視線外さないどころかガン見してるね?失礼だとは思わないのかい?

今更目をそらしても遅いよ。こんな起伏の少ない体のどこがいいんだか

いや、そんな気迫に満ちた答えは聞いてないから。さっさと着替えを持ってきておくれ

[居間]

さて、掃除は君に任せるからね。私は備品のストックを確認しに地下室に行くから

とりあえず机の残骸とか大きのはそのまま庭の一箇所に集めてくれ、後で適当に転移させるから

細かいのも袋にまとめて庭に置いといてくれればいい

で、この作業に対して注意点が二つある

1、まだ使えそうなものがあったらよけておくこと。2、危なそうなものがあったら触らないこと

ほぼ全部吹き飛んでるだろうけど念のため注意して作業に当たってくれ

例えば…そうだな、前に作ったあと放置してたゴーレムの核なら残ってる、かも

とりあえずよくわからなかったら触らないで、私の支持を仰ぐこと。いいね?じゃあよろしく

[研究室]

や、調子はどうだい?

とりあえず大体ゴミは出し終わったみたいだね。私も少し手伝うとしよう

風魔法でホコリとか細かいのは外に出すから君は拭き掃除を中心に頼むよ

ん?何か残ってたのかい?……あぁ、確かにこれがさっき言ってたゴーレムの核だよ、よく見つけたね

しかしまぁ見事なまでに真っ二つだな、魔力も残ってないしもうガラクタ同然だ

うん、これは少しでも欠けると構造バランスが崩れて機能しなくなるんだよ

だから作成時にも繊細な魔力コントロールと精密な術式が必要になる。割と難易度高いんだよ?これ

まぁいいや、どうせ使う気もなかったし。街に出たときに適当に売ってしまおう

そうそう忘れるところだった、明日街に買物に出るからね

いや、今回は君も付いてきてもらうよ。この世界に来てから初めてのお出かけだね


しっかり本で予習もしてもらったし、そろそろ私以外の魔物にも慣れてもらわないとね

嬉しそうだね…やっぱり変人だよ君は。人外に会うのがそんなに楽しみかい?

前にも言ったけど知性のある魔物なんて人間を下にしか見ていないのが大半だ

私の保護下だからと油断してるとパックリ食べられてしまうよ?比喩じゃなく文字通りに

くれぐれも観光気分ではしゃがないようね、君のせいで面倒なのに目をつけられたら最悪君を差し出して私は帰るから

薄情?とんでもない。私は魔物の中ではトップクラスに優しい方だぞ?

そのへんも学習してもらわないとね…ま、街に行けば嫌でもわかるか

それは行ってのお楽しみだよ。私が説明するより見たほうが早い

さて、とりあえずこの掃除が終わらないと明日の買い物にも行けないからね。さっさと片付けてしまおう

[夜・研究室]

よーし終わった。丸一日で復帰とは過去最速記録だよ、明日の昼くらいまでかかるかと思ったのに

自分ひとりだと面倒でなかなか手をつけられなくてね。数日放置したあと研究したくなって結局片付けるんだけど

しかし殺風景になってしまったな…とりあえず今ある分の備品だけでも置いてしまおうか

あぁいや、下から転移させるから君は動かなくていいよ。ありがとうね

流石に机やらを地下から持ってくるのは骨だろう?階段で実験器具を割られても困るし

部屋の真ん中でいいかな、『転移魔法』。1、2、3…よし、全部あるな

じゃあ重いものの移動は頼むよ?私は軽い実験機材を動かすから

机はそこに2個並べてくれ、あと右の机の上に薬品棚も頼むよ。抽出器は…ここかな

それ?それは付呪台だよ、小物の付呪はその上でやると台の術式の効果で格段に楽になるんだ

そいつはそっちの隅に頼むよ…あ、結構重いから気をつけてね

ふふふ、この前の魔法薬を使うかい?…そう、それは残念だ


はいお疲れ、現状だとここまでだね。物が少ないからすぐ終わったな

うん、思った以上にストックがなくてね…明日君を連れて行くのは荷物持ちも兼ねているんだ

ついでに食料品とかも買い込むつもりだから、君の活躍に期待しているよ?

んん?あ~ごめんよ、今日一日働き詰めだったものね、そりゃあ疲れてるか

ちょっと待ってなよ、確かまだストックが…あった。はい、回復薬だ、飲みたまえ

大丈夫だよ、それは人間が使っている回復薬と同一のものだ。安全性は保証済みさ

ほらさっさと飲みなって……どうだい?すぐに効き目が出てきただろう

即効性がこの薬の売りだからね。体力の即時向上、骨折くらいまでならあっという間に治る治癒効果もある

私もぶっ続けで研究してる時にはよくお世話になるよ

え?そりゃあ凄いさ、人間の評価基準で言ったら秘薬レベルの薬だもの

人間の魔術師には難しくても私にとってはちょっと面倒かな、程度のものさ

それに原料も魔界ではそこまで珍しくないしね。一部なんて庭で取れるし

今頃私の優秀さに気づいたのかい?まぁ異世界人の君には理解しづらいんだろうけど…

いや、あのね、君が真っ先に理解しなきゃいけなかったのは間違いなく私の可愛さではないからね?

はぁ……もういいや、私も疲れたよ。君は元気になったろ?お風呂と晩ご飯、よろしく

私は居間で休んでるから準備が出来たら呼んでおくれ。それじゃ

[次の日]
[魔女家・玄関]

予備のお金、よし。カバン、よし。売却品、よし。魔法薬、よし。最後に腕輪、ちゃんとつけてるね?よし!

では出発だ。玄関を出て右手の魔法陣を使うからね

左は物質転移用だ、生き物に使うと恐ろしく後始末が面倒なことになるよ?

その代わり右の生物用より難易度が低いんだ、物の移動だけならこっちが魔力にやさしい

ん?私の荷物は財布だけだよ、それ以外は君に持たせたからね

昨日荷物持ちも兼ねてるって言ったじゃないか。まぁその山のような売却品は街についたらすぐに売るから少し我慢してくれ

中身は…なんだっけ?いらないもの適当に詰め込んだからな……

付呪に失敗した魔道具もどきとか、作りすぎた魔法薬とか

あぁあと以前散歩してた時に襲ってきたから返り討ちにした魔物の素材もあったな

ん、座標が確定したね。転移するよ、こっちにおいで

私と一緒に魔法陣の中心になるべく近くなるようにしてくれ…こら離れるな、もっとくっつくんだ

仕方ないだろう、元々一人用に作成したからあんまり魔法陣が大きくないんだ

中心から逸れ過ぎると転移の時に足の先が置いてきぼり、なんてことに…それでいい、しっかり密着したまえ

では行くよ……

『転移魔法』

[魔物の街・近郊]

よし、成功だ。あと5分ほど歩けば街が見えてくるよ

ん?まぁやろうとすれば街に直接転移もできるけど…到着と同時にめんどくさい種族と鉢合わせても嫌だろう?

転移魔法って到着場所の周囲の状況まではわからないから基本安全が確保された定位置にしかしないんだよ

だから街中はちょっとね…ここなら最悪出会ったとしても知能の低い魔物だから対処も楽だ

さて、そんなことより歩きながら街に入るにあたっての注意事項の最終確認だ

ちゃんと覚えているかい?君変なとこで抜けてるからなぁ

まず大前提として、絶対に私から離れないこと。近くにいてくれなくては守れないからね

私が買い物でそばを離れたときは、その場から動かないこと。変なとこに置いていったりしないから大人しくしてるように

万一、一人の時変な奴に絡まれたら?……そう、その腕輪を見せればなんとかなるはずだ

その腕輪に刻まれた「奴隷の証」を見れば並みの魔物なら手を引く

他人の所有物に手を出せばトラブルの元だからね。ごく稀に意に介さない向こう見ずもいるけど

その場合は最終手段だ、「盾の腕輪」で身を守りつつとにかく叫べ。運がよければ私の助けが間に合うかも

以上だ。君の生死がかかってるんだからしっかり頼むよ

…ちょうど着いたね。では、いざ魔物の街へ

[魔物の街・大通り]

こらこら、興奮するのはわかるけどあまりキョロキョロするなよ

まずは予定通りそのガラクタを売りに行くから……おい、聞いてるのかい?

しっかりしておくれよ、せめてそれを売るまではいなくならないでくれ

ああ、確かにここに…というより街にいるのは人型の魔物が大多数だ

統計的に見ても人型に近いほど、こうした他種族との交流が多い傾向にある

逆に人間並みの知性があっても人型でない種族は閉鎖的であることが多いね

まぁ何事にも例外はあるけど…ほら、あそこ。魔狼の一団だ

彼らは狼らしく集団での狩りが非常に上手くて、たまに獲物から剥ぎ取った素材を売りに来る

売ったお金は全部肉に変えて、群れに持って帰って宴会を開くんだとさ

忠告しておくけど彼らを絶対に犬と呼ぶなよ。プライドの高い連中が多いからね


そこは鍛冶屋だね。オークとエルフの夫婦が二人で営んでいる

ここの武器は無骨でありながら繊細さを併せ持つ業物として評価が高い。魔王軍の武器も作ってるとか

あそこは薬屋、魔女が経営しているから種類はかなり豊富だ

ただ残念ながら薬の質がイマイチだったから私は一回行ったっきりだね

あっちは…肉屋か。品揃えはランダムだけど牛や豚からワームに人間、ドラゴンまで豊富な種類を入荷するのが売りらしい

うん?そう、人間の肉だ。癖が強いからあんまり人気はないけどね

別に人間だって魔物を食べるのもいるんだし、弱肉強食さ

私は食べないけどね。どうもあの味は好きになれなくて…稀に薬の素材に使うくらいかな

ふふふ、どうした?顔が青いぞ?

魔物にとっては人間も普通の生き物の一種類にすぎないのさ。それがこの世界の常識だよ

[雑貨屋]

やぁ店主、久しぶり。元気だったかい?

あ~そうか「浮遊翼」を売りに来た時以来か…1年くらい前だっけ?

そんなにすぐには売るものも揃わないよ、主に持ってくるのは失敗品なんだし

ん?これはただの家政婦兼荷物持ちだ、気にしないでくれていい

君、呆けてないでこの机に売却品を並べてくれ。くれぐれも落とさないように気をつけて

じゃあ店主、売り物の説明だけど……なにさ?

だから只の家政婦だってば、研究に専念できるように雇っただけだよ

確かに私はあまり人付き合いは得意ではないけど労働力を雇うくらいはするさ

別に好きで人間の男を選んだわけじゃない。彼とは…まぁひょんなことから出会ってしまってね

いや、私は運命なんてものは信じないタイプだ。御伽話じゃあるまいし

あのねぇ…そんな陳腐な恋愛話が私から聞けると本気で思ってるのかい?

私が主人、彼が奴隷。恋愛要素なんてありはしないよ

顔に似合わず家事のスキルは高いし、自ら進んで私に尽くす姿勢は高評価だが、それだけだ

そりゃ嫌いではないよ?常に自分の傍らに置くのだからね。だからといってそれが好きだということには

……おい、何をにやけてるんだ家政婦。このガラクタと一緒に売られたいか?

店主もいつまでも笑っているなよ…そろそろ本題に入らせてくれ

[雑貨屋・外]

さてと、重たい荷物も売り払ったことだしそろそろ本命の買い物と行こうか

とりあえずここから一番近いアルラウネの家具屋に向かうとしよう

机やら棚やらはそこで揃える。後は「アルラウネの花粉」が売っていればいいんだが…

あぁ、さっきの店主が妖精って奴だ。可愛らしいが見た目に惑わされるなよ?

妖精という種族は悪戯好きだから隙を見せると何を仕掛けてくるかわかったもんじゃない

ここの店主は流石に常識をわきまえてるけど、それでも油断大敵だ

妖精の体長?個体によるからちょっと一概には言えないな…基本的には大きいほうが魔力も高いんだが

ある程度の大きさまで行くと自分で体長を変えることができるようになるんだよ

あの店主もそうだ、たしかさっきみた5cmくらいから100cm以上まで変化できたはず

服も魔法で調節できるって言うんだから便利なものだよね。いつか習得したいとは思っているんだけど

そうそう、彼女に何か変なもの貰ってないだろうね?

ならいいけど…この先も彼女からの施しは突っぱねるように。大抵悪戯心しか込められてないから受け取るだけ損だよ

[大通り]

購入した家具も転移させたし次は実験素材を仕入れようかな

ん?物質転移はさっきの家具で終了だ。ここから先の購入品は君に持ってもらうよ

だ・か・ら、君は荷物持ちだって事前に言っただろう。忘れたのかい?

じゃあ問題だよ。転移させた家具はどこに行ったでしょうか?

正解、出発の時に見た家の前にある物質用の転移魔法陣だ

ではもう一問。既に物体のある魔法陣にもう一度別の物体を転移させたらどうなるかな?

正解は爆発する、だよ。ものの見事に粉々になるんだ

厳密にに言うと全く同じ座標に二つの物体が存在しようとした結果非常に強いお互いを弾き合う力が発生し極小単位まで双方の物質がバラバラに分解されるのでそれがあたかも爆発が起きたように見えるというのが正しい表現なわけだが

うん、全然わかってないねその顔は。そのアホ面で私の隣を歩くのはやめてくれ

とにかくもう物質転移は使えないってことだけ理解してくれればいいよ

……盛大に君の腹の虫が鳴いたね。そういえばそろそろ昼時か

私も小腹が空いてきたし、先に昼食にしようか。ちょうど近くにいい店があるんだ

どうやって帰るんだ?

>>39
帰るときは来るのに使ったのと同じ生物用の転移魔法陣だから大丈夫


[レストラン]

せっかくだから窓際の席に座ろうか。そこの奥が良さそうだね

ここのオススメは肉料理、特に特選魔牛のステーキは格別だから是非食べてみてくれ

お金?それを気にするのは今更すぎるだろう、いいから好きなものを頼みなよ

そもそも私は魔族の中でも結構裕福な方だぞ?気が向いたときはちゃんと商売してるし

そんなに意外か…?自分が作ったものが他人に評価されるのは創作の楽しみの一つじゃないか

次の研究に使う資金も必要だし、お金はいくらあっても困らないからね

ちなみにさっき売ったガラクタの代金で私がひと月食事に困らないだけの食料が買える

すごいだろう?まぁこれから買う備品代に全て消える予定だけど…あ、店員、オーダーいいかい?


ふむ…このソードシャークの照り焼きもなかなかイケるな。やっぱり肉であるならこの店でハズレは無いね

これで付け合せの野菜も美味しければ言うことないんだけど、ワーウルフの料理人にそれは酷かな

そう、半人半狼のいわゆる獣人種だ。この種は人間の文化を積極的に取り込む傾向が強い

特にここの料理人は人間の多種多様な食文化に惚れ込んであの手この手で調理法を学んでいるそうだ

旅人を襲って、命を助ける代わりに料理を教えろと迫ったこともあるとかないとか

その成果がこの料理というわけだ。ただし彼の興味は肉にしか向かなかった…狼だから仕方ないね

ちなみに彼にとってこの店は只の修行場なんだってさ

今の自分の料理に満足できたらまた新しい料理を探して旅に出る

そして帰ってくるとこの店のメニューが増えるんだ。私が食べているこれも新メニューさ

どうやら前回の旅は海沿いだったみたいでね、今までほとんどなかった海鮮系のレパートリーがたくさん追加されたよ

彼を見習って君のレパートリーも増やしていってもらいたい物だね

そうだ、料理の本も買って帰ろう。あぁでもどこで売ってるかな……


家にあった料理本は知人からの貰い物…っていうか一方的に押し付けられたんだよ

これで男の胃袋を掴め!なんて言われても私が読む訳無いだろうに

捨てても良かったけど魔物の料理本は貴重品だから一応取っておいたんだ

まさか自分の家政婦に読ませることになるとは思わなかったけどね

なんだ、失礼だな。私にだって家を訪ねてくる知人の一人や二人いるさ

君が見たことないのはたまたまだよ。それに頻繁に会う仲ってわけでもない

でも……そうだな、たまには私から会いに行くのもいいかもしれないね

ふふふ、相手の驚く顔が目に浮かぶよ


ご馳走様っと。さぁ残念だがゆっくりしている暇はないよ、日が落ちる前に買い物を終えないと

[裏通り]

実験器具は買った、魔術書の類も買った、 魔法素材が心もとないけど売ってないものは仕方ないか

あとは食料品も買っておきたかったけど……流石にもう持てなさそうだね

もうちょっと頑張れないかい?その魔術書の袋を頭に乗っければもうひと袋くらいなら…

うん、知ってた。冗談だよ、家に着く前に潰れてもらっても困るしそのくらいで勘弁してあげよう

ん?すまない、よく聞こえなかったからもう一度言ってくれ

まさか主人の私に荷物を持たせようだなんて、下僕の口からそんな台詞が出るわけないよね?

そうかそうか、君が働き者の家政婦で嬉しいよ♪

じゃあそろそろ帰ろうか。魔法陣を作るからそこで待っててくれ

君もいいところに気が付くようになったね?確かに一から魔法陣を書くのは非常に面倒だ

だが私の考案した方法を使えば一時的にではあるがものの数分で魔法陣を作ることが出来る

今からやってみせるからよく見てておくれよ


まずは水を用意する。あんまり多くなくてもいいけど複雑な魔法陣ほど必要な水の量が増えるから注意だ

今回は魔法で水を生成するよ、鍋とか水を汲めるものがあればそれでいいんだけどね。『水魔法・生成』

……宙に浮く水を見るのは初めてかい?感動するポイントはここじゃないんだけどな

こほん、次に事前に用意しておいた目的の魔法陣を書いた紙を水に入れる。この紙が鍵になるよ

本来なら紙に書いた魔法陣は使用を推奨されない、それはなぜか?はい家政婦君

よく出来ました。そう、魔法陣が非常に繊細で精密さを求められる魔法だからさ

小さな形の歪みや一文字の呪文間違いで発動は失敗する

それどころか魔力の流れが滞って大爆発、なんてこともよくある話だね

だから紙という不安定な土台に書かれた魔法陣を発動するのは非常にリスクが高い

更に、汚したり折り曲げたりができないから携帯にも保存にも向かない

魔術本の魔法陣のことかい?あれはいわばお手本だ

そのまま使うのなんて前提にしていないし、そもそも本に書けるだけの大きさでは十分な効果を発揮できないよ

そこで思いついたのがこれだ。『水魔法・転写』


どうだい?紙に書かれた魔法陣を水で再現するんだ

これなら紙が小さかろうが折り目が付いていようが、書かれた魔法陣が正確でありさえすれば問題ない

しかも水で作られるから大きさが自由自在という利点もある

あのね…これはどこであっても条件が整えばすぐに魔法陣が書けるっていうのがすごいんだよ

事前に魔法陣の紙を用意しなきゃいけないのは最低限必要な準備、いわば必要経費だ

そりゃあ私だって最初は紙抜きでどうにかできないか試したよ?

でもそれだと結局水で魔法陣を一から書いてるだけになって全然意味がなかったんだ……仕方ないじゃないか

別に落ち込んでなんかないよ。余計なお世話だ

しつこい、それ以上寝言を言ってると置いて帰るぞ?

全く…そろそろ完成だ、魔法陣を上げるから入ってくれ

うん?水製だから踏んだりできないからね、こうして上に置くしかないだろう?

別に魔法陣が足元にあろうが頭上にあろうが発動に支障はない

君ももっと柔軟に思考する癖をつけたほうがいいね、そのほうがいろいろな発見がある

じゃあ帰ろうか…あ、この魔法陣は大きいからくっつかなくて大丈夫だよ

その露骨な落胆顔はいっそ清々しいな。今回は諦めな

では行こう

『転移魔法』

[次の日]
[魔女家・研究室]

その机で最後だ、釜の隣に少し離して置いてくれ……よし、完成!

うんうん、備品が全て新しいと研究意欲も湧いてくるというものだね

ん~…たしかにいつも意欲があるのは否定しないけど、こう…新鮮な気持ちがするだろう?いつもと違う感じがさ

なんとなくでも感じてくれたならそれでいいよ、どうせ気分の問題だし

さて、それでは早速研究に取り掛かるとするかな

先日爆発させてしまったドラゴンの血を使った霊薬のリベンジか、でもこの間思いついた魔道具作りも捨てがたいな

あ、もう君は戻っていいよ、ご苦労様。普段の仕事をしてくれ


そういえば買ってきた魔術書の中に霊薬の調合に使えそうなのがあったような。えっと…どこだっけ?

しまった、本の整理を忘れてた…これを先にやらなきゃダメかな。めんどくさい


……ねぇ、私は戻っていいって言ったはずだけど。いつまでそこに居る気だい?

言いたいことがあるならさっさと言いなよ、私は見ての通り暇じゃないんだ

ご褒美?…あ~前にそんな話もしたね

つまり、今まで頑張ったからそろそろ飴が欲しいと。そういうことかい?

全く、私に対価の要求とは随分と慣れてきたようだね。少し甘やかしすぎたかな

だがまぁ君の言うことにも一理ある。思えば今まで一度もそういう労いをしていなかったか

いいだろう、何か考えておくよ

[夜・居間]

来たか、座ってくれ

時間通りだね。前からそうだけど君は時間に正確だな

ふぅん、その「しゃかいじん」とやらは随分と真面目な職業のようだね。正直君には向いてなさそうな気がするけど

自分でもそう思うならどうしてそんな仕事についたのさ……

だろうね。君にはそうやってお茶とお菓子で主人をもてなしている方が似合っているよ

ん…これいつもと味が違うな。昨日買って来たお茶かい?

いつものより渋いがこれはこれでありだな。お茶菓子の甘さも引き立つ

あのラミアのオススメねぇ…今度買うときもあそこの店に行ってみようかな

うん?あぁそうだったね。本来の目的を忘れるところだった

誠に勝手ながらここで打ち切りです

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ここまで読んでくれた人に感謝+本当に申し訳ない
妄想と文章を磨いてまたリベンジします、いつか

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