加蓮「夢を見て、それから」 (45)
※注意※
当SSは作者の勝手な設定、世界観等を多分に含んだりしたりしなかったりします。それを許容して下さる心やさしい方、生温かい目で見守ってくださる方のみお進みください。
また、地の文が多くなると思いますので苦手な方にはゴメンナサイ。
一カ月ほどかけてゆっくり書いていこうと思います。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1445521720
乙
良いssだった掛け値無しに
初めて出会ったのは、多分五年前。
体調が一時的に回復して少しだけ外に出て遊ぶようになった私は、はしゃぎすぎて車道に飛び出し事故にあった。
怪我自体は大したことがなかったのだけど、検査入院だかで何日か入院をした。
それまでも何度が入退院を繰り返してたこともあり、暇な時間は本を読むか、テレビを見るかの二択なのは知ってる。
加蓮「あ……」
テレビをつけると、この間学校でみんなが話してた今人気のアイドルが歌っていた。
無理を承知で、分不相応にも、憧れた。
自分のせいでも、ましてや両親のせいでもないが、今だけはこの虚弱な体が恨めしい。
まだ幼かった私は、人並みに健康だったら、私もあんなふうになれたかもしれない、なんて思わずにはいられなかった。
私が入院した翌日、同じ病室に新しい患者が来た。
なんでも、営業で外に出たら事故に巻き込まれ、入社して間もないのに入院となってしまったらしい。
加蓮「また、この人……」
テレビを見ていると、昨日見たアイドルがまた出ていた。
???「アイドル、好きなのかい?」
加蓮「……え?」
同室の男の人に話しかけられた。
突然話しかけられたことに驚く私に、あの人はもう一度聞く。
???「アイドルが好きなの?」
加蓮「よく、わからないです」
???「今テレビに出てるその娘ね、俺の先輩がプロデュースしたんだよ」
加蓮「え?」
???「俺ね、とある芸能プロダクションで新米だけど、プロデューサーとして働いてるんだ」
P「何日ここにいるのかわからないけど、よろしくね。北条加蓮ちゃん、でいいかな?」
それが、私北条加蓮とプロデューサーとの出会い。
あの後、Pと私はいろんな事を話すようになって、私は体のことを自分から知ってもらいたいと初めて思った。
体が弱く、昔から病気がちだということを伝えてからPは、アイドルについていろんな事を教えてくれた。
先に私が退院することになって、Pは記念にと私に名刺をくれた。
P「加蓮ちゃん。体の事情は知った上で話すからよく聞いてほしい」
P「俺は、まだまだ新米だけど人を見る目は持ってるって褒められたし、自分でもそう思ってる」
P「君をスカウトしたい。アイドルに、なってみる気はない?」
加蓮「私が、アイドル?」
P「うん。もちろん健康面でも気を遣うし、それ以前にご両親の許可とかもいるだろう」
P「だから、君がなりたいと思って、周りの人が認めてくれたら、俺にプロデュースさせてほしい」
P「君を、君が憧れたあの舞台に連れて行きたい」
なんだか、今考えるとプロポーズみたいだな。
でも、その言葉のおかげで覚悟がついた。
加蓮「……約束、してくれる?」
加蓮「今すぐは無理でも、病気とかに気をつけて、お父さんとお母さんを説得すれば」
加蓮「私を、あの場所に連れて行ってくれる?」
P「ああ、必ず連れて行くよ」
加蓮「待っててね。必ずそこまで行くから」
P「ああ、何年でも」
そして、今。
私は、プロデューサーのもとへ……
>>2
前作のことかな?だったらありがとう!今後もいいのかけるよう頑張ります
眠いから寝るよ
続きは明日以降かなおやすみです
あれから数年。
Pと顔を合わせる機会はなかったけど、何度か連絡を取り合っていた。
そして昨日……
加蓮「シンデレラガールズプロジェクト?」
P『ああ、体のほうもご両親のほうも問題無いんだったら、明日事務所に来てくれないか?』
P『加蓮ちゃんのために用意してた企画なんだ。明日詳しく説明するよ』
受付に話は通しておくって言ってたし、怖気づいても仕方ないか。
加蓮「よし!」
敷地に入り、自動ドアを抜けて、ビルの中へ。
まだ高校生の自分がオフィスビル(っていうんだっけ?)に足を踏み入れるのはなんだか場違いな気がするけど、もしかしたらこれからずっと通うことになるかも知れないんだし、考えても仕方ないか。
とりあえず受付に……
加蓮「あの、この人にここに来るよう言われてきたんですけど」
受付の人にPの名刺を差し出す。
受付「ああ、彼ですか。お話は伺っています。お呼びしますのであちらでお待ちください」
加蓮「はい、お願いします」
待つこと数分。誰もいない待合室(というか休憩スペース)で待っていると……
???「お待たせしました、北条加蓮さんですね」
P「お待たせ、加蓮ちゃん。久しぶりだね」
加蓮「久しぶり、P。ちゃんと会うのは五年ぶりくらいだね。えっと、そちらの人は?」
P「ああ、紹介するよ。アシスタントの千川ちひろさんだ。昨日話したシンデレラガールズプロジェクトの正規スタッフになる予定だよ」
ちひろ「はじめまして、千川ちひろです」
ちひろ「まったく、Pさんはあんないい企画を持って置いてなんで今まで出さなかったんですか」
P「それについてはちゃんと話したでしょう。この子のためのとっておきなんですから」
P「それにしても加蓮ちゃん、大きくなったね。あの頃と比べるとだいぶ背が伸びたみたいだ」
加蓮「今は155cmくらいかな。そういうPさんは、大人に言うのもおかしい気もするけど大人っぽくなったね。雰囲気が落ち着いてる」
P「加蓮ちゃんに会ったときは入社したてで、ただがむしゃらに頑張ってただけだからなぁ」
ちひろ「Pさん、プロジェクトの話をするんじゃなかったんですか?」
P「ああそうだった。とりあえず場所を変えようか。ついてきて、加蓮ちゃん」
加蓮「あの、さ。その前に一つだけお願いがあるんだけどいいかな?」
P「俺に出来ることなら構わないよ」
加蓮「『加蓮ちゃん』じゃなくて、呼び捨てにしてくれない?なんか大人の男の人にちゃん付けで呼ばれるの恥ずかしくなってきた」
P「わかったよ、『加蓮』。これでいい?」
加蓮「うん、ありがと」
更新できなくてすまんの
定期テスト近かったり書きため無かったりいろいろ厳しいが完結に向けて頑張ります
クソガキですまんな
読みたくなきゃ読まんでいいぞ
ちょっとだけ書き溜めたので更新します
小さい応接室のようなところに連れられて、プロジェクトの概要を説明された。
コンセプトは『夢見る少女にガラスの靴を』。
テレビの中のアイドル達にあこがれていたかつての私を見て思いついたらしい。
基本方針は、スカウトやオーディションを行い、アイドル候補性「シンデレラガールズ」として育成をして、デビューをさせる……らしい。
まぁ、まだ私一人だし、デビューとかも当分先だろうな。
P「よし、じゃあさっそくスカウトに行こうか」
加蓮「え?」
P「え?じゃなくて、スカウト」
P「将来ユニットを組んで活動するかもしれないんだし、仲間探し、みたいな感じかな。あんまり気負わず、俺が変質者と間違えられないようについてくる程度の気持ちでいいから」
P「あとオーディションだけど、審査員として参加してみない?」
P「最初のシンデレラとしての意見を聞きたいな」
加蓮「……からかってる?」
P「いや本気」
ちひろ「北条さん、断ってくれてもかまいませんよ。無理強いはしませんから」
ちひろ「Pさんも、あまり無理をいうものではありませんよ」
P「無理を言ってるつもりはないんですけどね」
加蓮「……スカウトについては解ったけど、オーディションのほうは少し考えさせて。自分にできるかちゃんと考えたいんだ」
P「わかった。決まり次第教えてくれ」
加蓮「うん」
P「じゃあ、行こうか」
結果として、僅か一年ほどでこのプロジェクトは100名を超えるアイドルを抱える大きなプロジェクトになった。
私は、Pさんとのスカウトで見つけた渋谷凛と神谷奈緒と一緒にトライアドプリムスとして活動しつつ、ネイルアートの趣味を生かして蘭子ちゃんとハンドモデルをしたり、Pさんが持ってきてくれた女優としての仕事をこなしている。
加蓮「ねぇPさん」
P「なんだ?」
加蓮「端折りすぎじゃない?」
P「……言うな」
閑話休題1
〈初仕事〉
加蓮「仕事?」
P「ああ、加蓮に向いてそうなのを三種類ほど用意したんだ。好きなの選んでくれていいぞ」
P「一つ目はモデル。最新の夏物の撮影だそうだ」
P「二つ目は映画だ。わき役だが名前のある役のオーディションの話が来てる」
P「で三つ目がハンドモデルだな。ネイルが趣味って言ってたからこっちに回してもらった」
加蓮「……うーん、Pさんはどれがいいと思う?」
P「俺か?そうだな……」
P「映画は微妙だな。受かった前提で話すけど、撮影の途中で体調を崩したりしたら新人なのに周りに迷惑をかけることになるし」
P「撮影期間にもよるけど、体力的な面からみても良いとは言えない」
P「もちろん加蓮がやりたいなら全力でバックアップするし、反対したりはしないけどね」
加蓮「そっか……」
加蓮「じゃあ、モデルの仕事にしようかな」
加蓮「水着とかって着れたりする?」
P「いや、水着は無かったと思う。着てみたかった?」
加蓮「まぁ、一応。恥ずかしいけど憧れてはいるって感じかな」
P「季節的にはこれからだし、色々やって慣れてきたらやってみようか」
加蓮「うん。お願いします」
閑話休題2
〈なんだか最近〉
加蓮(最近になってはっきりしてきたけど、どうやらPさんはモテるらしい)
加蓮(単純に男の人が少ないっていうのもあるだろうけど)
加蓮(例えば楓さんなんかはロケで温泉地に行ったときにPさんと温泉に入ったらしい。もちろん男女別々でだけど)
加蓮(それに大人組がPさんを飲みに誘う時は「二人で飲みにいきませんか」って誘う人のほうが多いし)
加蓮(年少組は幼い分、多少スキンシップが過剰でも変に思われたりしにくいし)
加蓮(多分だけれど、結構本気でPさんにアプローチしてる人は結構いるんだろう)
加蓮(斯く言う私も、それなりにアプローチをしている一人なんだけどなぁ)
加蓮「……はぁ」
P「なぁ加蓮」
加蓮「ん?」
P「そろそろどいてくれないか?いきなりババ抜きの景品にされたうえに、仕事しづらいんだが」←景品(膝の上)
加蓮「んっとねぇ、あと10分くらいだね。もうちょっと我慢して」←優勝
蘭子「我が贄を翳め取りし異端者め(私も座りたかったのに……)」←敗者1
凛「くっ……」←敗者2
みく「凛チャンそれちがうにゃ」←敗者3
卯月「うぅ……、悔しいです」←敗者4
加蓮「さ、私のことは気にしないでいいから、仕事仕事」
P「お前が言うな」
加蓮「(・ω<) テヘペロ」
P「まったく……」
P(まぁ最近あんまり相手してやれてなかったし、これぐらいならいいか)
すんごい遅くなって申し訳ありません
更新します
私がアイドルになって、四年。Pさんと出会ってからはもう九年になる。
今となっては、「デビューできなかったら」とか「売れなかったら」とか思っていたのが不思議なくらい、世間では知られてて。
それは私だけじゃなくて、凛や奈緒、卯月に未央、シンデレラガールズの皆が十二分に人気者と言える立場にいる。
最近の活動は、TPとしてよりソロでの活動が多い。
凛は歌番組、奈緒はバラエティに良く呼ばれてる。
私?私は…まぁ、一応女優がメインかな。歌ってないわけじゃないんだけど。
仕事柄、奏や楓さん、川島さんと一緒にいることが多くなって、前みたいに三人で集まれなくなったのは少し不満だけど、それ以外は問題ないし。
そう言えば、去年演った映画の役が監督に気に入られてたから次の作品でも使いたいって言われてるって、Pさんが言ってたっけ。病弱な薄幸の少女の役なんて、昔の私そのままだ。
さて、なんか重要な報告があるからって事務所に集められたのはいいけど……
凛「皆、P着いたって」
奈緒「やっとかぁ……、まったく何時間待たせんだよ」
加蓮「まだ1時間たってないよ。まぁでも、女の子を待たせるのは男の人としてはどうかと思うなぁ」
卯月「まぁ仕事ですし仕方ないんじゃないですか?」
文香「すみません……私の仕事の付き添いで来てくれていたのですが、思いのほか長引いてしまって」
加蓮「別に本気で言ってるわけじゃないし、文香さんは気にしないでいいよ」
文香「ですが……」
P「皆待たせて悪いな。揃ってるか?」
ちひろ「一応全員揃ってますよ」
凛「で、重要な報告って何?」
P「それなんだがな、TPとしてデビューした時のこと覚えてるか?346全体ライブのときの」
奈緒「覚えてるけど、それが何か関係あるのか?」
P「あの時の会場でTPのワンマンライブが決まったんだよ」
ちひろ「収容人数は約2万人。346のアイドルでこのサイズの会場でワンマンライブをやるのは初めてですからすごい快挙ですよ」
P「一応ゲスト枠で何人か呼べるんで、楓さんと蘭子にするつもりなんだが異論と会見とかあるか?」
凛「」
奈緒「」
加蓮「」
卯月「」
文香「……皆さん、どうしたのでしょう?」
ちひろ「多分、衝撃が大きすぎて理解が追い付いていないんだと思いますよ」
~~数分後~~
加蓮「あの会場でワンマンライブ、か……」
奈緒「落ち着いて考えても実感わかないなぁ」
凛「……レッスン、しようか」
加蓮「そうだね」
奈緒「たまにはマストレさんにお願いするか」
凛「……そう、だね」
~~別室にて~~
ちひろ「あの、プロデューサーさん」
P「なんです?」
ちひろ「これなんですが……」
P「これは……この間の健康診断と体力テストの結果ですか」
ちひろ「加蓮ちゃんのデータ、見てもらえますか」
P「はい……これがどうかしたんですか?同年代と比べると筋力値などが若干低いですけど、特別おかしい点はないように思えるんですけど」
ちひろ「その筋力値が問題なんです。去年の結果と比べると誤差というには減少が大きすぎます」
ちひろ「あまりこういうことは考えたくありませんが、加蓮ちゃん何かの病気に罹っているか、罹りかけているんじゃないでしょうか」
P「そう、ですね。本人だけじゃなく周りの子たちにも余計な心配を与えたくないので、健康診断の再検査ということにして、病院で検査を受けさせてもらいましょう」
P「手配のほう、任せて構いませんか?」
ちひろ「承りました。加蓮ちゃん、今はレッスン室にいるみたいなんで、心配でしたら見に行ってあげたらどうですか?」
P「そうですね。少し顔を出して、健康診断の再検査があるとだけ伝えておきます」
ちひろ「では、日程が決まり次第私のほうから伝えておきますね」
P「よろしくお願いします。では」
P(なにか大きな病気とかじゃないといいんだが……)
~~レッスン室~~
マストレ「1,2.1,2、北条、遅れてるぞ!」
加蓮「はいっ!」
加蓮(なんだろう……体が思い通りに動かない)
加蓮(いや、動かないんじゃなくて追いつかないんだ)
マストレ「そこまでだ。いったん休憩にしよう」
凛「ハァハァ、……加蓮、大丈夫?」
加蓮「スゥ…ハァ、大丈夫って、何が?」
奈緒「なんか、いつもより動き悪いぞ?」
加蓮「そう、かなぁ……」
ガチャ
P「加蓮いるかー?」
加蓮「ん?どうしたの、Pさん」
P「健康診断の結果が来たんだがな、加蓮だけ再検査だそうだ」
加蓮「えっ……」
凛「どういうこと、プロデューサー?」
P「健康診断の数値で変なとこがあってな。加蓮、健康診断の前ファーストフード結構食べてたろ」
加蓮「う”……」
奈緒「なんだ、思い当たる節があるのか。病気じゃないかと心配しそうになったよ」
加蓮「いや、私の健康の心配もしてよ」
凛「でも自業自得でしょ?」
加蓮「まあそうなんだけど」
P「再検査の日程は決まり次第ちひろさんから知らされると思うからちゃんと確認しといてな。当日は俺も付き添うから」
加蓮「んー了解」
P「あとファーストフードも当分禁止な」
加蓮「……了解」
P「二人とも、加蓮がああいうとこ行かないように見張っといてな」
凛奈緒「はーい」
加蓮「私、そんなに信用ない?」
~~検査日~~
加蓮「そう言えばPさんと二人で出掛けるのって結構久しぶりじゃない?」
P「そうだなぁ。あの『加蓮ちゃん』が今じゃすっかり有名人だもんな」
加蓮「ちょ、やめてよ。昔の私と比べないで」
P「……」
P「なぁ加蓮」
加蓮「なに?」
P「……今、楽しいか?」
加蓮「うん、楽しいよ。充実してるし、凛と奈緒と一緒にいる時間が減ったこと以外にたいして不満もないし」
P「そうか」
P「ひとつ、謝らなきゃいけないことと、ひとつ、注意してもらいたいことがある」
加蓮「真面目な話なんだね」
P「ああ」
P「まず謝らなきゃいけないことなんだが、健康診断の再検査というのは嘘だ」
加蓮「え?」
P「実はな、ちひろさんが結果の確認をしてた時に、加蓮の筋力値のデータが去年と比べて明らかに落ちているのが分かったんだ」
P「ただの運動不足とかならいいんだが、万が一があったらまずいんで検査に行かせることになったんだ」
P「お前はもちろん、他の子たちにも不安や動揺を広げたくないから、健康診断の再検査ということにした。すまない」
加蓮「……そっか。そうだったんだ」
加蓮「この間、一度だけ兆候みたいのがあったんだ」
加蓮「Pさんが再検査だってレッスン室に伝えに来たちょっと前にね、体が自分が思ったよりも遅く動いて、テンポが遅れてるってマストレさんに言われたの」
加蓮「自分でおかしいなって思ったのはそれが初めてだけど、もしかしたらそれより前から変だったのかな」
P「自分で言っといてあれだが、あまり深く考えるなよ。病は気からって言うし」
加蓮「うん。で、注意しておいてほしいことって?」
P「今言ったばかりだが、あまり深刻になるなってこと」
P「病気じゃないならそれでめでたしだし、仮に何かの病気でも、治るかもしれないし、治らないような重い病気でも、進行を遅らせて加蓮が満足するまでアイドルを続けさせられるようにすればいい」
P「加蓮が、望んだ場所にたどり着くまでは、ちゃんとサポートするよ」
加蓮「Pさん」
P「なんだ?」
加蓮「そのセリフ、ちょっとクサいよ」
P「思ったままを言っただけなんだがな」
加蓮「あ、そ」
加蓮(これは……天然ジゴロってやつ?)
加蓮(こういうことを他の子にも言ってるのかと思うと、ちょっとなぁ……)
~~検査後~~
医者「ひとまず、検査結果をお伝えします」
医者「筋萎縮性側索硬化症、別名ALSという病気をご存知ですか?」
P「いえ」
加蓮「聞いたことありません」
医者「簡単に言うと、筋肉の機能が徐々に低下して最終的には呼吸筋が麻痺し呼吸ができなくなってしまうという病気です」
医者「北条さんの症状はこのALSに非常に似ています」
P「そんな……加蓮は、助からないんですか?何とかならないんですか?」
医者「落ち着いてください。症状が『一致している』のではなく、『非常に似ている』と言ったのです」
加蓮「どういう、ことですか?」
医者「一番の違いは、進行速度です。通常、ALSの患者はその半数が三年ほどでに呼吸筋麻痺になるとされています」
医者「それほど進行速度の速い病気でしたら、筋力の低下が数値としてわかるようになった段階で、日常動作に大きな違和を感じてもおかしくありません」
医者「ですが、話を聞く限り、北条さんが違和を自覚したのがついこの間。筋力が低下していると把握したのがその少し前」
医者「去年のデータとの比較で筋力が低下していると把握したのでしたら、発症から最長で一年間もたっていることになります」
医者「それだけ経っていれば、最悪歩けなくなっている可能性もあります」
医者「しかし、北条さんは今日この時まで、不自由どころか体の不調の対する自覚すらほとんどない状態で過ごしていた」
医者「つまり、もしこのまま進んで命の危険にさらされるとしても、それは当分先になるということです」
医者「このことから、治療方針としては経過観察をしながら、筋トレなどで機能低下を抑える、というのはいかがでしょうか」
加蓮「あの」
医者「何でしょう」
加蓮「今後の、私の芸能活動なんですが、制限などはあるんでしょうか」
加蓮「ライブが控えてるんです。大事なライブが」
医者「ライブの時期と、症状の進行具合によりますが、可能だと思いますよ」
医者「娘が、貴女のファンでしてね。医者としてだけでなく個人的にも、全力を尽くさせていただきます」
P・加蓮「よろしくお願いします」
~~帰りの車内~~
P「加蓮」
加蓮「なに?」
P「まずは、今日のことを御両親に報告して、そのうえで、今後のことを決めよう」
加蓮「今後のことって……」
P「アイドルを続けるのか辞めるのか、病気のことを公表するのかしないのか」
P「他にもいろいろあるだろうが、ちゃんと考えて、後悔の無いように決めてくれ」
加蓮「じゃあさ、Pさん」
加蓮「私と結婚して」
P「はぁ!?」
加蓮「ちょPさん、前見て前!」
P「うわぁ!?」
P「加蓮いきなり変なこと言うな!事故るとこだっただろ!?」
加蓮「はぁ?人の一大決心の告白を変なことってどういうこと!?この鈍感!唐変木!!」
P「加蓮」
加蓮「何」
P「いったん車止めるからちょっと待ってろ。事故るのはいろいろマズい」
加蓮「ん」
P「でだ」
加蓮「好きです。結婚してください」
P「いきなりそれか」
加蓮「Pさん気づいてないだろうけど、CPのうちの何人かは結構本気でPさんのこと好きだよ。Pさん気づいてないだろうけど」
P「二回言うな」
P「もしかしたらそうなんじゃないか、ってのは何人かいたけど、自惚れとかじゃなくマジだったのか」
加蓮「マジだよ。私もその一人だし」
加蓮「私ね、ずるいのは理解してるの」
加蓮「今日、きっとCPのほかのだれよりも早く死んじゃうってわかって」
加蓮「アイドルでいることについては、今度のライブができればそれで満足かなって思えた」
加蓮「でも、その先のことを考えたら」
加蓮「もしそれで引退したら、Pさんと一緒に居れないって」
加蓮「繋がりが、無くなっちゃうって思って」
加蓮「そう考えたら、告白してた」
加蓮「自分でもびっくりするくらい、素直に言葉にできた」
P「加蓮……」
加蓮「返事は、今じゃなくてもいいから必ず頂戴。待ってるから」
P「……わかった。必ず、遅くともライブの頃には」
加蓮「うん。ありがと」
加蓮「じゃあPさん、車だして」
P「ああ。御両親に今日のこと伝えて、どうするかを決めてくれ」
P「すぐじゃなくてもいいし、俺やちひろさんも相談に乗るし、TPの二人にもいろいろ話すこともあるだろうから」
加蓮「わかってるよ。ちゃんと話して、決める」
加蓮「今のこの一瞬を、後悔したくないから」
今日はここまで
あと少しで完結です
薄荷を聴いてエンディングだけ思いついていざ書いたら一か月くらいのつもりがもっとかかってて読んでくださってる方にはほんと申し訳ないです
もう少しだけお付き合いいただけると嬉しいです
では
夜。
両親には全部話した。
病気のこと、ライブのこと、今後どうしたいか考えること、それとPさんに告白したこと。
驚かれたし、悲しまれもしたけど、少なくとも当分の間は命の危険がないって言ったら、少しだけ安心してくれたみたい。
今後については、二人とも好きにしていいよって言ってくれて、後悔しないようにちゃんと考えなさいとも言われて。
私は、どうしたいんだろう。
アイドルでいることについては、今度のライブで満足できるんだろうと思って。
でも、アイドルでなくなったらPさんと一緒に居れなくなると思って、半ば勢いで告白しちゃって。
それに、Pさんだけじゃない。CPの皆とも、一緒に居れなくなっちゃうかもしれない。
皆のそばに居ることを、諦めたくない。
でも、どうしたら……。
……。
あった。
一つだけ、アイドルをやめても皆のそばに居れる方法。
他にもあるかも知れないけど、今の私が考え付く最善の、最良の方法。
……私、卑怯だなぁ。
Pさん優しいから、私が、病気になって弱気になってるとか。
そんな私から告白されたら、断れないんじゃないかな。
もし断られても、私の思い付き通りになれば、皆のそばに居ることで必然的にPさんのそばに居ることができる。
ホント、ずるいなぁ。
~~翌日・事務所~~
加蓮「Pさん、それにちひろさんも、ちょっと良いかな」
P「大丈夫たけど、どうした?」
ちひろ「私も大丈夫ですよ」
加蓮「〈今後〉のことで。いろいろ決めてきたから」
P「そうか……」
ちひろ「場所を変えましょうか。今の時間ですと……会議室はだめですけど第2レッスン室が空いてますね。そこでいいですか?」
加蓮「うん」
P「じゃあ、移動するか」
~~レッスン室~~
P「御両親は、なんて言ってた?」
加蓮「自分のしたいようにしなさいって言ってくれた。だから、今後のこと、考えてきたよ」
P「……聞かせてくれ」
加蓮「私、引退しても皆と離れたくない」
加蓮「Pさんに見つけてもらって、私がここまでやってこれた恩返しがしたい」
加蓮「だから、私をここで、シンデレラプロジェクトで働かせてください」
ちひろ「……一応確認をさせてもらいたいんだけど、それは『プロデューサー』になりたいってこと?それとも私みたいな事務スタッフ?」
加蓮「できれば、プロデューサーになりたい。でも病気のこともあるし、無理は言わない」
加蓮「Pさんが私を見つけてくれたみたいに、私も夢見る誰かを見つけてあげたい」
加蓮「夢はかなうんだって、教えてあげたい」
P「……ちゃんと考えた結果なら、文句は言わないし、それどころか応援するつもりだ」
P「だけど、プロデューサーの仕事は決して楽じゃないし、外回りとかも多いから体力も必要だ」
P「加蓮の覚悟を疑うわけじゃないが、俺としては心配だ」
ちひろ「私は心配もあるでしょうけど、周りのみんなだったら支えてくれるでしょうし、賛成です」
ちひろ「何より、アイドルが100人以上いるのにプロデューサーが一人だけっていうのがおかしいんです。増える分には歓迎ですよ」
P「ちひろさん……」
加蓮「……いいの?」
P「よくはない。が、仕方ない」
P「今後の進展に関しては上のほうから報告するように言われてるし、俺のほうから加蓮の希望を伝えておく」
P「ただ、加蓮の希望通りになるかはわからないし、それに」
P「このこと、俺たち意外に知ってるのは御両親だけか?」
加蓮「うん」
P「なら、俺たち意外にもいるだろ。話し合う相手が。病気についても、今後についても」
加蓮「わかってるよ。凛と奈緒には、二人に話してからにしようと思ってたから」
ちひろ「くれぐれも、大事にならないようにお願いします。できるだけ動揺を広げたくないので」
加蓮「……はい」
その日のうちに、凛と奈緒に全部話した。
原因不明の病気になったこと。治療法がないこと。次のライブで引退すること。引退したらプロデューサーになりたいこと。
さすがに、Pさんに告白したことは恥ずかしくて言いだせなかったけど。
Pさんとちひろさんも賛成してくれてるって言ったら、二人して「なら大丈夫」って言ってくれた。
ほんとに、良い親友を持ったな。
結果的に、あのライブを最後に引退して。
私はシンデレラプロジェクトのプロデューサーになることができて。
病気は少し進行して、一人で立てないわけじゃないけど、今は車いすでの生活になってる。
初めて私が担当になったのはありすちゃんと文香さん。
ありすちゃんももう高校生になって、あの頃みたいな背伸び感はなく自然に大人っぽい雰囲気になって。
文香さんは前より明るくなって、笑顔をよく見せるようになって、本の読みすぎで普段はメガネをかけるようになった。
うん。素直になりきれてないけど車いす押してくれるありすちゃん可愛い。
そんなこんなで、今の生活にも慣れてきて。
加蓮「ちひろさん、こっちの書類おわりましたよ」
ちひろ「ありがとう加蓮ちゃん。私もこの書類で終わりなんで、この後飲みに行きません?」
加蓮「あー、ごめんなさい。今日はあの……」
P「ただ今戻りましたー。加蓮、お待たせ」
ちひろ「あーはい、なるほど。そうでしたね。お邪魔しちゃ悪いですし、また今度」
P「え?」
加蓮「何でもないよ。今度飲みに行こうって話してただけ」
P「だったらこれから加蓮と行くんでちひろさんも……」
加ち「「馬鹿じゃないの(ですか)!?」」
ちひろ「結婚記念日に他の女を飲みに誘うとか何考えてんですか」
加蓮「今の流れでなんで他の人誘えるかなぁ」
P「皆で飲んだほうが楽しいかなと……いえなんでもありませんごめんなさい」
加蓮「まったく……」
加蓮「ちひろさん、お先に失礼しますね」
加蓮「行こ、あなた」
これにて完結です。
「薄荷」聴いて何となく思い付きで書き始めたら1か月のつもりが3か月以上たっててほんと申し訳ないです。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。依頼出してきます。
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