≪道場≫
達人「弟子よ、これからワシが石を三つ投げる。全て受け流してみよ」
弟子「分かりました!」
達人「そらっ」ビュオッ
弟子「はっ!」パシッ
弟子「やっ!」カッ
弟子「とおっ!」パシンッ
弟子「いかがです!?」ドヤッ
達人「ダメだダメだ。全然なっとらん」
弟子「ええっ!? ですが私は傷一つついていませんよ!」
達人「いいや全然ダメだ。音で分かる」
弟子「音で……!?」
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達人「分からぬのなら、今度はワシに石を三つ投げつけてみよ」
弟子「はい!」
弟子「いきますっ!」ビュオッ
達人「むんっ」ウケナガシー
達人「ほっ」ウケナガシー
達人「はいっ」ウケナガシー
弟子「まるで力んでいない……! しかも私の受け流しとは、音が全然違う!」
達人「だろう? この音が出なければ真に受け流してるとは言えん」
達人「お前はまだまだ、己の力で攻撃をそらしているだけなのだ」
弟子「お見それしました! ……私はまだまだ未熟でした!」
達人「なぁにお前ならあと10年も修行すれば、出せるようになる」
達人「そしてこの音が出せるようになれば、もはやどんな攻撃でも受け流せる」
弟子「どんな攻撃も、ですか?」
達人「実際に見せてやろう。ついてくるがいい」
弟子「はいっ!」
達人「おい、弟子を連れて出かけてくるぞ」
妻「なら、そうめんを買ってきて。今夜は流しそうめんにするから」
達人「任せとけ」
弟子(師匠が受け流しの達人なら、奥さまは流しそうめんの達人ってことか……!)
≪街中≫
チンピラ「うへへへ、姉ちゃん付き合ってくれや!」
女「いやーっ!」
達人「どれ、ちょうどいい騒ぎが起こっているな。さっそく見せてやろう」
弟子「はいっ!」
達人「これ、よさんか」
チンピラ「なんだてめぇ!」
達人「か弱い女性に狼藉は許さん。ワシが相手になってやる」
チンピラ「なんだと!? ぶっ殺してやる!」サッ
弟子(ナイフだ! 刃渡り30cmはある! 師匠っ……!)
チンピラ「死ねええええっ!」シュッ
達人「よっ」ウケナガシー
チンピラ「この野郎!」シュバッ
達人「はっ」ウケナガシー
チンピラ「こなくそぉっ!」ブンッ
達人「ほいっ」ウケナガシー
弟子「すごい! 全部受け流してる!」
チンピラ「ハァ、ハァ……いくら刺しても刺さらない……もう、疲れた……」ドサッ
達人「大丈夫かね、お嬢さん」
女「ありがとうございますっ!」
女「――なぁんて言うわけねーだろ! せっかくカモが引っかかったってのによ!」
達人「ん」
女「まぁいいや! 代わりにあんたを気絶させて有り金をいただくよ!」バチバチッ
弟子「あれは……スタンガン!」
女「100万ボルトにシビれちまいな!」バチバチバチバチッ
達人「無駄だ」ウケナガシー
女「なんだってえ!?」
弟子「さすが師匠! 電気まで受け流すなんて!」
女「ちくしょう、覚えておきな!」スタコラサッサ
弟子「やりましたね、師匠!」
達人「いや、これからもっと面白いことになるぞ」
弟子「え?」
達人「おそらくあの女、かなりの悪党だ。きっと手下を連れてくるにちがいない」
女「ふっふっふ、手下を連れてきたよ!」
女「さぁ、やっておしまい!」
ガンマン「ミーのガンでキルユーよ!」バキュンッ
達人「ほいっ」ウケナガシー
ガンマン「キルユー! キルユー!」バキュンッ バキュンッ
達人「ほれっ、ほいっ」ウケナガシー
ガンマン「ガッデム! 弾切れデース!」カチッカチッ
兵士「私の出番か。どんなに強い人間でも、マシンガンには勝てん!」ガガガガガッ
達人「そりゃっ」ウケナガシー
兵士「なんだと!?」
兵士「だったらバズーカ砲だ!」ボシュッ
達人「はいっ」ウケナガシー
兵士「無条件降伏する……!」
博士「ふん、だらしない奴らめ。世紀のマッドサイエンティストである私がやってやる」
博士「毒ガス噴射!」ブシュオオオオオオ
達人「ていっ」ウケナガシー
博士「殺人ウイルス噴射ァ!」ボシュオオオオオオ
達人「無駄だってば」ウケナガシー
博士「もう悪い研究はやめよう……」
達人「ここまでだな、お嬢さん」
女「ぐっ!」
女「こうなったら、パパに頼むわ! パパは某国の大統領なの!」
達人「ほぉ、そりゃすごい」
女「あんたなんか核ミサイルでイチコロよ!」
達人「ならやってみい」
女「パパーッ! 核ミサイル撃っちゃってーっ!」
パパ「あいよ!」ポチッ
シュゴゴゴゴゴゴ…
弟子「うわぁぁぁっ! 本当に飛んできた!」
達人「どれ、どいておれ」
達人「ほれっ」ウケナガシー
弟子「核ミサイルも、あっさり受け流したぁ!」
女「う、ぐぐぐ……こうなったら、最後の手段よ!」
女「うふぅ~ん、ステキ! 私と付き合って!」チュッ
達人「イヤです」ウケナガシー
弟子「色仕掛けすら通じない! 師匠は受け流しは完璧すぎるッ!」
こうして悪党一味は全員受け流され、警察に逮捕されたのであった。
≪道場≫
弟子「本日は勉強させていただきました、師匠!」
達人「うむ、お前も精進せえよ」
弟子「ところで、受け流された銃弾やガス、ミサイルは一体どこへ?」
達人「心配するな。誰にも迷惑のかからないよう、受け流しておいた」
弟子「す、すごい……!」
妻「おかえりなさい。ところで、頼んでおいたそうめんは?」
達人「お、すまんすまん。色々あったせいで、つい忘れてしまった」
妻「忘れたぁ!?」
達人「ひっ!」
妻「大して強くもない武術を作って、ろくな稼ぎもないんだから」
妻「せめて買い物ぐらいはきっちりこなしてちょうだいよ!」
達人「ご、ごめんなさい……」
妻「おしおきよ! おしおき!」バキッ ドゴッ ドカッ
達人「ぐほおおおおおおおっ! ゆ、許してえっ!」
弟子「師匠にも受け流せないものはあったか……」
< 終 >
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