くるみ「肉が食べたい」 (125)
ゆき「はー、最近はお肉ばっかりでしあわせだねー」
悠里「そうね、やっぱりお肉を食べると元気が出て来るわね」
ゆき「それもこれもぜんぶくるみちゃんのおかげだよ!」
くるみ「お、おう……ありがと」
美紀「それにしても、毎日こんなに大量の食肉を見つけてくるなんて、さすがくるみ先輩ですね」
悠里「最近は霜降りみたいなお肉も増えてきてるわね。この学校にこんなお肉が置いてあったなんて知らなかったわ」
ゆき「うーん、この肉のやわらかさ、あぶら、もう牛肉とは思えないね…!」
くるみ「ギクッ」
悠里「…?どうかした、くるみ?」
くるみ「あ、ああ、なんでもねえ」
くるみ(ゆきのやつ、たまに鋭いこと言うよな…)
くるみ(…そう、学園生活部の食卓に肉が並ぶようになったきっかけは―今から1週間前)
…
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くるみ「…っし、これでバリケードの修復はぜんぶ終わりだな。あー、つかれた…」
美紀「ここ最近、校舎内にいる数も減ってきてますから、当分はこのままでよさそうですね」
くるみ「これであたしも暇になっちまいそうだな…」
美紀「くるみ先輩は十分仕事してきたじゃないですか…がんばり過ぎないで下さい。先輩ただでさえ危なっかしいんですから」
くるみ「んなっ、ゆきみたいに言うんじゃねえ!」
美紀「わりと似たものどうしだと思いますけど」
くるみ「あいつは別格だろ!…お、噂をすればあんなとこに」
ゆき「おつかれー」
美紀「ゆき先輩、待っててくれたんですか。とりあえず…」
スンスン
ゆき「はっ………!!!この香りは!!!」
美紀「?」
ゆき「カレー!それもビーフカレーだよ、みーくん!急がなくちゃ!!」ドダダダ
美紀「ちょっ、待ってください先輩!あとみーくんじゃありません!」
くるみ「行っちゃったな」
美紀「たしかにあの人は別格ですね…」
悠里「あらゆきちゃん、ふたりは?」
ゆき「いま戻ってくるとこ。それより…きょうのお昼は…」ワクワク
悠里「あらあら、気が早いわね…きょうのお昼は学園生活部名物、ビーフカレーよ」パカッ
ゆき「ま、まぶしい………!!」
くるみ「ただいまー」ガラッ
美紀「って、ゆき先輩何してるんですか」
ゆき「カレーを眺めてるとこ」
くるみ「はぁ?」
ゆき「こうしてカレーを眺めてるとね、いやな事とかぜんぶ忘れて、すっごく気持ちよくなれるんだよ!ほら、くるみちゃんもみーくんも」
美紀「やりません」
ゆき「えー」
くるみ「カレーってそんな危ねえシロモノだったっけ…?」
悠里「ほら、お皿に盛り付けるわよ。ゆきちゃんも手伝ってちょうだい」
ゆき「はーい!」
悠里「それにしても…、ふたりとも遅かったわね」
くるみ「わりいわりい、意外とバリケードの損壊がひどくて時間かかってさ」
悠里「もう、心配したわよ…近頃くるみに働かせっぱなしだったから、どこかで倒れてるんじゃないかと思ったわ」
くるみ「りーさん、心配し過ぎだって…」
美紀「たしかにくるみ先輩、最近疲れてるように見えます」
悠里「そうね、明日からは私たちで見回りするから、くるみはしばらく休んだらどうかしら」
くるみ「いやいや大丈夫だって!それにりーさんじゃ…」
悠里「私たちじゃ務まらない?」
くるみ「えっ…いや、そーいう、ことじゃ…」
悠里「それじゃ決定ね。美紀さん、よろしく頼むわ」
美紀「はい、りーさん」
くるみ「………………………」ムー
ゆき「いただきまーす!」ガツガツ
太郎丸「わふわふ」ガツガツ
悠里「もうゆきちゃん、急いで食べると体に悪いわよ」
ゆき「だって~、お肉入りのカレーなんて食べたの久しぶりだから、どうしても」
悠里「どうしてもじゃありません、めっ」
ゆき「うぅ」
美紀「たしかに、お肉なんて久しぶりですね…。お肉のストックは切れてたんじゃないんですか?」
くるみ「ふふん、その秘密を知りたいかい?」
美紀「ど、どうしたんですか急に」
くるみ「後でおもしろいもの見せてやるよ」
美紀「…これは…」
くるみ「どうだ!これが恵飛須沢くるみ特製、ハト捕獲マシーン『サトゥルヌス2号』だ!!」
美紀「さ、さとるぬす…?」
ゆき「わー!すごいよくるみちゃん!!」
美紀「…見たところ、前にアルノーを捕まえた罠と変わってないように見えるんですが」
ゆき「アルノー鳩錦2世だよみーくん」
くるみ「ふっふっふ…このサトゥルヌス2号を甘く見てもらっちゃあ困るのだよ、美紀君」
ゆき「はっ…わかった!エサが変わってるね!」
くるみ「その通り!餌を米粒からチョコパンに変えたことで集客力5割増という画期的な改善が施されているのだ!」
ゆき「しかもこれ、ざるも大きくなってるね」
くるみ「…おまえ、こんなに早くサトゥルヌス2号最大の機能を見抜くとはやりおるな…!」
ゆき「えへへ」
美紀「……」
くるみ「…そう、サトゥルヌス2号のざるの直径は1号の3倍。つまり…いちどに9倍のハトが捕まるというわけなのだ!!」
ゆき「9倍…!もはや敵なしだね!」
美紀「…これで、鳩を捕まえてたんですね…」
くるみ「そーそ。昨日も4時間粘って、1羽ゲットしたんだぜ」
美紀「1号より劣化してるじゃないですか」
くるみ「それが唯一の欠点だな」
ゆき「…ということは、さっきのカレーはビーフカレーじゃなく…」
くるみ「そ、ハトカレー。鳩も意外とうまいもんだろ?」
ゆき「は、はとさん…」
美紀「でも、食用じゃない土鳩の肉はおいしくないって聞いたことありますよ」
くるみ「そこがポイントでさ。生だと不潔だし泥臭いし、ほとんど食べられないような肉なんだけど、
水にさらして臭みを抜いてからカレーのスパイスに漬け込んで、そこからカレー鍋でぐつぐつ煮込んでやると、やっと肉の味が消えて食感を楽しめるようになるんだよな」
美紀「…ってことは、あのカレー、りーさんじゃなくてくるみ先輩が…」
くるみ「どうだった?あたしこれでも昔は料理とか勉強したことあってさ。とくにビーフカレーとか得意だったんだ」
ゆき「く、くるみちゃんが…料理……!!?」
美紀「…意外すぎます」
くるみ「そ、そんなに驚かれることか…?」
ゆき「まさかくるみちゃんがこんなオトメな趣味を持っていたとは…ふふーん」ニヤニヤ
くるみ「な、なんだよそのニヤけ顔は…」
ゆき「それじゃあくるみちゃん、明日もお肉よろしくね!」
美紀「でも、カレーみたいな風味の強い料理じゃなければ食べられないんじゃないですか?」
くるみ「いや、そうでもねえよ、工夫次第でな。よーし、それじゃあ一丁このくるみシェフが頑張っちまうか!」
ゆき「やったー!!おにく!!おにく!!」
美紀「先輩、どれだけお肉が好きなんですか…」
ゆき「みーくんも、お肉を食べないと背が伸びないよ」
くるみ「そうそう」
美紀「うるさいです、先輩こそ胸g」
くるみ「だまれ」
美紀「…シャベルを向けないで下さい…」
くるみ「…とは言ったものの…」
くるみ(捕れねえ…)
鳩「クルッポークルッポー」バサバサ
くるみ「もう3時間も待ってるってのに…くそっあいつら、どうしてサトゥルヌス2号に近寄ってこねえんだ…」
くるみ「もうこうなったらシャベルで…おらあああ!!!!」
鳩「クルッポー」バサッバサッ
くるみ「おらああああああ」
鳩「クルッポー」バッサバッサ
くるみ「おらあああああああああ」
鳩「クルッポー」バッサッバッサッ
くるみ「…つかれた……」
くるみ「二階のほうの罠も見に行ってみるか…」
くるみ「頼む…捕まっててくれ…!」
…
くるみ「…成果なし、か…」
くるみ「くそっ、どうする…あんな事言った手前、捕まりませんでしたーなんてのも…」
ペタッ ペタッ
くるみ「!!」
ゾンビ「ハァー…ハァー…」ユサユサ
くるみ「うわっ、バリケードのすぐ向こうにいやがったのか…気付かなかった…」
くるみ(ひとりだけ…、周囲には他の奴はいないっぽいな…やっちまうか)
ピョイッ
ザグッザグッ
ゾンビ「」
くるみ「っ……ふぅー、派手にぶちまけちまった…」
くるみ(それじゃあ早いとこ屋上に戻って…)
ゾンビ「」
くるみ「……………」
くるみ(…………………………あれ、こいつらの肉って…はじめて見るけど…)
くるみ(こいつらの中身って…、意外と…食えそう、だよな…)
くるみ「…って、何考えてんだ、あたし」
くるみ(…でも、グロいのは皮膚だけで…中身はぜんぜん腐ってないってか…、むしろ脂が乗ってて…いやこれ、意外と…?いやいや待て待て、こんなの食えるわけが…)
悠里「くるみ、何してるの?」
くるみ「ぅおあっ!!!?」
悠里「…?どうしたの、そんなに驚いて…その死体がどうかしたの?」
くるみ「あ、あぁいや、なんでもねえ」
悠里「そう…夕食の仕込みを手伝って欲しいんだけど、空いてるかしら?」
くるみ「ああ、大丈夫。先行っててくれ」
悠里「わかったわ。無理しちゃダメよ?」
くるみ「おう」
くるみ「…とりあえず、こいつは中に置いとくか…」
ゆき「すぴー」
悠里「ぐかー」
美紀「スー…スー…」
くるみ「……………」ムクッ
ゾンビ「」
くるみ(死体はなんとか部室に運び入れた…でも、いがいと軽くてあっさり持ってこれたな)
くるみ「とりあえず、工作室から持ってきたノコギリ、糸ノコ、ナイフ、ハンマー…これだけあれば足りる、よな」
くるみ「では失礼して…」
ザクッ
トロー
くるみ「うわっ、なんだこの汁…」
ベリベリ
くるみ(こいつら…こうして開いてみると、体の構造が全然ちげえんだな…)
くるみ(ってことは、だ…これは食人とか…、そういうアレじゃない、ってこと…だよな?)
くるみ(………だよな…?)
ギコギコ…ボドッ
くるみ(筋肉は…腕の半分程度ってとこか。残りの空間はこの変な臭いの液体がパンパンに張ってある…人間ってより、虫かなんかみたいだな、こりゃ)
くるみ「よいしょっと」ポキン
くるみ(けど、可食部は少ない代わりに…ほどよく引き締まってて脂も乗ってて、これ…食欲抑えろってほうが無理だろ…!)ジュルッ
くるみ「でも、いくらうまそうって言っても…こえーよなー…………ん?」
太郎丸「スピー」
くるみ「…………」
くるみ「…すまん、太郎丸…」
ゆき「はー、やっぱり納豆はおいしいねー。日本人でよかったー、って感じ」ネチャネチャ
美紀「ちょっと先輩、静かに食べてください!糸が飛んできます」
ゆき「それそれー、おかめ納豆波状攻撃」ネチャァー
美紀「食べ物で遊ばないで下さい!」
くるみ「…………」チラッ
太郎丸「わふわふ」ガツガツ
悠里「…くるみ、太郎丸がどうかした?」
くるみ「あいや、えーと、太郎丸ってどっか調子悪かったりとか、しないよな…?」
悠里「…?」
くるみ「あ、あぁいや、えーとほら、昨日太郎丸が食欲無さそうに見えたからさ、ほら、心配になって」
ゆき「うーんと、太郎丸なら昨日も元気に食べてた気がするけどなあ…」
悠里「そうね、わたしの見たところじゃとくに異常は見られないわ」
くるみ「あぁーそっか、それなら良かった、いやははは」
くるみ「…きょうもサトゥルヌス2号は異常なし…」
くるみ「…」ゴソゴソ
くるみ(きのう、あいつから採れた肉はだいたい5キロ。内臓はさすがに怖かったから…手はつけてない)
くるみ(どうしていいかわからなかったけど…、ひとまず水にさらして、3キロは塩漬けにして保存)
くるみ(太郎丸のおかげで生でも問題ないことはわかった。たぶんあいつらの体液が傷口から体内に入るとヤバいけど、食べるだけだったら問題ない…ってことだな)
くるみ(…って言っても、怖えもんは怖えしなぁ…)
ゆき「くるみちゃん、サトルくん2号はどうー?」
くるみ「おぅぅ!!?」サッ
ゆき「…?どうしたの?」
くるみ「お、おう。サトゥルヌス2号は今日もばっちり稼働中だぜ!」
ゆき「それじゃあきょうも…きょうも、お肉が食べられるんだね!?」キラキラ
くるみ「あったりめぇよ!」
ゆき「くるみちゃん、ありがとう!もう、お肉が無かったらわたしそろそろ死んでたよ」
くるみ「それは大変だな…」
ゆき「それじゃ、楽しみにしてるね!」タッタッ
くるみ「…………………………あー…」
くるみ「後には引けねえ…か…」
悠里「それじゃあ、下ごしらえよろしくね、くるみ」
くるみ「おう、りーさんはしばらく休んでてくれ」
悠里「ありがとう…それじゃお言葉に甘えさせてもらうわ」
ガラガラ
くるみ「…」ガサガサ
ドサッ
くるみ「にしても、〆てからそろそろ丸1日経つってのに…、相変わらずぷるっぷるだな…どうなってんだよ、この肉」
くるみ「とりあえず、中までこんがり焼いてみるか」ジュー
くるみ「…こうして見ると、ふつうに高級肉なんだよなあ…」ジュルッ
くるみ(……………………いやいや、仮にもあいつらの肉だぞ…ナチュラルに食欲湧いてるんじゃねえよ…)
くるみ「…それじゃ、いただきます」パク
くるみ「………………」モグ…モグ…
くるみ(…………………………………………………………ぁああ!!?)
モグ…モグ…
くるみ(う……うまい、うまっ……過ぎる………!!!)
くるみ(一口目の歯ごたえはまさにステーキのようなジューシーな感触で…数回かむともうハンバーグみたいなやわらかな食感に、そして十回も噛むと舌の上で溶けちまう)
くるみ(とてもウェルダンステーキとは思えないやわらかさ…!)
パクパク
くるみ(なんだ、なんだこれ…手が…手が、とまらない……)パクパク
くるみ「う、うま過ぎて…涙が出てきた…」
くるみ(こんな事になってからもう数ヶ月…、何度も絶望に呑まれそうになりながら、なんとか今日まで生きてきた)
くるみ(今…、はじめて心の底から思える)
くるみ「生きてて……よかった………っ!」後光ペカー
ゆき「あー!ハンバーグ!ハンバーグだよ!」
美紀「すごいですね、結構な大きさですよ…何羽使ってるんですか」
くるみ「なんわ?」
美紀「……?ハトをどのくらい使ったのか気になっただけですけど…?」
くるみ「ああ…あー、まあ、2、3羽な…」
ゆき「すごいよくるみちゃん!命の恩人だよ…!」
悠里「わたしも、まさかこんなお肉が食べられるとは思ってなかったわね」
美紀「ありがとうございます、くるみ先輩」
くるみ「そ、そんなに褒められるとちょっと恥ずかしいな…」ポリポリ
ゆき「いただきまーす!」
悠里「………………!」
ゆき「…こ、これは………」
美紀「…………………美味しい………!」後光パカー
くるみ(…本当はそのままステーキで出したかったけど、一発でハト肉じゃないことはバレちまうからな…)
くるみ(一部を挽肉状に刻んで、ステーキの周りに貼り付けた。言ってみれば『偽装ハンバーグ』ってとこだな)
くるみ(結果的にだけど、二層の肉の食感がうまくていい感じになった…焼いても柔らかい肉だからこそ出来た料理って感じか…)
美紀「それにしても…」
くるみ「?」
美紀「あのハト肉を、こんな…こんな素晴らしい料理にしてしまうなんて…」
くるみ「えっ」
ゆき「く、くるみちゃん…………いや、くるみ様…!」
くるみ「えっ…?」
悠里「…もう私もお役御免かもしれないわね…」
くるみ「ち、違うって!たまたまうまいハトが手に入っただけでさ、あたしの腕が凄いわけでもなんでもないんだって…!」アワアワ
ゆき「またまたー」
美紀「こんど私にも、作り方教えてもらっていいですか」
悠里「学園生活部の台所は任せたわよ、くるみ」
くるみ「いやいや、あぁー、まあ……」
ゆき「すぴー」
くるみ「ふー…さっきは大変だったな」
くるみ(なんとか料理番があたしになるのだけは避けたけど…、これからはバレねえように料理の腕も磨いとかないと…)
くるみ(…さて、そろそろ行きますか)ガラガラ
ゾンビ「ハァー…ハァー…」ペタペタ
くるみ(…おっ、ありゃこの学校の生徒じゃないな…子供か。肉が柔らかすぎないといいんだけど)
くるみ「っっらぁ!!」ザシュッ
くるみ(速さが命…速さが命…)ザグッ…ギコギコ…ベチャッ
くるみ「…っと、こんなとこか。残りは窓から捨てて…と」ホイッ
くるみ(急いでバリケードの向こうに戻って、肉を塩漬けにしてこっそり保管する…)テキパキ
バタン
くるみ「ふー…」キョロキョロ
くるみ「全部で…5分ってとこか…バレないためにはこれでも長げえな…」
くるみ(みんな…恵飛須沢くるみ、学園生活部の安定した食肉調達、がんばるからな…えいえい、おー!)
眠くなってきたのできょうは寝ます
ゆき「お、きょうの晩ご飯は…ミートパイ!!」
悠里「香りだけでよくわかるわね…」
美紀「ゆき先輩、犬みたいです」
ゆき「しっけいな!名探偵と呼びたまえよ、名探偵と」
悠里「でも、本当にいい香りね」
くるみ「ちょうどミートソースが余ってたからな、使わせてもらったよ」
ゆき「それじゃ、いただきまーす!」カプッ
美紀「………、おいしい……」後光ペカー
ゆき「…………………………………………」ガツガツ
悠里「もうゆきちゃん、がっつき過ぎよ、汚いわ」
太郎丸「わふわふ」ガツガツ
くるみ「……………………………………」モグモグ
くるみ(あいつらを使い始めてから、一週間が経った)
くるみ(ステーキに最適なのは少女の肉、ハンバーグなら男の肉…一番脂が乗ってうまいのは二の腕の肉…いろんなことがわかってきた)
くるみ(とくに昨日作った、もも挽肉のバジル風ウインナー…バジルっても、パセリとドレッシングで気分だけ味わえるっつうパチモンだけど…最高、だったな)
くるみ(心なしか、みんなの笑顔も増えてきた気がするし…やって、よかった)
くるみ(先輩…あたしの料理、先輩に食べてもらうことはできなかったけど…今、こうして、みんなを支えてます)
美紀「モグモグ…………、つっ」ガリッ
美紀「………これ、爪……?」
美紀(…………って、まさか、ね)
ゆき「すぴー」
くるみ「…」ムクッ
くるみ(意外とミートパイに使っちまったな…補充しとかないと)モゾモゾ
ヒョイッ
くるみ「おい、出てこいよ…」
ゾンビ「ハァー…」クルッ
くるみ(男か…しかも痩せ型…できれば、女がよかったんだけどな…)
くるみ「贅沢も言ってらんねぇ…かっ!!」ザグッ
ゾンビ「ゥアアア…」ブシュッ
くるみ(……………、あれ…?)
くるみ(こいつ、なんとなく…………)
ゾンビ「ゥオオオオオオオ…」クルッ
くるみ「…………先、輩………?」
ゾンビ「ゥァアアアアア!!!!」ブンッ
くるみ「…っ!!」
くるみ(危ねっ…!)
ゾンビ「ゥォオ…ゥォアアアア」
くるみ(…まさかな……、先輩は…あたしが、この手で)
くるみ「………………あぁ、もうっっ!!」ザシュッ
ゾンビ「」バタッ
くるみ「……はーっ、はーっ…………はーっ……………」
くるみ(…でも、たしかに…どこか、先輩に、似てるな)ザクッ
くるみ(体型も、陸上選手っぽいし……)ギコギコ
くるみ「よいしょっと」ポキッ
くるみ(…違うとは、思うけど…もし。これが、先輩の、肉だと思うと………)ベチャッ
くるみ「………」ドキドキ
くるみ「…って、なんか、ヘンタイみたいじゃねーか、あたし……」
くるみ(………………)ドキドキ
くるみ「……………いただきます、先輩」ドキドキ
ゆき「きょうはー…、…ステーキ…?でも中華みたいな…?いや、キノコ……」
美紀「ゆき先輩、そろそろいいですか?冷めますよ」
ゆき「えーと、ちょっとまってね!えー、よし………チャーシュー!」
悠里「うーん…3分の1当たり、ってところね。…答えは、」
ゆき「………わあああああ…ステーキにチャーシュー、それに…えっと…キノコとお肉!!」
悠里「ビーフ・ストロガノフね」
美紀「ずいぶん豪華ですね…!」
くるみ「まあ…ちょっと、いい事があってな。それより、冷めないうちに食べようぜ」
ゆき「いただきまーす!!」ガツガツ
美紀「ちょっとゆき先輩、落ち着いて食べてください!」
悠里「うふふ」
くるみ「………………」モグモグ
くるみ(……先輩、心を込めて精一杯おいしくしました)ドキドキ
悠里「それにしても…この肉、どこにあったのかしら」
くるみ「あ、あぁ…あれ、家庭科室の食糧庫で見つけて、な。」
悠里「家庭科室に…?そんなのあったかしら…」
くるみ「ほら、この学校って設備が充実してるだろ?たぶん、そのひとつじゃねえかな…」
美紀「家庭科室、ですか…機会があったら、また『きもだめし』したほうがいいかもしれませんね」
くるみ「あぁいや、あの辺はまだあいつらも多くてキケンだし…あたし一人で大丈夫だって。そんな事より、まだまだ肉はあるからおかわりしていいぞ!」アセアセ
ゆき「おっにっくー♪おっにっくー♪」ガツガツ
悠里「もうゆきちゃん、こぼしてるわよ」
くるみ(……ほっ)
美紀「…でもくるみ先輩、この量なら、何日かぶんに分けて食べたほうがよかったんじゃないですか…?」
ゆき「もー、みーくんはブスイだよ!食べたいときが食べどきなんだよ!!」
くるみ「そーだそーだ、言ったれ言ったれゆき!」
美紀「だからそれは駄目人間の発想です!」
悠里「まあ、久しぶりに無礼講…って言い方も違うけれど、こういうのもいいんじゃないかしら。私たち、今までお腹いっぱいになるまで食べることが無かったしね」
美紀「りーさんまで…」
くるみ「……………」
悠里「ふー、食べたわね…おいしかったわ、くるみ」
くるみ「ああ、ありがと、…………」
悠里「………………?どうしたの、くるみ?」
くるみ「……あ、いや、なんでもねえ。ただ、……『食べ物への感謝』って…こういうことだったんだな、って」
悠里「…そうね。こんな状況になっちゃうと、いつも何気なく食べてたものでも、大切なものだったんだなぁ…って思えてくるのよね…」
くるみ「りーさん…あたし、幸せだよ」
悠里「ふふ…わたしもよ。こんなときでも、みんなと一緒になれて、これって、すごく…すごく幸運なことって、最近わかったの」
くるみ「ああ、あたしも…先輩と、一緒になれたからな……」
悠里「…先輩?」
くるみ「ああ、こっちの話。…そろそろ電気消していいか?」
悠里「ええ、おやすみなさい」
くるみ「おやすみ」
くるみ(…………………………)ドキドキ
ゆき「えー、今朝はおかず、これだけしか無いの…!?」
くるみ「ごめんな、昨日の夕飯で使いすぎちまって…しばらく節制しないといけねえんだ」
悠里「そうなの、もう缶詰も少なくなってきてね…」
ゆき「えー、りーさんのけちんぼー」
美紀「ゆき先輩、我慢してください。ちょっと分けてあげますから」
ゆき「さっすがみーくん、後輩の鑑だね…!!」キラキラ
美紀「げ、現金な…」
くるみ「………………」
ガヤガヤ
くるみ(…こうして見ると………)
くるみ(…ゆきの二の腕って…………)ジュルッ
ゆき「…れもこれも、元はと言えばくるみちゃんのせいなんだからね!」
くるみ「………あ、ああ…えっ?」
悠里「もう、ゆきちゃんもあれだけ喜んでたじゃないの」
ゆき「う。そ、それは…」
美紀「ゆき先輩、日によって態度変えてたら信頼なくしますよ」
ゆき「うう…今日のみーくん妙に辛辣だよ…!」
美紀「先輩がゆる過ぎるんです」
ゆき「うぐぅ」
悠里「まあまあ、お肉ならまた食べられるわよゆきちゃん」
ゆき「ほんと…?」ウルウル
悠里「本当よ」
美紀「…それじゃ、朝の見回り行ってきます」
ゆき「あ、あたしも授業ー」
ガラガラピシャッ
悠里「…どうしたの、くるみ?朝からぼーっとしてるみたいだけど」
くるみ「いや、別に。まだ寝ぼけてるだけ」
くるみ(………さっきのは、寝ぼけてて変なこと考えただけ…だよな…)
くるみ「でもりーさん、ほんとにもう食材がないのか?」
悠里「ええ、最近の消費が激しかったのが原因ね…それに、電気も不足してきてるみたいなの」
くるみ「………え、ってことは…」
悠里「くるみには悪いけど、しばらく料理は出来そうにないわね。とりあえず期限の近い缶詰から消費していって……から、………を…」
くるみ「………………………………」
ゆき「えー、きょうはお肉ないの!?」
悠里「ごめんなさい、今週いっぱいは電気も使えないから、どうしようもないの」
美紀「残念ですね…」
くるみ「まー…ほら、肉ばっか食べてても健康によくないしな。だいいち、太るし」
ゆき「えー、くるみちゃんまでそんなこと言い出すなんて…」
美紀「仕方ありません。肉も美味しいですけど、サラダもじゅうぶん美味しいですよ」
ゆき「はーい……いただきまーす…」
くるみ「…………」
ムシャムシャ
悠里「……………」
ムシャムシャ
美紀「…なんか、みなさん目に見えて元気ないですね…」
ゆき「おやすみー」
悠里「おやすみなさい」
くるみ「おやすみな、ゆき」
くるみ「……………………」
くるみ(肉食べたい…肉食べたい…肉食べたい…肉食べたい…肉食べたい…肉食べたい…肉…肉…肉…肉…肉…)
ガラガラ
くるみ「肉のストック…は、これだけか…」
くるみ(生でも…いけるにはいけるはずなんだよな…)
くるみ(とりあえず醤油でいいか…)
ガツガツ
くるみ(……うぅ、固っ……でも、これはこれで…意外と………?)
くるみ(…いや、微妙、だな……男のモモだから筋張っててパサパサだし)
くるみ(女の腕肉とかなら…まだ生でもいけそうなんだけどな……)
くるみ(……………………………行く、か…)
くるみ「ぉらああああ!!!!」ズバッ
ゾンビA「ゥァアア…」バタッ
ゾンビB「ォアアアアアア…」バタッ
くるみ「くそっ、男ばっかか…」
くるみ「仕方ねえ、一階まで降りてみるしかないな…」
…
ゾンビC「ウガァァ」バタッ
ゾンビD「ウジュウゥゥ」バタッ
くるみ「おらっ、どけどけええ!!」ザクザク
くるみ(…駄目だ、女は…いない!)
くるみ「くそっ、男肉でガマンするしかねえってのか…」
くるみ「…………あれ…?」
くるみ(あそこの鉄扉…開いてるの見たのは初めてだな…)
ピチャッ…ピチャッ…
くるみ(…ここ、地下…?)
くるみ「この学校に地下なんてあったのかよ…」
くるみ「おーい、誰か、いませんかー…」
ピチャン…ピチャン……
くるみ(…………お、一匹…)
ピチャン…ピチャン……
くるみ(…………し、しかも…女…じゃ、ねえか…?)
ピチャン…
くるみ(…よし)
くるみ「…ぅおおおおおおおおおおおおお、おおお…!?」
ゾンビ「ハァー…ハァー…」
くるみ(な…っっ…、…………………………め…)ザシュッ
くるみ「めぐ……ねぇ……………………?」ザグッザグッ
めぐ姉「」バタッ
くるみ(う、嘘…だろ………!)ザクッ
くるみ(なんで…なんで、めぐ姉が…こんな、ところに……)ブチブチ
くるみ(ど、どういうことだよ…ずっと、この地下に……)ベリベリベリ
くるみ「よいしょっと」ポキン
くるみ(隠れてやがった…って、ことか…?)ベチャッ
くるみ(いないとは思ってた、けど…そりゃ見つからないわけだよな…)ボギッ
くるみ(………………っていうか…)
くるみ「こうして見てみて気づいたけど……意外と…胸、あるんだな…」
くるみ(これで…脂が足りなくて困るってことはなさそうだな…)ジュルッ
くるみ(…まずい……出来たら、めぐ姉の食べられる部分は全部持って帰ってやりたかったんだけど…)
くるみ「…地味に重いわ、めぐ姉……おっきい尻しやがって…」
くるみ(これじゃ、分けて運ぶにしても3、いや4往復は要るな…そんなにチンタラしてられないし…)
くるみ「ここである程度食べてくしかない、か…」
くるみ(………めぐ姉の肉…)ドキドキ
くるみ「………………いただきます、めぐ姉」ギコギコ
ハブッ…ハブッ…
くるみ(うっ、こいつら独特の臭みがきつい…せめて塩くらい持ってくるべきだったかも…)
くるみ(…いや……慣れればむしろ、味のアクセントとして…)
くるみ(あっ…いや、むしろこれ…おいしくないか……?)
ギコギコ
くるみ(なんだろ…チーズの臭みっていうか…とにかく、これはこれで…アリだ……!)
くるみ(脂もほどよく乗ってて、舌触り抜群だし……)
ガブッ…ガブッ…
くるみ(うめぇっ…めぐ姉、うめぇ………!)
ズゾー…ズズッ…
めぐ姉「」
くるみ「うぅっ、つい食べすぎちまった」ゲプ
くるみ「うわっ…服も…かなり汚しちまったなー…めんどくさい…」
くるみ(…でも、おかげでしばらくは肉には困らなさそうだな)
くるみ(…ありがとう、めぐ姉。……本当に……ありがとう)
めぐ姉「」
ガタン
くるみ(…あいつらか!?)ダッ
くるみ「……………」ソーッ
くるみ(…………………いない…?気のせいか………)
くるみ「とにかく、あいつらもまだ残ってるし…めぐ姉をすぐ持って帰らないとな」
美紀「………………………………………!!!!!」
ゆき「むにゃむにゃ…」
悠里「ほら、ゆきちゃん朝よ?」ユサユサ
ゆき「…ん……おはよー……」モゾモゾ
悠里「美紀さんも…って、もう起きてたのね」
美紀「…………おはよう、ございます」
美紀(…結局、一睡もできなかった)
美紀(…夢だと信じたかったけど……夢じゃない、みたい…)
…
美紀(………みょうに、お腹がすいて仕方ない…)
美紀(眠れない………………)
モゾモゾ
美紀(………くるみ先輩…?)
美紀(………そういえば…最近、夜中に目を覚ますと…くるみ先輩がいないことが多い)
美紀(夜中の見回り、ていどに考えていたけど…さすがに多すぎるよね…)
くるみ「………」ガラガラ
美紀(ふしぎと…いやな、予感がする)モゾモゾ
くるみ「肉のストックは……ごにょごにょ…」ガサガサ
美紀(料理の仕込み…か)ホッ
美紀(よく考えたら、毎日料理を用意してるんだら当たり前のことだよね…)
美紀(寝よう)
ガラッ
美紀「!!」サッ
くるみ「…………」タッタッタッ
美紀(………?下の階へ…?)
くるみ「らああああああああああああああ」ズバズバ
美紀(ちょっ…、なんて危険な…!)
美紀「はぁっ、はぁっ、追いつけない…!」
美紀(くるみ先輩…どこに……?)
シチュ…シチュ…
美紀「…?」
ハブッ…ハブ…
美紀「この音…あの扉、から…」
ズズッ……
美紀「くるみ先輩……?せ…………」
くるみ「ハフハフ、ガフッ」ハチュハチュ
めぐ姉「」
美紀「」
ボドッ
…
ゆき「いただきまーす!」
太郎丸「わふわふ」ガツガツ
悠里「…あら、くるみ、食べないの?」
くるみ「ああ、ちょっと食欲がなくて…」
くるみ(うぷ、きのうは食べ過ぎた…)
美紀「……………………………」
くるみ「……?美紀も食べないのか?」
美紀「ひっ」ビクッ
くるみ「えっ…………」
美紀「…あ、ああ、…ちょっと、食欲がないんです」
くるみ「そっか…あたしが言うのもなんだけど、朝はちゃんと食べないと身がもたないぞー」
ゆき「そうそう、朝ごはんがないと生きてる気がしないよー」
くるみ「おまえは食べすぎだ!」
ゆき「うぐぅ」
美紀「…………………………」
悠里「そうそう、今夜はお肉にしようと思ってるの」
美紀「…………!?」ビクッ
ゆき「うそ!お肉が…お肉がたべられるの……………!?」ワナワナ
くるみ「でも、電気がないんじゃ…」
悠里「そうなんだけど、なんだか私もくるみのお肉を食べないと落ち着かなくってね。3日に一回くらいだったら、いいことにしようかと思うの」
くるみ「おぉ、さすがりーさん……」
ゆき「りーさんが女神にみえるよ……!!!」
くるみ「よっしゃ、そうとなったら節電も味も両立できるレシピを考えてやるから、楽しみにしてろよ!」
悠里「頼もしいわね…よろしくお願いするわ」
美紀「………………………………」
くるみ「ちょっとトイレ行ってくる」ガラガラ
美紀「………」
テクテク…
美紀(……行った…?)
ガチャッ
美紀(くるみ先輩が使ってる肉のストックは…たしか、このあたりに)ゴソゴソ
美紀「あった…この包みだ」
美紀(…きっと、なにかの間違いのはず……)ベリベリ
ゴロン
めぐ姉(頭部)「」
美紀「」
くるみ「あー、すっきりした……あれ、美紀?」
くるみ「いないな…きょう見回りだったっけ…?」
くるみ(そういや、朝の美紀…なーんか様子がヘンだったな…悩み事でもあるのか…?)
くるみ(…まあ、今のあたしに出来るのは元気が出るようなご飯を作ってやることだけだしな。きょうはせっかくめぐ姉なんだし、ここは変に手を加えず……)
美紀「……………………」
ゆき「むむむ、きょうの晩ご飯は……甘い…?いや、お肉……???」
ゆき「…………はっ!わかった!ラズベリーソースのすてーきだよ、りーさん!」
悠里「ゆきちゃん…まさか香りだけで当てられるとはね…」
ゆき「わー、しかもなんか…こう……オシャレ!」
くるみ「濃い紫のラズベリーソースが甘め、すみれ色のソースがしょっぱめ。って感じで彩りを加えてみたんだけどさ…どう、かな」
ゆき「さいこう!最高だよくるみちゃん!!」
悠里「ほら、いきなり手を付けない!もうゆきちゃん、まずはいただきます、でしょ?」
ゆき「ごめんなさい…じゃ、いただきまーす!」
美紀「…………………」
ムシャムシャ
ゆき「おいしー!!さすがはわが部の誇るくるみちゃんだね…!」
くるみ「かってに誇るなよ」
ハブッハブッ
美紀「……………………」
くるみ「…あれ、美紀は食べないのか?早くしないとゆきのヤローが手ぇ出してくるぞ」
ゆき「そんな、ヒトをケモノみたいにっ」
美紀「………………………」
美紀「もう、いい加減にしてください」
くるみ「………?どうしたんだよ、美紀」
悠里「美紀さん?」
ゆき「…?みーくん、はやくしないと冷めちゃうよ?」ハムッハムッ
美紀「ゆき先輩、それを食べちゃだめです」
ゆき「はっ、さてはみーくん、わたしのステーキを狙ってるね…!だめだよ、これは私の」
美紀「食べちゃ駄目なんですっっ」バッ
ベシャッ
ゆき「ああー、ステーキが!!」ガビーン
くるみ「おいっ、どういうつもりだ!」
悠里「………!?」
美紀「………」ツカツカ
悠里「…美紀さん?どうしたの?なんで……」
くるみ「……あっ、おい、そこは」
美紀「………」ガチャッ
くるみ「開けるな!!」
美紀「………」ベリッ
めぐ姉(頭部)「」ゴロン
ゆき「……………」
悠里「……え」
くるみ「………ああ、あああああ…………」
美紀「………」ポイッポイッ
ゾンビ(腕)「」グチャッグチャッ
悠里「…………これは、何…?どういう、こと、なの……?」
美紀「見てわかりませんか?」
美紀「あいつらの肉なんですよ。これまで食べてきたのも、今食べてたステーキ…いや、『めぐ姉』も」
美紀「そうですよね、くるみ先輩」
悠里「……………………は?」
くるみ「………………………………」
くるみ「…………………………………ち、違う」
くるみ「違う、んだよ、これは……」
美紀「…くるみ先輩とは、一緒にいたかったんですけど……先輩、いつ、感染したんですか」
くるみ「……………え、か、感染…………………」
美紀「ごめんなさい、私たちが…くるみ先輩を働かせすぎたせいです」
くるみ「………………ち、違う!!そ、そんな、そういうんじゃ…………」ガタッ
美紀「ちっ、近寄らないで!」
くるみ「!!」
くるみ「…や、やめろ……」
くるみ(そんな目で…そんな目で、あたしを見ないでくれ………!)
くるみ「ち……………違う、あたし、は、そんな、つもりじゃ………………………!」
悠里「………………………うぷ…」
美紀「…りーさん?」
悠里「うぐっ、お゛っっ…おぼろろろろろろろ」ビチャビチャ
ゆき「ひっ…」
くるみ(あぁ…せっかく作っためぐ姉のステーキが……ゲロまみれに……)
くるみ(うぅ……………うっぷ)
くるみ「う゛ぁっっっっ………おぼっ、おぼろろろろろろろろ」ビチャッビチャッ
美紀「ひっ…!げ、吐瀉物から感染するかもしれないのでみなさん離れ…」
悠里「おぼろろろろろろろろろろ」ビチャッ
美紀「やっ…!」ツルッ
ドシャッ
美紀「い、いやっ……うぶっっ、おぼろろろろろろろろ」ゲボッゲボッ
くるみ「うわっ、かけ、るな……!う゛…………おぼろろろろろ」ビシャッ
ゆき「うあああああ、あああああああああああああああ…うああああああああああああああああ……」
悠里「おぼろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろ」ビッチャッ
美紀「うぎゃあっ、おぼろろろろろろろろろろろろろろろろ」ゲボォッ
くるみ「うぅぅぅぅ………おげぇ…おぼろろろろろろろろろろ」ビシャビシャ
ゆき「うあああああああああ……ああああ………ひっく、うあああああああああ」
悠里「う゛う゛っ……」
ゆき「うあああああああああああああああああああああああああ…」
悠里「う゛るさい…静かに、しな…さいっ……!」ハラパン
ゆき「う゛っ!!?」ゴスッ
ゆき「うぷっ……お゛っ、おぼろろろろろろろろろろ」ブシャッ
美紀「あ゛あっ、ゆき…先輩……うううう……おぼろろろろろろろろ」ドボドボ
くるみ「やめろ…めぐ姉を吐き出すんじゃ……お゛、おぼっろろろろろろろ」ビシャアッ
悠里「おぼろろろろろろろろろろろろろ」ビチャビチャビチャ
太郎丸「わふわふ」ズルズル
くるみ(め…めぐ姉……めぐ姉が、もったい…ない…………)
くるみ(ちょっとでも、たべ、食べてやらない…と……)ズルズル
くるみ「………ぅ゛う゛、ぉぼろろろろろろろろろろろろ」ビシャビシャビシャ
美紀「ひっ、先輩何やっ、っっっ、ぅ゛おぼろろろろろろろろろ」ドボドボドボ
悠里「おぼろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろ」ビチャビチャビチャビチャ
ゆき「うう……ひぐっ………っっぅぷっ…………おぼろろろろろろろろろ」ブシャブシャ
くるみ「ゆき…やめろ、めぐ姉の顔にかけるな…………ぅぅぅっっぼろろろろろろろろろろろろ」ビシャビシャビシャ
悠里「おぼろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろ」ビチャビチャビチャビチャビチャビチャ
めぐ姉(頭部)「」
美紀「おぼろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろ」ドボドボドボドボドボドボ
…
ゆき「おはよー」
くるみ「おー、おはよ」
美紀「おはようございます、ゆき先輩」
悠里「今朝は早いわね、どうしたの?」
ゆき「いやー、寝てたら急にソースのこうばしい香りがしましてな」
悠里「そういえば、お好み焼きの日だけ朝早いのよね、この子」
くるみ「相変わらず犬みてーだな…」
ゆき「だから犬じゃないよ、名探偵ゆきだって!」
くるみ(…あれから一週間が経った)
くるみ(あの時はもう、どうなるのか不安でいっぱいだったけど…こうして今日も、学園生活部の日々は続いている)
美紀「…それにしても、いまだに部屋の臭い、取れてませんね」
くるみ「なんせ床と机が見えなくなるまで出したからな…」
悠里「まあ、いいんじゃないかしら?これも学園生活部の思い出の証よ」
ゆき「うん、わたしはこの臭いすきだよ」
美紀「そりゃ…わたしだって嫌いじゃないですけど…」
くるみ(…あの晩、あたし達は胸の内を洗いざらい吐き出して、そのままめぐ姉の海の中で眠りこけた)
くるみ(めぐ姉はあったかくあたし達を包み込んでて…それで、気付けたんだ)
くるみ(ああ、そっか…お肉とか、食べるとか、そんなことしなくても、あたし達、『つながってる』んだな…、って)
くるみ(もとから、心配するようなことじゃなかったんだ)
悠里「…そろそろ鉄板が熱くなってきたかしら?それじゃ、お好み焼きを焼きはじめるわね」
ゆき「………!」ワクワク
くるみ(それに…、あの晩のことは、もうひとつ重要なことを教えてくれた)
悠里「ぅっぷ…おげ、おぼろろろろろろろろろろろ」ビチャビチャビチャ
お好み焼き「」ジュゥゥゥ
ゆき「わああ、おいしそう…!」
くるみ「昨日の晩ご飯は牛肉たっぷりだったからな…、そうとう香ばしくなってるはずだぜ」
美紀「………」ジュルッ
くるみ(そう…食べ物がなくても、みんなで食べて吐いてを繰り返せば…)
くるみ(ほとんど無限に食べ物を分け合うことができる…)
くるみ(これに気付いてから、お肉が無くて困るようなこともなくなった)
くるみ(なんで、こんな簡単なことに気付かなかったんだろな…)
悠里「ほら、焼けたわよ。特製、牛とフルーツのカリトロフワお好み焼き」
ゆき「か、かりとろふわ…!」
くるみ「きょうのは特大だな…」
悠里「きのう食べ過ぎちゃったものだから、ね。さ、いただきましょうか」
ゆき「いただきまーす!!」
太郎丸「わふわふ」ガツガツ
美紀「………美味しい…………!」後光ペカー
くるみ「…うめぇ……」
ゆき「……………みんな…」
悠里「ゆきちゃん、何?」
ゆき「あ、いや……その、大したことじゃないんだけど……」
くるみ「お、なんだなんだ?」
ゆき「……みんな、だいすきだよ、って…」
美紀「……なんだか、照れます」
悠里「私も大好きよ」
くるみ「あたしだって!」
美紀「…………わたしも、です」
太郎丸「わふわふ」ガツガツ
めぐ姉(頭部)「」
くるみ(…この先、どんなことがあっても……あたし達なら、乗り越えていける気がする)
くるみ(あたし達、学園生活部なら……………!)
悠里「おぼろろろろろろ」ビシャビシャ
完
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