モバP「俺の妹がこんなに邪気眼なわけがない」 (38)

もしも蘭子がPの妹だったら。どこかで誰かがやってそうなネタですが気にせずやります

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P「朝の7時」

P「いつもの時間に、いつものように妹の部屋のドアをノックする」

P「おーい、朝だぞ。起きろー」コンコン

P「………」

P「返事がないので、これまたいつものように無断で部屋に侵入」ガチャ

P「蘭子。朝だぞ」

蘭子「んにゅぅ……あと5分……」

P「お前、それ言ってちゃんと5分後に起きたためしがないだろう」

蘭子「今日は起きるからぁ……んぅ」

P「まったく。昨日も遅くまで絵を描いていたな?」

机の上に置かれたままになっているスケッチブックを手に取り、中身をパラパラと確認する。

P「なになに? 傷ついた悪姫ブリュンヒルデ? おー、ついに第二形態に進化したのか。技は――」

わざと大きな声で音読してやると、背後のベッドからどたどたと慌ただしい音が鳴り始めた。

蘭子「うわあっ!? なんで読んでるの! 勝手に見ないでっていつも言ってるでしょ!」

P「さっさと起きないほうが悪い。ま、おかげで目が覚めたろ」

蘭子「んもう」プンプン

P「だいたい、見られて困るようなものをこんな目立つ場所に置いちゃだめだろ。秘密の場所に隠すとかすればいいんだ」

蘭子「お兄ちゃんの持ってるエッチな本みたいに?」

P「そうそう……待て、なぜ知っている?」

蘭子「しーらない」

にやりと口元を歪めるわが妹。仕返しのつもりだろうか。

P「まあいい。朝ご飯できてるから、冷めないうちに食べよう」

蘭子「うん」

朝食中


蘭子「ふわぁ……」

P「眠そうだな」

蘭子「日曜日は遅くまで寝てたい……」

神崎蘭子、14歳。俺の10個近く年下の妹であり、朝に弱い。
弱いので、日曜朝のスーパーヒーロータイムは基本的に録画勢である。

P「何もないのならそれでいいんだけどな。今日は朝からレッスンの予定があるから」

蘭子「うん。覚えてる」

P「にしても、本当にお前は朝に弱いな」

蘭子「体質だし……あっ、朝に弱いのって夜の眷属っぽくない?」ウキウキ

P「日光に弱いゾンビっぽい」

蘭子「ぞっ……!? もう、お兄ちゃんのバカ!」

P「冗談だよ。怒るな怒るな」

蘭子「私がホラー系ダメなの知ってて言うんだから……あれ、お味噌変えた?」

文句を言っていた蘭子だが、味噌汁をすすったところで顔つきが変わる。

P「ああ。どうだ?」

蘭子「こっちのほうが好きかも」

P「そうか。なら次もこっちの味噌を買うよ」

とまあ、平穏そのものといった食事の風景。これが俺達兄妹の食卓だ。

半年前。俺が上京してアイドルのプロデューサーになったことを知った蘭子は、自分もアイドルになりたいと言い出して、追いかけるように東京にやってきた。

そのままあれよあれよという間に事態が進み、気づけば俺は妹のプロデュースをしている。

寝起きはローテンションだった蘭子だが、着替え終わって髪をくくれば平時の調子を取り戻す。

蘭子「ククク……我が兄よ、いざ戦場へ赴かん! (お兄ちゃん、そろそろ行こう?)」

P「おう」

ゴスロリを好むのはまあ通常の趣味の範囲と言えるが、ここまで言動が中二全開な女の子というのも珍しい。
純粋にかっこいいからという理由と、人前で普通に話すのが苦手だという理由でこんなしゃべり方になっているらしいが……横に通訳(俺)がいないとたまにコミュニケーション困難に陥るのが難点だ。

蘭子「何者が待ち受けているか(事務所、誰かいるかな?)」

P「今日いるのは……川島さんと小梅だな」

事務所にて

P「おはようございます」

蘭子「煩わしい太陽ね(おはようございます)」

ちひろ「おはようございます、2人とも。今日も兄妹仲良く出勤ですね」

P「うちの妹は大のお兄ちゃんっ子なので」

蘭子「なっ!? 偽りの言霊で場を惑わすか……!(テキトーなこと言わないでよっ)」

ちひろ「蘭子ちゃん怒ってるみたいですけど」

P「あれ、おかしいな」

蘭子「ま、まあ……すべてが偽りというわけではないが(ちょっとだけ、お兄ちゃんっ子かも)」

P「よかった」

ちひろ「かわいい妹を持って幸せ者ですね」

P「まったくです」

蘭子「………」←赤くなっている

小梅「蘭子ちゃん、おはよう……」

蘭子「おお、我が友小梅。煩わしい太陽ね!」

小梅「ねえ……こ、今度、蘭子ちゃんのおうちに行っても、いい?」

蘭子「もちろん。歓迎するわ」

小梅「や、やった……そ、それじゃあ、映画のDVD、持って行くね」

蘭子「映画か。映画……映画?」

蘭子「こ、小梅よ。その写し絵の属性は……?(ち、ちなみに映画のジャンルは?)」

小梅「お、おすすめのサイコホラーだよっ」フンス

蘭子「ひぅ……!」

小梅「……ひょっとして、ダメ?」

蘭子「うぐ……は、ハーッハッハ! 私は闇に見初められし存在、ホラーなど恐れるに足らず!(ぜ、全然大丈夫だよ!)」

小梅「そう……よ、よかった」ニコ

蘭子「(ど、どうしよう。つい勢いで)」

蘭子「(小梅ちゃんのこの顔見たら、今さら断れないよぉ)」

レッスン終わって昼休憩


蘭子「うーん」

瑞樹「どうしたの、蘭子ちゃん。浮かない顔しているけど」

蘭子「時の反逆者……(川島さん……)」

瑞樹「何かあったなら相談に乗るわよ?」

蘭子「よ、よいのか……?(いいんですか?)」

瑞樹「同じ事務所の仲間じゃない。さ、お姉さんに話してみなさい」

蘭子「う、うむ」

蘭子「そびえ立つ困難。乗り越えなければならない壁。私はどうすればよいのか……」

瑞樹「(……レッスンやお仕事で何かあったのかしら)」

瑞樹「そうね……どうしても立ち向かわなくちゃいけないのなら、やっぱり練習の繰り返しで壁を乗り越えるしかないわね」

蘭子「練習の繰り返し?」

瑞樹「その練習の時には、誰か頼りになる人と一緒にやるのがいいと思うわ。独りで頑張るよりも、誰かと一緒の方が励みになるもの」

蘭子「誰かと一緒に……」

瑞樹「ありきたりな意見だけど、参考になったかしら」

蘭子「そこへ至るための道は見えた……感謝するわ」

瑞樹「そう。よかったわ」

蘭子「(お兄ちゃん誘って一緒にホラー映画見る練習しよう)」

瑞樹「ところで蘭子ちゃん。私からもあなたに聞きたいことがあるの」

蘭子「?」

瑞樹「プロデューサーって、年上好き? それとも年下好き?」

蘭子「……はい?」

瑞樹「あくまで参考までに聞いておきたいな、と思ったの」

蘭子「は、はあ。確か、どっちでもいいと言っていたような」

瑞樹「そう。なら問題ないわね」

瑞樹「ついでにもうひとつ聞きたいんだけど、彼は朝はご飯派? パン派?」

蘭子「うちは毎朝和食ですけど……」

瑞樹「和食ね、わかるわ。私も和食派なの。気が合うわね」

蘭子「(なんだろう。この威圧感)」

瑞樹「何かあったら、また相談していいのよ? もしかすると将来私達は……いえ、なんでもないわ」

蘭子「(なんなんだろう)」

帰宅後、夕食の時間


蘭子「ねえ、お兄ちゃん」

P「なんだ?」

蘭子「誰かとお付き合いしたりしないの?」

P「どうした藪から棒に」

蘭子「たまに聞かれるの。お兄ちゃんの好みのタイプとか、今付き合ってる人がいるのかとか、あといろいろ」

P「誰から」

蘭子「川島さんとか、和久井さんとか……あと、三船さんとか」

P「へえ。なんでそんなこと聞くんだろうな」

蘭子「さあ……気になるからじゃないかな」

キリ悪いけど今日はここで中断します

蘭子「それで、お兄ちゃんは恋人とか作る気あるの?」

P「んー……そりゃあ、相手がいれば考えるけど。今は仕事で手一杯だしなあ」

蘭子「あんまり乗り気じゃないんだ」

P「妹の世話もあるしな」

蘭子「私を言い訳に使うんだ……」ジトー

P「睨むな睨むな。そっちは軽い冗談だ」

蘭子「ちなみに、事務所の人で付き合うとしたら誰がいいの?」

P「まだ続くのか、この話題」

蘭子「恋愛とか、気になる年頃だから」

P「ほう。ファンタジーな趣味ばかりかと思っていたが、一応女の子らしいところもあるんだな」

蘭子「あるんです。フフ」

P「別に誇るほどのことでもないと思うが……」

P「ええと、事務所で付き合うなら誰か、か。そうだなー」

P「………」

蘭子「………」

P「……思いつかないなあ」

蘭子「えー?」

P「だいたい、事務所の女性で親しくしてるのってほとんどアイドルばかりだし。普段からアイドルと恋愛だなんて考えもしないからな」

P「だから、強いて言うならちひろさんってことになるか」

蘭子「ちひろさんかあ……しっかり者のお姉ちゃんになってくれそう」

P「俺と結婚した場合まで考えてるのか」

蘭子「想像するのは得意だから」ドヤッ

P「違いない」

夕食後


蘭子「一応、ホラー映画のDVDを借りてきたけど……やっぱり見る気になれないなぁ」

蘭子「ホラーが苦手なのを克服するためとはいっても……」

蘭子「でも、これだと小梅ちゃんが遊びに来た時――」

ほわんほわん(妄想中)

小梅『そ、そっか……蘭子ちゃん、見られないんだ。残念……』

小梅『じゃあ……プロデューサーさん。い、一緒に、見よ?』

P『そうだな。蘭子の代わりに俺が一緒に見てやろう』

小梅『ぷ、プロデューサーさんと、2人きり……』

P『ああ、2人きりだ』

ほわんほわん

蘭子「………」


蘭子「お兄ちゃん、一緒に映画見よう!」

P「ホラーに慣れる練習?」

蘭子「うむ」

P「そうか。苦手なものを克服しようとするその意気は買うぞ。早速部屋を暗くして再生だ」

蘭子「………」ドキドキ

P「まだ提供の画面なのに手をつかむの早すぎないか?」

蘭子「い、いいでしょ別に!」

う、ウウウ……(←ゾンビがうごめく声)

蘭子「………」バクバク

P「………」

ウオオオォオオオ!!(←ゾンビが襲いかかってくる声)

蘭子「きゃあああ!!」


P「うぎゃあああああ」

蘭子「って、なんでお兄ちゃんまで怖がってるの!?」

P「よく考えたら俺もホラー駄目だった!」

蘭子「ええっ!?」


ギャアアアアア!!(←一般人がゾンビに襲われる声)


蘭子「きゃああああ!!」ダキッ

P「うぎゃあああああ」ダキッ

スタッフロール流れる


蘭子「……お、終わったぁ」

P「お互い叫び疲れて抱き合って、何がなんだかわからなかったな……」

蘭子「ストーリーとか全然頭に入ってないよ……怖いシーンを飛び飛びでしか覚えてないよ」

AM0:15


P「今日も疲れたな。ゆっくり寝て休もう」


蘭子「………」ソワソワ

P「……なんで俺の部屋にいるんだ」

蘭子「映画、思い出して……」

P「まさか、ひとりじゃ寝られないとか言うつもりか?」

蘭子「うう」

P「……しょうがないな。今日だけだぞ?」

蘭子「ありがと……」

P「かくいう俺も、実は怖くてなかなか眠れそうになかったんだ」

蘭子「……頼りないお兄ちゃん」

P「頼りなくても、いないよりはマシだろ?」

蘭子「うん。……おやすみ、お兄ちゃん」

P「おやすみ」



後日。
なぜか川島さん達からホラー映画を見ないかと頻繁に誘われるようになったのだが、それはまた別のお話。


おしまい

お兄ちゃんに遠慮のない蘭子が書きたかった。以上

お付き合いいただきありがとうございました。

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