【デレマス×デジモン】二宮飛鳥「小さな冒険」 (30)

 201X年。
 世界中の多くの人間が、パートナーデジモンを持つ時代。
 それは、日本が誇る大手芸能事務所である346プロに所属するアイドル達も例外ではなく。
 多くのアイドル達がパートナーと共に、助け合い、励ましあいながら、日々のアイドル活動に精を出していた。


飛鳥「おはよう、プロデューサー」

P「お? ああ、おはよう。飛鳥。今日は随分と早いんだな」

P「確か、今日は朝からの予定は入っていなかったはずだけど……」

飛鳥「……実は、少しキミに相談したいことがあってね」

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P「相談? ……場所を変えたほうがいいか?」

飛鳥「いや、別にここで構わないよ。別に、誰かに聞かれたからって困る話じゃないしね」

P「それならいいんだが。……で、一体何について相談したいんだ?」

飛鳥「……今朝、ボクが目を覚ました時、枕元にこんなものが落ちていてね」

P「ん? これは……」

P「デジヴァイス……それも、D-3タイプか。これが枕元に落ちてたってことは……」

飛鳥「ああ──どうやら、遂にボクの元にもパートナーデジモンが来るらしい」

P「そうか……よかったな、飛鳥。おめでとう」

飛鳥「ありがとう。……あの、プロデューサー? そんな生温かい瞳(め)で見つめられると、その……恥ずかしい、んだけど……」

P「いやあ、本当に良かった。だってお前、ほかのアイドルとデジモンがじゃれあってる姿を、いつも羨ましそうに眺めてたものなあ……いやあ、本当にめでてぇなあ」

飛鳥「ちょ、ま……き、キミがな、なな何を言っているのか、ぼ、ボクには理解りかねるね……」

飛鳥「だ、大体ボクだってそんな幼子ではないんだ。他人(ヒト)のモノを物欲しげに見つめるだなんて子供じみた真似、する訳がないだろう」

飛鳥「そもそもボクは、デジモン自体がそれほど好きでは──」ドサッ

P「お、ポケットから何か落ちたぞ」ヒョイッ

飛鳥「あ、そ、それは……!」

P「……デジモンアドベンチャー。著、高石タケル……」

P「ふうん……」

P「……デジモン自体が……なんだって?(ニヤニヤ」

飛鳥「そ、それは、その……そう、拾い物! 拾い物だから……!」

P「裏表紙にひらがな……それも、子供の丸文字で『にのみや あすか』って書いてあるのにか?」

飛鳥「……キミの目敏さがこういう時ばかりは憎らしく感じるよ」

P「……こんなにでっかく書かれた字、見逃す方が難しいわ」

P「まあいいや。珍しく狼狽しているお前をこのままいじり倒すのも楽しそうだが、そろそろ本題に戻ろう」

飛鳥「……後で覚えてなよ、プロデューサー」

P「おお、怖い怖い」

P「んで、相談したい事ってのは……そうだな。パートナーをデジタルワールドまで迎えに行くための付き添いを、俺に頼みたい……って、ところか?」

飛鳥「……ご名答。驚いたよ、まさかこの短い問答の中で、ボクの真意を見事に見抜いてみせるとは」

P「デジヴァイスは手元にあるのにパートナーを連れてる様子がないって時点でおおよそ見当はついてたけどな」

P「大抵の場合、デジヴァイスとパートナーはセットで現れるものだが……たまにあるんだよな。こういう風に、デジヴァイスだけが手元に飛んできて、パートナーはデジタルワールドで待ちぼうけってパターン」

P「かくいう俺もそのクチだったし」

飛鳥「へえ……そうだったのかい?」

P「ああ。まあ、俺の場合はお前みたいに身近な大人に相談したりせず、一人でデジタルワールドに乗り込んだけどな。いやあ、あの時は本当に若かった」

飛鳥「……ふうん。子供のころのキミって、随分と向こう見ずというか……怖いもの知らずだったんだね? 今のキミからは想像もつかないけれど」

P「……大人になるってのは、つまり臆病になるってことなんだよ」

P「まあ、いいぜ。お前のお願い、引き受けてやるよ」

飛鳥「いいのかい? 自分から頼んでおいてなんだけど、キミだって決して暇ではないのだろう?」

P「まあな。でもまあ、可愛い可愛い担当アイドルの頼みだ、無下にするわけにもいくまいて」

飛鳥「……よくもまあキミはそんな歯の浮きそうな台詞をこうも臆面もなく吐けるね」

飛鳥「……よくもまあキミはそんな歯の浮きそうな台詞をこうも臆面もなく吐けるね」

P「この程度の台詞で恥ずかしがってるようじゃ、芸能界では生きてけねーよ」

P「それはさておき……確か、明後日は一日オフだったよな、お前。特に予定が入っていないようなら、その日にデジタルワールドに行こうと思うんだが、構わないか?」

飛鳥「ああ、大丈夫だよ」

P「ん。それじゃ、俺もその日空けておかなくちゃな」

P「しかし、飛鳥よ」

飛鳥「? なんだい?」

P「デジタルワールドへ行くのに大人の付き添いが必要ってんなら、俺よりもよほど頼りになる大人たちがこの事務所にはたくさんいると思うんだが……なんで、俺を選んだんだ?」

飛鳥「……それを女の子の口から言わせるつもりかい? だとしたら、随分とデリカシーに欠けているね、キミは」

P「…………」

P「……はあ。まったく……一体、俺なんかのどこがいいんだか」ガシガシ

飛鳥「さーてね。こういうのは理屈じゃないって、キミだって理解っている筈だろう?」

飛鳥「じゃあ、ボクは一度寮に戻るよ。明後日に備えて色々と準備を始めないといけないから、ね」

P「了解。気を付けて帰れよ?」

飛鳥「徒歩五分の道程で、一体何に気を付ければいいのやら。ま、キミの心遣いはありがたく受け取っておくよ」

飛鳥「それじゃ、また後で」

P「おう、またな」

─翌々日─

飛鳥「……ふあぁ……眠……」

飛鳥(……昨晩は、よく眠れなかったな)

飛鳥(翌日の事が楽しみすぎて中々寝付けないだなんて……小学生でもあるまいに、一体何をやっているんだろう、ボクは)

飛鳥(……まあ結局の所、ボクも所詮はただの子供、って事なんだろうね)

飛鳥(全く。こんなカッコ悪い所、Pに気取られる訳には──……)

P「……随分とお眠みたいだな、飛鳥」

飛鳥「ひっ!?」ビクゥッ

飛鳥「ぷ、プロデューサー? い、いつの間にそこに……」

P「いや……結構前からすぐ目の前に立ってたんだけど……まさか気づかれてすらいなかったとは、な」

飛鳥「あ、ああ……すまない……ん、キミは……」

???「久しいな、二宮飛鳥よ。その目の下の隈を見るに、昨晩は高揚感と緊張感のあまり熟睡することが出来なかったようだが、お加減は如何かね?」

飛鳥「ああ、うん。久しぶり……えっと、ガオモンだっけ。前に会ったのは去年事務所でやったプロデューサーの誕生会の時だったかな?」

ガオモン
世代:成長期
型:獣型
属性:データ種
両手のグローブで成長過程の爪を保護している獣型デジモン。
必殺技は、俊敏な動きから高速の連続パンチを放つ、ガオラッシュだ!



ガオモン「うむ。俺の記憶に間違いがなければ、そうであろうな」

ガオモン「この度はこの俺が貴殿のボディガードの役目を務める事になった。短い間だが、よろしく頼む」

飛鳥「ああ、こちらこそよろしく」

P「……さてと。それじゃあ早速出かけるとするか」ゴソゴソ

飛鳥「……ノートパソコン?」

P「ああ。これの画面にデジヴァイスをこうやって掲げる事で──」キィィィン

飛鳥「異界への扉……デジタルゲートが開く、と」

P「そういう事だ」

飛鳥「……なんだか実感が湧かないな。このパソコンの小さい画面が、ボクの知らない『世界』へと繋がっている、だなんて」

P「誰だって最初はそんなもんさ。俺だって、初めてデジタルワールドに行った時には、同じような事を考えたよ」

P「……っと、どうやらゲートは完全に開いたみたいだな。それじゃあ、早速──」

飛鳥「…………っ」

P「……おいおい、何そんなに緊張してるんだよ、お前らしくもない」ギュッ

飛鳥「あっ……」

P「あんまり気ぃ張るなって。あっちに付くまで、ずっと手ぇ握っててやっからさ」

飛鳥「プロデューサー……」

飛鳥「……ありがとう」

P「……なーに、気にすんなって。担当アイドルのメンタルケアも、プロデューサーの仕事だからな」

P「……それじゃ、行こうぜ。お前のパートナーが待ってる──」




P「──デジタルワールドへ!」

─ファイル島・森の中─

飛鳥「ここが……デジタルワールド……」

飛鳥(……ボク達の周囲には、これまでの人生の中で一度も実際には目にした事のない、不思議な見た目の植物)

飛鳥(ふと空を見上げれば、そこには空を悠々と飛翔する、恐らくは野生のクワガーモンが──……)

飛鳥「……凄い、な。ここは本当に……ボクが住んでいた世界とは違う……正真正銘の、異世界なんだ……」

P「……おーい、飛鳥。感傷に浸るのも結構だが、そろそろ出発しようぜ」

ガオモン「確か、明日は早朝から仕事があるのであろう? まだまだ日没まで時間はあるとはいえ、翌日に疲れを残さない為にも早め早めの行動を心がけねば……」

飛鳥「……ん。理解ったよ」

飛鳥「しかし、パートナー探し、か」

飛鳥「これだけ広い世界の中からたった一匹のデジモンを探し出そうだなんて、とても気の遠くなる話だけれど……闇雲に探す以外に何かいい手段はないのかい?」

P「んー、まあ……ぶっちゃけるなら……勘、かな」

飛鳥「……勘って、そんなアバウトな」

ガオモン「……選ばれし子供とそのパートナーは、お互いに本能で引き合いあうものだからな」

ガオモン「互いが互いの存在を強く望みさえすれば、貴殿の胸の内に、自ずとパートナーの元へ続く道程が浮かんで来る事であろうよ」

飛鳥「ふうん。互いが互いの存在を、ね……」

飛鳥「…………」

……飛鳥──……


飛鳥「……! ……今……誰かが、ボクを、呼んだ……ような……」

飛鳥「……こっちか!」カカカカッ

P「おい、ちょっと待て、飛鳥!」

ガオモン「……何をやっている、P。さっさと追いかけるぞ」ダッ

P「言われなくてもっ!」トンズラッ

飛鳥(……漸く、会える)

──え? あすかちゃんってまだパートナーいないの?

──みてよ、ぼくのアグモン! すごくかっこいいでしょ!

──ねえ、二宮さん。今度私達と一緒にデジタルワールドに……え? あ、そうなんだ。ごめんね、そうとは知らずに誘っちゃって……

飛鳥(会えるんだ──子供の頃からずっと夢見てきた、ボクの……パートナーに──!)




P「止まれ──いや、しゃがめ、飛鳥ァァァァァァ!」



飛鳥「え──? って、うわっ!」スッテンコロリン

飛鳥「……痛ぅ……」

ガキンッ!

飛鳥「……何? 今の、お、と──……」

「…………」

飛鳥「…………」

「…………」

飛鳥「クワガー、モン……?」



クワガーモン
世代:成熟期
型:昆虫型
属性:ウィルス種
頭に大きなハサミを持つ昆虫型デジモン。
必殺技は、頭のハサミで敵をバラバラに引き裂く、シザーアームズだ!

P「このっ……飛鳥から離れやがれ、この虫野郎! いけ、ガオモン!」

ガオモン「ぬぅん!」

バキッ

クワガーモン「…………」

ガオモン「……怯みすらしない、だと?」

クワガーモン「──!」ハサミブゥン

ガオモン「うおっ!」

P「大丈夫か、ガオモン!」

ガオモン「うむ。大事はない。だが、こいつ……」

P「……ああ。いくら世代が一つ違うとはいえ、お前の攻撃を受けても身動ぎ一つしないとは……」

クワガーモン「…………」ギロリ

P(……とりあえず、タゲをこっちに向ける事には成功した、か)

P「……飛鳥!」

飛鳥「…………」

P「飛鳥っ!」

飛鳥「! ……な、なんだい、プロデューサー」

P「ここは俺たちが食い止める! お前は急いでどこかのゲートから現実世界に戻るんだ!」

飛鳥「な、何を言って……!」

P「いいから、早くしろ!」

飛鳥「っ……! ごめん、プロデューサー!」カカカカッ

P「…………」

ガオモン「…………」

P「……行ったか」

ガオモン「そのようだな」

クワガーモン「…………」

P「……行くぞ、虫野郎! 俺の可愛いアイドルに手を出そうとした報い、受けやがれぇ!」

P「ガオモン、進化だ!」

ガオモン「う、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」

飛鳥「はぁっ……はぁっ……!」

飛鳥(……ボクは、本当にバカだ)

飛鳥(……一人で勝手に浮かれて、舞い上がって……)

飛鳥(そのせいで、自分の身を危険に晒すだけでなく……プロデューサーにまで、迷惑を掛けてしまった……)

飛鳥「はぁっ……はぁっ……」

飛鳥「…………ふぅ」

飛鳥「……というか、さ」

飛鳥「プロデューサーは、どこかのゲートから現実世界に戻れ、って言ってたけれど……」

飛鳥「……ここは、一体何処なんだ?」

飛鳥(……見渡せど見渡せど、目に映るのは青々と茂る草木だけ)

飛鳥(確か、デジタルワールドには、色々な所にテレビやPCモニタを模した機械が設置してあって……それが現実世界へ繋がるゲートの役割を果たしている、そうだけど)

飛鳥「…………落ちてない、よね。どこにも……」ヘナヘナ…

飛鳥「…………」

飛鳥「……プロデューサー……」グスッ

ガサ、ガサガサッ

飛鳥「ッ! だ、誰だ!?」

ガサガサガサッ

飛鳥「──……っ」

ガサッ

「飛鳥ぁぁぁぁッ!」

飛鳥「ふ、ええっ!?」

「ああ、本物だ。本物の飛鳥だ! 夢じゃない!」

飛鳥「き、キミは……一体……どうして、ボクの名前を……」

飛鳥「ん? ……デジヴァイスが光っている……?」

飛鳥「もしかして……キミは……ボクのパートナー、なのか?」

「うん!」シッポフリフリ

飛鳥(かわいい)

飛鳥「そうか……キミが……」ナデナデ

飛鳥「……きっとキミはボクの事を知っているのだろうけど、一応自己紹介しておこうか。ボクの名前は飛鳥。二宮飛鳥だ。……キミの名前は?」

クダモン「私はクダモンだよ。よろしくね、飛鳥!」

クダモン
世代:成長期
型:聖獣型
属性:ワクチン種
聖なる薬莢にその体を常に巻きつけている聖獣型デジモン。
必殺技は、身体をなんか回転させながら薬莢ごと叩きつける『弾丸旋風』だ!



飛鳥「ああ。こちらこそよろしく、クダモン。キミにこうして出会うことが出来た事を、とても嬉しく思うよ」ギュッ

クダモン「えへへへ……」

飛鳥「ふふっ……」ナデナデ

飛鳥「……って、和んでる場合じゃない! 早く、プロデューサーの所に戻らないと……っ!」

クダモン「ふぇ? プロデューサー? ……誰?」

飛鳥「…………」

飛鳥「……ボクの、大切な人だ」

クダモン「…………」

飛鳥「…………」

飛鳥「……頼む、クダモン」

飛鳥「まだ会ってから間もないのにこんな事を頼むなんて、虫のいい話だって事は理解ってる」

飛鳥「プロデューサーを助けるのに、手を貸してくれ……お願いだ……!」

クダモン「…………」

クダモン「……いいよ。飛鳥の大切な人だったら、私にとっても大切な人だもん」

飛鳥「……ありがとう、クダモン」

クダモン「お礼は後々! まずはそのプロデューサーって人の事を助けなきゃね!」

「うおおりゃああ!」

P「いいぞ、レオモン! そのまま力で押し込んでやれ!」

レオモン「相変わらず無理難題を押し付けてくれるな、我がパートナーはっ!」



レオモン
世代:成熟期
型:獣人型
属性:ワクチン種
強靭な精神力と正義感が両方そなわり最強に見える、獣人型デジモン。
必殺技は、拳から獅子型の闘気を放つ、獣王拳だ!



レオモン「ておおおおおおおおお!」

クワガーモン「────!」

P「今のところ、戦況はほぼ互角……いや、若干こっちが不利か。せめて味方がもう一人居てくれれば……」

クワガーモン「──ッ!」ブゥン

レオモン「ぐ、おっ!?」ドスンッ

P「! レオモン!」

レオモン「しまった、マウントポジションを──!」

クワガーモン「────ッ!!」

レオモン「ぐぅ、最早ここまでか……!」




「弾丸旋風!!」



クワガーモン「──!?」

P「! クワガーモンの動きが止まった! ──今だ、レオモン!」

レオモン「うおおおおおお! 獣王拳!」

クワガーモン「!!」

ズゥゥゥン…ドサッ

クワガーモン「」

P「……やった、か?」

レオモン「……さあな。とりあえず、暫く動く様子はなさそうだが……」

P「……ところで、さっき飛び込んできたデジモンは……」

クダモン「呼んだー?」ニョキッ

P「うおあっ!? い、いつの間に背後に……」

ガサガサッ

P「! 新手か!?」

レオモン「いや……違うようだぞ」

ヒョコッ

飛鳥「プロデューサー!」

P「飛鳥!? お前、何でここに……」

飛鳥「何でもなにも……キミを放って逃げるなんて……そんな事、出来るわけがないだろう」

飛鳥「……本当に、無事で良かった」ギュッ

P「……ったく。いつもこれくらい素直なら可愛いのにな、お前」ポンポン

P「で……もしかしなくても、お前は飛鳥のパートナーデジモン……なんだな?」

クダモン「うん! クダモンだよ! よろしくね、プロデューサーさん!」

飛鳥「……本当に、ありがとう。キミが居てくれたお陰で……ボクは、大切な人を失わずに済んだ」

P「俺からも礼を言わせてくれ、クダモン。本当に助かった……さっきは本気で終わったかと思ったよ」

レオモン「……うむ。助太刀、感謝する」

クダモン「へへへ、どういたしまして!」フンス

P(かわいい)

飛鳥(かわいい)

クダモン「ちょ、二人とも! 同時になでなでするのはやめてよ! もうっ……」

レオモン「……ふっ」

ギチ…ギチギチ…

レオモン「────!」バッ

クワガーモン「…………」ギチギチ…

P「ん? どうした、レオモン……って……」

P「こ、こいつ……もう目を覚ましやがったのか!」

飛鳥「……っ!」

クダモン「むぅ! 人が折角気持ちよくなでられてる所を邪魔するなんて! マジで空気読んでよ、あんた!」

クワガーモン「…………」

レオモン「…………」

クワガーモン「…………」ブゥゥゥゥン

飛鳥「あ……」

クワガーモン「…………」クワガーモンインザスカイ

P「飛んで……逃げていった……?」

飛鳥「……みたい、だね」

飛鳥「……あっ」フラッ…

P「! どうした、飛鳥! 大丈夫か!?」ガシッ

飛鳥「……腰が」

P「……え?」

飛鳥「腰が……抜けた……」

P「…………」

P「……よっこいしょっと」グイッ

飛鳥「ちょ、何をっ……!」

P「何って……腰が抜けちまったってんなら、こうやって抱きかかえて運んでやるしかねーだろうが」

飛鳥「そ、それはそうだけど……何でよりによってお姫様抱っこを……」

P「趣味」

飛鳥「趣味!?」

P「さーてと。このエリアのデジタルゲートは、どの辺に落ちてたっけかなー」

飛鳥「ちょ、ちょっと待ってくれ、プロデューサー。この格好のまま事務所に戻るのは、色々な意味で不味いというか──!」

クダモン「本当に仲が良いのね、あの二人」

レオモン→ガオモン「……そうだな」

クダモン「ふふ……私達も仲良くやっていきましょ?」

ガオモン「御意に」

飛鳥「ああもう、頼むから……話を聞いてくれ────っ!」

─数日後─
─346プロ・交流室─

飛鳥「ふふ……キミは本当に可愛いね、クダモン」ニヘラ

クダモン「えへへ……」

飛鳥「ふふ……ふふふ……」モフモフ

クダモン「もう……くすぐったいよ、飛鳥ぁ……」

幸子「……何というかまぁ。こないだパートナーを連れて事務所に来た時からこっち、雰囲気が随分と柔らかく……というか、歳相応に子供っぽくなりましたね、飛鳥さん」

光「まー……それだけ、自分だけパートナーデジモンがいないって負い目が、人格形成に大きな影響を与えてたってことなんだろうなぁ」

幸子「しかし。キャライメージ的にどうなんですかねぇ、あれ。あんな緩みきった状態でテレビやらに出演したら、今まで積み上げてきたミステリアス()で底の浅い厨二病キャラとしての実績がカカッっと骨になりますよ?」

光「ま、その辺は多分大丈夫じゃないか? 何だかんだで飛鳥はプロ意識が幸子にも負けないくらい強いし、仕事の時は今まで通りのキャラを通してくれると思うぞ」

幸子「ならいいんですけどねぇ」

P「……お、お前ら全員揃ってるな?」

幸子「まったくもう、遅いですよプロデューサーさん! ボクを呼び付けておきながら約束の時間を5分もオーバーするなんて!」

光「まぁまぁ、落ち着きなよ幸子。……で、プロデューサー。アタシ達をこうやって呼び出したって事は、何か仕事の事で話があるってことなんだよな?」

P「ん、おう。その通りだ。……というか、飛鳥。いい加減クダモンをモフるのをやめて、こっちに来なさい」

飛鳥「ふふふ…………え? プロデューサー? い、いつからそこに……」

P「……あのなぁ。パートナーが出来て嬉しいのはわかるけど、最近のお前はちょっと緩み過ぎだぞ?」

飛鳥「……ごめんなさい」シュン

P(かわいい)キュンッ

P「ま、まぁ、仕事場ではちゃんとやってるようだからあんまり煩くは言わねーけどな。……それでまぁ、お前ら三人を呼び出したのは……この企画について説明する為だ」

光「……デジモンアドベンチャー聖地巡礼ツアー?」

幸子「へぇ……8人の選ばれし子供達が実際に立ち寄った場所を実際に旅して回る企画……ですか。カワイイボクにはピッタリのお仕事ですね!」

飛鳥「……ふうん。旅の様子は、映像や旅行記という形で、メディア化されるのか……」ペラ…

飛鳥「…………」

飛鳥「……えっ!?」

幸子「……どうしたんですか、飛鳥さん。そんな血相を変えて……」

飛鳥「こ、これ……!」

光「ええっと、なになに……『ガイド兼旅行記執筆担当高石タケル』……プロデューサー! こっ、これは本当か!?」

P「本当もなにも、仕事の資料に嘘を書くわけねーだろ」

飛鳥「…………」ジーン

幸子「よかったですね、飛鳥さん。……憧れの人、なんでしょう?」

飛鳥「……うん」

P「…………」

P「……んじゃまあ、企画についての詳しい資料は明日渡すから、今日の所はとりあえず解散で」

P「確かお前ら三人はこの後特に予定が入ってなかった筈だし、これから苦楽を共にする仲間同士、親睦を深めるなりなんなりしといてくれ」

三人「はい!」

P「ん。いい返事だ。……それじゃあ、俺はこれで失礼するよ」

ギィィィ…バタン

クダモン「ねえねえ飛鳥! 私、飛鳥と一緒に冒険できるんだよね!」

飛鳥「ああ。そうみたいだね」

クダモン「やったぁ! 私、ずっと夢だったんだ! パートナーと一緒に、デジタルワールドを旅するの!」

飛鳥「ふふ……ボクもだよ、クダモン」

クダモン「えへへへへ……あ、幸子と光もよろしくね!」

幸子「はい。勿論です」

光「よろしくな、クダモン!」



──あ、そうだ。クダモンさんに、ボク達のパートナーを紹介しなくちゃですよね。

──ん、確かにそうだな。それじゃあ……とりあえず一度寮に戻ってから、それぞれのパートナーを連れて事務所の前に集合で!

──ああ、理解った。

──あぁ、そういえばボク、この前仕事帰りにいい感じのデジモンカフェを見つけて──……

…………

……




 斯くして、少女の小さな冒険は一先ずこうして終わりを告げ──新たな冒険の扉が、静かに開き始めていた。
 
 そして、彼女らの旅路には、決して容易には乗り越えられない巨大な困難が立ち塞がる事になるのだが──それはまた、別のお話。



おわり

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