久「私について、皆が知っていること」 (184)

・『咲-Saki-』の竹井久中心のssです。
・久は大学一年生になってます。
・時々安価があります。
・遅筆です。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1430583331

【視点:愛宕洋榎】


微かな物音で目が覚めた。隣で眠っていたはずのあいつはいつ起きたのか、もうすっかり身支度を済ませて、カバンをごそごそやっている。


洋榎「もう行くん…?」


声をかけると、あいつは振り返った。


久「あら、起こしちゃった?」

洋榎「そういや今日は早いんやったっけ」

久「ええ。…寝かせておこうかと思ったけど、丁度良かったかも」

洋榎「何が」


久は冗談めかした仕草で手を差し出した。


洋榎「ああ。忘れてたわ」


引き出しを開けて手探りで封筒を取り出す。


洋榎「これな」

久「ありがと。悪いわね」

洋榎「これっぽっち、何でもあらへんわ」


久が大阪に来てまた戻るための交通費は、うちが持つことになっている。ま、新人とはいえ稀代のプロ雀士であるうちにはちょろい額や。


久「次は再来週だったかしら」

洋榎「せやな。もっと会えたらええんやけど」

久「シーズンに集中しなさいよ、大型ルーキー」

洋榎「わかっとるわ!ちゃんとテレビで見とけよ、うちの大活躍」


久は笑って、ベッドの上で身体を起こしたうちに抱きついた。その感覚が心地良くて、だからうちはまた訊きそこねる。



洋榎(なあ、久)

洋榎(本当はもうここに来るの、嫌なんやないか?)

洋榎(自分はいつも笑っとるけど、だからこそ不安になる)

洋榎(だって久、あの時は、泣いてたやろ…?)

○視点安価

・原村和
・宮永咲
・染谷まこ
・福路美穂子
・加治木ゆみ
・愛宕洋榎
・滝見春
・藤田靖子

の中から1人選んでください。選択肢は後々変動すると思われます。


↓2

【視点:染谷まこ】


清澄高校を卒業してからの久は、一気に遠い人になってしもうた。



久『じゃあまこも来年こっち来ればいいじゃない』

まこ「部活も店の手伝いもあるっちゅうに、あんたのとこみたいな難しい大学受からんわ」


しかも麻雀推薦もない。…仮に枠があったとしても、わしに回ってくるのかはわからんが。


久『私だって部活と学生議会しながら受験勉強したのよ?』

まこ「…だからって誰にでもできるわけじゃあなかろう」


気づいとらんかっただけで、最初からわしなんぞには手の届かない人間だったんじゃろうか。

…正直そうは思えん。まだちぃと荒れとった頃の久と、うちの店で出会って。同じ高校に入って、二人きりの麻雀部をやって。


まこ(…そして皆で、全国に行った)


振り返れば、夢のような時間じゃった。わしよりもあの大会に思い入れていた久なら、尚更じゃろう。


久『別に同じ学校じゃなくてもさ、東京には大学なんていくらでもあるのよ』


受話器からの声に、現実へ引き戻される。


まこ「ほ、ほうじゃな。でもわしゃあ、地元で十分じゃ」


それは本心じゃった。それどころか、進学はしないということも考えとった。…それに。


まこ「今はまだ、進路とか考えられないんよ」

まこ「和が抜けてもうて、ムロが入部してくれてもまだ団体戦には人数が足りん」

まこ「もし誰か入ってくれても、県予選で勝てるレベルにするのは骨が折れそうじゃけえのう」

久『今年はもっと新入部員が来ると思ったんだけどね…。前年度準優勝で、かえって敷居が高くなっちゃったのかしら』

まこ「ほうじゃのう」


それからは他愛のない話をしばらくして、時間が遅くなったから電話を切った。


まこ(そういえば今日も、全然自分の話はせんかったのう、久の奴は)


○視点安価

・原村和
・宮永咲
・染谷まこ
・福路美穂子
・加治木ゆみ
・愛宕洋榎
・滝見春
・藤田靖子

の中から1人選んでください。選択肢は後々変動すると思われます。


↓2

なぜか同名のスレが立っていますが、こことも私とも関係ありません。

【視点:藤田靖子】



靖子「お前、麻雀部辞めたのか?」

久「辞めてないわよ。たまには行ってる」

靖子「じゃないとインカレには出にくいからな」

久「まあね。でももう団体戦は諦めてるわ。あそこまで向上心がないとは思わなかった」

靖子「大学のサークルなんてそんなもんだ。嫌なら最初から強豪に行けばよかっただろ」

久「私の打ち方って、普通の指導者には嫌われると思うのよねー。先輩や後援会が強いのも窮屈そうだし」



久はごろりと寝返りをうって、蒲団を引き寄せた。そうしてため息をつく。



久「正直、失望はしたわ。でもこれくらいは想定してたのよ」

靖子「だろうな」

久「ネト麻だって練習になるし、個人的に打ってくれる知り合いも沢山いる」

久「自分がしっかりしていれば、充分続けられるわ」


部屋の中は暗い。照明のスイッチも遠いから、私も久も面倒で点けに行かない。
久は私に背を向けた状態から、仰向けへと姿勢を変えたが、表情まではよく見えない。

…と思っていたらまた寝返りをうって、今度は私の方を向いた。


久「というわけでヤスコ、お金」

靖子「…お前本当しっかりしてるよな」

久「払いたくなかったら、別にいいのよ?」

靖子「例のアレだろ?ガキの馴れ合いに混ざるくらいなら払うさ」

久「そう」

靖子「つーかお前も、いつまでやるんだ」

久「知らないわ」


靖子「…昨日、外でお前を見かけたよ。気づいたか?」

久「そんな昔のことは忘れたわ」

靖子「ちなみに、明日の予定は」

久「そんな先のことはわからないわ」

靖子「そのネタ通じる奴いるのかよ」

久「さあ」


久は声を立てずに笑った。…いや、本当は笑っていなかったのかもしれない。
何せ部屋は暗かったからな。





[視点選択肢に、『瑞原はやり』が追加されます。]

○視点安価

・原村和
・宮永咲
・染谷まこ
・福路美穂子
・加治木ゆみ
・愛宕洋榎
・滝見春
・藤田靖子
・瑞原はやり

の中から1人選んでください。前に選んだキャラクターでも大丈夫です。
選択肢は後々変動すると思われます。


↓2

和で了解しました。
じゃあ今後連投は5分置きってことで。

人いなくてちょっと寂しい…

【視点:原村和】


昨年のインターハイで、清澄高校は惜しくも団体優勝を逃しました。
どこが勝ってもおかしくない、厳しい戦いでした。

控え室に戻ってきた咲さんは、申し訳なさそうで、悔しそうで、…でも、笑っていました。


(強い人たちと闘えて楽しかった)

(皆とここまで来られてよかった)


そして、咲さんは、私に耳打ちしました。


「お姉ちゃんとも、仲直りできそうなんだ。本当によかったーー…」


それを聞いた時、私の中で何かが弾け飛びました。


優勝できなければ意味がない、優勝できなかったから私はもうここにいられない。
それなのにヘラヘラして、よかった、なんて。
そう、私は何も知らなかった咲さんに食ってかかったのです。


麻雀はランダム要素の強い競技。そう言いながらも、心のどこかで私は、自分に個人戦で優勝できるだけの力がないことに気がついていました。
だから、(もうお終いだ)と、その思いで、私はいっぱいでした。

戸惑う咲さんをめちゃくちゃに引っぱたき、部長と染谷先輩に引き剥がされ、優希と須賀くんに怒られ。
そして私たちは、バラバラになりました。
個人戦には集中できず、予想よりも早くに敗退しました。



私は東京の進学校の編入試験に合格し、一年の秋から通い始めました。同時に国立難関校の法学部を志望校に定め、大手の予備校にも登録しました。
しかしインターハイ後の取材はほとんど断ったにも関わらず、私の知名度は思った以上に高まっていて、周りの生徒はなかなか私を放っておいてくれませんでした。
取り囲まれ、質問攻めにされるのがわずらわしく、結局私は予備校を辞めました。


しかし、そうすると私の成績は下がり始めました。都会でいう進学校とは、学校からの負担を抑え、予備校に通うことを奨励する場所。
学校の教材だけを勉強していては、上位の成績をキープすることはできないのです。

それに気がついたものの、正直もう予備校は懲り懲りでした。それなので有名予備校が出している参考書だけを購入しましたが、思った以上に難しく、一人ではなかなか捗りません。
見かねた親が家庭教師をつけることを思いつき、どこかに依頼を出したようでした。

そして2、3週間後。




恵「今日、家庭教師の人が来ることになっている」

和「そうでしたね。大学生の」

恵「プロの教師もいるらしいが、受験を終えたばかりの学生のほうが、却って良いかと思ってな。お前の志望校の一年生だ」


その頃の私は人づきあいというものが面倒になってきていて、家庭教師を雇われることも余計なお世話だと心の中では思っていました。



和(問題集だって、何とか一人でできないことはないのに…)




ピンポーン




恵「来たようだな。まずは私から挨拶するから」

和「はい」




ガチャ


「こんにちはー」




和「…え?」


応対する父の後ろで、私は硬直していました。
赤みのある癖毛。程よく張りのある声をした、背の高い女性。彼女は父と簡単な挨拶をすませ、真っ直ぐに私を見ました。

目が熱くなるのがわかりました。



久「原村和さんよね。竹井久です。これからよろしくね」



よくも募集を見つけて、採用されたものです。出身高校は聞かれなかったのでしょうか。
父も母も麻雀は頭から馬鹿にして、私のインハイの試合すらろくに見ていませんでしたから、部の先輩のことなんて知らなかったでしょう。
それでも清澄の卒業生だと言えば、さすがに警戒されたはずです。
…悪待ちの得意なこの人らしい、なんて。



和(そんなオカルト、ありえません)



父は書斎に戻り、私は彼女を先導して自室に向かいました。部屋に入って、ドアを閉めようとしたのですが、その時彼女が懐かしそうに微笑んだのを見て、もう駄目でした。


私は彼女に思いきり抱きついて、子どものように、長い時間泣きじゃくり続けました。

○視点安価

・原村和
・宮永咲
・染谷まこ
・福路美穂子
・加治木ゆみ
・愛宕洋榎
・滝見春
・藤田靖子
・瑞原はやり

の中から1人選んでください。前に選んだキャラクターでも大丈夫です。
選択肢は後々変動すると思われます。


↓2

やっぱり人いませんねー。
一旦お休みにして、18時からになってから2番目の安価を採用することにします。

【視点:瑞原はやり】


もともと知り合いだったわけじゃない。でもその子のことは知っていたし、多分むこうもわかるだろうと思った。
話しかけると予想通り、彼女は目を丸くした。



久「瑞原プロはお仕事ですか?」

はやり「今終わったところ。竹井さんはこれから?」



雀士のタレント化は最近ますます顕著になっている。インハイ後は高校生選手の特集もたくさん組まれて、私も追いきれないほどだった。
…特に今年度は、前から人気のあった原村和ちゃんが取材を拒否するようになっちゃったから、枠を用意していた人たちが慌てて色んな選手にオファーを出したらしい。

竹井さんも、個人としての露出は少なめだったけれど、いくつかのメディアに出ていたはずだ。準優勝校の部長としてのインタビューを合わせれば、もっといっぱい。



久「ええ。…といっても、大したことじゃないんですけど」

はやり「はや?」

久「前に取材してもらった記者さんの関係で声を掛けてもらって、ファッション誌の読者モデルをすることになったんです」

はやり「はやや、すごーい」

久「いえ、雑誌のメインには専属モデルがちゃんといますから。読モはそんなに出番ないんですよ」



まるっきり一般人です、と、竹井さんは恥ずかしそうに笑った。




はやり「もっと出たい?」

久「え?」

はやり「雑誌とかテレビとか、竹井さんはもっと出てみたい?」

久「…わかりません。麻雀もあるし、もうすぐ大学も始まるし」

はやり「そういえば長野が地元なんだよね。大学はどこに?」

久「東京で通います。まだ引越しは済んでなくて、今日は長野から電車で来たんですけど」

はやり「ええっ、じゃあ大変だね」

久「それなのに機材の都合で待機になっちゃって」



ちょっと拗ねた顔をしてみせる。おどけたつもりらしい彼女の表情に、だけど私はつい息を呑んだ。
出そうと思って出せるものじゃない、天性の色気のようなものが、確かに感じ取れた。



久「…でも、瑞原プロに会えたから、逆にラッキーでしたね」

はやり「はやっ!?」

久「?」

はやり「あ、ああうん、ありがと。お礼にライブに招待しちゃおうかなーなんて…」

久「本当ですか?」

はやり「う、ん…!?」


ぎょっとするほどの自然さで手を握られていた。



はやり(うわーこの子自覚あるのかなー)


久「嬉しい。約束ですよ?」

はやり「うん、約束…」


はやり(指長いなー)


○視点安価

・原村和
・宮永咲
・染谷まこ
・福路美穂子
・加治木ゆみ
・愛宕洋榎
・滝見春
・藤田靖子
・瑞原はやり

の中から1人選んでください。前に選んだキャラクターでも大丈夫です。
選択肢は後々変動すると思われます。


↓2

【視点:滝見春】


インターハイが終わってしばらく後、団体二回戦の映像を見返す機会があった。



初美「…当日は気づかなかったですけどー」

霞「春ちゃん、すごく竹井さんのこと見てるわね」

小蒔「何か気になることがあったんですか?」

春「……自覚なかった」

巴「え、そうなの?」



彼女を意識するようになったのは、それからだった。
とはいえ連絡先も訊いていなかったし、特に接点もない。



春(準優勝校の部長なんだから、もっと雑誌とか載ってもいいのに…)


小蒔「春ちゃんは最近よく雑誌を読みますね」

春「情報収集…」

初美「ひょっとして国麻に向けてですかー?」

春「え」

巴「鹿児島は中三に目立った選手がいなかったし、春ちゃんが出られる可能性は高いですね」

春「でも私、あんまり活躍してない…」

初美「霞ちゃんの力で押し込みますよー」

霞「あらあら、そんな権限はないわよ」



その年の国民麻雀大会は、奇しくも長野県開催だった。



春(会えるかも、しれない…)



自分でも驚くほどに、胸が高鳴っていた。





~~~~~




久「あら、あなた…」

春「……」



事態は都合よく進み、私は鹿児島県ジュニアA枠の代表として、国麻に出場できることになった。
そして、



春(ここまでご都合主義だと、逆にイジメなんじゃないかと思う…)



大会初日に、早速竹井さんと鉢合わせしていた。




春「……」


期待していたはずなのに、頭の中はパニックで、何も言葉が出てこない。


久「あなたも出場してたのね。…って実は知ってたんだけど」

春「…え」

久「選手一覧を見たからね。鹿児島はあなたかなーって、最初から思ってたし」

春「…」

久「今日も黒糖持ってるの?」

春(何か喋らなきゃ)

久「おーい、聞こえてるー?」

春「っ、あ、黒糖」


もちろん持っていた。そうだ、あの日竹井さんは、私があげた黒糖をおいしいと言ってくれたんだっけ。
思い出して慌てて取り出そうとしたら、今度は手が滑ってしまった。



ガサッ



春「ごめ、なさ…」

久「だ、大丈夫?落ち着いて」


幸い真下に落としたので、散らばったりはしなかった。袋を拾って、そのまま差し出す。


春(あれ、でも今落とした物をあげるのってダメなんじゃ…)


けれど、私が引っ込めるよりも先に、竹井さんの手が伸びていた。


春「あ…」

久「ん、おいしい。ってあれ、どうしたの?」

春「……何でもない…」

久「ほんとに?」

春「うん…」

久「まさか食べちゃだめだった…?」

春「そんなことない…」



何だか笑えてしまって、そうしたら、つられたみたいに竹井さんも笑った。
急に呼吸が楽になって、私は不相応に大きなものが、胸につかえていたことを知った。それが消え去った後になって。



春(私、この人のこと、何も知らないんだ)



でもそれは、きっと失望するようなことじゃない。



春(恋とか、そんなのじゃないかもしれないけど)

春(この気持ちをゆっくり育てていきたい…)



そう思ったのを、今でもはっきり覚えている。


…本当にそうできていたら、どんなに良かっただろう。

○視点安価

・原村和
・宮永咲
・染谷まこ
・福路美穂子
・加治木ゆみ
・愛宕洋榎
・滝見春
・藤田靖子
・瑞原はやり

の中から1人選んでください。前に選んだキャラクターでも大丈夫です。
選択肢は後々変動します。


↓2

【視点:加治木ゆみ】


久「…ねえ、前から聞きたかったんだけど」

ゆみ「何だ?」

久「あなた…っ、モモちゃんは、どうしたの」

ゆみ「…ああ」


弱いところを撫でてやると、久は艶かしい息をこぼした。
久は最中にあまり声を上げない。代わりに吐息で逃がそうとするのが癖だ。


ゆみ「実は進学のことで揉めてな。喧嘩別れのようなものかな」

久「仲直り、しないの?」

ゆみ「できるかな」

久「できるでしょ、だってあの子…あっ」


不意打ちをしてやると、軽く睨まれる。


ゆみ「お前がつれないから、仕返しだ」

久「は?」

ゆみ「私がモモと寄りを戻せば、もう自分は私の相手をせずに済むと思うんだろう?」

久「…そんなんじゃないわよ」

ゆみ「どうだかな」



どうしても諦めきれなくて、歪な形で手に入れた。そうしていつも、失うことを恐れている。



ゆみ(間違えたな、明らかに)



しかしそれなら、何が正しい道だったのだろうか?

○視点安価

・原村和
・宮永咲
・染谷まこ
・福路美穂子
・加治木ゆみ
・愛宕洋榎
・滝見春
・藤田靖子
・瑞原はやり

の中から1人選んでください。前に選んだキャラクターでも大丈夫です。
選択肢は後々変動します。
決まったら今夜は寝ます。


↓2

【視点:宮永咲】


私たちのインターハイは気まずい終わりを迎え、和ちゃんは東京へ行ってしまった。
お姉ちゃんとは何とか和解に漕ぎ着けたけど、手放しで喜ぶことはできなかった。

私が団体戦でもっと稼げていれば。何度もそう思って、涙で布団を濡らした。多分同じような後悔は、他の皆にもあったと思う。

だけど、世間は私たちを、のんびり感傷にひたらせてはくれなかった。



取材、取材、取材。
テレビにも雑誌にも沢山呼ばれた。麻雀に関係ないようなプライベートの質問や、衣装を着てのロケまであった。

お姉ちゃんとセットで呼ばれることも何度かあって、最初はぎこちなかったのが、だんだん昔みたいな自然な姉妹に戻っていくのを感じた。それはとても嬉しかった。




学校でも、私はヒーローになった。

今までは見向きもしなかったクラスメイト達が、休み時間ごとに私の周りに集まってくる。
私のどんな些細な話にも大きな笑い声が起きて、授業開始のチャイムが鳴るたび、皆は残念そうにした。

私は本を読むことが減り、カラオケや買い物に行ったり、メールの返信をしたりすることに追われた。



すごく忙しかったけど、部活はできるだけ休まないようにしていたよ?

染谷先輩は引き継ぎに追われていたけど、私たちのことをいつも心配してくれていた。

だからだろう、優希ちゃんも京ちゃんも、和ちゃんがいなくなった時は落ち込んでたけど、気丈に明るく振舞ってた。私もそうした。
そうしているうちに、和ちゃんは私たちの中で薄まっていった。


咲(和ちゃん、転校しちゃって良かったのかもしれない)


和ちゃんがもし清澄に残っていたら、私が時たま部活を休んで遊びに行くのにも眉を顰めただろう。
クラスの皆と盛り上がっている時に、つかつかと入ってきて、「咲さん、部活の時間です!」なんてさ。目に浮かぶなぁ。


咲(だいたいあの時怒られたのは、お門違いだったよね)


和ちゃんが「優勝できなかったら転校」なんて危険な賭けをしてること、私は知らなかったんだから。




咲「部長、卒業おめでとうございます」

久「ありがとう。…私ね、今まで生きてきて、今年が一番楽しかったわ。あなたたち五人のおかげね」

咲「えへへ…」

咲(あれ、五人?…あ、そっか。部長って意外と律儀だよね)




久「だから私は、自分にできることがあるなら、何だってするわ」

久「…だけど、咲。あなたはもう、大丈夫ね」

咲「?はい、大丈夫ですよ?」


もうすぐ春休み。私のスケジュール帳は、びっしり埋まっている。





[視点選択肢から『宮永咲』がなくなりました]

○視点安価

・原村和
・染谷まこ
・福路美穂子
・加治木ゆみ
・愛宕洋榎
・滝見春
・藤田靖子
・瑞原はやり

の中から1人選んでください。前に選んだキャラクターでも大丈夫です。
選択肢は後々変動します。


↓2

【視点:滝見春】


初美「ファッション誌ですかー?珍しいですねー」

春「イメチェン…」

巴「えっ」

春「冗談。クラスで流行ってるから試しに買った…」

霞「そうなの?でもちょっと大人っぽい雑誌ね。大学生向けじゃないかしら」

初美「背伸びがしたいお年頃ですねー」

小蒔「すぅ…」


大学に入る少し前くらいから、久は読者モデルとして活動し始めた。




雑誌『読者モデルのバッグの中ぜんぶ見せ☆』


春(……このポーチ鹿児島で買えるのかな…)


私はいつの間にか、久のファンになっていた。毎号4、5ページ程度の読モコーナーのためだけに、700円する雑誌を少ないお小遣いから買う、健気な女子高生。

ただ、普通のファンとは少し違うこともある。





久『ああ、あれ?化粧品はぶっちゃけ、撮影用に買い足したのよねー。さすがにプチプラコスメばっかりじゃ恥ずかしくって』

春「…夢がない…」

久『読者には秘密だからいいの』

春「私も読者…」

久『じゃあ春は私の妹分ってことで』

春「え…」

久『あら、嫌だった?』

春「別に…//」


久『それにポーチはちゃんと使ってるわよ?去年の誕生日にクラスメイトからもらった奴だけど』

春「…一目惚れして買ったって書いてなかった?」

久『あなた、よく読んでるわね…』

春「///」


久『うーん、やっぱりポーチくれた子に言い訳しておくべきかしら』

春「最初から正直に書けばいいのに…」

久『そうすると、私の持ってる小物の半分くらいが貰い物であることがバレるわ』



話せば話すほど久はアイドルではなく、普通の女の子だった。



春(でも、それが嬉しい…)



ただの親近感だろうか。
それとも他のファンへの優越感だろうか。

本当は彼女の身の回りには、私なんかよりずっと親しい相手が何人もいるのだろう。



春(でも、そんなのは知らなくていい…私はただの、ファンだから)

○視点安価

・原村和
・染谷まこ
・福路美穂子
・加治木ゆみ
・愛宕洋榎
・滝見春
・藤田靖子
・瑞原はやり

の中から1人選んでください。前に選んだキャラクターでも大丈夫です。
選択肢は後々変動します。


↓2

ミスった…
>>54
【視点:滝見春②】に脳内修正お願いします。

【視点:福路美穂子】


所属チームが決まるその日、私は勇気をふりしぼって、自宅に久を招待しました。二人でそわそわしながら報せを待ち、そして、


久『おめでとう美穂子!』ガバッ

美穂子『ひゃっ』

久『おめでとう…』ギュー

美穂子『あ…』


美穂子『ありがとう、ございます…///』


彼女にとっては祝福とか喜びとか親愛とか、そういうものだったのでしょう。でも、私には。

…私はその夜、自室のベッドの中で、初めて自分の身体に触りました。






友情と恋愛の境目は、どこにあるのでしょう。


友情は欲望を伴わないものでしょうか。
結婚できなければ恋愛ではないのでしょうか。
純愛は心だけを望むものでしょうか。
どこまでを求めるのが、友達なのでしょうか。


私は久の心が好きでした。でも、久のものである身体も、同じくらいに好きでした。

久の心に触れたいと思うように、私は久の身体にも触れたくなって、そうすると何故か、自分の身体までが疼きました。







『あなたを失ったら、私はもう笑えない』


そう言ったから、久はゆるしてくれたのです。
…それなのに結局、私は泣いてばかりいます。

○視点安価

・原村和 (1)
・染谷まこ (1)
・福路美穂子 (1)
・加治木ゆみ (1)
・愛宕洋榎 (1)←ただし非安価
・滝見春 (2)
・藤田靖子 (1)
・瑞原はやり (1)

の中から1人選んでください。カッコ内は今までに選択された回数です。
選択肢は後々変動します。


↓2

はやりんに決まったところで、明日は早番なのでもう寝ます。

かわいい子たち同士のハグは最高(寝言)

【視点:瑞原はやり②】



久「お疲れ様です!すごかったですよ」

はやり「はやや、ありがとう〜」



終演後、久ちゃんは楽屋に訪れた。約束通りライブに招待したのだ。

…初めて真深さんのライブに行ったときのこと、ちょっと思い出すなぁ。



瑞原「久ちゃんは今までライブとか来たことあった?」

久「いえ、全然…。田舎育ちですし」



こういうの初めて買いました、と、カバンからサイリウムを取り出して笑う。



久「でも本当に、すごかったです。熱気があって、皆はやりさんのこと見てて…」

久「はやりさんも出ずっぱりなのにパワフルで、きれいで、」

久「今更で失礼ですけど、本当にすごい人だったんだなぁって感じでした」

はやり「あはは、私はすごくなんかないよ」

久「そうですか?」

はやり「うん」


そう、あの時からだいぶ大人にはなったけど、私はずっと変わらない。


はやり「私は、皆に少しでも元気に、笑顔になってもらいたい」

はやり「この歳でこんな格好して、痛いって思う人がいるのもわかる。託される理想が高すぎて、疲れることもある」

はやり「それでも、私がステージに立ち続けることで、歌い続けることで、元気になれる人が少しでもいるのならー」

はやり「はやりは、アイドルであり続けたい」



久「………」

はやり「は、はやっ、なんかちょっと語っちゃったねっ、恥ずかしいな///」

久「………」

はやり「久ちゃん?」

久「…いえ。やっぱり、全然違うなぁ」

はやり「? 久ちゃ…」



コンコン



はやり「あっ、はい!」



ガチャ



良子「グッドモーニングですー。っと、お客さんでしたか」

はやり「うん、えっとね」

久「お邪魔してます」ニコッ

はやり(あれ、いつも通りかな?)


はやり(…でも、さっきのは)


私は嘘や建前なんかじゃなくて、本気で皆を笑顔にしたいと、小学生の頃から思っていた。


はやり(だからわかる、なんて、言うつもりはないけど)


明るい人は必ずしも気楽な人ではないし、落ち込みやすい人が一番繊細なわけでもない。
それくらいのことは、知っているんだ。



[視点選択肢に『戒能良子』が追加されます]

○視点安価

・原村和 (1)
・染谷まこ (1)
・福路美穂子 (1)
・加治木ゆみ (1)
・愛宕洋榎 (1)←ただし非安価
・滝見春 (2)
・藤田靖子 (1)
・瑞原はやり (2)
・戒能良子(1)

の中から1人選んでください。カッコ内は今までに選択された回数です。
選択肢は後々変動します。


↓2

またミス
>>74
戒能良子(0)でした

安価↓2でー

すみません、京太郎は選択肢にないので、下の洋榎になります。

清澄みんな入れられたら良かったんですが、視点増やしすぎると話が混乱するので…

【視点:愛宕洋榎】




こうして迎えに来るのも、慣れたもんや。




洋榎「遠くまでお疲れさん」

久「もう慣れたわ。新幹線の中で学校の課題やってた」

洋榎「久、ちゃんと学校行ってんのかい」

久「当たり前でしょ?」

洋榎「大学って行かなくてもいいのかと思ってたわ」

久「限度があるのよ、大学にもよるし。それよりもし心配してくれるなら」

洋榎「え…」ドキッ



久「シーズンオフには洋榎が東京来てちょうだい」

洋榎「あ、ああ!そういうことな!お安い御用や!」

久「?」

洋榎(もう止めたいって言うのかと思ったわ…)


うちはそっと胸を撫で下ろした。





久「じゃあ行きましょうか」

洋榎「あ、ちょい待ち」

久「何?」

洋榎「今朝思いついたんやけどな、今日はマンションの方やなくて、うちの実家に来ーひん?」

久「え?でもそれだと…」

洋榎「だから今回はそーいうのナシでな」


洋榎「ウチで絹も入れて三麻でもして…お母ちゃん入ってくれたら四人やけど」

洋榎「で、明日は朝から観光でもせんか?考えてみたら久、何度も来とるのにあんまり名所とか行ってないやろ?」

久「……」

洋榎「…?あれ、イヤなん…?」





久「……」



久「……」グスッ


洋榎「!?」

久「あれ、ごめん、何だろ」ゴシゴシ

洋榎「そんなにイヤやったん…?うちはけっこう名案やと…」

久「違うの、大丈夫、嬉しいわ」

洋榎「ほんまに?」

久「ええ、ありがとう、洋榎」ニコッ

洋榎「お、おう///」


洋榎「ほな、行くでー!」



家に連れていくのはちぃと照れくさいし、イチャつきたい気持ちもあってんけどな。せやけどこういうのも、たまには悪くないねんな…。









洋榎(あ…、連絡忘れとった)カチカチ



-----

from:愛宕洋榎
to:******

本文:新大阪にて合流。
   明日16時まで。


-----



洋榎(送信、と)ピッ

またやってしまった…
>>81
【視点:愛宕洋榎②】
です。

○視点安価

・原村和 (1)
・染谷まこ (1)
・福路美穂子 (1)
・加治木ゆみ (1)
・愛宕洋榎 (2)
・滝見春 (2)
・藤田靖子 (1)
・瑞原はやり (2)
・戒能良子(0)

の中から1人選んでください。カッコ内は今までに選択された回数です。
選択肢は後々変動します。


↓2

【視点:原村和】



二人きりの授業時間は、穏やかなものでした。
私たちは一方的に教え教わるよりも一緒に考え、私一人でできる問題の時は、彼女は隣で読書や書き物をしていました。

私はしばらく彼女のことを「部長」と呼んでいましたが、父の前でもうっかり口走りそうになったので、それからは「久さん」と呼ぶようにしました。

相変わらずの如才なさと、私の成績がまた上向いてきたことも相まって、久さんはすっかり両親の信頼を得たのですが、彼女が週に一度しか来られないことは不満に思っているようでした。
先生を替えられたくはなかったので、私は一人の時も勉強に打ち込みました。



久「和はやっぱり数学得意ねえ。いっそ理系のほうがいいんじゃないかしら」

和「理科は普通ですし…。親は法学の道に進んで欲しがっていますから」

久「…そう。和は真面目ね」



私はノートから顔を上げました。その言葉は子どもの頃から何度も聞いたものでしたが、この時は違うニュアンスを感じたのです。



和「久さんはどうして今の学部に?」

久「…どこでも良かった、なんて言ったら怒る?」

和「怒りはしませんが、久さんの代わりに落ちた人が気の毒です」

久「ふふ、そうね」

和「…でも私も、自分の信念で目指しているわけではありませんから。人のことは言えませんね」



久さんが首を傾げました。



久「和の信念って、何?」

和「え?」

久「和が一番大事にしているものって、今は何?」

和「…わかりません」



咄嗟に浮かぶのは、過ぎ去った日々のこと。でも私は、それを本当に大切にしているのでしょうか。
眩しく、温かく、切ない記憶。



和(きっともう一生、あの日々を超える時間はない)



この先別の幸せを得ても、引き比べずにはいられない。まるで呪いのようだと思ったこともあります。



和(だからひょっとしたら、憎んでいるのかもしれません)



久さんがため息をつきました。



久「難しいわよね、意外と」

和「…はい」



○視点安価

・原村和 (2)
・染谷まこ (1)
・福路美穂子 (1)
・加治木ゆみ (1)
・愛宕洋榎 (2)
・滝見春 (2)
・藤田靖子 (1)
・瑞原はやり (2)
・戒能良子(0)

の中から1人選んでください。カッコ内は今までに選択された回数です。
選択肢は後々変動します。


↓2

皆さんすごく満遍なく選んでくれて嬉しいんですが、実は話の進行上の重要性は全員均等ではありません…。
この先一度も選ばなくてもあまり問題ない人もいれば、何度か選んだほうが話が見えやすくなる人もいます。

あ、普通に好きなキャラ選んでるだけとかだったら別にそれはそれでいいんですけど

すみません、更新は明日になります。

【視点:戒能良子】


はやりさんがリポーターズへ応対するためにドレッシングルームを出てしまったので、私は初対面の少女と二人で残された。

来る途中に買った缶コーヒーを思い出して、飲むかどうか尋ねたものの首を振られたので、自分で開けて口に含む。



良子「えっと…」

久「戒能さんって」

良子「?」

久「はやりさんと付き合ってるんですか?」


コーヒーを吹き出しかけた。


良子「…え」

久「あら、違うんですか」

良子「いや、なんでそういう発想に」


しかし、そう推察される要素があるのは否めない。歳も出身もチームも違うのに、こうしてわざわざライブに訪れているのだから。
でも、彼女はそういうことは言わなかった。



久「戒能さん、はやりさんのことそういう目で見てますし」

良子「…言うね、最近までハイスクールにいたのに」



動揺を隠して軽く睨めつけたけど、彼女はこちらを見もしない。ぼんやりと宙を眺めている。



良子(…ガールのくせにちょっと色っぽいね)



久「…付き合わないんですか?」

良子「ワッツ?」

久「はやりさんと」



彼女の視線は正面の壁に向いたままだ。




良子「…別にいいんだよ、私は」

久「どうして」

良子「いいの」

久「なんかテンション上げる気が起きないんですけど戒能さんのせいでしょうか」

良子「…いきなり何」



そういえばインハイの時はもっと明るい印象の子だった気がする。



久「私、こう見えてもモテるんですけど」

良子「唐突なブラグ」

久「自分から告白ってしたことないんです」

良子「そう」

久「好きです。はやりさんじゃなくて、私と付き合ってください」

良子「…は?」

久「……」



良子「冗談だよね」

久「本気です」

良子「いやこの流れでそれはない」

久「私のこと嫌いですか」

良子「好きでも嫌いでもないよ」

久「じゃあ、」



久「嫌いになってください」



この子多分ちょっとおかしい。近づいてきた唇を拒めなかったのは、それを悟ったからだろう。

○視点安価

・原村和 (2)
・染谷まこ (1)
・福路美穂子 (1)
・加治木ゆみ (1)
・愛宕洋榎 (2)
・滝見春 (2)
・藤田靖子 (1)
・瑞原はやり (2)
・戒能良子(1)

の中から1人選んでください。カッコ内は今までに選択された回数です。
選択肢は後々変動します。


↓2

【視点:加治木ゆみ】



-----

from:加治木ゆみ
to:******

本文:新宿にて合流。
明日8時まで。

-----




久「悪いんだけど、次回の予定をずらさせてくれないかしら」

ゆみ「何かあったのか?」

久「和と行きたい所があるの」

久「あの子の家は厳しいから、次の試験が近づいたら許可が出ないと思うわ。そうするとこの日しかなくって」

ゆみ「妬けるな」

久「だめ?」

ゆみ「わかったよ、お姫様」


久の先生業はうまく行っているらしい。一時期表情が沈みがちだったのが、最近は少し明るくなっていた。


ゆみ(お陰でこっちも助かった)


おかしなことをしているという自覚は最初からあった。けれども罪悪感や違和感は日増しに強くなり、私を苛むようになっていた。

他のメンバーとはあれきり会っていないが、恐らく皆そうなのではないだろうか。

そこへ来て久までがふさぎこんでいるのだから ーいや、ふさぎこむ資格があるとしたはまず彼女なのだがー 瓦解も近いかと密かに身構えていたのだ。



久「ゆみって、最初は地元の国立志望だったのよね?どうして東京に?」

ゆみ「模試の結果を見て、単純に欲が出たんだ。今の大学は麻雀部もそこそこの規模だしな」

久「それで、泣いて止めるモモちゃんを振り切っちゃったんだ?」

ゆみ「…まあ」


その情景は、私の前でのモモを知る者なら、容易に想像できるだろう。



ゆみ「だがモモのために進路を妥協しても、自分の中にわだかまりが残る。それを後々モモにぶつけて、結局傷つけていたかもしれない」

ゆみ「だから説得しようとしたのだが…」

久「本当に?」

ゆみ「……」

久「あなたは本気で説得しようとしたの?」




桃子『せんぱーい!』

桃子『大好きっすーー!!』

桃子『清澄の人と何話してたんすか?』

桃子『ずっと一緒にいたいっす』

桃子『卒業しても、ずっと…』



桃子『うれしいっす、私、先輩と…』



ゆみ(私はモモが好きだった)

ゆみ(だがあの夜、求められて初めて肌を合わせて)

ゆみ(全てが終わった時、なぜだか私は、彼女に心底うんざりしていたんだー)


○視点安価

・原村和 (2)
・染谷まこ (1)
・福路美穂子 (1)
・加治木ゆみ (2)
・愛宕洋榎 (2)
・滝見春 (2)
・藤田靖子 (1)
・瑞原はやり (2)
・戒能良子(1)

の中から1人選んでください。カッコ内は今までに選択された回数です。
選択肢は後々変動します。


↓2

見てくださってありがとうございます。

でもなんだかグダってきてる気がするので少し頭冷やしてきます…。

ちょっと話を整理しました。
収拾をつけやすくするために、選択肢から「染谷まこ」をカットします。(決してまこが嫌いなわけではありません)

次回は洋榎視点で、今夜から再開できると思います。

【視点:洋榎③】



高校最後のインターハイが終わった、あの日のことやった。

うちはチームメイトたちから離れ、抜けきらない興奮の余韻に、ぼうっと立ち尽くしていた。
会場から連日の熱気が波のように引いていき、引きずられるようにしてうちの気も遠くなった。
よろめいた瞬間、天井が見えた。真上の照明が視界の中でぐるりと回り、ダンスみたいにたたらを踏んだその直後、うちの体は誰かに抱きとめられていた。

滑らかな腕だった。何の飾りもつけていないだけに、いっそう眩しい肌だった。



洋榎「あ…?」

久「もう、あなたどうしたの?」



張りのある声は、ちぃとばかし投げやりな響きだった。けどそれは冷たいもんやなくて、親しみやすい調子だった。
香水ともシャンプーともつかない香りが、ふわりと鼻をくすぐった。



洋榎「…何でも、ないわ」



心臓がばくばくいったり、顔が赤くなったりとかはなかった。むしろ時間が止まってしもうたみたいやった。止まった時間の中で、ただ頭だけがくらくらした。

…あいつのどこがいいかなんて知らん。けどうちは、あれ以来すっかり久に参ってしまった。









洋榎(だから、辛抱できなかったんや)





何かと理由をつけて久に接触するうち、長野の福路や加治木とも知り合いになった。いい奴らやと思ったし、久の日常に近づいたようで嬉しかった。
久みたいな変わり者、好きになるのはうちくらいだと思い込んでいた。




洋榎(告白したのは、うちが最初だったのになぁ)




久はすこし考えさせてほしいと言って、でも、嫌そうには見えなかった、と思う。
何事もなければ、普通の…かはわからんけど、もうちょいまともな恋人同士になれたかもしれへん。




洋榎「なんで時間って、巻き戻らないんやろ…」

○視点安価

・原村和 (2)
・福路美穂子 (1)
・加治木ゆみ (2)
・愛宕洋榎 (3)
・滝見春 (2)
・藤田靖子 (1)
・瑞原はやり (2)
・戒能良子(1)

の中から1人選んでください。カッコ内は今までに選択された回数です。
選択肢は後々変動します。


↓2

すいません寝落ちてました…
今夜はここまでです。

【視点:瑞原はやり③】

インタビューが終わって楽屋に戻ると、そこではうら若き後輩二人が抱き合って熱いキスを交わしていた。
…何を言っているのかわからないと思うけどはやりにも何が起こっているのかわからなry


「んっ…ん」

「あっ…はう」


はやり「とりあえずカーーーーット!!!」






~~~~~



久「……」(正座)

良子「………」(正座)


はやり「…私もあんまりうるさいことは言いたくないけど、せめて場は弁えようね?」

久「はい」

良子「……」

はやり「良子ちゃん?」

良子「…イエス」



何か言いたそうだけど、口が重いのか、言葉にならないのか。良子ちゃんは見たことがないくらいうろたえていて、目も完全に泳いでいる。



久「…明日は講義があるので、もう失礼します。ご迷惑おかけしてすみませんでした。戒能さんも」

はやり「あ…うん、気をつけて」

良子「……」



久「それでは」

はやり「待って」

久「はい」

はやり「やっぱり後で電話するよ。ちゃんと出てね?」

久「…はい」


ギィ、バタン



はやり「さて、と」

良子「…」ビク


はやり「何があったのか、聞いてもいい?」

○視点安価

・原村和 (2)
・福路美穂子 (1)
・加治木ゆみ (2)
・愛宕洋榎 (3)
・滝見春 (2)
・藤田靖子 (1)
・瑞原はやり (3)
・戒能良子(1)

の中から1人選んでください。カッコ内は今までに選択された回数です。
選択肢は後々変動します。


↓2

【視点:瑞原はやり④】



はやり「久ちゃん、何かあったんだよね?私と最初に会ってから、今日までに」

久『……』

はやり「私に言ってみる気にはなれない?」

久『…はやりさんには』

はやり「うん」

久『私ってどういう人間に見えますか』

はやり「…久ちゃんは、かわいい女の子だよ」

久『…戒能さん、何か言ってました?』

はやり「それは秘密」

久『……』


はやり「久ちゃんは、自分がどういう人間だと思ってる?」

久『…つまらない奴です。ちょっと器用だから、誤魔化せてきたけど』

はやり「……」

久『ちょっといい気になってました…』


彼女の声は電話越しにも震えた。


はやり「久ちゃんは素敵な子だよ」

久『嘘、嘘です、みんな嘘』







[視点選択肢から『瑞原はやり』がなくなります]

○視点安価

・原村和 (2)
・福路美穂子 (1)
・加治木ゆみ (2)
・愛宕洋榎 (3)
・滝見春 (2)
・藤田靖子 (1)
・瑞原はやり (4)
・戒能良子(1)

の中から1人選んでください。カッコ内は今までに選択された回数です。
選択肢は後々変動します。


↓2

【視点:戒能良子②】


はやり「何があったのか、聞いてもいい?」

良子「……別に」

はやり「久ちゃんにも後でちゃんとお説教するから、拗ねないの」

良子「拗ねてません」


良子(そうやっていつも、子ども扱いする…)


はやり「良子ちゃんは、久ちゃんのこと好き?」

良子「……」


好きでは、ない。キスをしたくらいで、初対面の相手をいきなり好きになったりしない。



良子(でも、好きでもない相手に迫られて流されたなんて言えないし)


私が悪かったのだろうか。相手は初対面で、未成年で、明らかに平常心ではなかった。けど、


良子(常にお預けくらってる身で、あれを拒むのはベリーハード…)


唇が触れた瞬間に電流が走った。あれよあれよという間に舌に進入され、歯列をなぞられるたびにぞくぞくと体が震えた。彼女から漏れる微かな声に耳を犯され、力が抜けて思わずしがみついたその背中の薄さに、ぞっとするほどの背徳感を味わった。

そうして気がついたら、こちらから貪ってしまっていたのだ。正直良子でなくても抗えなかったと思う。


良子(だからってそんなこと言ったら軽蔑されるよね…)





はやり「良子ちゃん?」


良子(ここで、竹井さんに一目惚れしましたとか言ったら納得されるんだろうか)

良子(わりと綺麗な子だし、…ニアーインエイジだし)

良子(はやりさんを好きになるよりも、ナチュラルなことなのかな…)ポロッ


はやり「え」

良子「」ポロポロ

はやり「よ、良子ちゃん!?」

良子「……きです」

はやり「どうし…え?」



良子「好きです。ずっと、はやりさんのことが好きでした」

○視点安価

・原村和 (2)
・福路美穂子 (1)
・加治木ゆみ (2)
・愛宕洋榎 (3)
・滝見春 (2)
・藤田靖子 (1)
・瑞原はやり (4)
・戒能良子(2)

の中から1人選んでください。カッコ内は今までに選択された回数です。
選択肢は後々変動します。


↓2

【視点:滝見春③】


仕事で上京する四国の従姉を拝み倒して、私はその旅に便乗させてもらった。久の名前は出さずに、好きなモデルのサイン会があるのだと説明した。従姉は半ば驚き、半ば呆れたふうだったけれど、それ以上詮索はしなかった。

空港から電車に乗り、教えられた駅の改札を通った私の横を、一人の女性がすり抜けた。


春「!」


つい凝視してしまったのは、彼女の背格好が久に似ていたからだった。けれどもよく見ると、髪型や雰囲気は違っていた。


春(少し中性的…) 



なんとなく目で追っていると、彼女はふと歩を止めた。それから急に足早になる。知り合いを見つけたのかもしれない、そう思って見ていた。そうしたら。



春(…久)



私を迎えに来たはずの久の目の前で、その女性は立ち止った。久は驚いているようだった。二人はそのまましばらく会話をしていたが、ふいに女性が久の手を取った。



春(え?)



その人は久を柱の陰に引き込んでしまった。私は何も考えず、二人が見えるところへ慌てて移動した。



春(…嘘)



電車が着いた直後は多かった通行人も、その時はまばらになっていた。だから柱の陰に隠れた二人に注意を払うのは、私だけだった。
久は柱に押し付けられるような姿勢で、無理強いされているようにも見えた。けれども両の瞼は閉じられ、腕は身体の横に下がったままだった。


春(久…)




手に入れたいなんて思っていたつもりはなかった。一番になりたいなんて考えたこともなかった。けれども目の前の光景に、私の頭の中は真っ白になった。



春(だめ)



春「だめ…」



春「久は…私の…」





口付けを交わす二人の元へ、私はふらふらと近づいた。





[視点選択肢から、『滝見春』がなくなります]   

○視点安価

・原村和 (2)
・福路美穂子 (1)
・加治木ゆみ (2)
・愛宕洋榎 (3)
・藤田靖子 (1)
・戒能良子(2)

の中から1人選んでください。カッコ内は今までに選択された回数です。
選択肢は後々変動します。


↓2

ネキ

安価直下でー

すいません、>>146採用します

ミス多くてすいませんでした…
ネキに決まったところで、今夜はここまでです。

今日の投下で終われると思います。お付き合い本当にありがとうございました。

ただ申し訳ないんですが、和視点は前回の②で終わりだったってことにします。③書いてみたんですが蛇足感すごいので…。
あとこの久はもう開き直ってクズにしてしまうべきでした。


後悔は多いですが久部長のことは大好きです。正直相手は男女誰でもアリなので久が愛されてるSSもっと増えてくださいお願いします。


ではまた後で来ます。

【視点:愛宕洋榎④】



久「あのね、やっぱり…返事はもうしばらく待ってほしいの」

洋榎「…なんで?」

久「洋榎がどうとかじゃないんだけど。もっとゆっくり自分の気持ちを考えたいっていうか…」

洋榎「うちがどうとかじゃないなら、付き合ってくれてもええやろ?それから考えても」

久「そうだけど…」

洋榎「…そんなに加治木のことがええん?」



久は目を瞠った。



久「え、ゆみ?なんで?」

洋榎「とぼけんでもええで、別に怒っとらんし」

久「そうじゃなくて、何のこと?」

洋榎「なんや、一度だけって本人から聞いたんやけどな。まだあったん?」

久「は?」

洋榎「…うちはええんや。久が初めてやなくても気にせえへんし、言いたくないことは言わんでもええ。だけど嘘はつかんといてや」

久「落ち着いて洋榎、本当にわからないの」


全然認めようとせえへんから、久はうちのことを信じてくれへんのやと思って、うちは目の前が赤くなった。



洋榎「久…!」

久「やっ…」



好きやとか、なんでうちじゃだめなんやとか、多分そんな感じのことを口走りながら久を壁際まで追い詰めて、服に手をかけた。…そのとき背後から小さな悲鳴が聞こえた。


振り返ると、福路がそこに立ち尽くしていた。顔は蠟のように白く、青い右目がうちを射抜いた。




[視点選択肢から『愛宕洋榎』がなくなります]

○視点安価

・原村和 (2)
・福路美穂子 (1)
・加治木ゆみ (2)
・藤田靖子 (1)
・戒能良子(2)

の中から1人選んでください。カッコ内は今までに選択された回数です。
選択肢は後々変動します。


↓2

キャップ

すいません、選択肢から和を消し忘れてました
安価↓

ごめんなさい>>158採用です

【視点:福路美穂子②】


愛宕さんを加えた四人での卒業旅行。その夜でした。


久「私ね、洋榎に告白されたの」

美穂子「え…」

久「OKしようと思ってるわ」

美穂子「どうして、私に」

久「インハイの団体戦が終わった夜、宿舎の部屋で」

美穂子「…!」

久「半分眠っていたから自信なかったけど。やっぱり、そうだったのね」

美穂子「あ…あ…」



脚がガクガクと震えました。そう、私は眠っていた久にこっそり唇を寄せたことがありました。触れるか触れないかのそれは、気づかれていなかったと思っていたのに。


美穂子「ごめん、なさい…!」

久「怒ってるんじゃないの、私も気のせいかと思ってたし。でも今になって、どうしても気にかかって」

美穂子「愛宕さんには言いませんから…」

久「そういうことじゃないわ。私が無神経なせいで、あなたに辛い思いをさせていたんじゃないかと思ったの」

久「自惚れならそれでいいんだけど…。もしかして美穂子、私のこと」


彼女の言葉を振り払うように、私は必死で首を横に振りました。


美穂子「違い、ます」

久「美穂子」

美穂子「違うの、違います、から…!!」



私は泣きながら、みっともなくその場に崩れ落ちました。





[視点選択肢から『福路美穂子』がなくなります]

○視点安価

・加治木ゆみ (2)
・藤田靖子 (1)
・戒能良子(2)

の中から1人選んでください。カッコ内は今までに選択された回数です。
選択肢は後々変動します。


↓2

【視点:加治木ゆみ③】



洋榎「なんや、どうしたん!?」


うずくまり声を上げて号泣する福路に、駆けつけた愛宕がおろおろと声を掛ける。同じく飛び込んできた私は、福路と、同じくしゃがみこんで彼女の背中を撫でている久の表情を見て事態を悟った。
…というのは大げさだが、福路が泣いている原因が誰絡みであるかはわかった。


洋榎「泣いとったらわからんって、」

ゆみ「任せていいか、久」

久「…ええ」

洋榎「え?」

ゆみ「行こう、愛宕」


私は愛宕の腕を取って、半ば引きずるように退室した。



スタスタ



洋榎「なぁ、ほんまにええんか?」

ゆみ「大丈夫だ。それよりもお前、久と何かあったか?」

洋榎「え、それ関係あるん?」

ゆみ「ああ」

洋榎「…告った。今日」

ゆみ「そうか」



予想通りだった。愛宕は照れて目を逸らしたが、しかしすぐに思い当たったようだ。頭の回転が速いのは、打牌を見れば明らかである。



洋榎「なあ、それが関係あるってことは、あいつも久のこと」

ゆみ「ああ」

洋榎「そう、なんか…」


愛宕は気まずそうに黙りこむ。しかししばらく経つと、笑いをこらえるように口元が歪み始めた。


ゆみ(それはそうだろうな)


福路があれほどに動揺していたことから考えれば、愛宕の告白の結果は見える。大っぴらに喜んではいけないとわかっていても、抑えきれないのだろう。久とのこれからの時間を思って、早くも胸を躍らせているのに違いない。
…もしも、そこからいきなり突き落とされたならば。



ゆみ「なあ、愛宕」




ゆみ(私にはもう、久しかいないんだ)


ゆみ(だから……すまない)





[視点選択肢から『加治木ゆみ』がなくなります]

○視点安価

・藤田靖子 (1)
・戒能良子(2)

の中から1人選んでください。カッコ内は今までに選択された回数です。
なんかもう消化試合じみてるので今回は安価直下でー


【視点:戒能良子③】


チャイムを押してしばらく待つと、少女は胡乱な顔でドアを開けた。何の変哲もないマンションの廊下だ。


久「…どうして私の家知ってるんですか?」

良子「はやりさんに聞いた」

久「よく教えましたね、はやりさん」

良子「気の毒で断りにくかったんだよ」

久「え?」


きょとんとした顔は子供っぽくて、とても楽屋での姿とは結びつかない。


良子「…ふられた」




久「え、ええっと」

良子「……」

久「私のせい、ですか…?」

良子「違う」

久「でも」

良子「だけどトリガーを引いたのは竹井さんだから、謝って」

久「は?」



良子「竹井さんがあんなことしなければ勢いで告白したりしなかった。それならブロークンハートになることもなかった」

久「いや確かにそうですけど…っ!?」

良子「上がるよ」ズイ

久「ちょっ」

良子「人には無理矢理キスするくせに、自分は部屋に入られるのも嫌なんだ?」

久「……」


久「…どうぞ」

良子「センキュー」





[視点選択肢から『戒能良子』がなくなります]

安価は今ので終わりです。
ご協力ありがとうございました。

【視点:藤田靖子②】



上京前の挨拶とか柄にもないことを言って訪ねてきた久は、予想通り関係のない話を始めた。



靖子「へー、モテモテでよかったな」

久「…真面目に相談してるんだけど」

靖子「普通に一人選んであと断れよ」

久「だってみんな、私がいなきゃって…」

靖子「羨ましい羨ましい」

久「ちょっと危ない目にも遭ったし…」

靖子(そりゃ、お盛んなこって)



ベッドの上に腰を下ろした久をちらりと見る。中学生の頃は細いばかりだった身体も、ところどころ生意気な曲線を見せるようになってきている。まあ後輩の原村とは比べ物にもなっていないんだが、これはこれで…。




靖子「…」

久「ヤスコ、聞いてる?」

靖子「モテすぎて困っちゃう自慢だろ?聞いてたっつの」

久「ちが、」

靖子「確かにお前、たまに高校生らしくないよな。…いや、もう卒業したんだったか」グイッ

久「え?」ポスッ


シーツの上に倒した久へ馬乗りになる。


靖子「餞別代り、もらってやるよ。わざわざ来てくれたんだからな」





[視点選択肢から『藤田靖子』がなくなります]

【最終視点:戒能良子】



久「コーヒーです」

良子「嫌いになれって言ってたけど」

久「」ビク  

良子「本当に嫌われたいようには見えない。竹井さんはどっちつかず」

久「…何か知ってます?」

良子「知るわけないよ。これから、竹井さんが話すの」

久「拒否権は?」

良子「ないよ。竹井さんは私の恋路をめちゃくちゃにしたんだから」



ほとんど言いがかりだったけれど、竹井さんは、ややあって口を開いた。













良子「…馬鹿?」

久「あ、やっぱり大人の人はそういうリアクションなんですね」

良子「大人に言ったことあったんだ」

久「…真面目に聞いてもらえませんでしたけど」



竹井さんの声が少し揺れたけど、一々助けてあげる気はない。



良子「キッズは恋愛も失恋も、自分だけのスペシャルなものだと思い込む。だけど失恋ごときで死ぬ人がそんなにいたら、たまらないよ」

久「確かに戒能さん生きてますね」

良子「竹井さんは人が死ぬのが怖かったんじゃないでしょ。選ばないほうがイージーだと思ったんだ」

久「…」

良子「それでいてまわされるのは嫌とか勝手すぎ」

久「え、いや、そんな言い方」



良子「はやりさんは、私をきっぱり振ったよ」

久「……」

良子「ショックだったけど、竹井さんよりは優しい」

久「そう、ですね」


竹井さんは項垂れる。ゆるく波打つ髪の毛が、肩から滑り落ちた。



良子「で、本当は誰が好きだったの?」

久「…皆同じくらい好きでした。友達として」

良子「恋愛対象としては?」

久「…たぶん、誰も」

良子「うわあ」


そんなことだろうとは思っていたけど、わざと大げさにリアクションする。目論み通り、竹井さんはますます小さくなる。


久「…もう、皆に言って終わりにします」

良子「威張るようなことじゃないよね」

久「……」グスッ



グイッ



久「…え?」

良子「泣くのも禁止。自業自得なんだから」

久「…」

良子「悪い竹井さんに、お仕置きしてあげる」グッ

久「ひっ」

良子「何が怖いの?今までも好きじゃない人と、こういうことしてたんでしょ?」

久「ごめ、なさ」

良子「…ああ、同じじゃないか」

久「え?」

良子「今までの人は竹井さんのことが好きだったみたいだけど、私は別に好きじゃない。優しくなんてしてあげないよ」




久「……」

良子「だから…」

久「……」

良子(あれ?)

久「……ふ、」

良子「?」



久「ふ、あはは、あははは」ポロポロ

良子「!?」ビクッ


良子(脅しのつもりだったけど、やりすぎた…?)



久「あははは、ひっく、あはは」

良子「あ、あの」オロオロ

久「あはははは」

良子「ソーリー、私が悪かった、何もしないから」

久「あはは、そっかぁ、あはは」

良子「え?」

久「あはははっ、はぁー…」


ようやく笑い止んだ竹井さんは、息を整えながら指先で目尻をぬぐった。




久「…ふう、振ってくれてありがとうございました。なんか吹っ切れたみたい」

良子「どういたしまして…?じ、じゃあ私はもう帰」

久「やだ…」ギュ

良子「へ?」



久「行かないでください…」

良子「いや、泊まるわけにもいかないし」

久「そういえば戒能さんはホテルですよね?じゃあ私がそっち行きましょうか」

良子「何言ってるの!?」



久「私、戒能さんのこと好きになっちゃったかも」

良子「ないないノーウェイノーウェイ」

久「もうはやりさんには玉砕したんだし、いいじゃないですか」

良子「そういう問題じゃないし私は竹井さんほど吹っ切れてないんだよ!」

久「久って呼んでください♪」

良子「話聞け!」





これでカンです。
見てくださってありがとうございました。お目汚し失礼しました。

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