俺「か、かかか、かよちん!?」花陽「ひぃっ!」 (73)

俺「みゅ、μ'sのかよちん――小泉花陽ちゃんですよね?」ブヒィ

花陽「あ、え、えっと……」タジタジ

俺「はあ、はあ。生で見ると一層可愛いなあ」ブヒブヒ

花陽「う、うぅ……」ウルウル

俺「い、いつも応援してます」ハァハァ

花陽「あ、え、えっと。ありがとう、ございます」オドオド

俺「おどおどしてるぱなよたそまじえんじぇー」

花陽「だ、ダレカタスケテー……」ボソッ

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1426684534

俺「あ、ああ、握手してください」スッ

花陽「ひっ……!」ビクッ

俺「あ、だ、だめですよね!? 俺かよちんを見かけて舞いあがっちゃって……」フンフン

花陽「い、いえ」ビクビク

俺「じゃ、じゃあサイン! サインください!」バッ

花陽「あ、あうぅ……」ウルウル

海未「その辺りにしておいたらどうですか?」

俺「え?」ビクッ

花陽「海未ちゃん!」パアアアアアアア

俺「みゅ、μ'sの園田海未ちゃん!?」ブヒィ

海未「花陽が困っていますよ」

海未「応援してくださるのは嬉しいのですが、少々強引すぎます」

俺「ぶ、ぶひ?」

海未「花陽も私も確かにスクールアイドルグループμ'sのメンバー、スクールアイドルです」

海未「しかし、アイドルである前に私たちは女子高生」

海未「失礼ですが、あなた年齢はいくつですか?」

俺「に、20です」ブヒィ

海未「20でこの時間に私服で歩いているということは大学生ですか?」

俺「ぶひ」コクリ

海未「あなたが高校生だった頃、見ず知らずの大学生に話しかけられたとしたら、どう感じたと思います?」

俺「こ、こわいと思うと……」

海未「でしょう? 花陽は元々気が弱い上に高校一年生の女の子です」

海未「あなたは花陽にとってあなたが想像している以上に威圧があるはずですよ」

俺「っ!」

俺「ご、ごめんなさい花陽ちゃん!」ペコリ

花陽「い、いえ。花陽もはっきりしないのが悪いですから……」アセアセ

俺「で、でも、俺も花陽ちゃんの気持ちを考えないで……」

俺「舞いあがっちゃって、迷惑をかけて……。ごめんなさい……」ブヒッ

花陽「迷惑なんて、そんな……!」

俺「ファン失格ですね……。俺帰ります……」トボトボ

花陽「……。あ、あのっ!」

俺「……?」

花陽「こ、これ! 花陽のサインに価値があるのかはわからないけど……」

俺「こ、これ……。さ、サイン!?」ブヒイイイイイイイ

花陽「花陽があなたの立場だったら、応援してるアイドルに今の花陽みたいな反応されたらつらいって思って」

花陽「突然でびっくりしちゃったけど、花陽のこと応援してくれてる人がいるんだって。そう思ったら嬉しくて……!」

花陽「だから、こんな花陽でも、よかったらこれからも応援してください」ニコッ

俺「っ! 応援します! サインありがとうございました!」パアアアアアア

俺「これ家宝にしますから!」ブヒッ

花陽「か、家宝なんて、そんなっ!」アワアワ

海未「花陽」ポン

花陽「海未ちゃん!」

海未「思わず割り込んでしまいましたが、無用な心配でしたね」フフ

花陽「ううん! 海未ちゃんが来てくれなかったらさっきの人をただ傷付けただけだと思うから」

花陽「海未ちゃんが来てくれて、あの人の気持ちを考えることができたの」

花陽「だからあの人に喜んでもらえたのは海未ちゃんのおかげ」

花陽「ありがとう、海未ちゃん」ニコッ

海未「花陽は本当に心がきれいですね」

花陽「そ、そんなことないよ!」アセアセ

花陽「あ、そうだ! 助けてくれたお礼しなきゃ!」

海未「お礼など……。私は何もしていませんよ?」

花陽「いいから! うーん、お礼、どうしようかな……」

海未「……っ! どうしてもというなら」

花陽「何かあるの?」

海未「はい。週末、μ'sが活動が休みの日曜日に出かけませんか?」

花陽「うんっ! 海未ちゃんがそれでいいなら!」

海未「では、決まりですね」

海未「日曜日の9時に、芳林公園に集合でいいですか?」

花陽「うん! 楽しみにしてるね!」ニコッ

海未「私も楽しみにしていますよ」ニコッ

花陽「それじゃあまた明日ね、海未ちゃん」

海未「あっ、花陽」

花陽「?」キョトン

海未「もう暗くなりますし、家まで送りますよ」

花陽「で、でも。そしたら海未ちゃんが……」

海未「私の方が年上なんですから少しくらいいいかっこをさせてください」

花陽「……うん。それじゃあお願いします」

海未「お願いされました。無事家まで送り届けますね、花陽姫」

花陽「ひ、姫っ!?」パナァ

海未「お手をどうぞ」スッ

花陽「も、もう! 海未ちゃんってば!」カアアアアアアアア

海未「ふふ」ニコッ

花陽「あはは」ニコッ

海未「行きましょうか」

花陽「うん!」

――――
――


土曜日

花陽「ど、どど、どうしよう……」アワアワ

花陽「あ、明日海未ちゃんとおでかけだよ……」アセアセ

真姫「落ち着きなさい、花陽」

凛「そーニャそーニャ。あわてたっていいことないよ?」

花陽「だ、だって! どんな服を着てけばいいんだろうとか海未ちゃんと花陽が並んで歩いてたら変じゃないかなとか……」

真姫「別に変なことなんてないじゃないの」

凛「かよちんは何着てもかわいいよ!」

真姫「大体、友達と遊ぶだけでしょ? 別にそこまで気にする必要ないんじゃないの?」

花陽「違うの! だって相手は海未ちゃんだよ!?」

真姫「海未だからなんなのよ……」ハァ

花陽「だって海未ちゃんは大和撫子でかっこよくて……」

花陽「花陽なんかとは絶対不釣り合いだもん!」

凛「かよちんまるで恋する女の子ニャ」アハハ

花陽「ぅえぇっ!?」

凛「かよちんもしかして海未ちゃんのこと好きなのかニャ?」ジッ

花陽「う、うぅ……。うん……」カアアアアアアアア

凛「なーんて――えっ!?」

真姫「はあっ!?」

真姫「なるほどねー……」

凛「海未ちゃんのことが……」

花陽「ご、ごめんね。同性の海未ちゃんのことが好きだなんて、気持ち悪いよね……?」アセアセ

真姫「別にそんなこと思ってないわよ」カミノケクルクル

凛「そうだよ! 凛達はかよちんの味方だよ!」

花陽「真姫ちゃん……?」

真姫「……。まあ、そういうことなら応援してあげるわ」プイッ

花陽「凛ちゃん……っ!」

凛「それなら目一杯かわいいかよちんで行かないとだね!」ニコッ

花陽「ありがとう、真姫ちゃん! 凛ちゃん!」ウルウル

真姫「……聞いてもいい?」

花陽「?」

真姫「そ、その。海未のどこが好きになったの?」

凛「っ! 真姫ちゃん!」

真姫「あ! 別にどこがって海未に魅力がないっていうことじゃなくて、その。やっぱり好きになるきっかけってあるでしょ? それを聞きたいのよ!」

花陽「なんで海未ちゃんを好きになったかっていうこと?」

真姫「そうよ、それ!」

花陽「えっと、前からかっこいいなって思ってたっていうのはあるんだけど」

花陽「この前ファンに話しかけられちゃったことがあったんだけど……」

花陽「その時に花陽が困ってたら海未ちゃんが助けてくれたの」

花陽「それで海未ちゃんのことがすごく気になるようになっちゃって、気付いたら……」

花陽「あのね! 海未ちゃんってかっこよくて優しくてかわいくて、一緒にいるとすっごく楽しいの!」

花陽「それにね胸がドキドキして――」

凛「か、かよちんが本当に海未ちゃんが好きなのはわかったニャ」アセアセ

真姫「でも海未って結構人気あるんじゃない?」

凛「確かにバレンタインデーにいっぱいチョコもらってるの見たニャ」

花陽「そ、そうだよね……」シュン

真姫「落ち込むところじゃないわよ」

真姫「だからこそ、海未を振り向かせちゃうくらい可愛い花陽で行くのよ」

真姫「この可愛い真姫ちゃんが花陽に海未を悩殺するテクニックを伝授してあげる」フフッ

花陽「ありがとう! 真姫ちゃん!」パアアアアアアア

真姫「え? ま、真姫ちゃんに任せなさい」アセアセ

凛(真姫ちゃん、思ってたのとは違う反応が来て焦ったニャ)

真姫「まず、海未が好きなタイプってどういう系かしら?」

花陽「うーん、海未ちゃんはやっぱり普通に男の子が好きなのかな……?」

真姫「可能性はあるわね」

花陽「……そうだよね」シュン

真姫「落ち込まない! だったら花陽が男に負けないくらい魅力的になって、海未を振り向かせればいいでしょ?」

真姫「花陽にはそのくらいの魅力があると思うわ」ニコッ

花陽「そ、そうかな……?」

真姫「そうよ、私から見ても花陽は魅力的だもの」

凛「そうだよ! かよちんは可愛いよ!」

真姫「それで、海未が好きなタイプだけど……」

凛「うーん、やっぱり穂乃果ちゃんみたいな元気系?」

花陽「幼馴染なわけだし、やっぱり花陽よりも穂乃果ちゃんの方が好きだよね……?」ウルウル

真姫「そう? 私はそんなことないと思うけど?」

花陽「え?」

凛「海未ちゃんは穂乃果ちゃんが好きじゃないっていうこと?」

真姫「そういうことじゃないわよ」

真姫「穂乃果と海未は幼馴染なわけでしょ?」

花陽「うん、お腹の中からの幼馴染って言ってたよね……。花陽よりずっと付き合いが長くて……」

真姫「だからこそよ」

凛「だからこそ?」

真姫「花陽と凛は幼馴染でしょ?」

花陽「うん」

凛「凛とかよちんは幼馴染ニャ」

真姫「あなたたち、お互いに意識したことは?」

花陽「花陽は、凛ちゃんのことは大切な友達だと思ってるけど……」

凛「凛もかよちんは大切で特別な友達だけど恋愛対象として見たことはないよ?」

真姫「つまりそういうことよ」

凛「? どういうこと?」キョトン

真姫「幼馴染って恋愛対象っていうよりは兄弟姉妹みたいな感じなの」

真姫「その上同性で意識するなんて相当なものよ?」

凛「っていうことは!」

真姫「海未は穂乃果みたいなタイプが好きっていう可能性は低いんじゃない?」

花陽「っ!」パアアアアアア

凛「でも、じゃあことりちゃんみたいなタイプ?」

真姫「ことりも幼馴染でしょ?」

凛「でも、確か海未ちゃんの活動日誌にはことりちゃんと会ったのは小学校に入るちょっと前って書いてあったニャ」

真姫「幼稚園からでしょ? だったら幼馴染よ」

真姫「それに、ことりみたいなタイプが好きだったら花陽にも可能性あるじゃない」

凛「あー、確かに! ことりちゃんとかよちんって雰囲気似てるもんね!」

花陽「似てるかなぁ……?」

真姫「おっとり系」

凛「ふわふわ系」

真姫「優しい」

凛「かわいい!」

真姫「ほら、そっくりじゃない」

花陽「う、うぅ……」カアアアアアアアア

真姫「でも、そうね。海未はそっち系が好きって考えていいかも」

凛「なんで?」

真姫「人って基本的に自分と似てる人や自分にないものを持ってる人を好きになりやすいのよ」

真姫「類似性の法則と相補性の法則っていうものね」

真姫「海未といえば?」

凛「かっこいい系で、厳しくて――」ハッ

凛「かよちんと逆だニャ!」

真姫「そう。だから無理に海未に近づけるんじゃなくて、逆に海未にないものを見せていけばいいの」

凛「それにそれに! 海未ちゃんって胸がないからきっとかよちんの胸を求めるはずニャ!」

花陽「む、胸っ!?」カアアアアアア

真姫「海未も凛には言われたくないと思うけど?」

凛「むっ……」ジッ

真姫「ふふっ」カミノケクルクル

真姫「それに確か海未ってお姉さんがいたわよね?」

花陽「うん、歳の離れたお姉さんが1人いるって」

真姫「それじゃあ、花陽は生まれ持ったその妹っぽさを出していけばいいわ」

花陽「い、妹っぽさ?」

真姫「そうよ。花陽って同い年の私から見ても妹っぽいもの」

凛「かよちんってお姉さんっぽい一面もあるけどどっちかって言えば妹っぽいニャ」

真姫「μ'sの妹担当ね」

花陽「花陽ってそんなに妹っぽいかな……」

花陽「で、でも! それが海未ちゃんに対して強みになるなら……!」

真姫「その意気よ。可愛く、妹っぽく」

凛「女の子っぽく!」

花陽「うん! 頑張ります!」

真姫「それじゃあ真姫ちゃんがとびっきり可愛いコーディネートしてあげる」

凛「でも真姫ちゃんのファッションセンスって……」

真姫「何よ?」ジッ

凛「なんでもなーい」

――――
――


真姫「花陽、着替えた?」

花陽「う、うん!」

凛「それじゃあ開けるニャ」ガチャッ

真姫「あ、ちょっと凛! もっとタメっていうものを――」

花陽「ど、どう、かな?」テレテレ

真姫「……」ポケー

凛「うわー……」ポケー

花陽「や、やっぱり花陽にこんな可愛い服似合わないよね!?」アセアセ

真姫「違うわよ! すっごく可愛いわ!」

凛「うん! これなら海未ちゃんも悩殺間違いなしだよ!」

真姫「そういえば。花陽、メイクはできる?」

花陽「うん、軽くなら……」

真姫「それじゃあデートにはメイクをしていきなさい」

花陽「で、デートぉっ!?」

真姫「デートでしょ?」

花陽「デート、かも……?」

真姫「デートなの! 好きな人と一緒にお出かけするんだからデートよ!」

花陽「そ、そういわれるとなんだか余計に緊張してきたかも……」ドキドキ

凛「真姫ちゃん、余計な緊張させてどうするの!?」

真姫「いいのよ、海未のことだからこっちもお出かけ気分で行ったら何もなく終わるわよ」

真姫「こっちがデート気分で行けばあっちも少しは意識するんじゃない?」

凛「た、確かに一理あるニャ」ウーン

真姫「花陽、今回のデートで決めるくらいの意気で臨みなさい」

花陽「今回で……。うんっ!」

花陽「ありがとう真姫ちゃん、凛ちゃん! 花陽明日頑張るね!」

凛「うん、凛はずっとかよちんを応援してるよ」

凛「気合い入れていっくニャー!」

真姫「必ず努力は報われるわ」ニコッ

――――
――


翌日

花陽「うわーん、支度してたら遅くなっちゃったー」

花陽「10分前には行こうって思ってたのに、これじゃ5分前にもつけないよ……」ウルウル

花陽「海未ちゃん、きっともう来てるよね……?」

海未「あ、花陽! こっちです!」フリフリ

花陽「はあ、はあ。海未ちゃん、お待たせ」

海未「いえ、私も今来たところです」

海未「まだ9時前ですし、そんなに急がなくてもよかったんですよ?」

花陽「で、でも……。海未ちゃんを待たせちゃったことには変わりないし」

海未「いえ。私が早く来すぎたんですよ」

海未「さて、花陽はどこか行きたいところはありますか?」

花陽「ううん、特には……」

海未「そうですか。では、私が行きたい所でいいですか?」

花陽「うん! 海未ちゃんが行きたい所で!」

海未「では、早速行きましょうか」

花陽「うんっ!」

海未「――と、その前に。少し待っていてくださいね」

花陽「?」キョトン

海未「はい、花陽どうぞ」スッ

花陽「え? わ、わわっ! 買ってきてくれたの!?」

海未「先ほど息切れしてましたので。お茶でよかったですか?」

花陽「わ、悪いよ! お金払うね!」アセアセ

海未「花陽!」

花陽「っ!」

海未「受け取ってください。今日付き合ってくれたお礼です」ニコッ

花陽「……。うん。ありがとう、海未ちゃん」ニコッ

海未「それでは今度こそ行きましょうか」

花陽「うん。どこに行くの?」

海未「ついてからのお楽しみということで」フフ

花陽「えー、気になるよー」

海未「ふふ。退屈なところではないですから安心してください」

海未「あ、それと、花陽」

花陽「?」

海未「今日の花陽、とてもかわいいですね」ニコッ

花陽「……っ!」カアアアアアアア

――――
――


海未「つきましたよ」

花陽「ここって、映画館?」

海未「はい。見たい映画がありまして」

花陽「見たい映画? 海未ちゃんが映画を見るなんてなんだか意外かも」

海未「私だって女子高校生なのですから映画くらい見ますよ」

花陽「そ、そうだよね! 海未ちゃんってかっこよくて大人っぽいから……。ごめんね?」

花陽「それで、どの映画?」

海未「これです!」

花陽「れ、恋愛映画……っ!?」カアアアアアアア

海未「は、はい。1人で見るのは恥ずかしくて」カアアアアアア

海未「しかし、作詞の参考になるかと……」

海未「作詞をしている以上一度は見ておかないと表現の幅が広がらないと思いまして」

花陽「は、花陽も恋愛映画見るのは恥ずかしいよ……」

海未「れ、恋愛映画、2人で見れば恥ずかしくない! ですよ!」

花陽「そんなの聞いたことないよ!」

海未「私の決心が鈍らないうちに行きますよ!」

花陽「わ、わかりました! 花陽も覚悟を決めます……!」

海未「こ、高校生2枚お願いします!」カアアアアアアア

店員「はい、高校生2枚ですね」

店員「本日キス割を行っておりまして、この場でキスをしていただければ半額となりますが、いかがいたしますか?」

花陽「き、キス割ぃっ!?」パナァ

海未「き、キスって接吻ですか!?」アセアセ

店員「はい」

海未「な、なな、何を言ってるんですか!? 私たちは同性ですよ!?」

店員「同性の方でもキスをしていただければ半額になりますよ?」

店員「それに友達同士のキスはノーカウントですよ!」

海未「そ、そういう問題ではありません!」カアアアアアアア

店員「でも、彼女さんの方はしてもいいみたいですよ?」ニヤニヤ

海未「っ! は、花陽!?」カアアアアアアア

花陽「は、花陽、海未ちゃんだったら……!」ツムリッ

海未「――っ! ……っ!」

海未「……はあ」

花陽「海未ちゃん……?」

海未「何をふざけたことをいっているんですか?」

花陽「え?」

海未「数に数えないとはいえ、はじめては本当に好きな人に取っておくものですよ」ニコッ

花陽「……。うん」シュン

海未「これ2人分の代金です。割引は使いません」スッ

店員「あ、えっと。はい、こちらチケットになります」

海未「ありがとうございます。行きますよ、花陽」

花陽「え? う、海未ちゃん待って!」

花陽「お金、払うよ!」

海未「いえ、花陽は割引を使う予定だったのに私が勝手に払ってしまったので、お代は結構です」

花陽「で、でも!」

海未「いいですから!」

花陽「う、うん……。ありがとう海未ちゃん」ニコッ

――――
――


花陽(う、うわぁ……! き、キスシーンだ……!)カアアアアアア

花陽(う、海未ちゃんって確か……)

海未「……っ!」ボンッ

花陽(やっぱりだ、ど、どうしよう、花陽も見れないよ……)ウツムキ

海未「……花陽」ボソッ

花陽「な、なに? 海未ちゃん?」ボソボソ

海未「ち、力を合わせて乗り越えましょう」ポンッ

花陽(花陽の手に、海未ちゃんの手が……?)

花陽「――っ!!!」ボンッ

花陽(な、なんで!? なんで海未ちゃんはもっと恥ずかしいことするの!?)

花陽(わ、わぁ、演技とはいえキスするんだよね……?)

花陽(く、くっついちゃうよ……!)

海未「……っ!」ギュッ

花陽「っ!」カアアアアアアアア

花陽(ま、前を見ても恥ずかしいし、下を見ると海未ちゃんに握られてる手が視界の端っこにうつって……)

花陽(完全に逃げ場がないよ……。だれか――)

花陽(ダレカタスケテー!!)カアアアアアアアアアアアア

――――

海未「わ、私たちには少し早すぎましたね……」カアアアアアア

花陽「う、うん……」ウツムキ

花陽(正直海未ちゃんに手を握られた辺りから全然内容覚えてないけど……)

海未「私たちもあぁいったことをするときが来るんでしょうかね……」

花陽(海未ちゃんと、映画みたいなこと……?)ポワポワ

花陽「だ、だめです! そんな……っ!」カアアアアアアア

海未「そ、そうですよね!? 私たちには早すぎますよね!?」アワアワ

花陽「そ、それで、次はどこ行くの?」

海未「そうですね、次は――」

花陽「」クゥー

花陽「……あっ」カアアアアアアアア

海未「ふふっ、かわいらしい虫の声ですね」クスクス

海未「いい時間ですし食事にしましょう」

花陽「うん!」パアアアアアアア

海未「この間ことりと行ったおいしいお店があるんですよ」

花陽「ことりちゃんと……?」

海未「はい、とてもおいしいお店なので。花陽も気に入ると思いますよ」ニコッ

花陽「……。……うん、楽しみっ!」

海未「さ、行きましょう花陽」ギュッ

花陽「あっ……」カアアアアアアア

海未「あ! ごめんなさい!」アセアセ

海未「先ほどの映画館での癖が抜けず、つい」サッ

花陽「……。離さないで」ギュッ

海未「え?」

花陽「手、離さないでほしいの」ギューッ

海未「は、はは、花陽!?」カアアアアアアア

花陽「あのね、さっき海未ちゃん、はじめては好きな人に取っておけって言ったよね?」

海未「はい、確かに言いましたけど……」

花陽「花陽、さっきしてもよかったよ?」カアアアアアアアアア

海未「っ!」

海未「で、ですから、はじめては好きな人のために――」

花陽「だって。花陽は海未ちゃんが好きだもん」

海未「っ!? は、花陽……?」

花陽「なんて、花陽となんて海未ちゃんの方が嫌だよね……?」アハハ...

海未「――花陽、来てください」グイッ

花陽「ぅえっ!?」

花陽「ちょ、ちょっと海未ちゃん!?」アセアセ

海未「いいですから!」

――――
――


花陽「ここ……部室?」キョトン

海未「はい。今日は練習がないので誰も来ませんよ」

花陽「なんで部室に?」

海未「さっきの映画の舞台が、学校でしたので」

花陽「え?」キョトン

海未「花陽、失礼します」ダキッ

花陽「ぅえっ!? う、海未ちゃん!?」カアアアアアアアア

海未「花陽はさっき、私のことを好きだと言ってくれましたよね?」

花陽「う、うん……」

海未「私もです」ギュッ

花陽「え?」ドキッ

海未「私も、花陽のことが好きです……っ!」ギューッ

花陽「ええええええ!?」

海未「花陽のことが、好きで、好きで……っ!」

海未「大好きな花陽に好きと言われて抑えきれなくなってしまったんです!」ギュッ

花陽「っ!」カアアアアアアアア

海未「花陽のこと、ずっとずっと好きで」

海未「花陽を想うと胸が苦しくて……っ!」

海未「優しくて、可愛くて、おとなしくて、でも芯は強くて、そしてどこか儚い――」

海未「強く抱きしめたら折れてしまいそうな。そんな花陽のことが好きだったんです……っ!」ギュッ

海未「花陽がファンに話しかけられていた日、私は花陽のファンがいることを、憎んでしまったんです……」

海未「花陽が遠くに行ってしまうような、花陽は私なんかよりも殿方を好きになってしまうのではないか……」

海未「そう考えると苦しくて……っ」ギューッ

海未「花陽を誘って、私はこの日を待ちわびました」

海未「花陽に気持ちを伝えようと――」

海未「先程は花陽から言われてしまいましたから、今度は私から言わせて下さい」

海未「好きです、花陽。愛しています……!」ギューッ

花陽「……。海未ちゃん……」

海未「……はい?」

花陽「あのね、海未ちゃん。い、痛い……」

海未「はっ! す、すみません。あまりに嬉しくて力の加減が……」バッ

花陽「でも、嬉しかった」ニコッ

海未「? 痛くてですか?」

花陽「うん、だってその痛さが海未ちゃんの想いの強さだって思ったら嬉しくて」エヘヘ

花陽「花陽も、大好き。愛してます、海未ちゃん」ニコッ

海未「っ! 花陽っ!」パアアアアアアアアアア

花陽「ねえ、海未ちゃん」

海未「はい?」

花陽「わがままいっていい?」

海未「はい。花陽のわがままでしたら、いくらでも」

花陽「さっきの、映画館での続きしてほしい」

海未「つ、続き、ということは、その……」

花陽「花陽のはじめて、もらってください……!」ドキドキ

海未「……。本当に、私でいいんですか?」

花陽「海未ちゃんがいいの」ニコッ

海未「……わかりました。私も女です、覚悟を決めましょう」

海未「で、では花陽? 目をつむってください」ドキドキ

花陽「うん」ツムリッ

海未「い、いいですか花陽?」

花陽「うん、いつでも」

海未「で、では失礼して……」ズイッ

花陽「……」

海未「……。んっ……」チュッ

花陽「っ!」

海未「これで、いいですか?」

花陽「――と」

海未「はい?」

花陽「もっと、して?」

海未「も、もっとですか!?」

花陽「花陽の気持ち、一回だけじゃ伝えきれないから……!」

花陽「海未ちゃんが花陽にいっぱい想いを伝えてくれたみたいに、花陽も海未ちゃんに想いを伝えたいの!」

花陽「だから、もう一回、お願い」

海未「……。はい、ではもう一度」スッ

ちゅっ

花陽「もっと」

海未「はい」

花陽「んっ、もっと」

海未「はい。んっ」

花陽「もっと……!」ポロポロ

海未「は、花陽!?」アセアセ

海未「ど、どうしたんですか? 何か嫌でしたか?」アセアセ

花陽「ううん、違うの」ポロポロ

花陽「何回しても、何回しても花陽の気持ちが伝えきれなくて……」グスン

花陽「海未ちゃんはいっぱい伝えてくれたのに、花陽は伝えられなくて……!」

海未「……心外です」

花陽「……え?」

海未「花陽は、私があの程度で想いを伝えきったと。私の想いはその程度と思っているんですね?」

花陽「そ、それは……。えっと……」

海未「残念ながら、私もまだまだ伝えきれてませんよ?」フフ

花陽「っ!」

海未「今すべて気持ちを伝えなければならないのですか?」

花陽「……花陽は、伝えたい」

海未「私は、今ではなくてもいいと思います」

海未「だって、私はこれから先ずっと花陽だけを好きでいるつもりですから」

海未「これから、長い時間をかけて。いつかきっと花陽に想いのすべてを伝えます」

海未「それではだめですか?」

花陽「……っ!」

花陽「花陽も、ずっと海未ちゃんのことだけ好きでいる」

花陽「だから、花陽も海未ちゃんと同じように長い時間をかけて。海未ちゃんにきっと、想いを伝えきるね!」

海未「はい、楽しみにしていますよ」ニコッ

花陽「花陽も楽しみにしてるね」ニコッ

海未「ふふ」

花陽「えへへ」

おわり

俺なんていなかった。いいね?

     _____________
   /|:: ┌──────┐ ::|
  /.  |:: |          | ::|
  |.... |:: |         | ::|
  |.... |:: |         | ::|
  |.... |:: └──────┘ ::|

  \_|    ┌────┐   .|     ∧∧
      ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄     (  _)    俺が身を引くことで
             / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄旦 ̄(_,   )
            /             \  `
           | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|、_)

             ̄| ̄| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄| ̄

     |           .( ( | |\
     | )           ) ) | | .|
     |________(__| .\|        俺の代わりにだれかが結ばれる

    /―   ∧ ∧  ――-\≒
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  | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |

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   ∧∧

  (  ・ω・)
  _| ⊃/(___
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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                            俺はそういうことに幸せを感じるんだ
  <⌒/ヽ-、___
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