瀬川「宮森さんが食べたい」 (63)
瀬川「最近宮森さんが来ないの」
瀬川「そりゃデスクなんだし、デスクってのは机にいるからデスクなわけだし」
瀬川「来てくれなくなるのは当然かもしれない」
瀬川「でも、恋しいのよ。身体が疼いて仕方ないの」
瀬川「わたしの本能がどうしようもなく宮森さんを求めちゃってるのよ」
安藤「…………」
安藤「それを言うためにわたしを呼び出したんですか?」
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安藤「すぐ来て欲しいって言われて、してた仕事放り出して来たんですけど」
瀬川「だってしょうがないじゃない!」
瀬川「宮森さん来てくれないんだもの!」
瀬川「安藤さん髪の色ちょっと宮森さんに似てるし、それで我慢しようって」
安藤「そこですか……」
瀬川「は――これはチャイムの音!」
瀬川「宮森さん!」
平岡「あがり持ってきました」
瀬川「[ピーーー]!」
安藤「誰だったんですか?」
瀬川「赤ちゃんパブ平岡」
瀬川「宮森さん!」
平岡「あがり持ってきました」
瀬川「氏ね!」
安藤「誰だったんですか?」
瀬川「赤ちゃんパブ平岡」
瀬川「赤ちゃんプレイってなに? もう30近い大人でしょ? ありえないよね」
安藤「あー、その話有名ですよね」
瀬川「仕事もできない。コミュ障。風俗狂いってもう最悪よね」
瀬川「これだから男は」
安藤「…………」
安藤「あの、前から気になってたんですけど、瀬川さんってそっちの人なんですか?」
瀬川「そっちって?」
安藤「その、ユリというか。レズというか」
瀬川「そうだけど」
安藤「まあ、そうですよね」
瀬川「男なんてわたしの胸しか見てないもの。女の子の方がずっと良い」
瀬川「そうだ。また平岡のクレーム入れれば宮森さん来てくれるかな」
安藤「…………」
安藤「じゃあ、わたし仕事があるのでこの辺で」
瀬川「コーヒー、煎れたから」
安藤「有無を言わさぬ感じですね」
瀬川「だって寂しいんだもの」
瀬川「平岡の悪口でも言って盛り上がりましょ」
安藤「あんまりいじめちゃダメですよ。最近平岡さんがんばってるんですから」
瀬川「ええ。仕事ぶりにケチがつけられなくて困ってるところ」
瀬川「これじゃ、苦情を口実に宮森さんに電話できないじゃない」
安藤「…………」
瀬川「最近安原さんもすごく良い仕事するようになって」
瀬川「あーあ。宮森さんが遠いなぁ」
安藤「…………」
安藤「すいません。続きはまた改めて聞きますね。仕事しないと他の人に迷惑かけちゃうので」
瀬川「そう」
安藤「あれ、おかしいな。なんだか、まっすぐ歩けな、」
安藤「い……」
瀬川「…………」
安藤「…………」
瀬川「そう、安藤さんが行方不明なんだ」
佐藤「はい、そうなんです。突然急用ができたって出て行ったきり戻ってこなくて」
佐藤「仕事楽しそうでしたし、放り出して逃げるような人ではないと思うので」
佐藤「心配です、すごく」
瀬川「そう」
瀬川「佐藤さんは安藤さんのこと、好きなのね」
佐藤「ええ。同期で、いろいろと教えてもらったりもしましたから」
瀬川「大丈夫。きっと戻ってくるよ」
瀬川「だから、今日はゆっくりしていって」
佐藤「はぁ……」
佐藤「あの、わたし、あがりをもらいにきただけなんですけど」
瀬川「それでね。宮森さんがね」
佐藤「…………」
瀬川「は――チャイムの音!」
瀬川「宮森さん!」
平岡「あがり、持ってきました」
瀬川「氏ね!」
佐藤「誰だったんですか?」
瀬川「赤ちゃんパブ岡」
佐藤「ああ、平岡さんですか」
瀬川「そう、あの女の敵」
佐藤「でも、男性ですし風俗店に行くくらい普通なのではないですか?」
瀬川「佐藤さんは大人ね」
佐藤「いえ、そんなことはないと思いますけど」
佐藤「では、わたしは会社に戻らないといけないので」
瀬川「コーヒー、煎れたから」
佐藤「あの、帰ろうとしてるのにコーヒーをいただいても困ります」
瀬川「佐藤さんは真面目ね」
瀬川「ちょっとくらいいいじゃない。赤ちゃんパブ岡の悪口言って盛り上がりましょ」
佐藤「いえ、業務時間内ですから」
佐藤「わたしは仕事に戻ります」
瀬川「コーヒーだけ! コーヒーだけ飲んでいって!」
瀬川「それでね! 宮森さんがね!」
佐藤「はぁ……」
佐藤「では、わたし、そろそろ会社に戻ります」
瀬川「…………」
瀬川「そう」
佐藤「あれ……、急に、ねむた、」
佐藤「く……」
佐藤「…………」
瀬川「…………」
瀬川「そう、佐藤さんも」
矢野「はい。原画の回収に行ったっきり……」
矢野「社用車が山梨と茨城の山中から発見されたみたいで」
矢野「二人とも何かの事件に巻き込まれたのかな、と」
瀬川「そうなんだ」
瀬川「心配ね」
矢野「はい……」
瀬川「疲れてるんじゃない? 少し休んでいったら?」
矢野「いえ、二人がいない分わたしががんばらないといけないので」
矢野「じゃないと、宮森がパンクしちゃいますから」
瀬川「でも、無理したって能率は上がらないでしょ。休むことって大切よ」
瀬川「ね? 少しゆっくりしていって」
矢野「……わかりました」
瀬川「そこでね。宮森さんがね」
矢野「…………」
瀬川「あ――、チャイムの音!」
瀬川「宮森さん!」
赤ちゃんパブ岡「あがり持ってきました」
瀬川「氏ね!」
矢野「誰だったんですか?」
瀬川「赤ちゃんパブ」
矢野「あんまり平岡くんをいじめないであげてください」
矢野「最近彼、瀬川さんこわい、瀬川さんこわいって怯えてますよ」
瀬川「だって宮森さんだと思って開けたら赤ちゃんパブだったんだよ」
瀬川「氏ねっていうしかないじゃない」
矢野「…………」
瀬川「それでね! 宮森さんがね!」
矢野「…………」
矢野「じゃあ、わたしそろそろ会社に戻りますね」
瀬川「もう少しいいじゃない」
矢野「いえ、ほんと宮森に迷惑かけちゃうので」
瀬川「じゃあ、コーヒーだけ! コーヒーだけ飲んでいって!」
矢野「…………」
矢野「……わかりました」
瀬川「ドリッパーにフィルターをセットして、と」
矢野「…………」
矢野「瀬川さんって車とか乗ります?」
瀬川「一応免許は持ってるけど。それがどうかした?」
矢野「いえ、わたし久しぶりに社用車乗ったんで、ちょっと東京の道怖くて」
瀬川「ああ、久しぶりだと怖いよね」
矢野「はい。特にうちの社用車ってウインカーの位置が左右逆なんですよね。それで混乱しちゃって」
瀬川「あれ、そうだっけ? そんなことなかったような」
矢野「…………」
矢野「どうして瀬川さんがうちの社用車のこと知ってるんですか?」
瀬川「え、えっと、それは、その……」
瀬川「そう! 前に宮森さんに乗せてもらったのよ」
矢野「それ、いつのことですか?」
瀬川「それは、えっと……」
矢野「いいです。宮森に聞けばわかりますから」
矢野「宮森は瀬川さんに運転させるようなこと、絶対にしないと思いますけど」
瀬川「…………」
矢野「うちの制作が二人、仕事中に失踪した」
矢野「ということは、犯人はうちと関わりのある人である可能性が高いとは思ってました」
矢野「瀬川さん。あなただったんですね」
瀬川「…………」
瀬川「どこであやしいって思ったの?」
矢野「二人が失踪したって話した後なのにいつも通り宮森宮森言ってたので」
矢野「瀬川さん、あの二人気に入ってたじゃないですか。だから変だな、って」
矢野「でも、おかしいなって思ったくらいで確信とか全然ありませんでした」
矢野「瀬川さんがウィンカーのひっかけにかかるまでは」
瀬川「…………」
瀬川「そう。わたしがやったの」
瀬川「制作の人がいなくなれば、宮森さんが家に来てくれるかなって」
矢野「二人は今、どこにいるんですか?」
瀬川「それは……」
瀬川「…………」
瀬川「そういうのは、警察の人に話すことにする」
瀬川「今の矢野さんじゃ迎えに行く途中で事故っちゃうかもしれないし」
矢野「そうですね」
矢野「じゃあ、わたし、警察を呼びます」
瀬川「待って。その前にコーヒーだけ飲ませて」
矢野「……わかりました」
瀬川「これで当分アニメの仕事ともお別れか」
瀬川「仕事に穴空けちゃってごめんね」
矢野「ほんとですよ。今から代わりの人探さないといけないんですから。宮森死んじゃいます」
瀬川「それだけが心残りだな。宮森さんに悪いことしちゃった」
矢野「でも、宮森は大丈夫ですよ。強い子ですから。それに、安藤さんと佐藤さんも戻ってきますし」
瀬川「そうだといいけど」
矢野「そういう事情を抜きにして、わたしも瀬川さんと仕事ができなくなるのは寂しいです」
瀬川「矢野さん……」
瀬川「そんな風に言ってもらえるだけ、わたしは幸せ者だったのかもね」
瀬川「出所までどのくらいかかるかわからないけど、戻ってきたらまた一緒に仕事したいな」
瀬川「そんなこと言う資格ないのはわかってるけど」
矢野「瀬川さんなら大歓迎ですよ。仕事山ほど持っていきますから」
矢野「だから、腕がなまらないよう練習は欠かさないでくださいね」
瀬川「うん、ありがとう」
瀬川「ほら、矢野さんもコーヒーどうぞ。冷えちゃうよ」
矢野「瀬川さん、このコーヒーに薬盛ってますよね」
瀬川「…………」
矢野「残念です。瀬川さん、信じてたのに」
瀬川「…………」
矢野「警察呼び――」
矢野「やっ――」
瀬川「…………」
矢野「せ、瀬川さん……」
瀬川「…………」
矢野「や、やだ……」
矢野「死にたく、ないよぉ……」
瀬川「…………」
矢野「おと……さ、ん」
瀬川「…………」
矢野「…………」
瀬川「…………」
矢野「…………」
瀬川「そう、矢野さんまで……」
宮森「はい……」
宮森「もうわたし、どうしていいか」
瀬川「…………」
瀬川「ちょっと休んでいったら?」
宮森「そう、させてください」
宮森「ごめんなさい、瀬川さんにまでご迷惑を」
瀬川「いいのよ。困ったときはお互い様でしょ」
宮森「瀬川さん。ちょっと肩を貸してもらってもいいですか」
瀬川「…………」
瀬川「ええ、構わないけど」
瀬川「あれ――チャイムの音」
瀬川「…………」
赤ちゃんパブ「…………」
瀬川「…………」
宮森「あれ、誰もいなかったんですか?」
瀬川「ええ、いたずらだったみたい」
瀬川「最近時々あるのよね」
宮森「瀬川さん、肩、貸してください」
宮森「…………」
宮森「安藤さん、佐藤さん……」
宮森「矢野さん……」
宮森「矢野さん! 矢野さん!」
瀬川「落ち着いた?」
宮森「はい」
宮森「みっともないところ、見せちゃいました」
瀬川「いいのよ、少しくらい弱いところを見せたって」
瀬川「最近の宮森さんはちょっと気を張りすぎてる気がする」
瀬川「もうちょっと人に甘えてもいいと思う。わたしにも甘えてくれていいから」
宮森「瀬川さん……」
宮森「ありがとうございます」
瀬川「さて、コーヒーでも煎れようかな」
宮森「あ、わたし、やりますよ」
瀬川「いいよ、宮森さんはお客さんなんだから」
宮森「いえ、これくらいはさせてください」
瀬川「そう? でもコーヒーは自分で煎れる」
瀬川「代わりに、冷蔵庫にシュークリームあるから取ってきてもらえる?」
宮森「はい!」
宮森「えっと、シュークリームは、と」
宮森「あれ?」
宮森「なんだろ、これ」
宮森「なんだか、人の目玉みたいな」
宮森「新聞紙で何かくるんである」
宮森「これ、人の手だよね……」
宮森「…………」
宮森「矢野さんの手だ」
瀬川「あー、そっか。まだ食べ切れてなかったんだった」
瀬川「失敗したなぁ」
宮森「瀬川さん、そ、そんな……」
瀬川「宮森さん。ずっとあなたが食べたかったの」
瀬川「もぐもぐ」
宮森「…………」
瀬川「もぐもぐ」
宮森「…………」
瀬川「もぐもぐ」
おわり
以上。
次があればsaga使う。
感想もらえるとうれしい。
レズカニパリズムとか攻めすぎだろ…凄いぜ
>>1はずかちゃんSSふたつとハルヒうんこ書いた人で合ってる?
>>50
そう。
声優連続殺人事件の方みたいなのやろうとしたらこうなった。
多分はじけかたが足りないって言われる。反省。
>>52
いや…この感じだよ!ハジけてるよ!これはイッちゃってるよ
こんな感じでもっと書いてくれたら嬉しい
前はずかちゃんをボコる感じで
今回はそこからレズカニパと濃い要素を取り入れることに成功した
次またもっと先のステップへ進めるかどうかだよね
次のステップは、スケールを大きくすることかもしれないし
逆に精神世界を追求することかもしれない
それは>>1が見つけなければならないんだ
>>59
努力する。
ただ次はくそくだらないものをやるかも。
それは許してほしい。
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