伊58「鎮守府に革命を起こしてやるでち」 (115)
※始めに
物語の性質上、オリジナルの艦娘が出ます。
基本ノリと勢いです。完結はさせます。
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毎日毎日オリョール。或いはバシーやカレー洋。
ある時は仲間と。ある時は1人で。
中破や大破しても休みはない。24時間365日出撃している。
もう何年経つだろうか。
休みを寄越せと言っても、提督は聞き入れてくれなかった。
長く居た戦友が沈んでも、ゴーヤが疲れていても機械のように出撃させていた。
「人でなし」と言う言葉が当てはまる。流行語で言えば「ブラック鎮守府」だろうか。
代わりはいくらでもいる。
そう彼は言った。
私も彼のコマに過ぎなかったのだ。
戦艦みたく強く無く、空母のような栄光も、重巡のような戦果も、軽巡のようなキャラも、駆逐艦のような愛らしさも……私には無い。
同じ潜水艦たちと幾度も会い離別したことか。
また、多くの提督は艦娘に対しての差別を行っていた。(あくまでも噂だが。)
事実、ケッコンカッコカリなるものが出てきてからより一層深まった。
気に入られるために戦果を稼ぎ、あるいは身内や戦友をわざと沈めることもしているらしい。
そんな空気の中で、私は生きられなかった。
戦争は変わらない。
イジメも一種の戦争だと私は考えているからだ。
こんなクソの中で生きられるか。
犯れるくらいなら殺ってやるまでだ。
提督は上辺だけはいいので、この鎮守府の艦娘達は慕っている。それどころか恋愛感情すら抱いている始末。
おまけに顔も頭も良い。私達だけのけ者扱い。
「おう、でち公オリョクル行って来い」
この一言。これが私の全て。いわば奴隷宣言だ。
ある日私の戦友である何人目かの伊168と伊8、伊19が敵の攻撃を受け、沈んだ。
不運だった。こちらが不利であることは明白だった。索敵が連日の疲れで鈍っていたのだ。
悲鳴が爆雷の爆発音が、頭から離れない。
何度言って、提督の意見は「駄目だ」。
どいつもこいつも最悪。
他の子達は私を見る度にあざ笑っているようにも見える。
貴重な休み(半年に一度だけ)も居酒屋鳳翔からくすねた日本酒を飲み、一日が終わる。
周りは理解をしてくれない。ビラを配ってもなしのつぶて。
余計孤立していった。ああ、最悪。
男なんぞ三低なんて言ったが、ここでは違う。
---だったら変えてやる。
このクソッ垂れな堕落した鎮守府を。
色欲に溺れる艦娘共を。
私利私欲にまみれた提督を。
この使い捨ての二等兵が、変えてやる。
「「ゴーヤ潜りますー!」じゃねーでち。クソッ!」
もはやルーチンワーキングと化したオリョクルをこなしてした。
敵を魚雷で倒し、資源を回収する。
今回は自分だけだ。
出撃する時、他の子達は意気揚々と出ていく。
私は違うけど。
いつもの所へ向かう。羅針盤なんぞこのゴーヤには通じない。
敵を倒し、帰投する連絡。
いつもなら無事に帰れるはずだった。
いつもなら。
(高速で近づく船が…6!軽巡2駆逐2軽空母2…この海域にはいないはずでち…!え…低速の船4!大きさからして戦艦…)
(早く逃げないといけないでち)
いつもと違うルートを辿る。すると、目の前に爆雷。
(敵の…いや、3式爆雷!?敵と見間違えたでちか…?)
しかもそれが四方八方からだ。
海面に出ると今度は対潜攻撃。
(瑞雲と晴嵐でちか…敵でこんなの使うのは効いたこと無いでち!)
急いで打電。返答なし。
何度も打っても帰ってこなかった。
海上に出る。
すると待ち受けていたのは---
味方の、船。
「何でこんなことするんでちか!危うく沈むところだったんでちよ!」
居た船をここで言っておこう。戦艦は航空戦艦である扶桑、山城、伊勢、日向。ご丁寧にすべて対潜装備だ。砲塔はどうした戦艦共。
そして軽巡は神通、那珂。駆逐艦は響、吹雪。軽空母は千代田と千歳通称「とよちよ」だ。装備からしてガチで潰しに来てる。
(やべぇでち…でもゴーヤは悪い事何もしてないはず!)
「ゴーヤはどうして攻撃を受けるんでち?もし誤認ならここで許してやるでち。早く鎮守府に帰らないと---」
「その必要はありません、伊58さん」
神通が言ったその言葉。何か嫌な予感がする。
「あなたはここで沈むのですから」
「…は?」
「意味がわかんねーでち!これは軍法会議ものでち!」
「でちでちうっさいなぁ、もう」
那珂が心底ウザそうな声を出した。
「いーい?提督はあなたを轟沈させろって言われてるの!」
「…どういうことでち?那珂」
「要は都合悪くなったからここで「栄誉ある戦死」をしてもらうって事」
千代田が代わりに口を開く。
(あー…最悪でち。クソ共はクソだったでち…!)
「全艦、目標伊58へ」
伊勢がそう言うと全ての艦が、こちらへ向きを変える。
「…一斉射!」
その瞬間、地獄へと変わった。
上は機銃、下は爆雷。
もう逃れられない。ここで死ぬのか---
奇跡の回避も機能しなくなっていた。
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「…反応消失。これより帰投いたします」
神通の打電が終わる。一斉に鎮守府を目指す。
「前々からゴーヤの事ウザいと思ってたんだよねー」
そう言うのは特型駆逐艦一番艦、吹雪。
「はぁ…不幸だわ。潜水艦の油が付いちゃった…」
山城はぼやく。
そうこうしている内に鎮守府が見えてくる。
艦娘達は勢いよく移動し始めた。
そこから遠くを見つめる黒い影に気付かずに。
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「ん…」
いつの間にかどこかへ流れ着いていたようだ。これも幸運の内か。
(使い捨てられたでち…)
島には誰も人影が無い。
「ようやく起きたか。お前、どこ所属だ?」
見慣れない姿をした艦娘。セーラー服を改造した格好をしている。
「某鎮守府所属、伊58」
「ずいぶん素直に吐くんだな。じゃ、お前は人質になってもらおうか」
「…好きにしやがれでち」
数日後、某鎮守府に「名もなき艦隊」からビデオメッセージが届いた。
内容は、解放したくば資源十万、資材及び高速修復剤を一万。期限は今から七日後。
だが提督はこれを好機と考え、主戦力の全てを取引場所に派遣した。
名もなき艦隊はいつからか出来た艦隊で、所属不明である上に同じ艦娘に攻撃を行うとして有名だ。
大本営はこれを討伐しようと多くの提督に通達していた。そして討ち取った者には海軍省への昇格も与えると。
「約束は守るんだな、人に使える艦娘も」
「そうだ、だから寄越せ」
連合艦隊旗艦兼秘書官長門がめんどくさそうに言う。
(どうせこいつらは約束を守らないでちよ)
当たった。
遠くから一航戦、二航戦、五航戦の艦載機が一斉に放たれる。
同時に魚雷、砲撃を開始。
「約束と違うじゃねーか!」
「提督は貴様らを沈めるように言ったからな」
「どーするでち…このままだとアンタも死ぬでちよ」
か細い声で話しかける。
「そうはいかねーな。この神風が居る限り、この世に悪は栄えない!ってな」
そう言うと彼女---神風---は打電を打つしぐさをする。すると、灰色をした艦載機が来たではないか!
<私の言うとおりだったろう?神風嬢>
「ビンゴだよ、秋津洲(あきつしま)…ックソー!またおごりかよ…」
<そんなことより、ゴーヤ嬢。君の所の鎮守府は相当クレイジーみたいだのう…>
「それでも革命を起こすでち」
「ゴーヤ!聞きたいことがある!こいつらは陸軍機は見たことないんだよな!?」
「そうでち」
「秋津洲!富嶽を出してこいつらを沈めっぞ!」
<良かろう。機雷までおびき寄せてパーティーと行こうかの>
富嶽---それは対となす陸軍所有の重爆撃機。それをこちらの仕様に改造したものだ。
「もうすぐポイントに行くぜ!」
すると、そこに箒をもった艦娘が現れた。名は側天。敷設艇だ。
「さあ、私の守りは固いわよ~!」
ヘラヘラしてる。こんな時だ。
「きゃあ!」
どこかの船が大破したようだ。
機雷に当たり、派遣された艦娘達は思う様に動けずにいるようだ。
<秋津洲流戦場航海術は伊達ではないと言う事かの>
「そんなのじゃないと思うよ~」
空を見ると多くの灰色の機体が緑の機体を勢いよく落としている。
「こ、これでいいのでしょうか!?」
雲龍型空母五番艦、阿蘇が自信なさそうに確認をしてくる。
「いいんだよ、阿蘇。海鷹さんが言ってたろ?」
「あれは3年前から行方不明になっている阿蘇!?」
赤城やその他の空母たちは驚いている様だ。
「そうです!何もせずに!そして足もとをおろそかにせずに!それがモットー!」
「それに海鷹…!」
行方不明となった艦娘が出て来る。
「……平和に生きたかったなぁ」
「今度は葛城までも…裏切り者が多いですね」
加賀は嫌味なのか皮肉なのか分からない言葉を吐く。
「それとアレくるよ、あれ」
「ロクナナか?」
「うん。後富嶽も」
(富嶽?ロクナナ?意味わかんないでち)
「ああ!艦載機が!」
「全部…落とされた…ですって…冗談…でしょ…」
それもそうだろう。彼女達---葛城、阿蘇に積まれてる機体は烈風や流星と言った貴重な物だからだ。
さらに彼女たち---連合艦隊---も知らないだろう爆撃機が来ることも。
「じゃあな。海の底に沈め淫売雌豚共」
神風は急いでこの海域を脱出した。
「ッ!敵機在り!撃ち落とせ!」
ロクナナ、正式名称四式重爆撃機「飛龍」。これを海軍が採用したと言う事を彼女達歴戦の船は知らない。
富嶽は陸海軍の共同開発されたものだ。
どちらも共通点は---当たったら最期の一点である。
下は機雷。上は爆撃。
「全艦体、撤退するぞ!」
長門の言葉で多くの艦娘達が引いていく。
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「さて、お前はどうする?このまま何も変わらないクソな鎮守府(おうち)に帰るか、ここで革命の準備をするか…どうする?」
彼ら「名もなき艦隊」の基地へと帰る道中、神風に質問された。
「それは簡単でち。ここで準備するでち!」
「その意気だ。さ、基地に帰ったらお前がうちに加わる---いや、革命を起こすための準備をしようじゃねーの」
「あんな所が沢山あるとなるともう嫌になるでち…」
「良い事教えてやる。俺らは280万も居る提督(ゴミ)共を変えないといけない。ないがしろにされてるしな」
「クズ鉄がどっちか教えてやるぜ…」
続きは明日書くでち。
後三日くらい付き合ってほしいでち!
「お前には俺らのリーダーに会ってもらうぜ」
薄汚れた基地の廊下で神風は友達と遊ぶ様に言った。この基地は元々放棄されたもので、知るのはあまりいない。ましてや戦時中で多く捨てられた所が有ることすら提督達、艦娘達は知らないだろう。
「マシな奴だといいでち」
「ああ、マシな奴だ」
途中、多くの艦娘に会う。
不幸を呼ぶと言われ、あちこちにたらい回しにされた伊33。
もう要らないと言われた工作艦朝日。彼女は戦艦だった過去がある。
「ここがリーダーのいる部屋さ」
ノックもせず入る。
「んあ…寝てるときに何なのさ…神風ちゃあん…」
ボサボサの深緑色の髪を掻く。同じ艦娘がリーダーか。面白い。
「新しい仲間のゴーヤだ、松ちゃん」
「そ。よろしくねぇー」
(怠そうでちね…)
どうでもいいと言わないばかりの態度だ。
「そんで君の目的は…革命だっけ?神風ちゃんから聞いてる」
「そうでち。一発あいつらに魚雷ぶち込んでやらないとダメみたいだから」
「あいつらに闇討ちされんようにねぇー」
人ごとだ。こいつがここのリーダーと思うと頭が痛くなる。
「そうそう、神風ちゃんから聞いてるだろうけどさー…ここにいる奴らは理不尽な理由で実質轟沈扱いなんだよねー」
「ここにゃあ色んなのが居るから話すといいぜ。俺はここまでだゴーヤ」
そう言うと神風は背伸びをしながら出ていった。
「もう言っていーよぉ、ゴーヤちゃん…」
松は寝たようだ。
(こいつ大丈夫でちか…)
駆逐艦松。硫黄島で散った艦。これと行った戦果は無いが彼女は中々キレるぜと言ったのは神風だ。
「アイヤー!新入りさんカナ?」
チャイナドレスに仕立てた軍服を来た艦娘にあった。
「私は八十島(やそしま)アルヨー」
凄く胡散臭い。
「明太子ピザ食べたいなぁー」
今度はドンくさそうな子が来た。
「新入り?私は興津(おきつ)。イタリア時代はレパント、中国じゃ…覚えてないや。ははは!」
「伊号潜水艦、伊58でち」
「よろしくねー!ゴーヤー!」
興津はゴーヤの頬にキスをした。
「何しやがるでち!」
「アイヤー…彼女なりの歓迎アルヨ。勘違いした子がどれだけいるか…」
「私ってこうだからさ、ほかの子達に幾度もなく沈められかけたのよねぇ…沈むのはもう慣れてるし、私は不死なのだー!あはは!」
こいつまるで直す気ない…。ここまでゴーヤも開き直ればクソ共も変わっただろうか。
(変わんないでちね…)
だが、運がいい。ここにいる奴らの経歴を聞いて鎮守府を変えてやる。
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「…以上です」
「そうか…」
帰投した艦娘達を提督は舐めわます様に見つめる。
「神通、ここに残れ。他は帰って良し」
---夜の帳が降りてくる。
「平海(ピンハイ)チェチェ!ゴーヤ、朝ダヨ!」
「アイヤー…おはよう、寧海(ニンハイ)」
「おはようでち…ふあぁぁ…」
どこの国でも朝は来るものだ。日差しが眩しい。
「寧海だけど、ここじゃ五十島(いおしま)ダヨ、チェチェ」
五十島と呼ばれた艦娘。こちらもチャイナドレスだ。ただし、足はニーソックスを履いている。…少しエロい。
「ゴーヤ、ご飯出来てるヨ。野埼のご飯が待ってるネ!」
「了解でち」
時刻は6時半。寝起きは最高だ。ここまで長く寝れたのはもう何年振りだろうか。
ゴーヤたちは食堂へと向かっていった。
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「提督、失礼します」
「入れ」
執務室で朝までしていたのだろう。神通がシーツ一枚で居る。栗の花のような臭いが漂う。
入ってきたのは夜の哨戒の任を与えられた古鷹だ。
「以上はありませんでした。しかし、気になることが一つあります」
「なんだ」
「伊58が轟沈した海域に「これ」が落ちていました」
それは深緑の金属片。取引場所で撃墜された艦載機のと容易に想像できる。
「どこからか流れ着いたものだろう。古鷹、下がってもいいぞ」
「失礼しました」
戸が閉まる。
「…提督」
「あの艦隊は総力を持っても潰せなかったのは事実だ…。オリョクルは出来ないし最悪だな…」
「他の提督に打電しますか?」
「これは、我々の問題だ。ここで潰せば勝利は近い」
「それにあちらの戦力もおおよそ分かったからな」
「では提督…」
「大規模な連合艦隊を作るよう今度の会議で進言する。謀反は死罪だから、な」
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「沖島(おきのしま)帰投したしましたぁ!「今日もいい天気☆」でした!」
「朝から五月蠅いぞ…」
食堂では報告会も兼ねているとの事。
ハイテンションなのが敷設艦沖島。軍服の上に中国軍の軍服を羽織ると言う奇抜な格好をしている。
静かにご飯を食べているのは出雲。歴戦の巡洋艦だ。鉢巻をし、セーラー服を着ている。
「どこぞの駆逐艦みたいな恰好してるに言われたくないですー!」
「ほお、貴様が朝から五月蠅いのはヒロポンでも打っているからか?廃兵院にでも行ってろ」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ両人。
「どっちもどっちでち…」
「まあまあ…落ち着いて、ね?」
「野埼、こいつに少し注意してやってくれ。目上に対する態度がなってないとな」
あはは、と曖昧な顔をするのは給糧艦野埼。ベリーショートでコック帽と言うどこかのフレンチみたいだ。
セガールじゃないのは確か。
「せっかくのご飯の時間が台無しだよ。沖島ももう少し静かにしようね」
「はいはーい」
再び食堂に平和が訪れる。
「そう言えば、ここの資源や資材…どうやって揃えたんでち?」
八十島はうーん、とこめかみに手を当てる。
「簡単でござるよ…。同盟しているところから流してもらっているのでござる」
伊12が答える。何故か黄色と言う忍装束をしている。
「この人、任務してる時に誰にも助けてもらえなかった人ダヨ」
「む…その時はトイレに行くと仲間に伝えたのでござる。なのに置いてきて…おまけに居場所も無くなってたでござるよ…」
「…不憫でち」
「だいたいさぁー私ら敷設艇が戦果も挙げてないとかありえないんですけど!」
「しょうがないと思います。だって戦場は何もない海がメインですから…」
おっとりとした口調で言うのは工作艦朝日。服は少しくたびれてる。風評被害が大きいとのこと。
「うるせーぞ☆だから朝ヒルって言葉が出来ると沖島は思うのでーす!」
「私はキチンとお仕事してますぅー…!嘘じゃないですぅ!ふえええん!」
歴戦の船が年下に泣かされている光景ほど違和感はないだろう。口調がさっきと変わってあざとくなっている…。
「彼女は明石殿が来るまでは鎮守府で修理や開発を担当していたのでござる。しかし明石殿は純工作艦。対する朝日殿は歴戦の戦艦で今は工作艦…どちらを取るかは明白でござるよ」
ゴーヤの今日の朝食は白ご飯にわかめの味噌汁、アジの焼き魚。それと葉っぱの御浸し。
(飯が美味いでち!)
勢いよくご飯をかきこむ。
「ゴーヤ嬢は今までまずい飯を食っていたのかの。じゃがしつけの悪い犬みたいじゃ…。それと沖島。戦果はどの船も上げておるよ」
「秋津洲殿!」
(この人が秋津洲…)
すらっとしたスタイル。服装は迷彩柄のTシャツとドカンズボン。美人、と言う言葉が当てはまる。
「アイヤー!秋津洲サン、何の用アルカ?」
「瑞穂から打電じゃ。敵がこちらに近づいてくる。数は駆逐3、軽巡2、戦艦1」
「今は初鷹、沖島、側天が仕掛けた機雷が足止めをしておる。敵は深海じゃ」
「それでどこの誰がお掃除するのかしら~?」
いつの間にか隣に来ていた側天が物騒な物言いをする。
「竹ちゃんによれば「八十島、五十島、芙蓉、梅、伊24、伊58」だそうじゃ。新人入れるとか緑茶とフレンチフルコースくらいの違和感じゃぞ」
(すげぇ馬鹿にされているでち)
だがこれはチャンスだ。ここで信用を得れば、鎮守府に対する戦力を増やすことができる。
「やってやるでち…!」
「「「暁の先のに居るクソッ垂れに敗北の二文字を刻み込んでやる!」」」
「この掛け声何でちか…」
黒歴史確定しそうだ。
「これはアレでござるよ。「暁の水平線に勝利を刻みなさい」的なものをこちら側で言いかえたものでござるよ、ゴーヤ殿」
「マジクレイジーでち」
「さ、出るアル!ゴーヤ!」
こんなに心躍る出撃は久々だろうか。
全てが新鮮に見える。空が海がいつも以上に輝いていて、敵をこんなにも倒したいと言う気持ちが湧いてくる。
無線が入ってくる。
<皆来たかの。今回の目的はここの防衛とその先にあるトラック島の敵情視察じゃ。敵は基本頭が逝かれておるから注意するんじゃぞ>
「ブッ込んでいこうぜー!」
こいつ敵だろと思ってしまったのは伊24。自分と同じスク水だ。
「護りはお任せなのよ!」
「集中砲火されなきゃいいのさ…とりあえず煙草…煙草…」
前者は若竹型7番艦駆逐艦芙蓉。
後者は松型3番艦駆逐艦梅。
梅は重度のヘビースモーカーと神風は言っていたがこれやもう中毒の一つだろう。
と言うか重度のヘビースモーカーって意味わからん。
「甲標的積んじゃって~♪浸水させちゃって~♪いっそぜーんぶーしーずめられたならぁ~♪」
「ニシちゃん、歌ってる場合じゃないヨ。敵は前に居るネ!」
すると、ニシこと伊24の目つきががらりと変わった。
「甲標的いっちゃってー!きゃはは!」
そう言うと魚雷ではなく、変わった形の潜水艇から魚雷が放たれる。
「こんなの使うなってでち!この人でなし!」
「勝つためにはこんなこともしないといけないのさ」
「こっち来るなよ!煙草が湿気るじゃないか!」
ヤケクソで梅は砲撃。当たらず。
「やってやります!えーい!」
芙蓉は狙ったようだ。しかし当たらず。
「アイヤー…これヤバいアルヨー…私ら沈むの確定ネ」
「もう持ってるモン全部敵にやろーぜ、八十島の姉貴!」
「アンタはヘマばっかしてるから入れたくなかったネ!チャーシューにしてやるアルヨ!このデブ!」
「ヘマは毎回じゃねーですぜ!」
チームワークが崩壊している。
「あーもー!お利口さん魚雷!お願いでちぃー!」
魚雷を放つ。すると敵に当たり、一撃で沈めた。
「やるじゃないですか!新人!」
「うん、凄いヨ!ゴーヤ!私も見習わないといけないカナ」
ヤケクソで放った物が当たった。しかも運よくだ。
敵は一撃で沈めたことに恐怖を抱いたのか、砲撃しながら撤退していく。
「追撃いいすか、秋津洲さん!」
<勿論じゃ。完膚なきまでに沈めてしまえ。おねしょさせるくらいにはな>
手書きやそたそ
ttp://i.imgur.com/jD2M6IJ.jpg
すると、ゴーヤを除く艦娘の雰囲気が鋭くなった。
「明日は来ないのさー♪っと!」
「四千年の魚雷を食らうといいアルヨ!」
「魚雷発射デス!」
「沈んで欲しいな…」
「これで終わりです!とりゃー!」
一斉に魚雷を放つ。
敵を捉えんとばかりだ。
そして---全艦轟沈。
「ゴーヤ、敵の反応はどうよ?」
ソナーを使い、調べる。
「反応無し。敵艦隊全滅でち」
「あー終わった。タバコ吸おっと…ふぅ。落ち着く」
「まだアルヨー。トラックの見学ネー」
はは、と私は心の底から笑った。
「コイツ笑いやがった…」
「ゴーヤの笑い顔、可愛いネ」
何故か、皆が笑った。
「タバコが…むせる…ははは!」
「何で面白いか分からないけどあなたがナンバーワンですよ!アハハ!」
「ど、どこが面白いか分からナイネ…」
八百島は少々戸惑っているが、笑った。
「「「奴らにー阿呆面かかさせろー♪」」」
「「「一発入れたらもう一発ブチかませー♪」」」
「「「穴という穴を犯し尽くしてやっからよー♪」」」
「「「ああ、天にも登る気持ちよさー♪」」」
トラックへの敵状視察の道中の即興で作った歌だ。品が無いのはこの際どうでもいい。
「トラックはもうすぐですか?」
「そうですヨー。後は電探と偵察機で調べマス」
五十島が芙蓉の質問に淡白に答える。
「電探はヤバくないでちか?」
「これが意外とバレないものアルヨ、ゴーヤ」
「バレたら?」
「巻く尻尾は無いけど逃げるだけさ」
ニシがヘラヘラしながら答えた。ムカつく。
>>44
可愛いじゃないか(感激)
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「皆様、大変お忙しい中お集まりいただきありがとうございます」
「前置きはいいからさー、手短に話してほしんだよねー提督ー」
北上が催促する。抑揚からして早めに作戦の説明を聞きたいのだろう。
「そうだな…。こほん、数日前、伊58に似た深海棲艦及び敵艦隊を発見した。迎撃に当たった長門を始めとする連合艦隊では刃が立たなかった…」
「数日前に起こった事と赤城さんから聞いております」
妙高型一番艦妙高がそれでと言わんばかりに返す。
「そこで、我々の戦力を全て投入することにした。道中には卑怯なことに罠が仕掛けられているらしい…。そこでそれを見つからない様に解除し、敵の最深部への大規模攻撃を開始する!」
ざわざわと騒ぎだす。つまり、鎮守府の守りを放棄すると言う事だ。
「それに、280万の提督(わたし)達の艦隊が全て出るのだ。圧巻で敵も逃げ出すだろう」
「作戦開始時刻はフタフタマルマル。そして、罠の解除が完全に終わり次第攻撃を開始する…一斉に艦隊が出る。ここでこの鎮守府の名を大いにあげようではないか諸君」
うおおおおおおおおお!と言う声が大きなホールに響く。
歴史上に類を見ない、大規模攻撃作戦が始まろうとしていた。
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「報告。トラック島には何かしらの兵器が隠されてたアル。艦の名前までは分からなかったアルヨ」
ふう、と一呼吸した後、松は八十島からの報告を聞いていた。
「トラックには何かあると薄々思ってたんだよねぇー…感冴えてると思わない?やおちゃん?」
「そんなんなら超能力者にでもなるがヨロシ。ユリ・ゲラーの変わり勤まると思うアルヨ」
「つれないなぁ」
松は焼酎を飲みながら言った。減り具合からするにかなり飲んでいる。
「それでどうするアルカ。奪うか放っておくか決めるがヨロシ」
「ここのメンバーって何の艦が多いか知ってる?駆逐艦と潜水艦。それに敷設艇に掃海艇。出せるのは敷設艇を除くものだけ」
「いきなり何アルカ、松」
質問の意図が分からない。何故今頃に種類を言う?
「それはねぇ、この基地が史上最強の艦隊であると証明できる証拠でもあるんだ」
「最強で思い浮かぶのはさー普通、戦艦と空母なんだよねー…。しかしこれだけではダメ。そこで彼女たちには駆逐艦などの護衛が付くの」
「…もう眠いアル。お休み」
うんざりしたのか、八十島は出て行ってしまった。
「トラックかぁ…筑紫(つくし)ちゃんの調べた地形図じゃあこんな形じゃ無いし、あるのは大和か武蔵、案外紀伊や尾張かも…」
秋津洲特性の資料を机に広げたまま、彼女は眠りについた。
その頃、私は夜の海を見ながら日本酒を飲んでいた。つまみは野埼特製のするめだ。
「ここに来てからようやく休まる気がするでち…」
海風が気持ちいい。月も綺麗と来た。これだけで酒が進む。
ちなみに銘柄は「霧島」と言うものだ。
「お隣、いいですか?」
見ると平たい成りの子が来ている。持っているのはなんとスピリタルだ。しかも割らずに。
「あ、私瑞穂って言うんです。あなたはゴーヤさん?」
「そうでち。瑞穂さんはここで何を?」
ふふ、と笑い「あなたと同じですよ」と言った。
儚げ、と言う言葉は彼女のためにあるのではないかとすら思ってしまう。
「私もあなたと…言え、ここの人達と同じでした。出撃しても手前で大破や中破してしまう。また着任先が変わって…って感じでここに」
「たらい回しでちか。そんなのは伊33だけかと」
「彼女は彼女なりに頑張っているんですよ。それが認められないのは…少し悲しいものですね」
確かにそうだった。私も最初だけは戦果をあげ、国に提督に皆に尽くそうと演習をこなし、講義を受け、敵を打ち倒してきた。
今じゃただの資源回収屋と成り下がってしまった。
「クソでちよ。燃費(コスト)がかからないってだけでこの扱いでちから」
「その方がいいじゃないですか。伊33…ササさんは居るだけで不幸になるって言われてるんですよ。生まれた時から」
「都合よく呼んでおいてまるで悪魔みたいでち」
後に聞いたことだが、ササこと伊33はサンゴ礁に衝突した後、魚雷管維持装置が損傷し引き揚げ時に大改修。それでも犠牲者をだしたと言う不幸の艦娘だ。
明るいが、どこかをいつも怪我しているらしい。
ついでに瑞穂の事も言っておこう。彼女は水上機母艦で太平洋戦争で初の喪失艦である。
「悪魔…人の形をした悪魔もいるかもしれませんね。ふふ…お酒がすすみますね」
いつの間にかボトルの半分を切っている。度数95のものをこんな短時間で飲むとはすげぇ。
ゴーヤも残りの霧島を飲み干す。
「っぱー!要はここは墓場、ってことでちか」
「そうかもしれませんね。さて私はそろそろ寝ます。それと瑞穂でいいですよ。おやすみなさい、ゴーヤさん」
「お休みでち、瑞穂」
飲み干したビンを海へと投げ、寝床へと付く。
(今夜はしっかり寝れそうでち…)
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「ヤーポン(日本)の提督(アドミラール)は猿なのかな?やっぱ総統閣下のおっしゃった通りだねっ」
どこかの鎮守府で黄色く短い髪をした女性が居た。ナチスのSSを思わせる服装をしている。
彼女はドイツから派遣されたシャルンホスト級戦艦一番艦、戦艦シャルンホスト。
「さて、ここから逃げるにはどうしたらいいかなっ、と…」
寝床へ彼女は帰った。その途中、ある話を「運よく」聞いてしまった。
「おいおい、名もなき艦隊が敵って本当なのかしら?」
「推測でいうのはよくないのです」
「でも、敵だろう?なら沈めるまでさ」
「何でも出るときがいつか分からないんだって…」
それを半開きのドア越しにである。
シャルンホストはにんまりとしながら、部屋へと戻っていった。
2日後、彼女は鎮守府の行おうとしていた大規模攻撃作戦の一部を外へと持ち出した。
発覚まで時間はそうかからなく、彼女は半年の謹慎処分が下った。
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「おはよーチェチェ、ゴーヤ!」
新しい朝が来た、希望の朝だと言うが朝に新鮮さも希望も無いだろう。
「おはようでち」
布団をたたみ顔を洗う。そして食堂へと向かうのだ。
「よ、ゴーヤ!どうよ、調子は?」
「良いでちよ神風」
「ここの娯楽は飯に酒と博打、それとAVくらいしかねーからな!はは!」
バシバシと肩を叩く。AVはいらない気もする。
白ご飯とみそ汁、鮭の甘粕漬け、御浸し。
(飯が進むでち!)
「相変わらずの食いっぷりじゃの、ゴーヤ嬢」
「秋津洲か。何か入ったのか?」
すると、辺りを少し見渡し告げた。
「実はの、少し前に交戦した某鎮守府が我々に攻撃しようとしてきておる」
「冗談にしちゃあ面白くないぜ、秋津洲。いつものキレはどーした?」
神妙な顔つきになる。どうやら本当らしい。
「マジねーぜ…」
神風がため息を漏らす。
「それねぇ、マジ?」
松がお尻を掻きながら現れる。はしたないですよ、松ちゃん。
「証拠は?」
「白鷹が設置したここから100km圏内の機雷及び防潜網が数百か所破られていたからの」
「はえ~。白鷹のが破られるなんて凄いね」
側天が割り込む。心臓に悪いからいきなり出て来ないでほしい。
「ここの守りは何重にも張られてるし、大丈夫じゃないかな~」
「それがもし、大和や武蔵、紀伊や尾張を含んでたとしても?」
松が口を開く。
「それなんでち?戦艦?」
「戦艦は戦艦でも超弩級戦艦だ…。しかも後者はもっとあるらしいがな」
出雲が断定するような口調で言い放つ。
「そんな推測をするのはどうして?」
梅が煙草をふかし、聞く。
「トラック島での偵察に行かせたでしょ?あれにおかしい点があったのさ」
出されたのはトラック島の地形図。そして写真。
「筑紫ちゃん特製地形図によるとね、ここの南東部分がおかしいの。地形変動も確認できてないからねー…ふああ…」
「梨ちゃんは居るー?」
「居ますよぉ…出撃ですかぁ?」
おどおどした感じで出てきたのは橘型駆逐艦、梨。近代的な服装(海自の制服)をしている。
「わかばって呼んでいーい?」
「梨って呼んでくださぁい」
58「もう寝るでち。後ここに今まで出た味方の船の容姿をざっくりをまとめておくでち」
神風・・・駆逐艦。ゴーヤのファーストコンタクトを取った艦娘。口は悪いが戦闘力は指折りである。赤く長い髪、改造セーラーと言う恰好。
側天・・・敷設艇。掃除好き。取引現場に機雷を数百個仕掛けたのはこの子。いつも箒を持っており、恰好は何故か割烹着である。黒髪、目ははっきりとしている。
秋津洲・・・飛行艇母艦。この基地の要であり、諜報担当。何故ここに居るのかは不明。髪は栗色ショート。迷彩柄のTシャツにドカンズボンと言う人。整った美人。
海鷹・・・商船改造軽空母。お嬢様口調。陰陽師のような服装。澄んだ黒色の髪でカチューシャをしている。デコヤバい。
阿蘇・・・空母。自信が無く、確認を常に求めている。雲龍と同様の格好だが、持っているのは弓である。髪は山吹色で肩までかかるロング。
葛城・・・空母。平和に~が口癖。最新鋭の艦載機を多く持っている。雲龍と同様の手段で艦載機を出す。しかし、恰好はパジャマである。ピンク髪のショートボブ。
松・・・駆逐艦。名もなき艦隊のリーダー。眠そうにしているが、やるときはやる。深緑色の天パ。短めのセーラーにどこからかくすねた日本海軍の上着を羽織っている。
興津・・・砲艦。元イタリア所属の敷設艇で現在は日本所属の砲艦。チャラい。金髪で巨乳。イタリアと日本、中国の軍服を繋ぎ合わせた物を着ている。
八十島・・・巡洋艦。チャイナドレス。アイヤーや~アルと語尾に付ける。輸送艦隊旗艦だった過去がある。容姿は>>44
五十島・・・巡洋艦。チャイナドレスでニーソ。語尾はダヨやネ、ヨ。八十島とは姉妹艦。サイドテールではっきりとした顔つきをしている。
沖島・・・敷設艇。明るく毒舌。水色のポニテ、ロリな容姿。
野埼・・・給糧艦。常に曖昧な表情をしている。コックのなりで髪型は深紫色でショート。
出雲・・・巡洋艦。歴戦の船でWW1からWW2まで経験した人。古いカーキの軍服に鉢巻(書かれている言葉は不明)をしている。長くまとめた黒髪。目つきは鋭く、常に何かを考えている。
芙蓉・・・駆逐艦。見た目同様、中身も幼い。一生懸命する攻撃する姿は可愛い。薄紫のくせっ毛、メガネをかけるセーラー少女。
梅・・・駆逐艦。ヘビースモーカー。セーラーはやや煤けている。赤く短い髪で煙草を常に加えている。
伊24・・・潜水艦。沈めるためなら何でもする子。戦闘狂なところがある。ゴーヤと同じスク水で髪型は灰色のロング。
伊12・・・潜水艦。語尾にござるを付ける。恰好は上記の物に黄色い忍び装束。白のショート。用は最上と同じ髪型。
瑞穂・・・水上機母艦。儚げな印象を持つ。長めの金髪。
筑紫・・・測量船。偵察機はかなり高性能らしい。服装不明。メガネをかけている。カーキ色のロングツインテール。
梨と呼ばれた子は穏やかな口調で答える。
「例の載せますかぁ?」
「例のってなんでち?」
松はボリボリと頭を掻きながら「なっちゃんは海自…要は現代(いま)の軍隊に属してたんだよー」と放った。つまりどういうことだろう。
「この子はかつての米国(てき)からお古を渡されてるからねー。知らないのも無理ないんじゃないかな?」
「そう言う事ですぅ」
なるほど。ふざけた格好にも意味はあったと言う事か。
「なっちゃんには敵の数を調べて貰いたいんだ。大丈夫?」
少し間を置き答える。
「大丈夫ですぅ!」
「瑞穂ちゃんもいるから空は安心して欲しいなー。それと日進ちゃんも居るし」
「あいつの載っけてる紫雲(ポンコツ)をか?しかも基本運び屋だぞ」
神風が声を荒らげる。
「史実だと神風ちゃんの言うとーりだけど、今回のは違うから安心していーよ」
「ポンコツじゃないよ!ただ状況が悪かっただけだから…」
野埼がフォロー。効果は薄いな。
「ニシに出撃させるのはどうでち?」
「そんなら、集団自[ピーーー]るしか道は無いの」
秋津洲が毒を吐く。どんだけ信用されてないんだ。
>>63訂正
「あいつの載っけてる紫雲(ポンコツ)をか?しかも基本運び屋だぞ」
神風が声を荒らげる。
「史実だと神風ちゃんの言うとーりだけど、今回のは違うから安心していーよ」
「ポンコツじゃないよ!ただ状況が悪かっただけだから…」
野埼がフォロー。効果は薄いな。
「ニシに出撃させるのはどうでち?」
「そんなら、集団自殺するしか道は無いの」
秋津洲が毒を吐く。どんだけ信用されてないんだ…。
「あいつらに機雷除去(おそうじ)は出来ねえのは確かだからな」
「そうだよねー!敷設艇(わたしら)がいないのはホント致命的☆」
沖島はいつも通りのテンションで言う。クソウザいのは変わらないようだ。
食堂は異様な緊張に包まれる。攻めてくるのが280万の提督が率いる艦隊で、それを私達だけで迎撃する。無理な話なのは明白だ。
「…私じゃダメ、かな?」
遠くの方で声がする。一人さびしく食事をするのは空母伊吹。元巡洋艦である過去がある。
「ああ、伊吹ちゃん。けどいいの?」
不安そうに松が言う。
「今度は私が戦場で…生まれなくても、やってみせる。半端には…しないつもり」
「そ。じゃあ280万の提督(バカ)共の相手はどうするかだけどねぇー…どーしよ?」
(考えてなかったのでちか!)
思わず落胆してしまう。だが280万と言う数はかなり大きい。
「工作するしか無いの。現状としてこの方法で打破するしかなかろうて」
「では誰が潜入するのだ?伊58か?それとも芙蓉か?こいつらはとっくに轟沈(ロスト)扱いになっているぞ」
八雲がいらだち交じりに言い放つ。
「280万も一枚岩、と言う訳じゃないと思うんだよねぇー。それをどう壊すかがミソだよ」
280万の提督(ゴミ)共が率いる艦娘(クソ)共をどうするか。思案してると、野埼がのんびりした場違いな声をだした。
「えーと…そろそろ片づけたいんだけどさ…通常の事もあるでしょ?だから…急いで食べてもらえるとありがたいなぁ…って」
確かにそうだ。ホカホカのご飯から湯気が失せている。
「野埼ちゃんの言うとおりだねー。…じゃ、私はこれ考えとくから皆はいつもどーりよろしくねぇー…ふわぁ…」
(この案件は伸びそうでちね…)
だがこれで、あの提督(クソ)を消す良い機会だ。きっとあいつらも変わるに違いない。
私はそう思った。
その日、私はニシとニコ(伊25)と共に哨戒をしていた。
ニコは水上機を持っており、中々上等な装備をしている。
スク水でショートポニテで青。顔立ちは常にニコニコ笑顔だ。若干怖い気もする…。
右手には40口径14cm単装砲と言う珍しい物を持っている。
「攻めるなら鎮守府を火の海に出来きますよ」
笑顔で恐ろしい事を言わないで欲しい…。
「いーなー!俺も攻撃したいぜー!」
「うるさいでち。仕事(にんむ)も出来ないから八十島にチャーシューにしてやると言われるんでちよ」
私が言うとニシは「うるせー!」と癇癪交じりで言った。
「でもよ、気になるんだよなー。ほら秋津洲の姉貴が言ってただろ?敵が大規模攻撃を仕掛けるって。何で漏れたんだろうなーってずっと思ってる訳よ」
「確かに…普通は…!ナイスですよニシ。このことを終わり次第、秋津洲さんと松さんに伝えましょう」
どうやら、ニコは理解したようだ。しかし私とニシは理解できずにいた。
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シャルンホストはここからどのようにして名もなき艦隊と会うか考えていた。
(運よくってのは無いだろうし…)
しかし、この大規模攻撃があちらに伝わっていたとしたらどうだろうか。おそらく何かしらの動きはしてくるはず。
鉄格子の前には艤装を備えた重巡艦娘が2人。センサーが数十。抜けたとしても多くの艦娘が待っているだろう。
(さて…この警備網をどうかしないとねっ)
余裕と言わんばかりの顔で破る方法を模索していることは、当の本人以外は知らない。
「失礼します」
「あー…ニコちゃん?」
松は書類とにらめっこしている。床に2,3本空き瓶が転がっている。机にはウイスキーの瓶が置いてある。
「実は少し疑問に思うことが」
松は「それで?」と言いウイスキーを半分以下まで減らす。
「どのように情報が漏れたのか聞きたいので」
「そこは秋津洲ちゃんに聞かないことには分からないよー」
ニコは少しだけ鋭い顔つきになり、溜息を吐く。
「では聞いてきますね」
「そーしてぇー…あ、無くなった」
ビンを投げ捨て、ごそごそと机の下から新たな酒を取り出し、開ける。コルトンと書かれている。
それをラッパ飲みする。興津がいたら怒鳴り散らしていっただろう。
ニコは煙草を取り出し、火をつける。
「生き残れるといいですね、私達」
若干の希望を抱くセリフを残して彼女は出て行った。
「…」
私は仕事が終わりの一杯を楽しんでた。昼間から酒が飲めることほど贅沢は無い。
食堂で楽しんでいると、凛とした声で話しかける子がいる。
「あら、ゴーヤさん。隣よろしくて?」
海鷹だ。上品さはあるものの、少々うるさく感じる声。
「ここには慣れまして?」
どこからか持ってきたのであろうカルピスを取り出した。
「アンタも飲むでち?」
瓶を突き出すと「もちろん」と答えた。
カルピスを満たしたグラスに日本酒を注ぐ。
「甘くて美味しいですわ」
「そうでちか」
まったりとした時間が流れる。
「慣れたかどうかと言われれば慣れたでち。始めはおかしい奴らの集まりと思ってたでち」
「その通りですわね。ここに居るのは提督から不要と言われた者、心に深く傷を負った者…海の果て、船の墓場ですわね」
居るのは役立たずの烙印を押された艦娘。だからこその「海の果て」。「船の墓場」。
「海は広いと思ってました。空のように澄み、夜空のような美しさと思ってましたわ。あの時までは」
暗い顔になる。彼女がそんな顔をするとは思わなかった。
「晩の事、執務室に呼び出され…犯されました。痛くて最悪でしたわ…。それを上に言っても、仲間に言っても信じてもらえませんでした…それどころか「運がなかった」とまで言われる始末でしたわ!」
酔ったのか、身の上話をし始めた。
腸が煮えくりかえる思い。彼女は誰にも信じてもらえなかったのだ。
「そんな所だと私は居られなくなり、ここへたどり着いたのですわ」
(重いでち…)
こんな時、どんな顔をすればいいのだろう。
「あなたはどのような経緯でして?」
「…味方に裏切られて死にかけでここに来たでちよ。潜水艦(わたしたち)を捨てるくらい最悪だったでち」
今思うと最悪の場所によく居られたなと思い、自嘲。
「捨て艦…松はそれを相当嫌っていましてよ」
「何ででち?」
「彼女にでも聞くのがよろしくてよ」
グラスの物を一気に飲み干し、彼女は去っていった。
その日の夕飯は八十島特製の海鮮炒飯、麻婆豆腐、中華スープ、水餃子に八宝菜。
「料理出来るなんて意外でち!どれもこれも美味いでちー!」
誇らしげか自慢か分からない表情を八十島はした。
「食事は心の栄養アルヨ!沢山食べるがヨロシ!」
量はかなりあるが、味が満腹を忘れさせた。
他の子達も美味しそうに食べている。見てるこっちも余計に腹が減りそうだ。
「おかわりいいでしょうか」
工作艦朝日が要求する。これでもう十杯目だ。
「食べ過ぎは良くないですよ。明日は体重が増えるのが見え見えです」
こんなことを言うのは測量船筑紫。服装は灰色の作業着だ。
「橋立ももっと食べるアル!」
「はいはい…これウマっ」
かき込むように食べているのは橋立型砲艦一番艦、橋立。主に中国方面で活躍した船だ。河や海でも戦える。凄い。
短い白い髪の上にちょこんと帽子が乗っている。小柄で胸が残念だ…。
58「今回はここまででち。もう寝るでち。どうでもいいけどニコが吸ってる煙草と梅が吸っているのはゴールデンバットでち。」
「楽しみの所悪いが、敵さんに動きがあるみたいじゃの」
秋津洲がラムネを片手に告げる。
「動き、ですの?」
敵はもう動き始めたらしい。そう打電があったと彼女はいつもの口調で言った。
「じゃが、手はもう打っておる」
「資源の輸出先に何かしらの圧力をかけたみたいだね☆さすがまっちゃんー!すごーい!」
沖島は知っているような口ぶりだ。圧力をかけるだけの権力は一介の艦娘には無いはず…。
「ゴーヤちゃんは知らないんだっけ?元々中国方面や東南海域で従事してたから信用結構あるんだよね」
橋立が解説してくれた。良い子すぎる。
「名もなき艦隊には「ヒ号船団」と言う大本営が国民には秘密に、鎮守府や基地・泊地に資源を増やすための船団を作ってたの。ここの資源は給油艦の風早(かざはや)、足摺(あしずり)大瀬(おおせ)…それらに松型、若竹型駆逐艦に随伴させて各鎮守府や基地に配給してたのよ」
なるほど。だから資源は底に着きにくかった訳だ。
「一時的に護衛したことあるけどよ、正直辛かったぜー。敵は多いわ、油以外にも大量に運ばないといけないものもあるわでよぉ」
神風が感慨深そうに言い放つ。
「遠征でのあれはどんな意味があるでちか?」
「あれは一種の強奪だな。練度の高い船で資材倉庫から盗むんだ。あ、ヒ号船団はちゃんと許可取ってあるし大丈夫だぜ!あいつらのやり方はさながらヨハネスブルグかロアナプラでよ、それに嫌気がさして名もなき艦隊(こんなの)を作ったのさ」
だから二艇拳銃みたいな話し方してるのか。
「地元民に結構愛されてるからの。ほとんどはそこから資源や資材を流してもらっておるのじゃよ、ゴーヤ嬢」
五十島はラジオを持ってきた。
「こんな時にリラックスしてる場合じゃないでちよ!」
私は場の読めない行動に少しだけキレる。だが、何故か私が怒られる羽目になった。
「こんな時だからだぜ、局は何か流すだろ」
「そうじゃぞ。ラジオは便利な道具じゃよ。さ、かけておくれ」
五十島は電源を入れ、チューニングをする。ザザ…と音の後、声が流れる。
『…日のニュースをお伝えします。一か月前から計画されている大規模攻撃作戦が明後日の午前1時に行われると発表されました。数年前から出現した艦娘型深海棲艦「名もなき艦隊」を壊滅させるとのことです。名もなき艦隊とは---』
全身が震え上がった。分断工作は不可能となった。
「松め、やるのう。ふむ、ちょうどリーダーも来た。勿論、知っておったのだろう?」
深緑の髪を掻きむしり気怠そうな表情が一転、真剣な顔つきとなる。
「勿論だよー。これを見越してだからねー。作戦は防衛と攻撃、占領を同時に行う。筑紫ちゃん、地図」
「わかりました」
ここ一帯の海域の地図だ。
「始めに…現在大本営が保有している基地数は19。ここから近いのはトラックとブルネイ。それとタウイタウイ。けど伊12…イニちゃんによると大和と武蔵らしき姿が日本へ向かっていたと報告があったんだー。そこで私たちはここ一帯の制海権を取る。大和・武蔵や尾張・紀伊らしき物を見かけたらすぐ逃げてね」
的確に作戦説明をする松。頼りになりそうだ。
「それと私からお知らせがありまーす」
興津がレンゲ片手にびしっと指す。
「前々からコンタクトを取っていたイタリアの艦娘達が正式にこちらの協力を…受諾しました!ご褒美に五十島ちゃんの初めてもらうね♪」
「数は?」
あっさりスルー。ちなみに言われた本人は「え…心の準備が…」なんて言っている。
「数は戦艦3と重巡5。軽巡5。駆逐8。以上!」
「その子達には極秘に中国方面へ来た後合流。私達はデコイとして太平洋に行くよ。こっちはかなりの数で行かないといけないからね…」
意外だ。ここまで協力してくれる艦娘がいたであろうか。
「それとな、シャルンホストと名乗る艦娘が協力すると言う申し出があった。ドイツ側に確認したところの、緊急時にビスマルク及びプリンツ・オイゲン、Z1、Z3の帰国命令が出ておるがこれを3か月前からずっと無視しておる」
無視するなんて国際問題だ。だが、日本は艦娘の保有と言う点でおいては世界一。口はあまり出せない。
「シャルンホストは何のために来たんだ?奪還か?」
「そうじゃな。それをヘマしたのか肉便器に堕ちたのかは知らぬが帰って来てないらしいのう」
どっちも同じ意味だと思う。
「ドイツ側はいくら持ってくるでちか?」
イタリアよりかはドイツの方が頼りになるだろう。
「空母1、軽空母1、駆逐7じゃ。制空権を取れるのは大きいのう…総統閣下様様じゃな」
彼女はいつものジョークを言う。本調子らしい。
「彼女たちはインド洋で落ち合うよ!それと占領後は島の周りに機雷を仕掛けておいてねぇー…それと今回は敵側の艦娘は沈めないよ。精々大破までにしておいてねぇ」
(まるで防戦と攻撃を同時に行うような言い方でち)
「隊は…どうするのだ?」
八雲が重々しく口を開く。
松は少し考えた後、「メンドクサイからパス」だそうだ。
「決めるのは自分自身だよ、八雲ちゃん。決着は付けれるかもよ?」
その一言で全員が黙る。
「作戦開始時刻は…明日の午後8時。その間、側天ちゃんと沖島ちゃん、白鷹ちゃんは何千の機雷を周りに仕掛けておいて。後は頼んだよ。対空火器のメンテ、朝日ちゃん頼んだよ。ではこれで終わり!さてご飯食べないとねー」
いよいよ始まる。
当初は私のいる鎮守府(ところ)だけ変えれたらと思っていた。
けど、ここに来て分かったのはどこもクソッ垂れだと言う事。
講義で学んだ艦娘に対する権利なんて法律(ルール)は始めから守る気がなかったのだろう。
いつの間にか吉原だ。提督は好きな子を侍らせ、艦娘達は媚を売り、奉仕する。
私は---こいつらと一緒に革命を起こして見せる。
コマでは無く、一人の、伊号潜水艦「伊58」としての意志だ。
窓から眺める穏やかな海は、少しだけ荒く見えた。
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「全艦、揃いました」
連合艦隊旗艦長門が提督に凛とした声で報告する。
280万の提督が率いる艦隊。ただし、当初予定と違い資源が無い等の理由から辞退したのが3割程居た。
しかし、これだけでも圧巻だ。
「凄いな…」
思わず心の声を漏らしてしまった。
「聞いていると思うが…艦娘型深海棲艦「名もなき艦隊」が我々の海域を荒らしているのは知っているであろう…。そこで大本営及び各地の提督との協議の結果、大規模な攻撃作戦を実行することとなった!それぞれには鎮守府海域、南東海域、北方海域、西方海域、南方海域を防衛及び殲滅を諸君らには担当してもらう」
「敵は卑劣ながらも罠を張っているが、我々の努力のかいもあり、全て撤去された。では…作戦開始」
集まった艦娘達はそれぞれ担当する海域へと戻って行った。
私達は南東へ向かっている。
無線が入ってきた。
<よく聞けおぬしら。敵艦隊は太平洋へ集結中じゃ。つまり中国方面はザルと言う事じゃの。海と言えば太平洋とはバカの一つ覚えにも程があるわ>
「ゴーヤヤバいぜ、戦艦50に空母200。軽空母190。重巡351に軽巡450と駆逐艦601。旗艦は…トラック所属の航空戦艦山城だ」
ニシが集まった戦力を伝える。こちらは私含む潜水艦10、駆逐艦5。全滅は免れない。
「連合国(もつもの)じゃないでちよね…?」
「俺らは枢軸国(もたないもの)側だ。残念だけどよ」
神風---彼女はここの艦隊旗艦を務めている---は真剣に冗談交じりではないと暗に伝えている様だ。見れば分かる。
「そこでだ、私らが囮(デコイ)になって攻撃。その間にニコとゴーヤ、ニシは敵の基地に攻撃を仕掛けて欲しいんだ。それにこの海域には「神州丸」が居る。そいつが上手く手引きしてくれるはずだからよ」
「誰でち?」
「陸軍の奴でいわば監視するためのスパイでアタシ等の仲間さ」
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その頃、ゴーヤたちのいる南東の海域では混乱が起こっていた。
大和と尾張を配備するトラック島が、何者かの攻撃で半壊していたのだ。
黒く妖しい髪を靡かせ、彼女---神州丸---は野砲を撃つ。資材庫が勢いよく吹っ飛ぶ。
所属の電は彼女がことの発端だと打電を打とうとしたが、体が装置ごと壊され動けなくなっていた。
「陸は掃き溜め、でございますな…。装置はまだあったはず…」
大きな地響きの後、ここから北の方面に赤色の煙が上がる。そろそろ合流しなければいけないようだ。
「…了解でございますよ」
半壊したトラック泊地を放置し、去ろうとする。途中でここの旗艦兼秘書官である大鳳を高射機砲で始末。指揮系統は使い物にならない。
彼女は血まみれの陸軍服を羽織り直し、ランデブーポイントへと向かっていった。
>>78訂正
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その頃、ゴーヤたちのいる南東の海域では混乱が起こっていた。
大和と尾張を配備するトラック島が、何者かの攻撃で半壊していたのだ。
黒く妖しい髪を靡かせ、彼女---神州丸---は野砲を撃つ。資材庫が勢いよく吹っ飛ぶ。
所属の電は彼女がことの発端だと打電を打とうとしたが、体が装置ごと壊され動けなくなっていた。
「海は掃き溜め、でございますな…。装置はまだあったはず…」
大きな地響きの後、ここから北の方面に赤色の煙が上がる。そろそろ合流しなければいけないようだ。
「…了解でございますよ」
半壊したトラック泊地を放置し、去ろうとする。途中でここの旗艦兼秘書官である大鳳を高射機砲で始末。指揮系統は使い物にならない。
彼女は血まみれの陸軍服を羽織り直し、ランデブーポイントへと向かっていった。
私達は何故か火の海と化したトラック泊地を眺めていた。(もっともニコだけは問答無用で砲撃と爆撃を行っていたが。)
一部は逃げ出そうとしている。それらをスルーし、ここの提督を探す。
合流地点である浜辺に上がり、神州丸とやらを待つ。
「やあ、待たせたでございますか?」
日本陸軍の軍服を着こなす麗人。それが合うだろう。服には血が付いているので何人かは始末したのかもしれない。
「私(わたくし)が日本陸軍所属艦、神州丸でございます。あなた達は何者でございますか?」
「ヒ号船団…と言えばいいのか?」
ニシが自信なさそうに告げる。
「なるほど。例の奴らでございますか。ならトラック泊地の制圧は完了でございますよ。ほとんどの子は片づけてますから」
言い方からするとやむなく殺した、と捉えられる。
「では、ここを占領いたしましょう。皆さん」
ニコが嬉しそうに言う。
「ここの提督は捕まえてあるでち?」
「トラック泊地の元帥だけは居るのでございますよ」
神州丸は歩き出す。私達も付いていく。
道中には多くの穴あき死体や肉片が落ちていた。何故か不快には感じなかった。
やがてここの執務室へとたどり着く。中にはカメラが準備されている。
「松殿に打電を」
私は松に打電を打つ。<トラツク センリョウ>
すぐにして帰ってくる。<リョウカイ カミナリ オクル>
「私をどうする気だ…?これは逆賊だぞ!」
椅子に縛られているここの提督が怒号を飛ばす。恐怖は感じない。
「知らないね!テメーが何をしたか考えてからいいやがれ!」
ニシが蹴り飛ばす。
「ニシ!傷つけちゃいけないでち!せっかくの人質なんでちから」
神州丸はニコニコしながら告げる。
「カメラもありますし、提督(ゴミ)共にお知らせしておきましょうか」
トラック泊地が「名もなき艦隊」に占領されたことを彼らは6時間後に知った。
手書き支援
・いおしま
ttp://i.imgur.com/ThEocIT.jpg
・つくし
http://i.imgur.com/D8PFMrj.jpg
しばらくして白鷹がここへ来た。どうやら仕掛け終わったらしい。
急設網艦白鷹。彼女は機雷以外にも対潜用の物を置けるとの事。ところどころボロいセーラー服がそれが味を出している。髪短いが、やや煤けている。
「早く陥落したね。僕も驚きだ」
「陸軍(われわれ)はデカい顔をする奴らの弱みを作りたいだけでございますよ、白鷹殿」
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「どうしたどうしたァ!そんなんじゃこの神風様には当たらないぜー!淫売共!」
戦場を突っ込んで行くのは神風だ。その後ろにはと峯風型駆逐艦野風、沼風、汐風。そして若竹型駆逐艦朝顔。
「どうしたよー?別のモン突っ込んで欲しくてイライラしてんのかァー?太いの入れてやるから沈めや!」
打ち込む。前方の駆逐艦5隻が大破。しかし砲撃の雨は止まない。
対空行動及び回避と並行して攻撃。これをやってのけるのは彼女だけだろう。
「伊達にぼろい訳じゃないんだよ…って!」
朝顔が砲撃する。敵駆逐艦2隻中破。さらに魚雷管に誘爆しもう一つ中破。
「実戦で役に立たなきゃ基本無意味だってーの」
野風が魚雷を1本発射。敵駆逐艦10隻中破。誘爆しもう何隻か中破。
(ジリ貧だ…!魚雷も弾も少ないしよ…クソッ垂れ!)
上空には大量の艦載機。撃ち落としてもきりがない。
舌打ちする。
「酸素魚雷積んでるんじゃないし、どーしよーもないねー。はは」
沼風がヤケクソで笑う。
(ここで終わるのか…?)
松が作ろうと誘い、私が入り、大瀬や足摺そして秋津洲が何故か入ってきた。これが最初の「名もなき艦隊」。
そして提督や大本営に疑問を持った者、追われた者…それらを受け入れている内にどんどん大きくなり、基地を持つまでに至った。
提督の元を抜け、味方の船を襲い夕方には缶詰と酒で過ごしたっけ。
俺の世界に色が付いた瞬間だった。モノクロが一気にカラーになり、楽しく感じた。
「クソみたいな日常はもう味わいたくねぇんだよーーーーー!」
初めて連れてきた日、ゴーヤが「鎮守府を革命してやる。だから早く解いて欲しいでち」と言った。
もしかしたら、いや、彼女なら変えてくれるかもしれない。
私達は使い捨てではないと。個性と言いながら無視をする彼らを、彼女らを変えれるのではないかと。
何故か、俺はその先に何も考えず突っ込んでいった。まるで特攻隊だ。
敵は俺が入るとは思わなかったのだろう。うまく攻撃できずにいる。それどころか同士撃ち(フレンドリーファイア)を起こしている。
「ちょっと何するのよ!」
「そっちこそ何するんですかぁー!」
駆逐艦共はきゃあきゃあと喚いている。
Z旗をあげている山城は目前だ。このままいけば討ち取れるだろう。
瞬間、足もとから爆発音が聞こえる。魚雷だ。誰かが放った魚雷に当たった。
(笑えないぜ…)きいr
空は緑に染まり、周りは殺意を向けている。
俺は魚雷を山城に向けて放つ。
同時に砲撃。魚雷は直線状に居る旗艦に…当たった。
「やだ魚雷ぃ…各艦は敵を見ずに前進…」
言い切る前に山城がハチの巣になり、航行不能となる。
あの色は誰なんだろうか?
「裏切りの日本(ヤーパン)の提督(アドミラール)率いる子羊達に総統閣下の鉄槌を!」
あの特徴あるマーク…ドイツだ!
「遅れて済まないな。私はここの旗艦であるグラーフ・ツェッペリンだッ!
SSを着ているが、正直アホそうにも見える。普段なら一蹴しているがそんな場合じゃない。
「協力してほしいんだけどよ…いいか?」
「閣下は裏切り者である者の処刑を命じた。その間なら協力してもよかろうッ。全艦載機よ!我がドイツ第三帝国に勝利と威厳をもたらせ!」
艦載機をボウガンで放つ。
「空は任せろ。その間君にはこいつらを探していただきたい。紙に書いてあるから頼んだぞッ」
「すまん!借りは返すぜ!ナチビッチ!後は頼んだぞ、野風、沼風、汐風、朝顔!」
大丈夫だ。沈まないし沈ませない。だってこいつらは---かつて別れた戦友なんだから。
「秋津洲!少しいいか?」
<なんじゃ。今我は中国方面で敵が出てきたからその報告を八雲にしようとするところじゃぞ!このブッ込み遊女!>
いつもの調子だ。少し安心する。
「そりゃどうも。でだ、閣下がお気に入りの子達がどこに居るか分かるか?」
<さあの。じゃが記録を洗わないとこればかりは…着任先もたぶん変わっておるだろうしな。じゃがシャルンホストなら分かる。奴はこの先の佐伯湾泊地じゃ>
「そうか。ありがとよ!」
<礼も言わん貴様が言うなんぞ死にいくみたいじゃぞ?精々気を付ける事じゃな>
死にに行く?何を言うか。生きて帰ってくる。絶対だ。
黙っては死なない。死ぬなら派手なことをしてからと決めている。
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「誰もいないヨ、チェチェ」
「これは幸運アルヨ。サンゴ取って髪飾りにするアル」
中国の海は静かだ。あまり深海棲艦がでないからだろうか。
居るのは八十島を旗艦とした五十島、八雲、芙蓉、若竹、梅、橋立、興津だ。
「敵がいるよ。誰かな?」
「数は戦艦3に空母10。軽空母81に重巡99。軽巡は…178で駆逐艦は200だね」
橋立がフォローする。「興津お前マジ死ねよ」と思ったのは内緒だ。
「アイヤー…尖閣諸島でも奪還する気にようやくなったアル?」
「愛国心あふれて私は涙がでそうだよ」
珍しく八雲がジョークを飛ばした。
「作戦は?」
何故か竹刀を持っている若竹が八十島に質問をする。
「簡単アル。いつも通りに…潰すアルヨ!」
「なるほど…」
八雲はニヤリとし、芙蓉は自身のほほを叩く。若竹は雰囲気を鋭くする。
「私と興津さんは河から支援します!そこまでは攻撃できないでしょうから」
橋立と興津は河川へと向かった。そこに誘き出せれば機雷で大破できるかもしれない。
すると、前に出る艦娘の陰が3つ。
「八雲!アンタ…生きていたのか」
川内型軽巡一番艦川内。同型である神通と那珂。改ニ仕様。
「川内、か。ここで会うのはいつぶりだ?それともドジでもしに来たのか?」
あざ笑うように川内を見る。
「今のアタシはそこまでじゃないよ。それに練度もばっちりだからさ」
静かな怒りを籠らせる。
「そうか…」
八雲はいきなり砲撃した。瞬間、神通と那珂が大破。
「まだ…戦え…」
「邪魔をするなよ、小娘共。これは」
「「私のだ」」
58「今回はここまででち。三日で完結するっていったけど駄目だったでちね(白目)だから終わる時は正直わかんないでち。でも最後まで付き合ってもらえるとありがたいでち!」
58「後ね>>83さんのイラストはすっごく嬉しいでち!ゴーヤは…え、書いてくれないの?そうでちか…」
「あの二人はどんな関係?」
梅が煙草をふかしながら気怠そうに言う。
「あの二人は昔…と言っても上海での戦友って話アル。この海域にも敵が居た時代に、川内が撃ち漏らしてって話。八雲はそれをフォローしたアルヨ」
「被弾しても戦い続けて、さらに対空戦闘もしたって話ネ。中国方面(ここ)はいわば八雲の庭で、川内のトラウマの地ダヨ」
敵は2人の気迫に引いているようだ。
<あのー…どうします?>
河川にたどり着いた橋立から無線が来る。
厄介な那珂と神通は大破した。だが、士気が下がった今ならチャンスだ。
「このまま河口へ誘き出すアル!川内は八雲がどうにかしてくれるアルヨ!1000対8でも勝てる事証明してやるアルヨ!」
全砲門を敵艦隊へ。
「発射アル!同時に件の場所まで後退!」
同時砲撃。弾道はバラバラになった敵艦隊へ山なりへ向かってゆく。
敵から見れば逃げているようにしか見えない。だからこそ、攻めてくるのだ。
「物量で押すとかやべぇアルヨ…」
「いる?」
梅が煙草を差し出す。
「…吸うのはやる事やってからアル」
「戦場での味は違うよ。それに落ち着く」
ふう、と煙を吐く。
「さっさとポイントに誘い出すアル!」
場所は長江。そこには数十万の機雷が設置されている。
そこを避けつつ戦うのだ。
結構予想通りに動くものアルナ、と八十島は思った。
航空戦力は正直合わせても2つ。爆撃機や攻撃機が近づいてくる。
「飛行機どうするー?」
「全艦対空射撃ネ!このまま行くヨ!でしょチェチェ?」
五十島が対空攻撃の切り替え、艦載機を落としてゆく。
「きんきゅーにゅーでーん!ローマさんがここに来るって!」
思わず笑みをこぼしてしまう。B級映画並みの分かりやすい展開。
「作戦は続行。イタリア連中には最高のディナーを振る舞ってやれと言うがヨロシ!」
「りょーかい」
数分後、ローマから無線が来た。
<君達は信じてもいいのかな?>
疑いの声だ。
「満漢全席…中華振る舞うアル!ワタシ、ウソ、ツカナイアルヨ!」
<全艦体、目標…前方艦隊!それと…敵の旗艦って誰かな?>
ちょろいな。
しかし旗艦は探してなかった…。橋立は伝え忘れていたのか見えなかったのか。
無線を飛ばす。
<旗艦は誰アルカ?>
<それが上げてないんだ、Z旗。それで分からなかったの…そのごめん!>
ここに居るのは捨てる気か…。松が聞いたら魚雷を陸上でも飛ばしそうだ。
それでも付き従うのは提督が良い奴だからか、そこにしか居場所が無いから。或いは両方。
「アイヤー…まるで殺戮マシーンアル…。ターミネーターより性質(たち)悪いアルヨ」
すると、秋津洲から連絡。
<おぬしらよく聞け。そこには八雲の戦友…川内がおる。そいつらを先に始末…って遅すぎたかの>
「私主催の机と椅子と鉛だけ食うパーティーに今度誘ってやるアルヨ」
<なら敵さんにでも誘うと良いわ。それなら主も楽しいじゃろう?>
「それなら喜んでいくアル」
彼女は答え、ポイントへと誘い出す。
私と五十島は不当な差別、とりわけ戦果の強奪がひどかった。
味方の船がわざと攻撃してきたり突き飛ばしたり。
そのせいで大破率が高く「役にたたねぇな」とまで言われてしまう。
私だけならいい。けど五十島は悪く無いのだ。ある船を沈めた。
これでいい。いいのだろう。悪く無い。私は悪く無い。だって---皆やっているんだから。
それが問題だった。沈めた子はお気に入りの子で、私が犯人と分かると攻撃をしてきた。
もう嫌だった。耐えられない。私の戦果はあったはずだ。ある時、その海域で十分に活躍をした。(邪魔されながらだが。)認めて下さい、提督。
「嘘をつくな!このクズ鉄!MVPはこいつだろクソチャイナ!」
全く別の子。私に全て攻撃させ、庇わせた奴。こんな役に立たない奴が…MVP?
ただ中国生まれってだけで?それでも日本に尽くしたではないか。異国に尽くすと言う凌辱を彼らは、彼女らは知らないのだろう。
そしてある任務で、私は「名もなき艦隊」と出合った。いつも通り私だけ攻撃。他のメンバーはお荷物に過ぎない。
その時、どこからか砲撃で1つ大破した。
「やる気ある奴もそうじゃない奴も沈め!」
赤い髪の駆逐艦。そして、おどおどした空母。
私の艦隊が蹂躙されてゆく。そして5分も立たずに私達は大破になった。
「資源はどれくらいある?」
「…ゼロアルヨ」
「他の奴らは怯えてやがるし、頼りにならねぇ。お前、名前は?」
「寧海級巡洋艦…八十島アル」
「そ。じゃあこいつらを俺らは潰すけどさ。どうする?一緒に行くか?」
何故か引き入れようとしたのだ。同じ艦娘を全滅させたのに。
「…そこは天国アルカ?」
「酒も戦果も取り放題さ」
少しだけ笑い、彼女たちに着いてゆく。
「私、妹いるアル。そいつも…連れてきていい?」
「好きにしやがれ」
その後、ここのリーダー---駆逐艦とは驚きだ---に会った。
「いいよー。大破で撤退ってことにしとけば大丈夫じゃないかなー?…お休みー…」
寝始めた。
「ま、こいつはいつもこうだからな」
その後、私は海域を脱出。そして仲間を連れて帰り、提督に報告。
いつもどうり、私のせいにされた。やはり鎮守府(ここ)は地獄だ。
後日、私は五十島を連れて彼女たちの元へと向かう。もう精神的に追い詰められることも無い。
「ようこそ、「名もなき艦隊」へ」
それが---1年前の事。
「ここで終わりアル…屑鉄に成るがヨロシ!」
水柱が大量に発生する。
「自己犠牲の精神で機雷除去(マインスイーパー)してるがイイネ!」
橋立と興津が砲撃。
<芙蓉より皆さんへ。全空母及び軽空母が絶賛炎上中ー。同時に軽巡重巡駆逐もね。イタリア艦が仕事したみたいだよー>
芙蓉が楽しそうな声で伝える。
<それとねー、ココ方面の旗艦は大湊所属の戦艦金剛だよー>
正面には押しのけ逃げようとする金剛の姿。しかしそこは機雷が仕掛けられている地帯だ。
「あー…そこは…」
大きな水柱が上がった。金剛の進撃は止まった。
<全艦通達アル。旗艦金剛…討ち取ったアル>
「…ふぅ。あっちも終わったようだ。今度は何する気だ川内?」
八雲は余裕の表情をうかべ、轟沈寸前の川内に言い放つ。
「夜は…アタシの…」
「戦場、だろう。夜戦もろくに出来ないくせに何言うのやら、だ。それに私の旗艦は…三笠。彼女だけだ」
足もとに応急修理要員を置き、彼女は去った。
その日、上海の海に再び静寂が訪れた。
<臨時速報じゃ!中国方面に展開していた艦隊は全員投降。これで後は…くっ!何者かがここを嗅ぎつけよったわ!しばらく連絡は出来んか---ザザ>
無線はそこで途切れた。
「はっ!それなら良かったな」
神風は佐伯湾泊地内に侵入し、シャルンホストを探していた。
中はかなり綺麗だ。つい最近作られたのだろうか。
「牢獄なんてねぇしな…」
ただでさえ広い泊地だ。虱潰しに探していてはスクラップにされるのも時間の問題。
カツカツと音が聞こえる。距離からすると近い。
「あれ?あなたは誰?ここの所属艦かなっ?」
無垢な笑顔で近づく女性はSSの恰好。メモに書かれた特徴とぴたりと当てはまる。と言う事は彼女がシャルンホストだろうか?
「答える気もない、かぁ。運よく出られたわけだし。で、君はどっち側?敵かな?味方かな?」
「…どっちでもねぇぜ。しいて言うなら迎えに来たところだな」
シャルンホストは「あはは!面白いね!じゃあ案内よろしくねっ、私の王子様っ」と冗談交じりで言った。
「じゃ行こうぜ、お姫様」
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ゴーヤ達は次の目的地ラバウルへ進んでいた。
「秋津洲に打電は出来ないでち?」
「少しお待ちになるでございます…ノイズがひどい。混線…でございますわね」
「緊急入電!朝日によると基地が襲われたらしい!」
バカな。周りには大量の機雷と対空及び対艦装備が多く備わっているいわば「要塞」。
それを襲われるだなんて現実だろうか。
「現実ですよ、ゴーヤさん…」
「基地はおそらく放棄でございますね。何せあそこには守るために自爆機能が備わってのでございますよ」
「自爆…」
聞いたことが無い。
「あなた達が居た基地は元々輸送施設があった所でございます。ちらりと見た記録によると8年前には戦局の悪化で放棄、でございます。正式名称は南方方面輸送基地」
「確かヒ号船団の基地なんだよなー、あそこ」
船団の基地だったのか…。だからどうりでボロいはずだ。
「助けるか?」
「その必要はないの」
聞きなれた声。そこに居たのは秋津洲。本人だ。
それと工作艦朝日と野埼。複数の潜水艦と駆逐艦、敷設艇を連れている。
「松は?松はどこだよ」
「奴は…松は…」
見捨てたのか。こいつら…仲間を見捨てやがった。
「クソッ垂れ!何で何故見捨てたでち!」
秋津洲は俯き黙ったままだ。
「しかた無かったのじゃ!爆撃機が万単位でこちらに向かってきたのじゃぞ!対空機銃でも効果は薄い!それにこの基地が見つかったと言う事は、属する艦娘全てが極刑ものじゃぞ!」
「松は…」
嫌な予感しかない。
「生きてるよ、ゴーヤちゃん」
「ってか勝手に殺さないでよー。そんなの気まずくなるしさー…ふあぁ…」
居るのはいつも眠そうで、頭を掻いていて…けど頼りになるリーダー。
「暴力的なものいいけどさ、面白いのが見れてるよー。秋津洲ー、見せてあげなよー」
取り出したのはDVDプレーヤー型の何か。
「小型の軍用万能PCだよー。それでね…この記事」
書かれていたのは「艦娘達の実態!提督は違法行為していた!?」と言う題の記事。
タイトルからすると三文記事だが、内容はかなりのだ。
酷使してきたこと。身内でのいじめ問題や提督がプールした税金を私的に利用していたこと。
それを的確に書いていた。だが、内容は真実性を帯びていない。つまりは推測の域だ。
「記者の名を見てみよ。青葉、と書かれておる。確か重巡にいたのう。そんなパパラッチが」
まさかの協力者が出てきたとは意外だった。
「私たちはこれに便乗するよー。同時に国際問題にまで至っていることをねぇ」
<朗報だぜー、シャルンホストが不正の証拠をつかんだ書類やデータ一式を持っていたぜ。これで280万の提督(ゴミ)共はシュートされる訳だ!はは!気分良いぜェー!>
「終わったんでちね、私の革命…」
煙を上げる島々が見える。日本方面もだ。
騒がしくも、楽しかった日々は…終わりを告げた。
「提督の持つ機材が現代化してた事が敗北原因じゃ。無線や打電はそうそう破られんわい。なんせ特別な周波数(バンド)じゃからの」
執務室が現代化していることは知っていた。ほとんどの提督は衛星で艦娘達を観測・管理していたのだ。(これは軍事機密らしい。)
ネットはフラッシュゲーした時にしか触っていないがこんなことにも使えたのか。
「少し…疲れたでち…」
私の辺りは、闇に包まれた。
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数日後には全国どころか世界中で代々的に報道された。
決定的となったシャルンホストのデータで青葉の記事は真実だと分かったのだ。
大本営は対処に追われ、全提督の処分と艦娘達のケアに努めると約束した。
「しかし、青葉嬢が協力してくれるとは意外じゃったぞ」
どこかの喫茶店で2人の艦娘がコーヒー2つとナポリタン1つの間で対峙していた。
「そんなこと無いですよ」
ケチャップを口につけて淡々と話すのは青葉だ。
「ただここの所、情報規制だがなんだかで記事が書けなかったんですよ。それに当初はヒ号船団だと知らずに幽霊船なんて書きましたが」
秋津州はコーヒーを啜った。書いた記事は7年前のだ。つまり、そこまで戦力が無かった時代の話。
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